説明

内服用固形製剤

【課題】 製剤的に安定であり経時的な色調変化が抑制された、オタネニンジン及び/又はその抽出物を含有する内服用固形製剤を提供すること。
【解決手段】 (A)オタネニンジン(Panax ginseng)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と共に、(B)ローヤルゼリー及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(C)ショウキョウ(Zingiber officinale)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種とを配合して、内服用固形製剤を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤的に安定で経時的な色調の変化が抑えられ、また苦味が抑制されて服用し易い、内服用固形製剤に関する。更に本発明は、内服用固形製剤の安定性を改善する方法、並びに内服用固形製剤の経時的な色調の変化を抑制する方法に関する。また本発明は、内服用固形製剤の苦味を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、医薬品やサプリメント等の製剤の開発においては、配合される成分の種類やその組み合わせによって、経時的に不安定になり、製剤に色調の変化などをきたす場合がある。特に、生薬などの生物由来原料などを有効成分として含有する製剤では、吸湿性が高いことが多く、このような経時的な色調の変化を一般に生じ易い。こうした製剤の経時的変化は、有効成分の品質劣化や含量低下を招くことに繋がりかねず、そのような製剤を医薬品やサプリメント等として服用しても所期の効果を発揮できない虞がある。また、製剤の経時的な色調の変化は、服用する者に心理的に大きな不安感を与える要因にもなる。そのため、医薬品やサプリメント等の開発にあたっては、製剤的に安定であり、経時的な色調変化が抑えられた製剤の開発が強く求められている。
【0003】
これまでにも、内服用固形製剤の製剤安定性を高め、経時的な色調変化を抑制する方法が検討されている。例えば、特許文献1では、アカルボースを比表面積が50m2/g以上である多孔性吸着剤の1種又は2種以上に吸着させることにより、製剤的に安定で経時的な色調変化が抑制されたアカルボース含有錠剤が得られることが記載されている。また非特許文献1では、分包包装紙を防湿性の高いものに変更したり、乾燥剤を一緒に缶の中に入れておくことにより、エキス製剤の安定性を高め、変色を抑えることが記載されている。しかしながら、このような方法は製剤工程が煩雑となったり、製造コストが高くなったり、保管が手間になるという問題がある。また例えば、特許文献2には、サラシア属植物の抽出物に、クルクミノイド類を配合し、食品組成物重量(mg)/スクラーゼの50%阻害濃度(μg/ml)という特定の式で決定される値を0.1以上とすることにより、サラシア属植物成分を含有しても変色が抑制された食品組成物とすることができることが記載されている。更に、特許文献3では、イブプロフェンに、ジメモルファンまたはその塩類およびクレゾールスルホン酸カリウムを組み合わせることにより、イブプロフェンにより引き起こされる経時的な色調変化が抑えられた医薬組成物が提供されることが記載されている。しかし、どのような要素により不安定化要因が解消され経時的な色調変化が抑制されるかは、有効成分ごとに性質が異なることから個々に検討する必要があり、これらは汎用的な方法とは言えない。
【0004】
一方、内服用製剤の開発においては、服用のし易さも重要である。従来は、良薬口に苦しといわれるように、身体によく効くものは苦くて飲みにくいものであり苦くても我慢して服用するのが当然とされていた。しかし、近年では、生活の質(QOL:Quality of Life)の向上が重視されてきており、医薬品やサプリメント等においても、安全性や効果だけでなく、QOL向上の観点から服用のし易さが求められるようになってきている。また、服用に際して不快な苦味を感じさせるなど、服用者に我慢を強いるような内服用製剤では、適切な服用指示が守られない虞があり、意図された治療・予防効果が十分に得られなくなる場合もある。従って、効果が同等であれば、服用し易い製剤の方が望ましいのは、単に服用者の負担を軽減するだけでなく、服用コンプライアンス(服用遵守)を向上させ、予定の治療・予防効果を達成するという点からも重要である。
【0005】
内服用製剤の苦味を抑制(マスキング)する方法としては、一般的には、矯味剤を添加して製剤化する方法が汎用されている。しかしながら、有効成分ごとに苦味の種類や閾値の大きさが異なるために、必ずしも効果的に苦味を抑制できない場合がある。また、苦味などをマスキングする方法として、物理的に担体に吸着させる方法や、苦味のある成分をマイクロカプセル化する方法なども知られているが、これらの方法では製剤が大型化して服用しづらい製剤となったり、担体吸着やカプセル化により消化管吸収阻害が起こったり、製剤化工程が複雑になるといった問題があった。
【0006】
オタネニンジン(Panax ginseng)は、ギンセノシドなどの成分を含み、滋養強壮などの効果を期待して古くから人々の間で服用されている生薬の一種である。そしてオタネニンジンは、口に含んだとき、味は初めはわずかに甘いものの後にやや苦味を感じることが知られており、お世辞にも美味しいとは言いづらい成分である。
また、ローヤルゼリーは、種々の栄養成分を含むために健康食品等に用いられることが多い成分であるが、収れん性の酸味を感じさせることが知られている。また、ショウキョウ(Zingiber officinale)は、かぜ薬や健胃消化薬などに古くから配合されてきた生薬の一種であり、極めて辛い味を呈することが知られている。
【0007】
しかしこれまで、オタネニンジン及び/又はその抽出物と、ローヤルゼリー及び/又はその抽出物と、ショウキョウ及び/又はその抽出物とを組み合わせて含有する内服用固形製剤は全く知られていない。従って、これらの3種の成分を内服用固形製剤において組み合わせて配合した場合に、固形製剤の安定性や服用性に対して如何なる影響が及ぼされるのかについては、全く予想すらできないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−227658号公報
【特許文献2】特開2009−219370号公報
【特許文献3】特開2005−289906号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】岩浪登、臨床と薬物治療、4月号第11巻第3号、278-282、1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来の問題に鑑み、オタネニンジン等の生薬を含みながら製剤的に安定で、経時的な色調の変化を生じ難い内服用固形製剤を提供することを目的とする。
