説明

内容物放出量切換え機構ならびにこの機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品

【課題】使いやすく、部品点数の少ない、少量噴射と多量噴射との内容物放出量切換え機構を提供する。
【解決手段】操作部7に作動モード設定用の主操作部7aと、内容物の少量/多量噴射選択用の副操作部7bとを片手による同時設定操作が可能な形で設け、また、内容物通路域8cの内部を移動するニードル後端部12aが副操作部の前面受け部分7cに当接できるようにした。主操作部7aと副操作部7bを押下すると、ニードル12はこの副操作部により前方向に付勢されて前端面12dがノズル底面11gに当接し、内容物は溝部11bを介して放出孔11aより少量噴射される。主操作部7aのみを押下すると、ニードル12は内容物の圧力で後方向(図示右方向)へ移動してその前端面12dがノズル底面11gより離間し、内容物はこの離間によって形成されるノズル底面−ニードル前端面間の空間域を介して多量噴射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の内容物に対する通路設定部の放出孔から外部空間域への内容物放出量を変更できる内容物放出量切換え機構ならびにこの機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品に関する。
【0002】
特に作動モード設定用の操作部に加えて、放出孔への内容物流入量(=外部空間域への内容物流出量)を調整するための副操作部を、当該操作部も含めた同時設定操作が可能な形で設けた内容物放出量切換え機構に関する。
【0003】
内容物放出孔から外部空間域への内容物流出量を切り換える機構において、その操作がより簡便で、その構成部品点数がより少ないことなどが望ましく、本発明はこのような要請に応えるものである。
【0004】
本発明の内容物放出量切換え機構の適用対象はエアゾール式およびポンプ式の各製品である。
【0005】
本明細書においては、内容物放出孔の側を「前」とし、それとは反対側で例えば図示の操作部の側を「後」とする。すなわち、図1(a),図2(a),図3(a)および図4の左側方向が「前」で、右側方向が「後」となる。
【背景技術】
【0006】
本件出願人は、作動モード設定用の操作釦に設定される通路設定部の前端側開口部分に略鞘状の放出孔部材を回動可能な形で取り付け、当該放出孔部材に対する回動操作に基づいて内容物放出量が多い直噴作動モードと、内容物放出量が少ない噴霧作動モードとを選択できるようにした内容物放出量切換え機構を提案している(特許文献1参照)。
【0007】
この内容物放出量切換え機構では、コイルスプリングの弾性力で内容物放出孔の方に付勢されるスライド部材を操作釦内側の通路設定部に配している。また、放出孔部材の底面部分には内容物渦状化用の溝が形成されている。
【0008】
コイルスプリングの弾性作用によりスライド部材が最大限前方向に移動して放出孔部材の底面部分に当接した状態では、当該底面部分に流入する内容物はもっぱら溝を通って放出孔部へ少量噴霧状態となって流出する。
【0009】
そして、放出孔部材に対する回動操作に基づいてスライド部材をコイルスプリングに抗する形で後退させてその位置に保持する、すなわち放出孔部材の底面部分からスライド部材を離間させた状態では、当該底面部分に流入する内容物が主に(内容物渦状化用の溝ではなく)この離間空間域を通って放出孔部へ多量直噴状態となって流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−122760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
提案済みの上記内容物放出量切換え機構(少量噴射,多量噴射の切換え機構)は、放出孔部材を回動操作するだけで少量噴霧/多量直噴の各作動モードを選択できる、といった利点を有している。
【0012】
ただ、この内容物放出量切換え機構の場合、
(11)少量噴霧/多量直噴の各作動モードの選択操作用の放出孔部材と元々の作動モード設定用の操作部との双方を利用者が片手操作できない、
(12)スライド部材を少量噴霧状態の前方向に設定保持するための弾性部材(コイルスプリング)を用いることにより内容物放出量切換え機構(内容物の少量放出,多量放出の切換え機構)の部品点数が多い、
などの点で改善の余地を残している。
【0013】
そこで本発明では、作動モード設定用の主操作部と、内容物の少量放出(少量噴射),多量放出(多量噴射)を切り換えるための副操作部とを、利用者の片手による同時設定操作が可能な形で設け、これにより内容物放出量切換え機構の利用者操作上の利便化を図ることを目的とする。
【0014】
