内燃機関の出力制御装置
【課題】運転性の悪化を抑制しつつ、万が一アクセルペダルに不具合が発生したときにはブレーキペダルを踏み込むことで確実に車両を停止させることができるようにする。
【解決手段】車両の駆動力を発生する内燃機関の出力制御装置であって、制動要求操作の有無を検出する制動要求検出手段(S1)と、制動要求操作を開始してからの制動操作時間を算出する制動操作時間算出手段(S2)と、制動操作時間が所定時間よりも大きくなったときに、前記内燃機関の出力の上限を、前記制動要求操作によって発生する制動力で車両を減速させることが可能な制動出力に制限する出力制限手段(S7)と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】車両の駆動力を発生する内燃機関の出力制御装置であって、制動要求操作の有無を検出する制動要求検出手段(S1)と、制動要求操作を開始してからの制動操作時間を算出する制動操作時間算出手段(S2)と、制動操作時間が所定時間よりも大きくなったときに、前記内燃機関の出力の上限を、前記制動要求操作によって発生する制動力で車両を減速させることが可能な制動出力に制限する出力制限手段(S7)と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の出力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクセルペダルに何らかの不具合、例えば、ドライバがフロアマットを新たに設置し、アクセルペダルがこの新たに設置したフロアマットに引っかかることによって、万が一踏み込んだ状態から戻らなくなってしまった場合であっても、ブレーキペダルを踏み込めば車両を停止させることができるようにすることが求められる。
【0003】
そこで、アクセルペダルの操作量が略一定である状態が所定時間以上継続していて、かつ、ブレーキペダルが踏み込まれたときにスロットル弁の開度を制限するものがある(特許文献1参照)。
【0004】
これは、車両を運転するときは、右足でアクセルペダルとブレーキペダルを踏み分けて操作するのが一般的であるが、ドライバによっては状況に応じてアクセルペダルを右足で踏み込みながら、ブレーキペダルを左足で踏み込むことがある。そのため、ドライバが意図的に左足でブレーキペダルを踏み込んでいるのか、又は、アクセルペダルに何らかの不具合が生じてブレーキペダルを踏み込んでいるのかを判別した上でスロットル弁の開度を制限しようというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−148396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ドライバが意図的に左足でブレーキペダルを踏み込んでいても、アクセルペダルの操作量が略一定である状態が所定時間以上継続する場合も考えられ、その場合、ブレーキペダルが踏み込まれたときにスロットル弁の開度を制限すると、ドライバに予想以上の減速感を与えることになり、運転性が悪化するという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、アクセルペダルを操作しつつ意図的にブレーキペダルが操作されたときの運転性の悪化を抑制するとともに、万が一アクセルペダルに不具合が生じたときにはブレーキペダルを踏み込むことで車両を停止させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両の駆動力を発生する内燃機関の出力制御装置である。そして、制動要求操作の有無を検出する制動要求検出手段と、前記制動要求操作を開始してからの制動操作時間を算出する制動操作時間算出手段と、前記制動操作時間が所定時間よりも大きくなったときに、前記内燃機関の出力を制限する出力制限手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アクセルペダルが操作されたか否かに関係なく、ブレーキペダルを操作している時間(制動操作時間)が所定時間を越えたときは、内燃機関の出力を制限する。
【0010】
そのため、ドライバがブレーキペダルの操作(制動要求操作)を開始したと同時に内燃機関の出力が制限されることがない。よって、アクセルペダルを操作しつつ意図的にブレーキペダルを操作したときにドライバに予想以上の減速感を与えることもない。
【0011】
また、万が一アクセルペダルに不具合が生じていたときは、所定時間経過後に内燃機関の出力が制限されるため、車両を確実に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両の制御装置の概略構成図である。
【図2】制動装置の概略構成図である。
【図3】第1実施形態によるスロットル開度制御について説明するブロック図である。
【図4】第1実施形態によるブレーキ優先判定部の処理内容について説明するフローチャートである。
【図5】第1実施形態によるブレーキ優先判定部の処理動作を示すタイムチャートである。
【図6】第2実施形態によるスロットル開度制御について説明するブロック図である。
【図7】第2実施形態によるブレーキ優先判定部の処理内容について説明するフローチャートである。
【図8】第2実施形態によるブレーキ優先判定部の処理動作を示すタイムチャートである。
【図9】第3実施形態によるブレーキ優先判定部の処理内容について説明するフローチャートである。
【図10】第3実施形態によるブレーキ優先判定部の処理動作を示すタイムチャートである。
【図11】第4実施形態によるブレーキ優先判定部の処理内容について説明するフローチャートである。
【図12】第4実施形態によるブレーキ優先判定部の処理動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面等を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による車両の制御装置の概略構成図である。
【0015】
車両の制御装置は、車両の駆動力を発生するエンジン1と、エンジン1に吸入される空気(以下「吸気」という。)が流れる吸気通路2と、エンジン1から排出された燃焼ガス(以下「排気」という。)が流れる排気通路3と、車両を制動させる制動装置4と、コントローラ5と、を備える。
【0016】
エンジン1は、シリンダブロック11と、シリンダヘッド12と、を備える。
【0017】
シリンダブロック11は、シリンダ部11aとクランクケース部11bとを備える。
【0018】
シリンダ部11aには、複数のシリンダ110が形成される。シリンダ110の内部には、燃焼圧力を受けてシリンダ110の内部を往復運動するピストン111が収められる。
【0019】
クランクケース部11bは、シリンダ部11aの下方に形成される。クランクケース部11bは、クランクシャフト112を回転自在に支持する。クランクシャフト112は、ピストン111の往復運動をコンロッド113を介して回転運動に変換する。
【0020】
シリンダヘッド12は、シリンダブロック11の上面に取り付けられ、シリンダ110及びピストン111とともに燃焼室13の一部を形成する。
【0021】
シリンダヘッド12には、吸気通路2に接続され燃焼室13の頂壁に開口する吸気ポート120と、排気通路3に接続され燃焼室13の頂壁に開口する排気ポート121と、が形成され、燃焼室13の頂壁中央に臨むように点火栓122が設けられる。また、シリンダヘッド12には、燃焼室13と吸気ポート120との開口を開閉する吸気弁123と、燃焼室13と排気ポート121との開口を開閉する排気弁124と、が設けられる。さらに、シリンダヘッド12には、吸気弁123を開閉駆動する吸気カムシャフト125と、排気弁124を開閉駆動する排気カムシャフト126とが設けられる。
【0022】
吸気通路2には、上流から順に、エアクリーナ21と、エアフローメータ22と、電子制御式のスロットル弁25と、吸気コレクタ26と、燃料噴射弁27と、が設けられる。
【0023】
エアクリーナ21は、吸気中に含まれる砂などの異物を除去する。
【0024】
エアフローメータ22は、吸気の流量(以下「吸気量」という。)を検出する。
【0025】
スロットル弁25は、吸気通路2の通路断面積を変化させることで、吸気コレクタ26に流入する吸気量を調整する。スロットル弁25は、スロットルアクチュエータ27によって開閉駆動され、スロットルセンサ28によってその開度(以下「スロットル開度」という。)が検出される。
【0026】
吸気コレクタ26は、流入してきた空気を各シリンダ110に均等に分配する。
【0027】
燃料噴射弁27は、エンジン1の運転状態に応じて吸気ポート120に向けて燃料を噴射する。
【0028】
排気通路3には、排気中の炭化水素や窒素酸化物などの有害物質を取り除く三元触媒31が設けられる。
【0029】
制動装置4は、車両を減速、停止させるために必要な制動力を発生させる装置である。制動装置4については図2を参照して説明する。
【0030】
図2は、制動装置4の概略構成図である。
【0031】
制動装置4は、ブレーキブースタ40と、マスタシリンダ41と、ディスクブレーキ42と、ブレーキペダル43と、を備える。
【0032】
ブレーキブースタ40は、内部にダイアフラム403で仕切られた第1室401及び第2室402と、プッシュロッド404と、を備え、エンジン1の吸入負圧を利用してブレーキペダル43を操作するために必要な力を軽減する。
【0033】
第1室401は、大気弁405を介して大気と連通している。第2室402は負圧配管407を介して吸気コレクタ26と連通しており、負圧状態となっている。第1室401と第2室402とは、真空弁406を介して連通している。
【0034】
プッシュロッド404は、ブレーキブースタ40の内部を貫通する。プッシュロッド404の一端はマスタシリンダ41の第2ピストン412に接続され、他端はブレーキペダル43に接続される。プッシュロッド404は、ブレーキペダル43が踏み込まれると図中左側に移動する。これにより、大気弁405及び真空弁406が開閉するとともに、マスタシリンダ41の第1ピストン411及び第2ピストン412がリターンスプリング413a,413bに抗して押し込まれ、油圧が発生する。
【0035】
マスタシリンダ41は、内部に第1ピストン411及び第2ピストン412を備え、ディスクブレーキ42を作動させるための油圧を発生させる。
【0036】
第1ピストン411は、両側からリターンスプリング413a,413bによって支持される。リターンスプリング413a,413bの収まっている部分は、それぞれ第1圧力室414及び第2圧力室415を形成する。
【0037】
第1圧力室414及び第2圧力室415は、それぞれブレーキオイルの補給口と圧送口と備える。補給口は、ブレーキオイルが補給されるリザーバタンク416と連通している。圧送口は、油圧配管424a,424bを介して各車輪を制動させるディスクブレーキ42のキャリパ422に連通している。図2では、煩雑を避けるために左前輪を制動させるディスクブレーキ42のみを図示した。
【0038】
ディスクブレーキ42は、車輪の回転軸と共に回転する円板状のディスクロータ421と、ディスクロータ421を挟むようにして設けられたキャリパ422と、を備える。
【0039】
キャリパ422の内部には、2つのシリンダ423がディスクロータ421を挟んで対向するように設けられる。シリンダ423は、油圧配管424を介してマスタシリンダ41と連通する。また、シリンダ423の内部には、車輪の回転軸と平行に移動するピストン425が納められ、このピストン425のディスクロータ側の端部に摩擦材であるブレーキパッド426が設けられる。
【0040】
続いて制動装置42の作用について説明する。
【0041】
ブレーキブースタ40の大気弁405は、ブレーキペダル43が踏み込まれていないときは閉じられている。一方で、真空弁406は開かれている。したがって、ブレーキペダル43が踏み込まれていないときは、第1室401と第2室402とは連通状態となっており、双方の圧力は同じ負圧となっている。
【0042】
この状態からブレーキペダル43を踏み込むと、プッシュロッド404が図中左側に移動して、まず真空弁406が閉じられる。これにより、第1室401と第2室402とは非連通状態となる。
【0043】
さらにブレーキペダル43を踏み込むと、大気弁405が開き第1室401に大気が導入される。これにより、第1室401の圧力は大気圧となる。一方で、第2室402の圧力は、ブレーキペダル43を踏み込む前の負圧のままである。そのため、第1室401と第2室402との間に圧力差が生じ、この差圧がダイアフラム403に作用してプッシュロッド404を移動させるときのアシスト力となる。
【0044】
また、ブレーキペダル43を踏み込むと、プッシュロッド404が図中左側に移動し、マスタシリンダ41の第1ピストン411及び第2ピストン412がリターンスプリング413a,413bに抗して図中左側に押し込まれ、油圧が発生する。この油圧が圧送口から油圧配管424a,424bを介してキャリパ422のピストン425に作用することで、ピストン425がディスクロータ側に移動する。これにより、ブレーキパッド426がディスクロータ421に押し付けられて、車両を減速、停止させるために必要な制動力が発生する。
【0045】
再び図1に戻って車両の制御装置について説明する。
【0046】
コントローラ5は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。
【0047】
コントローラ5には、前述したエアフローメータ22やスロットルセンサ28からの検出信号のほか、クランク角に基づいてエンジン回転速度を検出するエンジン回転速度センサ51やアクセルペダル6の踏み込み量(以下「アクセル操作量」という。)を検出するアクセルストロークセンサ52、ブレーキペダル43が踏み込まれているかを検出するブレーキスイッチ53、シフトレバーの位置を検出するシフト位置検出センサ54、車速を検出する車速センサ55などの各種センサからの検出信号が入力される。
【0048】
コントローラ5は、これら各種センサからの検出信号に基づいて、スロットル開度や燃料噴射量、点火時期などを運転状態に応じて最適に制御する。また、コントローラ5は、これら各種センサからの検出信号に基づいて各部品やセンサ自体の故障を判定し、必要に応じてドライバの安全を確保するために種々のフェイルセーフを実施する。
