説明

内径測定器

【課題】複数の測定子が精密に連動していなくても、測定子の被測定物との当接位置を適切に調整することができ、個人の感覚の違いによる測定値のばらつきを排除することができる内径測定器を提供すること。
【解決手段】本体部10の長手方向に直交する所定方向に設定された測定軸線上において互いに接近および離間可能である一対の測定子24と、測定軸線を被測定物の直径に一致させる位置へガイドするガイド手段26と、を備え、ガイド手段26は、本体部10の長手方向および測定軸線を含む面を間にして対称に配置された一対のガイドヘッド261と、一対のガイドヘッド261を連結する連結軸部262と、ガイドヘッド261および連結軸部262を測定軸線に沿う方向にスライド移動させるスライド手段263と、を備えることを特徴とする内径測定器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内径測定器に関する。詳しくは、筒状の被測定物の内径を測定するための内径測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
筒状の被測定物の内径を測定する内径測定器が知られている。
従来の内径測定器は、筒状の被測定物の内部に一端側が挿入される長手状の本体部と、本体部の一端側に設けられ被測定物の内部に挿入された状態で被測定物の内径を測定する測定部と、本体部の他端側に設けられ測定部による測定結果を表示する表示手段と、を備える。測定部は、本体部の一端側に少なくとも一方が本体部の長手方向に対して直交する方向へ移動可能に設けられ被測定物の測定部位に当接される複数の測定子を備える。
【0003】
たとえば、図9に示すように、3つの移動可能な測定子を備える内径測定器が提案されている(特許文献1)。
図9において、内径測定器101は、筒状の本体部102と、この本体部102の一端側に本体部102の長手方向に対して直交する3方向へそれぞれ移動可能に設けられ被測定物の測定部位に当接される3つの測定子103と、本体部102の他端側に設けられ測定子103の移動変位量に基づく被測定物の内径を表示する表示手段104とを備えている。3つの測定子103は、連動して本体部102の径方向外側に等距離移動するように適宜な手段で付勢されており、それぞれの移動方向が120度の角度で交わるように配置されている。また、本体部102には、3つの測定子103を本体部102の径方向内側に移動させるレバー105が設けられている。
【0004】
測定にあたっては、レバー105により3つの測定子103が本体部102側に移動された状態で、本体部102の3つの測定子103側を被測定物の孔部に挿入する。ここにおいて、レバー105を開放し、図10に示すように、3つの測定子103を、本体部102の径方向外側に移動させ、被測定物の測定部位に当接させる。このとき、3つの測定子103は、連動して移動し、それぞれの移動方向が120度の角度で交わるように配置されているから、本体部102の軸が被測定物の孔部の軸と一致し、本体部102の軸から測定子103までの距離が被測定物の孔部の半径と等しくなる。したがって、内径測定器101および測定子103の位置を調整する必要がなく、個人の感覚の違いによる測定値のばらつきを排除することができる。
【0005】
【特許文献1】実開昭59−90807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の内径測定器においては、正確に被測定物の内径を測定できない場合が生じうる。
たとえば、3つの測定子の進退量が正確に一致していない場合である。
3つの測定子の移動量を正確に一致させることは容易ではなく、わずかな加工誤差や経年変化によって各測定子の移動量が異なってくるおそれが多いにある。
3つの測定子の進退量が正確に一致していない場合、測定子の先端が被測定物の内径に当接したときでも、3つの測定子の延長線が内径の中心に位置していないことになる(図11参照)。
すると、測定子の進退量は内径の半径に対応していないことから、測定子の移動量を測定しても内径を正確に測定することにはならない。
【0007】
また、3つの測定子の移動量が一致していない場合、表示部の表示が3つの測定子のうちのどの測定子の変位を表しているのかは定かでないという問題も生じる。
さらに、複数の測定子を等間隔で配置することが困難であり、3つの測定子を120°間隔で配設することが困難である。
測定子が等間隔で設けられていない場合には、仮に3つの測定子の移動量が一致していたとしても、測定子の延長線の交点は内径の中心から逸れてしまう。
すると、測定子の移動量から被測定物の内径を正確に測定することができない。