【0011】
また本発明者等は、オタネニンジンを含む内服用固形製剤について種々検討していたところ、オタネニンジンとローヤルゼリーとを組み合わせて配合した場合には、ローヤルゼリーそれ自体にはさほど苦味は感じられなかったにもかかわらず、オタネニンジンに由来する苦味を著しく増強させてしまうという全く予想外の知見を得た。このように苦味が増強されると、服用者のQOLを害するだけでなく、服用コンプライアンスを低下させ、ひいては意図された治療・予防効果が達成されなくなる場合がある。従って、本発明は、オタネニンジン及び/又はその抽出物とローヤルゼリー及び/又はその抽出物とを含有しながら、苦味の増強が抑制され、服用し易い内服用固形製剤を提供することを更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、オタネニンジン及び/又はその抽出物に対して、ローヤルゼリー及び/又はその抽出物と、ショウキョウ及び/又はその抽出物とを組み合わせて内服用固形製剤に配合すると、該製剤の経時的な色調変化が顕著に抑制され、非常に安定な製剤とすることができることを見出した。また、本発明者等は、オタネニンジン及び/又はその抽出物とローヤルゼリー及び/又はその抽出物とを組み合わせることにより苦味が著しく増強されてしまうものの、この苦味の増強は、全く予想外なことにショウキョウ及び/又はその抽出物を更に配合することにより効果的に抑制できることをも見出した。本発明は、かかる知見に基づき、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0013】
従って、本発明は、以下の内服用固形製剤を提供する。
項1.(A)オタネニンジン(Panax ginseng)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)ローヤルゼリー及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(C)ショウキョウ(Zingiber officinale)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種とを含有する、内服用固形製剤。
【0014】
また、本発明は、以下のオタネニンジン及び/又はその抽出物を含有する内服用固形製剤の安定性を改善する方法を提供する。
項2.(A)オタネニンジン(Panax ginseng)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)ローヤルゼリー及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(C)ショウキョウ(Zingiber officinale)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種とを組み合わせて内服用固形製剤に配合することを特徴とする、該(A)成分を含有する内服用固形製剤の安定性を改善する方法。
【0015】
更に、本発明は、以下のオタネニンジン及び/又はその抽出物を含有する内服用固形製剤の経時的な色調変化を抑制する方法を提供する。
項3.(A)オタネニンジン(Panax ginseng)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)ローヤルゼリー及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(C)ショウキョウ(Zingiber officinale)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種とを組み合わせて内服用固形製剤に配合することを特徴とする、該(A)成分を含有する内服用固形製剤の色調変化を抑制する方法。
【0016】
更に別の観点から、本発明は、以下のオタネニンジン及び/又はその抽出物とローヤルゼリー及び/又はその抽出物とを組み合わせて配合することにより増強される内服用固形製剤の苦味を抑制する方法を提供する。
項4.(A)オタネニンジン(Panax ginseng)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と(B)ローヤルゼリー及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と共に、(C)ショウキョウ(Zingiber officinale)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を組み合わせて内服用固形製剤に配合することを特徴とする、該(A)成分及び該(B)成分を含有する内服用固形製剤の苦味を抑制する方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、オタネニンジン及び/又はその抽出物を含有していながら、製剤的に安定で、経時的な色調の変化が顕著に抑制された内服用固形製剤が提供される。更に本発明によれば、オタネニンジン及び/又はその抽出物とローヤルゼリー及び/又はその抽出物とを含有していながら、両者の併用により生じる苦味の増強が抑制され、服用し易い内服用固形製剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.内服用固形製剤
本発明の内服用固形製剤は、オタネニンジン及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種〔以下、単に(A)成分ということもある〕を含有する。
【0019】
オタネニンジン(Panax ginseng C.A.Meyer(Panax schinseng Nees))は、ウコギ科のオタネニンジンの根に由来し、滋養強壮作用や血行促進作用、抗疲労作用、抗ストレス作用などを有することが公知の生薬である。オタネニンジンは、高麗人参や朝鮮人参、薬用人参とも呼ばれ、また単にニンジンと呼ばれることもある。また、調製方法の違いにより、紅参や白参、生干人参、湯通し人参、ヒゲ人参、糖参などと呼ばれることもある。
【0020】
オタネニンジンは、日本における医薬品公定書の第十五改正日本薬局方にもニンジン又はニンジン末、或いはコウジンとして記載されている。本発明にはこれらの日本薬局方に記載のものが好適に用いられ、殊にニンジン又はニンジン末として記載のもの、特にニンジンとして記載のものが好適に用いられる。
【0021】
