説明

共溶媒不含有自己架橋性ポリウレタン分散体

本発明は、自己架橋性ポリウレタン分散体の製造方法、該方法から得られた自己架橋性水性分散体、該分散体の被覆組成物としての使用、該分散体を含んでなる被覆組成物、該被覆組成物で基材を被覆するための方法、および該被覆組成物で処理された基材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己架橋性ポリウレタン分散体の製造方法、該方法から得られた自己架橋性水性分散体、該分散体の被覆組成物としての使用、該分散体を含んでなる被覆組成物、該被覆組成物での基材の被覆方法、および該自己架橋性水性分散体含有被覆組成物で処理された基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料の適用過程で放出される溶媒を規制する放出指針が益々厳しくなっているので、水性の塗料および被覆組成物の重要性が増している。今日、多くの適用分野に利用できる水性被覆系が存在するが、これらの系はしばしば、一般に調製工程からの多量の共溶媒をなお含有する。特に、水相から調製でき、自動車下地塗りに関する技術の厳しい要求を十分に満たす、共溶媒含有量が低いポリウレタンベース被覆組成物の開示は今なお存在していない。
【0003】
近年、一液型(1K)焼付ワニスの分野で、更なる改良が達成された。EP−A 1 311 571は、ウレタン基およびヒドロキシル基を含有するポリオールと、ジメチルピラゾール誘導体で少なくとも50当量%までブロックされた非親水化ポリイソシアネートとの物理的混合物から得た自己架橋性ポリウレタン分散体を記載している。ポリオール成分とブロックトポリイソシアネートとの物理的混合物は、被膜の観点からの有意な利点を特徴とするが、その製造方法は著しい欠点がある。一方では、記載した特許出願では、ブロックトポリイソシアネート成分を独立した反応容器内で調製しており、これは、1つの容器内で実施される方法と比較するとかなり余分の作業を意味する。他方では、ブロックトポリイソシアネート自体の相当な粘度の故に、溶媒を添加しなければならない。さもなければ、計量供給できないからである。安全上の理由から、ブロックトポリイソシアネートには低揮発性溶媒しか使用できないので、例えばアセトンのような高揮発性溶媒中のこの種の溶液は、貯蔵または輸送できない。低揮発性溶媒は、必然的に分散体および被覆組成物中に残留し、ユーザーの元でしか放出されず、このことは一般に望ましくない。EP−A 1 311 571に記載されている自己架橋性焼付系は、分散体に対して4.8〜11.3重量%の共溶媒を含有する。この量は、水性被覆系のある種の適用分野には多すぎる。
【0004】
EP−A 1 311 571に記載されている方法の更なる欠点は、ブロックトポリイソシアネートを、必然的に、溶媒中に安定して溶解できないことである。従って、ある種のブロッキング剤が使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP−A 1 311 571
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、エンドユーザーの元で共溶媒の蒸発が起こらないように、共溶媒を含有しないかまたは極めて少量の共溶媒しか含有しない自己架橋性ポリウレタン水性分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、以下の工程:
I.a1)ポリイソシアネートと、
a2)少なくとも1つのイソシアネート反応性基を含有し、1以上の平均ヒドロキシル官能価を有するアニオン性親水化剤と
a3)1超の平均ヒドロキシル官能価を有する少なくとも1種のポリオール成分
との混合物を反応させる工程(成分a2)と成分a3)との混合物または成分a1)のいずれかは、少なくとも1種の触媒k)を含んでなる。)、
II.工程Iからヒドロキシル官能性かつNCO不含有のポリウレタンを得る工程、
III.次いで、該ポリウレタンを
a4)イソシアネート基のための反応性ブロッキング剤
と混合する工程、
IV.続いて、工程IIIからの混合物を
a5)a1)の群から選択される、a1)と同じまたは異なった1種以上のポリイソシアネート
と反応させる工程、
V.その後、工程IVからヒドロキシル官能性NCO不含有ポリウレタンとブロックトポリイソシアネートとの物理的混合物を得る工程、
VI.続いて、ヒドロキシル官能性ポリウレタンの酸基を
a6)中和剤
の添加により、完全または部分的脱プロトン化に付す工程、
VII.工程VI)から得たポリウレタンを水に分散させる工程、
または工程VIの前に工程VIIを実施する工程
を含む、自己架橋性ポリウレタン水性分散体の製造方法によって達成される。
【0008】
本発明の方法は、工程VIIの前に工程VIを実施する場合に有利である。
本発明の方法は、工程VIの前に工程VIIを実施する場合も有利である。
【0009】
本発明の方法は、工程IIIで使用するブロッキング剤が、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミンおよび3,5−ジメチルピラゾールからなる群から選択される化合物である場合に有利である。
【0010】
本発明の方法は、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒または溶媒混合物を、工程IIからのポリウレタンに基づいて30重量%までの量で、工程IIまたは工程IIIの後に使用し、工程VIIの後に蒸留によって除去する場合に有利である。
