説明

内燃機関の制御装置

【課題】内燃機関の始動時、凝縮水が除去される時間に応じて、効率的にセンサ素子の暖機を開始する。
【解決手段】炭化水素燃料とアルコール燃料とが混合された混合燃料を機関燃料として利用可能な内燃機関の制御装置において、内燃機関の始動時、燃焼性の向上が認められるか否かを判別し、内燃機関の燃焼性の向上が認められる場合、前記燃焼性の向上が認められない場合とは異なるタイミングで、排気ガスセンサを暖機するための熱供給を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内燃機関の制御装置に関する。更に具体的には、機関燃料としてアルコール又はアルコールと炭化水素燃料を混合した混合燃料を利用することができる内燃機関の制御装置として好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関の空燃比制御のため、内燃機関の排気経路には、排気ガスセンサが設置される。排気ガスセンサはセンサ素子を備え、センサ素子が活性温度以上の温度に達し活性状態となることで、空燃比に応じた出力を発する。従って、一般に、内燃機関の始動時早期に空燃比制御可能な状態とするため、センサ素子はヒータにより加熱される。
【0003】
しかし、内燃機関の始動時、内燃機関が冷えた状態になっている場合、排気経路の気体の飽和蒸気圧も低下する。このため、排気経路の気体に含まれる水蒸気が液化した凝縮水が、排気経路に付着する場合がある。このように排気経路に凝縮水が付着した状態で、センサ素子を加熱すると、センサ素子に亀裂(以下「素子割れ」)が生じる恐れがある。一般的には、素子割れを防止するため、内燃機関の始動時は内燃機関が所定温度に達し排気経路の凝縮水が除去されるのを待って、センサ素子の加熱を開始する。
【0004】
ところで、近年、内燃機関の機関燃料として、アルコールと炭化水素燃料とを混合した燃料又はアルコールからなる燃料(以下「混合燃料」)を用いることができるFFV(flexible fuel vehicle)が開発されている。燃料としてアルコールが用いられる場合、ガソリンを燃焼させる場合に比べて、排気ガス中の水分量(蒸気量)が多くなり、アルコール濃度が高い場合ほど水分量が多くなることが考えられる。
【0005】
特許文献1には、内燃機関の始動後のセンサ素子加熱時間を、燃料の成分濃度に応じて設定する技術が開示されている。特許文献1によれば、燃料中のアルコール濃度が高い場合ほど、センサ素子加熱開始までの時間は長くなり、アルコール濃度が低い場合ほど、その時間は短く設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−091944号公報
【特許文献2】特開2010−084683号公報
【特許文献3】特開2009−222017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、混合燃料中のアルコール濃度が比較的低温な特定の領域では共沸現象が起こり、沸点が比較的低い温度となる場合がある。このような場合、内燃機関の始動時の燃料の気化が促進され、始動性が向上するため、凝縮水が早い段階で除去されることが考えられる。つまり、内燃機関の始動後、凝縮水が除去されるまでの時間は、必ずしもアルコール濃度のみに依存するものではない。
【0008】
従って、上記従来技術のように、燃料中のアルコール濃度が高い場合ほどセンサ素子加熱開始までの時間が長く設定する場合、その開始時間よりも早い段階で、凝縮水が除去され、ヒータへの通電開始可能な状態となっている場合がある。内燃機関の始動後、できるだけ早くセンサを活性状態とすることが望まれることから、ヒータへの通電は可能な限り早期に開始することが望まれる。
【0009】
また、一般に内燃機関の始動時には、暖機のため、噴射される燃料を増量する制御が行われる。しかし、内燃機関の燃焼性・始動性が向上しているような環境下では、内燃機関の始動時の燃料増量分を減少させることが望まれる。
【0010】
この発明は上記課題を解決することを目的とし、内燃機関の始動時、排気ガスセンサの暖機をより早期に開始し、又は、内燃機関の始動時の燃料増量分を少なくできるよう改良された内燃機関の制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記の目的を達成するため、炭化水素燃料とアルコール燃料とが混合された混合燃料を機関燃料として利用可能な内燃機関の制御装置であって、
