説明

内燃機関の潤滑油供給装置

【課題】オイル切れを生じさせない潤滑油供給装置を提供する。
【解決手段】内燃機関を駆動源とした主オイルポンプ38と、オイルパン22に配置したオイルストレーナ36と、オイルストレーナ36と主オイルポンプ38とを連結する吸引用の第1油路42と、主オイルポンプ38から内燃機関12の内部に通じる供給用の第2油路44と、第1油路42に設けられ、第2油路44内の油圧が所定値以下に低下すると作動する副オイルポンプ40とから潤滑油供給装置10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械駆動式のオイルポンプを備えた内燃機関の潤滑油供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に内燃機関(「エンジン」ともいう。)は、下部に設けられたオイルパンに潤滑油を貯留し、オイルポンプで潤滑油をオイルパンから吸引して、軸受やピストンなどの内燃機関の各部に供給している。近年、信号で車両が停止した際エンジンの作動を停止させる、いわゆるアイドルストップ機能付きの車両や、エンジンとともに駆動用電動機を搭載し、エンジンと駆動用電動機との駆動源を適宜選択して走行する、いわゆるハイブリッド車両などが知られている。
【0003】
信号待ちでエンジンを停止させた場合、アクセルペダルを踏むなど運転者が発進を希望する動作を行うと、直ちにエンジンを始動させ、車両を発進可能とする。またハイブリッド車両では、エンジンの駆動を必要としないときはエンジンの作動を停止させておき、発電時や駆動力を必要とするときなどにエンジンを適宜始動させている。
【0004】
内燃機関の潤滑油供給装置は、オイルポンプを通常、エンジンなどの駆動軸に接続させ、エンジンを駆動源として潤滑油を圧送している。そのため、エンジンの作動が停止すると、オイルポンプも停止し、エンジン各部への潤滑油の供給が停止する。
【0005】
オイルポンプが停止すると、潤滑油が軸受などから流下し、また油路内にある潤滑油がオイルパンに戻り、エンジンを始動させても、潤滑油が軸受に供給されるまでの間、潤滑油が供給されない状態が一時的に生じることがある。
【0006】
アイドルストップ機能付きの車両や、ハイブリッド車両では、エンジンの停止、始動が頻繁に繰り返されることから、潤滑油が一時的に供給されない状態が生じることにより、軸受など摺動部分に油膜切れ、特にクランク軸を支持している軸受の油膜切れによる磨耗が発生することが考えられている。
【0007】
そこでかかる磨耗を防止するため、例えばエンジンが停止している間は、電動オイルポンプを作動させ、電動オイルポンプによりエンジン内部に潤滑油を圧送したり、オイルポンプに潤滑油が流入する油路に逆止弁を設け、オイルポンプが停止しても、潤滑油がオイルパンに戻らないようにした各種発明が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−332886号公報
【特許文献2】特許第4154267号公報
【特許文献3】特開2009−209885号公報
【特許文献4】特開平03−286114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしなから、電動オイルポンプを設けた場合、別途部品を組み付けたり、油路を別に形成する必要があり、また制御装置のプログラムの変更が必要となるなど、コストと手間がかかることが生じていた。
【0010】
また油路に逆止弁を設けた場合、エンジンが停止している間は、潤滑油を軸受等に供給することができず、エンジンを始動させた際、一時的に潤滑油が供給されない状態が生じていた。
【0011】
本発明は上記課題を解決し、停止と始動が繰り返し行なわれる内燃機関においても、内燃機関内部の摺動部分の油膜切れによる磨耗の発生を防止した内燃機関の潤滑油供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、内燃機関の潤滑油供給装置を次のように構成した。
内燃機関の潤滑油供給装置は、内燃機関を駆動源とした主オイルポンプと、オイルパンに配置したオイルストレーナと、オイルストレーナと主オイルポンプとを連結する吸引用の第1油路と、主オイルポンプから内燃機関内部に通じる供給用の第2油路と、第1油路に設けられ、第2油路内の油圧が所定値以下に低下すると作動する副オイルポンプとから潤滑油供給装置を構成した。
【発明の効果】
【0013】
