説明

内燃機関の排気装置

【課題】 アクチュエータの動力を利用してバルブ本体5を全閉作動させる場合、エンジンの排気圧の影響を受け難くすることで、バルブ全閉時にモータが必要とするトルクを小さくすることを課題とする。
【解決手段】 ハウジングの仕切り壁3を貫通する連通孔4の開口周縁には、弓形状のシート凹部6が設けられている。このシート凹部6の底面には、所定の曲率半径を有する円弧状の凹曲面15が設けられている。また、ウェイストゲートバルブのバルブ本体5の表面には、凹曲面15の曲率半径と略同一曲率半径を有する円弧状の凸曲面14が設けられている。ウェイストゲートバルブは、バルブ本体5の全閉作動時に、連通孔4を流通する排気流方向に対して垂直な方向にバルブ本体5が回転して、バルブ本体5とシート凹部6とが曲面接触することで、連通孔4を閉じるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気装置に関するもので、特にターボ過給機を備えた内燃機関の過給圧を制御する過給圧制御装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、内燃機関(エンジン)のターボチャージャ、特にタービンハウジングの内部には、ターボチャージャの過給圧または排気圧が過大とならないように、タービンホイールを迂回(バイパス)するバイパス流路を開閉するウェイストゲートバルブが設置されている。
このように、タービンハウジングに形成されるバイパス流路をウェイストゲートバルブによって開閉するように構成した排気装置(内燃機関の排気装置)が公知である(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の排気装置は、アクチュエータの動力を利用してウェイストゲートバルブのバルブ本体を開弁方向または閉弁方向にスライドさせることで、バイパス流路の開口面積を変更するように構成されている。なお、特許文献1には、アクチュエータの具体的な構成が何も記載されていない。
【0003】
特許文献1に記載の排気装置においては、バルブ本体の接触面とタービンハウジングの接触面とが対向して配置されている。また、タービンハウジングの接触面およびバルブ本体の接触面は、バルブ本体のスライド方向に対して所定角度傾斜している。
そして、タービンハウジングの接触面の傾斜角とバルブ本体の接触面の傾斜角とが等しいため、アクチュエータがバルブ本体を開弁方向に駆動すると、タービンハウジングの接触面に対してバルブ本体が略平行に移動(スライド)する。これにより、タービンハウジングの接触面とバルブ本体の接触面との距離が変化する。このように、タービンハウジングの接触面とバルブ本体の接触面との距離を変化させることで、排気ガスの流量が変更される。
【0004】
また、タービンハウジングの内部に形成されるバイパス流路をウェイストゲートバルブによって開閉するように構成した排気装置が公知である(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に記載のウェイストゲートバルブは、タービンハウジングの弁座に着座可能なバルブ本体、およびこのバルブ本体と連結する支持アームを備えている。このウェイストゲートバルブは、一端が回転軸に支持され、回転軸の周りに支持アームを介して回転自在に支持されている。
特許文献2に記載の排気装置は、ウェイストゲートバルブのバルブ本体がタービンハウジングの弁座に当接する全閉状態から、回転軸の側端面と弁座の側面部とにより形成される隙間の開口面積が、バルブ本体と弁座との接触面積よりも小さくなるように規制されるので、バルブ本体の開度変化に対する開口面積の変化が緩慢になる。これにより、バルブ本体が全閉状態から開弁し始める開弁初期における排気ガスの流量の急激な変化を防ぐことができるという効果を備えている。
【0005】
[従来の技術の不具合]
ところが、特許文献1に記載のウェイストゲートバルブにおいては、バルブ本体を略平行移動させる必要があるため、エンジンより排出される高温の排気ガスが流通する高温環境下で使用されるタービンのバイパスバルブとしての使用が困難となるという問題がある。
また、特許文献2に記載の排気装置においては、バルブ本体の結合部(凸状部)とこれを拘束する支持アームとの間に隙間(ガタ)が設けられていないと、バルブ本体と支持アームとの線膨張係数の差により引っ掛かり、タービンハウジングの接触面に対してバルブ本体が傾く可能性がある。これにより、バルブ本体の開度変化に対して開口面積が変化する特性が乱れるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の排気装置においては、エンジンの排気圧に対して支持アームの長さに比例したモーメントを受けるため、バルブ本体を全閉動作させる際に必要とするトルクが大きい。そして、バルブ本体を閉弁する際に、排気圧力の影響をバルブ本体が受けると、バルブ本体を全閉作動させる全閉作動時間が長くなるので、ウェイストゲートバルブの閉弁応答性が悪い。なお、ウェイストゲートバルブの閉弁応答性を向上させるためには、支持アームを介してバルブ本体を開閉動作させるバルブ駆動装置の動力源であるモータ等の体格を大型化する必要がある。
また、バルブ本体を全閉動作させる際に必要とするトルクがバルブ径に比例して大きくなるので、バルブ径を現状のサイズよりも大きくすることができない。これにより、排気ガスのバイパス流量を増加できないという問題がある。
また、バルブ本体の開度変化に対する開口面積の変化が大きく、細やかな流量制御が難しいという問題がある。
【0007】
ここで、排気制御弁の弁体として使用されるバルブ本体は、燃焼残滓やカーボン等の粒子状物質(煤、煤に付着している炭化水素、黒煙や不完全燃焼物等の粉末状固定微粒子:パティキュレート)が含まれる排気ガスが流れる排気通路の内部に開閉自在に収容されている。このため、エンジンの運転時に、排気ガス中に含まれる粒子状物質等のデポジットが、バルブ本体の表面またはハウジングの流路壁面に付着して堆積する可能性がある。
特に、ウェイストゲートバルブのバルブ本体とタービンハウジングの弁座との線接触によりバイパス流路をシールしている。これにより、バルブ全閉時にバルブ本体と弁座との間にデポジット等の異物が噛み込むと、バルブ本体と弁座との線接触シール部に環状隙間が形成される。また、バルブ本体がタービンハウジングの弁座に着座(線接触)する毎に、バルブ本体または弁座が摩耗により凹むため、バルブ本体と弁座との線接触シール部の周方向の一部に隙間が形成される可能性がある。
したがって、バルブ本体と弁座との線接触シール部にシール不良が発生するため、バイパス流路に流入する排気ガスの流れのシール効果が低下するので、バルブ全閉時における排気ガス洩れ流量が増えるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−037994号公報
【特許文献2】特開2009−092026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アクチュエータの動力を利用してバルブ本体を全閉作動させる場合、内燃機関の排気圧の影響を受け難くすることで、バルブ全閉時にアクチュエータが必要とするトルクを小さくすることのできる内燃機関の排気装置を提供することにある。
また、バルブ本体とシート凹部とを曲面接触させることで、バルブ本体またはハウジングの流路壁面に付着したデポジット等の異物の噛み込みや摩耗を要因とする凹み等による悪影響を受け難くすることのできる内燃機関の排気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明(内燃機関の排気装置)は、ハウジングと、排気制御弁と、アクチュエータとを備えている。
ハウジングには、内燃機関の排気通路に連通する流路、この流路を2つの第1、第2流路に区画する隔壁、および第1流路と第2流路とを連通するように隔壁を貫通する連通路が設けられている。
排気制御弁には、連通路を開閉するバルブ本体、およびこのバルブ本体を開閉動作させるアームが設けられている。
アクチュエータは、アームを介して、バルブ本体をその移動方向(開弁方向または閉弁方向)に駆動するように構成されている。
