説明

内燃機関の廃熱利用装置

【課題】内燃機関の作動状態に応じて、冷却水回路及びランキンサイクル回路を適正に機能させることができる内燃機関の廃熱利用装置を提供する。
【解決手段】冷却水回路(8)は、ラジエータ(24)の手前で熱交換器(22)及び蒸発器(10)からなる熱交換領域(38)を形成し、熱交換領域をバイパスするバイパス路(36)と、内燃機関(6)を経由した冷却水をバイパス路と熱交換領域とに配分して流入させることにより、冷却水回路における冷却水の循環を維持しながら熱交換領域へ流入する冷却水の流量を制限する流量配分制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の廃熱利用装置に係り、詳しくは、車両に好適な内燃機関の廃熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の廃熱利用装置としては、例えば車両用エンジンにおいて、冷凍サイクルの構成部品を利用してランキンサイクル回路を形成することで内燃機関の廃熱を動力回収し、その回収した動力でエンジンの軸出力をアシストする技術が知られている。
具体的には、エンジン本体を冷却した後の高温冷却水をエンジンの排ガス熱で更に加熱する排ガス熱交換器を冷却水回路に設置し、この排ガス熱交換器を経由した過熱冷却水を冷凍サイクルの蒸発器に送ることでエンジンの廃熱を効率的に回収するランキンサイクル回路が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、冷却水回路中にラジエータを組み込み、このラジエータをランキンサイクルの上記蒸発器と直列に配置することで冷却水を効率的に冷却する冷却水回路が公知である(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭57−99222号公報
【特許文献2】特許第2540738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、冷却水を排ガス熱で加熱する分、エンジン本体を充分に冷却し得る冷却水温度まで冷却水から吸熱するには蒸発器の熱容量を大きくせざるを得ず、蒸発器が大型化するとの問題がある。
そこで、上記特許文献2のように、冷却水回路中にラジエータを別途組み込み、蒸発器とラジエータとの両方で過熱冷却水から吸熱することが考えられる。しかし、蒸発器とラジエータとが直列に配置されているため、冷却水回路を多量の冷却水が循環すると、排ガス熱交換器及び蒸発器における冷却水の通水抵抗が大きくなる。このような冷却水の通水抵抗の増大は冷却水回路における冷却水の循環を阻害し、ラジエータでの冷却性能を低下させるとの問題がある。
【0005】
また、上記各従来技術では、いずれも排ガス熱をエンジンの暖機に利用する点については格別な配慮がなされていない。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、内燃機関の作動状態に応じて、冷却水回路及びランキンサイクル回路を適正に機能させることができる内燃機関の廃熱利用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するべく、請求項1記載の内燃機関の廃熱利用装置は、冷却水により冷却される内燃機関と、冷却水を熱媒体と熱交換させて冷却水を加熱する熱交換器、熱交換器を経由した冷却水を冷却するラジエータを有し、内燃機関の作動状態に応じた流量の冷却水が内燃機関、熱交換器、ラジエータを順次経由して循環する冷却水回路と、熱交換器を経由した冷却水と熱交換して作動流体を加熱するとともに冷却水の流れ方向からみてラジエータと直列に配置される蒸発器、蒸発器を経由した作動流体を膨張させて駆動力を発生する膨張機、膨張機を経由した作動流体を凝縮させる凝縮器を含み、凝縮器を経由した作動流体が蒸発器を経由して循環するランキンサイクル回路とを備え、冷却水回路は、ラジエータの手前で熱交換器及び蒸発器からなる熱交換領域を形成し、熱交換領域をバイパスするバイパス路と、内燃機関を経由した冷却水をバイパス路と熱交換領域とに配分して流入させることにより、冷却水回路における冷却水の循環を維持しながら熱交換領域へ流入する冷却水の流量を制限する流量配分制御手段とを有することを特徴としている。