【0011】
本発明は更に、本発明の方法によって得られた自己架橋性ポリウレタン水性分散体を提供する。
【0012】
本発明は更に、被覆組成物を調製するための本発明の自己架橋性ポリウレタン水性分散体の使用を提供する。
【0013】
本発明は更に、本発明の自己架橋性ポリウレタン水性分散体を含んでなる被覆組成物を提供する。
【0014】
本発明の被覆組成物は、インキ、塗料および接着剤からなる群から選択される場合に有利である。
【0015】
本発明は更に、本発明の被覆組成物を用いた、基材の被覆方法を提供する。
【0016】
本発明の被覆方法は、自動車車体または自動車車体部品を本発明の被覆組成物で被覆する場合に有利である。
【0017】
本発明は更に、本発明の被覆組成物を含んでなる被膜を有する基材を提供する。
【0018】
本発明の物品は、完成した自動車車体または自動車車体部品である場合に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の分散体において、a4)でブロックされたイソシアネート基のイソシアネート反応性OH基に対する比は、0.2〜5.0:1、好ましくは0.4〜2.0:1、より好ましくは0.5〜1.5:1である。
【0020】
成分a1)〜a6)が以下の重量割合となるように、個々の成分量を計算する:
a1)3〜25重量部、好ましくは6〜18重量部、より好ましくは7〜14重量部;
a2)0.3〜8重量部、好ましくは1〜6重量部、より好ましくは2〜5重量部;
a3)40〜85重量部、好ましくは50〜75重量部、より好ましくは60〜70重量部;
a4)1〜20重量部、好ましくは3〜17重量部、より好ましくは4〜10重量部;
a5)3〜25重量部、好ましくは5〜20重量部、より好ましくは9〜17重量部;
a6)0.5〜10重量部、好ましくは1〜6重量部、より好ましくは2〜4重量部;
k)0.001〜2重量部、好ましくは0.005〜0.1重量部、より好ましくは0.01〜0.08重量部。
【0021】
記載した重量部は、存在する水分または溶媒を除く特定成分に関係する。
【0022】
使用される中和剤a6)の量は、一般に、工程IIからのポリウレタン中に存在するカルボン酸基および/またはスルホン酸基の中和度(使用されるアミンの存在する酸基に対するモル比)が、少なくとも50%、好ましくは80〜120%、より好ましくは95〜105%となるような量である。分散工程VIIまたは溶解工程の前、間または後に、中和を実施できる。しかしながら、水の添加前(工程VIIの前)に中和することが好ましい。
【0023】
成分a1)には、イソシアネート基含有有機化合物の全てを使用することができるが、好ましくは、それらがホスゲン法またはホスゲンフリー法のいずれで調製されたかに関係なく、2以上のNCO官能価を有する、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式ポリイソシアネートを、単独でまたは互いの所望の混合物として使用する。
【0024】
そのようなイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−および1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリイソシアナトノナン、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン2,4’−および/または4,4’−ジイソシアネート(MDI)、トリフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートまたはナフチレン1,5−ジイソシアネート、およびそのようなイソシアネートの所望の混合物である。
【0025】
同様に、上記ポリイソシアネートから誘導され、かつウレトジオン、カルボジイミド、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、ビウレット、ウレタン、アロファネート、オキサジアジントリオンまたはアシルウレア構造を含有するポリイソシアネート、並びにモル過剰の上記ポリイソシアネートの1種と、例えばOH基の形態で一分子あたり少なくとも2個のイソシアネート反応性水素原子を含有する有機物質との予備反応によって得られる種の、1超の平均NCO官能価を有するポリイソシアネートプレポリマーも非常に適している。
【0026】
a1)には、140〜1000g/molの分子量を有する上記した種の化合物を使用することが好ましい。
【0027】
成分a1)には、脂肪族的および/または脂環式的に結合したイソシアネート基しか含有しない上記した種のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物、とりわけ、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)および/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンに基づいたものを使用することが特に好ましい。
【0028】
ポリオール成分a2)は、好ましくは1〜6、より好ましくは2〜4の平均ヒドロキシル官能価、および62〜2500g/mol、好ましくは62〜1000g/mol、より好ましくは62〜500g/molの数平均分子量を有し、酸官能基に加えて少なくとも1つのイソシアネート反応性OH基も含有する酸官能性化合物を包含する。