隔壁に形成される連通路の開口周縁(例えば第1流路側開口周縁または第2流路側開口周縁)には、バルブ本体が着座可能な弓形(ゆみなり)状のシート凹部が設けられている。このシート凹部には、所定の曲率半径を有する(ように湾曲して形成された)円弧状の凹曲面(ハウジングシート面)が設けられている。また、バルブ本体には、シート凹部の凹曲面の曲率半径と同程度の曲率半径を有する(ように湾曲して形成された)円弧状の凸曲面(バルブシール面)が設けられている。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、連通路の中心線方向に垂直な方向にバルブ本体が回転(往復移動)して連通路を開閉(連通路の開口面積を可変)し、且つアクチュエータの動力を利用してバルブ本体を全閉作動(閉弁方向に移動)させる場合、バルブ本体の凸曲面とシート凹部の凹曲面とが曲面接触して2つの第1、第2流路間をシールするように構成されている。
これによって、アクチュエータの動力を利用してバルブ本体を全閉作動させる場合、連通路の中心線方向、つまり連通路を流れる排気流方向に対して垂直な方向にバルブ本体が回転してバルブ本体の凸曲面がシート凹部の凹曲面に着座する。これにより、バルブ本体が内燃機関の排気圧の影響を受け難くなるので、バルブ全閉時にアクチュエータが必要とするトルクを小さくすることができる。
【0012】
また、請求項1に記載の発明によれば、バルブ全閉時にバルブ本体とシート凹部とを曲面接触させて2つの第1、第2流路間をシールするように構成されている。
これによって、バルブ本体とシート凹部とのシール部における接触面積を従来の線接触シール部と比べて飛躍的に増大させることができる。よって、バルブ全閉時にデポジット等の異物をバルブ本体とシート凹部との間に噛み込んだ場合であっても、バルブ本体とシート凹部との曲面接触によりシール効果を維持することができる。これにより、従来の線接触シールのようなシール効果の低下はない。
また、バルブ本体またはシート凹部が摩耗により凹んで、バルブ本体とシート凹部とのシール部の一部に隙間が形成された場合であっても、バルブ本体とシート凹部との曲面接触によりシール効果を維持することができる。これにより、従来の線接触シールのようなシール不良が発生することはない。
したがって、バルブ本体とシート凹部との曲面シール構造を採用することにより、バルブ本体またはハウジングの流路壁面に付着したデポジット等の異物の噛み込みや摩耗を要因とする凹み等による悪影響を受け難くなる。この結果、バルブ全閉時における排気ガスの洩れ流量を低減することができる。あるいはバルブ全閉時における排気ガスの洩れを防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、バルブ本体の凸曲面形成方向の中心位置を凸曲面の円弧中心とし、シート凹部の凹曲面形成方向の中心位置を凹曲面の円弧中心としたとき、凸曲面の円弧中心と凹曲面の円弧中心とが、(例えば連通路の中心線方向に垂直な方向に)オフセットして配置されている。
これによって、バルブ本体をその移動方向へ回転運動させることにより、バルブ本体の凸曲面とシート凹部の凹曲面とを曲面接触させることができる。これにより、2つの第1、第2流路間がシールされるため、連通路が閉じられる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、アームは、連通路の中心線方向に垂直な方向に延びる回転軸を有している。
請求項4に記載の発明によれば、回転軸の中心線の位置をバルブ本体またはアームの回転中心とし、凸曲面の曲率半径の中心位置を凸曲面の曲率中心とし、凹曲面の曲率半径の中心位置を凹曲面の曲率中心としたとき、バルブ本体またはアームの回転中心と凸曲面の曲率中心または凹曲面の曲率中心とが、(例えば連通路の中心線方向に垂直な方向に)オフセットして配置されている。
これによって、バルブ本体に開弁方向の回転運動を与えると、バルブ本体の開度変化(開度の増加)に従って、バルブ本体の凸曲面がシート凹部の凹曲面から徐々に離れていく。また、バルブ本体に閉弁方向の回転運動を与えると、バルブ本体の開度変化(開度の減少)に従って、バルブ本体の凸曲面がシート凹部の凹曲面へ徐々に接近していく。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、排気制御弁のバルブ本体には、バルブ本体の凸曲面側に対して逆側の背面から突出した結合部が設けられている。排気制御弁のアームには、バルブ本体の結合部の周囲を取り囲むことでバルブ本体を拘束する環状(または部分環状)の拘束部が設けられている。
ここで、結合部の形状を多角柱状または非円形状とし、拘束部の形状を多角環状または非円環状とした場合には、バルブ本体の結合部とアームの拘束部とを連結(結合)した際に、アームの拘束部に対してバルブ本体の結合部の相対的な移動が不能となる。これにより、仮にアームの拘束部とバルブ本体の結合部との間に隙間(ガタ)が設けられていても、バルブ本体の動作不良の懸念はなく、バルブ本体の動作信頼性を向上することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、バルブ本体の結合部とアームの拘束部との間には、熱歪みによる変形を吸収するための隙間(ガタ)が設けられている。
これによって、高温の排気ガスが流通する排気通路のような高温環境でバルブ本体およびアームが使用された場合であっても、バルブ本体の結合部とアームの拘束部との間の隙間(ガタ)により熱歪みによる変形を吸収することができる。これにより、バルブ全閉時に、バルブ本体の凸曲面とシート凹部の凹曲面とがズレる等の不具合(不一致)を防止することができる。
したがって、2つの第1、第2流路間のシール不良の発生を防止できるので、連通路を確実に閉じることができる。この結果、バルブ全閉時における排気ガスの洩れ流量を低減することができる。あるいはバルブ全閉時における排気ガスの洩れを防止することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、連通路の幅方向の中心を通り、排気ガスの流れ方向に延びる中心線を連通路の中心線とし、バルブ本体の凸曲面形成方向の中心を通り、バルブ本体をその板厚方向に貫く中心線をバルブ本体の中心線としたとき、連通路の中心線とバルブ本体の中心線とが、連通路の中心線方向に垂直な方向にオフセットして配置されている。
これによって、内燃機関の排気圧がバルブ本体に加わると、バルブ本体が閉まる方向に力が作用する。これにより、内燃機関の排気圧が大きければ大きい程、バルブ本体が閉まる方向に作用する力が大きくなり、2つの第1、第2流路間のシール性能が高まる。つまり排気制御弁のバルブ本体にセルフシール効果が備わる。
【0018】
請求項8に記載の発明によれば、シート凹部は、一方の流路(例えば第1流路または第2流路)側から他方の流路(例えば第2流路または第1流路)側へ向けて弓形(ゆみなり)状に凹むように設けられている。
請求項9に記載の発明によれば、シート凹部には、バルブ本体の移動方向(開弁方向または閉弁方向)に延びる一対の段差が設けられている。一対の段差は、シート凹部の凹曲面を挟んで対向するように(凹曲面の両側にそれぞれ)配置されている。
請求項10に記載の発明によれば、バルブ本体は、一対の段差間に摺動可能に嵌め合わされている。
これによって、シート凹部に設けられる一対の段差が、バルブ本体をその移動方向(開弁方向または閉弁方向)に摺動自在に案内(誘導)するガイド(バルブガイド)となる。これにより、例えばバルブ本体の結合部とアームの拘束部とをかしめ等の結合方法を用いて結合する必要がない。つまり、バルブ本体とアームとを単純な凹凸嵌合等の結合方法を用いて結合できるので、排気制御弁の製造コストを低減でき、且つ生産性を向上することができる。
【0019】
請求項11に記載の発明によれば、隔壁に形成される連通路の開口周縁(例えば第1流路側開口周縁または第2流路側開口周縁)の一部には、バルブ本体が全閉状態から開弁し始める開弁初期における特性を定めるための面取りが設けられている。
これによって、バルブ本体が全閉状態から開弁し始める開弁初期における特性(バルブ本体の開度変化に対して開口面積が変化する特性)を改善することができる。
また、連通路の開口周縁の一部に面取りを施しているので、連通路から第1流路または第2流路へ流入する排気ガスの流れの剥離を抑えることができる。これにより、排気ガスのエネルギー損失を低減することができると共に、気流音等の騒音を低減することができる。
【0020】
請求項12に記載の発明によれば、ハウジングの内部に回転自在に収容されるタービンホイールを有するターボ過給機を備えている。
ハウジングの、タービンホイールよりも排気流方向の下流側には、排気出口流路が設けられている。
第1流路とは、排気ガスをタービンホイールへ導く排気入口流路のことである。この排気入口流路は、タービンホイールよりも排気流方向の上流側に設けられている。