【0008】
本発明の目的は、従来の問題を解消し、内径を正確に測定できる内径測定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の内径測定器は、筒状の被測定物の内部に一端側が挿入される長手状の本体部と、前記本体部の一端側に設けられ前記被測定物の内部に挿入された状態で前記被測定物の内径を測定する測定部と、前記本体部の他端側に設けられ前記測定部による測定結果を表示する表示手段と、を備え、前記測定部は、前記本体部の長手方向に直交する方向に設定された測定軸線上において互いに接近および離間可能である一対の測定子と、前記測定軸線を前記被測定物の直径に一致させる位置へガイドするガイド手段と、を備え、前記ガイド手段は、前記本体部の長手方向および前記測定軸線を含む面を間にして対称に配置された一対のガイドヘッドと、前記一対のガイドヘッドを連結する連結軸部と、前記ガイドヘッドおよび前記連結軸部を前記測定軸線に沿う方向にスライド移動させるスライド手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、内径測定器が、本体部の長手方向および測定軸線を含む面を間にして対称に配置された一対のガイドヘッドと、一対のガイドヘッドを連結する連結軸部と、ガイドヘッドおよび連結軸部を測定軸線に沿う方向にスライド移動させるスライド手段と、を含むガイド手段を備えるので、測定軸線を被測定物の直径に一致させる位置へガイドすることができる。
すなわち、測定部が被測定物の内部に挿入された状態において、スライド手段によってガイドヘッドおよび連結軸部を測定軸線に沿う方向にスライド移動させ、一対のガイドヘッドを被測定物の内周面に当接させると、一対のガイドヘッドが本体部の長手方向および測定軸線を含む面を間にして対称に配置されているので、必然的に、測定軸線が被測定物の直径に一致した状態となる。この状態において、一対の測定子を離間させ、被測定物の内周面に当接させれば、その移動量から被測定物の内径を求めることができる。
【0011】
本発明の内径測定器において、前記一対の測定子は、前記測定軸線に沿う方向にスライド移動する可動測定子と、前記測定軸線上の前記可動測定子の設けられた部分と前記本体部を挟んで反対側に固定された固定測定子と、を備え、前記表示手段と前記可動測定子との間に伝達手段を備え、前記伝達手段は、前記本体部の内部に前記本体部の軸方向に移動可能に設けられたロッドと、前記ロッドと前記可動測定子とを連結する連結手段と、前記ロッドを前記本体部の軸線に沿って前記表示手段側に付勢する第1付勢手段と、前記可動測定子を前記測定軸線に沿って前記本体部から離れる方向へ付勢する第2付勢手段と、を備えることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、ロッドと可動測定子とが連結手段を介して連結され、ロッドを本体部の軸線に沿って表示手段側に付勢する第1付勢手段と可動測定子を測定軸線に沿って本体部から離れる方向へ付勢する第2付勢手段とが設けられているので、可動測定子が測定軸線方向へ移動したのと同じ分だけ、ロッドが本体部の軸線方向に移動される。これにより、表示手段が、ロッドの移動量に基づいて可動測定子の移動量を表示することができる。逆に、ロッドが本体部の軸線方向へ移動したときには、それと同じ分だけ、可動測定子が測定軸線方向に移動される。
【0013】
本発明において、前記連結手段は、一端が前記可動測定子に固定されかつ他端が前記ロッドに固定されたワイヤと、前記本体部の一端と前記測定部との接続部に配設され前記ワイヤの方向を転換する滑車と、を備えることが好ましい。
このような構成によれば、連結手段がワイヤと滑車とで構成されるので、カムなどの他の連結手段を用いる場合と比べて、伝達誤差が少なく高精度な測定を行うことができる。しかも、カムのような高精度な加工が不要であり、コストを抑えることができる。また、機構が単純でスペースをとらないので、装置の小型化が可能である。さらに、ワイヤの長さを変更すれば、容易に測定範囲を広くすることができる。
【0014】
本発明において、手動操作により前記可動測定子および前記ガイド手段を前記本体部側へ移動させる操作手段を備え、前記操作手段は、前記本体部に前記操作手段を揺動可能に支持する揺動支点と、前記ロッドに係合され前記可動測定子を前記連結手段を介して前記本体部側に移動させる第1係合部と、前記ガイド手段に係合され前記ガイド手段を前記本体部側に移動させる第2係合部と、を備えることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、操作手段を本体部に対して揺動させることで、第1係合部および第2係合部を介して、可動測定子およびガイド手段を本体部側に同時に移動させることができる。