内燃機関の副オイルポンプは、エンジンが停止するなど第2油路内の油圧が所定値以下に低下すると作動し、潤滑油を送り出す。これにより、エンジンが停止しているときでも、潤滑油がエンジン内部に送り出され、油膜切れを防止できる。エンジンが再始動された際、潤滑油がオイルポンプから直ちに送出され、エンジン始動直後の無潤滑の時間帯を生じさせない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる潤滑油供給装置を備えた内燃機関を示す構成図である。
【図2】同潤滑油供給装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態である内燃機関の潤滑油供給装置について説明する。
図1に、潤滑油供給装置10を備えた内燃機関(以下、「エンジン」という。)12を示す。
【0016】
エンジン12は、例えばディーゼルエンジンであり、シリンダ14と、シリンダ14の上部に設けられたシリンダヘッド16と、ピストン18と、クランク機構20と、オイルパン22などを備えて構成されている。尚エンジン12は、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジン、その他でもよい。
【0017】
シリンダ14の内部には、ピストン18が往復動自在に設けられている。シリンダヘッド16には、カム軸24、吸気バルブ26、排気バルブ28などが設けられている。カム軸24は、軸受によりシリンダヘッド16に回動自在に設けられ、吸気バルブ26と排気バルブ28はシリンダヘッド16に軸方向に往復動自在に取り付けられ、カム軸24により駆動される。
【0018】
クランク機構20は、コネクティングロッド30の一端がピストン18に連結され、クランク軸32がクランク軸受34に回動自在に取り付けられている。シリンダ14の下部には、オイルパン22が設けられている。オイルパン22には、潤滑油が規定量貯留され、潤滑油供給装置10が配置されている。
【0019】
潤滑油供給装置10は、図2に示すようにオイルストレーナ36と、主オイルポンプ38と、副オイルポンプ40などから構成されている。オイルストレーナ36は、金網など目の粗いフィルタであり、オイルパン22の内部に、オイルパン22に貯留されている潤滑油に浸る状態で配置してある。
【0020】
主オイルポンプ38は、従来から知られている例えば機械式のオイルポンプであり、クランク軸32に連結したギヤ33と駆動ギヤ35が噛み合い、クランク軸32の回転により駆動され、吸引口から吐出口へ潤滑油を送り出す。主オイルポンプ38の吸引口には、第1油路42が接続されている。第1油路42の他端は、オイルストレーナ36に接続されており、主オイルポンプ38が駆動すると、オイルストレーナ36を通してオイルパン22に貯留されている潤滑油を吸引する。
【0021】
主オイルポンプ38の吐出口には、第2油路44が取り付けられている。第2油路44は、エンジン12の内部に連通し、例えばカム軸24、クランク軸32、吸気バルブ26、排気バルブ28などに潤滑油を供給している。第2油路44には、圧力スイッチ46が設けられている。
【0022】
圧力スイッチ46は、第2油路44内の油圧を検出して電気的接点を開閉させるスイッチであり、車両のメインキー47をオンしたときに車載バッテリー49に通電する主電源と副オイルポンプ40とを連結している電源線48の途中に設けられている。圧力スイッチ46は、通常は閉状態であり、第2油路44内の潤滑油の圧力値が所定値以上になると電気的接点が開かれる。圧力スイッチ46の接点が開かれる所定値は、例えばエンジン12が作動して主オイルポンプ38が第2油路44内に通常の状態で潤滑油を供給しているときに示される圧力である。
【0023】
副オイルポンプ40は、例えば非接触駆動型の軸流ポンプであり、オイルストレーナ36の下流の第1油路42の内部に設置されている。副オイルポンプ40は、駆動用モータ50と圧送用羽根52を有し、駆動用モータ50に電源が供給されるとオイルストレーナ36を通してオイルパン22に貯留されている潤滑油を吸引し、主オイルポンプ38に圧送する。
【0024】
副オイルポンプ40は、圧力スイッチ46の電気的接点を開かせることがなく、かつ少なくとも、クランク軸32を支持するクランク軸受34に潤滑油を供給し、クランク軸32を潤滑する圧送圧力を生じさせる。したがって副オイルポンプ40は、潤滑油をシリンダヘッド16に設けられたカム軸24や吸気バルブ26等に供給させるまで高い圧送圧力を必要としない。また副オイルポンプ40は、主オイルポンプ38の作動により第1油路42内を通過する潤滑油に通過抵抗を与えることが少なく構成されている。
【0025】
次に、潤滑油供給装置10の作用について説明する。
【0026】