第2流路とは、排気ガスをタービンホイールを迂回して排気出口流路へ導くバイパス流路のことである。
排気制御弁とは、連通路を流れる排気ガスの流量をバルブ本体の開閉動作により制御するウェイストゲートバルブのことである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)はバルブ本体の閉弁状態を示した平面図で、(b)は(a)のA−A断面図である(実施例1)。
【図2】(a)、(b)はバルブ本体の開弁状態を示した平面図、断面図である(実施例1)。
【図3】(a)〜(d)はバルブ本体の開閉動作を説明する断面図である(実施例1)。
【図4】バルブ角度変化に対する開口面積の変化を示したグラフである(実施例1)。
【図5】バルブ本体とバルブアームとの結合構造を示した平面図である(実施例2)。
【図6】(a)はバルブ本体の閉弁状態を示した平面図で、(b)は(a)のB−B断面図である(実施例3)。
【図7】バルブ全閉時にバルブ本体に作用する閉弁方向の力を説明した図である(実施例3)。
【図8】バルブ本体とバルブアームとの結合構造を示した平面図である(実施例3)。
【図9】(a)はバルブ本体の閉弁状態を示した平面図で、(b)は(a)のC−C断面図である(実施例4)。
【図10】(a)、(b)はバルブ本体の開弁状態を示した平面図、断面図である(実施例4)。
【図11】(a)〜(d)はバルブ本体の開閉動作を説明する断面図である(実施例4)。
【図12】バルブ角度変化に対する開口面積の変化を示したグラフである(実施例4)。
【図13】(a)はバルブ本体の閉弁状態を示した平面図で、(b)は(a)のD−D断面図である(実施例5)。
【図14】バルブ全閉時にバルブ本体に作用する閉弁方向の力を説明した図である(実施例5)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、バルブ全閉時にアクチュエータが必要とするトルクを小さくするという目的を、内燃機関の排気圧の影響を受け難くすることで実現した。
また、バルブ本体またはハウジングの流路壁面に付着したデポジット等の異物の噛み込みや摩耗を要因とする凹み等による悪影響を受け難くするという目的を、排気制御弁のバルブ本体とハウジングのシート凹部とを曲面接触させることで実現した。
ここで、バルブ全閉時とは、連通路を全閉(閉弁)する時(バルブ本体がシート凹部に着座する時、バルブ本体により連通路を閉じる時)のことである。
【実施例1】
【0023】
[実施例1の構成]
図1ないし図4は本発明の実施例1を示したもので、図1はバルブ本体の閉弁状態を示した図で、図2はバルブ本体の開弁状態を示した図で、図3はバルブ本体の開閉動作を説明する図で、図4はバルブ角度変化に対する開口面積の変化を示したグラフである。
【0024】
本実施例の内燃機関の制御装置(エンジン制御システム)は、内燃機関(エンジン)の排気ガスの圧力(排気圧)を利用して吸気ガス(吸入空気)を過給(圧縮)するターボチャージャを有する過給システム(内燃機関の過給装置)を備え、ターボチャージャの過給圧および排気圧を制御する内燃機関の排気制御装置(内燃機関の過給圧制御装置)として使用される。
【0025】
本実施例の過給システム(内燃機関の排気装置)は、エンジンの吸気管の途中に設けられたコンプレッサと、エンジンの排気管の途中に設けられたタービンと、このタービンのハウジングの内部に設置されたウェイストゲートバルブと、このウェイストゲートバルブを駆動する動力(トルク)を発生するモータ(動力源)、およびこのモータの回転を減速する減速機構を有するアクチュエータとを備えている。
タービンのハウジングには、エンジンの排気通路に連通する排気ガス流路、この排気ガス流路を互いに隣り合うように配置される2つの第1、第2排気ガス流路1、2に仕切る隔壁(仕切り壁)3、および第1排気ガス流路1と第2排気ガス流路2とを連通する連通孔4が設けられている。この連通孔4の開口周縁には、バルブ本体5が着座可能な弓形(ゆみなり)状のシート凹部6が設けられている。
【0026】
ここで、第1排気ガス流路1とは、排気ガスをタービンへ導入する排気ガス入口流路(第1流路)のことである。また、第2排気ガス流路2とは、排気ガスをタービンより迂回させるバイパス流路(第2流路)のことである。また、連通孔4とは、第1排気ガス流路1と第2排気ガス流路2とを連通するように仕切り壁3をその板厚方向に貫通する連通路のことである。
ウェイストゲートバルブは、ハウジングの内部に形成自在に収容される板状のバルブ本体5、およびこのバルブ本体5と一体回転可能に連結して、バルブ本体5を開閉動作させるバルブアーム7を有している。
なお、本実施例のハウジング(2つの第1、第2排気ガス流路1、2、仕切り壁3、連通孔4、シート凹部6)、ウェイストゲートバルブ(バルブ本体5、バルブアーム7)、およびアクチュエータの詳細は後述する。
【0027】
ここで、エンジンとして、複数の気筒(シリンダボア)を有する多気筒ディーゼルエンジン(例えば直列4気筒エンジン)が採用されている。但し、多気筒ディーゼルエンジンに限定されず、多気筒ガソリンエンジンを適用しても良い。
エンジンは、自動車等の車両のエンジンルーム内にターボチャージャと共に設置されている。また、エンジンの各気筒には、燃焼室内に燃料を噴射供給するインジェクタが搭載されている。エンジンの各気筒毎の燃焼室には、吸気ポートおよび排気ポートがそれぞれ連通している。
【0028】
エンジンの各気筒毎の吸気ポートの上流端には、吸気管が接続されている。この吸気管の内部には、各気筒毎の燃焼室へ吸気ガスを供給するための吸気通路が形成されている。また、吸気管の途中には、ターボチャージャのコンプレッサ、インタークーラ、スロットルバルブおよびインテークマニホールド等が設置されている。
エンジンの各気筒毎の排気ポートの下流端には、排気管が接続されている。この排気管の内部には、各気筒毎の燃焼室より流出した排気ガスを排気浄化装置を経由して外部へ排出するための排気通路が形成されている。また、排気管の途中には、エキゾーストマニホールドおよびターボチャージャのタービン等が設置されている。
【0029】
ターボチャージャは、コンプレッサとタービンとを備え、吸気管を流れる吸気ガスをコンプレッサで圧縮し、圧縮された圧縮空気(吸気ガス)をエンジンの各気筒毎の燃焼室へ送り込むターボ過給機である。このターボチャージャは、タービンのホイール(タービンホイール)が排気ガスにより回転駆動されると、タービンホイールに連結したタービンシャフトおよびコンプレッサのインペラ(コンプレッサインペラ)も回転し、このコンプレッサインペラが吸入空気を圧縮する。
コンプレッサは、タービンシャフトの回転軸(回転中心)を中心にして回転するコンプレッサインペラ、およびこのコンプレッサインペラを回転自在に収容するコンプレッサハウジングを備えている。
コンプレッサインペラには、複数のコンプレッサブレード(翼)が周方向に設置されている。
【0030】
コンプレッサハウジングの内部には、吸気ガスをコンプレッサインペラへ導入する吸気ガス(入口)流路、コンプレッサインペラを回転自在に収容するインペラ収容空間、圧縮した吸気ガスを外部へ吐出する渦巻き状の吸気ガス(出口)流路等が形成されている。
タービンは、エンジンの排気圧により回転駆動されるタービンホイール、およびこのタービンホイールを回転自在に収容するハウジングとを備えている。
タービンホイールには、複数のタービンブレード(翼)が周方向に設置されている。
タービンのハウジングの内部には、排気ガスをタービンホイールへ導入する渦巻き状の第1排気ガス流路1、タービンホイールを回転自在に収容するホイール収容空間、排気ガスを外部へ吐出する排気ガス(出口)流路、および排気ガスをタービンホイールより迂回(バイパス)させる第2排気ガス流路2等が形成されている。
【0031】
第1排気ガス流路1は、タービンホイールよりも排気流方向の上流側に形成されている。この第1排気ガス流路1は、連通孔4よりも排気流方向の上流側に形成されている。また、第1排気ガス流路1は、ハウジングの上流側端面で開口した入口ポートからタービンホイールへ排気ガスを導入する排気ガス流路である。
第2排気ガス流路2は、連通孔4よりも排気流方向の下流側に形成されている。この第2排気ガス流路2の内部には、バルブ本体5が開閉自在に収容されている。また、第2排気ガス流路2は、第1排気ガス流路1に流入した排気ガスをホイール収容空間を迂回して排気ガス出口流路へ導くウェイストゲート流路である。
排気ガス出口流路とは、タービンホイールよりも排気流方向の上流側に形成される排気ガス流路のことである。この排気ガス出口流路は、ハウジングの下流側端面で開口した出口ポートから排気浄化装置へ排気ガスを排出する第3流路である。