【0029】
これらの化合物は、好ましくは、少なくとも1つ、好適には1つまたは2つのヒドロキシル基を含有するカルボン酸、或いはそのようなヒドロキシカルボン酸の塩である。適当なそのような酸は、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)アルカンカルボン酸、例えば、ジメチロール酢酸酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸または2,2−ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ヒドロキシピバリン酸またはそのような酸の混合物である。
【0030】
成分a2)として、ジメチロールプロピオン酸および/またはヒドロキシピバリン酸を使用することが好ましい。
【0031】
a2)が上記した種の酸官能性化合物しか包含しないことが特に好ましく、a2)としてジメチロールプロピオン酸しか使用しない場合が極めて特に好ましい。
【0032】
a3)に使用されるポリオール成分は、
b1)62〜300g/mol、好ましくは62〜182g/mol、より好ましくは62〜118g/molの数平均分子量を有する二価〜六価アルコール、
b2)2以上のヒドロキシル官能価を有し、かつ300〜5000g/mol、好ましくは300〜3000g/mol、より好ましくは300〜2000g/molの数平均分子量を有するポリオール、および/または
b3)300〜3000g/mol、好ましくは300〜2000g/mol、より好ましくは300〜1000g/molの数平均分子量を有する単官能性直鎖ポリエーテル
からなる。
【0033】
適当なポリオールb1)は、エステル基を含有しない二価〜六価アルコールおよび/またはそれらの混合物である。典型例は、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオールおよびプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−1,2−ジオールまたはブタン−2,3−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびソルビトールである。
【0034】
b1)に好ましい化合物は、1,4−ブタンジオールまたは1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび/またはトリメチロールプロパンである。
【0035】
成分b2)の適当なポリオールは、ポリエーテル、ポリエステルおよび/またはポリカーボネートからなる群から選択される。好ましくは、b2)は、エステル基を含有し、かつ350〜4000g/mol、好ましくは350〜2000g/mol、より好ましくは350〜1000g/molの数平均分子量を有する、少なくとも1種のポリオールを含んでなる。好ましい平均ヒドロキシル官能価は、一分子あたり2〜4つのOH基である。
【0036】
この種のエステル基含有ポリオールは、低分子量ポリオールおよびジカルボン酸から合成された、それ自体既知のポリエステルポリオールである。この目的に適した低分子量ポリオールの例は、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはソルビトールである。適当なジカルボン酸の例は、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸のような脂環式ジカルボン酸および/またはそれらの無水物;並びにコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸のような脂肪族ジカルボン酸および/またはそれらの無水物である。好ましくは、脂肪族ジカルボン酸を使用してエステルジオールを合成する。
【0037】
成分b2)のポリエステルポリオールとして、350〜4000g/mol、好ましくは350〜2000g/mol、より好ましくは350〜1000g/molの数平均分子量を有するポリカプロラクトンジオールを使用することが好ましい。これらのジオールは、スターターとしての上記した種のジオール、トリオールまたはジオール/トリオール混合物およびε−カプロラクトンから、常套法で得られる。
好ましいポリカプロラクトンジオールは、スターターとして1,6−ヘキサンジオールを用いて、ε−カプロラクトンを重合させることによって調製される。
【0038】
特に好ましいポリエステルポリオールは、酸成分としてのアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸およびテトラヒドロフタル酸に基づき、アルコール成分としての1,4−ブタンジオールまたは1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび/またはトリメチロールプロパンに基づいた、ポリエステルポリオールである。
【0039】
成分b2)には、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはテトラヒドロフランの(コ)ポリエーテルを使用することも可能である。好ましいポリエーテルは、500〜2000g/molの数平均分子量を有するポリエーテル、例えばポリエチレンオキシドまたはポリテトラヒドロフランジオールである。
