説明

共鳴コイル

【課題】所望とする共振点の調整を簡便に行うことが可能な共鳴コイルを提供する。
【解決手段】本発明の共鳴コイル100は、他のコイルと電磁場を介して共鳴することにより前記コイルへ送電するか、又は前記コイルから受電する共鳴コイル100であって、第1開放端部141と第2開放端部142を有するコイル部110と、前記第1の開放端部と前記第2開放端部142との間に設けられた第1タップ151と、前記第2開放端部142と前記第1タップ151との間に設けられた第2タップ152と、を有し、前記第1タップ151の位置と、前記第2タップ152の位置とを変更可能に構成する共に、前記第1タップ151の位置と、前記第2タップ152の位置とは、前記共鳴コイル100の共振点が、所定の値となるように設定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送に用いられる共鳴コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源コードなどを用いることなく、ワイヤレスで電力(電気エネルギー)を伝送する技術の開発が盛んとなっている。ワイヤレスで電力を伝送する方式の中でも、特に注目されている技術として、磁気共鳴方式と呼ばれるものがある。この磁気共鳴方式は2007年にマサチューセッツ工科大学の研究グループが提案したものであり、これに関連する技術は、例えば、特許文献1(特表2009−501510号公報)に開示されている。
【0003】
磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムは、送電用共鳴コイルの共振周波数と、受電用共鳴コイルの共振周波数とを同一とすることで、送電用共鳴コイルから受電用共鳴コイルに対し、効率的にエネルギー伝達を行うものであり、電力伝送距離を数十cm〜数mとすることが可能であることが大きな特徴の一つである。
【0004】
図10は従来のワイヤレス電力伝送システムの構成例を示す図である。図10に示す電力伝送システムの概略について説明する。電源10からの電源を得て、インバーターなどからなる電力供給部20において伝送用の交流波形が作られ、これがインピーダンス整合器30に入力される。インピーダンス整合器30によってインピーダンスマッチングがとられた波形は電力伝送路50を介して送電用共鳴コイル200に供給される。図10に示すように送電用共鳴コイル200は、電力が供給される一端部と開放端部を有するヘリカルコイルのペアから構成されている。
【0005】
送電用共鳴コイル200と対称の関係を有する受電用共鳴コイル200’は、磁気共鳴により送電用共鳴コイル200からの電力を受電する。受電された電力は電力伝送路50を介してインピーダンス整合器60を経て、整流器70で整流され負荷80に供給される。
【特許文献1】特表2009−501510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した従来の電力伝送システムで用いられる共鳴コイル200、200’においては、所望とする共鳴コイルの共振点の調整が困難である、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、電磁場を介して共鳴することにより電気エネルギーを送受信する共鳴コイルであって、第1開放端部と第2開放端部を有するコイル部と、前記コイル部に設けられた第1タップ部と、前記第2開放端部と前記第1タップ部との間に設けられた第2タップ部と、を有し、前記第1タップ部の位置と、前記第2タップ部の位置とを変更可能に構成する共に、前記第1タップ部の位置と、前記第2タップ部の位置とは、前記共鳴コイルの共振点が、所定の値となるように設定することを特徴とする。
【0008】
また、請求項1に係る発明は、請求項1に記載の共鳴コイルにおいて、前記第1タップ部と前記第2タップ部との間が、前記コイル部の1ターンの整数倍であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る共鳴コイルによれば、所望とする共鳴コイル100の共振点の調整を簡便に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る共鳴コイルが用いられた電力伝送システムのブロック構成の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る共鳴コイルの応用例を示す図である。
【図3】不平衡タイプの共鳴コイルの構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る共鳴コイルの構成を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る共鳴コイルの等価回路を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る共鳴コイルにおけるタップ位置変更に伴うインピーダンス特性の変化を示す図である。