また、スライド部材を少量放出状態に設定保持するためのいわば駆動源として、上述の弾性部材(コイルスプリング)を用いるのではなく、この副操作部に対する利用者の操作力を用い、これにより内容物放出量切換え機構の部品点数の減少化を図ることを目的とする。
【0015】
また、主操作部として、容器本体に取り付けられた操作部保護用のカバー作用部に対して回動可能な第1操作部材を用いるとともに、副操作部として、主操作部に対して回動可能な第2操作部材を用い、これにより主操作部および副操作部の同時設定操作の簡単化を図ることを目的とする。
【0016】
また、内容物少量放出状態を設定する際に副操作部のみを操作するだけでよい、すなわち利用者が副操作部を操作すると主操作部も副操作部の一部で駆動されて作動モード設定操作状態へと移行するようにし、これにより主操作部および副操作部の同時設定操作の一層の簡単化を図ることを目的とする。
【0017】
また、内部空間域にスライド部材が移動可能な形で配設されて内容物通路域を構成する筒状部に、スライド部材の移動にともなう(内容物通路域ではない)非通路閉空間域のエアの外部空間域との出入りを可能にし、かつ、副操作部に対応した凸状被受け部(スライド部材の一部)の副操作部側への移動を可能にする、ための孔部を形成し、これにより内容物の少量放出状態または多量放出状態の選択的な設定動作の確実化を図ることを目的とする。
【0018】
また、以上の主操作部,副操作部,カバー作用部および筒状部の全体が一体成形された単一部材を用い、これにより内容物放出量切換え機構の組立作業の簡素化および当該機構の部品点数の一層の減少化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)容器本体(例えば後述の容器本体1)の内容物に対する通路設定部(例えば後述の噴射用円筒状部8,ノズル11)の放出孔(例えば後述の放出孔11a)から外部空間域への内容物放出量を変更できる内容物放出量切換え機構において、
前記通路設定部の内容物通路域の圧力増加により前記放出孔から離れる方向に移動する態様で、当該通路設定部に設けられた放出量変更用のスライド部材(例えば後述のニードル12)と、
前記内容物の作動モードを設定操作するための主操作部(例えば後述の主操作部7a,7a')と、
前記主操作部とは別に、利用者の片手による当該主操作部も含めた同時設定操作が可能で、かつ、前記スライド部材を受けることによりその前記離れる方向への移動を阻止できる態様で設けられた副操作部(例えば後述の副操作部7b,7b')と、を備え、
前記副操作部は、
前記主操作部および前記副操作部の同時設定操作による作動モードのとき、前記内容物通路域の圧力増加に基づく前記スライド部材の前記離れる方向への移動を阻止して、前記放出孔と当該スライド部材との間の内容物通路部分を少量放出状態に設定し、
前記主操作部の単独設定操作による作動モードのとき、前記内容物通路域の圧力増加に基づく前記スライド部材の前記離れる方向への移動を許容して、前記放出孔と当該スライド部材との間の内容物通路部分を多量放出状態に設定する。
(2)上記(1)において、
前記容器本体に取り付けられて前記主操作部および前記副操作部を保護するためのカバー作用部(例えば後述の下円筒状部5,円弧壁状起立部6)を備え、
前記主操作部は、
前記カバー作用部に対して回動可能な操作部材であり、
前記副操作部は、
前記主操作部に対して回動可能な操作部材である。
(3)上記(1),(2)において、
前記副操作部は、
前記主操作部を駆動してその作動モード設定操作位置へ移動させるための同時設定操作用駆動部分(例えば後述の一対の片部7d')を有する。
(4)上記(1)〜(3)において、
前記通路設定部を構成する筒状部(例えば後述の噴射用円筒状部8)を備え、
前記スライド部材は、
前記筒状部の内周面に密接して前記内容物通路域を画定する環状のシール作用部(例えば後述の逆スカート部12b)と、
当該シール作用部よりも前記離れる方向の側に形成されて、前記副操作部により受けられる凸状被受け部(例えば後述の後突状部12a)と、を有し、
前記筒状部は、
前記シール作用部よりも前記放出孔の側に形成されて、前記容器本体からの内容物が流入する第1の孔部(例えば後述の縦孔部8a)と、
前記シール作用部よりも前記離れる方向の側に形成されて、前記凸状被受け部の移動を可能にするための第2の孔部(例えば後述の横孔部8b)と、を有している。
(5)上記(2),(3)において、
前記通路設定部を構成する筒状部(例えば後述の噴射用円筒状部8)を備え、
前記カバー作用部,前記筒状部,前記主操作部および前記副操作部は、
その全体が一体成形された単一部材からなる。
【0020】