【0040】
また、b2)は、好ましくは400〜4000g/mol、より好ましくは400〜2000g/molの数平均分子量を有する、ヒドロキシル含有ポリカーボネート、例えば、ヘキサンジオールポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートを包含することもできる。
【0041】
成分b3)の適当な単官能性直鎖ポリエーテルは、例えば、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの(コ)ポリエーテルである。モノアルコールから出発して調製され、350〜2500g/molの数平均分子量を有し、少なくとも70%のエチレンオキシド単位を含有する、ポリアルキレンオキシドポリエーテルが好ましい。特に好ましい(コ)ポリエーテルは、75%超のエチレンオキシド単位を含有し、300〜2500g/mol、好ましくは500〜1000g/molの数平均分子量を有する、(コ)ポリエーテルである。これらポリエーテルの調製に使用されるスターター分子は、好ましくは、1〜6個の炭素原子を含有する単官能性アルコールである。
【0042】
a4)に使用されるブロッキング剤は、イソシアネート基のための常套のブロッキング剤から選択される。使用されるブロッキング剤は、ポリウレタンポリマーのOH基より高い、イソシアネート基に対する反応性を有していなければならない。適当なブロッキング剤の例は、ブタノンオキシムのようなオキシム、ジイソプロピルアミンまたはt−ブチルベンジルアミンのようなアミン、3,5−ジメチルピラゾール、トリアゾールまたはそれらの混合物である。ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾールまたはそれらの混合物が好ましい。
【0043】
ブロッキング剤とイソシアネート基との反応性を調べることは、当業者にとって容易であり、この反応性は、0〜100℃、好ましくは20〜60℃の温度範囲のものである。反応性は、当業者に既知の触媒によって高めることができる。そのような触媒によって、ブロッキング剤の反応性を、ポリオールのアルコール基の反応性より意図的に高くすることもできる。
【0044】
a5)として使用されるポリイソシアネート成分は、成分a1)で挙げたのと同じ群からなり得る。成分a1)とa5)とは、同じまたは異なっていてよい。
【0045】
a5)には、2〜6、より好ましくは2.5〜5、特に好ましくは3〜4.5の範囲にイソシアネート官能価を有するポリイソシアネート成分および/またはそれらの混合物が好ましい。
【0046】
a6)として使用される中和剤の例は、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジイソプロピルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アンモニア、水酸化ナトリウムのような水酸化物、またはそれらの所望の混合物である。好ましい中和剤は、トリエチルアミン、ジイソプロピルヘキシルアミンおよびジメチルエタノールアミンのような第三級アミンであり、ジメチルエタノールアミンが特に好ましい。
【0047】
本発明の方法の1つの好ましい態様では、イソシアネート反応性成分a2)およびa3)並びに触媒k)を導入して開始し、次いで、本発明の方法の工程Iのポリイソシアネートa1)を添加する。この場合の温度範囲は、好ましくは50〜140℃に設定する。触媒k)は、成分a1)、a2)またはa3)の各々に混合しても良いし、或いは独立して添加してもよい。工程Iに従った反応は、非イソシアネート反応性溶媒、いわゆる共溶媒中で実施できる。共溶媒を用いずに、この反応工程Iを実施することが好ましい。成分k)、a1)、a2)およびa3)を工程Iに従って混合した後、赤外分光法によってNCO基がもはや検出されなくなるまで撹拌を継続する。
【0048】
次いで、1つの好ましい態様では、工程IIで得たヒドロキシル官能性かつNCO不含有のポリウレタンを、1013mbarの圧力下で85℃未満の沸点を有する揮発性水混和性共溶媒(例えばアセトン)に溶解し、続いて、溶液をブロッキング剤a4)と混合する。代わりに、まず、ブロッキング剤を、本発明の方法の工程IIからのポリウレタンに混合し、次いで、得られた混合物を溶媒に溶解することもできる。工程IIからの混合物の好ましい溶媒含有量は、混合物の粘度に依存し、0〜60重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。温度は、0〜80℃、好ましくは20〜50℃に設定する。その後、温度が80℃を超えないような速度で、ポリイソシアネート成分a5)を計量添加する。添加および続く撹拌の間、20〜60℃の温度範囲を維持することが好ましい。赤外分光法によってNCO基がもはや検出されなくなるまで、混合物を撹拌する。
【0049】
好ましい態様では、続いて、成分a2)からのポリウレタンの酸基を、塩基a6)による完全または部分的脱プロトン化に付し、その後、水に分散させる。
【0050】