【図7】は本発明の実施の形態に係る共鳴コイルの変形例の構成を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る共鳴コイルにおけるタップ位置変更機構の一例を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る共鳴コイルの構成を説明する図である。
【図10】従来のワイヤレス電力伝送システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態に係る共鳴コイルが用いられた電力伝送システムのブロック構成の概略を示す図であり、図2は本発明の実施の形態に係る共鳴コイルの応用例を示す図である。
【0012】
本発明に関連するような共鳴コイルは、例えば図2に示すような電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両への給電のためのシステムに用いるのに好適であるが、その他のシステムにおける電力伝送にももちろん用いることが可能である。
【0013】
図2に示す共鳴コイルの応用例では、地面部分に送電用の共鳴コイル100を設けておき、EVやHEVなどの車両側に設けられた受電用の共鳴コイル100’を設けるようにしておく。車両側への給電を行う際には、車両は共鳴コイル100の中心軸と共鳴コイル100’の中心軸とが略重なるように車両位置を調整して、共鳴コイル100から共鳴コイル100’を介して電力を受電して不図示の車両搭載の蓄電装置などに蓄電するように構成することが好ましい。
【0014】
図1は共鳴コイルが適用された一般的な電力伝送システムのブロック構成であるが、このようなシステムにおける負荷60の部分を、蓄電装置にすることにより上記したような車両用給電システムとして用いることが可能となる。次に、図1に示す電力伝送システムについて説明する。インバーターなどからなる電力供給部20においては、電源10からの電力を得て、伝送用の交流電力に変換され、これがインピーダンス整合器30に入力される。電力供給部20から出力される交流電力の周波数は数百kHz〜数十MHzである。インピーダンス整合器30は、バリアブルコンデンサとバリアブルインダクターとから構成されるLC回路であり、このインピーダンス整合器30によってインピーダンスマッチングがとられた波形はフィーダー線などの電力伝送路50を介して送電用の共鳴コイル100に供給される。図1に示すように送電用の共鳴コイル100は、2つの開放端部を有するヘリカルコイルに給電タップが設けられた構造となっている。
【0015】
上記の送電用の共鳴コイル100と対称の関係を有する受電用の共鳴コイル100’は
、磁気共鳴方式により共鳴コイル100からの電力を受電する。共鳴コイル100’で受電された電力は電力伝送路50を介してインピーダンス整合器60を経て、整流器70で整流され負荷80に供給されるようになっている。
【0016】
なお、本実施形態に係る共鳴コイル100は、平衡回路、不平衡回路のいずれにも利用することが可能である。すなわち、図1に示す回路構成にバランなどの平衡−不平衡変換器を適宜利用することも可能である。本実施例では平衡タイプの共鳴コイル100で説明をするが、本発明に係る共鳴コイル100は、不平衡タイプの共鳴コイル100にも適用可能である。例えば、不平衡タイプの共鳴コイル100としては、例えば図3のようなものを挙げることができる。図3は不平衡タイプの共鳴コイル100の構成例を示す図である。図3に示す不平衡タイプの共鳴コイル100においては、第1開放端141及び第1タップ151が一致しており、かつ、この一致点がグランド接続され、第2タップ152に給電が行われるか、或いは、第2タップ152から電力を取り出すような構成となっている。
【0017】
また、不平衡タイプの共鳴コイル100においては、第2開放端142及び第2タップ152が一致しており、かつ、この一致点がグランド接続され、第1タップ151に給電が行われるか、或いは、第1タップ151から電力を取り出すような構成としてもよい。なお、タップや開放端の考え方については以下に説明する。
【0018】
なお、図3に示す不平衡タイプの共鳴コイル100においては、位置変更が可能な「第1タップ部151」が「第1開放端部141」へと移動していき、極限状態となったとき、すなわち、「第1タップ部151」がちょうど「第1の開放端部141」と重なった状態にあるものと考える。すなわち、図3に示す不平衡タイプの共鳴コイル100も、特許請求の範囲に内包されるものとする。
【0019】
次に、本実施形態に係る平衡タイプの共鳴コイルについてより詳しく説明する。図4は本発明の実施の形態に係る共鳴コイルの構成を説明する図である。なお、以下、共鳴コイル100と共鳴コイル100’とは対称関係であることを除いて構成に特段の相違がないので、共鳴コイル100を例として説明する。また、図4においては、図1に示す平衡タイプの共鳴コイル100に基づいた説明を行う。
【0020】