【0049】
このフェイルセーフのひとつとして、例えば、ドライバがフロアマットを新たに設置し、アクセルペダル6がこの新たに設置したフロアマットに引っかかることにより、踏み込んだまま戻らなくなったとしても、ブレーキペダル43を踏み込めば確実に減速、停止できるようにするものがある。これは、具体的にはアクセルペダル6とブレーキペダル43の両方が踏み込まれたときに、車両の駆動力が制動力よりも大きくならないようにエンジントルク(スロットル開度)を制限するものである。
【0050】
しかしながら、スポーツ走行を楽しむドライバは、コーナリングなどで車両の旋回性を向上させるために、アクセルペダル6を右足で踏み込みつつ、意図的に左足でブレーキペダル43を踏み込むことがある。また、速度の微調整が必要なときにも、アクセルペダル6を右足で踏み込みつつ、意図的に左足でブレーキペダル43を踏み込むことがある。さらに、不用意にブレーキペダルを踏み込んでしまうことも考えられる。
【0051】
そのため、アクセルペダル6とブレーキペダル43の両方が踏み込まれたときに、常にエンジントルクを制限してしまうと、ドライバに意図した以上の減速感を与えることがあり、運転性が悪化する。つまり、アクセルペダル6とブレーキペダル43の両方が踏み込まれているからといって、一概にアクセルペダル6が戻らない状態が発生していると判断してエンジントルクを制限するのは望ましくない。
【0052】
そこで本実施形態では、ブレーキペダル43が踏み込まれてから所定の時間が経過するまでは、実際のアクセル操作量(以下「実アクセル操作量」という。)に基づいて目標スロットル開度を算出する。これにより、意図的に左足でブレーキペダル43が踏み込まれたときの運転性の悪化を抑制する。そして、ブレーキペダル43が踏み込まれてから所定の時間が経過したにもかかわらず、アクセルペダル6が所定の制限値(制動アクセル操作量)以上踏み込まれているときは、その制限値に基づいて目標スロットル開度を算出する。これにより、アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生していたとしてもエンジントルクを低下させることができるので、車両を確実に減速、停止させることができる。以下、この本実施形態によるスロットル開度制御について説明する。
【0053】
図3は、本実施形態によるスロットル開度制御について説明するブロック図である。
【0054】
図3に示すように、スロットル開度制御部7は、ブレーキ優先制御部71と、目標エンジントルク算出部72と、目標スロットル開度算出部73と、を備える。スロットル開度制御部7は、ブレーキ優先制御部71から出力された優先アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクを算出し、その目標エンジントルクを実現する目標スロットル開度にスロットル弁を制御する。以下、各構成部について詳しく説明する。
【0055】
ブレーキ優先制御部71は、ブレーキ優先判定部711と、リミッタ値出力部712と、優先アクセル操作量出力部713と、を備える。ブレーキ優先制御部71のより詳しい処理内容については図4を参照して後述する。
【0056】
ブレーキ優先判定部711には、シフト位置検出センサ54から出力されるNレンジ信号と、車速と、ブレーキスイッチ信号と、が入力される。ブレーキ優先判定部711は、これらの入力信号に基づいて優先アクセル操作量に上限を設けるかを判定し、上限を設けるときにONに切り替わるブレーキ優先信号を出力する。
【0057】
リミッタ値出力部712には、ブレーキ優先信号が入力される。リミッタ値出力部712は、ブレーキ優先信号がOFFであれば、アクセルペダル6を最後まで踏み込んだときのアクセル操作量(以下「最大アクセル操作量」という。)をリミッタ値として出力する。一方で、ブレーキ優先信号がONであれば、ディスクブレーキ42による制動力が加われば車両を減速させることのできる所定のアクセル操作量(以下「制動アクセル操作量」という。)をリミッタ値として出力する。
【0058】
優先アクセル操作量出力部713には、実アクセル操作量と、リミッタ値と、が入力される。優先アクセル操作量出力部713は、実アクセル操作量とリミッタ値とを比較し、値の小さいほうを優先アクセル操作量として出力する。
【0059】
このように、ブレーキ優先制御部71は、ブレーキ優先信号がONであれば、出力する優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量に制限する。つまり、実アクセル操作量が制動アクセル操作量よりも小さければ、実アクセル操作量を優先アクセル操作量として出力する。逆に、実アクセル操作量が制動アクセル操作量よりも大きければ、制動アクセル操作量を優先アクセル操作量として出力する。
【0060】
一方で、ブレーキ優先信号がOFFであれば、出力する優先アクセル操作量の上限を制限せずに実アクセル操作量を優先アクセル操作量として出力する。
【0061】
目標エンジントルク算出部72には、優先アクセル操作量が入力される。目標エンジントルク算出部72は、優先アクセル操作量を一旦エンジントルクに変換したあと、各種の補正を施して目標エンジントルクを算出する。
【0062】
目標スロットル開度算出部73には、目標エンジントルクが入力される。目標スロットル開度算出部73は、目標エンジントルクに基づいて目標スロットル開度を算出する。
【0063】
そして、スロットル開度が目標スロットル開度となるようにスロットルアクチュエータ27が制御される。
【0064】
また、優先アクセル操作量は変速制御部8に入力される。変速制御部8は、変速機の変速段を変更するための変速マップを備えており、優先アクセル操作量と車速とに基づいて変速機の変速段を変更する。
【0065】
図4は、ブレーキ優先制御部71の処理内容について説明するフローチャートである。コントローラ5は、本ルーチンを所定の演算周期Tsmp(例えば10ms)で繰り返し実行する。
【0066】
ステップS1において、コントローラ5は、ブレーキペダル43が踏み込まれているかを判定する。具体的には、ブレーキスイッチ信号がONになっているかを判定する。コントローラ5は、ブレーキスイッチ信号がONになっていればステップS2に処理を移行する。一方で、ブレーキペダル43が踏み込まれておらず、ブレーキスイッチ信号がOFFのままであればステップS8に処理を移行する。
【0067】
ステップS2からステップS7は、ブレーキペダル43が踏み込まれているときに実施される処理である。
【0068】
ステップS2において、コントローラ5は、ブレーキペダル43が踏み込まれてからの時間(以下「ブレーキ操作時間」という。)Tblk_onを算出する。具体的には、前回までのブレーキ操作時間Tblk_onに演算周期Tsmpを加算してブレーキ操作時間Tblk_onの値を更新する。
【0069】
ステップS3からステップS5において、コントローラ5は、ブレーキペダル43が踏み込まれているときに、ブレーキ優先信号をONにするための条件が成立しているかを判定する。以下、各ステップの具体的な処理内容について説明する。
【0070】
ステップS3において、コントローラ5は、シフトレバーの位置がNレンジ以外の位置にあるかを判定する。具体的には、シフトレバーの位置がNレンジのときにONとなるNレンジ信号がONになっているかを判定する。シフトレバーの位置がNレンジであれば、エンジン1の動力は駆動系に伝達されないので、わざわざエンジントルクを制限する必要がないためである。コントローラ5は、Nレンジ信号がOFF(すなわちシフトレバーの位置がDレンジなどのとき)になっていればステップS4に処理を移行する。一方で、Nレンジ信号がONになっていれば今回の処理を終了する。
【0071】
ステップS4において、コントローラ5は、車速が所定車速(例えば4km/h)以上かを判定する。コントローラ5は、車速が所定車速以上であればステップS5に処理を移行する。一方で、車速が所定車速未満であれば今回の処理を終了する。
【0072】
ステップS5において、コントローラ5は、ブレーキ操作時間Tblk_onが所定の遅延時間Tdelayよりも大きいかを判定する。すなわち、ブレーキペダル43が踏み込まれてから所定の遅延時間Tdelayが経過したかを判定する。本実施形態では、遅延時間Tdelayを概ね4秒程度に設定しているが、数秒の範囲で適宜目的に応じて変更すればよい。コントローラ5は、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayよりも大きければステップS6に処理を移行する。一方で、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayよりも小さければ今回の処理を終了する。
【0073】
ステップS6において、コントローラ5は、ブレーキ優先信号をONにする。
【0074】
ステップS7において、コントローラ5は、優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量に設定する。
【0075】
ステップS8からステップS10は、ブレーキペダル43から足が離されているときに実施される処理である。
【0076】
ステップS8において、コントローラ5は、ブレーキ操作時間Tblk_onを初期値ゼロに戻す。
【0077】
ステップS9において、コントローラ5は、ブレーキ優先信号をOFFにする。
【0078】
ステップS10において、コントローラ5は、優先アクセル操作量の上限を最大アクセル操作量に設定する。
【0079】
図5は、ブレーキ優先判定部71の処理動作を示すタイムチャートである。フローチャートとの対応を明確にするため、フローチャートのステップ番号を併記して説明する。なお、Nレンジ信号はOFFであり、車速も所定車速以上であるとする。
【0080】
時刻t1でブレーキペダル43が踏み込まれると、ブレーキスイッチ信号がONとなる(図5(A);S1でYes)。このとき本実施形態では、ドライバがアクセルペダル6を踏み込みつつ意図的にブレーキペダル43を踏み込むことを考慮して、所定の遅延時間Tdelayが経過した時刻t2で、ブレーキ優先信号をONにする(図5(B);S3〜S5でYes、S6)。
【0081】
時刻t2でブレーキ優先信号がONになると、優先アクセル操作量の上限が制動アクセル操作量に制限される(S7)。ここでは、実アクセル操作量が制動アクセル操作量よりも大きくなっているので、制動アクセル操作量を優先アクセル操作量として使用する(図6(C)(D))。
【0082】
そして、時刻t2以降は、次にブレーキペダル43から足が踏み外される時刻t3まで、上限が制動アクセル操作量に制限された優先アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクが算出される。
【0083】
このように、ブレーキ優先信号がONになったにもかかわらず、実アクセル操作量が制動アクセル操作量よりも大きくなっているときは、制動アクセル操作量に基づいて算出した目標エンジントルク(制動出力)となるように、エンジントルクを制御する。
【0084】
すなわち、ブレーキペダル43を所定の遅延時間Tdelay踏み続けているにもかかわらず、ディスクブレーキ42による制動力を超えるエンジントルクが要求されているときは、その要求がドライバの意思によるものではなく、何らかの不具合によって要求されているものと判断して、車両をディスクブレーキ42による制動力によって減速、停止させることのできるエンジントルクまで低下させる。
【0085】
これにより、万が一アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生したとしても確実に車両を減速、停止させることができる。
【0086】
以上説明した本実施形態によれば、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayを越えるまではブレーキ優先信号をOFFのままとし、実アクセル操作量を優先アクセル操作量として使用する。そして、実アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクを算出し、目標エンジントルクとなるようにエンジントルクを制御する。
【0087】
そのため、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayを越えるまでは、実アクセル操作量に応じたドライバの要求通りのエンジントルクが得られる。これにより、スポーツ走行時や速度を微調整する場合など、ドライバの意思によってアクセルペダル6とともにブレーキペダル43が踏まれるときに、ドライバに予想以上の減速感を与えることがないので、運転性の悪化を抑制できる。
【0088】
一方で、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayを越えた後はブレーキ優先信号をONとし、優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量に制限する。つまり、実アクセル操作量が制動アクセル操作量未満であれば、実アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクを算出し、目標エンジントルクとなるようにエンジントルクを制御する。逆に、実アクセル操作量が制動アクセル操作量以上であれば、制動アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクを算出し、目標エンジントルクとなるようにエンジントルクを制御する。
【0089】
これにより、ブレーキペダル43を所定の遅延時間Tdelay踏み続けているにもかかわらず、アクセルペダル6が制動アクセル操作量以上踏み込まれているときは、車両をディスクブレーキ42による制動力によって減速させることが可能なエンジントルクまで低下させることができる。そのため、何らかの不具合によって万が一アクセルペダル6が制動アクセル操作量以上踏み込まれている状態が続いたとしても、確実に車両を減速させることができ、ドライバの安全を確保することができる。
【0090】
