説明

共焦点顕微鏡システム

【課題】スミアノイズ等の露光期間以外の期間における撮像装置への光像入射に起因するノイズ、及びバンディングノイズの両方を解消し、高品位な画像の取得を可能とする共焦点顕微鏡システムを提供する。
【解決手段】マスクパターン部材5を有する光走査手段の走査周期を基準とし、撮像装置11の露光動作と、撮像装置1へ入射する光量を同期して制御することで、露光時間を試料走査に要する最小時間の整数倍とし、露光期間以外の撮像装置への光像入射を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のパターンが形成されたマスクパターン部材を有する光走査手段を用い、照明手段からの照明光を試料上に走査することで、上記試料の共焦点像を観察可能に構成された共焦点顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
共焦点顕微鏡は、共焦点光学系を用いることにより、試料の微細構造を、像面上及び光軸方向に優れた分解能で、観察・測定するために用いられる顕微鏡である。
【0003】
共焦点顕微鏡は、一般にシングルビーム走査型とマルチビーム走査型の2つが知られている。シングルビーム走査型の共焦点顕微鏡は、一本の照明光を二次元的に走査する必要があるため、一般に像形成速度が遅いという欠点がある。これに対し、マルチビーム走査型の共焦点顕微鏡は、複数の照明光を同時に走査するため、一般に像形成速度が速いという優れた特徴を持つ。マルチビーム走査型としては、所定のパターンが形成されたマスクパターン部材が移動、或いは回転するマスクパターン部材走査型と、固定されたマスクパターン部材とガルバノスキャナ等の光変向手段とを用いる光変向走査型が知られている。マスクパターン部材走査型としては、複数のピンホールを所定の位置に配置した回転円盤を用いるピンホール円盤型と、スリットを所定の位置に配置した回転円盤を用いるスリット円盤型が知られている。このうち、ピンホール円盤型としては、ピンホールを円盤の内周から外周へ螺旋状に配置したニポウ円盤型が知られている。光変向走査型としては、複数のピンホール又はスリットを所定の位置に配置したマスクパターン部材を通過した照明光を、ガルバノスキャナで変向することで試料上を走査し、更に、試料からの戻り光を再びガルバノスキャナで変向し画像センサ上を走査することで、画像センサ上に試料の共焦点像を結像する方式が知られている。
【0004】
マルチビーム走査型の共焦点顕微鏡は、所定のパターンを通過した照明光を、周期的に試料上に走査することで、試料の共焦点像を得るようにしたものである。このため、マルチビーム走査型の共焦点顕微鏡と撮像装置とを組み合わせた共焦点顕微鏡システムにおいては、走査周期と撮像装置の露光時間とを好適な関係にしないと、走査ムラが生じ、得られる共焦点像に輝度ムラを伴うバンディングノイズが発生するという問題がある。好適な関係とは、露光時間が、試料を照明光が均一に走査する最小時間の整数倍になっていることを意味する。バンディングノイズは、像の質感を劣化させるのみならず、定量的な測定、又は解析等を行う際に誤差要因となる。
【0005】
このような問題を解決する技術として、例えば、特許文献1に示されたニポウ円盤型光走査装置がある。これは、ニポウ円盤の走査トラックの始点に対応した走査始点検出用ピンホールと共に、走査始点検出ピンホールの透過光を光電変換し、撮像装置用のトリガ信号を生成する手段を備え、前記トリガ信号に同期して撮像装置を制御することで、走査周期と撮像周期との同期を好適に実現するものである。
【0006】
又、特許文献2に示された共焦点顕微鏡のモータ制御装置においては、CCDカメラより出力されるNTSC信号より得られる垂直同期信号を逓倍した信号に対応した速度でモータを駆動することで、走査周期と撮像周期との同期を好適に実現するものである。
【0007】
又、特許文献3に示された共焦点顕微鏡においては、垂直同期信号の位相と、回転円盤の回転位相とが同期するように、回転円盤の回転状態を制御することで、円盤の偏心やモータ軸の摩擦変動により円盤に回転ムラが生じた場合でも、走査周期と撮像周期との同期を好適に実現するものである。
【0008】
又、特許文献4に示された共焦点顕微鏡においては、撮像手段の垂直同期信号と、回転円盤の走査周期とに同期して、照明光の光量を制御する制御手段を備えることで、走査周期と実効露光期間(画像センサの露光ステップ期間で、且つ、光像が入射されている期間)との同期を好適に実現するものであり、又、光量ダイナミックレンジを容易に変更することを実現するものである。
【0009】
又、特許文献5に示された共焦点像計測システムにおいては、回転円盤の走査周期と撮像素子として用いるフレーム転送型CCD画像センサの垂直転送時間に基づいて、撮像装置の撮像周期を設定することで、走査周期と撮像周期との同期を好適に実現するものである。
【0010】
又、特許文献6に示された共焦点顕微鏡においては、回転円盤の走査周期に同期するように撮像装置の露光期間を制御することで、走査周期と露光時間との同期を好適に実現するものであり、又、露光動作と読み出し動作を同時に行うことで、画像取得を効率的に行うことを実現するものである。但し、特許文献6記載の最良の実施形態における撮像方法においては、フレーム転送型CCD画像センサの垂直転送に要する時間を、露光期間、及び読み出し期間に比べ十分に短いものと仮定している。しかし、垂直転送には一定の時間を要するので、実際には前記仮定が成り立たない条件での撮影も十分に考えられる。従って、特許文献6記載の撮像方法においては、厳密には、走査周期と露光時間との同期を好適に実現することができず、バンディングノイズを生じるという問題があった。
【0011】
マルチビーム走査型の共焦点顕微鏡システムにおいては、一般に撮像装置として二次元画像センサが用いられる。二次元画像センサとしては、一般にCCD画像センサやCMOS画像センサ等が用いられる。CCD画像センサとしては、一般にフレーム転送型CCD画像センサ、フルフレーム転送型CCD画像センサ、インターライン転送型CCD画像センサ等が知られている。
【0012】