このような構成からなる内容物放出量切換え機構ならびに、当該内容物放出量切換え機構を備えて後述のガス,内容物などを収容したエアゾール式製品および、当該内容物放出量切換え機構を備えて後述の内容物などを収容したポンプ式製品を、本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は以上の課題解決手段により、
(11)内容物放出量切換え機構の利用者操作上の利便化を図り、
(12)内容物放出量切換え機構の部品点数の減少化を図り、
(13)主操作部および副操作部の同時設定操作の簡単化を図り、
(14)内容物の少量放出状態または多量放出状態の選択的な設定動作の確実化を図り、
(15)内容物放出量切換え機構の組立作業の簡素化および当該機構の部品点数の一層の減少化を図る、
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】利用者の作動モード設定操作が行われていない静止モードを示す説明図であり、(a)は一部断面状態を示し、(b)は放出孔が形成されたノズルの斜視状態を示し、(c)はノズルの内部空間域に組み込まれるニードル(前端側部分)の斜視状態を示している。
【図2】主操作部および副操作部がともに押圧されたときの作動モード(少量噴霧状態)を示す説明図であり、(a)は一部断面状態を示し、(b)は放出孔部分を拡大した状態を示している。
【図3】主操作部のみが押圧されたときの作動モード(多量直噴状態)を示す説明図であり、(a)は一部断面状態を示し、(b)は放出孔部分を拡大した状態を示している。
【図4】副操作部のみが押圧されたとき、その一部で主操作部も駆動されて作動モード設定操作位置へと移動するタイプの静止モードを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1〜図4を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0024】
上述したように本発明はエアゾール式製品およびポンプ式製品を対象としているが、以下の説明では、単なる説明の便宜上、エアゾール式製品の場合を前提とする。
【0025】
なお、以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば肩カバー1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば容器本体1)の一部であることを示している。
【0026】
図1乃至図4において、
1は後述の内容物および噴射用ガスを収納したエアゾール式製品の容器本体,
1aは容器本体1の上側部分を構成する周知の肩カバー
2は肩カバー1aの外端下部分に形成されて後述の下円筒状部5の突状部5aが強く係合する環凹状部,
3は周知のバルブ機構(図示省略)の構成要素であってコイルスプリング(図示省略)などの弾性力により上方向に付勢されるステム,
をそれぞれ示している。
【0027】
また、容器本体1や環凹状部2に取り付けられる一体成形のカバー体(ワンタッチキャップの一部:後述のノズル11およびニードル12を捨象した部分)に関して、
4は全体が一体成形されて、後述の下円筒状部5,円弧壁状起立部6,操作部7,噴射用円筒状部8,前開口域9および後開口域10などからなるカバー体,
5は容器本体1に直接取り付けられる下円筒状部,
5aは当該下円筒状部の下端内周面の周方向に間歇的に形成されて、容器本体側の環凹状部2に強く係合される複数の突状部,
5bは操作部7および噴射用円筒状部8の一体化部分に対するヒンジ結合部として作用する薄肉部,
6は下円筒状部5の薄肉部5bおよびその対向部分を除く範囲のそれぞれから上方に延びて、操作部7を保護する一対の円弧壁状起立部,
7は作動モード設定および内容物放出量切換えのための操作部(その1),
7aは作動モード設定用の主操作部,
7bは主操作部7aに対して回動可能に設定された内容物放出量切換え用の副操作部,
7cは当該副操作部の一部であり、主操作部7aおよび副操作部7bの同時押圧操作時に後述のニードル12の後突状部12aを受けて、当該ニードルの後退を阻止する、すなわち少量噴霧状態を保持するための前側外面受け部分(図2参照),
(次の7'〜7d'は図4のみで使用)
7'は作動モード設定および内容物放出量切換えのための操作部(その2),
7a'は上面部分が主操作部7aよりも低く設定された作動モード設定用の主操作部,
7b'は主操作部7a'に対して回動可能に設定された内容物放出量切換え用の副操作部,
7c'は副操作部7b'の押圧操作時に後述のニードル12の後突状部12aを受けて、当該ニードルの後退を阻止する、すなわち少量噴霧状態を保持するための前側外面受け部分,