水に分散させるため、必要に応じて強い剪断を伴って、一般的には1W/L〜1000kW/Lの撹拌エネルギーを用いて、ポリウレタン溶液を分散水に導入するか、または逆に、分散水をポリウレタン溶液に添加して撹拌する。好ましくは、水を溶解ポリウレタンに添加する。工程VIIでの分散終了後、存在する揮発性溶媒を蒸留により除去する。蒸留は、好ましくは、20〜70℃、より好ましくは30〜50℃の温度で減圧下実施する。減圧は、好ましくは50〜500mbar、より好ましくは100〜200mbarに設定する。まず、所望の温度に設定して蒸留に必要な減圧に適合させることができ、またはその逆も可能である。1つの特に好ましい方法では、まず、100〜200mbarの減圧を設定し、次いで、分散体を室温〜40℃に温める。この方法の利点は、完成分散体中の溶媒量を少なくできることである。溶媒量は一般に、分散体に対して0.5重量%未満である。
【0051】
好ましくはないが、蒸留によって除去できない更なる共溶媒を添加することも可能である。これらの共溶媒は、分散体に対して4重量%まで、好ましくは2重量%までの量となるように使用される。共溶媒不含有の分散体を調製することが特に好ましい。
【0052】
反応工程Iは、第三級アミン、錫化合物、亜鉛化合物またはビスマス化合物からなる群から選択される少なくとも1種の触媒k)を用いて促進される。トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジオクタン酸錫およびジラウリン酸ジブチル錫が特に好ましい。ジオクタン酸錫およびジラウリン酸ジブチル錫が極めて好ましい。このポリウレタン触媒k)は、工程IIで、ウレタンの生成を促進する。EP−A 2006/005878でも、上記触媒を使用している。しかしながら、同特許公報では、上記触媒を、製造方法の後の工程で、ブロッキング触媒として使用している。
【0053】
本発明に従ってこのように得られた自己架橋性水性分散体は、10〜70重量%、好ましくは30〜55重量%の、分散体にとっては不揮発性成分である固形分を有する。固形分は、恒量に達するまで100℃でフィルムを乾燥することにより測定する。
【0054】
本発明の方法により得られる分散体は、塗料、インキおよび他の組成物を調製するための遊離ヒドロキシル基含有一液型焼付系として使用できる。これに関して、塗料技術で典型的な助剤および添加剤を使用することもでき、その例は、顔料、流れ制御剤、抑泡剤または触媒である。焼付時の付加的架橋のために、アミノ架橋剤樹脂(例えばメラミン樹脂および/または尿素樹脂)のような別のアルコール反応性化合物との混合物も可能である。
【0055】
本発明はまた、インキ、塗料または接着剤を調製するため、特に自動車下地塗り並びに缶塗装およびコイル塗装のための、本発明の自己架橋性水性分散体の使用を提供する。
【0056】
本発明の自己架橋性水性分散体を含んでなる一液型水性被覆組成物は、噴霧、塗布、浸漬、流し塗のような被覆技術の所望の方法全てによって、またはローラーおよびドクターブレードを用いて、所望の耐熱性基材に、一層以上で適用され得る。被膜は一般に、0.001〜0.3mmの乾燥膜厚を有する。
【0057】
適当な基材の例は、金属、プラスチック、木材またはガラスである。被膜の硬化は、80〜260℃、好ましくは130〜240℃で実施する。
【0058】
一液型水性被覆組成物は、特異的に、例えば、自動車車体、機械類、ケーシング、ドラムまたは容器を製造するために使用される種の、鋼板上の被膜および仕上塗の製造に適している。自動車の表面塗料および/または仕上塗料の調製への使用が特に好ましい。
【実施例】
【0059】
Desmodur(登録商標)N 3300:ヘキサメチレンジイソシアネートに基づくイソシアヌレート、Bayer MaterialScience AG(ドイツ国レーフエルクーゼン)。
他の化合物は、化学メーカー(Sigma-Aldrich Chemie GmbH(ドイツ国タウフキルヒェン))から入手した。
特に記載のない限り、全てのパーセントは重量による。
特に記載のない限り、分析測定値の全ては23℃の温度での測定値である。
報告した粘度は、Anton Paar Germany GmbH(ドイツ国オストフィルデルン)製回転粘度計を用いて、DIN 53019に従って23℃で測定した。
特に記載のない限り、NCO含有量は、DIN−EN ISO 11909に従って容量分析的に測定した。
報告した粒度は、レーザー相関分光法によって測定した(計器:Malvern Inst. Limited製Malvern Zetasizer 1000)。
固形分は、重量測定した試料を100℃で加熱することによって測定した。恒量に達した時点で、試料の重量を再度測定し、それから固形分を算出した。
遊離NCO基の分析は、赤外線分光法によって実施した(2260cm−1でのバンド)。
【0060】
実施例B1):EP−A 1311571のB1(MPA/SN100中DMPブロックトN 3300)の再現
EP−A 1311571 の実験B1に従って、625gのDesmodur(登録商標)N 3300、104gの1−メトキシプロピルアセテートおよび209gのSolventnaphtha(登録商標)100(Shell)を50℃に加熱した。この溶液に、温度が65℃を超えないような速度で、314gの3,5−ジメチルピラゾールを添加した。次いで、イソシアネート基がもはや検出されなくなるまで、50℃で撹拌を継続した(約1時間)。溶液の粘度は、3910mPasであった(23℃、剪断速度186s−1)。
【0061】
実施例B2):(B1と類似)溶媒不含有DMPブロックトN 3300