本発明の内服用固形製剤に用いられるオタネニンジン及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種は、例えば、オタネニンジンの根そのものであってもよいし、それを軽く湯通ししたもの又は蒸したものであってもよいし、或いはそれらを粉砕化して得られる粉末の形態のものであってもよいし、更にはそれらのオタネニンジンの根から水やエタノールなどの溶媒を用いて抽出・精製されるオタネニンジン抽出物(オタネニンジンエキス、或いは単にニンジンエキス、ともいう)であってもよい。またオタネニンジン抽出物は、抽出液そのままのものであってもよいし(チンキ、流エキスなど)、希釈もしくは濃縮したものであってもよいし(軟エキスなど)、または乾燥した後、粉末化もしくはペースト状としたものであってもよい(乾燥エキスなど)。製剤安定性の獲得がより一層求められ、製剤の色調変化を抑制する効果が一層有効に獲得されるという観点から、好ましくは、本発明には、オタネニンジン抽出物が用いられ、より好ましくはオタネニンジンの根又はこれを軽く湯通ししたものから得られる抽出物が用いられ、更に好ましくはオタネニンジンの根又はこれを軽く湯通ししたものから得られる抽出液を希釈若しくは濃縮した抽出物又は乾燥した後に粉末化若しくはペースト状にした抽出物が用いられ、殊に好ましくはオタネニンジンの根又はこれを軽く湯通ししたものから得られる粉末状もしくはペースト状の抽出物が用いられ、特に好ましくはオタネニンジンの根又はこれを軽く湯通ししたものから得られる粉末状の抽出物が用いられる。ここで挙げた好ましいオタネニンジン抽出物は、より一層有効に苦味マスキング効果を獲得することができるという観点からも好適である。
【0022】
オタネニンジンおよびその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種には市販品も好適に用いることができ、例えば、オタネニンジン抽出物は、理研化学工業株式会社、小城製薬株式会社、福田龍株式会社などから容易に入手可能である。
【0023】
本発明の内服用固形製剤において、オタネニンジン及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の配合割合は、本発明の効果を奏し得る限り特に制限されないが、その配合割合が高くなるにつれて製剤の経時的な色調変化が酷くなる傾向がある。然るに、本発明によれば、このような著しい色調変化であっても効果的に抑制することができ非常に安定な製剤とすることができる。かかる観点に鑑みれば、本発明の内服用固形製剤におけるオタネニンジン及び/又はその抽出物の配合割合として、内服用固形製剤の総量1gあたり、原生薬換算量としてオタネニンジン及び/又はその抽出物を総量で100〜12000mgが好ましく、1000〜5000mgがより好ましく、1500〜4000mgが特に好ましい。ここで原生薬換算量とは、その成分量を得るために必要な原生薬の重量(乾燥重量)をいう。従って、オタネニンジン抽出物の場合には、その抽出物の量を得るために必要な原生薬の乾燥重量が原生薬換算量となり、一方、オタネニンジンの根を乾燥させただけのものや、それを粉砕化しただけの粉末オタネニンジンの場合には、それら自体の重量=原生薬換算量となる。
【0024】
例えば、オタネニンジン抽出物のみを用いる場合に、本発明の内服用固形製剤の総量に対するオタネニンジン抽出物の原生薬換算量での配合割合を上記の範囲内とするためには、その原生薬からの抽出率によって多少変動するが、乾燥抽出物(乾燥エキス)であっても軟抽出物(軟エキス)であっても、概ね、内服用固形製剤の総量に対して、オタネニンジン抽出物の総量が、8.5〜80w/w%、好ましくは20〜65w/w%、より好ましくは22〜60w/w%となるように配合される。また例えば、オタネニンジンのみを用いる場合には、本発明の内服用固形製剤の総量に対して、概ね、オタネニンジンを総量で8.5〜80w/w%、好ましくは20〜65w/w%、より好ましくは28〜60w/w%となるように配合される。
【0025】
本発明の内服用固形製剤は、更に、ローヤルゼリー及び/又はその抽出物〔以下、単に(B)成分ということもある〕を含有する。
【0026】
ローヤルゼリーは、ミツバチのなかでも若い働き蜂の頭部にある咽頭腺等の分泌腺から分泌される分泌物として公知の物質である。
【0027】
本発明の内服用固形製剤に用いられるローヤルゼリー及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種は、例えば、ローヤルゼリーそのもの(生ローヤルゼリーともいう)であってもよいし、それを乾燥(例えば、凍結乾燥)したものであってもよいし、或いはそれらから水やエタノールなどの溶媒を用いて抽出・精製されるローヤルゼリー抽出物(ローヤルゼリーエキスともいう)であってもよい。またローヤルゼリー抽出物は、抽出液そのままのものであってもよいし(チンキ、流エキスなど)、希釈もしくは濃縮したものであってもよいし(軟エキスなど)、または乾燥した後、粉末化もしくはペースト状としたものであってもよい(乾燥エキスなど)。後述の(C)成分と一緒になって、前記(A)成分を含有する内服用固形製剤の安定性を一層高め、該製剤の色調変化をより一層効果的に抑制できるという観点から、好ましくは、本発明にはローヤルゼリーが用いられる。また(B)成分のなかでも、ローヤルゼリーは、前記(A)成分と組み合わされた場合に該(A)成分の苦味をより一層酷くさせる傾向があるが、本発明によれば、このように著しく増強された苦味であっても効果的に抑制することができる。従って、かかる観点からも、本発明には(B)成分として、好ましくはローヤルゼリーが用いられる。
【0028】
ローヤルゼリーおよびその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種には市販品も好適に用いることができ、例えば、ローヤルゼリーは、アルプス薬品工業株式会社、日本粉末薬品株式会社、福田龍株式会社などから容易に入手可能である。
【0029】
本発明の内服用固形製剤において、ローヤルゼリー及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の配合割合は、本発明の効果を奏し得る限り特に制限されないが、後述の(C)成分と一緒になって、前記(A)成分を含有する内服用固形製剤の安定性を一層高め、該製剤の色調変化をより一層効果的に抑制できるという観点から、好ましくは、内服用固形製剤の総量1gあたり、原料換算量としてローヤルゼリー及び/又はその抽出物を総量で1〜500mg、より好ましくは10〜290mg、特に好ましくは15〜50mgとするのがよい。ここで原料換算量とは、その成分量を得るために必要なローヤルゼリーの重量をいう。従って、ローヤルゼリー抽出物の場合には、その抽出物の量を得るために必要なローヤルゼリーの重量が原料換算量となり、一方、ローヤルゼリーそのものの場合には、それら自体の重量=原料換算量となる。
【0030】