前記混合燃料中のアルコール濃度を検出する濃度検出手段と、
前記内燃機関の始動時の燃焼性の向上が認められるか否かを判別する燃焼性判別手段と、
前記内燃機関の排気経路の設置された排気ガスセンサを暖機するための熱供給を制御する手段であって、前記内燃機関の燃焼性の向上が認められる場合、前記燃焼性の向上が認められない場合とは異なるタイミングで、前記熱供給を制御する熱供給制御手段と、
を備える。
【0012】
この発明において、前記熱供給制御手段は、
前記排気ガスセンサのセンサ素子近傍に設置されたヒータによる熱供給開始のタイミングを制御するものであって、
前記内燃機関の燃焼性の向上が認められない場合、前記混合燃料中のアルコール濃度に応じて、前記熱供給開始のタイミングを設定し、
前記内燃機関の燃焼性の向上が認められる場合、前記燃焼性の向上が認められない場合よりも早いタイミングとなるように、前記熱供給開始のタイミングを設定するものとすることができる。
【0013】
また、この場合、前記熱供給の開始のタイミングは、前記内燃機関のポート温度、又は前記内燃機関の始動後から経過時間をパラメータとして設定されるものとすることができる。
【0014】
また、この発明において、前記熱供給制御手段は、
前記内燃機関の各気筒に噴射される燃料噴射量を制御するものであって、
前記内燃機関の燃焼性の向上が認められる場合、前記内燃機関の燃焼性の向上が認められない場合よりも、始動時の燃料噴射量を減少させるものとすることもできる。
【0015】
この発明において、前記燃焼性判別手段は、前記内燃機関の始動時の機関回転数の変化、又は、前記内燃機関の始動時の吸入空気量の変化に基づいて、前記始動時の燃焼性の向上が認められるか否かを判別するものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
内燃機関の機関燃料として炭化水素燃料とアルコール燃料との混合燃料が用いられる場合、アルコール濃度が高くなるほど内燃機関の始動時の凝縮水の発生量は多くなると考えられる。しかし、特定の濃度では混合燃料の共沸現象により内燃機関の燃焼性が向上している場合がある。このような場合には、凝縮水は早い段階で除去されるものと考えられる。この点、この発明によれば、内燃機関の始動時の燃焼性の向上が認められる場合、燃焼性の向上が認められない場合とは異なるタイミングで、排気ガスセンサへの熱供給を制御する。これにより、内燃機関の始動時の燃焼性にあわせて適正な制御を行うことができる。
【0017】
また、この発明において、排気ガスセンサのヒータによる熱供給のタイミングを制御するものにおいて、内燃機関の燃焼性の向上が認められる場合、熱供給の開始のタイミングが、燃焼性の向上が認められない場合よりも早まるように設定される。これにより、始動時の排気ガスセンサの暖機開始までの時間が過剰に長く設定されることを抑制し、より効率的に排気ガスセンサの暖機を開始することができる。
【0018】
また、この発明において、燃料噴射量の制御により熱供給を制御するものにおいては、始動時の燃焼性の向上が認められる場合、始動時の燃料噴射量の増量補正分が減少するように抑制される。これにより、燃焼性が高い場合に、燃料噴射量の過剰な増量補正を抑制することができ、内燃機関の始動時の排気エミッションを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態におけるシステムの全体構成について説明するための模式図である。
【図2】混合燃料中のエタノール濃度ごとの、温度と留出量との関係について説明するための図である。
【図3】エタノール濃度と蒸気圧との関係について説明するための図である。
【図4】内燃機関の始動時の回転数の変化について説明するための図である。
【図5】内燃機関の始動時の点火時期の変化について説明するための図である。
【図6】内燃機関の始動時の空気量の変化について説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態において制御装置が実行する制御のルーチンについて説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
実施の形態.