操作手段により可動測定子およびガイド手段を本体部側に移動させた状態においては、可動測定子と固定測定子との間の距離が短くなり、測定部を被測定物の内部に容易に挿入することができる。また、可動測定子およびガイド手段が同時に移動されるから、可動測定子とガイド手段とを別々に移動させる必要がなく、操作が一度で済むので、効率的に測定を行うことができる。
【0016】
本発明において、前記スライド手段は、前記ガイドヘッドおよび前記連結軸部を前記測定軸線に沿って前記本体部から離れる方向に付勢する第3付勢手段を備えることが望ましい。
このような構成によれば、ガイドヘッドおよび連結軸部が、測定軸線に沿って本体部から離れる方向に付勢されるので、一対のガイドヘッドおよび固定測定子を被測定物の内周面に当接させ、測定軸線を被測定物の直径に一致させることが容易である。
【0017】
すなわち、測定部を被測定物の内部に挿入した状態において、スライド手段を機能させると、ガイドヘッドおよび連結軸部が測定軸線に沿って本体部から離れる方向に付勢され、一対のガイドヘッドと固定測定子とが被測定物の内周面に当接した状態となる。ここで、一対のガイドヘッドは本体部の長手方向および測定軸線を含む面を間にして対称に配置されているので、必然的に、測定軸線が被測定物の直径に一致した状態となる。この状態において、可動測定子を移動させ、被測定物の内周面に当接させれば、その移動量から被測定物の内径を求めることができる。
また、一対のガイドヘッドと固定測定子とが被測定物の内周面に付勢された状態となるので、内径測定器の姿勢が安定し、誤差の発生を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に本実施形態の内径測定器1の斜視図を、図2に正面図を示す。内径測定器1は、被測定物の内部に一端側が挿入される長手状の本体部10と、本体部10の一端側に設けられ被測定物の内部に挿入された状態で被測定物の内径を測定する測定部20と、本体部10の他端側に設けられ測定部20による測定結果を表示する表示手段30と、を備える。
【0019】
図3に測定部20の断面図を示す。
測定部20は、本体部10に螺合される円筒形状の基部21と、基部21に垂直に設けられ直線状に並んだ筒状の枝部22、23と、枝部22、23にそれぞれ設けられ枝部22、23の軸線上(すなわち測定軸線上)において互いに接近および離間可能である一対の測定子24と、一対の測定子24の移動量を表示手段30に伝達する伝達手段25と、測定軸線を適切な位置へガイドするガイド手段26と、手動操作により一対の測定子24およびガイド手段26を本体部10側へ移動させる操作手段27と、を備える。
【0020】
測定部20の基部21は、本体部10と同径の略円筒形状であり、雄ねじ部211と、キー孔212と、二つの突起部213と、枝部22および23との接続部214と、を有する。
雄ねじ部211は、本体部10側の端部に設けられ、本体部10の内周面下端部に設けられた雌ねじ部100に螺合される。これにより、測定部20の全体が、本体部10の下端部に固定されている。キー孔212は、基部21の外周面の枝部23側に、本体部10の軸線に沿って設けられた縦長の孔部である。二つの突起部213は、キー孔212と反対側の外周面上部に設けられ、互いに平行な板状の形状を有し、先端に孔部215を有する(図4参照)。二つの突起部213および孔部215は、後述するように、操作手段27を固定するためのものである。接続部214は、円弧状の底面を有する略直方体形状の中空部材であり、上面が基部21に、左右側面が枝部22、23に結合されている。
【0021】
枝部22は、接続部214の右側面に設けられ、本体部10と逆側の内周面端部に雌ねじ部221を、外周面の本体部10と逆側に測定軸線に沿って設けられた横長のキー孔222を有する。雌ねじ部221には、ホルダ223が螺合される。
枝部23は、接続部214の左側面に設けられ、外周面の全面に雄ねじ部231を有する。雄ねじ部231には、袋ナット232が螺合される。
【0022】
一対の測定子24は、枝部22にホルダ223を介して測定軸線に沿う方向にスライド移動可能に設けられた略円柱形状の可動測定子240と、枝部23に袋ナット232を介して固定された固定測定子241と、を備える。
【0023】
可動測定子240は、円柱状の軸部242と、球状の先端部243Aを有し軸部242より径の大きい頭部243と、を備える。