図10は、フレーム転送型CCD画像センサの構成の一例を示す模式図である。図10に示すフレーム転送型CCD画像センサは、複数の垂直シフトレジスタからなる撮像部31、及び蓄積部32と、水平シフトレジスタ33と、電荷電圧変換回路34とを備える。垂直シフトレジスタ、及び水平シフトレジスタはCCD素子からなっており、電荷転送機能を有する。又、撮像部31の垂直シフトレジスタにおいては、電荷転送機能に加え、入射光の光電変換機能を有する。このような構成とすることにより、撮像部に占める光電変換領域の面積の割合を100%とすることができ、優れた光電変換効率を実現できる。又、露光終了後、撮像部の電荷を蓄積部へ垂直転送することで、蓄積部からの電荷読み出しと同時に、撮像部において露光を行うことも可能であり、画像取得をより効率的に行うことができる。又、水平シフトレジスタ部は、電子増倍(Electron Multiplication)機能を持つ構成とすることもできる。水平シフトレジスタ部に電子増倍機能を備えた構成とすることで、水平転送中に所定の倍率で電荷を増幅し、更に優れたS/Nを実現することが可能となる。
【0013】
フレーム転送型CCD画像センサにおける撮像動作は、露光ステップ、及び垂直転送ステップ、及び水平転送ステップの3ステップを経て行われる。まず、露光ステップにおいては、撮像部31に光像が入射され、撮像部31の各画素を構成するCCD素子において、入射光の光強度に応じて発生する電荷が蓄積される。続く垂直転送ステップにおいては、撮像部31から蓄積部32へと、垂直シフトレジスタ上を電荷が転送される。続く水平転送ステップにおいては、電荷が、蓄積部32から水平シフトレジスタ33を通じて電荷電圧変換回路34へと転送され、電荷電圧変換回路34を通じて、画像情報の出力が行われる。
【0014】
フレーム転送型CCD画像センサでは、撮像動作における垂直転送ステップ期間に、撮像部に光像が入射されると、出力される画像情報にスミアノイズと呼ばれる縦縞状のノイズを生じることが知られている。スミアノイズについては、例えば特許文献7において言及されている。スミアノイズが発生する原因は、垂直転送ステップ期間に、撮像部31に入射された光像による光電変換で発生した電荷が、露光ステップ期間に発生した電荷に混入するためである。フレーム転送型CCD画像センサにおいて、スミアノイズを低減する方法としては、垂直転送ステップ期間に、撮像部31への光像入射を抑制する方法がある。
【0015】
図11は、フルフレーム転送型CCD画像センサの構成の一例を示す模式図である。図11に示すフルフレーム転送型CCD画像センサは、複数の垂直シフトレジスタからなる撮像部35と、水平シフトレジスタ36と、電荷電圧変換回路37とを備える。垂直シフトレジスタ、及び水平シフトレジスタはCCD素子からなっており、電荷転送機能を有する。又、撮像部32の垂直シフトレジスタにおいては、電荷転送機能に加え、入射光の光電変換機能を有する。
【0016】
フルフレーム転送型CCD画像センサにおける撮像動作は、露光ステップ、及び転送ステップの2ステップを経て行われる。まず、露光ステップにおいては、撮像部35に光像が入射され、撮像部35の各画素を構成するCCD素子において、入射光の光強度に応じて発生する電荷が蓄積される。続く転送ステップにおいては、電荷が、撮像部から水平シフトレジスタ36を通じて電荷電圧変換回路37へと転送され、電荷電圧変換回路37を通じて、画像情報の出力が行われる。
【0017】
フルフレーム転送型CCD画像センサでは、撮像動作における転送ステップ期間に、撮像部35に光像が入射されると、出力される画像情報にスミアノイズを生じることが知られている。スミアノイズが発生する原因は、転送ステップ期間に、撮像部35に入射された光像による光電変換で発生した電荷が、露光ステップ期間に発生した電荷に混入するためである。フルフレーム転送型CCD画像センサにおいて、スミアノイズを低減する方法としては、転送ステップ期間に、撮像部35への光像入射を抑制する方法がある。
【0018】
図12は、インターライン転送型CCD画像センサの構成の一例を示す模式図である。図12に示すインターライン転送型CCD画像センサは、複数のフォトダイオード38と、複数の垂直シフトレジスタ39とからなる撮像部40と、水平シフトレジスタ41と、電荷電圧変換回路42とを備える。インターライン転送型CCD画像センサの構成の詳細については、例えば特許文献8に記載されている。前記フォトダイオード38は入射光の光電変換機能を有する。垂直シフトレジスタ39、及び水平シフトレジスタ41はCCD素子からなっており、電荷転送機能を有する。又、垂直シフトレジスタ39は光電変換による電荷蓄積を防止するため、アルミ遮光膜等でマスクされた構成となっている。
【0019】
インターライン転送型CCD画像センサにおける撮像動作は、露光ステップ、及びフォトダイオード38から垂直シフトレジスタ39への電荷移動ステップ、及び転送ステップの3ステップを経て行われる。まず、露光ステップにおいては、撮像部40に光像が入射され、撮像部の各画素を構成するフォトダイオード38において、入射光の光強度に応じて発生する電荷が蓄積される。続く、フォトダイオード38から垂直シフトレジスタ39への電荷移動ステップにおいては、フォトダイオード38に蓄積された電荷を、隣接する垂直シフトレジスタ上のCCD素子へ移動する。続く転送ステップにおいては、電荷が、垂直シフトレジスタ39から水平シフトレジスタ41を通じて電荷電圧変換回路42へ転送され、電荷電圧変換回路42を通じて、画像情報の出力が行われる。
【0020】
インターライン転送型CCD画像センサでは、撮像動作における転送ステップ期間に、撮像部40に光像が入射されると、スミアノイズを生じる場合がある。但し、インターライン転送型CCD画像センサでは、垂直シフトレジスタ部39がアルミ遮光膜等でマスクされているため、フレーム転送型CCD画像センサやフルフレーム転送型CCD画像センサに比べ、スミアノイズの発生量は少ない。しかし、撮像部40への入射光が、遮光膜を透過するほどの光強度である場合には、インターライン転送型CCD画像センサにおいても、スミアノイズが発生する。インターライン転送型CCD画像センサにおいて、スミアノイズを低減する方法としては、転送ステップ期間に、撮像部37への光像入射を抑制する方法がある。
【0021】