【0032】
次に、本実施例のハウジングの詳細を図1ないし図3に基づいて説明する。
本実施例のターボチャージャのタービンのハウジングの内部には、ウェイストゲートバルブが搭載されている。
ウェイストゲートバルブは、ターボチャージャのコンプレッサの過給圧が設定値を越えた際に開弁して、コンプレッサの過給圧を設定値以下に抑える過給圧制御装置を構成する。このウェイストゲートバルブは、連通孔4を流れる排気ガスの流量をバルブ本体5の開閉動作により制御(調整)する排気ガス制御弁を構成している。また、ウェイストゲートバルブは、バルブ本体5の開度変化(バルブ角度変化)に対して連通孔4の開口面積が変化する開口特性(バルブ開度−流量特性)を備えている。
ウェイストゲートバルブは、第2排気ガス流路2を流れる排気ガスの流量をバルブ本体5の開閉動作により制御する流量制御弁である。
【0033】
タービンのハウジングは、耐熱性金属(例えば耐熱アルミニウム合金や耐熱鋼等)により形成されている。ハウジングには、その内部空間(ハウジングの内部に形成される排気通路)を、互いに隣り合うように並列して配置される2つの第1、第2排気ガス流路1、2に区画する板状の仕切り壁3が一体的に形成されている。このハウジングには、仕切り壁3をその板厚方向に貫通する連通孔4が形成されている。
また、ハウジングには、内部に2つの第1、第2排気ガス流路1、2が形成される筒状の外壁10が設けられている。この外壁10には、バルブアーム7のシャフト8を回転自在に支持する角筒状の側壁11が一体的に設けられている。この側壁11には、円筒状のベアリングの周囲を周方向に取り囲む円筒状の軸受け保持部12が一体的に設けられている。この軸受け保持部12は、ハウジングの側壁11の外壁面から外部へ向かって回転軸方向に突出している。また、軸受け保持部12の内部には、バルブアーム7の回転軸方向に延びる軸受け孔が形成されている。
なお、ハウジングの側壁11には、組み付け時にバルブ本体5を第2排気ガス流路2内に挿入するための開口部が形成されている。この開口部は、カバー13により塞がれている。カバー13は、ハウジングの結合端面にボルト等を用いて着脱自在に締結固定されている。
【0034】
ハウジングの仕切り壁3は、ハウジングの内部空間(流路)を、第1排気ガス流路1と第2排気ガス流路2とに気密的に仕切る区画壁である。この仕切り壁3の上流側(第1排気ガス流路1の入口ポート側)には、第1排気ガス流路1と第2排気ガス流路2とを連通するように仕切り壁3を貫通する連通孔4が形成されている。
連通孔4は、第1排気ガス流路1から第2排気ガス流路2を分岐させる分岐部に設けられている。この連通孔4は、仕切り壁3をその板厚方向に貫通している。これにより、連通孔4を介して、仕切り壁3の第1流路壁面と仕切り壁3の第2流路壁面とが連通する。 連通孔4は、仕切り壁3の第1流路壁面で開口する方形状の第1開口部(入口ポート)、および仕切り壁3の第2流路壁面で開口する方形状の第2開口部(出口ポート)を有している。
連通孔4は、排気ガス制御弁の弁孔を構成するもので、バルブ本体5によってその開口面積が変更される。
【0035】
ハウジングの仕切り壁3は、連通孔4の第2流路側開口周縁に、バルブ本体5の凸曲面(バルブシール面)14が着座(曲面接触)可能な凹曲面(ハウジングシート面)15を有する弓形状のシート凹部6を備えている。
シート凹部6は、弓形状の凹溝側面間に断面が円弧状に湾曲した底面を有している。このシート凹部6の底面は、所定の曲率半径を有するように湾曲して形成される円弧状(部分円筒面形状、円筒内周面の一部を切り取った形状)の凹曲面15となっている。この凹曲面15は、バルブ本体5の凸曲面14が着座(曲面接触)する弁座として機能する。
シート凹部6は、一方の第2排気ガス流路側から他方の第1排気ガス流路側へ向けて弓形状に凹む(掘り下げる)ように設けられている。
なお、本実施例では、ハウジングの仕切り壁3の第2流路壁面側に、凹曲面15を有するシート凹部6を一体的に形成しているが、ハウジングの仕切り壁3とシート凹部6を有するブロックとを別体部品で構成しても良い。
【0036】
次に、本実施例のウェイストゲートバルブのバルブ本体5の詳細を図1ないし図3に基づいて説明する。ここで、バルブアーム7の回転軸であるシャフト8の中心線の位置を、バルブ本体5およびバルブアーム7の回転中心Oとする(図1および図2参照)。
本実施例のバルブ本体5は、ハウジングと同様に、耐熱性金属(例えば耐熱アルミニウム合金や耐熱鋼等)により形成されている。このバルブ本体5は、バルブアーム7の出力部に拘束されている。また、バルブ本体5は、バルブアーム7の回転中心Oを中心にして回転運動を行うように構成されている。
バルブ本体5には、第2排気ガス流路2、特に連通孔4を開閉する板状の閉鎖部が設けられている。バルブ本体5の閉鎖部には、シート凹部6の凹曲面15に対向(曲面接触)する対向面(表面、バルブフェース)が形成されている。
【0037】
バルブ本体5には、バルブアーム7に一体回転可能に連結(結合)する角柱状の結合部21が一体的に形成されている。この結合部21は、バルブ本体5の閉鎖部の凸曲面側(バルブフェース側)に対して反対側の背面から外部へ向けて真っ直ぐに突出した凸状の嵌合ピン部(突起)である。また、結合部21の中心線方向の一端部(バルブ本体5の閉鎖部の背面から最も離れた先端部)には、バルブアーム7の出力部からのバルブ本体5の抜け止めを行うための矩形鍔状のフランジ22が一体的に形成されている。
また、バルブ本体5の閉鎖部の表面全体は、シート凹部6の凹曲面15の曲率半径と略同一曲率半径を有するように湾曲して形成される円弧状(部分円筒面形状、円筒外周面の一部を切り取った形状)の凸曲面14となっている。これにより、バルブ本体5は、シート凹部6に対して着座、離脱して連通孔4を閉鎖、開放すると共に、連通孔4の開口面積を連続的に変更して連通孔4から第2排気ガス流路2へ流入する排気ガスの流量を制御する。
【0038】
次に、本実施例のウェイストゲートバルブのバルブアーム7の詳細を図1ないし図3に基づいて説明する。
本実施例のバルブアーム7は、バルブ本体5およびハウジングと同様に、耐熱性金属(例えば耐熱アルミニウム合金や耐熱鋼等)により形成されている。このバルブアーム7は、連通孔4の流路中心線方向(連通孔4を流れる排気ガスの流れ方向(排気流方向))に対して垂直な方向に延びるシャフト8を有し、このシャフト8の半径方向の外側に延びる、つまりシャフト8の一端部から直角に屈曲するように図示下方に延長されたL字状のクランクアームを構成している。
バルブアーム7のシャフト8は、ベアリングを介して、ハウジングの軸受け孔に回転自在に支持されている。このシャフト8の回転中心は、バルブアーム7の回転中心Oである。
【0039】
シャフト8の他端部は、ハウジングの内部から外部へ突出しており、バルブアーム7の入力部29となっている。このバルブアーム7の入力部29には、アクチュエータの出力軸が固定されている。
バルブアーム7の一端部には、バルブアーム7の図示下端部から直角に屈曲するように突出した多角環状の拘束部31が一体的に設けられている。この拘束部31は、バルブアーム7の出力部を構成している。
拘束部31は、バルブ本体5の結合部21の周囲を周方向に取り囲むことで、バルブ本体5を拘束する。この拘束部31の内部には、バルブ本体5の結合部21が嵌合する矩形状または方形状の嵌合孔32が形成されている。
なお、拘束部31は、バルブ本体5の結合部21をかしめ等の固定手段を用いて固定するためのかしめ固定部を構成する。
【0040】
ここで、バルブ本体5をバルブアーム7に組み付ける場合には、先ずバルブアーム7の拘束部31の嵌合孔32に、バルブ本体5の結合部21を挿入する。その後に、結合部21の先端部を工具を用いてかしめることで、フランジ22を形成する。これにより、バルブ本体5の背面とフランジ22の対向面(内側面)との間に、バルブアーム7の拘束部31が挟み込まれる。この結果、バルブアーム7の拘束部31が、バルブ本体5の結合部21にかしめ固定される。あるいはバルブ本体5の結合部21が、バルブアーム7の拘束部31にかしめ固定される。
なお、バルブ本体5の結合部21とバルブアーム7の拘束部31との間には、熱歪みによる変形を吸収するための隙間(ガタ)33が設けられている。
これによって、高温の排気ガスが流通する排気通路のような高温環境下でバルブ本体5およびバルブアーム7が使用された場合であっても、バルブ本体5の結合部21とバルブアーム7の拘束部31との間のガタ33により熱歪みによる変形を吸収することができる。