例えば、ローヤルゼリー抽出物のみを用いる場合に、本発明の内服用固形製剤の総量に対するローヤルゼリー抽出物の原料換算量での配合割合を上記の範囲内とするためには、ローヤルゼリーからの抽出率によって多少変動するが、乾燥抽出物(乾燥エキス)であっても軟抽出物(軟エキス)であっても、概ね、内服用固形製剤の総量に対して、ローヤルゼリー抽出物の総量が、0.5〜80w/w%、好ましくは1〜30w/w%、より好ましくは1.5〜15w/w%となるように配合される。また例えば、ローヤルゼリーのみを用いる場合には、本発明の内服用固形製剤の総量に対して、概ね、ローヤルゼリーを総量で0.5〜80w/w%、好ましくは1〜50w/w%、より好ましくは1.5〜30w/w%となるように配合される。
【0031】
本発明の内服用固形製剤における(A)オタネニンジン及び/又はその抽出物と、(B)ローヤルゼリー及び/又はその抽出物との重量比は、本発明の効果を奏し得る限り特に制限されないが、該(A)成分を含有する内服用固形製剤の安定性を一層高め、当該製剤の色調変化をより効果的に抑制するという観点から、好ましくは、(A)成分の原生薬換算量の総量1重量部に対して、(B)成分の原料換算量の総量が、0.0001〜1重量部、より好ましくは0.001〜0.5重量部、更に好ましくは0.005〜0.2重量部とするのがよい。またここで例示した重量比とすることによって、(A)成分と(B)成分とを組み合わせた場合の苦味はより一層酷くなる傾向があるが、本発明によればこのように酷く増強された苦味であっても効果的に抑制することができる。従って、ここで例示する(A)成分と(B)成分の重量比は、苦味マスキング効果をより一層有効に獲得するという観点からも好適である。
【0032】
本発明の内服用固形製剤は、ショウキョウ及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種〔以下、単に(C)成分ということもある〕を含有する。
【0033】
ショウキョウ(Zingiber officinale Roscoe)は、ショウガ科ショウガの根茎に由来し、健胃消化作用や鎮吐作用などを有することが公知の生薬である。
【0034】
ショウキョウは、日本における医薬品公定書の第十五改正日本薬局方にもショウキョウ又はショウキョウ末として記載されている。本発明にはこれらの日本薬局方に記載のものが好適に用いられ、特にショウキョウとして記載のものが好適に用いられる。
【0035】
本発明の内服用固形製剤に用いられるショウキョウ及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種は、例えば、ショウキョウの根茎そのものであってもよいし、それを軽く湯通ししたもの又は蒸したものであってもよいし、或いはそれらを粉砕化して得られる粉末の形態のものであってもよいし、更にはそれらのショウキョウの根茎から水やエタノールなどの溶媒を用いて抽出・精製されるショウキョウ抽出物(ショウキョウエキスともいう)であってもよい。またショウキョウ抽出物は、抽出液そのままのものであってもよいし(チンキ、流エキスなど)、希釈もしくは濃縮したものであってもよいし(軟エキスなど)、または乾燥した後、粉末化もしくはペースト状としたものであってもよい(乾燥エキスなど)。前述の(B)成分と一緒になって、前記(A)成分を含有する内服用固形製剤の安定性を一層高め、該製剤の色調変化をより一層効果的に抑制できるという観点から、好ましくは、本発明には、ショウキョウ抽出物が用いられ、より好ましくはショウキョウの根茎から得られる抽出物が用いられ、更に好ましくはショウキョウの根茎から得られる抽出液を希釈若しくは濃縮した抽出物又は乾燥した後に粉末化若しくはペースト状にした抽出物が用いられる。ここで挙げた好ましいショウキョウ抽出物は、前記(A)成分と前記(B)成分とを組み合わせた場合に生じる著しい苦味の増強を効果的に抑制できるという観点からも好適である。
【0036】
ショウキョウおよびその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種には市販品も好適に用いることができ、例えば、ショウキョウ抽出物は、アルプス薬品工業株式会社、小城製薬株式会社、福田龍株式会社などから容易に入手可能である。
【0037】
本発明の内服用固形製剤において、ショウキョウ及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の配合割合は、本発明の効果を奏し得る限り特に制限されないが、前述の(B)成分と一緒になって、前記(A)成分を含有する内服用固形製剤の安定性を一層高め、該製剤の色調変化をより一層効果的に抑制できるという観点から、好ましくは、内服用固形製剤の総量1gあたり、原生薬換算量としてショウキョウ及び/又はその抽出物を総量で10〜1000mg、より好ましくは50〜600mg、特に好ましくは100〜400mgとするのがよい。ここで原生薬換算量とは、前記(A)成分について説明したものと同様の意味を有する。
【0038】
例えば、ショウキョウ抽出物のみを用いる場合に、本発明の内服用固形製剤の総量に対するショウキョウ抽出物の原生薬換算量での配合割合を上記の範囲内とするためには、その原生薬からの抽出率によって多少変動するが、乾燥抽出物(乾燥エキス)であっても軟抽出物(軟エキス)であっても、概ね、内服用固形製剤の総量に対して、ショウキョウ抽出物の総量が、0.5〜80w/w%、好ましくは1〜30w/w%、より好ましくは1.5〜15w/w%となるように配合される。また例えば、ショウキョウのみを用いる場合には、本発明の内服用固形製剤の総量に対して、概ね、ショウキョウを総量で0.5〜80w/w%、好ましくは1〜60w/w%、より好ましくは1.5〜30w/w%となるように配合される。
【0039】
本発明の内服用固形製剤における(A)オタネニンジン及び/又はその抽出物と、(C)ショウキョウ及び/又はその抽出物との重量比は、本発明の効果を奏し得る限り特に制限されないが、前述の(B)成分と一緒になって、該(A)成分を含有する内服用固形製剤の安定性を一層高め、当該製剤の色調変化をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくは、(A)成分の原生薬換算量の総量1重量部に対して、(C)成分の原生薬換算量の総量が、0.001〜1重量部、より好ましくは0.005〜0.5重量部、更に好ましくは0.01〜0.2重量部とするのがよい。またここで例示した重量比は、前記(A)成分と前記(B)成分を組み合わせた場合に生じる苦味の増強をより一層効果的に抑制できるという観点からも好適である。
【0040】