軸部242は、枝部22に挿通、保持されており、本体部10側の一端に後述するワイヤ257を係合する係合部245を、他端部に頭部243を有する。軸部242の中心部よりやや本体部10側には略円柱系状のキー246が係合されている。キー246は、枝部22のキー孔222の内部に突出している。これにより、可動測定子240は、測定軸線に沿った方向の一定範囲にスライド移動可能、かつ周方向に回転不能に構成されている。
【0024】
固定測定子241は、円柱状の軸部247と、軸部247より径の大きい円周上の鍔248と、球状の先端部249Aを有する頭部249と、を備える。
軸部247は、枝部23に挿通、保持されている。軸部247の本体部10側と逆側の端部には、鍔248と、頭部249とが設けられている。鍔248は、枝部23の端面と、袋ナット232とに挟まれている。これにより、固定測定子241は、枝部23に固定されている。
【0025】
伝達手段25は、基部21の内部に本体部10の軸方向に移動可能に設けられたロッド251と、ロッド251と可動測定子240とを連結する連結手段252と、ロッド251を本体部10の軸線に沿って表示手段30側に付勢する第1付勢手段253と、可動測定子240を測定軸線に沿って本体部10から離れる方向へ付勢する第2付勢手段254と、を備える。
【0026】
ロッド251は、円柱形状の部材で、基部21に挿通、保持されており、表示手段30側の端部に円錐状の先端部251Aと雄ねじ部251Bを有し、雄ねじ部251Bにはナット251Cが螺合されている。ロッド251の他端部には、後述するワイヤ257を係合する係合部255が設けられている。ロッド251の外周面の係合部255側には略円柱系状のキー256が係合されている。キー256は、基部21のキー孔212の内部に突出している。これにより、ロッド251は、本体部10の長手方向に沿った方向の一定範囲にスライド移動可能、かつ周方向に回転不能に構成されている。
なお、表示手段30はダイヤルゲージであり、ダイヤルゲージの図示しないスピンドルがロッド251の先端部251Aに当接されている。これにより、ロッド251の移動量が、表示手段30であるダイヤルゲージにより検出、表示される。
【0027】
連結手段252は、ワイヤ257と、滑車258とを備える。
ワイヤ257は、一端が可動測定子240の係合部245に、他端がロッド251の係合部255に係合されたスチールワイヤである。滑車258は、接続部214の内部に、本体部10の長手方向および測定軸線を含む面に対して平行に回転可能に設けられ、ワイヤ257の方向を転換する。
【0028】
第1付勢手段253は、基部21の雄ねじ部211の内周面に設けられたばね穴216に、ロッド251の外周面を覆うようにして挿入されたスプリング253Aである。スプリング253Aは、一端がばね穴216の底部に、他端がナット251Cに係合されている。スプリング253Aは、ロッド251を本体部10の軸線に沿って表示手段30側に付勢する。
【0029】
第2付勢手段254は、ホルダ223と可動測定子240の軸部242との間に、軸部242の外周面を覆うように設けられたスプリング254Aである。スプリング254Aは、一端が枝部22の端部に、他端が可動測定子240の頭部243に係合されている。スプリング254Aは、可動測定子240を測定軸線に沿って本体部10から離れる方向へ付勢する。なお、スプリング254Aが可動測定子240を付勢する力は、スプリング253Aがロッド251を付勢する力よりも強い。
【0030】
以上のような伝達手段25の構成により、ロッド251は、可動測定子240が測定軸線方向へ移動したのと同じ分だけ、本体部10の軸線方向に移動される。逆に、ロッド251が本体部10の軸線方向へ移動したときには、それと同じ分だけ、可動測定子240が、測定軸線方向に移動される。そして、スプリング254Aのほうがスプリング253Aよりも強いので、外からの力が加わらなければ、キー246で制限される範囲内で、可動測定子240が、本体部10から最も離れた位置に自然に移動する。
【0031】
図4に、ガイド手段26の分解図を示す。
ガイド手段26は、本体部10の長手方向および測定軸線を含む面を間にして対称に配置された一対のガイドヘッド261と、一対のガイドヘッド261を連結する連結軸部262と、ガイドヘッド261および連結軸部262を測定軸線に沿う方向にスライド移動させるスライド手段263である第3付勢手段263Aと、を備える。
【0032】
一対のガイドヘッド261は、図4に示すように車輪面の滑らかな車輪であり、連結軸部262に、測定軸線および本体部10の長手方向に対して直交する軸を中心として回転可能に保持されている。