【0041】
次に、本実施例のアクチュエータの詳細を図1ないし図3に基づいて説明する。
アクチュエータは、モータの動力(トルク)を利用してバルブ本体5をバルブアーム7の回転中心Oを中心にして回転方向に駆動するように構成されている。このアクチュエータは、モータおよび減速機構を含んで構成される電動アクチュエータである。
なお、モータは、ECU(エンジン制御ユニット)によって電子制御されるモータ駆動回路を介して、自動車等の車両に搭載されたバッテリに電気的に接続されている。
また、バルブアーム7の入力部は、減速機構の最終ギヤと一体回転可能に連結されている。また、バルブアーム7の入力部を、モータの出力軸に直結しても良い。
【0042】
次に、本実施例のターボチャージャのハウジングの内部に開閉自在に収容されるウェイストゲートバルブの特徴を図1ないし図4に基づいて説明する。
ウェイストゲートバルブは、バルブ本体5の凸曲面形成方向の中心位置を凸曲面14の円弧中心とし、また、シート凹部6の凹曲面形成方向の中心位置を凹曲面15の円弧中心としたとき、凸曲面14の円弧中心と凹曲面15の円弧中心とが、図1に示したように、連通孔4の流路中心線方向に対して垂直な方向に所定の距離(オフセット量)分だけオフセットして配置されている。
また、ウェイストゲートバルブは、連通孔4の孔幅方向の中心(中点)を通り、排気ガスの流れ方向(排気流方向、連通孔4の流路中心線方向)に延びる流路中心線を連通孔4の中心線とし、また、バルブ本体5の閉鎖部の凸曲面形成方向の中心(中点)を通り、バルブ本体5をその板厚方向に貫く中心線をバルブ本体5の中心線としたとき、連通孔4の中心線とバルブ本体5の中心線とが、図1に示したように、連通孔4の流路中心線方向に対して垂直な方向に所定の距離(オフセット量)分だけオフセットして配置されている。
【0043】
ウェイストゲートバルブは、バルブアーム7のシャフト8の中心線の位置を、バルブ本体5およびバルブアーム7の回転中心Oとし、バルブ本体5の凸曲面14の曲率半径の中心位置を凸曲面14の曲率中心O1とし、また、シート凹部6の凹曲面15の曲率半径の中心位置を凹曲面15の曲率中心O2としたとき、バルブ本体5およびバルブアーム7の回転中心Oと凸曲面14の曲率中心O1および凹曲面15の曲率中心O2とが、図1に示したように、連通孔4の流路中心線方向に対して垂直な方向に所定の距離(オフセット量La)分だけオフセットして配置されている。
なお、凸曲面14の曲率中心O1は、凹曲面15の曲率中心O2と一致している。
また、バルブ本体5およびバルブアーム7の回転中心Oに対する、凸曲面14の曲率中心O1および凹曲面15の曲率中心O2のオフセット方向は、本実施例に限定されず、連通孔4の流路中心線方向に垂直な方向に対して連通孔側または連通孔側に対して反対側に傾斜していても良い。
【0044】
ここで、バルブ本体5に開弁方向の回転運動を与えると、バルブ本体5の開度変化に従って、バルブ本体5の凸曲面14がシート凹部6の凹曲面15から徐々に離れていく。そして、バルブ本体5の全開位置では、バルブ本体5の凸曲面14とシート凹部6の凹曲面15との間の隙間(対向距離)が最大となる。
また、バルブ本体5に閉弁方向の回転運動を与えると、バルブ本体5の開度変化に従って、バルブ本体5の凸曲面14がシート凹部6の凹曲面15へ徐々に接近していく。そして、バルブ本体5の全閉位置では、バルブ本体5の凸曲面14とシート凹部6の凹曲面15との間の隙間が最小(=0mm)となる。つまりバルブ本体5の凸曲面14とシート凹部6の凹曲面15とが曲面接触する。
【0045】
ウェイストゲートバルブは、連通孔4の流路中心線方向(排気流方向と同一方向)に対して垂直な方向にバルブ本体5が回転(開弁方向または閉弁方向に移動)して連通孔4を開閉するように構成されている。すなわち、ウェイストゲートバルブは、図4に示したように、バルブ本体5の開度変化(バルブ角度の変化)に伴って連通孔4の開口面積が変化する開口特性を備えている。
ウェイストゲートバルブは、アクチュエータの動力(モータのトルク)を利用してバルブ本体5を全閉作動(閉弁方向に移動)させる際に、バルブ本体5の凸曲面14とシート凹部6の凹曲面15とを曲面接触させることで、2つの第1、第2排気ガス流路1、2間をシールするように構成されている。
【0046】
ここで、図3(a)〜(d)は、ウェイストゲートバルブの各バルブ角度(バルブ開度)A〜Dにおける状態を示した図である。また、図4は、実施例1のバルブ角度(バルブ開度)変化に対する連通孔4の開口面積の変化の特性を示した図である。
なお、図4に示したバルブ角度Aとは、図3(a)に示したバルブ本体5の全閉開度(全閉位置)のことである。具体的には、バルブ本体5の凸曲面14とシート凹部6の凹曲面15とが曲面接触している開度のことである。
また、図4に示したバルブ角度Bとは、図3(b)に示したように、バルブ本体5の全閉位置から僅かに開弁した開弁初期の第1開度のことである。具体的には、バルブ本体5の凸曲面14がシート凹部6の凹曲面15から僅かに離れる開度のことである。
また、図4に示したバルブ角度Cとは、図3(c)に示したように、バルブ本体5の開弁初期の第1開度から僅かに開弁した開弁初期の第2開度のことである。具体的には、バルブ本体5の端面(図示左端面)が連通孔4のエッジの延長線上に位置する開度のことである。
また、図4に示したバルブ角度Dとは、図3(d)に示したバルブ本体5の全開開度(全開位置)のことである。
【0047】
[実施例1の作用]
次に、本実施例の内燃機関(エンジン)の過給システムの動作を図1ないし図4に基づいて簡単に説明する。
エンジンの吸気ポートから燃焼室内に供給された吸気ガスとインジェクタから噴射された燃料との混合気が燃焼室内で燃焼すると、この燃焼により生じた排気ガスが排気ポートから排出される。
【0048】
ここで、例えば吸気管に装着される過給圧(吸気圧)センサによって検出されるターボチャージャのコンプレッサの過給圧が設定値以下の場合、アクチュエータの動力源であるモータへの通電に伴って、バルブアーム7の回転中心Oを中心にしてバルブアーム7が図示右回転方向に回転駆動される。
これにより、バルブアーム7の回転に伴ってバルブアーム7に一体回転可能に連結されたバルブ本体5が、バルブアーム7の回転中心Oを中心にして図示右回転方向(閉弁方向)に回転する。このため、バルブ本体5の凸曲面14が、図1および図3(a)に示したように、ハウジングの仕切り壁3に設けられるシート凹部6の凹曲面15に着座(曲面接触)して2つの第1、第2排気ガス流路1、2間の連通状態が解消される。つまり連通孔4が閉じられる。
【0049】
この結果、エンジンより排出された排気ガスがターボチャージャのタービンのハウジングの内部に流入する。入口ポートから第1排気ガス流路1に流入した排気ガスは、ホイール収容空間に導入されて、タービンホイールを回転駆動した後に、排気ガス出口流路を通って外部へ排出される。
一方、吸気管の吸気通路内に吸い込まれた吸気ガスは、タービンホイールの回転により駆動されるコンプレッサインペラによって圧縮されて圧力(過給圧)が上昇する。これにより、吸気ポートを経て燃焼室に供給される吸気ガスが過給される。
【0050】
一方、ターボチャージャの過給圧が設定値以上に上昇した場合、モータへの通電に伴って、バルブアーム7の回転中心Oを中心にしてバルブアーム7が図示左回転方向に回転駆動される。
これにより、バルブアーム7の回転に伴ってバルブアーム7に一体回転可能に連結されたバルブ本体5が、バルブアーム7の回転中心Oを中心にして図示左回転方向(開弁方向)に回転する。このため、バルブ本体5の凸曲面14が、図2および図3(b)〜(d)に示したように、バルブアーム7の回転軸(シャフト8の回転中心)を中心にして回転し、ハウジングの仕切り壁3のシート凹部6から離脱して2つの第1、第2排気ガス流路1、2間が連通状態となる。つまり連通孔4が開かれる。
【0051】
この結果、入口ポートからハウジングの第1排気ガス流路1に流入した排気ガスの一部が、連通孔4および第2排気ガス流路2を通って排気ガス出口流路に逃がされる。これにより、ターボチャージャの過給圧が設定値以下に抑えられる。
なお、エンジン回転速度または目標過給圧に応じてバルブ本体5の開度制御を行うことができる。つまり、エンジン回転速度または目標過給圧に応じてバルブ本体5の開度(角度)を連続的または段階的に変更することで、バルブ本体5の開度変化に伴って連通孔4の開口面積が徐々に変化する開口特性となる(図4参照)。