7d'は副操作部7b'の上面後端部分の左右両端側(前後方向と直交する幅方向の両端部分)にそれぞれ形成されて、副操作部7b'の回動操作時に主操作部7a'の上面部分に当接しながらこれを押圧して作動モード設定操作位置へと移動させる機能を備えた主操作部駆動用の一対の片部,
8はステム3に係合して外部空間域までの内容物通路を形成する噴射用円筒状部,
8aはステム3の直上流側で常に後述の逆スカート部12bの環状前端部分よりも前方となる位置に形成された内容物通過用の縦孔部,
8bは後述のニードル12の後端部分を当該噴射用円筒状部の外側に露出させ、かつ、当該ニードルの前後動にともなうニードル後方空間域のエアの出入りを可能にするための横孔部,
8cは噴射用円筒状部8の内周面と後述のニードル12の外周面との間に画定される環状で前後方向の内容物通路域,
8dは副操作部7bに対するヒンジ結合部として作用する薄肉部,
9は一対の円弧壁状起立部6の各前端部分の間に画定される前開口域,
10は一対の円弧壁状起立部6の各後端部分の間に画定される後開口域,
をそれぞれ示している。
【0028】
また、噴射用円筒状部8に設定されるノズル11およびニードル12に関して、
11は噴射用円筒状部8の前開口側に嵌合状態で取り付けられた鞘状のノズル,
11aはノズル底面に形成された内容物の放出孔,
11bは当該放出孔に近い部分ほど幅が狭くなる態様でノズル底面に形成された内容物回転用、すなわち内容物噴霧化用の複数の溝部,
11cは当該溝部の内容物出口部分と放出孔11aとの間に画定される略円状の出力空間域,
11dは当該溝部の内容物入口部分を逃げる形でノズル内周面の前後方向に形成されてニードル12の移動を案内する複数のリブ状部,
11eはノズル内周面とニードル12の外周面との間に画定される前後方向の内容物通路域,
11fはノズル外周面に形成されて噴射用円筒状部8の内周面の環凹状部と嵌合する環凸状部,
11gは溝部11bおよび出力空間域11cが形成されていないノズル底面,
12は主操作部7aが押圧された作動モードにおいて、副操作部30の操作の有無に応じる形でノズル底面11gに当接し(図2参照)、または当該ノズル底面から離間する(図3参照)ニードル,
12aは噴射用筒状部8の横孔部8bに前後動可能な形で組み込まれ、かつ、後端部分が副操作部7bの前側外面受け部分7c,7c'に当接できる態様で形成された後突状部,
12bは当該ニードルの前後方向の任意の位置において、噴射用円筒状部8の縦孔部8aよりも後側の部分で当該円筒状部内周面と密接してシール作用を呈する逆スカート部,
12cは当該ニードルの前端側の小径円柱部分に形成された環状段部,
12dは当該小径円柱部分の前端面,
をそれぞれ示している。
【0029】
また、図2および図3における矢印に関して、
Aは少量噴霧状態の内容物の流れ(図2),
Bは多量直噴状態の内容物の流れ(図3),
Cは主操作部7aの押圧方向(図2,図3),
Dは副操作部7bの押圧方向(図2),
Eは副操作部7bの押圧操作に基づくニードル12の付勢方向(図2),
Fは噴射用円筒状部8の内容物通路域8cなどの圧力増加に基づくニードル12の付勢方向(図3),
をそれぞれ示している。
【0030】
ここで、ステム3,カバー体4(下円筒状部5+円弧壁状起立部6+操作部7,7'+噴射用円筒状部8),ノズル11およびニードル12などは例えばポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。容器本体1は例えば金属製のものである。
【0031】
なお上述したように、下円筒状部5,一対の円弧壁状起立部6,操作部7,7'および噴射用円筒状部8などからなるカバー体4は一体成形品である。
【0032】
図示の内容物放出量切換え機構の主な特徴は、主操作部7aおよび副操作部7b,7b'に対する利用者の片手単一操作の内容に応じて、
(21)主操作部7aおよび副操作部7b,7b'に対する押圧操作により、ニードル12の前端面12dがノズル底面11gに当接した少量噴霧状態と、
(22)主操作部7aのみに対する押圧操作により、ニードル12の前端面12dがノズル底面11gから離間した多量直噴状態と、
が選択的に設定されることである。
【0033】
この(21),(22)のいずれの押圧操作においても主操作部7aが下円筒状部5の薄肉部5bをいわば中心にして図示時計方向に回動する。この主操作部の回動にともなってステム3が斜め方向に押下げられる。
【0034】
ステム3が押下げられるとステム側の周知のバルブ機構がそれまでの閉状態から開状態へと移行して、容器本体1の内容物がステム3および縦孔部8aを経て噴射用円筒状部8の内容物通路域8cに流入する。
【0035】
この流入内容物はさらにノズル11の内容物通路域11eを経て放出孔11aから外部空間域に噴射される。
【0036】