エンジン12が作動していると、主オイルポンプ38がギヤ33を介してエンジン12により駆動され、オイルパン22から潤滑油を吸引し、潤滑油をエンジン12の内部に圧送する。主オイルポンプ38から圧送された潤滑油は、第2油路44を通り、クランク軸32、カム軸24、吸気バルブ26や排気バルブ28等に供給され、それらを潤滑する。
【0027】
第2油路44内の油圧は所定値を超えているので、圧力スイッチ46は開き、副オイルポンプ40へ電力は供給されない。また副オイルポンプ40は、流通する潤滑油に抵抗をほとんど与えないので、オイルパン22から吸引された潤滑油は円滑にエンジン12の内部の各所に供給される。
【0028】
そして、例えばアイドルストップ機能つき車両が信号待ちなどで停車すると、エンジン12が停止し、主オイルポンプ38の作動が停止する。一方信号待ちでのエンジン停止は、メインキー47がオンされているので、第2油路44内の油圧低下で圧力スイッチ46の接点が閉じ、副オイルポンプ40に電源線48を通して車載バッテリー49の電力が供給される。
【0029】
副オイルポンプ40に電力が供給され、副オイルポンプ40が作動すると、副オイルポンプ40により潤滑油がオイルパン22から吸引され、第1油路42を通して主オイルポンプ38に潤滑油が圧送される。更に副オイルポンプ40は、潤滑油を主オイルポンプ38を通過させて第2油路44を通し、クランク軸32のクランク軸受34に供給する。
【0030】
したがって、エンジン12が停止した状態であっても、信号待ちなど一時的な停止の場合は、潤滑油がクランク軸32に供給される。そして信号が切り換わりエンジン12が始動されても、潤滑油が副オイルポンプ40によりクランク軸32に供給されているので、クランク軸32は、クランク軸受34との間で油膜切れを生じさせることなく駆動される。
【0031】
更に、エンジン12が停止中にクランク軸32に潤滑油が供給されているので、主オイルポンプ38が作動を開始したとき、潤滑油がエンジン12の内部に直ちに圧送され、エンジン始動直後においても潤滑油が供給されない状態を生じさせない。
【0032】
これにより、例えばアイドルストップ機能つき車両やハイブリッド車両などにおいて、搭載されているエンジン12が、信号待ちや発電作業などにより頻繁に停止、始動が繰り返されても、エンジン12の摺動部分に油膜切れを原因とする磨耗などを生じさせることがない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、オイルポンプを備えた内燃機関に利用できる。
【符号の説明】
【0034】
10…潤滑油供給装置 12…エンジン 18…ピストン 20…クランク機構 22…オイルパン 32…クランク軸 34…クランク軸受 36…オイルストレーナ 38…主オイルポンプ 40…副オイルポンプ 42、44…油路 46…圧力スイッチ 47…メインキー 48…電源線 49…車載バッテリー 50…駆動用モータ 52…圧送用羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を駆動源とした主オイルポンプと、
前記内燃機関のオイルパンに配置したオイルストレーナと、
前記オイルストレーナと前記主オイルポンプとを連結する吸引用の第1油路と、
前記主オイルポンプから前記内燃機関内部に通じる供給用の第2油路と、
前記第1油路に設けられ、前記第2油路内の油圧が所定値以下に低下すると作動し、前記内燃機関内部に潤滑油を供給する副オイルポンプとから構成したことを特徴とする内燃機関の潤滑油供給装置。
【請求項2】
前記副オイルポンプは、軸流ポンプで、前記第1油路の内部に設けられ、
前記第2油路内に、該第2油路内の圧力を感知して電気的接点を作動させる圧力スイッチを設け、
前記圧力スイッチを介して前記副オイルポンプに、車両のメインスイッチが閉じた状態で通電される電源を接続させたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の潤滑油供給装置。
【請求項3】
前記内燃機関は、一時的な停車において該内燃機関の作動を中断させる車両、もしくは該内燃機関と異なる駆動機構を有する車両に搭載されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の潤滑油供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−225249(P2012−225249A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93272(P2011−93272)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】