【0021】
[本実施の形態のシステムの全体構成]
図1は、この発明の実施の形態におけるシステムの全体構成について説明するための図である。図1のシステムは車両に搭載される内燃機関2を有している。内燃機関2は、機関燃料として、炭化水素系の燃料とアルコール燃料とを混合した燃料を使用することができる。具体的に、本実施の形態では混合燃料としてエタノールとガソリンとの混合燃料が用いられる。
【0022】
内燃機関2には、各気筒に対応して燃料噴射弁4が設置されている。燃料噴射弁4には燃料供給路6を介して燃料タンク8が接続されている。燃料タンク8には、燃料性状センサ10が設置されている。燃料性状センサ10は、混合燃料中のエタノールの濃度に応じた出力を発するセンサである。
【0023】
一方、内燃機関2の排気経路12には、排気ガスセンサ14が設置されている。排気ガスセンサ14は、センサ素子と、センサ素子を加熱するためのヒータとを有している。排気ガスセンサ14は、排気経路12内の排気ガスの空燃比に応じた出力を発するセンサである。
【0024】
図1のシステムは制御装置16を備えている。制御装置16は、内燃機関2のシステム全体を総合制御する。制御装置16の出力側には各種アクチュエータが接続され、入力側には、燃料性状センサ10、排気ガスセンサ14、クランク角センサ(図示せず)等の各種センサが接続される。制御装置16は、センサ信号を受けて混合燃料の燃料濃度や機関回転数、その他内燃機関2の運転に必要な種々の情報を検出すると共に、所定の制御プログラムに従って各アクチュエータを操作する。なお、制御装置16に接続されるアクチュエータやセンサは多数存在するが、本明細書においてはその説明は省略する。
【0025】
[本実施の形態の制御の概要]
内燃機関2の始動時には、排気ガスセンサ14のセンサ素子をヒータにより加熱することで所定の活性温度に暖機する。しかし内燃機関2の始動時、排気経路12内には水蒸気が液化した凝縮水が付着しやすく、このような状態でヒータを通電し、センサ素子の加熱を開始すると、センサ素子に亀裂が生じる恐れがある。そこで、内燃機関2の始動時には、排気経路12内の凝縮水が除去されるのを待って、ヒータへの通電を開始する。
【0026】
本実施の形態の制御装置16は、内燃機関2の温度と相関を有するパラメータに基づいて、内燃機関2の始動時におけるヒータへの通電開始を制御する。具体的には、ポート温度をパラメータとして、ヒータへの通電を制御する。
【0027】
ここで本実施の形態において内燃機関2は、燃料としてガソリンとエタノールとの混合燃料を用いる。エタノール燃料はガソリンに比べてH成分が多い。このためエタノールを含む混合燃料を用いる場合、ガソリンのみを用いる場合と比べて排気中の水蒸気量が増加する。従って、混合燃料が用いられる内燃機関2の始動時には、ガソリン燃料を想定した場合よりも多くの凝縮水が発生すると考えられる。また、混合燃料中のエタノール濃度は0(%)から100(%)の間で変化する。混合燃料のエタノール濃度が高い場合ほどH成分が増加することから、発生する水蒸気量は一定ではなく、エタノール濃度が高い場合ほど高くなるものと考えられる。
【0028】
従って、本実施の形態においては、内燃機関2の始動時のヒータへの通電開始を許可するポート温度(以下「通電許可ポート温度」とする)の基準値を、混合燃料のエタノール濃度に応じて設定する。具体的に、通電許可ポート温度の基準値は、始動時の内燃機関2の水温と、エタノール濃度と、通電許可ポート温度のマップとして与えられ、このマップに従って設定される。
【0029】
ところで、混合燃料のある特定のエタノール濃度では、ガソリンとエタノールとの共沸現象が起こる場合があると考えられる。図2は、この発明の実施の形態においてシステムが使用する各エタノール濃度の混合燃料の蒸留正常について説明するためのグラフである。図2において横軸は温度(℃)、縦軸は留出量(%)を表している。
【0030】
例えば、エタノール濃度が50(%)以下の混合燃料の場合、10%〜50%留出温度が、エタノール濃度が100(%)やガソリンのみ(エタノール0(%))の場合に比べて低くなっている。具体的に、エタノール濃度50(%)以下の混合燃料の場合、50%留出温度は70(℃)程度である。
【0031】
図3は、混合燃料の蒸気圧特性を説明するための図である。図3において、横軸はエタノール濃度(%)、縦軸は蒸気圧(kPa)を表している。図3から、共沸現象により、混合燃料中のエタノールの濃度が約50(%)以下の状態では蒸気圧が高く、エタノール濃度が高くなると、蒸気圧が低くなっていることがわかる。