又、CCD画像センサに限らず、他の撮像素子を用いた画像センサにおいても、撮像動作における露光ステップ以外の期間に、撮像部に光像を入射した場合に、出力される画像情報に様々な種類のノイズを伴う例があることが知られている。例えば、CMOS画像センサでは、露光終了後、各画素の電荷を所定の順序で読み出すため、各画素の読み出しタイミングに差が生じ、読み出し順序に対応した輝度ムラを伴うパターンノイズを生じる。
【特許文献1】特許第3019754号公報
【特許文献2】特許第3319567号公報
【特許文献3】特許第3670839号公報
【特許文献4】特開2003−43363号公報
【特許文献5】特開2006−145634号公報
【特許文献6】特開2006−227315号公報
【特許文献7】特許第2517258号公報
【特許文献8】特許第2506697号公報
【特許文献9】特開2008−129172号公報
【特許文献10】特開2005−338136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
マルチビーム走査型の共焦点顕微鏡システムにおいて、高品位の画像を取得するためには、走査周期と露光時間とのミスマッチに起因するバンディングノイズと共に、露光期間以外の撮像部への光像入射に起因するノイズ(スミアノイズを含む)を低減することが必要となる。しかし、従来のマルチビーム走査型の共焦点顕微鏡システムにおいては、バンディングノイズを低減することしかできず、スミアノイズや、露光期間以外の撮像部への光像入射に起因するノイズを低減することはできないという問題があった。この問題により、従来の共焦点顕微鏡システムでは、スミアノイズや、露光期間以外の撮像部への光像入射に起因するノイズによる画質劣化を伴い、高品位の画像の取得が不可能であった。
【0023】
このような問題に対する対策方法としては、例えば、これらのノイズが発生する期間に、撮像部へ入射する光像の光量を抑制する手法、或いはこれらのノイズが発生する期間に、照明光の光量を抑制する手法が考えられる。しかし、特許文献3、及び5、及び6に開示される共焦点顕微鏡の構成は、撮像部への光像入射を抑制する手段、或いは照明光の光量を調節する抑制を備えておらず、前記問題点を解消する構成を実施したものではない。
【0024】
又、特許文献4に開示される共焦点顕微鏡の構成は、照明光の光量を調節する手段を備えるが、これは、走査周期と実効露光期間(画像センサの露光ステップ期間で、且つ光像が入射されている期間)との同期を好適に実現し、又、光量ダイナミックレンジを容易に変更することを目的とした構成である。従って、前記問題点の解消を目的とした構成ではなく、又、前記問題点を解消する効果を持つものではない。実際、特許文献4記載の第1、及び第2の実施の形態においては、CCD画像センサの露光動作と転送動作とが同時に行われ、この期間に光源が点灯状態となることから、転送動作中に光像が入射されることになり、スミアノイズを生じるという問題があった。又、円盤の偏心やモータ軸の摩擦変動等により、円盤に回転ムラが発生すると、その情報をどこにもフィードバックすることができないため、光源の消灯タイミングがCCD画像センサの露光終了タイミングを超過してしまい、バンディングノイズおよびスミアノイズの両方を生じてしまうという問題があった。
【0025】
本発明の目的は、画像センサの露光期間以外の期間に、画像センサ撮像部へ光像が入射することに起因するノイズ(スミアノイズを含む)、及び走査周期と露光時間とのミスマッチに起因するバンディングノイズの両方を解消し、高品位な画像の取得を可能とする、マルチビーム走査型の共焦点顕微鏡システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記目的を達成するために、請求項1記載の共焦点顕微鏡システムは、所定のパターンが形成されたマスクパターン部材を有する光走査手段を用い、照明手段からの照明光を試料上に走査することで、前記試料の共焦点像を観察可能に構成された共焦点顕微鏡システムであって、前記共焦点像を撮像する撮像手段と、前記光走査手段の走査周期を検出し、前記走査周期に対応する走査信号を出力する走査信号供給手段と、前記走査信号に同期して、撮像制御信号、及び光量制御信号を生成出力する同期制御手段とを備え、前記撮像制御信号により前記撮像手段の撮像動作を制御し、且つ、前記光量制御信号により前記撮像手段への入射光量を制御することを特徴としている。
【0027】
請求項2記載の共焦点顕微鏡システムは、請求項1記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、前記照明光の光強度を調節する照明光調節手段を備え、前記光量制御信号は、前記照明光調節手段を制御することを特徴としている。
【0028】
請求項3記載の共焦点顕微鏡システムは、請求項1記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、前記試料からの戻り光の光強度を調節する戻り光調節手段を備え、前記光量制御信号は、前記戻り光調節手段を制御することを特徴としている。
【0029】
請求項4記載の共焦点顕微鏡システムは、請求項1乃至3の何れか1項記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、前記光走査手段は、前記マスクパターン部材を移動、或いは回転させることにより、前記パターンを通過した前記照明光を走査することを特徴としている。
【0030】
請求項5記載の共焦点顕微鏡システムは、請求項1乃至3の何れか1項記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、前記光走査手段は、固定された前記マスクパターン部材と、光変向手段とを備え、前記パターンを通過した前記照明光を、前記光変向手段により走査することを特徴としている。
【0031】
請求項6記載の共焦点顕微鏡システムは、請求項1乃至5の何れか1項記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、前記撮像手段は、フレーム転送型CCD画像センサを用いた撮像手段であり、前記フレーム転送型CCD画像センサの少なくとも垂直転送ステップ期間においては、前記撮像手段への入射光量を抑制する前記光量制御信号を、前記同期制御手段において生成出力することを特徴としている。
【0032】