また、このときはスロットル弁25が閉じ側に制御されるので、吸気コレクタ26の内部を負圧に保つことができる。そのため、ブレーキブースタ40によってブレーキペダル43を操作するときのアシスト力を確保できる。これにより、ブレーキペダル43を踏み込んだときにマスタシリンダ41で十分な油圧を発生せて、ブレーキパッド426をディスクロータ421にしっかりと押し付けることができるので、ブレーキ本来の制動力を発生させることができる。
【0091】
また、シフトレバーの位置がNレンジの位置にあるときは、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayを越えたとしてもブレーキ優先信号をONにしないこととした。
【0092】
これにより、シフトレバーの位置がNレンジの位置にあり、エンジントルクが駆動系に伝達されないときには、実アクセル操作量に応じたドライバの要求通りのエンジントルクが得られる。そのため、エンジンフィーリングを確かめるためにエンジン1の空ぶかしを行うときなどにブレーキペダル43を踏み込んでいたとしても、エンジン回転速度を滑らかに上昇させることができる。
【0093】
また、車速が例えば4km/h未満の低車速域にある場合に、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayを越えたときも、ブレーキ優先信号をONにしないこととした。これは、速度の微調整が低車速域で行われることが多いことを考慮したものである。
【0094】
これにより、低車速域では実アクセル操作量に応じたドライバの要求通りのエンジントルクが得られるので、低車速域でブレーキペダル43を踏み込みつつ速度の微調整をすることが容易となる。
【0095】
また、一旦ブレーキ優先信号がONになった後は、シフトレバーの位置がNレンジに変更されたり車速が低車速域に入ったとしても、ブレーキスイッチ信号がOFFになるまでブレーキ優先信号をOFFに戻さないこととした。
【0096】
これにより、優先アクセル操作量の上限がリミッタ操作量に制限されているときに、車速が低車速域に入ったとしてもブレーキ優先信号がOFFになることがないので、再び車両が加速するのを防止できる。また、シフトレバーの位置がNレンジに変更されたとしてもブレーキ優先信号がOFFになることがないので、エンジン1の無駄な空ぶかしを防止できる。
【0097】
さらに本実施形態では、優先アクセル操作量と車速とに基づいて変速機の変速段を変更させている。優先アクセル操作量が制動アクセル操作量に制限されたときは、アクセルペダル6が戻された状態と同じなので、基本的にアップシフトが行われる。そのため、車両の駆動力を小さくすることができるので、より車両を減速させやすくすることができる。
【0098】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態によるブレーキ優先制御について説明する。本実施形態によるブレーキ優先制御は、ブレーキペダル43が踏み込まれてからの経過時間に応じて段階的にアクセル操作量の上限を小さくしていく点で、第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。なお、以下の実施形態では、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
【0099】
図6は、本実施形態によるスロットル開度制御について説明するブロック図である。
【0100】
本実施形態では、ブレーキ優先制御部71の構成だけが第1実施形態と異なるので、以下ではブレーキ優先制御部71の構成について説明する。
【0101】
本実施形態によるブレーキ優先制御部71は、ブレーキ優先判定部711と、第1リミッタ値出力部712と、第2リミッタ値出力部714と、優先アクセル操作量出力部713と、を備える。
【0102】
ブレーキ優先判定部711には、Nレンジ信号、車速、及びブレーキスイッチ信号が入力される。ブレーキ優先判定部711は、これらの入力信号に基づいて、第1ブレーキ優先信号と、第2ブレーキ優先信号と、を出力する。
【0103】
第1ブレーキ優先信号は、第1実施形態で説明したブレーキ優先信号と同じ信号であり、Nレンジ信号及び車速が所定の条件を満たしているときにブレーキスイッチ信号がONになれば、所定の遅延時間Tdelayが経過した後にONになる信号である。第2ブレーキ優先信号は、Nレンジ信号及び車速が所定の条件を満たしているときにブレーキスイッチ信号がONになれば、同時にONになる信号である。したがって、Nレンジ信号及び車速が所定の条件を満たしているときにブレーキペダル43が踏み込まれると、まず第2ブレーキ優先信号がONになり、それから遅延時間Tdelayが経過した後に第1ブレーキブレーキ優先信号がONになる。
【0104】
第1リミッタ値出力部712には、第1ブレーキ優先信号が入力される。第1リミッタ値出力部712は、ブレーキ優先信号がOFFであれば、最大アクセル操作量を第1リミッタ値として出力する。一方で、ブレーキ優先信号がONであれば、制動アクセル操作量を第1リミッタ値として出力する。
【0105】
第2リミッタ値出力部714には、第2ブレーキ優先信号が入力される。第2リミッタ値出力部712は、ブレーキ優先信号がOFFであれば、最大アクセル操作量を第2リミッタ値として出力する。一方で、ブレーキ優先信号がONであれば、最大アクセル操作量よりも小さく、制動アクセル操作量よりも大きい所定の補助制動アクセル操作量を第2リミッタ値として出力する。
【0106】
優先アクセル操作量出力部713には、実アクセル操作量と、第1リミッタ値と、第2リミッタ値と、が入力される。優先アクセル操作量出力部713は、これらの入力信号を比較し、値の最も小さいものを優先アクセル操作量として出力する。
【0107】
このように、本実施形態によるブレーキ優先制御部71は、まず第2ブレーキ優先信号がONになったときに、優先アクセル操作量の上限を補助制動アクセル操作量に制限する。そして、その後に第1ブレーキ優先信号がONになったときに、優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量まで低下させる。
【0108】
図7は、本実施形態によるブレーキ優先制御部71の処理内容について説明するフローチャートである。コントローラ5は、本ルーチンを所定の演算周期Tsmp(例えば10ms)で繰り返し実行する。
【0109】
まず、ブレーキペダル43が踏み込まれたときの処理、つまりステップS1でYESに進んだ後の処理について説明する。ステップS1からステップS7の処理内容は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0110】
ステップS21において、コントローラ5は、第2ブレーキ優先信号をONにする。
【0111】
ステップS22において、優先アクセル操作量の上限を補助制動アクセル操作量に設定する。
【0112】
続いて、ブレーキペダル43から足が離されたときの処理、つまりステップS1でNOに進んだ後の処理について説明する。ステップS8からステップS10の処理内容は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0113】
ステップS23において、コントローラ5は、第2ブレーキ優先信号をOFFにする。
【0114】
図8は、本実施形態によるブレーキ優先制御部71の処理動作を示すタイムチャートである。フローチャートとの対応を明確にするため、フローチャートのステップ番号を併記して説明する。なお、Nレンジ信号はOFFであり、車速も所定車速以上であるとする。
【0115】
時刻t21でブレーキペダル43が踏み込まれると、ブレーキスイッチ信号がONになる(図8(A);S1でYes)。これにより、第2ブレーキ優先信号がONとなり(図8(C);S3S4でYes、S21)、優先アクセル操作量の上限が補助制動アクセル操作量に制限される(S22)。その結果、ブレーキ操作時間Tblk_onが所定の遅延時間Tdelayよりも大きくなる時刻t22までは、上限が補助制動アクセル操作量に制限された優先アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクが算出される。
【0116】
ここでは、実アクセル操作量が補助制限アクセル操作量よりも大きいので(図8(D))、補助制動アクセル操作量に基づいて算出した目標エンジントルク(補助制動出力)となるように、エンジントルクが制御される(図8(E))。
【0117】
時刻t22で、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayを越えると、第1ブレーキ優先信号がONになる(図8(B);S5でYes、S6)。そうすると、優先アクセル操作量の上限が制動アクセル操作量まで低下させられる(図8(E);S7)。これにより、時刻t22以降は、ブレーキペダル43から足が踏み外される時刻t23まで、上限が制動アクセル操作量に制限された優先アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクが算出される。
【0118】
このように本実施形態では、ブレーキペダル43が踏み込まれたきは、遅延時間Tdelayが経過するまで優先アクセル操作量の上限を補助制動アクセル操作量に制限し、遅延時間Tdelayが経過した後の出力制限よりも緩い出力制限を行う。
【0119】
これは、アクセルペダル6とブレーキペダル43の両方が踏み込まれていたとしても、一概にアクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生していると判断できないので、万が一アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生していた場合の安全確保を優先するためである。
【0120】
つまり、ブレーキペダル43が踏み込まれると同時にとりあえず緩い出力制限を行うことで、万が一アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生していたときには、第1実施形態よりも早期に車両を減速、停止させることができる。また、車両を完全に制動させるために行われる出力制限よりも緩い出力制限なので、運転性の悪化も最小限に留めることができる。
【0121】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるほか、ブレーキペダル43が踏み込まれたと同時に一旦優先アクセル操作量の上限を補助制動アクセル操作量に制限する。そして、ブレーキペダル43が踏み込まれてから遅延時間Tdelayが経過したときに、優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量まで低下させる。
【0122】
これにより、ブレーキペダル43が踏み込まれると同時に一旦緩い出力制限が行われるので、万が一アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生していたときに、第1実施形態よりも早期に車両を減速、停止させることができる。
【0123】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態によるブレーキ優先制御について説明する。本実施形態によるブレーキ優先制御は、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれている場合には、ブレーキペダル43が踏まれたと同時に優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量に制限する点で、第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0124】
アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生し、実アクセル操作量が制動アクセル操作量よりも大きくなっているときは、エンジン1が制動力を上回るトルクを出力しているので、ブレーキペダル43を踏み込んだとしても車両を減速させることができない。またこのような状況ではスロットル開度も大きくなっているので、吸気コレクタ26内が大気圧に近づく。そうすると、ブレーキブースタ40によるアシスト力が小さくなってブレーキ自体の効きも悪くなるので、一層車両を減速させることができなくなる。
【0125】
このように、ブレーキペダル43を踏み込んでも車両を減速させることができなくなると、ドライバはブレーキペダル43を何度も繰り返し踏み込むことがある。そうすると、ブレーキペダル43を踏み込んでから遅延時間Tdelayが経過する前にブレーキペダル43から足が離されてしまい、優先アクセル操作量を制動アクセル操作量に制限できないおそれがある。
【0126】
そこで本実施形態では、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていると判定されたときは、遅延時間Tdelayが経過する前であってもブレーキ優先信号をONにして、優先アクセル操作量を制動アクセル操作量に制限する。以下、この本実施形態によるブレーキ優先制御について説明する。
【0127】
図9は、本実施形態によるブレーキ優先制御部71の処理内容について説明するフローチャートである。コントローラ5は、本ルーチンを所定の演算周期Tsmp(例えば10ms)で繰り返し実行する。
【0128】
まず、ブレーキペダル43から足が離されたときの処理、つまりステップS1でNOに進んだ後の処理について説明する。ステップS8からステップS10の処理内容は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0129】
ステップS31において、コントローラ5は、ブレーキペダル43から足が離されてからの経過時間(以下「非ブレーキ操作時間」という。)Tblk_offを算出する。具体的には、前回までの非ブレーキ操作時間Tblk_offに演算周期Tsmpを加算して非ブレーキ操作時間Tblk_offの値を更新する。
【0130】
続いて、ブレーキペダル43が踏み込まれたときの処理、つまりステップS1でYESに進んだ後の処理について説明する。ステップS2からステップS7の処理内容は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0131】