625gのDesmodur(登録商標)N 3300を、撹拌装置内で50℃まで加熱した。次いで、温度が65℃を超えないような速度で、314gの3,5−ジメチルピラゾールを添加した。続いて、赤外線分光法によってイソシアネート基がもはや検出されなくなるまで、65℃で撹拌を継続した(約1時間)。混合物は急速に高粘性になった。室温まで冷却すると流動性は存在しなくなり、50℃まで加熱した後でさえ生成物を流出させることはできなかった。
このブロックトポリイソシアネートは、計量添加できないので、自己架橋性ポリウレタン分散体を調製するのに適していない。従って、単純に共溶媒を用いないだけでは、従来技術からの明らかな方法で対応する共溶媒不含有分散体を調製することは、不可能である。
【0062】
実施例B3):EP 1311571 B1の方法B1に従った、ブロッキング剤としてのジイソプロピルアミンの導入に関する実験
314gの3,5−ジメチルピラゾールに代えて324.3gのジイソプロピルアミンを添加した以外は、実施例1)に記載されている手順を繰り返した。
調製直後の溶液粘度は49300mPasであった(23℃、剪断速度186s−1)。数日間のうちに、容器内に結晶が生じ、流動性はもはや見られなくなった。
高粘性および結晶化傾向の結果として、EP−A 1311571のジメチルピラゾールブロックト系と同様、ジイソプロピルアミンブロックトイソシアネート基含有自己架橋性ポリウレタン分散体を調製することはできない。
【0063】
実施例D1):本発明ではない、EP−A 1311571のD7に相当する分散体の再調製
2リットル容の撹拌装置に、OH含有量3.3%および酸価約3mgKOH/gを有し、39.7%のネオペンチルグリコール、6.4%のトリメチロールプロパン、43.5%の無水テトラヒドロフタル酸および10.4%のアジピン酸からなるポリエステル234.8g、並びにOH含有量2.0%および酸価約1mgKOH/gを有し、30.4%のヘキサン−1,6−ジオール、16.9%のネオペンチルグリコールおよび52.7%のアジピン酸からなるポリエステル234.8gを導入し、このポリエステル混合物を、31.5gのジメチロールプロピオン酸、28.95gのトリメチロールプロパン、69.86gのN−メチルピロリドンおよび0.80gのオクタン酸錫と一緒に130℃まで加熱し、30分間撹拌して均一にした。次いで、バッチを90℃まで冷却し、強く撹拌しながら99.4gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)を添加した。その直後、混合物を130℃まで加熱し、赤外線分光法によってイソシアネート基がもはや検出されなくなるまで、その温度で維持した。
【0064】
続いて、混合物を70℃まで冷却し、実施例B1)からのブロックトポリイソシアネート溶液200.2gと混合した。30分後、20.9gのN,N−ジメチルエタノールアミンを添加し、混合物を70℃で10分間以上撹拌し、その後、665gの脱イオン水を添加した。
【0065】
分散体の特性は以下のようであった。
固形分 49.6%
pH 7.7
粘度mPas(23℃、剪断速度186s−1) 343mPas
粒度(レーザー相関分光法、LCS) 73nm
【0066】
実施例D2):本発明ではない、EP−A 2006/005878に記載されているようにブロッキング工程の触媒を用いてイン・サイチューでブロッキングされた、実施例D1)に基づいたDMPブロックト共溶媒不含有自己架橋性分散体
2リットル容の撹拌装置に、OH含有量3.3%および酸価約3mgKOH/gを有し、39.7%のネオペンチルグリコール、6.4%のトリメチロールプロパン、43.5%の無水テトラヒドロフタル酸および10.4%のアジピン酸からなるポリエステル234.8g、並びにOH含有量2.0%および酸価約1mgKOH/gを有し、30.4%のヘキサン−1,6−ジオール、16.9%のネオペンチルグリコールおよび52.7%のアジピン酸からなるポリエステル234.8gを導入し、このポリエステル混合物を、31.5gのジメチロールプロピオン酸および28.95gのトリメチロールプロパンと一緒に130℃まで加熱し、30分間撹拌して均一にした。次いで、バッチを90℃まで冷却し、強く撹拌しながら99.4gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)を添加した。その直後、混合物を130℃まで加熱し、赤外線分光法によってイソシアネート基がもはや検出されなくなるまで、その温度で維持した。
【0067】
続いて、混合物を70℃まで冷却し、その後、140gのアセトンを添加して40℃まで冷却した。40℃で50.5gの3,5−ジメチルピラゾールおよび0.8gのジオクタン酸錫を添加して20分間撹拌し、その後、102.4gのDesmodur(登録商標)N 3300を1時間にわたって計量添加した。このとき、温度は35〜40℃であった。赤外線分光法によってイソシアネート基がもはや検出されなくなるまで、撹拌を1時間継続した。続いて、20.9gのN,N−ジメチルエタノールアミンを添加し、40℃で10分間撹拌を継続し、その後、789gの脱イオン水を添加した。分散体は生成しなかった。代わりに、粗い粒子状の沈降物が直ちに沈積した。363gの水で更に希釈しても、分散体は生じなかった。
【0068】
実施例D3):本発明の、OH含有ポリウレタンの生成前に触媒を添加して調製した以外は実施例D2)と同様のDMPブロックト共溶媒不含有自己架橋性分散体