更に、本発明の内服用固形製剤には、他の生薬を配合することもできる。他の生薬の具体例としては、例えば、ニクジュヨウ、ヨクイニン、ウイキョウ、エゾウコギ、加工ダイサン、ケイヒ、サフラン、トチュウ、セイヨウサンザシ、ブクリョウ、及びそれらの抽出物などを挙げることができる。これらのなかでも、ニクジュヨウ、ヨクイニン、及び/又はそれらの抽出物は特に好ましい生薬である。ニクジュヨウは、ハマウツボ科のホンオニク(Cistanche salsa)の肉質茎に由来し、滋養強壮作用を有することが公知の生薬である。またヨクイニンは、イネ科のハトムギ(Coix Lacryma-jobi Linne var. mayuen Staph)の種皮を除いた種子に由来し、いぼや肌荒れなどのほか、滋養強壮にも有効といわれている公知の生薬である。ニクジュヨウ及びヨクイニンの抽出物としては、前記(A)〜(C)成分と同様の製法で得られる抽出物が用いられ得る。本発明の(A)〜(C)成分を含有する内服用固形製剤に更にこれらのニクジュヨウ、ヨクイニン及び/又はそれらの抽出物を配合することによって、優れた製剤安定性が得られ経時的な製剤の色調変化がより効果的に抑制され、また優れた苦味マスキング効果が得られるのみならず、オタネニンジン及び/又はその抽出物の滋養強壮作用が格段に高められ、血色不良や冷え性、虚弱体質、肉体疲労、病中病後、胃腸虚弱、食欲不振などの場合(例えば、からだの疲れが顔に出てしまっている、或いは顔色が冴えないような状態の場合)に格段に優れた滋養強壮効果を発揮できる内服用固形製剤とすることができる。
【0041】
本発明の内服用固形製剤にニクジュヨウ及び/又はその抽出物を配合する場合、オタネニンジン及び/又はその抽出物との重量比は特に制限されないが、好ましくは、オタネニンジン及び/又はその抽出物の原生薬換算量の総量1重量部に対して、ニクジュヨウ及び/又はその抽出物の原生薬換算量の総量が、0.001〜1重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部、特に好ましくは0.05〜0.2重量部となるように配合すればよい。ここで原生薬換算量とは、前記(A)成分について説明したものと同様の意味を有する。
【0042】
また本発明の内服用固形製剤にヨクイニン及び/又はその抽出物を配合する場合、オタネニンジン及び/又はその抽出物との重量比は特に制限されないが、好ましくは、オタネニンジン及び/又はその抽出物の原生薬換算量の総量1重量部に対して、ヨクイニン及び/又はその抽出物の原生薬換算量の総量が、0.001〜1.5重量部、より好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.05〜0.5重量部となるように配合すればよい。ここで原生薬換算量とは、前記(A)成分について説明したものと同様の意味を有する。
【0043】
本発明の内服用固形製剤は、必要に応じて、更なる種々の有効成分を含有してもよい。このような成分の種類や総量は特に制限されず、例えば、ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチンなど)、アミノ酸、ミネラル、ガンマ−オリザノール、グルクロノラクトン、ウルソデスオキシコール酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、カフェインなどが例示できる。このような更なる有効成分の含有量は、所望される効果の程度や適用される服用者の年齢・状態などの種々の要因により適宜変動され得るが、例えば、内服用固形製剤全体に対して0.001〜80w/w%、好ましくは0.001〜30w/w%、より好ましくは0.001〜10w/w%などであり得る。
【0044】
また本発明の内服用固形製剤は、本発明の効果を損なわない限り上記成分の他に、用途あるいは剤形などに応じて、医薬品、医薬部外品及び/又は食品に通常使用され得る任意の成分を適宜配合しても良い。配合できる成分としては、特に制限されないが、例えば、担体成分又は添加剤などが挙げられ、具体的には、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、抗酸化剤、コーティング剤、着色剤、界面活性剤、可塑剤、着香剤、崩壊補助剤、発泡剤、吸着剤、防腐剤、湿潤剤、帯電防止剤、矯味剤、保存剤などが例示できる。以下に任意に配合できる成分を具体的に例示するが、これらの成分に限定されるものではない。
【0045】
賦形剤:デンプン類(トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプンなど)、セルロース類(結晶セルロース、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウムなど)、糖アルコール(D−ソルビトール、マンニトール、キシリトールなど)、糖類(ブドウ糖、白糖、乳糖、果糖など)、デキストリン、βーシクロデキストリン、リン酸水素カルシウム、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルク、カオリンなど。本発明では、賦形剤としては、デンプン類、セルロース類、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、更にはデンプン類及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、殊にトウモロコシデンプン及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムが好ましいが、特に限定されない。
【0046】
崩壊剤:セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムなど)、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプンなど。本発明では、崩壊剤としては、セルロース誘導体、殊にヒドロキシプロピルセルロースが好ましいが、特に限定されない。
【0047】
結合剤:セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アクリル酸系高分子、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、アルファー化デンプン、カンテン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなど。
【0048】
滑沢剤:ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、セタノール、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ジメチルポリシロキサン、ミツロウ、サラシミツロウなど)。本発明では、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウムが好ましいが、特に限定されない。
抗酸化剤:ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、クエン酸など。
【0049】
コーティング剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタアクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタートジエチルアミノアセテート、セラックなど。