ステップS32において、コントローラ5は、非ブレーキ操作時間Tblk_offを初期値ゼロに戻す。
【0132】
ステップS33において、コントローラ5は、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれているかを判定する。本実施形態では、ブレーキペダル43から足が離されてから所定の繰り返し判定時間Trepeatが経過する前に再びブレーキペダル43が踏み込まれたときに、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていると判定する。具体的には、非ブレーキ操作時間Tblk_offが繰り返し判定時間Trepeatよりも小さいかを判定する。繰り返し判定時間Trepeatは、数秒の範囲で適宜目的に応じて設定すればよい。コントローラ5は、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていれば、ステップS6に処理を移行する。一方で、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていなければ、ステップS5に処理を移行する。
【0133】
図10は、本実施形態によるブレーキ優先制御部71の処理動作を示すタイムチャートである。フローチャートとの対応を明確にするため、フローチャートのステップ番号を併記して説明する。なお、Nレンジ信号はOFFであり、車速も所定車速以上であるとする。
【0134】
時刻t31でブレーキペダル43が踏み込まれ、ブレーキスイッチ信号がONになると(図10(A);S1でYes)、それから遅延時間Tdelayが経過した時刻t32で、ブレーキ優先信号がONになる(図10(B);S3S4でYes、S33でNo、S5でYes、S6)。
【0135】
時刻t32でブレーキ優先信号がONになると、優先アクセル操作量の上限が制動アクセル操作量に制限される(図10(D);S7)。
【0136】
時刻t33でブレーキペダル43から足が離されてブレーキスイッチ信号がOFFになると(図10(A);S1でNo)、ブレーキ優先信号もOFFとなる(図10(B);S9)。
【0137】
そして、時刻t34で繰り返し判定時間Trepeatが経過する前に再びブレーキペダル43が踏み込まれると(図10(A);S1でYes)、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていると判定して、遅延時間Tdelayの経過を待たずに即座にブレーキ優先信号をONにする(図10(B);S3S4でYes、S33でYes、S6)。これにより、ブレーキペダル43が踏み込まれたと同時に優先アクセル操作量の上限が制動アクセル操作量に制限される(図10(D);S7)。
【0138】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるほか、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていると判定されたときは、ブレーキペダル43が踏み込まれたと同時に優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量に制限する。
【0139】
これにより、万が一アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生して繰り返しブレーキペダル43が踏み込まれることがあっても、確実に車両を減速、停止させることができる。
【0140】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態によるブレーキ優先制御について説明する。本実施形態によるブレーキ優先制御は、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれている場合には、ブレーキペダル43から足を離してから所定の制限維持時間Tkeepが経過した後にブレーキ優先信号をOFFにする点で、第3実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0141】
第3実施形態で説明したように、車両を減速させたいにもかかわらず十分な減速ができないときに、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれることが多い。しかしながら、ブレーキペダル43から足が離されると同時にブレーキ優先信号をOFFにしてしまうと、次にブレーキペダル43が踏み込まれるまでの間は優先アクセル操作量が制動アクセル操作量に制限されなくなる。したがって、車両を減速させたというドライバに意思に反してしまうことになる。
【0142】
そこで本実施形態では、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれているときは、ブレーキペダル43から足が離されてから所定の制限維持時間Tkeepが経過した後にブレーキ優先信号をOFFにすることで、次にブレーキペダル43が踏み込まれるまでの間も優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量に維持する。以下、この本実施形態によるブレーキ優先制御について説明する。
【0143】
図11は、本実施形態によるブレーキ優先制御部71の処理内容について説明するフローチャートである。コントローラ5は、本ルーチンを所定の演算周期Tsmp(例えば10ms)で繰り返し実行する。
【0144】
まず、ブレーキペダル43が踏み込まれたときの処理、つまりステップS1でYESに進んだ後の処理について説明する。ステップS2からステップS7、ステップS32、ステップS33の処理内容は第1実施形態及び第3実施形態と同様なので説明を省略する。
【0145】
ステップS41において、コントローラ5は、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていると判定されたときに1にセットされる繰り返し判定フラグFrepeatを0に戻す。
【0146】
ステップS42において、コントローラ5は、繰り返し判定フラグFrepeatを1にセットする。
【0147】
続いて、ブレーキペダル43から足が離されたときの処理、つまりステップS1でNOに進んだ後の処理について説明する。ステップS8からステップS10、ステップS31の処理内容は第1実施形態及び第3実施形態と同様なので説明を省略する。
【0148】
ステップS43において、コントローラ5は、繰り返し判定フラグが1にセットされているかを判定する。コントローラ5は、繰り返し判定フラグが1にセットされていれば、ステップS44に処理を移行し、繰り返し判定フラグが0にセットされていれば、ステップS8に処理を移行する。
【0149】
ステップS44において、コントローラ5は、ブレーキペダル43から足が離されてから制限維持時間Tkeepが経過したかを判定する。具体的には、非ブレーキ操作時間Tblk_offが制限維持時間Tkeepよりも大きいかを判定する。制限維持時間Tkeepは数秒の範囲で適宜目的応じて設定すればよい。コントローラ5は、ブレーキペダル43から足が離されてから制限維持時間Tkeepが経過していればステップS9に処理を移行する。一方で、ブレーキペダル43から足が離されてから制限維持時間Tkeepが経過していなければ今回の処理を終了する。
【0150】
図12は、本実施形態によるブレーキ優先制御部71の処理動作を示すタイムチャートである。フローチャートとの対応を明確にするため、フローチャートのステップ番号を併記して説明する。なお、Nレンジ信号はOFFであり、車速も所定車速以上であるとする。
【0151】
時刻t41でブレーキペダル43を踏み込まれ、ブレーキスイッチ信号がONになると(図12(A);S1でYes)、それから遅延時間Tdelayが経過した時刻t42で、ブレーキ優先信号がONになる(図12(B);S3S4でYes、S33でNo、S5でYes、S6)。
【0152】
時刻t42でブレーキ優先信号がONになると、優先アクセル操作量の上限が制動アクセル操作量に制限される(図12(E);S7)。
【0153】
時刻t43でブレーキペダル43から足が離されると、ブレーキスイッチ信号がOFFになる(図12(A);S1でNo)。このときは、繰り返し判定フラグが0にセットされているので(図12(C);S43でNo)、ブレーキスイッチ信号がOFFになると同時にブレーキ優先信号もOFFとなる(図12(B);S9)。
【0154】
そして、時刻t44で繰り返し判定時間Trepeatが経過する前に再びブレーキペダル43が踏み込まれると(図12(A);S1でNo)、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていると判定して(S33でYes)、今度は遅延時間Tdelayの経過を待たずに即座にブレーキ優先信号をONにするとともに、繰り返し判定フラグを1にセットする(図12(B)(C);S42,S6)。
【0155】
そのため、時刻t45でブレーキペダル43から足が離されてブレーキスイッチ信号がOFFになっても(図12(A);S1でNo)、繰り返し判定フラグが1にセットされており(S43でYes)、かつ、制限維持時間Tkeepも経過していないので(S44でNo)、ブレーキ優先信号はONのままとなる。
【0156】
時刻t46で再度ブレーキペダル43が踏み込まれているが、繰り返し判定時間Trepeat及び遅延時間Tdelayが経過する前なので、ブレーキ優先信号はONに、繰り返し判定フラグは1に維持されたままとなる(図12(B)(C);S1でYes、S33でYes)。
【0157】
そして、時刻t47でブレーキペダル43から足が離されると(S1でNo)、時刻t47からS44でNoが経過した時刻t48でブレーキ優先信号がOFFとなる(図12(B);S43S44でYes、S9)。その後、時刻t49でブレーキペダル43が踏み込まれると、繰り返し判定フラグが0となる(図12(C);S1でYes、S33でNo)。
【0158】
このように、本実施形態では、一旦繰り返し判定がなされると、その繰り返し判定中は、ブレーキペダル43から足が離されても制限維持時間Tkeepが経過するまでは、ブレーキ優先信号をONに維持する。
【0159】
これにより、ブレーキペダル43を繰り返し踏み込んでいるときは、ブレーキペダル43から足を離したとしても、上限が制動アクセル操作量に制限された優先アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクが算出される。
【0160】
したがって、万が一アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生して繰り返しブレーキペダル43が踏み込まれることがあっても、確実に車両を減速、停止させることができるとともに、第3実施形態よりも早期に車両を停止させることができる。
【0161】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0162】
例えば、上記実施形態では火花点火式内燃機関を例に説明したが、これに限られるものではなく、例えば圧縮着火式内燃機関でも良い。その場合は、スロットル開度のかわりに燃料噴射量を制御してやれば良い。
【0163】
また、ディスクブレーキ42を例に説明したが、これに限られるものではなく、例えばドラムブレーキでも良い。
【0164】
また、エンジントルクを目標エンジントルクに制御するときに、スロットル開度を制御したが、これに限られるものではない。例えば、吸気弁123のリフト・作動角を連続的に変更可能な可変動弁装置を備える場合には、その可変動弁装置によって吸気弁123のリフト量を制御することでエンジントルクを制御しても良い。また、燃料噴射量を減量させてもよい。
【0165】
また、ブレーキ操作時間が所定の遅延時間を越えてから内燃機関の出力を制限したが、これに限られるものではない。例えば、ブレーキ操作して所定の距離を走行した後に内燃機関の出力を制限させても良い。
【0166】
また、ドライバの好みによって複数の走行モードを選択できる車両の場合には、例えばスポーツモードに切り替えられたときなど、ドライバが左足でブレーキペダル43を踏み込む可能性が高い走行モードのときに、上記のブレーキ優先制御を実施しても良い。
【符号の説明】
【0167】
1 火花点火式内燃機関(内燃機関)
S1 制動要求検出手段
S2 制動操作時間算出手段
S7 出力制限手段
S10 出力制限解除手段
S22 補助出力制限手段
S7、S33 繰り返し判定時出力制限手段
S31 非制動操作時間算出手段
S10、S43,S44 繰り返し判定時出力制限解除手段
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の出力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクセルペダルに何らかの不具合、例えば、ドライバがフロアマットを新たに設置し、アクセルペダルがこの新たに設置したフロアマットに引っかかることによって、万が一踏み込んだ状態から戻らなくなってしまった場合であっても、ブレーキペダルを踏み込めば車両を停止させることができるようにすることが求められる。
【0003】
そこで、アクセルペダルの操作量が略一定である状態が所定時間以上継続していて、かつ、ブレーキペダルが踏み込まれたときにスロットル弁の開度を制限するものがある(特許文献1参照)。
【0004】