請求項7記載の共焦点顕微鏡システムは、請求項1乃至5の何れか1項記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、前記撮像手段は、フルフレーム転送型CCD画像センサを用いた撮像手段であり、前記フルフレーム転送型CCD画像センサの少なくとも転送ステップ期間においては、前記撮像手段への入射光量を抑制する前記光量制御信号を、前記同期制御手段において生成出力することを特徴としている。
【0033】
請求項8記載の共焦点顕微鏡システムは、請求項1乃至5の何れか1項記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、前記撮像手段は、インターライン転送型CCD画像センサを用いた撮像手段であり、前記インターライン転送型CCD画像センサの少なくとも転送ステップ期間においては、前記撮像手段への入射光量を抑制する前記光量制御信号を、前記同期制御手段において生成出力することを特徴としている。
【0034】
請求項9記載の共焦点顕微鏡システムは、請求項1乃至5の何れか1項記載の共焦点顕微鏡システムにおいて、前記撮像手段は、二次元画像センサを用いた撮像手段であり、前記二次元画像センサの露光ステップ期間以外の期間においては、前記撮像手段への入射光量を抑制する前記光量制御信号を、前記同期制御手段において生成出力することを特徴としている。
【発明の効果】
【0035】
本発明の共焦点顕微鏡システムによれば、画像センサの露光期間以外の期間に、画像センサ撮像部へ光像が入射することに起因するノイズ(スミアノイズを含む)、及び走査周期と露光時間とのミスマッチに起因するバンディングノイズの両方を解消した、高品位な画像の取得が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下では、図1〜図9を参照して、本発明に係る共焦点顕微鏡システムの実施形態について説明する。尚、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものとは必ずしも一致しない。
【実施例1】
【0037】
以下、本発明に係る共焦点顕微鏡システムの実施例1について、詳細に説明する。
【0038】
図1は、本実施形態に係る共焦点顕微鏡システムの概略構成を示す図である。又、図2は、本実施形態に係る光走査手段として用いられる、ニポウ円盤5に形成されたマスクパターンの構成を示す模式図である。
【0039】
図1に示す共焦点顕微鏡システムは、共焦点光学系を用いることにより、試料9の共焦点像を撮像するものであり、照明手段として機能する光源装置1、照明光調節手段として機能する調光装置2、コリメートレンズ3、ハーフミラー4、ニポウ円盤5、モータ6、モータ制御装置7、対物レンズ8、結像レンズ10、撮像手段として機能する撮像装置11、走査信号供給手段として機能するフォトセンサ12、動機制御手段として機能する同期制御装置13、及びコンピュータ14を備える。
【0040】
光源装置1は、照明光を出射する固体レーザー光源1aを備える。但し、照明手段としては、上記構成に限るものではない。照明手段を実施する例としては、例えば、ガスレーザー、或いは半導体レーザー、或いは放電管、或いは発光ダイオードを光源として用いることができる。
【0041】
調光装置2は、音響光学変調器2aを備え、同期制御装置13からの光量制御信号13bに従って光源装置1から導入される照明光の光量を調節して、出射するものである。但し、照明光調節手段としては、上記構成に限るものではない。照明光調節手段を実施する例としては、電気的シャッタ装置、或いは機械式シャッタ装置を用いることができる。電気的シャッタ装置としては、例えば、液晶シャッタ装置がある。
【0042】
光走査手段として、ニポウ円盤5と、ニポウ円盤5を回転するためのモータ6と、モータ6の回転速度を所定の値に制御するモータ制御装置7とを備える。モータ制御装置7は、コンピュータ14からの回転速度指令信号14bを受信し、モータ6の回転速度を所定の値に制御する。回転速度の指令値は、毎分1500回転から毎分10000回転までの範囲を任意に指定することができるが、特にこの範囲に限るものではない。
【0043】
ニポウ円盤5は、ガラス基盤にクロムを蒸着し、所定のマスクパターンを形成することで作製される。図2に模式的に示された、ニポウ円盤5に形成されたマスクパターンの構成において、マスクパターンの内周部には、光を透過する多数のピンホールパターンを、8本の螺旋上に所定の配列で配置したピンホール部51が設けられている。但し、螺旋の本数はこれに限るものではなく、例えば1本でも良い。マスクパターンの外周部には、ピンホール部51の各螺旋配列の始点に対応する位置を基準とし、螺旋配列の数に等しいスリットパターンを形成したスリット部52が設けられている。
【0044】
但し、光走査手段としては、上記構成に限らず、所定のパターンを通過した光を周期的に試料上に走査するためのマスクパターン部材、及び走査手段を備えるものであれば良い。マスクパターン部材としては、例えば、ピンホールパターンやスリットパターンを所定の位置にマスク蒸着形成したガラス基板部材を用いることができる。又、ピンホールパターンが形成されたマスクパターン部材と共に、ピンホールに対応する位置にマイクロレンズを形成したマイクロレンズ部材を備えた構成を用いることができる。このマイクロレンズ部材とピンホールが形成されたマスクパターン部材とは、各マイクロレンズを通過した照明光が集光するマイクロレンズの焦点位置に、対応するピンホールが位置するように構成される。又、走査手段としては、例えば、モータ、或いはガルバノスキャナを用いることができる。
【0045】
走査信号供給手段として機能するフォトセンサ12は、図示しない赤外線発光ダイオードと、図示しない赤外線フォトトランジスタと、図示しない走査信号生成回路とを備え、ニポウ円盤5のスリット部52を挟む位置に配置されている。フォトセンサ12は走査信号生成回路により生成された走査信号12aを出力する。但し、走査信号供給手段の実施方法としては、光走査手段の走査周期に対応する走査信号12aを出力するものであれば、構成、及び配置は上記に限るものではない。その他の実施方法としては、例えば、光走査手段の回転軸、或いはモータの回転軸にロータリー・エンコーダを取り付け、エンコーダ信号から走査信号に変換する方法、或いはホールセンサ等の磁気センサを備え、モータの回転子の回転角信号を出力可能なモータを用い、回転角信号から走査信号に変換する方法、或いはモータ駆動回路からモータ駆動周期信号を得て、モータ駆動周期信号から走査信号に変換する方法を用いることができる。