【0050】
着色剤:食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号、食用黄色4号金属レーキ、銅クロロフィンナトリウム、リボフラビン、ウコン抽出液、カロチン液など。
【0051】
界面活性剤:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール類、ショ糖脂肪酸エステルなど。
可塑剤:クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、トリアセチン、セタノールなど。
着香剤:メントール、カンフル、ボルネオール、シンナムアルデヒドなど。
矯味剤:白糖、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、糖アルコール、クエン酸など。
保存剤:安息香酸、パラオキシ安息香酸エステルなど。
【0052】
本発明の内服用固形製剤の剤形は特に制限されず、通常使用され得る任意の固形の剤形をとることができる。例えば、本発明の内服用固形製剤は、錠剤(素錠、口腔内速崩壊錠、口腔内速溶解錠、チュアブル錠、発泡錠、トローチ剤、ドロップ剤、フィルムコーティング錠、糖衣錠などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤などの剤形であり得る。一般に液剤(ドリンク剤など)の場合には、保存剤(安息香酸、パラオキシ安息香酸エステルなど)を比較的多量に添加したり、或いは矯味剤(白糖、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、糖アルコール、クエン酸など)を比較的多量に添加して苦味をマスキングしたりする手法が汎用されているが、固形製剤の場合には保存剤や矯味剤を多量に添加すると剤形が大きくなり服用し辛い製剤になるという問題があった。本発明によれば、保存剤や矯味剤を多量に添加せずとも製剤的に安定で色調変化が抑制され、苦味も効果的に抑制されるので、服用に支障が無い量の内服用固形製剤(例えば、1回の服用量が100〜2000mg)とすることができる。従って、本発明の内服用固形製剤では、保存剤や矯味剤を含んでもよいが、その配合量を極少量(例えば、保存剤の場合0.2w/w%以下、及び/又は矯味剤の場合0.2w/w%以下)に抑えることもでき、或いはこれらを全く含まなくてもよい。更に本発明は、製剤的に比較的不安定になり易かったり苦味をより感じさせ易い剤形に対して特に有益に用いられ得る。かかる観点に鑑みれば、本発明を適用するのに好ましい剤形として、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、又は散剤を挙げることができ、より好ましい剤形として錠剤を挙げることができる。また錠剤のなかでも、素錠、口腔内速崩壊錠、口腔内速溶解錠、チュアブル錠、発泡錠、トローチ剤、ドロップ剤が特に好ましい。
【0053】
本発明の内服用固形製剤は、当該技術分野における慣用の方法をそのまま又は適宜応用して製造することができる。例えば、錠剤であれば、粉末状の活性成分と製薬上許容される担体成分(賦形剤など)とを混合して直接的にこの混合物を圧縮成形することにより調製でき(直打法)、ドロップ剤は型に注入する方法で調製してもよい。さらに、固形剤のうち顆粒剤などの粉粒剤は、種々の造粒法(押出造粒法、粉砕造粒法、乾式圧密造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、高速攪拌造粒法など)により調製してもよく、また錠剤は、かかる造粒法と打錠法等を適当に組み合わせても調製できる(間接圧縮法;例えば、湿式顆粒打錠法、乾式顆粒打錠法など)。さらに、カプセル剤は、慣用の方法により、カプセル(軟質又は硬質カプセル)内に粉粒剤(粉剤、顆粒剤など)等を充填することにより調製できる。錠剤は、コーティングを施し、糖衣錠やフィルムコーティング錠としてもよい。さらに、錠剤は単層錠であっても、二層錠などの積層錠であってもよい。本発明において、錠剤は、好ましくは湿式顆粒打錠法で調製された単層錠である。
【0054】
本発明の内服用固形製剤が錠剤である場合、その硬度は、本発明の効果を奏し得る限り特に限定されないが、一例として、3.5〜17kp、好ましくは4〜15kp、特に好ましくは5〜12kpとすることができる。このような硬度にすることによって、製剤安定性が一層高められ、経時的な製剤の色調変化がより一層高度に抑制され、またより効果的に苦味を抑制することができる。
【0055】
本発明の内服用固形製剤は、任意の包装形態で提供され得る。例えば、包装形態は、SP包装やPTP包装などのように1錠又は1回服用量毎に個装する形態であってもよいし、或いは、任意の容器(例えば、ガラス製又はプラスチック製の瓶容器、或いは合成樹脂やアルミ箔などを積層加工したフィルムでできたパウチ型包装容器など)の中に複数回服用量(例えば、多数の錠剤)を一緒にまとめて充填し、服用のつど繰り返し開封されて継続的に使用される形態をとってもよい。内服用固形製剤が錠剤の場合には、多数の錠剤を一緒にまとめて包装体に充填する後者の形態は、コスト的に有利である。特に、ジッパー等によって開閉自在な取出口を有するパウチ型包装容器(ジッパー式パウチ型包装容器など)に多数の錠剤を一緒にまとめて充填する形態は、コスト的に有利であるのみならず持ち運びなどにも便利であり非常に好適である。また本発明によれば、オタネニンジン及び/又はその抽出物を含んでいながら、製剤的に安定であり経時的な色調変化が顕著に抑制されることから、開閉自在な取出口を有して頻繁に服用のつど開閉されて外気と触れることとなっても、製剤の外観上の問題(即ち、服用する者に不安感を与えるような製剤の変色)を生じ難いというメリットがある。とりわけ開閉自在な取出口を有するパウチ型包装容器の場合、ジッパー等の開閉部材は防湿性に劣る場合が多く、また取扱いが不十分な場合には取出口が十分に閉じられなかったりする場合があるので外気と触れる可能性が高いが、本発明では、このような開閉自在な取出口を有するパウチ型包装容器に充填されてもよい。
【0056】
本明細書中において「製剤」とは、例えば、医薬品、医薬部外品、食品などに幅広く利用することができる任意の製剤であり得る。例えば、本発明の製剤は、医薬製剤、医薬部外品製剤、又は特定保健用食品、栄養機能食品、老人用食品、特別用途食品、機能性食品、健康補助食品(サプリメント)もしくは製菓錠剤などのような食品用製剤などであり得る。
【0057】