2リットル容の撹拌装置に、OH含有量3.3%および酸価約3mgKOH/gを有し、39.7%のネオペンチルグリコール、6.4%のトリメチロールプロパン、43.5%の無水テトラヒドロフタル酸および10.4%のアジピン酸からなるポリエステル234.8g、並びにOH含有量2.0%および酸価約1mgKOH/gを有し、30.4%のヘキサン−1,6−ジオール、16.9%のネオペンチルグリコールおよび52.7%のアジピン酸からなるポリエステル234.8gを導入し、このポリエステル混合物を、31.5gのジメチロールプロピオン酸、28.95gのトリメチロールプロパンおよび0.8gのジオクタン酸錫と一緒に130℃まで加熱し、30分間撹拌して均一にした。次いで、バッチを90℃まで冷却し、強く撹拌しながら99.4gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)を添加した。その直後、混合物を130℃まで加熱し、赤外線分光法によってイソシアネート基がもはや検出されなくなるまで、その温度で維持した。
【0069】
続いて、混合物を70℃まで冷却し、その後、140gのアセトンを添加して40℃まで冷却した。40℃で50.5gの3,5−ジメチルピラゾールを添加して20分間撹拌し、その後、102.4gのDesmodur(登録商標)N 3300を1時間にわたって計量添加した。このとき、温度は35〜40℃であった。赤外線分光法によってイソシアネート基がもはや検出されなくなるまで、撹拌を1時間継続した。続いて、20.9gのN,N−ジメチルエタノールアミンを添加し、40℃で10分間撹拌を継続し、その後、789gの脱イオン水を添加した。微粒子分散体が生成した。減圧下(120mbar)、40℃で約2時間にわたって蒸留することによって、該分散体からアセトンを除去した。
【0070】
分散体の特性は以下のようであった。
固形分 49.0%
pH 8.0
粘度mPas(23℃、剪断速度186s−1) 977mPas
粒度(レーザー相関分光法、LCS) 103nm
【0071】
実施例D4):本発明の、異なったブロッキング剤を用いた以外は実施例D3)と同様のブタノンオキシムブロックト共溶媒不含有自己架橋性分散体
2リットル容の撹拌装置に、OH含有量3.3%および酸価約3mgKOH/gを有し、39.7%のネオペンチルグリコール、6.4%のトリメチロールプロパン、43.5%の無水テトラヒドロフタル酸および10.4%のアジピン酸からなるポリエステル234.8g、並びにOH含有量2.0%および酸価約1mgKOH/gを有し、30.4%のヘキサン−1,6−ジオール、16.9%のネオペンチルグリコールおよび52.7%のアジピン酸からなるポリエステル234.8gを導入し、このポリエステル混合物を、31.5gのジメチロールプロピオン酸、28.95gのトリメチロールプロパンおよび0.8gのジオクタン酸錫と一緒に130℃まで加熱し、30分間撹拌して均一にした。次いで、バッチを90℃まで冷却し、強く撹拌しながら99.4gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)を添加した。その直後、混合物を130℃まで加熱し、赤外線分光法によってイソシアネート基がもはや検出されなくなるまで、その温度で維持した。
【0072】
続いて、混合物を70℃まで冷却し、その後、140gのアセトンを添加して40℃まで冷却した。40℃で45.7gのブタノンオキシムを添加して20分間撹拌し、その後、102.4gのDesmodur(登録商標)N 3300を1時間にわたって計量添加した。このとき、温度は35〜40℃であった。赤外線分光法によってイソシアネート基がもはや検出されなくなるまで、撹拌を1時間継続した。続いて、20.9gのN,N−ジメチルエタノールアミンを添加し、40℃で10分間撹拌を継続し、その後、975gの脱イオン水を添加した。微粒子分散体が生成した。減圧下(120mbar)、40℃で約2時間にわたって蒸留することによって、該分散体からアセトンを除去した。
【0073】
分散体の特性は以下のようであった。
固形分 43.9%
pH 8.1
粘度mPas(23℃、剪断速度186s−1) 387mPas
粒度(レーザー相関分光法、LCS) 111nm
【0074】
実施例D5):本発明の、異なったブロッキング剤を用いた以外は実施例D3)と同様のジイソプロピルアミンブロックト共溶媒不含有自己架橋性分散体
2リットル容の撹拌装置に、OH含有量3.3%および酸価約3mgKOH/gを有し、39.7%のネオペンチルグリコール、6.4%のトリメチロールプロパン、43.5%の無水テトラヒドロフタル酸および10.4%のアジピン酸からなるポリエステル234.8g、並びにOH含有量2.0%および酸価約1mgKOH/gを有し、30.4%のヘキサン−1,6−ジオール、16.9%のネオペンチルグリコールおよび52.7%のアジピン酸からなるポリエステル234.8gを導入し、このポリエステル混合物を、31.5gのジメチロールプロピオン酸、28.95gのトリメチロールプロパンおよび0.8gのジオクタン酸錫と一緒に130℃まで加熱し、30分間撹拌して均一にした。次いで、バッチを90℃まで冷却し、強く撹拌しながら99.4gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)を添加した。その直後、混合物を130℃まで加熱し、赤外線分光法によってイソシアネート基がもはや検出されなくなるまで、その温度で維持した。
【0075】