連結軸部262は略長方形の板状部材であり、両端部に一対のガイドヘッド261を保持し、中心部にホルダ223を挿通する孔部264を、本体部10側の端面に第3付勢手段263Aを覆うように断面U字形に形成されたスプリング保護部265を有する。
第3付勢手段263Aは、枝部22の外周面を覆うように設けられたスプリング263Bである。スプリング263Bは、一端が接続部214の枝部22側の端面に、他端が連結軸部262の本体部10側の端面に係合されている。スプリング263Bは、ガイドヘッド261および連結軸部262を測定軸線に沿って本体部10から離れる方向へ付勢する。
【0033】
操作手段27は、ハンドル270と、本体部10に操作手段27を揺動可能に支持する揺動支点271と、ロッド251に係合され可動測定子240を連結手段252を介して本体部10側に移動させる第1係合部272と、ガイド手段26に係合されガイド手段26を本体部10側に移動させる第2係合部273と、を備える。
【0034】
ハンドル270は、緩やかにカーブした板状の握り部270Aと、測定部20の基部21の突起部213を覆うようにコの字状に形成された係合部270Bと、を有する。係合部270Bの、突起部213の孔部215に対応する位置には、孔部270Cが設けられている。孔部215と、孔部270Cを貫通する支持棒274が、本体部10に操作手段27を揺動可能に支持する揺動支点271である。
【0035】
第1係合部272は、握り部270Aの係合部270B側に設けられた爪部270Dである。爪部270Dは、ロッド251の略中心部に本体部10の軸および測定軸線に垂直な方向に突き出すように設けられ、基部21に本体部10の軸に沿って設けられた縦長の孔部217を介して外部に突出する円柱状の突起部275と当接する。図5に示すように、ハンドル270を揺動させると、爪部270Dおよび突起部275を介してロッド251が表示手段30側に持ち上げられる。ここで、上述のように、ロッド251と可動測定子240とは連結手段252を介して連動するように構成されているので、可動測定子240が、本体部10側に移動される。
【0036】
第2係合部273は、係合部270Bの握り部270Aと逆側の端部に設けられた爪部270Eである。爪部270Eは、スプリング保護部265の側面に本体部の軸および測定軸線に垂直な方向に突き出すように設けられた円柱状の突起部266と当接する。図5に示すように、ハンドル270を揺動させると、爪部270Eおよび突起部266を介して、ガイド手段26が、本体部10側に移動される。
【0037】
このような内径測定器1を用い、被測定物の内径を測定する際の操作について説明する。
図6に示すように、ハンドル270を片手で握って揺動させ、可動測定子240およびガイド手段26を本体部10側に移動させる。この状態で、測定部20を被測定物の内部に挿入する。
この時、内径測定器1を上から見た断面図が図7である。可動測定子240およびガイド手段26が本体部10側に移動されているので、測定部20を容易に被測定物の内部に挿入することができる。
【0038】
次に、図8に示すように、固定測定子241の先端部249Aを被測定物の内周に当接させる。この状態において、ハンドル270をゆっくり開放すると、可動測定子240およびガイド手段26が、スプリング254Aおよびスプリング263Bによって、本体部10から離れる方向に付勢され、一対のガイドヘッド261と固定測定子241の先端部249Aと可動測定子240の先端部243Aとが、被測定物の内周面に当接した状態となる。
【0039】
ここで、一対のガイドヘッド261は本体部10の長手方向および測定軸線を含む面を間にして対称に配置されているので、必然的に、測定軸線が被測定物の直径に一致した状態となる。したがって、可動測定子240の移動量から被測定物の内径を求めることができる。
【0040】
本実施形態によれば、以下に示すような効果がある。
(1) 内径測定器1が、本体部10の長手方向および測定軸線を含む面を間にして対称に配置された一対のガイドヘッド261と、一対のガイドヘッド261を連結する連結軸部262と、ガイドヘッド261および連結軸部262を測定軸線に沿う方向にスライド移動させるスライド手段263と、を含むガイド手段26を備えるので、測定軸線を被測定物の直径に一致させる位置へガイドすることができる。
したがって、一対の測定子24の位置を調整する必要がなく、個人の感覚の違いによる測定値のばらつきを排除することができる。
【0041】