このように、エンジン回転速度または目標過給圧に応じてバルブ本体5の開度制御を行うことで、第2排気ガス流路2を通る排気ガスの流量を可変制御することができるので、ターボチャージャの過給圧をエンジンの運転状況に応じて最適化することができる。
【0052】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例のウェイストゲートバルブは、連通孔4の第2流路側開口周縁に設けられるシート凹部6が、第2排気ガス流路側から第1排気ガス流路側へ向けて弓形状に凹むように設けられている。また、ウェイストゲートバルブの弁体であるバルブ本体5が、シート凹部6の溝側面間に移動自在に収容されている。
また、ウェイストゲートバルブは、連通孔4の流路中心線方向(排気流方向と同一方向)に対して垂直な方向にバルブ本体5が回転(往復移動)して連通孔4を開閉(連通孔4の開口面積を可変)し、且つアクチュエータの動力(モータのトルク)を利用してバルブ本体5を全閉作動(閉弁方向に移動)させる場合、バルブ本体5の凸曲面14とシート凹部6の凹曲面15とが曲面接触して2つの第1、第2排気ガス流路1、2間をシールするように構成されている。すなわち、ウェイストゲートバルブは、バルブ本体5とシート凹部6とのシール構造として、バルブ本体5とシート凹部6とを曲面接触させて連通孔4を通過する排気ガスの流れをシールする曲面シール構造を採用している。
【0053】
これによって、アクチュエータの動力(モータのトルク)を利用してバルブ本体5を全閉作動させる場合、連通孔4の流路中心線方向、つまり排気流方向に対して垂直な方向にバルブ本体5が回転(閉弁方向への回転運動)してバルブ本体5の凸曲面14がシート凹部6の凹曲面15に着座(曲面接触)する。これにより、連通孔4を閉じるバルブ本体5が、エンジンの排気圧の影響を受け難くなるので、バルブ全閉時にアクチュエータのモータが必要とするトルクを小さくすることができる。
したがって、モータで発生させるトルクを低減できるので、モータの体格、更にはアクチュエータ全体の体格を小型化(コンパクト化)することができる。
【0054】
また、ウェイストゲートバルブは、バルブ全閉時にバルブ本体5とシート凹部6とを曲面接触させて2つの第1、第2排気ガス流路1、2間、つまり連通孔4を通過する排気ガスの流れをシールするように構成されている。
これによって、バルブ本体5とシート凹部6との曲面接触シール部における接触面積を従来の線接触シール部と比べて飛躍的に増大させることができる。
よって、バルブ全閉時にデポジットやダスト等の異物をバルブ本体5とシート凹部6との間に噛み込んだ場合であっても、バルブ本体5とシート凹部6との曲面接触によりシール効果を維持することができる。これにより、従来の線接触シールのようなシール効果の低下はない。
また、バルブ本体5の凸曲面14またはシート凹部6の凹曲面15が摩耗により凹んで、バルブ本体5とシート凹部6との曲面接触シール部の一部に隙間が形成された場合であっても、バルブ本体5とシート凹部6との曲面接触によりシール効果を維持することができる。これにより、従来の線接触シールのようなシール不良が発生することはない。
したがって、バルブ本体5とシート凹部6との曲面シール構造を採用することにより、バルブ本体5またはハウジングの隔壁3の流路壁面に付着したデポジットやダスト等の異物の噛み込みや摩耗を要因とする凹み等による悪影響を受け難くなる。この結果、バルブ全閉時における排気ガスの洩れ流量を低減することができる。あるいはバルブ全閉時における排気ガスの洩れを防止することができる。
【0055】
また、ウェイストゲートバルブは、バルブ本体5の凸曲面14の円弧中心とシート凹部6の凹曲面15の円弧中心とが、連通孔4の流路中心線方向に対して垂直な方向に所定の距離(オフセット量)分だけオフセットして配置されている。
これによって、バルブ本体5をその移動方向へ回転運動させることにより、バルブ本体5の凸曲面14とシート凹部6の凹曲面15とを曲面接触させることができる。これにより、2つの第1、第2排気ガス流路1、2間がシールされるため、バルブ本体5の閉弁方向の回転運動によって連通孔4を閉じることができる。
【0056】
また、ウェイストゲートバルブは、連通孔4の中心線とバルブ本体5の中心線とが、連通孔4の流路中心線方向に対して垂直な方向に所定の距離(オフセット量)分だけオフセットして配置されている。
これによって、エンジンの排気圧がバルブ本体5に加わると、バルブ本体5が閉まる方向に力が作用する。これにより、エンジンの排気圧が大きければ大きい程、バルブ本体5が閉まる方向に作用する力が大きくなり、2つの第1、第2排気ガス流路1、2間のシール性能(シール効果)が高まる。つまりウェイストゲートバルブのバルブ本体5に、セルフシール効果が備わることになる。
【0057】
また、ウェイストゲートバルブのバルブ本体5には、その閉鎖部の凸曲面側(バルブフェース側)に対して反対側の背面から外部へ向けて真っ直ぐに突出した結合部21が一体的に設けられている。また、バルブアーム7には、バルブ本体5の結合部21の周囲を取り囲むことでバルブ本体5を拘束する拘束部31が設けられている。
ここで、バルブ本体5の結合部21の形状を多角柱状とし、バルブアーム7の拘束部31の形状を多角環状とし、バルブアーム7の嵌合孔32の孔形状を矩形状または方形状とした場合には、バルブ本体5の結合部21とバルブアーム7の拘束部31とを連結(結合)した際に、バルブアーム7の拘束部31に対してバルブ本体5の結合部21の相対的な移動が不能となり、バルブ本体5の結合部21とバルブアーム7の拘束部31との間にガタ33が設けられている場合であっても、バルブ本体5の動作不良の懸念はなく、バルブ本体5の動作信頼性を向上することができる。
【実施例2】
【0058】
図5は本発明の実施例2を示したもので、バルブ本体の結合部とバルブアームの拘束部との結合構造を示した図である。
【0059】
本実施例のウェイストゲートバルブは、バルブ本体5の結合部21の形状を多角柱状とし、バルブアーム7の拘束部31の形状を例えば三角環状、四角環状、六角環状等の多角環状または楕円形状等の非円環形状とし、バルブアーム7の嵌合孔32の孔形状を三角形状、四角形状、六角形状等の多角形状または楕円形状等の非円形状としている。
なお、バルブアーム7の拘束部31に対するバルブ本体5の結合部21の相対的な移動(結合部21の周りに回転する回転運動等)が不能となる形状であれば、バルブ本体5の結合部21の形状、バルブアーム7の拘束部31の形状、バルブアーム7の嵌合孔32の孔形状は上記のものに限定されない。
【実施例3】
【0060】
図6ないし図8は本発明の実施例3を示したもので、図6はバルブ本体の閉弁状態を示した図で、図7はバルブ全閉時にバルブ本体に作用する閉弁方向の力を説明した図で、図8はバルブ本体の結合部とバルブアームの拘束部との結合構造を示した図である。
【0061】
本実施例のウェイストゲートバルブは、エンジンの排気通路に連通する流路(連通孔4)を開閉するバルブ本体5と、このバルブ本体5を開閉動作させるバルブアーム7と、ベアリングを介してバルブアーム7のシャフト8を回転自在に支持するハウジングと、バルブアーム7を介してバルブ本体5を駆動するモータ(動力源)、およびこのモータの回転を減速する減速機構を有するアクチュエータとを備えている。
バルブアーム7は、連通孔4の流路中心線方向(排気流方向)に対して垂直な方向に延びるシャフト8を有している。
【0062】
ハウジングには、その内部空間である排気通路を、互いに隣り合うように並列配置された2つの第1、第2排気ガス流路1、2に区画する仕切り壁3と、第1排気ガス流路1と第2排気ガス流路2とを連通するように仕切り壁3をその板厚方向に貫通する連通孔4と、この連通孔4の第2流路側開口周縁に設けられて、バルブ本体5が着座可能なシート凹部6とが設けられている。
【0063】
シート凹部6は、第2排気ガス流路側から第1排気ガス流路側へ向けて弓形状に凹むように設けられている。このシート凹部6の底面には、バルブ本体5の凸曲面14の曲率半径と同程度の曲率半径を有するように湾曲して円弧状に形成された3つの凹曲面15〜17が設けられている。なお、凹曲面15は、実施例1と同様に、バルブ本体5の凸曲面14が着座(曲面接触)する弁座として機能する。
シート凹部6の凹曲面15と2つの凹曲面16、17との間には、一対の段差41、42が形成されている。これらの段差41、42は、凹曲面15を挟んで対向するように配置されている。また、一対の段差41、42は、バルブ本体5の往復移動方向(開弁方向または閉弁方向)に円弧状に延長されている。