ここで、内容物の流入により内容物通路域8cの圧力が高まり、ニードル12は、その逆スカート部12bの前側面部分が後方への当該圧力を受けて、ノズル11の放出孔11aから離間する後方向へ移動しようとする。
【0037】
このニードル12に対する後方へのいわば駆動力に対し、
(31)主操作部7aおよび副操作部7b,7b'が実質的に押圧操作された上記(21)の場合、当該副操作部が噴射用円筒状部8の薄肉部8dをいわば中心に図示時計方向に強制回動されているので、ニードル12は、その後突状部12aが当該副操作部の前側外面受け部分7c,7c'で前方向に付勢されて、その前端面12dがノズル底面11gと当接した状態、すなわち少量噴霧状態に積極的に保持され(図2参照)、
(32)主操作部7aのみが押圧操作されて副操作部7b,7b'が押圧操作されていない上記(22)の場合は勿論、当該副操作部からのニードル12に対する当該(31)のような前方向付勢作用は生じないので、ニードル12は、内容物通路域8cの圧力の増加に基づいて後方へ移動して、その前端面12dがノズル底面11gから離間した状態、すなわち多量直噴状態に移行する(図3参照)。
【0038】
図2の少量噴霧状態が生成されるのは、内容物通路域11eからの内容物がノズル11の複数の溝部11bを通過してから出力空間域11cに合流することにより渦状となって放出孔11aに流入し、また、溝部11bの幅は放出孔11aに近い側ほどが狭くなって流れが速くなるからである。
【0039】
また、図3の多量直噴状態が生成されるのは、内容物通路域11eからの内容物が主に、ノズル11の溝部11bよりも十分広い(ノズル底面11gとニードル前端面12dとの間の)離間空間域から放出孔11aに流入するからである。
【0040】
図4の操作部7'の場合、副操作部7b'を押圧して下方斜めへ回動させると、当該副操作部の幅方向両端側に形成された一対の片部7d'が主操作部7a'の上面部分を下方に駆動する。
【0041】
すなわち副操作部7b'のみの押圧操作により、主操作部7a'も作動モード操作位置へと移動する。主操作部7a'のみが押圧されたとき、副操作部7b'がこれに従動しないことは勿論である。
【0042】
主操作部駆動用の片部7d'が副操作部7b'の幅方向両端側に形成されているので、主操作部7a'の操作対象上面の前後方向長さは、片部7d'を有していない主操作部7aのそれと略同じである。
【0043】
なお、本発明が図示の内容に限定されないことは勿論であり例えば、
(41)操作部として、上下動タイプ,チルト作動タイプやトリガレバータイプなどの各種操作部材を用いる、
(42)内容物噴霧化用の溝部を、ノズル底面ではなく、ニードル前端面に形成する、
(43)内容物噴霧化用の溝部を省略し、少量噴霧状態に代えて、ノズル底面とニードル前端面との離間距離が多量直噴状態よりも短いだけの少量直噴状態(例えばノズル底面に設けた前後方向起立片部の後端部分にニードル前端面が当接した状態)を設定する、
ようにしてもよい。
【0044】
容器内容物の対象としては、液状,発泡性(泡状),ペースト状,ジェル状,粉状などの各種性状のものがある。
【0045】
本発明が適用されるエアゾール式製品やポンプ式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0046】
容器本体に収納する内容物は、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分などである。
【0047】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0048】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0049】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0050】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0051】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼインなどを用いる。
【0052】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0053】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0054】
エアゾール式製品における内容物放出用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0055】
1:容器本体
1a:肩カバー
2:環凹状部
3:ステム
4:カバー体
5:下円筒状部
5a:突状部
5b:薄肉部
6:一対の円弧壁状起立部
7:操作部(図1〜図3)
7a:作動モード設定用の主操作部