【0032】
このように共沸現象が発生している領域では、内燃機関2の始動時の燃焼性の向上が見られるものと考えられる。このような場合には内燃機関2の始動時に滞留する凝縮水の量は、必ずしもガソリン燃料のみの場合より多くなるわけではない。特に、エタノール濃度が20(%)以下の低濃度の領域では、内燃機関2の始動時の燃焼が向上することで、空気量と筒内から排気ポートへの熱伝達量とが増加して、始動時の排気ポートまでの各部の昇温性が向上し、ガソリン燃料のみの場合に比べても、始動時の凝縮水の影響が少なくなるものと考えられる。
【0033】
従って、本実施の形態では、共沸現象による内燃機関2の始動性の向上が認められる場合には、通電許可ポート温度を、濃度に応じた基準値より低温となるよう設定し、ヒータへの通電開始までの時間が短くなるように制御する。
【0034】
具体的に共沸現象により内燃機関2の始動性が向上しているか否かは、内燃機関2の始動時の機関回転数の変化を検出することで判定される。図4〜図6は、異なるエタノール濃度の混合燃料に関して、内燃機関2の始動後の運転状態の変化の違いを説明するための図である。図4は機関回転数の変化、図5は点火時期の変化、図6は空気量の変化を表している。図4〜図6は、同一の理論空燃比に基づく燃料を噴射した例を表している。
【0035】
図4〜図6から、同じ点火時期で同じ理論空燃比に基づく燃料を噴射した場合であっても、初爆後の機関回転数及び空気量は、ガソリンのみ(エタノール濃度0(%))の場合よりも、エタノール濃度が28(%)の場合の方が上昇している。このように、エタノール濃度が低濃度の混合燃料の共沸現象によって内燃機関2の始動性が向上しているか否かは、機関回転数の変化量(所定時間当たりの上昇回転数)又は空気量変化量(所定時間当たりの空気量の変化量)を検出することで判定することができる。
【0036】
本実施の形態では、内燃機関2の始動時の機関回転数の変化をパラメータとして、ガソリンのみの場合に対して、低温始動性の向上が見られるか否かを判定する。その結果、低温始動性の向上が見られる場合、通電許可ポート温度は、その始動性に応じて低温となるように設定される。つまり、ガソリンに対し早期に発生した熱量に応じて通電許可ポート温度が基準値よりも低温となるように修正される。一方、機関回転数から、低温始動性の向上が認められない場合には、通電許可ポート温度は、エタノール濃度に応じた基準値に設定される。
【0037】
[本実施の形態における具体的な制御]
図7は、この発明の実施の形態において制御装置16が実行する制御のルーチンについて説明するための図である。図7のルーチンにおいては、まず、イグニッションスイッチがONとなったか否かが判別される(S102)。イグニッションスイッチがONとなったことが認められない場合、今回の処理は終了する。
【0038】
一方、ステップS102において、イグニッションスイッチがONとなったことが認められると、次に、スタータがONとなったか否かが判別される(S104)。スタータがONであることが認められない場合、今回の処理は終了する。
【0039】
ステップS104においてスタータがONとなったことが認められると、次に、始動水温と混合燃料のエタノール濃度の情報が取得される(S106)。始動水温は、内燃機関2に設置された冷却水の水温センサ(図示せず)の始動時の出力に応じて検出される。また、エタノール濃度の情報は、燃料性状センサ10又は排気ガスセンサ14の出力に応じて検出される。
【0040】
次に、機関回転数が検出される(S108)。機関回転数は、内燃機関2のクランクシャフト近傍に設置されたクランク角センサ(図示せず)の出力に応じて求められる。
【0041】
次に、始動時の内燃機関2の燃焼性の向上が見られるか否かが判定される(S110)。この判定は、ステップS108において検出された内燃機関2の始動時の機関回転数挙動に基づいて判定される。
【0042】
次に、ステップS110の判定結果に基づき、燃焼性の向上が見られる場合、次に、始動温度、エタノール濃度、及び燃焼向上分に応じた通電許可ポート温度が設定される(S112)。具体的に、制御装置16に記憶された始動時の内燃機関2の水温と、エタノール濃度と、通電許可ポート温度のマップに基づいて、始動時の内燃機関の水温とエタノール濃度とに応じた通電許可ポート温度の基準値が算出され、この基準値から、燃焼向上分を考慮した値が減算されることで通電許可ポート温度が設定される。