これは、車両を運転するときは、右足でアクセルペダルとブレーキペダルを踏み分けて操作するのが一般的であるが、ドライバによっては状況に応じてアクセルペダルを右足で踏み込みながら、ブレーキペダルを左足で踏み込むことがある。そのため、ドライバが意図的に左足でブレーキペダルを踏み込んでいるのか、又は、アクセルペダルに何らかの不具合が生じてブレーキペダルを踏み込んでいるのかを判別した上でスロットル弁の開度を制限しようというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−148396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ドライバが意図的に左足でブレーキペダルを踏み込んでいても、アクセルペダルの操作量が略一定である状態が所定時間以上継続する場合も考えられ、その場合、ブレーキペダルが踏み込まれたときにスロットル弁の開度を制限すると、ドライバに予想以上の減速感を与えることになり、運転性が悪化するという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、アクセルペダルを操作しつつ意図的にブレーキペダルが操作されたときの運転性の悪化を抑制するとともに、万が一アクセルペダルに不具合が生じたときにはブレーキペダルを踏み込むことで車両を停止させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両の駆動力を発生する内燃機関の出力制御装置である。そして、制動要求操作の有無を検出する制動要求検出手段と、前記制動要求操作を開始してからの制動操作時間を算出する制動操作時間算出手段と、前記制動操作時間が所定時間よりも大きくなったときに、前記内燃機関の出力を制限する出力制限手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アクセルペダルが操作されたか否かに関係なく、ブレーキペダルを操作している時間(制動操作時間)が所定時間を越えたときは、内燃機関の出力を制限する。
【0010】
そのため、ドライバがブレーキペダルの操作(制動要求操作)を開始したと同時に内燃機関の出力が制限されることがない。よって、アクセルペダルを操作しつつ意図的にブレーキペダルを操作したときにドライバに予想以上の減速感を与えることもない。
【0011】
また、万が一アクセルペダルに不具合が生じていたときは、所定時間経過後に内燃機関の出力が制限されるため、車両を確実に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両の制御装置の概略構成図である。
【図2】制動装置の概略構成図である。
【図3】第1実施形態によるスロットル開度制御について説明するブロック図である。
【図4】第1実施形態によるブレーキ優先判定部の処理内容について説明するフローチャートである。
【図5】第1実施形態によるブレーキ優先判定部の処理動作を示すタイムチャートである。
【図6】第2実施形態によるスロットル開度制御について説明するブロック図である。
【図7】第2実施形態によるブレーキ優先判定部の処理内容について説明するフローチャートである。
【図8】第2実施形態によるブレーキ優先判定部の処理動作を示すタイムチャートである。
【図9】第3実施形態によるブレーキ優先判定部の処理内容について説明するフローチャートである。
【図10】第3実施形態によるブレーキ優先判定部の処理動作を示すタイムチャートである。
【図11】第4実施形態によるブレーキ優先判定部の処理内容について説明するフローチャートである。
【図12】第4実施形態によるブレーキ優先判定部の処理動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面等を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による車両の制御装置の概略構成図である。
【0015】
車両の制御装置は、車両の駆動力を発生するエンジン1と、エンジン1に吸入される空気(以下「吸気」という。)が流れる吸気通路2と、エンジン1から排出された燃焼ガス(以下「排気」という。)が流れる排気通路3と、車両を制動させる制動装置4と、コントローラ5と、を備える。
【0016】
エンジン1は、シリンダブロック11と、シリンダヘッド12と、を備える。
【0017】
シリンダブロック11は、シリンダ部11aとクランクケース部11bとを備える。
【0018】
シリンダ部11aには、複数のシリンダ110が形成される。シリンダ110の内部には、燃焼圧力を受けてシリンダ110の内部を往復運動するピストン111が収められる。
【0019】
クランクケース部11bは、シリンダ部11aの下方に形成される。クランクケース部11bは、クランクシャフト112を回転自在に支持する。クランクシャフト112は、ピストン111の往復運動をコンロッド113を介して回転運動に変換する。
【0020】
シリンダヘッド12は、シリンダブロック11の上面に取り付けられ、シリンダ110及びピストン111とともに燃焼室13の一部を形成する。
【0021】
シリンダヘッド12には、吸気通路2に接続され燃焼室13の頂壁に開口する吸気ポート120と、排気通路3に接続され燃焼室13の頂壁に開口する排気ポート121と、が形成され、燃焼室13の頂壁中央に臨むように点火栓122が設けられる。また、シリンダヘッド12には、燃焼室13と吸気ポート120との開口を開閉する吸気弁123と、燃焼室13と排気ポート121との開口を開閉する排気弁124と、が設けられる。さらに、シリンダヘッド12には、吸気弁123を開閉駆動する吸気カムシャフト125と、排気弁124を開閉駆動する排気カムシャフト126とが設けられる。
【0022】
吸気通路2には、上流から順に、エアクリーナ21と、エアフローメータ22と、電子制御式のスロットル弁25と、吸気コレクタ26と、燃料噴射弁27と、が設けられる。
【0023】
エアクリーナ21は、吸気中に含まれる砂などの異物を除去する。
【0024】
エアフローメータ22は、吸気の流量(以下「吸気量」という。)を検出する。
【0025】
スロットル弁25は、吸気通路2の通路断面積を変化させることで、吸気コレクタ26に流入する吸気量を調整する。スロットル弁25は、スロットルアクチュエータ27によって開閉駆動され、スロットルセンサ28によってその開度(以下「スロットル開度」という。)が検出される。
【0026】
吸気コレクタ26は、流入してきた空気を各シリンダ110に均等に分配する。
【0027】
燃料噴射弁27は、エンジン1の運転状態に応じて吸気ポート120に向けて燃料を噴射する。
【0028】
排気通路3には、排気中の炭化水素や窒素酸化物などの有害物質を取り除く三元触媒31が設けられる。
【0029】
制動装置4は、車両を減速、停止させるために必要な制動力を発生させる装置である。制動装置4については図2を参照して説明する。
【0030】
図2は、制動装置4の概略構成図である。
【0031】
制動装置4は、ブレーキブースタ40と、マスタシリンダ41と、ディスクブレーキ42と、ブレーキペダル43と、を備える。
【0032】
ブレーキブースタ40は、内部にダイアフラム403で仕切られた第1室401及び第2室402と、プッシュロッド404と、を備え、エンジン1の吸入負圧を利用してブレーキペダル43を操作するために必要な力を軽減する。
【0033】
第1室401は、大気弁405を介して大気と連通している。第2室402は負圧配管407を介して吸気コレクタ26と連通しており、負圧状態となっている。第1室401と第2室402とは、真空弁406を介して連通している。
【0034】
プッシュロッド404は、ブレーキブースタ40の内部を貫通する。プッシュロッド404の一端はマスタシリンダ41の第2ピストン412に接続され、他端はブレーキペダル43に接続される。プッシュロッド404は、ブレーキペダル43が踏み込まれると図中左側に移動する。これにより、大気弁405及び真空弁406が開閉するとともに、マスタシリンダ41の第1ピストン411及び第2ピストン412がリターンスプリング413a,413bに抗して押し込まれ、油圧が発生する。
【0035】
マスタシリンダ41は、内部に第1ピストン411及び第2ピストン412を備え、ディスクブレーキ42を作動させるための油圧を発生させる。
【0036】
第1ピストン411は、両側からリターンスプリング413a,413bによって支持される。リターンスプリング413a,413bの収まっている部分は、それぞれ第1圧力室414及び第2圧力室415を形成する。
【0037】
第1圧力室414及び第2圧力室415は、それぞれブレーキオイルの補給口と圧送口と備える。補給口は、ブレーキオイルが補給されるリザーバタンク416と連通している。圧送口は、油圧配管424a,424bを介して各車輪を制動させるディスクブレーキ42のキャリパ422に連通している。図2では、煩雑を避けるために左前輪を制動させるディスクブレーキ42のみを図示した。
【0038】
ディスクブレーキ42は、車輪の回転軸と共に回転する円板状のディスクロータ421と、ディスクロータ421を挟むようにして設けられたキャリパ422と、を備える。
【0039】
キャリパ422の内部には、2つのシリンダ423がディスクロータ421を挟んで対向するように設けられる。シリンダ423は、油圧配管424を介してマスタシリンダ41と連通する。また、シリンダ423の内部には、車輪の回転軸と平行に移動するピストン425が納められ、このピストン425のディスクロータ側の端部に摩擦材であるブレーキパッド426が設けられる。
【0040】
続いて制動装置42の作用について説明する。
【0041】
ブレーキブースタ40の大気弁405は、ブレーキペダル43が踏み込まれていないときは閉じられている。一方で、真空弁406は開かれている。したがって、ブレーキペダル43が踏み込まれていないときは、第1室401と第2室402とは連通状態となっており、双方の圧力は同じ負圧となっている。
【0042】
この状態からブレーキペダル43を踏み込むと、プッシュロッド404が図中左側に移動して、まず真空弁406が閉じられる。これにより、第1室401と第2室402とは非連通状態となる。
【0043】
さらにブレーキペダル43を踏み込むと、大気弁405が開き第1室401に大気が導入される。これにより、第1室401の圧力は大気圧となる。一方で、第2室402の圧力は、ブレーキペダル43を踏み込む前の負圧のままである。そのため、第1室401と第2室402との間に圧力差が生じ、この差圧がダイアフラム403に作用してプッシュロッド404を移動させるときのアシスト力となる。
【0044】
また、ブレーキペダル43を踏み込むと、プッシュロッド404が図中左側に移動し、マスタシリンダ41の第1ピストン411及び第2ピストン412がリターンスプリング413a,413bに抗して図中左側に押し込まれ、油圧が発生する。この油圧が圧送口から油圧配管424a,424bを介してキャリパ422のピストン425に作用することで、ピストン425がディスクロータ側に移動する。これにより、ブレーキパッド426がディスクロータ421に押し付けられて、車両を減速、停止させるために必要な制動力が発生する。
【0045】
再び図1に戻って車両の制御装置について説明する。
【0046】
コントローラ5は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。
【0047】
コントローラ5には、前述したエアフローメータ22やスロットルセンサ28からの検出信号のほか、クランク角に基づいてエンジン回転速度を検出するエンジン回転速度センサ51やアクセルペダル6の踏み込み量(以下「アクセル操作量」という。)を検出するアクセルストロークセンサ52、ブレーキペダル43が踏み込まれているかを検出するブレーキスイッチ53、シフトレバーの位置を検出するシフト位置検出センサ54、車速を検出する車速センサ55などの各種センサからの検出信号が入力される。
【0048】
コントローラ5は、これら各種センサからの検出信号に基づいて、スロットル開度や燃料噴射量、点火時期などを運転状態に応じて最適に制御する。また、コントローラ5は、これら各種センサからの検出信号に基づいて各部品やセンサ自体の故障を判定し、必要に応じてドライバの安全を確保するために種々のフェイルセーフを実施する。
【0049】
このフェイルセーフのひとつとして、例えば、ドライバがフロアマットを新たに設置し、アクセルペダル6がこの新たに設置したフロアマットに引っかかることにより、踏み込んだまま戻らなくなったとしても、ブレーキペダル43を踏み込めば確実に減速、停止できるようにするものがある。これは、具体的にはアクセルペダル6とブレーキペダル43の両方が踏み込まれたときに、車両の駆動力が制動力よりも大きくならないようにエンジントルク(スロットル開度)を制限するものである。
【0050】
しかしながら、スポーツ走行を楽しむドライバは、コーナリングなどで車両の旋回性を向上させるために、アクセルペダル6を右足で踏み込みつつ、意図的に左足でブレーキペダル43を踏み込むことがある。また、速度の微調整が必要なときにも、アクセルペダル6を右足で踏み込みつつ、意図的に左足でブレーキペダル43を踏み込むことがある。さらに、不用意にブレーキペダルを踏み込んでしまうことも考えられる。
【0051】
そのため、アクセルペダル6とブレーキペダル43の両方が踏み込まれたときに、常にエンジントルクを制限してしまうと、ドライバに意図した以上の減速感を与えることがあり、運転性が悪化する。つまり、アクセルペダル6とブレーキペダル43の両方が踏み込まれているからといって、一概にアクセルペダル6が戻らない状態が発生していると判断してエンジントルクを制限するのは望ましくない。
【0052】
そこで本実施形態では、ブレーキペダル43が踏み込まれてから所定の時間が経過するまでは、実際のアクセル操作量(以下「実アクセル操作量」という。)に基づいて目標スロットル開度を算出する。これにより、意図的に左足でブレーキペダル43が踏み込まれたときの運転性の悪化を抑制する。そして、ブレーキペダル43が踏み込まれてから所定の時間が経過したにもかかわらず、アクセルペダル6が所定の制限値(制動アクセル操作量)以上踏み込まれているときは、その制限値に基づいて目標スロットル開度を算出する。これにより、アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生していたとしてもエンジントルクを低下させることができるので、車両を確実に減速、停止させることができる。以下、この本実施形態によるスロットル開度制御について説明する。
【0053】
図3は、本実施形態によるスロットル開度制御について説明するブロック図である。
【0054】
図3に示すように、スロットル開度制御部7は、ブレーキ優先制御部71と、目標エンジントルク算出部72と、目標スロットル開度算出部73と、を備える。スロットル開度制御部7は、ブレーキ優先制御部71から出力された優先アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクを算出し、その目標エンジントルクを実現する目標スロットル開度にスロットル弁を制御する。以下、各構成部について詳しく説明する。