続いて、混合物を70℃まで冷却し、その後、140gのアセトンを添加して40℃まで冷却した。40℃で45.7gのブタノンオキシムを添加して20分間撹拌し、その後、102.4gのDesmodur(登録商標)N 3300を1時間にわたって計量添加した。このとき、温度は35〜40℃であった。赤外線分光法によってイソシアネート基がもはや検出されなくなるまで、撹拌を1時間継続した。続いて、20.9gのN,N−ジメチルエタノールアミンを添加し、40℃で10分間撹拌を継続し、その後、975gの脱イオン水を添加した。微粒子分散体が生成した。減圧下(120mbar)、40℃で約2時間にわたって蒸留することによって、該分散体からアセトンを除去した。
【0076】
分散体の特性は以下のようであった。
固形分 48.9%
pH 8.2
粘度mPas(23℃、剪断速度186s−1) 1650mPas
粒度(レーザー相関分光法、LCS) 113nm
【0077】
本発明の分散体の性能特性は、表1から明らかである。
以下の組成を有するクリヤコート剤を調製した。クリヤコート剤からフィルムを製造し、フィルムを室温で10分間乾燥し、次いで、140℃または160℃で30分間焼付けた。得られたフィルムを、それらの性能について評価した。
DIN 53157に従って、ケーニッヒ法により振子硬度を測定した。
以下の溶剤各々に、この順で1分間暴露した後、溶剤堅牢度を評価した:キシレン/メトキシプロピルアセテート/酢酸エチル/アセトン。評価:0(非常に良い)〜5(悪い)
【0078】
【表1】

【0079】
本発明の方法によって調製された分散体は、フィルム形成に関して望ましい必要条件を示す。硬化フィルムの溶剤堅牢度および振子硬度の数値は十分である。D1からの溶媒含有比較例と比較すると、本発明の分散体には欠点が存在しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
I.a1)ポリイソシアネートと、
a2)少なくとも1つのイソシアネート反応性基を含有し、1以上の平均ヒドロキシル官能価を有するアニオン性親水化剤と
a3)1超の平均ヒドロキシル官能価を有する少なくとも1種のポリオール成分
との混合物を反応させる工程(成分a2)と成分a3)との混合物または成分a1)のいずれかは、少なくとも1種の触媒k)を含んでなる。)、
II.工程Iからヒドロキシル官能性かつNCO不含有のポリウレタンを得る工程、
III.次いで、該ポリウレタンを
a4)イソシアネート基のための反応性ブロッキング剤
と混合する工程、
IV.続いて、工程IIIからの混合物を
a5)a1)の群から選択される、a1)と同じまたは異なった1種以上のポリイソシアネート
と反応させる工程、
V.その後、工程IVからヒドロキシル官能性NCO不含有ポリウレタンとブロックトポリイソシアネートとの物理的混合物を得る工程、
VI.続いて、ヒドロキシル官能性ポリウレタンの酸基を
a6)中和剤
の添加により、完全または部分的脱プロトン化に付す工程、
VII.工程VI)から得たポリウレタンを水に分散させる工程、
または工程VIの前に工程VIIを実施する工程
を含む、自己架橋性ポリウレタン水性分散体の製造方法。
【請求項2】
工程VIIの前に工程VIを実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程VIの前に工程VIIを実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程IIIで使用するブロッキング剤が、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミンおよび3,5−ジメチルピラゾールからなる群から選択される化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物からなる群から選択される溶媒または溶媒混合物を、工程IIからのポリウレタンに基づいて30重量%までの量で、工程IIまたは工程IIIの後に使用し、工程VIIの後に蒸留によって除去する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法によって得られた自己架橋性ポリウレタン水性分散体。
【請求項7】
被覆組成物を調製するための請求項6に記載の自己架橋性ポリウレタン水性分散体の使用。
【請求項8】
請求項6に記載の自己架橋性ポリウレタン水性分散体を含んでなる被覆組成物。
【請求項9】
インキ、塗料および接着剤からなる群から選択される、請求項8に記載の被覆組成物。
【請求項10】
請求項8および/または9に記載の被覆組成物を用いた、基材の被覆方法。
【請求項11】
自動車車体または自動車車体部品を請求項8および/または9に記載の被覆組成物で被覆する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項8および9のいずれかに記載の被覆組成物を含んでなる被膜を有する基材。
【請求項13】
完成した自動車車体または自動車車体部品である、請求項12に記載の基材。

【公表番号】特表2010−513610(P2010−513610A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541815(P2009−541815)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010538
【国際公開番号】WO2008/074398
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】