【0043】
一方、ステップS110において、燃焼性の向上が認められない場合、次に、始動温度及びエタノール温度に応じた通電許可ポート温度が設定される(S114)。具体的には、制御装置16に記憶された始動時の内燃機関2の水温と、エタノール濃度と、通電許可ポート温度のマップに基づき、始動時の内燃機関の水温とエタノール濃度と応じて、通電許可ポート温度が基準値に設定される。
【0044】
ステップS112又はS114において、通電許可ポート温度が設定された後、ポート温度が推定される(S116)。ポート温度の推定値は、例えば積算吸入空気量に基づいて算出される。
【0045】
次に、ステップS116において算出されたポート温度の推定値が、ステップS112又はS114で設定された通電許可ポート温度より高くなっているか否かが判別される(S118)。
【0046】
ステップS118において、ポート温度>通電許可ポート温度の成立が認められない場合、ポート温度>通電許可ポート温度の成立が認められるまで、ポート温度の推定値が算出され(S116)、ポート温度>通電許可ポート温度の成立、不成立が判別される(S118)処理が繰り返される。
【0047】
一方、ステップS118においてポート温度>通電許可ポート温度の成立が認められた場合、通電が許可され、ヒータへの通電が開始され(S120)、これにより排気ガスセンサ14のセンサ素子の加熱が開示される。その後、今回の処理は終了する。
【0048】
以上説明したように、この実施の形態によれば、エタノール濃度に応じて内燃機関2の始動時に発生する凝縮水の量を考慮して、ヒータへの通電開始時期を設定する。これによりエタノール濃度が高く凝縮水の量が多い場合にも被水による排気ガスセンサ14の素子割れを抑制することができる。
【0049】
一方、混合燃料のエタノール濃度によっては、内燃機関2の始動性、燃焼性が向上する場合がある。このように始動性、燃焼性が向上している場合、早期に凝縮水が除去されることから、燃料濃度が高い場合であっても通電許可までの時間が短縮される。これにより内燃機関2の始動時に、凝縮水が除去されているにもかかわらず、ヒータが通電されない過剰な待機状態の発生が抑制される。従って、より早期に排気ガスセンサを活性状態とし、空燃比フィードバック制御を開始することができる。
【0050】
[本実施の形態のその他の例]
なお、本実施の形態では、燃料濃度と内燃機関2の始動性に応じて通電許可ポート温度を調節する場合について説明した。しかし、この発明においてはヒータの通電許可の判定は、例えば、始動からの経過時間や、内燃機関2の水温等、凝縮水の発生と相関を有するパラメータに基づいて、通電許可の判定基準値を設定し、通電を制御するものであってもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、内燃機関2の始動時の機関回転数の挙動に基づいて内燃機関の始動性・燃焼性向上の有無を判別する場合について説明した。しかし、この発明はこれに限るものではなく、例えば、内燃機関2の吸入空気量の変化を検出し、これに基づいて始動性の向上の有無を判別するものであってもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、燃焼性の向上が見られる場合に、通電許可ポート温度を低くする場合について説明した。しかし、この発明はこれに限るものではなく、燃焼性の向上が見られる場合に、理論空燃比分の燃料増量を減少させる制御を行うこともできる。具体的に、例えば内燃機関2の始動時の燃料噴射量は、次式(1)で与えられる。
始動後噴射量=始動増量分×減量比率×経過時間 ・・・・(1)
【0053】
これに対し、次式(2)のように、燃焼性向上分の減量比率を乗じることで、低温始動時の燃料噴射量の増量を、より早い段階で減少させることができる。
始動後噴射量=始動増量分×減量比率×燃焼性に基づく減量比率×経過時間・・(2)
これにより、内燃機関2の始動時の燃焼性が高く暖機が早い場合に対応し、始動時の燃料噴射量の過剰な増量補正を抑制することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、燃料性状センサ10の出力に基づいて、エタノール濃度を検出する場合について説明した。しかし、この発明はこれに限るものではない。エタノール濃度は、始動時の機関回転数と相関を有するため、機関回転数に基づいて算出することができ、本実施の形態においてこれを用いることができる。
【0055】
具体的には、例えば、機関回転数に応じて検出されるエタノール濃度と、燃焼性状センサ10の出力に応じたエタノール濃度とが異なる場合がある。このような場合には、両エタノール濃度から決定される通電許可ポート温度(あるいは通電許可時間等)を比較して、より通電許可が遅くなる方を選択することとする。この制御により、より確実に排気ガスセンサ14の素子割れを回避することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、ガソリンとエタノールとの混合燃料を用いる場合について説明した。しかし、この発明はこれに限るものではなく、他の炭化水素燃料とアルコール燃料との混合燃料を用いる場合であって、混合燃料が共沸現象を起こす場合にも適用することができる。
【0057】
また、本実施の形態では、燃料性状センサ10が燃料タンク8に設置されている場合について説明した。しかし、燃料性状センサ10の設置位置はこれに限るものではなく、例えば燃料供給路6に設置したものであってもよい。その他についても、本実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、この実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【符号の説明】
【0058】
2 内燃機関
10 燃料性状センサ
14 排気ガスセンサ
16 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素燃料とアルコール燃料とが混合された混合燃料を機関燃料として利用可能な内燃機関の制御装置であって、
前記混合燃料中のアルコール濃度を検出する濃度検出手段と、
前記内燃機関の始動時の燃焼性の向上が認められるか否かを判別する燃焼性判別手段と、
前記内燃機関の排気経路の設置された排気ガスセンサを暖機するための熱供給を制御する手段であって、前記内燃機関の燃焼性の向上が認められる場合、前記燃焼性の向上が認められない場合とは異なるタイミングで、前記熱供給を制御する熱供給制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記熱供給制御手段は、
前記排気ガスセンサのセンサ素子近傍に設置されたヒータによる熱供給開始のタイミングを制御するものであって、
前記内燃機関の燃焼性の向上が認められない場合、前記混合燃料中のアルコール濃度に応じて、前記熱供給開始のタイミングを設定し、
前記内燃機関の燃焼性の向上が認められる場合、前記燃焼性の向上が認められない場合よりも早いタイミングとなるように、前記熱供給開始のタイミングを設定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記熱供給の開始のタイミングは、前記内燃機関のポート温度をパラメータとして設定されることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記熱供給の開始のタイミングは、前記内燃機関の始動後からの経過時間をパラメータとして設定されることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記熱供給制御手段は、
前記内燃機関の各気筒に噴射される燃料噴射量を制御するものであって、
前記内燃機関の燃焼性の向上が認められる場合、前記内燃機関の燃焼性の向上が認められない場合よりも、始動時の燃料噴射量を減少させるものであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記燃焼性判別手段は、前記内燃機関の始動時の機関回転数の変化に基づいて、前記始動時の燃焼性の向上が認められるか否かを判別することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記燃焼性判別手段は、前記内燃機関の始動時の吸入空気量の変化に基づいて、前記始動時の燃焼性の向上が認められるか否かを判別することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225323(P2012−225323A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95999(P2011−95999)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】