【0055】
ブレーキ優先制御部71は、ブレーキ優先判定部711と、リミッタ値出力部712と、優先アクセル操作量出力部713と、を備える。ブレーキ優先制御部71のより詳しい処理内容については図4を参照して後述する。
【0056】
ブレーキ優先判定部711には、シフト位置検出センサ54から出力されるNレンジ信号と、車速と、ブレーキスイッチ信号と、が入力される。ブレーキ優先判定部711は、これらの入力信号に基づいて優先アクセル操作量に上限を設けるかを判定し、上限を設けるときにONに切り替わるブレーキ優先信号を出力する。
【0057】
リミッタ値出力部712には、ブレーキ優先信号が入力される。リミッタ値出力部712は、ブレーキ優先信号がOFFであれば、アクセルペダル6を最後まで踏み込んだときのアクセル操作量(以下「最大アクセル操作量」という。)をリミッタ値として出力する。一方で、ブレーキ優先信号がONであれば、ディスクブレーキ42による制動力が加われば車両を減速させることのできる所定のアクセル操作量(以下「制動アクセル操作量」という。)をリミッタ値として出力する。
【0058】
優先アクセル操作量出力部713には、実アクセル操作量と、リミッタ値と、が入力される。優先アクセル操作量出力部713は、実アクセル操作量とリミッタ値とを比較し、値の小さいほうを優先アクセル操作量として出力する。
【0059】
このように、ブレーキ優先制御部71は、ブレーキ優先信号がONであれば、出力する優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量に制限する。つまり、実アクセル操作量が制動アクセル操作量よりも小さければ、実アクセル操作量を優先アクセル操作量として出力する。逆に、実アクセル操作量が制動アクセル操作量よりも大きければ、制動アクセル操作量を優先アクセル操作量として出力する。
【0060】
一方で、ブレーキ優先信号がOFFであれば、出力する優先アクセル操作量の上限を制限せずに実アクセル操作量を優先アクセル操作量として出力する。
【0061】
目標エンジントルク算出部72には、優先アクセル操作量が入力される。目標エンジントルク算出部72は、優先アクセル操作量を一旦エンジントルクに変換したあと、各種の補正を施して目標エンジントルクを算出する。
【0062】
目標スロットル開度算出部73には、目標エンジントルクが入力される。目標スロットル開度算出部73は、目標エンジントルクに基づいて目標スロットル開度を算出する。
【0063】
そして、スロットル開度が目標スロットル開度となるようにスロットルアクチュエータ27が制御される。
【0064】
また、優先アクセル操作量は変速制御部8に入力される。変速制御部8は、変速機の変速段を変更するための変速マップを備えており、優先アクセル操作量と車速とに基づいて変速機の変速段を変更する。
【0065】
図4は、ブレーキ優先制御部71の処理内容について説明するフローチャートである。コントローラ5は、本ルーチンを所定の演算周期Tsmp(例えば10ms)で繰り返し実行する。
【0066】
ステップS1において、コントローラ5は、ブレーキペダル43が踏み込まれているかを判定する。具体的には、ブレーキスイッチ信号がONになっているかを判定する。コントローラ5は、ブレーキスイッチ信号がONになっていればステップS2に処理を移行する。一方で、ブレーキペダル43が踏み込まれておらず、ブレーキスイッチ信号がOFFのままであればステップS8に処理を移行する。
【0067】
ステップS2からステップS7は、ブレーキペダル43が踏み込まれているときに実施される処理である。
【0068】
ステップS2において、コントローラ5は、ブレーキペダル43が踏み込まれてからの時間(以下「ブレーキ操作時間」という。)Tblk_onを算出する。具体的には、前回までのブレーキ操作時間Tblk_onに演算周期Tsmpを加算してブレーキ操作時間Tblk_onの値を更新する。
【0069】
ステップS3からステップS5において、コントローラ5は、ブレーキペダル43が踏み込まれているときに、ブレーキ優先信号をONにするための条件が成立しているかを判定する。以下、各ステップの具体的な処理内容について説明する。
【0070】
ステップS3において、コントローラ5は、シフトレバーの位置がNレンジ以外の位置にあるかを判定する。具体的には、シフトレバーの位置がNレンジのときにONとなるNレンジ信号がONになっているかを判定する。シフトレバーの位置がNレンジであれば、エンジン1の動力は駆動系に伝達されないので、わざわざエンジントルクを制限する必要がないためである。コントローラ5は、Nレンジ信号がOFF(すなわちシフトレバーの位置がDレンジなどのとき)になっていればステップS4に処理を移行する。一方で、Nレンジ信号がONになっていれば今回の処理を終了する。
【0071】
ステップS4において、コントローラ5は、車速が所定車速(例えば4km/h)以上かを判定する。コントローラ5は、車速が所定車速以上であればステップS5に処理を移行する。一方で、車速が所定車速未満であれば今回の処理を終了する。
【0072】
ステップS5において、コントローラ5は、ブレーキ操作時間Tblk_onが所定の遅延時間Tdelayよりも大きいかを判定する。すなわち、ブレーキペダル43が踏み込まれてから所定の遅延時間Tdelayが経過したかを判定する。本実施形態では、遅延時間Tdelayを概ね4秒程度に設定しているが、数秒の範囲で適宜目的に応じて変更すればよい。コントローラ5は、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayよりも大きければステップS6に処理を移行する。一方で、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayよりも小さければ今回の処理を終了する。
【0073】
ステップS6において、コントローラ5は、ブレーキ優先信号をONにする。
【0074】
ステップS7において、コントローラ5は、優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量に設定する。
【0075】
ステップS8からステップS10は、ブレーキペダル43から足が離されているときに実施される処理である。
【0076】
ステップS8において、コントローラ5は、ブレーキ操作時間Tblk_onを初期値ゼロに戻す。
【0077】
ステップS9において、コントローラ5は、ブレーキ優先信号をOFFにする。
【0078】
ステップS10において、コントローラ5は、優先アクセル操作量の上限を最大アクセル操作量に設定する。
【0079】
図5は、ブレーキ優先判定部71の処理動作を示すタイムチャートである。フローチャートとの対応を明確にするため、フローチャートのステップ番号を併記して説明する。なお、Nレンジ信号はOFFであり、車速も所定車速以上であるとする。
【0080】
時刻t1でブレーキペダル43が踏み込まれると、ブレーキスイッチ信号がONとなる(図5(A);S1でYes)。このとき本実施形態では、ドライバがアクセルペダル6を踏み込みつつ意図的にブレーキペダル43を踏み込むことを考慮して、所定の遅延時間Tdelayが経過した時刻t2で、ブレーキ優先信号をONにする(図5(B);S3〜S5でYes、S6)。
【0081】
時刻t2でブレーキ優先信号がONになると、優先アクセル操作量の上限が制動アクセル操作量に制限される(S7)。ここでは、実アクセル操作量が制動アクセル操作量よりも大きくなっているので、制動アクセル操作量を優先アクセル操作量として使用する(図6(C)(D))。
【0082】
そして、時刻t2以降は、次にブレーキペダル43から足が踏み外される時刻t3まで、上限が制動アクセル操作量に制限された優先アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクが算出される。
【0083】
このように、ブレーキ優先信号がONになったにもかかわらず、実アクセル操作量が制動アクセル操作量よりも大きくなっているときは、制動アクセル操作量に基づいて算出した目標エンジントルク(制動出力)となるように、エンジントルクを制御する。
【0084】
すなわち、ブレーキペダル43を所定の遅延時間Tdelay踏み続けているにもかかわらず、ディスクブレーキ42による制動力を超えるエンジントルクが要求されているときは、その要求がドライバの意思によるものではなく、何らかの不具合によって要求されているものと判断して、車両をディスクブレーキ42による制動力によって減速、停止させることのできるエンジントルクまで低下させる。
【0085】
これにより、万が一アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生したとしても確実に車両を減速、停止させることができる。
【0086】
以上説明した本実施形態によれば、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayを越えるまではブレーキ優先信号をOFFのままとし、実アクセル操作量を優先アクセル操作量として使用する。そして、実アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクを算出し、目標エンジントルクとなるようにエンジントルクを制御する。
【0087】
そのため、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayを越えるまでは、実アクセル操作量に応じたドライバの要求通りのエンジントルクが得られる。これにより、スポーツ走行時や速度を微調整する場合など、ドライバの意思によってアクセルペダル6とともにブレーキペダル43が踏まれるときに、ドライバに予想以上の減速感を与えることがないので、運転性の悪化を抑制できる。
【0088】
一方で、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayを越えた後はブレーキ優先信号をONとし、優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量に制限する。つまり、実アクセル操作量が制動アクセル操作量未満であれば、実アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクを算出し、目標エンジントルクとなるようにエンジントルクを制御する。逆に、実アクセル操作量が制動アクセル操作量以上であれば、制動アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクを算出し、目標エンジントルクとなるようにエンジントルクを制御する。
【0089】
これにより、ブレーキペダル43を所定の遅延時間Tdelay踏み続けているにもかかわらず、アクセルペダル6が制動アクセル操作量以上踏み込まれているときは、車両をディスクブレーキ42による制動力によって減速させることが可能なエンジントルクまで低下させることができる。そのため、何らかの不具合によって万が一アクセルペダル6が制動アクセル操作量以上踏み込まれている状態が続いたとしても、確実に車両を減速させることができ、ドライバの安全を確保することができる。
【0090】
また、このときはスロットル弁25が閉じ側に制御されるので、吸気コレクタ26の内部を負圧に保つことができる。そのため、ブレーキブースタ40によってブレーキペダル43を操作するときのアシスト力を確保できる。これにより、ブレーキペダル43を踏み込んだときにマスタシリンダ41で十分な油圧を発生せて、ブレーキパッド426をディスクロータ421にしっかりと押し付けることができるので、ブレーキ本来の制動力を発生させることができる。
【0091】
また、シフトレバーの位置がNレンジの位置にあるときは、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayを越えたとしてもブレーキ優先信号をONにしないこととした。
【0092】
これにより、シフトレバーの位置がNレンジの位置にあり、エンジントルクが駆動系に伝達されないときには、実アクセル操作量に応じたドライバの要求通りのエンジントルクが得られる。そのため、エンジンフィーリングを確かめるためにエンジン1の空ぶかしを行うときなどにブレーキペダル43を踏み込んでいたとしても、エンジン回転速度を滑らかに上昇させることができる。
【0093】
また、車速が例えば4km/h未満の低車速域にある場合に、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayを越えたときも、ブレーキ優先信号をONにしないこととした。これは、速度の微調整が低車速域で行われることが多いことを考慮したものである。
【0094】
これにより、低車速域では実アクセル操作量に応じたドライバの要求通りのエンジントルクが得られるので、低車速域でブレーキペダル43を踏み込みつつ速度の微調整をすることが容易となる。
【0095】
また、一旦ブレーキ優先信号がONになった後は、シフトレバーの位置がNレンジに変更されたり車速が低車速域に入ったとしても、ブレーキスイッチ信号がOFFになるまでブレーキ優先信号をOFFに戻さないこととした。
【0096】
これにより、優先アクセル操作量の上限がリミッタ操作量に制限されているときに、車速が低車速域に入ったとしてもブレーキ優先信号がOFFになることがないので、再び車両が加速するのを防止できる。また、シフトレバーの位置がNレンジに変更されたとしてもブレーキ優先信号がOFFになることがないので、エンジン1の無駄な空ぶかしを防止できる。
【0097】
さらに本実施形態では、優先アクセル操作量と車速とに基づいて変速機の変速段を変更させている。優先アクセル操作量が制動アクセル操作量に制限されたときは、アクセルペダル6が戻された状態と同じなので、基本的にアップシフトが行われる。そのため、車両の駆動力を小さくすることができるので、より車両を減速させやすくすることができる。