7b:内容物放出量切換え用の副操作部
7c:前側外面受け部分
7':操作部(図4のみ)
7a':作動モード設定用の主操作部
7b':内容物放出量切換え用の副操作部
7c':前側外面受け部分
7d':主操作部駆動用の一対の片部
8:噴射用円筒状部
8a:縦孔部
8b:横孔部
8c:内容物通路域
8d:薄肉部
9:前開口域
10:後開口域
11:ノズル
11a:放出孔
11b:溝部
11c:出力空間域
11d:リブ状部
11e:内容物通路域
11f:環凸状部
11g:ノズル底面
12:ニードル
12a:後突状部
12b:逆スカート部
12c:環状段部
12d:前端面
A:少量噴霧状態の内容物の流れ(図2)
B:多量直噴状態の内容物の流れ(図3)
C:主操作部7aの押圧方向(図2,図3)
D:副操作部7bの押圧方向(図2)
E:副操作部7bの押圧操作に基づくニードル12の付勢方向(図2)
F:内容物通路域8cなどの圧力増加に基づくニードル12の付勢方向(図3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の内容物に対する通路設定部の放出孔から外部空間域への内容物放出量を変更できる内容物放出量切換え機構において、
前記通路設定部の内容物通路域の圧力増加により前記放出孔から離れる方向に移動する態様で、当該通路設定部に設けられた放出量変更用のスライド部材と、
前記内容物の作動モードを設定操作するための主操作部と、
前記主操作部とは別に、利用者の片手による当該主操作部も含めた同時設定操作が可能で、かつ、前記スライド部材を受けることによりその前記離れる方向への移動を阻止できる態様で設けられた副操作部と、を備え、
前記副操作部は、
前記主操作部および前記副操作部の同時設定操作による作動モードのとき、前記内容物通路域の圧力増加に基づく前記スライド部材の前記離れる方向への移動を阻止して、前記放出孔と当該スライド部材との間の内容物通路部分を少量放出状態に設定し、
前記主操作部の単独設定操作による作動モードのとき、前記内容物通路域の圧力増加に基づく前記スライド部材の前記離れる方向への移動を許容して、前記放出孔と当該スライド部材との間の内容物通路部分を多量放出状態に設定する、
ことを特徴とする内容物放出量切換え機構。
【請求項2】
前記容器本体に取り付けられて前記主操作部および前記副操作部を保護するためのカバー作用部を備え、
前記主操作部は、
前記カバー作用部に対して回動可能な操作部材であり、
前記副操作部は、
前記主操作部に対して回動可能な操作部材である、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物放出量切換え機構。
【請求項3】
前記副操作部は、
前記主操作部を駆動してその作動モード設定操作位置へ移動させるための同時設定操作用駆動部分を有する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の内容物放出量切換え機構。
【請求項4】
前記通路設定部を構成する筒状部を備え、
前記スライド部材は、
前記筒状部の内周面に密接して前記内容物通路域を画定する環状のシール作用部と、
当該シール作用部よりも前記離れる方向の側に形成されて、前記副操作部により受けられる凸状被受け部と、を有し、
前記筒状部は、
前記シール作用部よりも前記放出孔の側に形成されて、前記容器本体からの内容物が流入する第1の孔部と、
前記シール作用部よりも前記離れる方向の側に形成されて、前記凸状被受け部の移動を可能にするための第2の孔部と、を有している、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内容物放出量切換え機構。
【請求項5】
前記通路設定部を構成する筒状部を備え、
前記カバー作用部,前記筒状部,前記主操作部および前記副操作部は、
その全体が一体成形された単一部材からなる、
ことを特徴とする請求項2または3記載の内容物放出量切換え機構。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の内容物放出量切換え機構を備えて前記容器本体に放出用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の内容物放出量切換え機構を備えて前記容器本体に内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−225236(P2011−225236A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95174(P2010−95174)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】