なお、本実施例では、ハウジングの仕切り壁3の第2流路壁面側に、シート凹部6(凹曲面15〜17)を一体的に形成しているが、ハウジングの仕切り壁3とシート凹部6とを別体部品で構成しても良い。
【0064】
バルブ本体5は、一対の段差41、42間に摺動可能に嵌め合わされている。また、バルブ本体5の凸曲面形成方向に対して垂直な方向の両側面には、一対の段差41、42の各円弧状段差面にそれぞれ摺動する摺動面51、52が形成されている。
これによって、ハウジングの仕切り壁3およびシート凹部6に設けられる一対の段差41、42が、バルブ本体5をその往復移動方向(開弁方向または閉弁方向)に摺動自在に案内(誘導)するガイド(バルブガイド)となる。これにより、図8に示したように、例えばバルブ本体5の結合部21とバルブアーム7の拘束部31とをかしめ等の結合方法を用いて結合する必要がない。つまり、バルブ本体5とバルブアーム7とを単純な凹凸嵌合等の結合方法を用いて結合できるので、ウェイストゲートバルブの製造コストを低減でき、且つ生産性を向上することができる。
なお、バルブアーム7の拘束部31には、バルブ本体5の結合部21を嵌合孔32内に挿入するための開口部34が形成されている。
【0065】
また、ウェイストゲートバルブは、バルブ本体5およびバルブアーム7の回転中心Oと凸曲面14の曲率中心O1および凹曲面15の曲率中心O2とが、図6に示したように、連通孔4の流路中心線方向に対して垂直な方向に所定の距離(オフセット量La)分だけオフセットして配置されている。
これによって、バルブ本体5に開弁方向の回転運動を与えると、バルブ本体5の開度変化に従って、バルブ本体5の凸曲面14がシート凹部6の凹曲面15から徐々に離れていく。そして、バルブ本体5の全開位置では、バルブ本体5の凸曲面14とシート凹部6の凹曲面15との間の隙間(対向距離)が最大となる。
また、バルブ本体5に閉弁方向の回転運動を与えると、バルブ本体5の開度変化に従って、バルブ本体5の凸曲面14がシート凹部6の凹曲面15へ徐々に接近していく。そして、バルブ本体5の全閉位置では、バルブ本体5の凸曲面14とシート凹部6の凹曲面15との間の隙間が最小(=0mm)となる。つまりバルブ本体5の凸曲面14とシート凹部6の凹曲面15とが曲面接触する。
【0066】
また、ウェイストゲートバルブは、図6に示したように、凸曲面14の円弧中心と凹曲面15の円弧中心とが、連通孔4の流路中心線方向に対して垂直な方向に所定の距離(オフセット量)分だけオフセットして配置されている。
これによって、実施例1と同様に、バルブ本体5をその移動方向へ回転運動させることにより、バルブ本体5の凸曲面14とシート凹部6の凹曲面15とを曲面接触させることができる。これにより、2つの第1、第2排気ガス流路1、2間がシールされるため、バルブ本体5の閉弁方向の回転運動によって連通孔4を閉じることができる。
【0067】
また、ウェイストゲートバルブは、連通孔4の孔幅方向の中心(中点)を通り、排気ガスの流れ方向(排気流方向、連通孔4の流路中心線方向)に延びる流路中心線を連通孔4の中心線CL1とし、また、バルブ本体5の閉鎖部の凸曲面形成方向の中心(中点)を通り、バルブ本体5をその板厚方向に貫く中心線をバルブ本体5の中心線CL2としたとき、連通孔4の中心線CL1とバルブ本体5の中心線CL2とが、図7に示したように、連通孔4の流路中心線方向に対して垂直な方向に所定の距離(オフセット量Lb)分だけオフセットして配置されている。
これによって、実施例1と同様に、エンジンの排気圧がバルブ本体5に加わると、バルブ本体5が閉まる方向に力が作用する。これにより、エンジンの排気圧が大きければ大きい程、バルブ本体5が閉まる方向に作用する力が大きくなり、2つの第1、第2排気ガス流路1、2間のシール性能(シール効果)が高まる。つまりウェイストゲートバルブのバルブ本体5に、セルフシール効果が備わることになる。
【実施例4】
【0068】
図9ないし図12は本発明の実施例4を示したもので、図9はバルブ本体の閉弁状態を示した図で、図10はバルブ本体の開弁状態を示した図で、図11はバルブ本体の開閉動作を説明する図で、図12はバルブ角度変化に対する開口面積の変化を示したグラフである。
【0069】
本実施例の連通孔4の第2流路側開口周縁には、シート凹部6および凹曲面15が設けられている。
連通孔4の第2流路側開口周縁の一部には、バルブ本体5が全閉開度の状態(全閉位置)から開弁し始める開弁初期における開口特性を定める面取り61が切削加工等により施されている。
これによって、連通孔4の第2流路側開口周縁の一部(特に図示左側、第2排気ガス流路2の下流側)に面取り61を形成しているので、連通孔4から第2排気ガス流路2へ流入する排気ガスの流れの剥離を抑えることができる。これにより、排気ガスのエネルギー損失を低減することができると共に、気流音等の騒音を低減することができる。
【0070】
ここで、図11(a)〜(d)は、ウェイストゲートバルブの各バルブ角度(バルブ開度)A〜Dにおける状態を示した図である。また、図12は、実施例4のバルブ角度(バルブ開度)変化に対する連通孔4の開口面積の変化の特性を示した図である。
なお、図12に示したバルブ角度Aとは、図11(a)に示したバルブ本体5の全閉開度(全閉位置)のことである。具体的には、バルブ本体5の凸曲面14とシート凹部6の凹曲面15とが曲面接触している開度のことである。
また、図12に示したバルブ角度Bとは、図11(b)に示したように、バルブ本体5の全閉位置から僅かに開弁した開弁初期の第1開度のことである。具体的には、バルブ本体5の凸曲面14がシート凹部6の凹曲面15から僅かに離れる開度(面取り61の先端を通る軸線の延長線上に位置する開度)のことである。
また、図12に示したバルブ角度Cとは、図11(c)に示したように、バルブ本体5の開弁初期の第1開度から僅かに開弁した開弁初期の第2開度のことである。具体的には、バルブ本体5の端面(図示左端面)が連通孔4の孔壁面を通る軸線の延長線上に位置する開度のことである。
また、図12に示したバルブ角度Dとは、図11(d)に示したバルブ本体5の全開開度(全開位置)のことである。
【0071】
ここで、実施例1〜3のウェイストゲートバルブは、連通孔4の第2流路側開口周縁の一部に面取り61が形成されていないので、バルブ角度Bからバルブ角度Cへ移行する際に、バルブ角度変化に対して連通孔4の開口面積が急激に変化する開口特性を備えている。
そこで、本実施例のウェイストゲートバルブでは、連通孔4の第2流路側開口周縁の一部に面取り61が形成されているので、バルブ本体5が全閉状態から開弁し始める開弁初期において、図12に示したバルブ角度B−C間のように、バルブ本体5の開度変化に伴って連通孔4の開口面積が徐々に増加する、滑らかな開口特性となる。これにより、バルブ本体5が全閉状態から開弁し始める開弁初期における開口特性(バルブ本体5の開度変化に対して開口面積が変化する特性)を改善することができる。したがって、ウェイストゲートバルブの流量特性は、開口特性に依存するので、実施例1〜3と比べて、滑らかな流量特性を得ることができる。
したがって、本実施例のウェイストゲートバルブは、バルブ本体5が全閉状態から開弁し始める開弁初期における流量特性(バルブ本体5のバルブ角度変化に対して開口面積が変化する開口特性)を改善することができる。
【実施例5】
【0072】
図13および図14は本発明の実施例5を示したもので、図13はバルブ本体の閉弁状態を示した図で、図14はバルブ全閉時にバルブ本体に作用する閉弁方向の力を説明した図である。
【0073】
本実施例のシート凹部6には、実施例3と同様に、バルブ本体5の凸曲面14が着座可能な凹曲面15を挟んで対向するように配置されて、バルブ本体5の往復移動方向(開弁方向または閉弁方向)に円弧状に延びる一対の段差41、42が設けられている。
また、連通孔4の第2流路側開口周縁には、実施例3と同様に、シート凹部6および凹曲面15〜17が設けられている。
連通孔4の第2流路側開口周縁の一部には、実施例4と同様に、バルブ本体5が全閉開度の状態(全閉位置)から開弁し始める開弁初期における開口特性を定める面取り61が切削加工等により施されている。
以上のように、本実施例のウェイストゲートバルブにおいては、実施例3及び4と同様な効果を達成することができる。
【0074】
[変形例]
本実施例では、排気制御弁の弁体であるバルブ本体5を(回転中心Oを中心とする)回転方向に駆動するアクチュエータとして、動力源としてのモータ、およびこのモータの回転を減速する減速機構を有する電動アクチュエータを用いているが、排気制御弁の弁体であるバルブ本体5を(回転中心Oを中心とする)回転方向に駆動するアクチュエータとして、電磁力または流体圧力を利用してバルブ本体5を回転方向(開弁方向または閉弁方向)に駆動する電磁アクチュエータまたは流体圧アクチュエータを用いても良い。