【0098】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態によるブレーキ優先制御について説明する。本実施形態によるブレーキ優先制御は、ブレーキペダル43が踏み込まれてからの経過時間に応じて段階的にアクセル操作量の上限を小さくしていく点で、第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。なお、以下の実施形態では、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
【0099】
図6は、本実施形態によるスロットル開度制御について説明するブロック図である。
【0100】
本実施形態では、ブレーキ優先制御部71の構成だけが第1実施形態と異なるので、以下ではブレーキ優先制御部71の構成について説明する。
【0101】
本実施形態によるブレーキ優先制御部71は、ブレーキ優先判定部711と、第1リミッタ値出力部712と、第2リミッタ値出力部714と、優先アクセル操作量出力部713と、を備える。
【0102】
ブレーキ優先判定部711には、Nレンジ信号、車速、及びブレーキスイッチ信号が入力される。ブレーキ優先判定部711は、これらの入力信号に基づいて、第1ブレーキ優先信号と、第2ブレーキ優先信号と、を出力する。
【0103】
第1ブレーキ優先信号は、第1実施形態で説明したブレーキ優先信号と同じ信号であり、Nレンジ信号及び車速が所定の条件を満たしているときにブレーキスイッチ信号がONになれば、所定の遅延時間Tdelayが経過した後にONになる信号である。第2ブレーキ優先信号は、Nレンジ信号及び車速が所定の条件を満たしているときにブレーキスイッチ信号がONになれば、同時にONになる信号である。したがって、Nレンジ信号及び車速が所定の条件を満たしているときにブレーキペダル43が踏み込まれると、まず第2ブレーキ優先信号がONになり、それから遅延時間Tdelayが経過した後に第1ブレーキブレーキ優先信号がONになる。
【0104】
第1リミッタ値出力部712には、第1ブレーキ優先信号が入力される。第1リミッタ値出力部712は、ブレーキ優先信号がOFFであれば、最大アクセル操作量を第1リミッタ値として出力する。一方で、ブレーキ優先信号がONであれば、制動アクセル操作量を第1リミッタ値として出力する。
【0105】
第2リミッタ値出力部714には、第2ブレーキ優先信号が入力される。第2リミッタ値出力部712は、ブレーキ優先信号がOFFであれば、最大アクセル操作量を第2リミッタ値として出力する。一方で、ブレーキ優先信号がONであれば、最大アクセル操作量よりも小さく、制動アクセル操作量よりも大きい所定の補助制動アクセル操作量を第2リミッタ値として出力する。
【0106】
優先アクセル操作量出力部713には、実アクセル操作量と、第1リミッタ値と、第2リミッタ値と、が入力される。優先アクセル操作量出力部713は、これらの入力信号を比較し、値の最も小さいものを優先アクセル操作量として出力する。
【0107】
このように、本実施形態によるブレーキ優先制御部71は、まず第2ブレーキ優先信号がONになったときに、優先アクセル操作量の上限を補助制動アクセル操作量に制限する。そして、その後に第1ブレーキ優先信号がONになったときに、優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量まで低下させる。
【0108】
図7は、本実施形態によるブレーキ優先制御部71の処理内容について説明するフローチャートである。コントローラ5は、本ルーチンを所定の演算周期Tsmp(例えば10ms)で繰り返し実行する。
【0109】
まず、ブレーキペダル43が踏み込まれたときの処理、つまりステップS1でYESに進んだ後の処理について説明する。ステップS1からステップS7の処理内容は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0110】
ステップS21において、コントローラ5は、第2ブレーキ優先信号をONにする。
【0111】
ステップS22において、優先アクセル操作量の上限を補助制動アクセル操作量に設定する。
【0112】
続いて、ブレーキペダル43から足が離されたときの処理、つまりステップS1でNOに進んだ後の処理について説明する。ステップS8からステップS10の処理内容は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0113】
ステップS23において、コントローラ5は、第2ブレーキ優先信号をOFFにする。
【0114】
図8は、本実施形態によるブレーキ優先制御部71の処理動作を示すタイムチャートである。フローチャートとの対応を明確にするため、フローチャートのステップ番号を併記して説明する。なお、Nレンジ信号はOFFであり、車速も所定車速以上であるとする。
【0115】
時刻t21でブレーキペダル43が踏み込まれると、ブレーキスイッチ信号がONになる(図8(A);S1でYes)。これにより、第2ブレーキ優先信号がONとなり(図8(C);S3S4でYes、S21)、優先アクセル操作量の上限が補助制動アクセル操作量に制限される(S22)。その結果、ブレーキ操作時間Tblk_onが所定の遅延時間Tdelayよりも大きくなる時刻t22までは、上限が補助制動アクセル操作量に制限された優先アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクが算出される。
【0116】
ここでは、実アクセル操作量が補助制限アクセル操作量よりも大きいので(図8(D))、補助制動アクセル操作量に基づいて算出した目標エンジントルク(補助制動出力)となるように、エンジントルクが制御される(図8(E))。
【0117】
時刻t22で、ブレーキ操作時間Tblk_onが遅延時間Tdelayを越えると、第1ブレーキ優先信号がONになる(図8(B);S5でYes、S6)。そうすると、優先アクセル操作量の上限が制動アクセル操作量まで低下させられる(図8(E);S7)。これにより、時刻t22以降は、ブレーキペダル43から足が踏み外される時刻t23まで、上限が制動アクセル操作量に制限された優先アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクが算出される。
【0118】
このように本実施形態では、ブレーキペダル43が踏み込まれたきは、遅延時間Tdelayが経過するまで優先アクセル操作量の上限を補助制動アクセル操作量に制限し、遅延時間Tdelayが経過した後の出力制限よりも緩い出力制限を行う。
【0119】
これは、アクセルペダル6とブレーキペダル43の両方が踏み込まれていたとしても、一概にアクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生していると判断できないので、万が一アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生していた場合の安全確保を優先するためである。
【0120】
つまり、ブレーキペダル43が踏み込まれると同時にとりあえず緩い出力制限を行うことで、万が一アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生していたときには、第1実施形態よりも早期に車両を減速、停止させることができる。また、車両を完全に制動させるために行われる出力制限よりも緩い出力制限なので、運転性の悪化も最小限に留めることができる。
【0121】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるほか、ブレーキペダル43が踏み込まれたと同時に一旦優先アクセル操作量の上限を補助制動アクセル操作量に制限する。そして、ブレーキペダル43が踏み込まれてから遅延時間Tdelayが経過したときに、優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量まで低下させる。
【0122】
これにより、ブレーキペダル43が踏み込まれると同時に一旦緩い出力制限が行われるので、万が一アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生していたときに、第1実施形態よりも早期に車両を減速、停止させることができる。
【0123】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態によるブレーキ優先制御について説明する。本実施形態によるブレーキ優先制御は、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれている場合には、ブレーキペダル43が踏まれたと同時に優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量に制限する点で、第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0124】
アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生し、実アクセル操作量が制動アクセル操作量よりも大きくなっているときは、エンジン1が制動力を上回るトルクを出力しているので、ブレーキペダル43を踏み込んだとしても車両を減速させることができない。またこのような状況ではスロットル開度も大きくなっているので、吸気コレクタ26内が大気圧に近づく。そうすると、ブレーキブースタ40によるアシスト力が小さくなってブレーキ自体の効きも悪くなるので、一層車両を減速させることができなくなる。
【0125】
このように、ブレーキペダル43を踏み込んでも車両を減速させることができなくなると、ドライバはブレーキペダル43を何度も繰り返し踏み込むことがある。そうすると、ブレーキペダル43を踏み込んでから遅延時間Tdelayが経過する前にブレーキペダル43から足が離されてしまい、優先アクセル操作量を制動アクセル操作量に制限できないおそれがある。
【0126】
そこで本実施形態では、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていると判定されたときは、遅延時間Tdelayが経過する前であってもブレーキ優先信号をONにして、優先アクセル操作量を制動アクセル操作量に制限する。以下、この本実施形態によるブレーキ優先制御について説明する。
【0127】
図9は、本実施形態によるブレーキ優先制御部71の処理内容について説明するフローチャートである。コントローラ5は、本ルーチンを所定の演算周期Tsmp(例えば10ms)で繰り返し実行する。
【0128】
まず、ブレーキペダル43から足が離されたときの処理、つまりステップS1でNOに進んだ後の処理について説明する。ステップS8からステップS10の処理内容は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0129】
ステップS31において、コントローラ5は、ブレーキペダル43から足が離されてからの経過時間(以下「非ブレーキ操作時間」という。)Tblk_offを算出する。具体的には、前回までの非ブレーキ操作時間Tblk_offに演算周期Tsmpを加算して非ブレーキ操作時間Tblk_offの値を更新する。
【0130】
続いて、ブレーキペダル43が踏み込まれたときの処理、つまりステップS1でYESに進んだ後の処理について説明する。ステップS2からステップS7の処理内容は第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0131】
ステップS32において、コントローラ5は、非ブレーキ操作時間Tblk_offを初期値ゼロに戻す。
【0132】
ステップS33において、コントローラ5は、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれているかを判定する。本実施形態では、ブレーキペダル43から足が離されてから所定の繰り返し判定時間Trepeatが経過する前に再びブレーキペダル43が踏み込まれたときに、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていると判定する。具体的には、非ブレーキ操作時間Tblk_offが繰り返し判定時間Trepeatよりも小さいかを判定する。繰り返し判定時間Trepeatは、数秒の範囲で適宜目的に応じて設定すればよい。コントローラ5は、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていれば、ステップS6に処理を移行する。一方で、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていなければ、ステップS5に処理を移行する。
【0133】
図10は、本実施形態によるブレーキ優先制御部71の処理動作を示すタイムチャートである。フローチャートとの対応を明確にするため、フローチャートのステップ番号を併記して説明する。なお、Nレンジ信号はOFFであり、車速も所定車速以上であるとする。
【0134】
時刻t31でブレーキペダル43が踏み込まれ、ブレーキスイッチ信号がONになると(図10(A);S1でYes)、それから遅延時間Tdelayが経過した時刻t32で、ブレーキ優先信号がONになる(図10(B);S3S4でYes、S33でNo、S5でYes、S6)。
【0135】
時刻t32でブレーキ優先信号がONになると、優先アクセル操作量の上限が制動アクセル操作量に制限される(図10(D);S7)。
【0136】
時刻t33でブレーキペダル43から足が離されてブレーキスイッチ信号がOFFになると(図10(A);S1でNo)、ブレーキ優先信号もOFFとなる(図10(B);S9)。
【0137】
そして、時刻t34で繰り返し判定時間Trepeatが経過する前に再びブレーキペダル43が踏み込まれると(図10(A);S1でYes)、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていると判定して、遅延時間Tdelayの経過を待たずに即座にブレーキ優先信号をONにする(図10(B);S3S4でYes、S33でYes、S6)。これにより、ブレーキペダル43が踏み込まれたと同時に優先アクセル操作量の上限が制動アクセル操作量に制限される(図10(D);S7)。