本発明の内服用固形製剤は、上記(A)成分に基づいて、滋養強壮が求められる種々の状態の治療又は予防に有効であり、例えば、血色不良、冷え性、虚弱体質、肉体疲労、病中病後、胃腸虚弱、食欲不振などの状態の滋養強壮のために有益に用いられ得る。また上記(A)成分に基づいて、血流改善作用も発揮できるので、血流の停滞がもたらす種々の症状(例えば、目の下のクマ、冷え、むくみ、顔色不良(顔色が悪い)など)の治療又は予防のためにも有効である。また、本発明の内服用固形製剤は、上記(B)成分に基づいて、栄養補給のために用いられることもでき、例えば、虚弱体質、肉体疲労、病中病後、食欲不振、胃腸障害、栄養障害、発熱性消耗性疾患、妊娠授乳期、発育期、老年期等の場合の栄養補給のためにも有益に用いられ得る。
【0058】
2.内服用固形製剤の安定性を改善する方法
前述したように、ローヤルゼリー及び/又はその抽出物とショウキョウ及び/又はその抽出物とによって、オタネニンジン及び/又はその抽出物を含有する内服用固形製剤の安定性を改善することができる。
従って、本発明は、更に別の観点から、(A)オタネニンジン(Panax ginseng)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)ローヤルゼリー及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(C)ショウキョウ(Zingiber officinale)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種とを組み合わせて内服用固形製剤に配合することを特徴とする、該(A)成分を含有する内服用固形製剤の安定性を改善する方法を提供する。
本方法において、(A)〜(C)成分の種類や配合割合、重量比、またその他に配合してもよい成分の種類や配合割合等については、前記「1.内服用固形製剤」と同様である。
【0059】
3.内服用固形製剤の色調変化を抑制する方法
前述したように、ローヤルゼリー及び/又はその抽出物とショウキョウ及び/又はその抽出物とによって、オタネニンジン及び/又はその抽出物を含有する内服用固形製剤の経時的な色調変化を改善することができる。
【0060】
従って、本発明は更に別の観点から、(A)オタネニンジン(Panax ginseng)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)ローヤルゼリー及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(C)ショウキョウ(Zingiber officinale)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種とを組み合わせて内服用固形製剤に配合することを特徴とする、該(A)成分を含有する内服用固形製剤の色調変化を抑制する方法を提供する。
本方法において、(A)〜(C)成分の種類や配合割合、重量比、またその他に配合してもよい成分の種類や配合割合等については、前記「1.内服用固形製剤」と同様である。
【0061】
4.内服用固形製剤の苦味を抑制する方法
前述したように、オタネニンジン及び/又はその抽出物とローヤルゼリー及び/又はその抽出物とを内服用固形製剤において共存させた場合に起こる苦味の著しい増強を、ショウキョウ及び/又はその抽出物を併用することにより抑制することができる。
従って、本発明は更に別の観点から、(A)オタネニンジン(Panax ginseng)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と(B)ローヤルゼリー及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と共に、(C)ショウキョウ(Zingiber officinale)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を組み合わせて配合することを特徴とする、該(A)成分及び該(B)成分を含有する内服用固形製剤の苦味を抑制する方法を提供する。
本方法において、(A)〜(C)成分の種類や配合割合、重量比、またその他に配合してもよい成分の種類や配合割合等については、前記「1.内服用固形製剤」と同様である。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0063】
試験例1:色調変化の評価
下記表1に記載の処方に従って、7種類の錠剤(実施例1及び比較例1〜6)を調製し、各錠剤の変色の度合いについて評価を行った。
【表1】

【0064】
各錠剤の処方は、賦形剤であるトウモロコシデンプンの配合量を変えることにより同じ重量となるように調整した。また生ローヤルゼリーは軟稠性の液体であるため、各錠剤処方における生ローヤルゼリーとトウモロコシデンプンの重量比で両成分を乳鉢で混合し、その後、乾燥機内(約55℃)に1時間静置し乾燥させたものを用意した。乾燥後のローヤルゼリーとトウモロコシデンプンの混合物の水分活性値は、原料のトウモロコシデンプンとほぼ同程度とした。次いで、各原料を秤量して混合し、篩過した後、打錠機にて直径9mmの標準Rの臼杵を使用して各錠剤(硬度5〜12kp)を作製した。
各錠剤をガラス製のバイアルに入れて蓋をして密閉し、4℃と60℃の恒温機内(湿度60%RH)にそれぞれ3日間静置した。60℃で3日間保存する条件は、25℃で4ヶ月間保存した場合に相当する(加速試験)。3日後、各恒温機からバイアルを取り出し、分光測色計(MINOLTA製)で、4℃保存錠剤と60℃保存錠剤についてそれぞれ測定を行い、両錠剤の色差(ΔEab)を求めて、その平均値を算出した。
【0065】
色差測定の結果を、上記表1の最下段に示す。表1の結果から明らかなように、オタネニンジン抽出物を単独で含有する比較例6の錠剤は、60℃での加速試験により非常に高いΔEab値を示し、著しい色調変化を生じることが認められた。そして、オタネニンジン抽出物に、ローヤルゼリー又はショウキョウ抽出物をそれぞれ組み合わせて錠剤を作製しても、その変色の程度には殆ど影響がないことが確認された(比較例1、2)。一方、全く予想外のことに、オタネニンジン抽出物と共に、ローヤルゼリー及びショウキョウ抽出物を組み合わせて錠剤に配合した場合には(実施例1)、オタネニンジン抽出物を単独で含有する比較例6の錠剤と比べて、著しく色調変化が抑制されることが認められた。よって、この結果から、オタネニンジン抽出物とローヤルゼリーとショウキョウ抽出物の3種類の成分を内服用固形製剤において一緒に共存させることにより、経時的な色調変化が著しく抑えられ、製剤的に非常に安定な固形製剤が得られることが明らかとなった。
【0066】
試験例2:苦味マスキング評価
上記試験例1で調製した実施例1並びに比較例1〜2、4及び6の錠剤を用いて、服用試験を実施した。各パネラーに、各錠剤を数秒間舐めてもらい、「苦味はない」(0点)から「非常に苦味がある」(10点)までの11段階評価で点数を記入させた。各錠剤の平均評価点数を、以下の表2に示す。
【表2】

【0067】