本実施例では、本発明の排気制御弁を、第1排気ガス流路1と第2排気ガス流路2とを連通するように仕切り壁3を貫通する連通孔4の開口面積を変化させることで、連通孔4を流れる排気ガスの流量を調整する排気ガス流量制御弁に適用しているが、本発明の排気制御弁を、第1流路と第2流路とを連通するように隔壁を貫通する連通孔の開口面積を変化させることで、連通孔を流れる排気ガスの圧力を調整(調圧)する排気ガス圧力制御弁に適用しても良い。
【0075】
本実施例では、本発明の排気制御弁を、仕切り壁3を貫通する連通孔4を流れる排気ガスの流量を開閉動作により制御(調整)するウェイストゲートバルブに適用しているが、本発明の排気制御弁を、隔壁を貫通する連通孔を流れる排気ガスの流量を開閉動作により制御(調整)する排気流量制御バルブ(または流路切替バルブ)に適用しても良い。
この場合には、ハウジングの内部に回転自在に収容されるタービンホイールを有するターボ過給機を備えている。また、ハウジングには、タービンホイールよりも排気流方向の上流側に排気ガス入口流路が設けられている。この排気ガス入口流路は、タービンホイールの回転軸方向に2分割して設けられる2つの第1、第2排気ガス流路(第1、第2流路)を有している。なお、これらの第1、第2排気ガス流路の排気流方向の下流側には、タービンホイールへ排気ガスを導入する2つの第1、第2ノズルが設けられる。
なお、本発明の排気装置を、排気制御バルブとウェイストゲートバルブ(バイパスバルブ)とを設置したシステムに適用しても良い。また、ハウジングは、タービンのハウジングに限定されず、排気管の一部を構成する排気ダクトであっても構わない。
【符号の説明】
【0076】
1 第1排気ガス流路(第1流路、排気入口流路)
2 第2排気ガス流路(第2流路、バイパス流路)
3 ハウジングの仕切り壁(隔壁)
4 ハウジングの連通孔(連通路)
5 ウェイストゲートバルブのバルブ本体
6 ハウジングのシート凹部
7 ウェイストゲートバルブのバルブアーム(アーム)
8 バルブアームのシャフト(回転軸)
14 バルブ本体の凸曲面(バルブシール面)
15 シート凹部の凹曲面(ハウジングシート面)
16 シート凹部の凹曲面
17 シート凹部の凹曲面
21 バルブ本体の結合部
31 バルブアームの拘束部
33 バルブ本体の結合部とバルブアームの拘束部との間のガタ(隙間)
41 シート凹部の段差
42 シート凹部の段差
61 連通孔の第2流路側開口周縁の面取り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)内燃機関の排気通路に連通する流路、この流路を2つの第1、第2流路に区画する隔壁、および前記第1流路と前記第2流路とを連通するように前記隔壁を貫通する連通路を有するハウジングと、
(b)このハウジング内部に収容されて、前記連通路を開閉するバルブ本体、およびこのバルブ本体と一体回転可能に連結するアームを有する排気制御弁と、
(c)前記アームを介して、前記バルブ本体をその移動方向に駆動するアクチュエータと
を備えた内燃機関の排気装置において、
前記連通路の開口周縁には、前記バルブ本体が着座可能な弓形状のシート凹部が設けられており、
前記シート凹部には、所定の曲率半径を有する円弧状の凹曲面が設けられており、
前記バルブ本体には、前記凹曲面の曲率半径と同程度の曲率半径を有する円弧状の凸曲面が設けられており、
前記排気制御弁は、前記連通路の中心線方向に垂直な方向に前記バルブ本体が回転して前記連通路を開閉し、且つ前記アクチュエータの動力を利用して前記バルブ本体を全閉作動させる場合、前記凸曲面と前記凹曲面とが曲面接触して前記2つの第1、第2流路間をシールするように構成されていることを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の排気装置において、
前記バルブ本体の凸曲面形成方向の中心位置を前記凸曲面の円弧中心とし、
前記シート凹部の凹曲面形成方向の中心位置を前記凹曲面の円弧中心としたとき、
前記凸曲面の円弧中心と前記凹曲面の円弧中心とが、オフセットして配置されていることを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内燃機関の排気装置において、
前記アームは、前記連通路の中心線方向に垂直な方向に延びる回転軸を有していることを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関の排気装置において、
前記回転軸の中心線の位置を前記バルブ本体または前記アームの回転中心とし、
前記凸曲面の曲率半径の中心位置を前記凸曲面の曲率中心とし、
前記凹曲面の曲率半径の中心位置を前記凹曲面の曲率中心としたとき、
前記バルブ本体または前記アームの回転中心と前記凸曲面の曲率中心または前記凹曲面の曲率中心とが、オフセットして配置されていることを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の排気装置において、 前記バルブ本体は、その凸曲面側に対して逆側の背面から突出した結合部を有し、
前記アームは、前記結合部の周囲を取り囲むことで前記バルブ本体を拘束する環状の拘束部を有していることを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の排気装置において、
前記バルブ本体および前記アームは、前記結合部と前記拘束部との間に、熱歪みによる変形を吸収するための隙間を有していることを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の排気装置において、 前記連通路の幅方向の中心を通り、排気ガスの流れ方向に延びる中心線を前記連通路の中心線とし、前記バルブ本体の凸曲面形成方向の中心を通り、前記バルブ本体をその板厚方向に貫く中心線を前記バルブ本体の中心線としたとき、
前記連通路の中心線と前記バルブ本体の中心線とが、前記連通路の中心線方向に垂直な方向にオフセットして配置されていることを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の排気装置において、 前記シート凹部は、一方の流路側から他方の流路側へ向けて弓形状に凹むように設けられていることを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の排気装置において、 前記シート凹部には、前記バルブ本体の移動方向に延びる一対の段差が設けられており、
前記一対の段差は、前記凹曲面を挟んで対向するように配置されていることを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項10】
請求項9に記載の内燃機関の排気装置において、
前記バルブ本体は、前記一対の段差間に摺動可能に嵌め合わされていることを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の排気装置において、
前記連通路の開口周縁の一部には、前記バルブ本体が全閉状態から開弁し始める開弁初期における特性を定めるための面取りが設けられていることを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の排気装置において、
前記ハウジングの内部に回転自在に収容されるタービンホイールを有するターボ過給機を備え、
前記ハウジングは、前記タービンホイールよりも排気流方向の下流側に排気出口流路を有し、
前記第1流路は、前記タービンホイールよりも排気流方向の上流側に設けられて、排気ガスを前記タービンホイールへ導く排気入口流路であって、
前記第2流路は、排気ガスを前記タービンホイールを迂回して前記排気出口流路へ導くバイパス流路であって、
前記排気制御弁とは、前記連通路を流れる排気ガスの流量を前記バルブ本体の開閉動作により制御するウェイストゲートバルブのことであることを特徴とする内燃機関の排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−167610(P2012−167610A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29789(P2011−29789)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】