共鳴コイル100は、第1開放端141と第2開放端142とを有するコイル部110を主要な構成要素としている。このコイル部110を構成する導電材料としてはリッツ線などを用いることが可能である。このようなコイル部110に対して、第1開放端141と第2開放端142との間には第1タップ151が、また、第2開放端142と第1タップ151との間には第2タップ152が設けられるようになっている。第1タップ151と第2タップ152には電力伝送路50が接続され、これら第1タップ151と第2タップ152に対し電力を供給したり、第1タップ151と第2タップ152から受電した電力を取り出したりするようになっている。
【0021】
また、第1タップ151と第1開放端141との間のコイルと、第2タップ152と第2開放端142との間のコイルとは、互いにコイル長が同じとなるように、第1タップ151の位置と第2タップ152の位置とが設定されるようになっている。
【0022】
コイル部110における、上記のような第1タップ151の位置と第2タップ152の位置とは、本実施形態に係る共鳴コイル100では、不図示の手段によって変更可能な構成となっている。このような構成であるために、本実施形態に係る共鳴コイル100によれば、所望とする電気的特性を得るための調整が容易となるというメリットを享受することができる。
【0023】
なお、第1タップ151と第2タップ152の中点は常時電圧がゼロとなる点であるため図7に示すように接地してもかまわない。
【0024】
図4(A)は第1タップ151と第2タップ152との間のコイルが1ターン分となるようにそれぞれのタップ位置が設定されている場合を示しており、図4(B)は第1タップ151と第2タップ152との間のコイルが3ターン分となるようにそれぞれのタップ位置が設定されている場合を示している。本実施形態に係る共鳴コイルは、このようなタップ位置の設定を変更するのみで、その電気的特性の変更を容易に行うことが可能となる。
【0025】
なお、フィーダー線などの電力伝送路50から共鳴コイル100への給電や、共鳴コイル100からの受電を行う上では、第1タップ151と第2タップ152との間は、コイル部110の1ターンの整数倍であることが望ましい。
【0026】
図4に示すようにタップ位置を変更することで、それぞれの等価回路を図5に示すように変更することが可能となる。図5は本発明の実施の形態に係る共鳴コイルの等価回路を示す図であり、図5(A)は図4(A)に対応する等価回路であり、図5(B)は図4(B)に対応する等価回路である。
【0027】
図4(A)における第1タップ151と第1開放端141との間のコイルと、第2タップ152と第2開放端142との間のコイルとが形成する等価回路が並列接続されたL11とC11であり、第1タップ151と第2タップ152との間のコイルが形成する等価回路が並列接続されたL21である。
【0028】
一方、図4(B)における第1タップ151と第1開放端141との間のコイルと、第2タップ152と第2開放端142との間のコイルとが形成する等価回路が並列接続されたL12とC12であり、第1タップ151と第2タップ152との間のコイルが形成する等価回路が並列接続されたL22である。
【0029】
なお、いずれの等価回路においても、C成分はコイル線間の浮游容量である。また、図5において描かれている回路素子の大きさはインダクタンス値や容量値に概略比例するものである。
【0030】
また、図5(A)が図4(A)に対応する等価回路であり、図5(B)が図4(B)に対応する等価回路であることは、インピーダンス特性を解析することによって得られた知見である。
【0031】
図4及び図5からもわかるように、例えばタップ位置を図4(A)から図4(B)に変更することによって、L21をそれより大きなL22に変更することが可能となり、また、L11をそれより小さなL12に変更することが可能となり、C11をそれより小さなC12に変更することが可能となる。
【0032】
図6は本発明の実施の形態に係る共鳴コイルにおけるタップ位置変更に伴うインピーダンス特性の変化を示す図である。図6(A)はインピーダンス特性の全体を示す図であり、図6(B)はインピーダンスの虚数部が軸と交わる箇所を拡大した図である。図において、実線はインピーダンスの実数部を示しており、点線はタップ位置変更前のインピーダンスの虚数部を示しており、一点鎖線はタップ位置変更後のインピーダンスの虚数部を示している。
【0033】
本実施形態に係る共鳴コイルによれば、例えば、図6に示すように、インピーダンスの(虚数部)=0となる共振点を変更することが可能となり、所望とする電気的特性を容易に変更することが可能であることがわかる。
【0034】
ここで、本実施形態に係る共鳴コイル100において、第1タップ151と第2タップ152のタップ位置を設定する際の考え方を示す。このような考え方の一つとしては、第1タップ151の位置と、第2タップ152の位置とは、共鳴コイル100の共振点が、所定の値となるように設定する、ということを挙げることができる。図1で考えると、送電側の共鳴コイル100の共振点と受電側の共鳴コイル100’の共振点とが一致しているときに、エネルギー伝送効率が最も高くなるので、前記のように第1タップ151と第2タップ152のタップ位置を設定する実施形態によれば、ワイヤレス伝送効率を最大化することが可能となる。