上記表2に示すとおり、オタネニンジン抽出物自体はやや苦味があることが認められた(比較例6)。また、このオタネニンジン抽出物に対してショウキョウ抽出物を組み合わせた場合には、苦味の程度は殆ど変わらなかった(比較例2)。一方、オタネニンジン抽出物に対してローヤルゼリーを組み合わせた場合には、苦味が著しく増強してしまうことが明らかとなった(比較例1)。このようなローヤルゼリーとの併用によるオタネニンジン抽出物の苦味の著しい増強は、ローヤルゼリー単独では殆ど苦味は感じられなかったことを考慮すると(比較例4)、全く予想外の結果であった。ところが、このオタネニンジン抽出物とローヤルゼリーに、更にショウキョウ抽出物を配合した錠剤とした場合には、ショウキョウ抽出物自体はオタネニンジン抽出物の苦味を殆ど抑制できないにも拘わらず(比較例2)、苦味の増強を効果的に抑制でき、服用性を向上できることが明らかとなった。
【0068】
以下に、本発明の製剤実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
製剤実施例1:錠剤(素錠)
ニンジン乾燥エキス 450重量部
(原生薬換算量3000重量部)
ショウキョウエキス 30重量部
(原生薬換算量310重量部)
生ローヤルゼリー 30重量部
結晶セルロース 500重量部
クロスカルメロースナトリウム 20重量部
ステアリン酸マグネシウム 10重量部
合計 1040重量部
上記成分を日本薬局方製剤総則「錠剤」に準じて製し、1錠あたり260mgとなるように製して錠剤を得た。尚、この製剤は、成人1日服用量として4錠を服用する。本製剤は、ジッパー式パウチ型包装容器に3日間分を充填して提供される。
【0070】
製剤実施例2:錠剤(素錠)
ニンジン乾燥エキス 210重量部
(原生薬換算量2520重量部)
ショウキョウ乾燥エキス 45重量部
(原生薬換算量225重量部)
生ローヤルゼリー 45重量部
結晶セルロース 510重量部
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム 100重量部
クロスカルメロースナトリウム 20重量部
ステアリン酸マグネシウム 10重量部
合計 940重量部
上記成分を日本薬局方製剤総則「錠剤」に準じて製し、1錠あたり235mgとなるように製して錠剤を得た。尚、この製剤は、成人1日服用量として4錠を服用する。本製剤は、ジッパー式パウチ型包装容器に10日間分を充填して提供される。
【0071】
製剤実施例3:錠剤(素錠)
ニンジン乾燥エキス 450重量部
(原生薬換算量3000重量部)
ショウキョウ乾燥エキス 30重量部
(原生薬換算量150重量部)
生ローヤルゼリー 30重量部
バレイショデンプン 400重量部
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム 100重量部
クロスカルメロースナトリウム 20重量部
ステアリン酸マグネシウム 10重量部
合計 1040重量部
上記成分を日本薬局方製剤総則「錠剤」に準じて製し、1錠あたり260mgとなるように製して錠剤を得た。尚、この製剤は、成人1日服用量として4錠を服用する。
【0072】
製剤実施例4:錠剤(素錠)
ニンジン乾燥エキス 450重量部
(原生薬換算量3000重量部)
ショウキョウエキス 30重量部
(原生薬換算量310重量部)
生ローヤルゼリー 30重量部
ニクジュヨウエキス 75重量部
(原生薬換算量300重量部)
結晶セルロース 400重量部
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム 100重量部
ヒドロキシプロピルセルロース 20重量部
ステアリン酸マグネシウム 11重量部
合計 1116重量部
上記成分を日本薬局方製剤総則「錠剤」に準じて製し、1錠あたり279mgとなるように製して錠剤を得た。尚、この製剤は、成人1日服用量として4錠を服用する。
【0073】
製剤実施例5:錠剤(素錠)
ニンジン乾燥エキス 450重量部
(原生薬換算量3000重量部)
ショウキョウエキス 30重量部
(原生薬換算量310重量部)
生ローヤルゼリー 30重量部
ヨクイニンエキス 60重量部
(原生薬換算量600重量部)
結晶セルロース 399重量部
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム 100重量部
ヒドロキシプロピルセルロース 20重量部
ステアリン酸マグネシウム 11重量部
合計 1100重量部
上記成分を日本薬局方製剤総則「錠剤」に準じて製し、1錠あたり275mgとなるように製して錠剤を得た。尚、この製剤は、成人1日服用量として4錠を服用する。
【0074】
製剤実施例6:顆粒剤
ニンジン乾燥エキス 450重量部
(原生薬換算量3000重量部)
ショウキョウエキス 30重量部
(原生薬換算量310重量部)
生ローヤルゼリー 30重量部
結晶セルロース 400重量部
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム 100重量部
ヒドロキシプロピルセルロース 50重量部
合計 1060重量部
上記成分を日本薬局方製剤総則「顆粒剤」に準じて製し、1包あたり530mgとなるように製して顆粒剤を得た。尚、この製剤は、成人1日服用量として2包を服用する。
【0075】
製剤実施例7:顆粒剤
ニンジン乾燥エキス 450重量部
(原生薬換算量3000重量部)
ショウキョウ乾燥エキス 30重量部
(原生薬換算量150重量部)
生ローヤルゼリー 30重量部
バレイショデンプン 400重量部
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム 100重量部
ヒドロキシプロピルセルロース 50重量部
合計 1060重量部
上記成分を日本薬局方製剤総則「顆粒剤」に準じて製し、1包あたり530mgとなるように製して顆粒剤を得た。尚、この製剤は、成人1日服用量として2包を服用する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オタネニンジン(Panax ginseng)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)ローヤルゼリー及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種と、(C)ショウキョウ(Zingiber officinale)及びその抽出物からなる群より選択される少なくとも1種とを含有する、内服用固形製剤。
【請求項2】
錠剤である、請求項1に記載の内服用固形製剤。


【公開番号】特開2012−12336(P2012−12336A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150476(P2010−150476)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】