(2)ロッド251と可動測定子240とが連結手段252を介して連結され、ロッド251を本体部10の軸線に沿って表示手段30側に付勢する第1付勢手段253と可動測定子240を測定軸線に沿って本体部10から離れる方向へ付勢する第2付勢手段254とが設けられているので、可動測定子240が測定軸線方向へ移動したのと同じ分だけ、ロッド251が本体部10の軸線方向に移動される。これにより、表示手段30が、ロッド251の移動量に基づいて可動測定子240の移動量を表示することができる。
【0042】
(3)連結手段252がワイヤ257と滑車258とで構成されるので、カムなどの他の連結手段を用いる場合と比べて、伝達誤差が少なく高精度な測定を行うことができる。しかも、カムのような高精度な加工が不要であり、コストを抑えることができる。また、機構が単純でスペースをとらないので、装置の小型化が可能である。さらに、ワイヤ257の長さを変更すれば、容易に測定範囲を広くすることができる。
【0043】
(4)ハンドル270を片手で握って、本体部10に対して揺動させることで、第1係合部272および第2係合部273を介して、可動測定子240およびガイド手段26を本体部10側に同時に移動させることができる。
ハンドル270により可動測定子240およびガイド手段26を本体部10側に移動させた状態においては、可動測定子240と固定測定子241との間の距離が短くなり、測定部20を被測定物の内部に容易に挿入することができる。また、可動測定子240およびガイド手段26が同時に移動されるから、可動測定子240とガイド手段26とを別々に移動させる必要がなく、操作が一度で済むので、効率的に測定を行うことができる。
【0044】
(5)スプリング263Bによって、一対のガイドヘッド261および連結軸部262が、測定軸線に沿って本体部10から離れる方向に付勢されるので、一対のガイドヘッド261および固定測定子241を被測定物の内周面に当接させ、測定軸線を被測定物の直径に一致させることが容易である。
また、一対のガイドヘッド261と固定測定子241とが被測定物の内周面に付勢された状態となるので、内径測定器1の姿勢が安定し、誤差の発生を防ぐことができる。
【0045】
(6)スプリング254Aのほうがスプリング253Aよりも強いので、外からの力が加わらなければ、キー246で制限される範囲内で、可動測定子240が、本体部から最も離れた位置に自然に移動する。これにより、ハンドル270を片手で握って測定部20を被測定物の内部に挿入したあと、ハンドル270を開放するだけで、特別な操作をしなくても自然に、可動測定子240の先端部243Aを被測定物の内周面に当接させることができる。したがって、測定が非常に容易である。
【0046】
(7)被測定物の内周面に当接される部分である、可動測定子240の先端部243Aおよび固定測定子241の先端部249Aが球形に形成され、一対のガイドヘッド261が車輪面の滑らかな車輪であるので、被測定物の内周面を破損する可能性が低い。
また、一対のガイドヘッド261が、車輪面の滑らかな車輪であるので、被測定物の内周面に沿って摺動しやすく、測定軸線を被測定物の直径に一致させる位置へ円滑にガイドすることができる。
【0047】
(8)一対のガイドヘッド261が、測定軸線および本体部10の長手方向に対して直交する軸を中心として回転可能な車輪なので、測定部20を被測定物の内部に挿入する際に、ガイド手段26が十分に本体側に移動していない場合でも、ガイドヘッド261が回転しつつガイド手段26を本体部側に移動させるので、測定部20を被測定物の内部に挿入することができる。
【0048】
(9)ハンドル270の第1係合部272および第2係合部273の形状や揺動支点271からの距離、キー穴212の長さとキー穴222の長さとの比率を変更すれば、可動測定子240およびガイド手段26の移動範囲を任意に設定できる。このとき、可動測定子240およびガイド手段26のそれぞれに対し、異なる移動範囲を設定することも可能である。たとえば、ガイド手段26の移動範囲を大きく設定すれば、軟質の被測定物の内径を測定する際に、ガイドヘッド261を過剰に被測定物に押し当てて挿入することがなく、打痕やキズの発生を防ぐことができる。
【0049】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
(i)表示手段30はロッド251の移動量を検出、表示できるものであればよく、ダイヤルゲージ30Aに限定されない。たとえば、ダイヤルゲージ30Aは、アナログ式のものに限らず、デジタル式のものであってもよい。
(ii)第1〜3付勢手段253、254、263は、本実施形態のスプリング253A、254A、263Bに限定されない。たとえば、油圧式のものであってもよい。
【0050】
