説明

内燃機関の吸気装置

【課題】 スロットルシャフト2とスロットルバルブ4との間の隙間が拡がると、スクリュー6の締結による軸力が抜けてしまい、バルブずれ発生の懸念がある。
【解決手段】 スロットルシャフト2の素材として、インサートプレート5の素材の線膨張係数よりも大きい鉄系金属を使用し、また、スロットルバルブ4の素材として、スロットルシャフト2の素材の線膨張係数よりも大きいアルミニウム系金属を使用している。そして、スロットルボディ1に回転可能に支持されたスロットルシャフト2のスリット孔3内にスロットルバルブ4を挿入し、スロットルシャフト2とスロットルバルブ4との間にインサートプレート5を挟持し、スロットルシャフト2に対してスロットルバルブ4およびインサートプレート5をスクリュー6の締結により固定することによって、スロットルバルブ4およびインサートプレート5をスロットルシャフト2に固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気通路を開閉するバタフライバルブをシャフトに形成されたスリット孔内に挿入し、スクリューの軸力によりバタフライバルブをシャフトに締め付け固定した内燃機関の吸気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、内燃機関(エンジン)に吸い込まれる吸気が流れる吸気通路を形成する吸気管と、この吸気管の内部に開閉自在に収容されて、吸気通路を開閉するバルブとを備えた内燃機関の吸気装置が公知である。この吸気装置の一例として、エンジンに吸い込まれる吸気(例えばエアクリーナを通過した吸入空気)が流れるスロットルボアを形成するスロットルボディと、スロットルボアを流れる吸気の流量を開閉動作により調整するスロットルバルブとを備えた吸気絞り装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
ここで、特許文献1及び2に記載の吸気絞り装置は、スロットルボディのスロットルボアを横切る状態で、スロットルボディに回転可能に支持されるスロットルシャフトを備えている。このスロットルシャフトには、その回転軸方向に対して垂直な直径方向に貫通する長細状のスリット孔(バルブ挿入孔)が形成されている。
【0003】
また、特許文献3に記載の吸気絞り装置は、スロットルボディのスロットルバルブを挟んだ両側に、スロットルバルブの開度を検知するスロットルポジションセンサおよびスロットルバルブを回転するスロットルレバーがそれぞれ設けられている。
スロットルシャフトは、センサ側シャフトとレバー側シャフトとに分割されている。また、スロットルバルブには、空洞および嵌合孔が設けられている。
そして、吸気絞り装置は、センサ側シャフトの端部とレバー側シャフトの端部とを空洞および嵌合孔に嵌め込み、スロットルバルブ、センサ側シャフト、レバー側シャフトの各々に係合部を設けて、センサ側シャフトとレバー側シャフトとの間にスロットルバルブを固定する構造を備えている。
【0004】
[従来の技術の不具合]
ここで、スロットルボディ101に回転可能に支持されるスロットルシャフト102のスリット孔103にスロットルバルブ104を挿入し、その後にスクリュー105でスロットルバルブ104を締め付けてスロットルシャフト102に取り付けるようにした吸気絞り装置の代表的なバルブ支持構造を図3および図4に示す。
スロットルシャフト102には、その回転軸方向に延びる長細状のスリット孔103、スクリュー105の軸部がその軸線方向(締結方向)に貫通する楕円形状の挿通孔111、およびスクリュー105の軸部に形成された雄ネジを螺子締結するための螺子孔(雌ネジ孔)112が形成されている。
スロットルバルブ104には、スクリュー105の軸力によりスロットルシャフト102に締結固定される締結部が設けられている。このスロットルバルブ104の締結部には、スクリュー105の軸部がその軸線方向(締結方向)に貫通する挿通孔113が形成されている。なお、スロットルバルブ104の挿通孔113は、スロットルシャフト102の軸線方向に平行な方向に長軸を有する楕円形状に形成されている。
【0005】
ところで、特許文献1及び2に記載の吸気絞り装置と図3および図4の吸気絞り装置は、スロットルシャフト102に形成されたスリット孔103内にスロットルバルブ104を挿入した状態で、スロットルバルブ104をスロットルシャフト102に単純なスクリュー105の締結による軸力で固定する構造を採用している。
そして、スロットルバルブ104の組付作業を円滑に行うという目的で、スロットルバルブ104の端面とスロットルシャフト102のスリット孔壁面との間に微小な隙間(クリアランス)が形成されている。
また、特許文献1及び2に記載の吸気絞り装置と図3および図4の吸気絞り装置は、如何なる環境下(低温または高温を伴う実使用環境下)であっても使用される。
【0006】
ここで、スロットルバルブ104とスロットルシャフト102との材質(材料)が異なる場合、スロットルバルブ104とスロットルシャフト102とで線膨張係数が異なる。例えばスロットルバルブ104の線膨張係数が、スロットルシャフト102の線膨張係数よりも大きい場合、温度下降時および低温環境下では、スロットルバルブ104の変形量(温度変化に対する変形量)が、スロットルシャフト102の変形量(温度変化に対する変形量)よりも大きくなる。
これにより、スロットルバルブ104の端面とスロットルシャフト102のスリット孔壁面との間の隙間に寸法変化が発生する可能性がある。
この場合、スロットルバルブ104とスロットルシャフト102との間の隙間が、組付時または出荷時よりも拡がると、スクリュー105の締結による軸力が抜けてしまい、スロットルシャフト102に対して、スロットルバルブ104がスリット孔103の長軸方向にズレる。つまりバルブずれ発生の懸念がある。
【0007】
また、特許文献3に記載の吸気絞り装置においては、センサ側シャフトの端部およびレバー側シャフトの端部とスロットルバルブに形成された空洞および嵌合孔との嵌合方法が圧入嵌合ではないので、センサ側シャフトおよびレバー側シャフトに対してスロットルバルブの板厚方向の規制が成されておらず、センサ側シャフトおよびレバー側シャフトに対して、スロットルバルブがその板厚方向にズレる。つまりバルブずれ発生の懸念がある。 また、特許文献3に記載の吸気絞り装置においては、非常に複雑な構造のスロットルバルブおよびスロットルシャフトを有し、互いに別体で構成されたセンサ側シャフトおよびレバー側シャフトを有しているので、その全体の構造が複雑となり、部品点数や組付工数も多く、部品製作、管理のコストが増大するという問題が生じる。
また、吸気絞り装置の実使用環境の変化(温度変化)に応じて微細な変形等が発生し、スロットルシャフトに対するスロットルバルブの取り付け位置の位置精度に悪影響が生じる懸念も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−264792号公報
【特許文献2】特許第4593538号公報
【特許文献3】特開2001−234759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、実使用環境の変化(温度変化)時に、シャフトとバルブとの間の隙間の発生または隙間の拡大を抑制することのできる内燃機関の吸気装置を提供することにある。また、締結体の軸力の低下を防止することのできる内燃機関の吸気装置を提供することにある。また、如何なる環境下(低温または高温を伴う実使用環境下)で使用される場合であっても、バルブずれの発生を防止することのできる内燃機関の吸気装置を提供することにある。また、実使用環境の変化(温度変化)に応じて微細な変形等が発生した場合であっても、シャフトに対するバルブの取り付け位置の位置精度に悪影響が発生するのを抑制することのできる内燃機関の吸気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明(内燃機関の吸気装置)は、内燃機関に供給される吸気が流れる吸気通路を形成するハウジングと、このハウジングに回転可能に支持されて、内燃機関の吸気通路の通路幅に対応した回転軸方向長を有するスリット孔が径方向に貫通して形成されたシャフト(バルブ支持体)と、このシャフトに形成されたスリット孔内に挿入した状態で取り付けられて、内燃機関の吸気通路を開閉するバルブと、シャフトに形成されたスリット孔内においてシャフトとバルブとの間に挟み込まれた状態で取り付けられて、バルブに対して線膨張係数が異なるプレート(インサート部材)と、バルブおよびプレートをシャフトに締結により固定する締結体とを備えている。
なお、プレートの取付位置は、バルブの板厚方向の一端面とスリット孔の壁面(対向面)との間であっても、バルブの板厚方向の他端面とスリット孔の壁面(対向面)との間であってもどちらでも構わない。
また、バルブとしては、吸気通路の中心軸線とバルブの回転中心軸線との交点を中心とする円板状のバタフライバルブ(プレートバルブ)を使用しても良い。このバタフライバルブの場合、吸気通路の軸線方向(吸気流方向)に対して垂直な方向に回転中心軸線を有している。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、ハウジングに回転可能に支持されたシャフトに形成されたスリット孔内にバルブを挿入し、且つバルブに対して線膨張係数が異なるプレートをシャフトとバルブとの間に挟み込み、シャフトに対してバルブおよびプレートを締結体の締結により固定することにより、バルブおよびプレートがシャフトに取り付けられる。
これによって、実使用環境の変化(温度変化)が生じても、シャフトとバルブとの間の隙間の発生または隙間の拡大を抑制できるので、締結体の軸力の低下(抜け)を防止できる。
したがって、内燃機関の吸気装置が如何なる環境下(低温または高温を伴う実使用環境下)で使用される場合であっても、バルブずれの発生を防止できる。
また、実使用環境の変化(温度変化)に応じて微細な変形等が発生した場合であっても、シャフトに対するバルブの取り付け位置の位置精度に悪影響が発生するのを抑制できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、シャフトに形成されたスリット孔の幅の変化(量)をXとし、バルブの板厚およびプレートの板厚の変化(量)をYとしたとき、スリット孔の幅、バルブの板厚およびプレートの板厚が、X=Yとなるように設定されている。
これによって、X=Yとするか、あるいはイコールとするのが不可能であれば、左辺(X)と右辺(Y)とをできるだけ近づけることで、実使用環境の変化(温度変化)時にシャフトとバルブとの間の隙間の発生または隙間の拡大を抑制できる。
したがって、締結体の軸力の低下(抜け)を防止できるので、シャフトに対するバルブの締結力の低下を防止できる。また、内燃機関の吸気装置が如何なる環境下(低温または高温を伴う実使用環境下)で使用される場合であっても、バルブずれの発生を防止できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、バルブおよびプレートに対して線膨張係数が異なるシャフトを備えている。
これによって、実使用環境の変化(温度変化)が生じた時に、シャフトのスリット孔の幅の変化量と、バルブの板厚の変化量とプレートの板厚の変化量を加算(積算)した値とが、イコールまたは近似するので、実使用環境の変化(温度変化)時にシャフトとバルブとの間の隙間の発生または隙間の拡大を抑制できる。
したがって、締結体の軸力の低下(抜け)を防止できるので、シャフトに対するバルブの締結力の低下を防止できる。また、内燃機関の吸気装置が如何なる環境下(低温または高温を伴う実使用環境下)で使用される場合であっても、バルブずれの発生を防止できる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、シャフト(の材質)の線膨張係数をKs、バルブ(の材質)の線膨張係数をKv、プレート(の材質)の線膨張係数をKpとしたとき、Kp<Ks<Kvの関係を満足している。すなわち、シャフト(の材質)の線膨張係数Ks、バルブ(の材質)の線膨張係数Kvおよびプレート(の材質)の線膨張係数Kpの関係は、Kp<Ks<Kvである。あるいはKp、Ks、Kvの関係は、Kp<Ks<Kvを満たすように設計(構成)されている。
これによって、温度変化時には、Ks<Kvの関係により、「シャフトの変形量<バルブの変形量」となり、シャフトとバルブとの間に隙間が生じ(または間隔が拡大す)るものの、Kp<Ksの関係により、「プレートの変形量<シャフトの変形量」となり、シャフトとバルブとの間の隙間(間隔)が小さくなる。
したがって、実使用環境の変化(温度変化)時にシャフトとバルブとの間の隙間の発生または隙間の拡大を抑制できるので、締結体の軸力の低下(抜け)を防止できる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、シャフト(の材質)の線膨張係数をKs、バルブ(の材質)の線膨張係数をKv、プレート(の材質)の線膨張係数をKpとしたとき、Kv<Ks<Kpの関係を満足している。すなわち、シャフト(の材質)の線膨張係数Ks、バルブ(の材質)の線膨張係数Kvおよびプレート(の材質)の線膨張係数Kpの関係は、Kv<Ks<Kpである。あるいはKv、Ks、Kpの関係は、Kv<Ks<Kpを満たすように設計(構成)されている。
これによって、温度変化時には、Ks<Kpの関係により、「シャフトの変形量<プレートの変形量」となり、シャフトとプレートとの間に隙間が生じ(または間隔が拡大す)るものの、Kv<Ksの関係により、「バルブの変形量<シャフトの変形量」となり、シャフトとプレートとの間の隙間(間隔)が小さくなる。
したがって、実使用環境の変化(温度変化)時にシャフトとバルブとの間の隙間の発生または隙間の拡大を抑制できるので、締結体の軸力の低下(抜け)を防止できる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、シャフトおよびバルブに対して、プレートが別体部品で構成されている。
請求項7に記載の発明によれば、バルブに対して、プレートが溶接により固定されている。
請求項8に記載の発明によれば、シャフトに形成されたスリット孔内に、プレートがバルブと(互いに板厚方向に)重ねて挿入されている。
なお、少なくともバルブは、スリット孔を通り抜ける(貫通する)ようにスリット孔内に差し込まれているので、バルブの両側のディスク部分がシャフトの外面からそれぞれ径方向の外側に突出している。つまりバルブの両側のディスク部分は、シャフトの径方向両側に張り出している。
【0017】
請求項9に記載の発明によれば、バルブは、締結体によりシャフトに締結される締結部を設けている。なお、バルブの締結部に、締結体がその軸線方向(締結方向)に貫通する挿通孔を設けても良い。この挿通孔は、シャフトの軸線方向に平行な方向に長軸を有し、シャフトの径方向に平行な方向に短軸を有する楕円形状または長円形状に形成されている。
請求項10に記載の発明によれば、プレートは、締結体によりシャフトに締結される締結部を設けている。なお、プレートの締結部に、締結体がその軸線方向(締結方向)に貫通する挿通孔を設けても良い。この挿通孔は、シャフトの軸線方向に平行な方向に長軸を有し、シャフトの径方向に平行な方向に短軸を有する楕円形状または長円形状に形成されている。
【0018】
請求項11に記載の発明によれば、シャフトは、締結体がその軸線方向(締結方向)に貫通する挿通孔、および締結体を螺子締結するための螺子孔を設けている。そして、挿通孔と螺子孔とは、同一軸線上に設けられている。
請求項12に記載の発明によれば、挿通孔は、スリット孔の壁面で開口した第1開口部を備えている。また、螺子孔は、スリット孔の壁面で開口した第2開口部を備えている。そして、第1開口部は、スリット孔を挟んで(所定距離を隔てて)第2開口部と対向して設けられている。
請求項13に記載の発明によれば、プレートは、シャフトとバルブとが接触する範囲(組み付けた時に重なる部分)にのみ設けられている。これによって、プレートを形成(製作)するのに必要な材料が少なくて済むため、構造が簡単で低コストな吸気制御弁(例えばスロットルボディ、スロットルシャフト、スロットルバルブ、プレート等により構成される吸気絞り弁)を備えた吸気装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は内燃機関の吸気絞り装置を示した断面図で、(b)はスロットルシャフトへのスロットルバルブの取付構造を示した拡大断面図である(実施例1)。
【図2】(a)、(b)は吸気絞り弁の組付順序を示した工程図である(実施例1)。
【図3】(a)、(b)は内燃機関の吸気絞り装置を示した平面図、断面図である(従来の技術)。
【図4】図3(a)のA−A断面図である(従来の技術)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、実使用環境の変化(温度変化)時に、シャフトとバルブとの間の隙間の発生または隙間の拡大を抑制するという目的、また、締結体の軸力の低下を防止するという目的、また、如何なる環境下(低温または高温を伴う実使用環境下)で使用される場合であっても、バルブずれの発生を防止するという目的、また、実使用環境の変化(温度変化)に応じて微細な変形等が発生した場合であっても、シャフトに対するバルブの取り付け位置の位置精度に悪影響が発生するのを抑制するという目的を、ハウジングに回転可能に支持されたシャフトに形成されたスリット孔内にバルブを挿入し、且つバルブに対して線膨張係数が異なるインサートプレートをシャフトとバルブとの間に挟み込み、シャフトに対してバルブおよびインサートプレートを締結体の締結により固定することで実現した。
また、インサートプレートを形成(製作)するのに必要な材料が少なくて済むため、構造が簡単で低コストな吸気制御弁(例えばスロットルボディ、スロットルシャフト、スロットルバルブ、インサートプレート等により構成される吸気絞り弁)を備えた吸気装置を実現するという目的を、シャフトとバルブとが接触する範囲(組み付けた時に重なる部分)にのみインサートプレートを設けることで実現した。
【実施例1】
【0021】
[実施例1の構成]
図1および図2は本発明の実施例1を示したもので、図1(a)は内燃機関の吸気絞り装置を示した図で、図1(b)はスロットルシャフトへのスロットルバルブの取付構造を示した図である。
【0022】
本実施例の内燃機関の吸気絞り装置は、運転者のアクセル操作量に応じてモータを駆動して、スロットル開度を変更し、内燃機関(エンジン)の各気筒の燃焼室内に供給する吸入空気の流量(吸入空気量、吸気量)を可変制御することで、エンジン回転速度またはエンジン出力軸トルクをコントロールする内燃機関の吸気装置である。なお、アクセル操作量とは、運転者のアクセルペダルの踏み込み量に相当する。
吸気絞り装置は、エンジンの吸気通路を開閉する吸気絞り弁と、エンジンの運転状況(例えばアクセルペダルの踏み込み量、アクセル操作量、アクセル開度)に対応して吸気絞り弁のバルブ開度に相当するスロットル開度を可変制御するエンジン制御ユニット(電子制御装置:ECU)とを備えている。
【0023】
ここで、エンジンとして、複数の気筒を有する多気筒ガソリンエンジンが採用されている。但し、多気筒ガソリンエンジンに限定されず、多気筒ディーゼルエンジンを適用しても構わない。
エンジンは、エアクリーナ(内燃機関のエアクリーナ)で濾過された清浄な吸気とインジェクタより噴射された燃料との混合気を燃焼室内で燃焼させて得られる熱エネルギーによりエンジン出力を発生するものである。
エンジンには、吸気管および排気管が接続されている。
【0024】
吸気絞り弁は、エアクリーナとインテークマニホールド(またはサージタンク)との間に結合されたスロットルボディ1と、このスロットルボディ1に回転可能に支持されたスロットルシャフト(バルブシャフト)2と、このスロットルシャフト2のスリット孔3内に挿入した状態で取り付けられるバタフライバルブ(スロットルバルブ)4と、スロットルシャフト2のスリット孔3内においてスロットルシャフト2とスロットルバルブ4との間に挟み込まれた状態で取り付けられるインサートプレート(インサート、スペーサ)5と、スロットルバルブ4およびインサートプレート5をスロットルシャフト2に締結により固定するスクリュー6と、スロットルシャフト2を回転駆動してスロットルバルブ4を開閉動作させるアクチュエータと、スロットルバルブ4の回転角度を検出する回転角度検出装置とを備えている。
【0025】
ここで、一対のスクリュー6は、十字溝または六角溝が形成された頭部7と、この頭部7より軸線方向の一方側に延びる軸方向部(軸部)8とを備えている。軸方向部8には、スロットルシャフト2に形成される雌ネジと螺合して捩じ込まれる雄ネジ9が設けられている。
回転角度検出装置は、スロットルシャフト2に連動して回転するマグネットロータと、このマグネットロータの回転角度を測定してスロットルバルブ4の回転角度に相当するスロットル開度を検出するスロットル開度センサとを備えている。
また、吸気絞り装置は、スロットルボディ1およびスロットルバルブ4の他に、スロットルバルブ4を閉弁作動方向(バルブ全閉方向に戻す方向)に付勢するリターンスプリングを備えている。なお、本実施例では、リターンスプリングとしてコイルスプリングが使用されている。
【0026】
ここで、スロットルシャフト2を回転駆動するアクチュエータは、電力の供給を受けると動力(トルク)を発生するモータ、およびこのモータの回転を2段減速してスロットルシャフト2に伝達する減速機構を備えている。
減速機構は、モータの出力軸に固定されたピニオンギヤ(モータギヤ)、このモータギヤと噛み合って回転する中間ギヤ、およびこの中間ギヤと噛み合って回転する出力ギヤ(バルブギヤ)を有している。
モータは、ECUによって電子制御されるモータ駆動回路を介して、自動車に搭載されたバッテリに電気的に接続されている。
【0027】
ここで、アクチュエータ、特にモータは、ECUによって通電制御されるように構成されている。
ECUには、制御処理や演算処理を行うCPU、制御プログラムまたは制御ロジックや各種データを保存する記憶装置(ROMやRAM等のメモリ)、タイマー等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。
ECUは、エアフローメータ、クランク角度センサ、アクセル開度センサ、スロットル開度センサ、冷却水温センサ、吸気温センサおよび吸気圧センサ等の各種センサからのセンサ出力信号が、A/D変換回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
ここで、ECUは、アクセル開度センサより出力されるアクセル開度信号とスロットル開度センサより出力されるスロットル開度信号との偏差がなくなるようにモータのコイルへの供給電力をフィードバック制御している。
【0028】
スロットルボディ1には、エンジンの吸気管の途中に組み込まれる円筒状のインテークダクト(円筒部)が一体的に形成されている。このインテークダクトの内部には、エンジンの各気筒毎の燃焼室に連通すると共に、エアクリーナを通過した吸気が流れる断面円形状のスロットルボア(吸気通路)10が形成されている。
スロットルボディ1は、スロットルボア10の幅方向(図示左右方向)の両側に、スロットルシャフト2の回転軸方向に延びるシャフト挿通孔(軸受孔)11、12を備えている(図3参照)。
【0029】
スロットルシャフト2は、例えばステンレス鋼等の鉄系金属によって円柱形状(丸棒形状)に一体的に形成されている。このスロットルシャフト2は、その回転軸方向に真っ直ぐに延びている。また、スロットルシャフト2は、スロットルボア10をその軸線方向(吸気流方向)に対して垂直な方向に横断するように配設されている。
スロットルシャフト2の回転軸線は、スロットルバルブ4の回転中心を構成している。 スロットルシャフト2は、図示しない軸受け部材(ベアリング)を介して、スロットルボディ1のシャフト挿通孔11、12の孔壁面に回転方向に摺動可能(回転自在)に支持されている。
【0030】
スロットルシャフト2は、スクリュー6の締結軸力を利用してスロットルバルブ4とインサートプレート5を支持固定するバルブ支持部材である。
スロットルシャフト2は、2つ(一対)のシャフト挿通孔11、12に挿入されて、シャフト挿通孔11、12の孔壁面と摺動する2つの第1、第2摺動部を有している。これらの第1、第2摺動部間には、スロットルバルブ4を一体的に結合するバルブ支持部が設けられている。また、スロットルシャフト2は、第1、第2摺動部よりも回転軸方向の両側に、スロットルボディ1の外面より外方に突出する2つの第1、第2突出部を有している。
【0031】
2つの第1、第2突出部のうちの一方の突出部には、マグネットロータおよび出力ギヤが一体回転可能に連結されている。
スロットルシャフト2の第1突出部は、スロットルボディ1のインテークダクトに形成されたシャフト挿通孔11内に挿入されている。
スロットルシャフト2の第2突出部は、スロットルボディ1のインテークダクトに形成されたシャフト挿通孔12内に挿入されている。
なお、スロットルボディ1のインテークダクトの外面とマグネットロータおよび出力ギヤとの間には、スロットルバルブ4を閉じる側に付勢するリターンスプリングが設置されている。このリターンスプリングは、スロットルシャフト2の周囲を螺旋状に巻装するコイルを有している。
【0032】
スロットルシャフト2には、径方向に貫通するスリット状のスリット孔3が形成されている。このスリット孔3は、例えばプレス成形機による孔開け加工、ブローチによる切削加工、レーザー加工、放電加工、研削加工等の加工方法により形成されている。
スロットルシャフト2の外周面の一部には、スクリュー6の頭部7に形成された円錐テーパ面が着座(当接)可能な円錐テーパ状の受圧座面21が2箇所形成されている。また、スロットルシャフト2には、スリット孔3の長軸方向に直交する一対のスクリュー取付孔が形成されている。
なお、一対の受圧座面21および一対のスクリュー取付孔は、スロットルシャフト2の軸線方向(回転軸方向)に所定の軸方向間隔を隔てて配置されている。
【0033】
一対のスクリュー取付孔は、スクリュー6の軸方向部8がその軸線方向(締結方向)に貫通(挿通)するスクリュー挿通孔22、およびスクリュー6の軸方向部8を螺子締結するためのスクリュー螺子孔23を備えている。
スクリュー挿通孔22は、その外側端が受圧座面21の底部で開口しており、スクリュー螺子孔23と同一軸線上に設置されている。このスクリュー挿通孔22には、スリット孔3の孔壁面で開口した第1開口部24が設けられている。つまりスクリュー挿通孔22は、第1開口部24でスリット孔3と連通している。
【0034】
スクリュー螺子孔23には、スクリュー6の軸方向部8の外周に形成された雄ネジ9と螺合する雌ネジが設けられている。このスクリュー螺子孔23には、スリット孔3の孔壁面で開口した第2開口部25が設けられている。この第2開口部25は、スリット孔3を挟んで(所定距離を隔てて)第1開口部24と対向して設けられている。つまりスクリュー螺子孔23は、第2開口部25でスリット孔3と連通している。
そして、スクリュー挿通孔22、スリット孔3およびスクリュー螺子孔23は、一直線上に形成され、しかも互いに連通している。
なお、スロットルシャフト2の詳細は、後述する。
【0035】
スロットルバルブ4は、例えばアルミニウムまたはアルミニウムを主体とするアルミニウム合金等のアルミニウム系金属によって一体的に形成されている。このスロットルバルブ4は、金属製の板状素材をプレス成形機により打ち抜き加工することによって、基本的には、真円形状に形成されている。
スロットルバルブ4は、全閉位置から全開位置までの動作範囲内においてスロットルシャフト2の回転軸を中心にして回転するバタフライバルブである。このバタフライバルブは、スロットルボア10の中心軸線とスロットルバルブ4の回転中心軸線との交点を中心とする円板状のプレートバルブである。また、バタフライバルブの場合、吸気通路の軸線方向(吸気流方向)に対して垂直な方向に回転中心軸線を有している。
【0036】
また、スロットルバルブ4は、全面的に一定の板厚で、基本的にはスロットルボア10の内径(スロットルボア径)に対して僅かに小さい外径を有する真円形状に形成されたプレートバルブである。
スロットルバルブ4は、スロットルボディ1の内部(スロットルボア10)に開閉自在に収容されて、スロットルシャフト2の中心軸線周りを回転してスロットルボア10を開閉するものである。
スロットルバルブ4の板厚方向の両端面(一端面、他端面)は、全面的にフラットな平坦面(平面)である。つまりスロットルバルブ4は、全体が同じ板厚を有している。
【0037】
スロットルバルブ4は、スロットルシャフト2に形成されたスリット孔3内に差し込まれた状態で、スロットルシャフト2にスクリュー6により固定されている。これにより、スロットルバルブ4は、スロットルシャフト2と一体回転可能に連結される。
スロットルバルブ4は、スロットルボディ1の流路方向の中心軸線とスロットルシャフト2の中心軸線との交点を中心にして半径方向の外径側に放射状に延びる円板状部を備えている。
円板状部には、吸気絞り弁の全開時に吸気流方向の一方側(例えば上流側)に配される第1ディスク(バルブプレート)と、吸気絞り弁の全開時に吸気流方向の他方側(例えば下流側)に配される第2ディスク(バルブプレート)とが形成されている。
【0038】
スロットルバルブ4は、スリット孔3内に差し込まれて、スクリュー6によりスロットルシャフト2に締結固定されるバルブ締結部を備えている。このバルブ締結部は、2つの第1、第2ディスク間に設けられる。
スロットルバルブ4のバルブ締結部の板厚方向の一端面(図示上端面)には、インサートプレート5の板厚方向の他端面(図示下端面)と当接する第1当接部(当接面)が形成されている。また、バルブ締結部の板厚方向の他端面(図示下端面)には、スロットルシャフト2のスリット孔3の孔壁面と当接する第2当接部(当接面)が形成されている。
【0039】
スロットルバルブ4のバルブ締結部において、スロットルシャフト2の回転軸線と同一軸線上に位置する中心線上には、一対のスクリュー取付孔(スクリュー挿通孔22、スクリュー螺子孔23)にほぼ対応する一対のスクリュー挿通孔31がそれぞれ形成されている。
一対のスクリュー挿通孔31は、スクリュー6の軸方向部8がその軸線方向(締結方向)に貫通(挿通)する貫通孔で、スクリュー6の軸方向部8がその軸線方向(締結方向)に延長(延伸)されている。このスクリュー挿通孔31の孔形状は、スロットルシャフト2の回転軸方向に平行な方向に長軸を有し、スロットルシャフト2の直径方向に平行な方向に短軸を有する楕円形状または長円形状である。
なお、スロットルバルブ4の詳細は、後述する。
【0040】
インサートプレート5は、例えばニッケルまたはニッケルを主体とするニッケル合金等の非鉄系金属(または鉄系金属)によって一体的に形成されている。このインサートプレート5は、金属製の板状素材をプレス成形機により打ち抜き加工することにより、基本的には、長方形の平板形状(直方体形状)に形成されている。また、インサートプレート5は、スロットルシャフト2のスリット孔3の孔壁面とスロットルバルブ4のバルブ締結部の第1当接部とが接触する範囲(組み付けた時に重なる部分)にのみ設けられている。これによって、インサートプレート5を形成(製作)するのに必要な金属材料が少なくて済むため、構造が簡単で低コストな吸気絞り弁を備えた吸気絞り装置を実現することができる。
【0041】
インサートプレート5は、スロットルシャフト2のスリット孔3の孔壁面とスロットルバルブ4のバルブ締結部の第1当接部との間に挟み込むようにスリット孔3内に差し込まれて、スクリュー6によりスロットルシャフト2に締結固定されるバルブ締結部を備えている。このバルブ締結部は、スロットルバルブ4のバルブ締結部上に重ね合わされる(積層される)。また、バルブ締結部は、スロットルシャフト2のバルブ支持部とスロットルバルブ4のバルブ締結部との間に挟み込まれている。
インサートプレート5のバルブ締結部の板厚方向の一端面(図示上端面)には、スロットルシャフト2のスリット孔3の孔壁面と当接する第1当接部(当接面)が形成されている。また、バルブ締結部の板厚方向の他端面(図示下端面)には、スロットルバルブ4の板厚方向の一端面(図示上端面)と当接する第2当接部(当接面)が形成されている。
【0042】
インサートプレート5のバルブ締結部において、スロットルシャフト2の回転軸線と同一軸線上に位置する中心線上には、一対のスクリュー取付孔(スクリュー挿通孔22、スクリュー螺子孔23)および一対のスクリュー挿通孔31にほぼ対応する一対のスクリュー挿通孔41がそれぞれ形成されている。
一対のスクリュー挿通孔41は、スクリュー6の軸方向部8がその軸線方向(締結方向)に貫通(挿通)する貫通孔で、スクリュー6の軸方向部8がその軸線方向(締結方向)に延長(延伸)されている。このスクリュー挿通孔41の孔形状は、スロットルシャフト2の回転軸方向に平行な方向に長軸を有し、スロットルシャフト2の直径方向に平行な方向に短軸を有する楕円形状または長円形状である。
なお、インサートプレート5の詳細は、後述する。
【0043】
[実施例1の特徴]
本実施例のスロットルシャフト2、スロットルバルブ4およびインサートプレート5の詳細を図1に基づいて簡単に説明する。
【0044】
本実施例のスロットルシャフト2は、スロットルバルブ4の素材(材質)およびインサートプレート5の素材(材質)に対して線膨張係数が異なる素材(材質)によって形成されている。また、インサートプレート5は、スロットルバルブ4の素材(材質)に対して線膨張係数が異なる素材(材質)によって形成されている。
このため、スロットルシャフト2の材質をステンレス鋼等の鉄系金属とし、また、スロットルバルブ4の材質を例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金等のアルミニウム系金属とし、また、インサートプレート5の材質を例えばニッケルまたはニッケル合金等の非鉄系金属(または鉄系金属)としている。
これにより、スロットルシャフト2の素材(材質)の線膨張係数をKs、スロットルバルブ4の素材(材質)の線膨張係数をKv、インサートプレート5の素材(材質)の線膨張係数をKpとしたとき、Ks、Kv、Kpの関係は、Kp<Ks<Kvを満たすように設計(構成)される。
【0045】
ここで、吸気絞り弁の実使用環境における温度変化(温度上昇または温度降下)による上記金属材の温度変化量(膨張量または収縮量)をΔtとする。
そして、スロットルシャフト2のスリット孔3の孔幅をTs、スロットルシャフト2の材質の線膨張係数をKsとしたとき、スロットルシャフト2のスリット孔3の孔幅の変化(量)Xは、下記の数1の式のようになる。
[数1]
X=Ts×Ks×Δt
【0046】
また、スロットルバルブ4の板厚をTv、スロットルバルブ4の材質の線膨張係数をKv、インサートプレート5の板厚をTp、インサートプレート5の材質の線膨張係数をKpとしたとき、スロットルバルブ4とインサートプレート5の板厚の変化(量)Yは、下記の数2の式のようになる。
[数2]
Y=Tp×Kp×Δt+Tv×Kv×Δt
【0047】
そして、本実施例の吸気絞り弁は、XおよびYの関係が、X=Y(X≧YまたはX≦Y)となるように設定されている。あるいはXとYをイコールとするのが不可能であれば、左辺(X)と右辺(Y)とをできるだけ近づける(X≒Y)。
なお、スロットルシャフト2に形成されたスリット孔3内へのスロットルバルブ4およびインサートプレート5の組付作業を円滑に行うという目的で、スロットルバルブ4とインサートプレート5を重ねた板厚を(Tv+Tp)とし、また、スリット孔3の孔幅をTsとしたとき、(Tv+Tp)およびTsの関係が、Ts=(Tv+Tp)+αを満たすように設計(構成)しても良い。この場合、スロットルバルブ4およびインサートプレート5の端面とスロットルシャフト2のスリット孔3の壁面との間に形成される微小な隙間(クリアランス)αは、例えば常温時に100μm程度あれば組付作業を円滑に行うことができる。
【0048】
[実施例1の組付方法]
次に、本実施例のスロットルシャフト2に対するスロットルバルブ4およびインサートプレート5の取付手順を図1および図2に基づいて簡単に説明する。ここで、図2(a)、(b)は吸気絞り弁の主要な組付工程の作業順序を示した流れ作業図(プロセスチャート)である。
【0049】
スロットルシャフト2に対するスロットルバルブ4の取り付けに先立って、スロットルボディ1のスロットルボア10を横切るようにシャフト挿通孔11、12にスロットルシャフト2を挿入する。これにより、スロットルボディ1のシャフト挿通孔11、12の孔壁面に対してスロットルシャフト2が回転方向に摺動可能となるように支持される。
そして、スロットルシャフト2のスリット孔3をスロットルボディ1のスロットルボア10を流れる吸気流方向に一致させた状態、つまりスリット孔3をスロットルボア10の軸線に一致させた状態(例えば全開状態)とする。この状態で、スロットルボディ1の外部からスロットルボア10の上流端(または下流端)を経てスロットルバルブ4をスロットルボア10の軸線に沿ってスリット孔3内に差し込む。また、インサートプレート5をスロットルバルブ4と同様にスロットルボア10の軸線に沿ってスリット孔3内に差し込む。
【0050】
そして、スロットルバルブ4のバルブ締結部の回転軸線およびインサートプレート5のバルブ締結部の回転軸線をスロットルシャフト2の回転軸線と同一軸線上に一致させると共に、スロットルバルブ4の各スクリュー挿通孔31およびインサートプレート5の各スクリュー挿通孔41を、スロットルシャフト2の直径方向に形成される各スクリュー取付孔(スクリュー挿通孔22、スクリュー螺子孔23)に一致(合致)させる。
この状態で、スクリュー6の軸方向部8を挿通し、更に、スロットルシャフト2のスクリュー挿通孔22からインサートプレート5のスクリュー挿通孔41、スロットルバルブ4のスクリュー挿通孔31を挿通し、更に、スロットルシャフト2のスクリュー螺子孔23の雌ネジにスクリュー6の軸方向部8の外周に形成された雄ネジ9を螺合させる。そして、スクリュー6を回しながら頭部7がスロットルシャフト2の受圧座面21に着座するまでスクリュー6をスクリュー螺子孔23の雌ネジに捩じ込む。これにより、スロットルシャフト2に対して、スロットルバルブ4およびインサートプレート5がスクリュー6の締結により固定される。
【0051】
[実施例1の作用]
次に、本実施例の内燃機関の吸気絞り装置の作用を図1に基づいて簡単に説明する。
ECUは、イグニッションスイッチがオン(IG・ON)されると、吸気絞り装置(スロットルバルブ4等)のモータを通電制御すると共に、点火装置(イグニッションコイル、スパークプラグ等)および燃料噴射装置(電動フューエルポンプ、インジェクタ等)を駆動する。これにより、エンジンが運転される。
【0052】
ここで、運転者がアクセルペダルを踏み込むと、アクセル開度センサより出力されたアクセル開度信号がECUに入力される。そして、ECUによってスロットルバルブ4が所定のスロットル開度(回転角度)となるようにモータへの電力の供給が成されて、モータのシャフトが回転する。
そして、モータのシャフトが回転することにより、スロットルシャフト2にトルクが伝達される。これにより、スロットルシャフト2が、リターンスプリングの付勢力(スプリング力)に抗してアクセルペダルの踏み込み量(アクセル操作量)に対応した回転角度分だけ回転する。
【0053】
これにより、スロットルシャフト2が回転するので、このスロットルシャフト2に保持されたスロットルバルブ4が、全閉位置より全開位置側へ開く方向(開弁作動方向)に駆動される。
そして、エンジンの特定気筒が排気行程から、吸気バルブが開弁し、ピストンが下降する吸気行程に移行すると、ピストンの下降に従って当該気筒の燃焼室内の負圧(大気圧よりも低い圧力)が大きくなり、開弁している吸気ポートから混合気が吸い込まれる。このとき、吸気管の途中、つまりスロットルボディ1のスロットルボア10が所定のバルブ角度(吸気絞り装置のスロットル開度)だけ開かれるので、エンジン回転速度がアクセルペダルの踏み込み量(アクセル操作量)に対応した速度に変更される。
【0054】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例の内燃機関の吸気絞り装置においては、スロットルボディ1のシャフト挿通孔11、12の孔壁面に回転可能に支持されたスロットルシャフト2に形成されたスリット孔3内にスロットルバルブ4を挿入し、且つインサートプレート5をスロットルシャフト2とスロットルバルブ4との間に挟持し、スロットルシャフト2に対してスロットルバルブ4およびインサートプレート5をスクリュー6の締結により固定することによって、スロットルバルブ4およびインサートプレート5がスロットルシャフト2に取り付けられる。
なお、スロットルシャフト2の素材として、インサートプレート5の素材の線膨張係数(Kp)よりも大きい鉄系金属を使用し、また、スロットルバルブ4の素材として、スロットルシャフト2の素材の線膨張係数(Ks)よりも大きいアルミニウム系金属を使用している。
【0055】
具体的には、インサートプレート5の素材の線膨張係数をKp、スロットルシャフト2の素材の線膨張係数をKs、スロットルバルブ4の素材の線膨張係数をKvとしたとき、Kp<Ks<Kvの関係を満足している。つまりKp、Ks、Kvの関係は、Kp<Ks<Kvである。あるいはKp、Ks、Kvの関係は、Kp<Ks<Kvを満たすように設計(構成)されている。
すなわち、インサートプレート5の素材には、例えばニッケルまたはニッケル合金等の非鉄系金属(または鉄系金属)が使用されている。また、スロットルシャフト2の素材として、インサートプレート5の素材の線膨張係数(Kp)よりも大きい金属、例えばステンレス鋼等の鉄系金属が使用されている。また、スロットルバルブ4の素材として、スロットルシャフト2の素材の線膨張係数(Ks)よりも大きい金属、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金等のアルミニウム系金属が使用されている。
【0056】
これによって、温度変化時(例えば温度上昇時)には、Ks<Kvの関係により、スロットルバルブ4がスロットルシャフト2よりも大きく熱膨張するので、「スロットルシャフト2の変形量<スロットルバルブ4の変形量」となり、スロットルシャフト2とスロットルバルブ4との間の隙間が小さくなるものの、Kp<Ksの関係により、スロットルシャフト2がインサートプレート5よりも大きく熱膨張するので、「インサートプレート5の変形量<スロットルシャフト2の変形量」となり、スロットルシャフト2とスロットルバルブ4との間の隙間(間隔)が小さくなり過ぎるのを防止できる。
【0057】
また、温度変化時(例えば温度下降時)には、Ks<Kvの関係により、スロットルバルブ4がスロットルシャフト2よりも大きく熱収縮するので、「スロットルシャフト2の変形量<スロットルバルブ4の変形量」となり、スロットルシャフト2とスロットルバルブ4との間に隙間が生じ(または間隔が拡大す)るものの、Kp<Ksの関係により、スロットルシャフト2がインサートプレート5よりも大きく熱収縮するので、「インサートプレート5の変形量<スロットルシャフト2の変形量」となり、スロットルシャフト2とスロットルバルブ4との間の隙間(間隔)が小さくなる。
【0058】
したがって、実使用環境の変化(温度変化)時にスロットルシャフト2とスロットルバルブ4との間の隙間の発生または隙間の拡大を抑制できるので、スクリュー6の軸力の低下(抜け)を防止できる。
また、吸気絞り弁を備えた吸気絞り装置が如何なる環境下(低温または高温を伴う実使用環境下)で使用される場合であっても、バルブずれの発生を防止できる。
また、実使用環境の変化(温度変化)に応じて微細な変形等が発生した場合であっても、スロットルシャフト2に対するスロットルバルブ4の取り付け位置の位置精度に悪影響が発生するのを抑制できる。
【0059】
また、スロットルシャフト2に形成されたスリット孔3の孔幅の変化(量)をXとし、スロットルバルブ4の板厚およびインサートプレート5の板厚の変化(量)をYとしたとき、スリット孔3の孔幅、スロットルバルブ4の板厚およびインサートプレート5の板厚が、X=Yとなるように設定されている。
そして、X=Yとするか、あるいはイコールとするのが不可能であれば、左辺(X)と右辺(Y)とをできるだけ近づけることで、実使用環境の変化(温度変化)時にスロットルシャフト2とスロットルバルブ4との間の隙間の発生または隙間の拡大を抑制することができる。
したがって、スクリュー6の軸力の低下(抜け)を防止できるので、スロットルシャフト2に対するスロットルバルブ4の締結力の低下を防止できる。また、吸気絞り弁を備えた吸気絞り装置が如何なる環境下(低温または高温を伴う実使用環境下)で使用される場合であっても、バルブずれの発生を防止できる。
【0060】
ところで、スロットルバルブ4の素材の線膨張係数をKv、スロットルシャフト2の素材の線膨張係数をKs、インサートプレート5の素材の線膨張係数をKpとしたとき、Kv<Ks<Kpの関係を満足するようにしても良い。つまりKv、Ks、Kpの関係は、Kv<Ks<Kpである。あるいはKv、Ks、Kpの関係は、Kv<Ks<Kpを満たすように設計(構成)されている。
すなわち、スロットルバルブ4の素材には、例えばニッケルまたはニッケル合金等の非鉄系金属(または鉄系金属)が使用されている。また、スロットルシャフト2の素材として、スロットルバルブ4の素材の線膨張係数(Kp)よりも大きい金属、例えばステンレス鋼等の鉄系金属が使用されている。また、インサートプレート5の素材として、スロットルシャフト2の素材の線膨張係数(Ks)よりも大きい金属、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金等のアルミニウム系金属が使用されている。
【0061】
これによって、温度変化時(例えば温度上昇時)には、Ks<Kpの関係により、インサートプレート5がスロットルシャフト2よりも大きく熱膨張するので、「スロットルシャフト2の変形量<インサートプレート5の変形量」となり、スロットルシャフト2とインサートプレート5との間の隙間が小さくなるものの、Kv<Ksの関係により、スロットルシャフト2がスロットルバルブ4よりも大きく熱膨張するので、「スロットルバルブ4の変形量<スロットルシャフト2の変形量」となり、スロットルシャフト2とスロットルバルブ4との間の隙間(間隔)が小さくなり過ぎるのを防止できる。
【0062】
また、温度変化時(例えば温度下降時)には、Ks<Kpの関係により、インサートプレート5がスロットルシャフト2よりも大きく熱収縮するので、「スロットルシャフト2の変形量<インサートプレート5の変形量」となり、スロットルシャフト2とインサートプレート5との間に隙間が生じ(または間隔が拡大す)るものの、Kv<Ksの関係により、スロットルシャフト2がスロットルバルブ4よりも大きく熱収縮するので、「スロットルバルブ4の変形量<スロットルシャフト2の変形量」となり、スロットルシャフト2とインサートプレート5との間の隙間(間隔)が小さくなる。
したがって、この場合も、上記と同様な効果を達成することができる。
【0063】
[変形例]
本実施例では、スロットルシャフト2を回転駆動するアクチュエータを、モータおよび動力伝達機構を備えた電動式アクチュエータによって構成しているが、バルブおよびインサートプレートを支持固定するシャフト(バルブ支持部材)を回転駆動するアクチュエータを、電磁式または電動式負圧制御弁を備えた負圧作動式アクチュエータによって構成しても良い。
また、バルブを収容するハウジングとして、スロットルボディ1以外のケーシング(例えばインテークマニホールド等)を使用しても良い。
【0064】
本実施例では、本発明のバルブを、内燃機関(エンジン)の燃焼室に供給される吸入空気量を制御するスロットルバルブ4に適用しているが、内燃機関(エンジン)の燃焼室において混合気の燃焼を促進させるための吸気渦流を発生させる吸気流制御バルブに適用しても良い。また、本発明のバルブを、内燃機関(エンジン)の吸気通路を開閉する吸気通路開閉装置の弁体に適用しても良い。
【0065】
また、本発明の内燃機関の吸気装置を、アクセルペダルの踏み込み量をワイヤーを介して機械的にスロットルシャフト2に伝えてスロットルバルブ4を作動させるスロットル装置に適用しても良い。
また、内燃機関(エンジン)として、多気筒エンジンだけでなく、単気筒エンジンを用いても良い。
本実施例では、締結体としてスクリュー6を使用しているが、締結体として、ビスやネジ、ボルト等を使用しても良い。
本実施例では、スロットルシャフト2のスリット孔3へスロットルバルブ4、インサートプレート5の順に挿入し(組み付け)たが、スロットルシャフト2のスリット孔3へインサートプレート5、スロットルバルブ4の順に挿入し(組み付け)ても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 スロットルボディ(ハウジング)
2 スロットルシャフト
3 スロットルシャフトのスリット孔(バルブ挿入孔)
4 スロットルバルブ(バタフライバルブ)
5 インサートプレート(インサート、スペーサ)
6 スクリュー(締結体)
7 スクリューの頭部
8 スクリューの軸方向部
9 スクリューの雄ネジ
10 スロットルボア(吸気通路)
22 スロットルシャフトのスクリュー挿通孔
23 スロットルシャフトのスクリュー螺子孔
24 第1開口部
25 第2開口部
31 スロットルバルブのスクリュー挿通孔
41 インサートプレートのスクリュー挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)内燃機関に供給される吸気が流れる吸気通路を形成するハウジングと、
(b)このハウジングに回転可能に支持されて、前記吸気通路の通路幅に対応した回転軸方向長を有するスリット孔が径方向に貫通して形成されたシャフトと、
(c)前記スリット孔内に挿入した状態で取り付けられて、前記吸気通路を開閉するバルブと、
(d)前記スリット孔内において前記シャフトと前記バルブとの間に挟み込まれた状態で取り付けられて、前記バルブに対して線膨張係数が異なるプレートと、
(e)前記バルブおよび前記プレートを前記シャフトに締結により固定する締結体と
を備えた内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の吸気装置において、
前記スリット孔の幅の変化をXとし、
前記バルブの板厚および前記プレートの板厚の変化をYとしたとき、
前記スリット孔の幅、前記バルブの板厚および前記プレートの板厚が、
X=Yとなるように設定されていることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の吸気装置において、
前記シャフトは、前記バルブおよび前記プレートに対して線膨張係数が異なることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関の吸気装置において、
前記シャフトの線膨張係数をKs、
前記バルブの線膨張係数をKv、
前記プレートの線膨張係数をKpとしたとき、
Kp<Ks<Kv
の関係を満足することを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項5】
請求項3に記載の内燃機関の吸気装置において、
前記シャフトの線膨張係数をKs、
前記バルブの線膨張係数をKv、
前記プレートの線膨張係数をKpとしたとき、
Kv<Ks<Kp
の関係を満足することを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の吸気装置において、 前記プレートは、前記シャフトおよび前記バルブに対して別体部品で構成されていることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の吸気装置において、 前記プレートは、前記バルブに対して溶接により固定されていることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の吸気装置において、 前記プレートは、前記スリット孔内に、前記バルブと重ねて挿入されていることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の吸気装置において、 前記バルブは、前記締結体により前記シャフトに締結される締結部を有していることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の吸気装置において、 前記プレートは、前記締結体により前記シャフトに締結される締結部を有していることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の吸気装置において、
前記シャフトは、前記締結体がその軸線方向に貫通する挿通孔、およびこの挿通孔と同一軸線上に設けられて、前記締結体を螺子締結するための螺子孔を有していることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項12】
請求項11に記載の内燃機関の吸気装置において、
前記挿通孔は、前記スリット孔の壁面で開口した第1開口部を有し、
前記螺子孔は、前記スリット孔の壁面で開口した第2開口部を有し、
前記第1開口部は、前記スリット孔を挟んで前記第2開口部と対向して設けられていることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の吸気装置において、
前記プレートは、前記シャフトと前記バルブとが接触する範囲にのみ設けられていることを特徴とする内燃機関の吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−108374(P2013−108374A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252240(P2011−252240)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】