【0035】
次に、本実施形態に係る共鳴コイル100における第1タップ151と第2タップ152のタップ位置を変更する手段の具体例を説明する。図8は本発明の実施の形態に係る共鳴コイルにおけるタップ位置変更機構の一例を示す図である。
【0036】
図8において、191は第1摺動子、192は第2摺動子をそれぞれ示しており、第1摺動子191、第2摺動子192のそれぞれが不図示の電力伝送線路50と接続されることによって、第1摺動子191、第2摺動子192がそれぞれ第1タップ151、第2タップ152として機能する。
【0037】
第1摺動子191、第2摺動子192は共に導電性部材で構成され、不図示の機構によって、コイル部110に電気接触しつつ、コイル部110との接触位置を変更することができるようになっている。また、前記不図示の機構によって、第1摺動子191がa方向に移動する際には、第2摺動子192がa’方向に移動し、第1摺動子191がb方向に移動する際には、第2摺動子192がb’方向に移動するようになっている。
【0038】
以上、本発明に係る共鳴コイルによれば、所望とする共鳴コイル100の共振点の調整を簡便に行うことが可能となる。
【0039】
次に、本発明の他の実施形態に係る共鳴コイル100について説明する。図9は本発明の他の実施形態に係る共鳴コイル100の構成を説明する図である。これまで説明してきた共鳴コイル100は、一方向に伸びる仮想のコイル軸を中心として螺旋状に巻かれた形状のコイルであったが、他の実施形態に係る共鳴コイル100は、所定の平面P内に渦巻き状に巻かれた形状をなしている。
【0040】
他の実施形態に係る共鳴コイル100は、第1開放端141と第2開放端142とを有し、平面P内に渦巻き状に巻かれたコイル部110を主要な構成要素としている。このような渦巻き状のコイル部110を構成する導電材料としてはリッツ線などを用いることが可能である。
【0041】
このような平面P内に構成される渦巻き状コイル部110に対して、第1開放端141と第2開放端142との間には第1タップ151が、また、第2開放端142と第1タップ151との間には第2タップ152が設けられるようになっている。第1タップ151と第2タップ152には電力伝送路50が接続され、これら第1タップ151と第2タップ152に対し電力を供給したり、第1タップ151と第2タップ152から受電した電力を取り出したりするようになっている。
【0042】
また、第1タップ151と第1開放端141との間のコイル長と、第2タップ152と
第2開放端142との間のコイル長とは、互いにコイル長が略同じとなるように、第1タップ151の位置と第2タップ152の位置とが設定されるようになっている。
【0043】
コイル部110における、上記のような第1タップ151の位置と第2タップ152の位置とは、本実施形態に係る共鳴コイル100では、不図示の手段によって変更可能な構成となっている。すなわち、不図示の手段によって、第1タップ151がa方向に移動する際には、第2タップ152がa’方向に移動し、第1タップ151がb方向に移動する際には、第2タップ152がb’方向に移動するようになっている。このような構成であるために、他の実施形態に係る共鳴コイル100によっても、所望とする電気的特性を得るための調整が容易となるというメリットを享受することができるのである。
【符号の説明】
【0044】
10・・・電源、20・・・電力供給部、30・・・インピーダンス整合器、50・・・電力伝送線路、60・・・インピーダンス整合器、70・・・整流器、80・・・負荷、100、100’・・・共鳴コイル、110・・・コイル部、141・・・第1開放端、142・・・第2開放端、151・・・第1タップ、152・・・第2タップ、191・・・第1摺動子、192・・・第2摺動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁場を介して共鳴することにより電気エネルギーを送受信する共鳴コイルであって、
第1開放端部と第2開放端部を有するコイル部と、
前記コイル部に設けられた第1タップ部と、
前記第2開放端部と前記第1タップ部との間に設けられた第2タップ部と、を有し、
前記第1タップ部の位置と、前記第2タップ部の位置とを変更可能に構成する共に、
前記第1タップ部の位置と、前記第2タップ部の位置とは、前記共鳴コイルの共振点が、所定の値となるように設定することを特徴とする共鳴コイル。
【請求項2】
前記第1タップ部と前記第2タップ部との間が、前記コイル部の1ターンの整数倍であることを特徴とする請求項1に記載の共鳴コイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−23927(P2012−23927A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161824(P2010−161824)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】