【0138】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるほか、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていると判定されたときは、ブレーキペダル43が踏み込まれたと同時に優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量に制限する。
【0139】
これにより、万が一アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生して繰り返しブレーキペダル43が踏み込まれることがあっても、確実に車両を減速、停止させることができる。
【0140】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態によるブレーキ優先制御について説明する。本実施形態によるブレーキ優先制御は、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれている場合には、ブレーキペダル43から足を離してから所定の制限維持時間Tkeepが経過した後にブレーキ優先信号をOFFにする点で、第3実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0141】
第3実施形態で説明したように、車両を減速させたいにもかかわらず十分な減速ができないときに、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれることが多い。しかしながら、ブレーキペダル43から足が離されると同時にブレーキ優先信号をOFFにしてしまうと、次にブレーキペダル43が踏み込まれるまでの間は優先アクセル操作量が制動アクセル操作量に制限されなくなる。したがって、車両を減速させたというドライバに意思に反してしまうことになる。
【0142】
そこで本実施形態では、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれているときは、ブレーキペダル43から足が離されてから所定の制限維持時間Tkeepが経過した後にブレーキ優先信号をOFFにすることで、次にブレーキペダル43が踏み込まれるまでの間も優先アクセル操作量の上限を制動アクセル操作量に維持する。以下、この本実施形態によるブレーキ優先制御について説明する。
【0143】
図11は、本実施形態によるブレーキ優先制御部71の処理内容について説明するフローチャートである。コントローラ5は、本ルーチンを所定の演算周期Tsmp(例えば10ms)で繰り返し実行する。
【0144】
まず、ブレーキペダル43が踏み込まれたときの処理、つまりステップS1でYESに進んだ後の処理について説明する。ステップS2からステップS7、ステップS32、ステップS33の処理内容は第1実施形態及び第3実施形態と同様なので説明を省略する。
【0145】
ステップS41において、コントローラ5は、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていると判定されたときに1にセットされる繰り返し判定フラグFrepeatを0に戻す。
【0146】
ステップS42において、コントローラ5は、繰り返し判定フラグFrepeatを1にセットする。
【0147】
続いて、ブレーキペダル43から足が離されたときの処理、つまりステップS1でNOに進んだ後の処理について説明する。ステップS8からステップS10、ステップS31の処理内容は第1実施形態及び第3実施形態と同様なので説明を省略する。
【0148】
ステップS43において、コントローラ5は、繰り返し判定フラグが1にセットされているかを判定する。コントローラ5は、繰り返し判定フラグが1にセットされていれば、ステップS44に処理を移行し、繰り返し判定フラグが0にセットされていれば、ステップS8に処理を移行する。
【0149】
ステップS44において、コントローラ5は、ブレーキペダル43から足が離されてから制限維持時間Tkeepが経過したかを判定する。具体的には、非ブレーキ操作時間Tblk_offが制限維持時間Tkeepよりも大きいかを判定する。制限維持時間Tkeepは数秒の範囲で適宜目的応じて設定すればよい。コントローラ5は、ブレーキペダル43から足が離されてから制限維持時間Tkeepが経過していればステップS9に処理を移行する。一方で、ブレーキペダル43から足が離されてから制限維持時間Tkeepが経過していなければ今回の処理を終了する。
【0150】
図12は、本実施形態によるブレーキ優先制御部71の処理動作を示すタイムチャートである。フローチャートとの対応を明確にするため、フローチャートのステップ番号を併記して説明する。なお、Nレンジ信号はOFFであり、車速も所定車速以上であるとする。
【0151】
時刻t41でブレーキペダル43を踏み込まれ、ブレーキスイッチ信号がONになると(図12(A);S1でYes)、それから遅延時間Tdelayが経過した時刻t42で、ブレーキ優先信号がONになる(図12(B);S3S4でYes、S33でNo、S5でYes、S6)。
【0152】
時刻t42でブレーキ優先信号がONになると、優先アクセル操作量の上限が制動アクセル操作量に制限される(図12(E);S7)。
【0153】
時刻t43でブレーキペダル43から足が離されると、ブレーキスイッチ信号がOFFになる(図12(A);S1でNo)。このときは、繰り返し判定フラグが0にセットされているので(図12(C);S43でNo)、ブレーキスイッチ信号がOFFになると同時にブレーキ優先信号もOFFとなる(図12(B);S9)。
【0154】
そして、時刻t44で繰り返し判定時間Trepeatが経過する前に再びブレーキペダル43が踏み込まれると(図12(A);S1でNo)、ブレーキペダル43が繰り返し踏み込まれていると判定して(S33でYes)、今度は遅延時間Tdelayの経過を待たずに即座にブレーキ優先信号をONにするとともに、繰り返し判定フラグを1にセットする(図12(B)(C);S42,S6)。
【0155】
そのため、時刻t45でブレーキペダル43から足が離されてブレーキスイッチ信号がOFFになっても(図12(A);S1でNo)、繰り返し判定フラグが1にセットされており(S43でYes)、かつ、制限維持時間Tkeepも経過していないので(S44でNo)、ブレーキ優先信号はONのままとなる。
【0156】
時刻t46で再度ブレーキペダル43が踏み込まれているが、繰り返し判定時間Trepeat及び遅延時間Tdelayが経過する前なので、ブレーキ優先信号はONに、繰り返し判定フラグは1に維持されたままとなる(図12(B)(C);S1でYes、S33でYes)。
【0157】
そして、時刻t47でブレーキペダル43から足が離されると(S1でNo)、時刻t47からS44でNoが経過した時刻t48でブレーキ優先信号がOFFとなる(図12(B);S43S44でYes、S9)。その後、時刻t49でブレーキペダル43が踏み込まれると、繰り返し判定フラグが0となる(図12(C);S1でYes、S33でNo)。
【0158】
このように、本実施形態では、一旦繰り返し判定がなされると、その繰り返し判定中は、ブレーキペダル43から足が離されても制限維持時間Tkeepが経過するまでは、ブレーキ優先信号をONに維持する。
【0159】
これにより、ブレーキペダル43を繰り返し踏み込んでいるときは、ブレーキペダル43から足を離したとしても、上限が制動アクセル操作量に制限された優先アクセル操作量に基づいて目標エンジントルクが算出される。
【0160】
したがって、万が一アクセルペダル6が戻らなくなる状態が発生して繰り返しブレーキペダル43が踏み込まれることがあっても、確実に車両を減速、停止させることができるとともに、第3実施形態よりも早期に車両を停止させることができる。
【0161】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0162】
例えば、上記実施形態では火花点火式内燃機関を例に説明したが、これに限られるものではなく、例えば圧縮着火式内燃機関でも良い。その場合は、スロットル開度のかわりに燃料噴射量を制御してやれば良い。
【0163】
また、ディスクブレーキ42を例に説明したが、これに限られるものではなく、例えばドラムブレーキでも良い。
【0164】
また、エンジントルクを目標エンジントルクに制御するときに、スロットル開度を制御したが、これに限られるものではない。例えば、吸気弁123のリフト・作動角を連続的に変更可能な可変動弁装置を備える場合には、その可変動弁装置によって吸気弁123のリフト量を制御することでエンジントルクを制御しても良い。また、燃料噴射量を減量させてもよい。
【0165】
また、ブレーキ操作時間が所定の遅延時間を越えてから内燃機関の出力を制限したが、これに限られるものではない。例えば、ブレーキ操作して所定の距離を走行した後に内燃機関の出力を制限させても良い。
【0166】
また、ドライバの好みによって複数の走行モードを選択できる車両の場合には、例えばスポーツモードに切り替えられたときなど、ドライバが左足でブレーキペダル43を踏み込む可能性が高い走行モードのときに、上記のブレーキ優先制御を実施しても良い。
【符号の説明】
【0167】
1 火花点火式内燃機関(内燃機関)
S1 制動要求検出手段
S2 制動操作時間算出手段
S7 出力制限手段
S10 出力制限解除手段
S22 補助出力制限手段
S7、S33 繰り返し判定時出力制限手段
S31 非制動操作時間算出手段
S10、S43,S44 繰り返し判定時出力制限解除手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動力を発生する内燃機関の出力制御装置であって、
制動要求操作の有無を検出する制動要求検出手段と、
前記制動要求操作を開始してからの制動操作時間を算出する制動操作時間算出手段と、
前記制動操作時間が所定時間よりも大きくなったときに、前記内燃機関の出力を制限する出力制限手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の出力制御装置。
【請求項2】
前記出力制限手段は、前記内燃機関の出力を、前記制動要求操作によって発生する制動力で車両を減速させることが可能な制動出力に制限する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の出力制御装置。
【請求項3】
前記制動要求操作を開始したときに、前記内燃機関の出力を前記制動出力よりも大きい補助制動出力に制限する補助出力制限手段を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の出力制御装置。
【請求項4】
前記制動要求操作の有無に基づいて前記制動要求操作を繰り返しているかを判定し、前記制動要求操作を繰り返していると判定した場合は、前記制動要求操作を開始したときに、前記内燃機関の出力を制限する繰り返し判定時出力制限手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の出力制御装置。
【請求項5】
前記制動要求操作を終了したときに、前記出力制限手段による制限を解除する出力制限解除手段と、
前記制動要求操作を終了してから次に開始するまでの非制動操作時間を算出する非制動操作時間算出手段と、
前記前記制動要求操作を繰り返していると判定した場合は、前記出力制限解除手段を実施せずに、前記非制動操作時間が所定時間よりも大きくなったときに前記出力制限手段による制限を解除する繰り返し判定時出力制限解除手段と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の出力制御装置。
【請求項1】
車両の駆動力を発生する内燃機関の出力制御装置であって、
制動要求操作の有無を検出する制動要求検出手段と、
前記制動要求操作を開始してからの制動操作時間を算出する制動操作時間算出手段と、
前記制動操作時間が所定時間よりも大きくなったときに、前記内燃機関の出力を制限する出力制限手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の出力制御装置。
【請求項2】
前記出力制限手段は、前記内燃機関の出力を、前記制動要求操作によって発生する制動力で車両を減速させることが可能な制動出力に制限する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の出力制御装置。
【請求項3】
前記制動要求操作を開始したときに、前記内燃機関の出力を前記制動出力よりも大きい補助制動出力に制限する補助出力制限手段を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の出力制御装置。
【請求項4】
前記制動要求操作の有無に基づいて前記制動要求操作を繰り返しているかを判定し、前記制動要求操作を繰り返していると判定した場合は、前記制動要求操作を開始したときに、前記内燃機関の出力を制限する繰り返し判定時出力制限手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の出力制御装置。
【請求項5】
前記制動要求操作を終了したときに、前記出力制限手段による制限を解除する出力制限解除手段と、
前記制動要求操作を終了してから次に開始するまでの非制動操作時間を算出する非制動操作時間算出手段と、
前記前記制動要求操作を繰り返していると判定した場合は、前記出力制限解除手段を実施せずに、前記非制動操作時間が所定時間よりも大きくなったときに前記出力制限手段による制限を解除する繰り返し判定時出力制限解除手段と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の出力制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−220277(P2011−220277A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92172(P2010−92172)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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