【0007】
また、請求項2記載の発明では、流量配分制御手段は、熱交換領域の前後の差圧を検出する差圧センサと、差圧センサで検出された差圧に応じて熱交換領域へ流入する冷却水の流量を制限すべく駆動される操作端とを含むことを特徴としている。
更に、請求項3記載の発明では、ランキンサイクル回路は、作動流体を循環させるべく駆動されるポンプを更に含み、流量配分制御手段は、冷却水回路を循環する冷却水の温度を検出する温度センサを更に含み、温度センサで検出された冷却水の温度が所定の温度以下のとき、ポンプの駆動を停止するとともに、内燃機関を経由した冷却水を熱交換領域のみに流入させるべく操作端を駆動することを特徴としている。
【0008】
更にまた、請求項4記載の発明では、流量配分制御手段は、冷却水回路を循環する冷却水の温度を検出する温度センサと、蒸発器のみをバイパスする第2バイパス路と、第2バイパス路に設けられ、温度センサで検出された温度に応じて蒸発器へ流入する冷却水の流量を制限すべく駆動される第2操作端とを更に含み、温度センサで検出された冷却水の温度が所定の温度以下のとき、内燃機関を経由した冷却水を熱交換器のみに流入させるべく操作端及び第2操作端を駆動することを特徴としている。
【0009】
また、請求項5記載の発明では、操作端は、差圧センサから検出された差圧に応じて操作端の作動位置が連続的に可変駆動されるリニア三方弁であることを特徴としている。
更に、請求項6記載の発明では、操作端は、差圧センサから検出された差圧に応じて連続的に可変駆動されるポンプであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の本発明の内燃機関の廃熱利用装置によれば、熱交換器及び蒸発器からなる熱交換領域と、この熱交換領域のバイパス路とに冷却水回路を循環する冷却水を配分して流入させ、冷却水回路における冷却水の循環を維持しながら熱交換領域へ流入する冷却水の流量を制限するようにしている。これにより、冷却水回路を循環する冷却水の流量が増大したとしても、冷却水の増大分を熱交換領域へ流さずにバイパス路に流すことにより熱交換領域における冷却水の通水抵抗によって冷却水の循環が阻害されることを防止できる。従って、ラジエータの冷却性能を維持して冷却水回路を適正に機能させ、同時にランキンサイクル回路を適正に機能させることができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明によれば、熱交換領域の前後の差圧を検出する差圧センサで検出された差圧に応じて操作端を駆動し、熱交換領域へ流入する冷却水の流量を制限するようにしている。これにより、熱交換領域における冷却水の通水抵抗を差圧によって直接監視できるため、流量配分制御手段に係る制御の制御応答性が向上し、冷却水回路及びランキンサイクル回路の両方を適正に且つ確実に機能させることができる。
【0012】
更に、請求項3記載の発明によれば、流量配分制御手段は、温度センサで検出された冷却水の温度が所定の温度以下のとき、ランキンサイクル回路のポンプを停止するとともに、内燃機関を経由した冷却水を熱交換領域のみに流入させることができる。これにより、内燃機関の始動時にはランキンサイクル回路の機能を停止して蒸発器での冷却水からの吸熱を行わず、且つ冷却水回路を循環する冷却水の全量を熱交換器で加熱できるため、内燃機関の暖機が迅速に実施可能となる。従って、内燃機関の作動状況に拘らず、冷却水回路及びランキンサイクル回路の両方の機能を常に適正化できる。
【0013】
更にまた、請求項4記載の発明によれば、流量配分制御手段は、温度センサで検出された冷却水の温度が所定の温度以下のとき、第2操作端を駆動して蒸発器をバイパスすることにより、内燃機関を経由した冷却水を熱交換器のみに流入させることができる。これにより、内燃機関の始動時には、ランキンサイクル回路を停止しなくても蒸発器での冷却水からの吸熱を行わないようにでき、且つ冷却水回路を循環する冷却水の全量を熱交換器で加熱できる。更には、蒸発器をバイパスすることにより、蒸発器における冷却水回路の圧力損失がなくなり、冷却水の循環が促進され、内燃機関の暖機が更に迅速に実施可能となる。従って、内燃機関の作動状況に拘らず、冷却水回路及びランキンサイクル回路の両方の機能を更に適正化できる。
【0014】
また、請求項5記載の発明によれば、流量配分制御手段に係る操作端が差圧に応じて操作端の作動位置が連続的に可変駆動されるリニア三方弁であって、この三方弁により冷却水の全流量領域に亘って熱交換領域へ流入する冷却水の流量を精度良く調整することができる。従って、流量配分制御手段に係る制御の制御精度が向上し、冷却水回路及びランキンサイクル回路を更に適正に機能させることができる。
【0015】
更に、請求項6記載の発明によれば、流量配分制御手段に係る操作端が差圧に応じて連続的に可変駆動されるポンプであって、このポンプにより冷却水の全流量領域に亘って熱交換領域へ流入する冷却水の流量を精度良く調整することができる。しかも、ポンプの駆動圧により多量の冷却水を熱交換器に向けて流入させることができる。従って、流量配分制御手段に係る制御の精度向上に加え、内燃機関の暖機の更なる迅速化が図れるため、冷却水回路及びランキンサイクル回路の機能を大幅に適正化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面により本発明の実施形態について説明する。
先ず、第1実施形態について説明する。
図1は本実施形態の内燃機関の廃熱利用装置2の構成を示す模式図であって、この廃熱利用装置2は、ランキンサイクル回路4と、例えば車両のエンジン(内燃機関)6を冷却する冷却水が循環する冷却水回路8とを含んで構成されている。
【0017】
ランキンサイクル回路4は、蒸発器10、膨張機12、凝縮器14、受液器16、及びポンプ18を含んで構成され、ポンプ18の作動によって作動流体が蒸発器10、膨張機12、凝縮器14、受液器16を順次流れて循環する。
蒸発器10は、ポンプ18から送出される作動流体と冷却水回路8を流通する高温の冷却水との間で熱交換することにより作動流体を加熱する熱交換器である。蒸発器10内には、いずれも図示しないが、冷却水を導く冷却水経路と、作動流体を導く作動流体経路とを備え、冷却水経路と作動流体経路と間には冷却水経路と作動流体経路とを区画する境界壁が設けられている。
【0018】
膨張機12は、蒸発器10で加熱され過熱蒸気の状態となる作動流体の膨張によって回転等に係る駆動力を発生させる流体機器である。また、膨張機12には例えば発電機20が接続され、発電機20を介して膨張機12で発生した駆動力を廃熱利用装置2の外部で使用可能である。
凝縮器14は、膨張機12から吐出される作動流体を外気との熱交換によって凝縮液化する熱交換器である。
【0019】
受液器16は、凝縮器14で凝縮された作動流体を気液二層に分離するレシーバであり、ここで分離された液化作動流体のみがポンプ18側に流出され、この液化作動流体がポンプ18の作動によって蒸発器10に再び流入することにより閉回路としてのランキンサイクル回路4が形成される。
一方、冷却水回路8は、排ガス熱交換器(熱交換器)22、ラジエータ24、サーモスタット26、ポンプ28を含んで構成され、ポンプ28の作動によって冷却水がエンジン6、排ガス熱交換器22、蒸発器10、ラジエータ24、サーモスタット26を順次流れて循環する。
【0020】
排ガス熱交換器22は、エンジン6の排ガス(熱媒体)が流出される排ガス管30内に設けられ、エンジン6で加熱された冷却水と排ガス管30を流れる排ガスとの間で熱交換することにより冷却水が更に加熱される。
ラジエータ24は、蒸発器10と直列に配列され、ポンプ28の作動によって循環される冷却水を外気との熱交換により冷却する。
【0021】
サーモスタット26は、2つの入口ポートと1つの出口ポートとを有し、通水される冷却水の冷却水温度に応じて入口ポートを切り換え、或いは各入口ポートに通水される冷却水の流量を配分制御可能な機械式の切換弁であって、ラジエータ24からポンプ28まで延設される冷却水回路8の流路8aに介挿されている。
詳しくは、サーモスタット26の一方の入口ポートには、流路8aのうちのラジエータ24側が接続され、出口ポートには流路8aのうちのポンプ28側が接続されている。一方、他方の入口ポートには、蒸発器10からラジエータ24まで延設される冷却水回路8の流路8bから分岐するとともにラジエータ24を迂回してラジエータ24の下流に合流するバイパス路32が接続されている。これより、サーモスタット26は、冷却水温度に応じてラジエータ24及びバイパス路32を流れる冷却水の流量を調整し、エンジン6の本体温度Teを略一定に保持している。
【0022】
ポンプ28は、エンジン6に装着され、エンジン6の回転数に応じて作動することにより冷却水回路8に冷却水を循環させる。
ところで、冷却水回路8には、エンジン6と排ガス熱交換器22との間にリニア三方弁(操作端)34が介挿されている。この三方弁34は、1つの入口ポートと2つの出口ポートとを有する電動弁であって、三方弁34の駆動部に入力される入力信号に比例して1つの弁体を連続的に可変駆動することにより、入口ポートに流入する冷却水を各出口ポートに配分して流出させるとともに、これら各配分流量を微調整可能に構成されている。
【0023】
詳しくは、三方弁34の入口ポートにはエンジン6から延設される冷却水回路8の流路8cが接続され、対向する出口ポートには、熱交換器22まで延設される冷却水回路8の流路8dが接続されている。これに対し、他方の出口ポートには、熱交換器22及び蒸発器10からなる熱交換ユニット(熱交換領域)38を迂回して流路8bに合流するバイパス路36が接続されている。なお、バイパス路36はラジエータ24のバイパス路32と一部が共用されている。
【0024】
これより、エンジン6から流路8cに流入する冷却水が三方弁34によってバイパス路36と流路8dとに配分される。ここで、エンジン6から流路8dに流入する冷却水流量を全流量Ft、バイパス路36を流れる冷却水流量をバイパス路配分流量Fb、流路8dを流れる冷却水流量を熱交換ユニット配分流量Fheとすると、全流量Ft=バイパス路配分流量Fb+熱交換領域配分流量Fheの関係式が略成立し、三方弁34は冷却水回路8の全体からみて大きな圧力損失要素とはならない構造となっている。
【0025】
一方、バイパス路36と流路8dとからはそれぞれ冷却水圧力が導出され、これら導出された圧力は差圧センサ40に入力されている。すなわち、差圧センサ40は熱交換ユニット38の前後の差圧ΔPを検出している。また、他のセンサとしては、流路8aにおける冷却水温度Tを検出する温度センサ42が設けられている。
これら検出端たる差圧センサ40,温度センサ42、及び操作端たる三方弁34は車両及び廃熱利用装置2の総合的な制御を行う電子コントロールユニット(ECU)44に電気的に接続されており、ECU44は、これらセンサ40,42から検出される入力信号に基づいて、三方弁34の所望の出口ポートを所望の開度に駆動制御すべく信号を出力する。
【0026】
詳しくは、差圧センサ40で検出される熱交換ユニット38の前後の差圧ΔPに応じて三方弁34を駆動する差圧バルブ開度制御たるサブ制御ルーチンが実行され、このサブ制御ルーチンは、温度センサ42で検出される冷却水温度Tに応じて差圧バルブ開度制御の実行、停止を制御する温度バルブ開度制御たるメイン制御ルーチンに支配されており、これら制御ルーチンはECU44内で処理される(流量配分制御手段)。
【0027】
以下、図2に示されるフローチャートを参照して温度バルブ開度制御について説明する。
先ず、S0(以下、Sはステップを表す)で温度バルブ開度制御が開始されると、S1に移行する。
S1では、温度センサ42で検出された冷却水温度Tが所定の温度設定値TL以下であるか否かを判定する。判定結果が真(Yes)で冷却水温度Tが温度設定値TL以下と判定された場合にはS2に移行し、判定結果が偽(No)で冷却水温度Tが温度設定値TLより大きいと判定された場合にはS3に移行する。
【0028】
S2に移行した場合には、起動している差圧バルブ開度制御を停止し、既に停止している差圧バルブ開度制御はそのまま停止したままでS4に移行する。
S4では、ランキンサイクル回路4のポンプ18の駆動を停止し、既に停止している場合はそのまま停止したままでS5に移行する。
S5では、三方弁34を強制的に流路8d側の出口ポートを全開させると同時にバイパス路36側の出口ポートを全閉とする。
【0029】
一方、S1においてS3に移行した場合には、停止している差圧バルブ開度制御を起動させ、既に起動している差圧バルブ開度制御はそのまま起動させたままとする。
このようにして、S0において温度バルブ開度制御に係るメイン制御ルーチンが開始されると、S1,S2,S4,S5、又はS1及びS3の一連のステップが繰り返し実行される。
【0030】
以下、図3に示されるフローチャートを参照して上記S3において起動される差圧バルブ開度制御について説明する。
先ず、S00で差圧バルブ開度制御が開始されると、ポンプ18を運転してS10に移行する。
S10では、差圧センサ38で検出された差圧ΔPが所定の差圧設定値ΔPH以下であるか否かを判定する。判定結果が真(Yes)で差圧ΔPが所定の差圧設定値ΔPH以下と判定された場合にはS20に移行し、判定結果が偽(No)で差圧ΔPが所定の差圧設定値ΔPHより大きいと判定された場合にはS30に移行する。
【0031】
S20に移行した場合には、三方弁34を流路8d側に開駆動させると同時にバイパス路36側に閉駆動させる。
一方、S10においてS30に移行した場合には、三方弁34をバイパス路36側に開駆動させると同時に流路8d側に閉駆動させる。
このようにして、S00において差圧バルブ開度制御に係るサブ制御ルーチンが開始されると、S10及びS20、又はS10及びS30の一連のステップが繰り返し実行される。
【0032】
以上のように、本実施形態では、差圧バルブ開度制御を起動させることにより、熱交換ユニット38の前後の差圧ΔPが差圧設定値ΔPH以下になるように三方弁34が制御される。これにより、エンジン6の作動状況の変化によって冷却水の全流量Ftが変動しても、熱交換ユニット配分流量Fheを略一定或いはそれ以下に制限することができる。従って、熱交換ユニット38における冷却水の通水抵抗によって冷却水回路8の冷却水の循環が阻害されることはなく、ラジエータ26の冷却性能を維持することができる。
【0033】
しかも、本実施形態では、熱交換ユニット38の前後の差圧ΔPを直接監視することにより、差圧バルブ開度制御を含む流量配分制御の制御応答性が向上する。また、熱交換ユニット38におけるスケールの堆積に係る通水抵抗をも検知できるため、冷却水回路8を適正に且つ確実に機能させることができ、同時にランキンサイクル回路4を適正に機能させることができる。
【0034】
また、流量配分制御の操作端をリニア三方弁34とすることにより、冷却水の全流量Ftの変動領域すべてに亘って差圧センサ38の検知量に応じてリニア三方弁34の操作量の連続的な制御が可能となり、これにより、差圧バルブ開度制御の精度が向上し、ひいては冷却水回路及びランキンサイクル回路をより適正に機能させることができる。
更に、温度バルブ開度制御を起動させることにより、冷却水温度Tが温度設定値TL以下になると差圧バルブ開度制御は停止され、ランキンサイクル回路4のポンプ18の駆動を停止し、三方弁34を強制的に流路8d側に全開させると同時にバイパス路36側を全閉としている。すなわち、冷却水温度Tの低下時に、ランキンサイクル回路4の機能を停止するとともに、全流量Ft=熱交換ユニット配分流量Fhe、及びバイパス路配分流量Fb=0の関係式を成立させることにより、エンジン6の始動時には、蒸発器10において冷却水からの吸熱を行わず、且つ冷却水の全流量Ftを熱交換器22で加熱することができる。これより、エンジン6を迅速に暖機させることができ、エンジン6の始動時における燃費の悪化が大幅に改善される。従って、エンジン6の作動状況に拘らず、冷却水回路8及びランキンサイクル回路4の両方の機能を適切な時期に適切な環境でのみ適正に機能させることができる。
【0035】
次に、第2実施形態について説明する。
図4に示すように、当第2実施形態の廃熱利用装置46は、三方弁34に代わる操作端としてリニアポンプ(操作端、ポンプ)48を使用し、バイパス路36に逆止弁49を新たに設置したものであり、他は上記第1実施形態と同一の構成をなしているため、主としてこの上記第1実施形態と異なる点について説明する。
【0036】
ポンプ48は、差圧センサ40で検出される差圧ΔPに比例した回転数で連続的に可変駆動されるリニア電動式のポンプであって、差圧回転数制御を実施している。具体的には、差圧ΔPが差圧設定値ΔPH以下と判定された場合には、ポンプ48の回転数を増大させて流路8d側に冷却水を吐出して熱交換ユニット配分流量Fheを増大させる。一方、差圧ΔPが差圧設定値ΔPHより大きいと判定された場合には、ポンプ48の回転数を減少させて流路8d側への冷却水の吐出を減らしてバイパス路配分流量Fbを増大させる。
【0037】
また、上記第1実施形態と同様に、差圧回転数制御は温度回転数制御に支配されており、この温度回転数制御は、温度センサ42で検出された冷却水温度Tが温度設定値TL以下と判定された場合には、差圧回転数制御を停止してポンプ48の回転数を最大とし、冷却水温度Tが温度設定値TLより大きいと判定された場合には差圧回転数制御を起動する(流量配分制御手段)。
【0038】
このように、上記第1実施形態と同様、第2実施形態に係る廃熱利用装置48においても、エンジン6の作動状況の変化に拘らず、熱交換ユニット配分流量Fheを略一定或いはそれ以下に制限してラジエータ26の冷却性能を維持することができるとともに、エンジン6の暖機を迅速化でき、冷却水回路8及びランキンサイクル回路4の両方を適正に且つ確実に機能させることができる。
【0039】
特に当第2実施形態の場合には、操作端にポンプ48を使用することにより、ポンプ48の駆動圧を利用して多量の冷却水を熱交換ユニット38に向けて流入させることができる。また、バイパス路36に逆止弁49が設けられることにより、バイパス路36からの冷却水の逆流を好適に防止できる。従って、エンジン6の暖機の更なる迅速化が図れ、冷却水回路及びランキンサイクル回路の機能を更に適正化できる。
【0040】
次に、第3実施形態について説明する。
図5に示すように、当第3実施形態の廃熱利用装置50は、上記第1実施形態と同様に三方弁34を操作端として使用する他、電磁弁(第2操作端)52,54を新たな操作端として使用し、蒸発器10のみをバイパスするバイパス路(第2バイパス路)56を有する点で上記第1実施形態とは異なる。
【0041】
電磁弁52,54は、1つの入口ポートと1つの出口ポートとを有する2方電磁弁であって、電磁弁52,54の駆動部はそれぞれECU44に電気的に接続されている。そして、駆動部に入力されるオンオフ接点信号に応じて弁体を開閉駆動することにより、冷却水の流入と流入阻止とを択一的に選択可能に構成されている。
詳しくは、電磁弁52はバイパス路56に介挿されており、このバイパス路56は、熱交換器22から蒸発器10にかけて延設された冷却水回路8の流路8eから分岐され、蒸発器10のみを迂回してバイパス路36に合流している。一方、電磁弁54は、バイパス路32,36の共用路8fに介挿されている。
【0042】
当第3実施形態では、上記第1実施形態と同様に温度バルブ開度制御及び差圧バルブ開度制御が実施されるものの、これら制御において三方弁34に加え、電磁弁52,54が駆動される。
以下、図6に示されるフローチャートを参照して本実施形態の温度バルブ開度制御について説明する。なお、これら制御の制御ルーチンにおいて第1実施形態と異なるステップはS4に代わるS4’と、新たに加えられたS6のみであり、これら各ステップを主に説明し、温度バルブ開度制御に係るその他のステップや差圧バルブ開度制御に係る各ステップはついては説明を省略する。
【0043】
S0で温度バルブ開度制御が開始されるとS1に移行し、S1での判定結果が真(Yes)で冷却水温度Tが温度設定値TL以下と判定された場合にはS2に移行し差圧バルブ開度制御を停止した後、S4’に移行する。一方、判定結果が偽(No)で冷却水温度Tが温度設定値TLより大きいと判定された場合にはS3に移行し差圧バルブ開度制御を実行した後、S6に移行する。
【0044】
S4’では、電磁弁52を開駆動させると同時に電磁弁54を閉駆動させてからS5に移行する。
一方、S6に移行した場合には、電磁弁52を閉駆動させると同時に電磁弁54を閉駆動させる。
このようにして、S0において温度バルブ開度制御に係るメイン制御ルーチンが開始されると、S1,S2,S4’,S5、又はS1,S3,S6の一連のステップが繰り返し実行され、S3において差圧バルブ開度制御が実行されると、S00で差圧バルブ開度制御に係るサブ制御ルーチンが開始され、上記第1実施形態と同様の一連のステップが繰り返し実行される(流量配分制御手段)。
【0045】
このように、上記第1,第2実施形態と同様、第3実施形態に係る廃熱利用装置50においても、エンジン6の作動状況の変化に拘らず、熱交換ユニット配分流量Fheを略一定或いはそれ以下に制限してラジエータ26の冷却性能を維持することができるとともに、エンジン6の暖機を迅速化でき、冷却水回路8及びランキンサイクル回路4の両方を適正に且つ確実に機能させることができる。
【0046】
特に当第3実施形態の場合には、エンジン6の暖機時には、電磁弁52を開駆動し、54を閉駆動することにより、熱交換器22を経由した冷却水を蒸発器10のバイパス路56に流すことができ、ポンプ18の停止、すなわちランキンサイクル回路4の停止を実行しなくても、蒸発器10において冷却水の吸熱が行わないようにすることができる。
また、エンジン6の暖機時に冷却水が蒸発器10を通水しないことにより、冷却水回路8全体からみた圧力損失要素が低減される。従って、エンジン6の暖機時における冷却水回路8の冷却水の循環が更に促進され、エンジン6の暖機の更なる迅速化が図れ、冷却水回路及びランキンサイクル回路の機能を大幅に適正化できる。 以上で本発明の実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
【0047】
例えば、上記各実施形態では、差圧センサ40及び温度センサ42で検出された信号に基づいて三方弁34やポンプ48たる操作端を駆動制御することにより、熱交換ユニット38への流量配分制御をしている。すなわち、ラジエータ24での冷却性能を維持し、エンジン6の暖機の迅速化を図るべく実施される流量配分制御は、冷却水回路8において冷却水に加担される熱量制御を実施しているともいえる。
【0048】
これより、温度センサ42で検出された冷却水温度からランキンサイクル回路4へ供給する熱量をECU44内で予め演算し、この演算された熱量を略一定に保持すべく、上記操作端を駆動制御しても良く、この場合にも冷却水回路及びランキンサイクル回路の機能を大幅に適正化できるとの効果を奏する。なお、差圧センサ40で検出された熱交換ユニット38の前後の差圧から、熱交換器22を経由して蒸発器10に流入する冷却水の流量をECU44内で演算することが可能であり、これにより実際の冷却水温度に冷却水の流量を乗じ、冷却水に加担される総熱量を演算できる。
【0049】
また、上記第3実施形態では、操作端として三方弁34を使用しているが、上記第2実施形態での操作端であるポンプ48を代わりに使用しても良く、この場合でもエンジン6の暖機の更なる迅速化が図れ、冷却水回路及びランキンサイクル回路を適正に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の廃熱利用装置を示した模式図である。
【図2】図1のECUで実行される温度バルブ開度制御の制御ルーチンを示したフローチャートである。
【図3】図1のECUで実行される差圧バルブ開度制御の制御ルーチンを示したフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る内燃機関の廃熱利用装置を示した模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る内燃機関の廃熱利用装置を示した模式図である。
【図6】図5のECUで実行される温度バルブ開度制御の制御ルーチンを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
2,46,50 廃熱利用装置
4 ランキンサイクル回路
6 エンジン(内燃機関)
8 冷却水回路
10 蒸発器
12 膨張機
14 凝縮器
18 ポンプ
22 排ガス熱交換器(熱交換器)
24 ラジエータ
34 リニア三方弁(操作端)
36 バイパス路
38 熱交換ユニット(熱交換領域)
40 差圧センサ
42 温度センサ
48 リニアポンプ(操作端,ポンプ)
52,54 電磁弁(第2操作端)
56 バイパス路(第2バイパス路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水により冷却される内燃機関と、
前記冷却水を熱媒体と熱交換させて該冷却水を加熱する熱交換器、該熱交換器を経由した冷却水を冷却するラジエータを有し、前記内燃機関の作動状態に応じた流量の冷却水が前記内燃機関、前記熱交換器、前記ラジエータを順次経由して循環する冷却水回路と、
前記熱交換器を経由した冷却水と熱交換して作動流体を加熱するとともに該冷却水の流れ方向からみて前記ラジエータと直列に配置される蒸発器、該蒸発器を経由した作動流体を膨張させて駆動力を発生する膨張機、該膨張機を経由した作動流体を凝縮させる凝縮器を含み、該凝縮器を経由した作動流体が前記蒸発器を経由して循環するランキンサイクル回路とを備え、
前記冷却水回路は、前記ラジエータの手前で前記熱交換器及び前記蒸発器からなる熱交換領域を形成し、該熱交換領域をバイパスするバイパス路と、前記内燃機関を経由した冷却水を前記バイパス路と前記熱交換領域とに配分して流入させることにより、前記冷却水回路における前記冷却水の循環を維持しながら前記熱交換領域へ流入する冷却水の流量を制限する流量配分制御手段とを有することを特徴とする内燃機関の廃熱利用装置。
【請求項2】
前記流量配分制御手段は、前記熱交換領域の前後の差圧を検出する差圧センサと、該差圧センサで検出された差圧に応じて前記熱交換領域へ流入する冷却水の流量を制限すべく駆動される操作端とを含むことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の廃熱利用装置。
【請求項3】
前記ランキンサイクル回路は、前記作動流体を循環させるべく駆動されるポンプを更に含み、
前記流量配分制御手段は、前記冷却水回路を循環する冷却水の温度を検出する温度センサを更に含み、該温度センサで検出された冷却水の温度が所定の温度以下のとき、前記ポンプの駆動を停止するとともに、前記内燃機関を経由した冷却水を前記熱交換領域のみに流入させるべく前記操作端を駆動することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の廃熱利用装置。
【請求項4】
前記流量配分制御手段は、前記冷却水回路を循環する冷却水の温度を検出する温度センサと、前記蒸発器のみをバイパスする第2バイパス路と、該第2バイパス路に設けられ、前記温度センサで検出された温度に応じて前記蒸発器へ流入する冷却水の流量を制限すべく駆動される第2操作端とを更に含み、前記温度センサで検出された冷却水の温度が所定の温度以下のとき、前記内燃機関を経由した冷却水を前記熱交換器のみに流入させるべく前記操作端及び前記第2操作端を駆動することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の廃熱利用装置。
【請求項5】
前記操作端は、前記差圧センサから検出された差圧に応じて該操作端の作動位置が連続的に可変駆動されるリニア三方弁であることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の内燃機関の廃熱利用装置。
【請求項6】
前記操作端は、前記差圧センサから検出された差圧に応じて連続的に可変駆動されるポンプであることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の内燃機関の廃熱利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−196342(P2008−196342A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30478(P2007−30478)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】