(iii)ワイヤ257は、本実施形態で示したスチールワイヤに限定されない。形状の変形に自由度があり、寸法変化の少ないものであればよく、たとえば、ピアノ線やスチールベルトであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、筒状の被測定物の内径などを求める内径測定器として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態の内径測定器の斜視図。
【図2】本実施形態の内径測定器の正面図。
【図3】本実施形態の内径測定器の測定部の断面図。
【図4】本実施形態の内径測定器のガイド手段の分解図。
【図5】本実施形態の内径測定器の操作手段を操作した時の測定部の断面図。
【図6】本実施形態の内径測定器の操作手段を操作した時の正面図。
【図7】本実施形態の内径測定器を上から見た断面図。
【図8】本実施形態の内径測定器を上から見た断面図。
【図9】従来の内径測定器の斜視図。
【図10】従来の内径測定器を上から見た断面図。
【図11】従来の内径測定器で測定を行う場合の位置関係の略図。
【符号の説明】
【0053】
1 内径測定器
10 本体部
20 測定部
21 基部
22、23 枝部
24 一対の測定子
25 伝達手段
26 ガイド手段
27 操作手段
30 表示手段
240 可動測定子
241 固定測定子
251 ロッド
252 連結手段
253 第1付勢手段
254 第2付勢手段
257 ワイヤ
258 滑車
261 一対のガイドヘッド
262 連結軸部
263 スライド手段
263A 第3付勢手段
272 第1係合部
273 第2係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の被測定物の内部に一端側が挿入される長手状の本体部と、
前記本体部の一端側に設けられ前記被測定物の内部に挿入された状態で前記被測定物の内径を測定する測定部と、
前記本体部の他端側に設けられ前記測定部による測定結果を表示する表示手段と、を備え、
前記測定部は、
前記本体部の長手方向に直交する方向に設定された測定軸線上において互いに接近および離間可能である一対の測定子と、
前記測定軸線を前記被測定物の直径に一致させる位置へガイドするガイド手段と、を備え、
前記ガイド手段は、
前記本体部の長手方向および前記測定軸線を含む面を間にして対称に配置された一対のガイドヘッドと、
前記一対のガイドヘッドを連結する連結軸部と、
前記ガイドヘッドおよび前記連結軸部を前記測定軸線に沿う方向にスライド移動させるスライド手段と、を備える
ことを特徴とする内径測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の内径測定器において、
前記一対の測定子は、
前記測定軸線に沿う方向にスライド移動する可動測定子と、
前記測定軸線上の前記可動測定子の設けられた部分と前記本体部を挟んで反対側に固定された固定測定子と、を備え
前記表示手段と前記可動測定子との間に伝達手段を備え、
前記伝達手段は、
前記本体部の内部に前記本体部の軸方向に移動可能に設けられたロッドと、
前記ロッドと前記可動測定子とを連結する連結手段と、
前記ロッドを前記本体部の軸線に沿って前記表示手段側に付勢する第1付勢手段と、
前記可動測定子を前記測定軸線に沿って前記本体部から離れる方向へ付勢する第2付勢手段と、を備える
ことを特徴とする内径測定器。
【請求項3】
請求項2に記載の内径測定器において、
前記連結手段は、
一端が前記可動測定子に固定されかつ他端が前記ロッドに固定されたワイヤと、
前記本体部の一端と前記測定部との接続部に配設され前記ワイヤの方向を転換する滑車と、を備える
ことを特徴とする内径測定器。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の内径測定器において、
手動操作により前記可動測定子および前記ガイド手段を前記本体部側へ移動させる操作手段を備え、
前記操作手段は、
前記本体部に前記操作手段を揺動可能に支持する揺動支点と、
前記ロッドに係合され前記可動測定子を前記連結手段を介して前記本体部側に移動させる第1係合部と、
前記ガイド手段に係合され前記ガイド手段を前記本体部側に移動させる第2係合部と、を備える
ことを特徴とする内径測定器。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の内径測定器において、
前記スライド手段は、
前記ガイドヘッドおよび前記連結軸部を前記測定軸線に沿って前記本体部から離れる方向に付勢する第3付勢手段を備える
ことを特徴とする内径測定器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate