説明

内燃機関の排気ガスエネルギー回収装置

【課題】内燃機関にとって排気タービンや熱交換器による排気ガスエネルギー回収装置は、排気ガス系統の抵抗増加要因となり、抵抗が内燃機関の許容値を超えると、排気ガスの温度は高温となって異常などの不具合を発生させる。
【解決手段】内燃機関1の排気煙道4に設置され、内燃機関から排出される排気ガスの運動エネルギーを回転エネルギーに変換する排気タービン5と、内燃機関1から排出される排気ガスの温度を検出する温度センサ8と、温度センサで検出した排気ガス温度に基づき、排気タービンのタービン翼の迎え角を可変制御する制御装置9とを備え、排気ガス温度が高くなれば排気タービンのタービン翼の迎え角を減少してガス抵抗を小さくし、排気ガス温度を内燃機関の安定運転領域内に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関が排出する排気ガスのエネルギーを電気エネルギーとして回収する内燃機関の排気ガスエネルギー回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンやガスエンジン等の往復動内燃機関を使用した自家用発電設備から排出される排気ガスのエネルギーを回収する装置として、従来から種々のものが提案されている。
例えば、往復動内燃機関から過給機を経た排気ガスを熱交換機に送り込み、水と熱交換させて蒸気を生成し、生成された蒸気を給湯や暖房その他の熱を必要とするプロセスに供給すると共に、熱交換機で生成された蒸気を往復動内燃機関にも供給するようにして、排気ガスの熱エネルギーを無駄なく回収するようにしたエネルギープラントが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、内燃機関の排気ガスにより駆動される排気タービンの回転軸をクラッチを介して発電機に連結すると共に、該発電機に蓄電器を接続して、排気ガスのエネルギーを排気タービンと発電機で電気エネルギーに変換し、その電気エネルギーを蓄電器に貯えるようにして、機関の全運転域に亘って排気エネルギーを有効利用するようにしたものが知られている(特許文献2参照)。
また、内燃機関から排出される排気ガスによりターボ過給機を回転させ、更に該ターボ過給機から排出される排気ガスにより排気タービンを回転させ、排気タービンで回収したエネルギーで発電機やポンプを駆動したり、内燃機関の主軸の動力として還元したりして、負荷変動に関係なく排気ガスの余剰エネルギーを効果的に回収するようにしたものが知られている(特許文献3参照)。
【0004】
さらに、エンジンの排気管内に発電機を有する排気タービンを設けると共に、該排気タービンの入口部と出口部にそれぞれ設けて排気ガスの温度を検出する温度センサと、排気タービンの回転数を検出する速度センサとを設け、これらのセンサからの信号により、排気タービンに供給する排気ガスに対して排気タービン軸から最高の出力をとり得る運転状態に排気タービンの速度が得られるように発電機の負荷を制御して、排気エネルギーの回収の効率を向上させるようにしたものが知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−239810号公報
【特許文献2】特開昭61−4814号公報
【特許文献3】特開昭62−13722号公報
【特許文献4】特公平4−28886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の発電用往復動内燃機関の排気ガスエネルギーは、排気マニホールド部に設けられた過給機により一部回収され、さらにエネルギーを回収するため、排ガス熱交換器で蒸気を生成したり排気タービンに連結された発電機で電気を生成したりして熱回収する方法がとられている。これは往復動内燃機関の排気ガスは煙道を通って大気放出するだけの運動エネルギーを残しつつ、エネルギーを回収することを考えたものだが、排気煙道の条件はプラントごとに異なり、最適なエネルギー回収は困難な場合があった。
【0007】
また、往復動内燃機関にとって排気タービンや熱交換器による排気ガスエネルギー回収装置は、排気ガス系統の抵抗増加要因となっており、排気ガスエネルギー装置でエネルギーを回収すればするほど排気ガス抵抗は大きくなる。内燃機関から排気煙道出口部の大気開放部までの排気ガス系統の合計抵抗値が往復動内燃機関の許容値を超えると、排気ガスの温度は高温となって内燃機関や排気タービンに異常などの不具合を発生させてしまっていた。
【0008】
この発明は、内燃機関の排気ガスエネルギーを排気煙道に設置した排気タービンで回収する設備において、上記した課題を解決するためになされたものであり、プラントごとに異なる排気煙道の条件下において、内燃機関が不具合を生じない範囲内で最も効率よく排気ガスのエネルギーを電気エネルギーとして回収できる内燃機関の排気ガスエネルギー回収装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る内燃機関の排気ガスエネルギー回収装置は、内燃機関の排気煙道に設置され、内燃機関から排出される排気ガスの運動エネルギーを回転エネルギーに変換する排気タービンと、この排気タービンに減速機を介して機械的に接続されている発電機と、この発電機で得た電気エネルギーを商用周波数に変換するインバータと、内燃機関から排出される排気ガスの温度を検出する温度センサと、この温度センサで検出した排気ガス温度に基づき、排気タービンのタービン翼の迎え角を可変制御する制御装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、内燃機関の排気ガス温度を温度センサで監視し、排気ガス温度に基づいて排気タービンのタービン翼の迎え角を可変制御することで、排気タービンの排気ガス抵抗を減らすことができるので、内燃機関の排気ガス温度が内燃機関の安定運転領域内にとどまるように制御でき、内燃機関が排気温度異常などの不具合を発生させることなく、且つ排気タービンのエネルギー回収量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1を示す排気ガスエネルギー回収装置の全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における排気ガスエネルギー回収装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1における内燃機関の排気ガスエネルギー回収装置を図1および図2に基づいて説明する。
図1はこの発明の実施の形態1を示す排気ガスエネルギー回収装置の全体構成図であり、図1において、ディーゼルエンジンやガスエンジン等の往復動内燃機関1は、その往復運動を回転運動に変えて往復動内燃機関1と機械的に接続された三相交流発電機2を回転させ、三相交流発電機2は回転エネルギーを電気的エネルギーへと変換し、電力を発生させる。三相交流発電機2からの電気エネルギーの電力は自家用発電設備などとして使用される。往復動内燃機関1からの排気ガスは排気マニホールド3を介して排気煙道4に導かれ、往復動内燃機関1の排気ガスは排気煙道4から大気へと放出される。
【0013】
排気煙道4の出口部(大気放出部)付近には排気タービン5が設置され、排気タービン5はケーシングとこのケーシング内に回転可能に配置されたタービン翼で構成されている。この排気タービン5は往復動内燃機関1の排気ガスをケーシング内に導入してタービン翼を回転駆動させ、排気ガスの運動エネルギーをタービン翼により回転エネルギーに変換する。なお、排気タービン5はタービン翼の迎え角を可変できるような機構を有している。
排気タービン5のタービン翼に一体の回転軸には発電機6の回転軸が図示しない減速機を介して機械的に接続され、発電機6は排気タービン5によって回収された回転エネルギーを電気エネルギーへと変換する。発電機6の回転により得た電気エネルギーはインバータ7により商用周波数に変換され、その出力は他の電気負荷に利用される。
【0014】
往復動内燃機関1の排気ガス出口付近には、往復動内燃機関1から排出される排気ガスの温度を検出する温度センサ8が設けられ、温度センサ8で検出した排気ガス温度の信号は制御装置9に入力される。制御装置9は温度センサ8から入力された排気ガス温度信号と、あらかじめ決められた設定値とを比較演算して、往復動内燃機関1からの排気ガス温度が目標範囲内に収まるように、排気タービン5のタービン翼の迎え角を可変制御する制御信号を排気タービン5に出力するものである。
【0015】
排気タービン5のタービン翼の迎え角を可変制御する手段としては、制御装置9から迎え角制御信号を排気タービン5に送り、排気タービン5に設けられた例えばモータとギヤなどを制御してタービン翼の迎え角を変えるようにする。
また、制御装置9で設定されるあらかじめ決められた設定値とは、往復動内燃機関1の排気ガス温度が往復動内燃機関1の安定運転領域内にとどまるような温度の値である。
【0016】
次にこの発明の全体構成図における動作を、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
ステップST1は、往復動内燃機関1が始動して三相交流発電機2により電気エネルギーを供給し、エネルギープラントとして稼動することでスタートする。
ステップST2は、エネルギープラントの電気エネルギー供給開始に伴い、往復動内燃機関1は定格速度で運転する。往復動内燃機関1の始動時は、排気タービン5のタービン翼の迎え角は排気ガス系統の抵抗を最小とする迎え角となっている。このガス抵抗を最小とする迎え角とは、タービン翼が排気ガスに接する面積を小さくなるような角度にすることである。
【0017】
ステップST3は、往復動内燃機関1が運転し、プラントにエネルギーを供給するようになると、排気ガスが排気煙道4を通って大気へ放出される。その後、排気煙道4に設置された排気タービン5のタービン翼の迎え角を増加させ、タービン翼が排気ガスに接する面積を大きくする。タービン翼の迎え角を増加させると、必然的にガス抵抗も大きくなる。
排気タービン5のタービン翼の迎え角増加は、制御装置9から出力される迎え角制御信号により排気タービン5のタービン翼の迎え角を変えることで行われる。
【0018】
ステップST4は、排気ガスの運動エネルギーは排気タービン5の回転エネルギーに変換され、排気タービン5の回転エネルギーは発電機6の電気エネルギーに変換され、発電機6の電気エネルギーはインバータ7で商用周波数に電力変換されて、電力として回収される。
ステップST5は、運転中の往復動内燃機関1の排気ガス温度は温度センサ8により常時検出され、制御装置9により温度センサ8で検出された排気ガス温度があらかじめ決められた設定値よりも大きいかどうかを比較演算する。
【0019】
ステップST5において、制御装置9の比較演算の結果、排気ガス温度があらかじめ設定された設定値(排気ガス温度範囲下限値)よりも低い場合(NO)、ステップST3に戻って、制御装置9は排気タービン5による運動エネルギー回収量増加を目的とし、排気タービン5のタービン翼の迎え角を増加する制御信号を排気タービン5に送る。こうして排気ガス温度が排気ガス温度の設定範囲内になるまで、迎え角増加の制御信号は送られる。
【0020】
一方ステップST5において、制御装置9の比較演算の結果、排気ガス温度があらかじめ設定された設定値(排気ガス温度範囲上限値)よりも高い場合(YES)、ステップST6に進み、制御装置9は排気タービン5による運動エネルギー回収量減少を目的とし、排気タービン5のタービン翼の迎え角を減少する制御信号を排気タービン5に送る。
排気タービン5のタービン翼の迎え角が減少すれば、タービン翼が排気ガスに接する面積は小さくなり、必然的にガス抵抗は小さくなって往復動内燃機関1から排出される排気ガスの温度は下がる。
【0021】
ステップST7は、運転中の往復動内燃機関1の排気ガス温度は温度センサ8により常時検出され、制御装置9により温度センサ8で検出された排気ガス温度があらかじめ決められた設定値よりも小さいかどうかを比較演算する。
ステップST7において、制御装置9の比較演算の結果、排気ガス温度があらかじめ設定された設定値(排気ガス温度範囲下限値)よりも高い場合(NO)、ステップST6に戻り、制御装置9は排気タービン5による運動エネルギー回収量減少を目的とし、排気タービン5のタービン翼の迎え角を減少する制御信号を排気タービン5に送る。ステップST6での動作は上記した通りである。
【0022】
一方ステップST7において、制御装置9の比較演算の結果、排気ガス温度があらかじめ設定された設定値(排気ガス温度範囲上限値)よりも低い場合(YES)、ステップST8に進み、運転中の往復動内燃機関1の排気ガス温度は温度センサ8により常時監視された状態を維持し、元に戻る。
なお以上は内燃機関として往復動内燃機関1について説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
以上のようにこの発明は、内燃機関1の排気ガス温度を温度センサ8により常時監視し、排気ガス温度に基づいて排気タービン5のタービン翼の迎え角を制御するようにしているから、排気タービン5によるエネルギー回収量は、制御装置9により排気ガス温度異常などが発生しない範囲に制御されるため、内燃機関1の不具合が発生することなく最適な排気ガス運動エネルギー回収を実現できる。
【符号の説明】
【0024】
1:往復動内燃機関 2:三相交流発電機
3:排気マニホールド 4:排気煙道
5:排気タービン 6:発電機
7:インバータ 8:温度センサ
9:制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気煙道に設置され、前記内燃機関から排出される排気ガスの運動エネルギーを回転エネルギーに変換する排気タービンと、この排気タービンに減速機を介して機械的に接続されている発電機と、この発電機で得た電気エネルギーを商用周波数に変換するインバータと、前記内燃機関から排出される排気ガスの温度を検出する温度センサと、この温度センサで検出した排気ガス温度に基づき、前記排気タービンのタービン翼の迎え角を可変制御する制御装置とを備えた内燃機関の排気ガスエネルギー回収装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記温度センサで検出した排気ガス温度とあらかじめ決めた設定値とを比較演算し、前記排気ガス温度が設定値よりも高いときは、前記排気タービンのタービン翼の迎え角を減少させるようにした請求項1に記載の内燃機関の排気ガスエネルギー回収装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記温度センサで検出した排気ガス温度とあらかじめ決めた設定値とを比較演算し、前記排気ガス温度が設定値よりも低いときは、前記排気タービンのタービン翼の迎え角を増加させるようにした請求項1または請求項2に記載の内燃機関の排気ガスエネルギー回収装置。
【請求項4】
前記温度センサは、前記内燃機関の排気ガス出口付近に設けられた請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関の排気ガスエネルギー回収装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−261382(P2010−261382A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113514(P2009−113514)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】