【0046】
撮像装置11は、フレーム転送型CCD画像センサを用いた撮像センサ11aと撮像制御部11bとを備え、撮像制御部11bは、同期制御装置13から入力される撮像制御信号13aに基づいて、撮像センサ11aの撮像動作を制御する。撮像制御部11bは、撮像制御信号13aがハイ・レベルの期間に露光を行う。即ち、撮像制御信号13aがハイ・レベルになると同時に露光を開始し、ロー・レベルになると同時に露光を終了する。露光終了後は、垂直転送動作、及び水平転送動作を順次行うよう、撮像センサ11aを制御する。撮像された画像情報は、コンピュータ14に送信され、図示しない記憶装置に記録、及び又は図示しないモニタ装置に表示される。
【0047】
同期制御装置13は、図示しないマイクロ・コントローラを備え、コンピュータ14からの同期動作制御信号14a、及びフォトセンサ12からの走査信号12aを入力信号とし、撮像制御信号13a、及び光量制御信号13bを出力する。撮像制御信号13aは撮像装置11に入力され、撮像装置11の撮像動作を制御する。又、光量制御信号13bは調光装置2に入力され、調光装置2からの出射光量を調節する。
【0048】
次に、上記のように構成された共焦点顕微鏡システムの動作について説明する。
【0049】
図3〜図4は、同期制御装置13の動作を説明するフローチャートである。また、図5は、走査信号12a、撮像制御信号13a、光量制御信号13b、フレーム転送型CCD画像センサ11aの露光動作、前記画像センサ11aの垂直転送動作、前記画像センサ11aの水平転送動作、調光装置2からの照明光出射光量を示すタイムチャートである。但し、図3〜図4のフローチャート、及び図5のタイムチャートにおいては、共焦点顕微鏡システムの主要動作である、撮像動作に係る部分のみを記し、その他の動作に係る部分を省略している。
【0050】
モータ制御装置7は、コンピュータ14から回転速度指令信号14bを受信すると、指定された回転速度でモータ6を回転駆動し、それに伴い、ニポウ円盤5も回転する。ニポウ円盤5の螺旋配列は1本の螺旋上のピンホール群により、試料を均一に走査することができる配列となっている。従って、ニポウ円盤5を1回転することにより、螺旋の本数(8本)に等しい回数の試料走査を行う。
【0051】
ニポウ円盤5の回転に伴い、フォトセンサ12から走査信号12aが出力される。ニポウ円盤5のスリット部52には、螺旋配列の数に等しいスリットパターンが形成されているため、走査信号12aの周期は、ニポウ円盤5の走査周期に一致する。
【0052】
同期制御装置13は、コンピュータ14から同期動作制御信号14aを受信すると(図3のステップS1;Yes)、同期動作制御信号24から走査回数パラメータを読み取って、内部変数を設定し、同期撮像動作を有効化する(ステップS2,S3)。
【0053】
同期制御装置13は同期撮像動作が有効化された直後の走査信号12aの立ち上がりを検出(ステップS11;No,ステップS12;Yes)すると、露光開始処理(ステップS13)を行う。露光開始処理においては、撮像制御信号13a、および光量制御信号13bを、同時にハイ・レベルとし、露光動作と照明光照射とを、同時に開始する(図4のステップS21,S22)。
【0054】
同期制御装置13は、走査信号12aの立ち上がりを検出するたびに、走査回数カウンタをインクリメント(ステップS14)し、カウント数が指定回数に到達するまで(ステップS15;Yes)、露光が継続される。
【0055】
同期制御装置13は、走査回数パラメータに示される回数の、走査信号12aの立ち上がりを検出した後(ステップS15;Yes)に、露光終了処理(ステップS16)を行う。露光終了処理においては、撮像制御信号13a、および光量制御信号13bを、同時にロー・レベルとし、露光動作と照明光照射とを、同時に終了する(図4のステップS31〜S34)。
【0056】
撮像装置11のフレーム転送型CCD画像センサ11aにおいては、露光動作終了直後に、垂直転送動作と水平転送動作を順次行う。これらの転送を行っている期間中に、次の露光動作を開始しないよう、同期制御装置13は、露光終了処理実行後、所定の時間の待機を行う(図4のステップS41)。待機時間が経過すると、直後の走査信号12aの立ち上がりを検出(ステップS11;No,ステップS12;Yes)し、再び、露光開始処理(ステップS13)を行う。
【0057】
以上の動作を繰り返すことにより、図5のタイムチャートに示す連続同期撮像動作を行う。
【0058】
このように本実施例においては、撮像装置11の露光ステップ期間のみ、照明光の照射を行うことで、フレーム転送型CCD画像センサ11aの垂直転送ステップ期間における、撮像部への光像入射を回避できるので、スミアノイズによる画質劣化の伴わない画像を取得することができる。
【0059】
また、本実施例においては、撮像装置11の露光期間は、走査信号12aの周期の整数倍となる。従って、露光期間が、照明光が試料9を均一に走査する最小時間の整数倍となるので、バンディングノイズによる画質劣化の伴わない画像を取得することができる。
【0060】
従って、本実施例は、バンディングノイズ、及びスミアノイズによる画質劣化の両方を解消した、高品位な画像の取得が可能であり、本発明の目的を達成するものである。
【0061】
また、本実施例は、調光装置2において、音響光学変調器2aを用いているという特徴を有し、これによりスミアノイズの発生を完全に防止する効果を実現する。一般に、フレーム転送型CCD画像センサにおいて、垂直転送ステップに要する時間は、0.1ミリ秒程度から数ミリ秒程度であり、この期間に、確実に光像入射を防止するためには、マイクロ秒オーダーで入射光量を調節する必要がある。一般に、音響光学変調器は数十ナノ秒オーダーの、非常に高速な応答特性を持つという特徴があり、本実施例においてスミアノイズを完全に防止するのに、十分な性能を有するものである。従って、本実施例はスミアノイズの発生を完全に防止する効果を実現する。
【0062】
また、共焦点顕微鏡を用いた観察・測定においては、照明光による試料9の意図しない変質が問題となることがある。例えば、試料として、蛍光蛋白質を発現させた生細胞、或いは固定細胞、或いは生体組織等を用い、照明光を照射して、試料から発せられる蛍光の共焦点像を取得する際、照明光により蛍光蛋白質が退色し、像の取得が困難になるという問題や、照明光の光毒性により、細胞が損傷を受けて死滅してしまうという問題がある。このような変質は、照明光の照射時間に依存するものであるから、この問題に対する対策方法としては、露光期間以外の不要な照明光照射を回避する方法がある。本実施例は、露光期間と等しい期間のみ照明光照射を行い、他の期間は照明光照射を行わないことで、照明光照射による試料9の変質を最低限に抑える効果を実現する。
【実施例2】
【0063】
以下、実施例2に係る共焦点顕微鏡システムの構成について説明する。図6は、本実施例に係る共焦点顕微鏡システムの概略構成を示す図である。尚、図1と同一部分には同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0064】
図6に示すように、本実施例の共焦点顕微鏡システムでは、照明光調節手段としての調光装置を使用せず、光源装置1の出力を直接制御することで、照明手段、及び照明光調節手段としての機能を、光源装置1において実現する。また、二次元画像センサを備える撮像装置11Aを使用する。
【0065】
光源装置1は、照明光を出射する固体レーザー光源1aを備える。但し、照明手段としては、上記構成に限るものではない。照明手段を実施する例としては、例えば、ガスレーザー、或いは半導体レーザー、或いは放電管、或いは発光ダイオードを光源として用いることができる。
【0066】
撮像装置11Aは、二次元画像センサを用いた撮像センサ11dと撮像制御部11eとを備え、撮像装置11Aに入力する撮像制御信号13aにより、撮像センサ11dの撮像動作を制御するものである。撮像制御部11eは、撮像制御信号13aがハイ・レベルの期間に露光を行い、ロー・レベルなると同時に露光を終了し、転送動作を開始するように、撮像センサ11dを制御するものである。但し、撮像手段としては、上記構成に限らず、撮像センサ、及び撮像制御部を備えるものであれば良い。撮像センサとしては、例えば、インターライン転送型CCD画像センサ、或いはフルフレーム転送型CCD画像センサ、或いはCMOS画像センサ等を用いることができる。
【0067】
同期制御装置13としては、実施例1と同様のものを備える。但し、同期制御装置13から出力される光量制御信号13bは光源装置1に入力され、光源装置1からの出射光量を調節する。
【0068】
図3〜図4は、同期制御装置13の動作を説明するフローチャートである。図7は、本実施例に係る走査信号12a、撮像制御信号13a、光量制御信号13b、二次元画像センサの露光動作、前記画像センサの転送動作、光源装置1からの照明光出射光量のタイムチャートである。図7のタイムチャートにおいては、共焦点顕微鏡システムの主要動作である、撮像動作に係る部分のみを記し、その他の動作に係る部分を省略している。
【0069】
撮像装置11Aの二次元画像センサ11dにおいては、露光動作終了直後に、転送動作を行う。転送を行っている期間中に、次の露光動作を開始しないよう、同期制御装置13は、露光終了処理実行後、所定の時間の待機を行う。待機時間が経過すると、直後の走査信号12aの立ち上がりを検出し、再び、露光開始処理を行う。
【0070】
本実施例の共焦点顕微鏡システムでは、光源装置1を直接制御することにより、撮像装置11Aの露光期間のみ、照明光照射を行うことで、二次元画像センサの転送ステップ期間における、撮像部への光像入射を回避する。このため、露光時以外の撮像部への光像入射に起因するノイズによる画質劣化の無い画像を取得することができる。
【0071】
また、本実施例においては、撮像装置11Aの露光期間は、走査信号の周期の整数倍となる。従って、露光期間が、照明光が試料9を均一に走査する最小時間の整数倍となるので、バンディングノイズによる画質劣化の伴わない画像を取得することができる。従って、本実施例は、バンディングノイズ、及びスミアノイズによる画質劣化の両方を解消した、高品位な画像の取得が可能であり、本発明の目的を達成するものである。
【0072】
また、本実施例においては、露光期間と等しい期間のみ照明光照射を行い、他の期間は照明光照射を行わないことで、照明光照射による試料の変質を最低限に抑える効果を実現する。
【0073】
また、本実施構成は、光源装置1において、光源の出力を制御して、照明光の光量を調節するので、照明光調節手段を必要としないことから、安価、且つ簡単な構成で、本発明の目的を達成するものである。
【実施例3】
【0074】
以下、実施例3に係る共焦点顕微鏡システムの構成について説明する。
【0075】
図8は、本実施例に係る共焦点顕微鏡システムの概略構成を示す図である。尚、図1と同一部分には同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0076】
光源装置1は、固体レーザー光源1aを備え、照明光を出射するものである。但し、照明手段としては、上記構成に限るものではない。照明手段を実施する例としては、例えば、ガスレーザー、或いは半導体レーザー、或いは放電管、或いは発光ダイオードを用いることができる。
【0077】
撮像装置11Bは、フレーム転送型CCD画像センサを用いた撮像センサ11fと撮像制御部11gとを備え、撮像装置11Bに入力する撮像制御信号13aにより、撮像センサ11fの撮像動作を制御するものである。
【0078】
又、本実施例では、戻り光を調節することで撮像装置11Bへの入射光量を制御する戻り光調節手段としての液晶シャッタ15を備え、光量制御信号13bに従って、試料9からの戻り光の光量を調節して、撮像装置11Bに導入するものである。但し、戻り光調節手段としては、上記構成に限るものではない。例えば、電気的シャッタ装置、或いは機械式シャッタ装置を用いることができる。電気的シャッタ装置としては、例えば、音響光学変調器がある。
【0079】
図9は、本実施例に係る走査信号12a、撮像制御信号13a、光量制御信号13b、フレーム転送型CCD画像センサの露光動作、前記画像センサの垂直転送動作、前記画像センサの水平転送動作、及び液晶シャッタ15の戻り光透過光量のタイムチャートである。図9のタイムチャートにおいては、共焦点顕微鏡システムの主要動作である、撮像動作に係る部分のみを記し、その他の動作に係る部分を省略している。
【0080】
同期制御装置13は、コンピュータ14から同期動作制御信号14aを受信すると、同期動作制御信号24から走査回数パラメータを読み取って、内部変数を設定し、同期撮像動作を有効化する。同期制御装置13は同期撮像動作が有効化された直後の、走査信号12aの立ち上がりを検出すると、露光開始処理を行う。露光開始処理においては、撮像制御信号13a、及び光量制御信号13bを、同時にハイ・レベルとし、露光動作を開始すると同時に、液晶シャッタ15の透過光量を最大とする。
【0081】
続いて、同期制御装置13は、走査回数パラメータに示される回数の、走査信号12aの立ち上がりを検出した後に、露光終了処理を行う。露光終了処理においては、撮像制御信号13a、及び光量制御信号13bを、同時にロー・レベルとし、露光動作を終了すると同時に、液晶シャッタ15の透過光量を0とする。
【0082】
このように本実施例においては、撮像装置11Bの露光期間のみ、撮像部への光像入射を行うことで、フレーム転送型CCD画像センサの垂直転送ステップ期間における、撮像部への光像入射を回避できるので、スミアノイズによる画質劣化の伴わない画像を取得することができる。
【0083】
また、本実施例においては、撮像装置11Bの露光期間は、走査信号の周期の整数倍となる。従って、露光期間が、照明光が試料9を均一に走査する最小時間の整数倍となるので、バンディングノイズによる画質劣化の伴わない画像を取得することができる。従って、本実施形態は、バンディングノイズ、及びスミアノイズによる画質劣化の両方を解消した、高品位な画像の取得が可能であり、本発明の目的を達成するものである。
【0084】
上記実施例1〜3においては、同期動作制御信号14aに示される走査回数パラメータにより、試料の走査回数を任意に指定できる。更に、回転速度指令信号14bにより、モータ6の回転速度を所定の範囲内で任意に指定でき、これにより、ニポウ円盤5の走査周期を任意に指定できる。以上の2つの作用により、上記実施例1〜3によれば、如何なる露光時間をも設定することが可能であり、試料9の種類、或いは状態に応じて、最も好適な条件で撮像を行うことができるという効果を実現する。また、照明光照射中の照明光強度を、光量制御信号13bにより任意に調節可能とすることで、更に好適な条件での撮像を行う効果を実現することも考え得る。
【0085】
また、上記実施例1〜3においては、仮に、ニポウ円盤5の偏心やモータ6の軸の摩擦変動等により、ニポウ円盤5に回転ムラが発生したとしても、ニポウ円盤5の走査周期に同期して、撮像動作と撮像部への光像入射が行われる。従って、回転ムラが発生したとしても、スミアノイズやバンディングノイズは生じないので、画像の劣化を最低限に抑える効果を実現する。
【0086】
また、上記実施例1〜3においては、ニポウ円盤5のスリット部52において、特許文献9に示される共焦点スキャナユニットのピンホール円盤のエンコーダパターンを用いることも可能である。このエンコーダパターンは、エンコーダパターンの1つの周方向の幅を、他のエンコーダパターンと異ならせたことを特徴とする。この場合、同期制御装置13において、走査信号12aから、走査周期と共に、ニポウ円盤の1回転に1箇所存在する回転基準点を示す回転周期情報を得ることが可能となる。ピンホール円盤を用いた共焦点顕微鏡システムにおいては、稀に、特許文献10において言及される、円盤の回転に同期した輝度変動が発生することがある。これは、ピンホールパターンの形成誤差や、ピンホール円盤の偏芯等により、ピンホール円盤上の位置により、照明光、及び戻り光の透過光量が異なるためである。従来の共焦点顕微鏡システムにおいては、同一の撮像条件で撮像された画像であっても、この問題により、画像毎に輝度が異なってしまうという問題があった。この問題は、画像の定量解析を行う際に、誤差要因となる。上記のスリット部52、及び同期制御装置13の構成によれば、全ての露光動作の開始タイミング、及び終了タイミングを、ニポウ円盤55前記回転基準点を基準として設定することを実現することが可能となる。これによれば、全ての露光を、回転する円盤の一定位置で開始し、また、一定位置で終了することが可能となる。したがって、上記輝度変動による誤差要因を、最低限に抑制した状態での撮像、及び解析が可能となる。
【0087】
また、上記実施例1〜3においては、対物レンズ8の焦点位置の光軸方向の移動を実現する、図示しない対物レンズ移動手段、及び又は、試料9を光軸方向、及び又は光軸に垂直な面方向への移動を実現する、図示しない試料移動手段を備える構成が考え得る。この構成においては、同期制御装置13により、走査信号12aに同期して、前記対物レンズ移動手段、及び又は前記試料移動手段を駆動する。この場合、撮像装置11,11A,11Bにおいて露光動作を行っていない期間に、前記対物レンズ移動手段、及び又は前記試料移動手段を駆動し、対物レンズ8の焦点位置、及び又は試料9の撮像位置を移動することが好ましい。
【0088】
また、上記実施例1〜3においては、複数の光学フィルタ、及び光路上に配置される光学フィルタを切り替える光学フィルタ切り替え手段を備える構成が考え得る。光学フィルタ切り替え手段としては、例えば、前記光学フィルタを円盤上に複数配置することが可能な光学フィルタ円盤、及び前記光学フィルタ円盤を回転駆動するためのモータ、及び前記モータを駆動するモータ駆動回路を備えるフィルタホイール装置がある。この構成においては、同期制御装置13により、走査信号12aに同期して、前記光学フィルタ切り替え手段を駆動する。この場合、撮像装置11,11A,11Bにおいて露光動作を行っていない期間に、前記光学フィルタ切り替え手段を駆動し、前記光学フィルタの切り替えを行うことが好ましい。
【0089】
以上説明したように、本発明の共焦点顕微鏡システムによれば、光走査手段の走査周期を基準に、撮像動作、及び撮像装置への入射光量を制御するので、バンディングノイズ、及び露光期間以外の期間における撮像装置への光像入射に起因するノイズ(スミアノイズを含む)の両方を解消し、高品位な画像を取得できる。
【0090】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、所定のマスクパターン部材を有し、前記マスクパターン部材を介して照明光を試料上に走査し、前記試料の共焦点像を取得可能に構成された共焦点顕微鏡システムに対し、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例1の共焦点顕微鏡システムの概略構成を示す図。
【図2】ニポウ円盤に形成されたマスクパターンの構成の一例を示す模式図。
【図3】同期制御装置の動作を説明するフローチャート。
【図4】同期制御装置の動作を説明するフローチャート。
【図5】実施例1の動作タイミングを示すタイムチャート。
【図6】実施例2の共焦点顕微鏡システムの概略構成を示す図。
【図7】実施例2の動作タイミングを示すタイムチャート。
【図8】実施例3の共焦点顕微鏡システムの概略構成を示す図。
【図9】実施例3の動作タイミングを示すタイムチャート。
【図10】フレーム転送型CCD画像センサの構成の一例を示す模式図。
【図11】フルフレーム転送型CCD画像センサの構成の一例を示す模式図。
【図12】インターライン転送型CCD画像センサの構成の一例を示す模式図。
【符号の説明】
【0092】
1 光源装置(照明手段)
2 調光装置(光量制御手段)
3 コリメートレンズ
4 ハーフミラー
5 ニポウ円盤(光走査手段)
6 モータ
7 モータ制御装置
8 対物レンズ
9 試料
10 結像レンズ
11 撮像装置(撮像手段)
12 フォトセンサ(走査信号供給手段)
13 同期制御装置(同期制御手段)
14 コンピュータ
15 液晶シャッタ(戻り光調節手段)
31 フレーム転送型CCD画像センサ 撮像部
32 フレーム転送型CCD画像センサ 蓄積部
33 フレーム転送型CCD画像センサ 水平転送レジスタ
34 フレーム転送型CCD画像センサ 電荷電圧変換回路
35 フルフレーム転送型CCD画像センサ 撮像部
36 フルフレーム転送型CCD画像センサ 水平転送レジスタ
37 フルフレーム転送型CCD画像センサ 電荷電圧変換回路
38 インターライン転送型CCD画像センサ フォトダイオード
38 インターライン転送型CCD画像センサ 垂直転送レジスタ
38 インターライン転送型CCD画像センサ 撮像部
38 インターライン転送型CCD画像センサ 水平転送レジスタ
38 インターライン転送型CCD画像センサ 電荷電圧変換回路
51 ニポウ円盤 ピンホール部
52 ニポウ円盤 スリット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンが形成されたマスクパターン部材を有する光走査手段を用い、照明手段からの照明光を試料上に走査することで、前記試料の共焦点像を観察可能に構成された共焦点顕微鏡システムであって、
前記共焦点像を撮像する撮像手段と、
前記光走査手段の走査周期を検出し、前記走査周期に対応する走査信号を出力する走査信号供給手段と、
前記走査信号に同期して、撮像制御信号、及び光量制御信号を生成出力する同期制御手段とを備え、
前記撮像制御信号により前記撮像手段の撮像動作を制御し、且つ、前記光量制御信号により前記撮像手段への入射光量を制御することを特徴とする共焦点顕微鏡システム。
【請求項2】
前記照明光の光強度を調節する照明光調節手段を備え、
前記光量制御信号は、前記照明光調節手段を制御することを特徴とする請求項1記載の共焦点顕微鏡システム。
【請求項3】
前記試料からの戻り光の光強度を調節する戻り光調節手段を備え、
前記光量制御信号は、前記戻り光調節手段を制御することを特徴とする請求項1記載の共焦点顕微鏡システム。
【請求項4】
前記光走査手段は、前記マスクパターン部材を移動、或いは回転させることにより、前記パターンを通過した前記照明光を走査することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の共焦点顕微鏡システム。
【請求項5】
前記光走査手段は、固定された前記マスクパターン部材と、光変向手段とを備え、
前記パターンを通過した前記照明光を、前記光変向手段により走査することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の共焦点顕微鏡システム。
【請求項6】
前記撮像手段は、フレーム転送型CCD画像センサを用いた撮像手段であり、
前記フレーム転送型CCD画像センサの少なくとも垂直転送ステップ期間においては、前記撮像手段への入射光量を抑制する前記光量制御信号を、前記同期制御手段において生成出力することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の共焦点顕微鏡システム。
【請求項7】
前記撮像手段は、フルフレーム転送型CCD画像センサを用いた撮像手段であり、
前記フルフレーム転送型CCD画像センサの少なくとも転送ステップ期間においては、前記撮像手段への入射光量を抑制する前記光量制御信号を、前記同期制御手段において生成出力することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の共焦点顕微鏡システム。
【請求項8】
前記撮像手段は、インターライン転送型CCD画像センサを用いた撮像手段であり、
前記インターライン転送型CCD画像センサの少なくとも転送ステップ期間においては、前記撮像手段への入射光量を抑制する前記光量制御信号を、前記同期制御手段において生成出力することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の共焦点顕微鏡システム。
【請求項9】
前記撮像手段は、二次元画像センサを用いた撮像手段であり、
前記二次元画像センサの露光ステップ期間以外の期間においては、前記撮像手段への入射光量を抑制する前記光量制御信号を、前記同期制御手段において生成出力することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の共焦点顕微鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−39438(P2010−39438A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205718(P2008−205718)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】