説明

内燃機関の燃焼状態検知方法

【課題】燃焼の持続時間の判断を、より正確にかつ制御装置が行う他の制御を妨げずに行うようにする。
【解決手段】内燃機関の燃焼室に点火毎にイオン電流Iionを発生させ、イオン電流Iionが所定電流値を上回る毎、及び/又はイオン電流Iionが所定電流値を下回る毎にマイクロコンピュータを利用した制御装置が実行中の処理を一時中断する割り込み処理を実行し、その割り込み処理の間にイオン電流Iionを検出し、所定の検出期間が終了した時点で燃焼の持続時間を記録して燃焼状態を判断するものであって、イオン電流Iionが所定電流値を上回る回数又はイオン電流が所定電流値を下回る回数COUNTが予め設定した最大検出回数Cmaxに達した時点で前記割り込み処理を禁止して前記燃焼の持続時間を記録するとともに、機関回転数が低い運転領域での低回転運転時と比較して、機関回転数が高い運転領域での高回転運転時に前記最大検出回数Cmaxを小さくする内燃機関の燃焼状態検知方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火毎に発生させるイオン電流を利用した内燃機関の燃焼状態検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼時においては、導電性を有するラジカル成分が火炎内に発生することから、イオン電流として燃焼状態を検出できることが従来知られている。
【0003】
従来、イオン電流の電流値をサンプリングし記憶すると記憶装置の容量を大量に消費するので、必要とする記憶装置の容量を小さくすべく種々の方法が考えられてきた。例えば、イオン電流を検出する検出期間の長さを、エンジンの回転数に基づいて可変設定し、ノイズが含まれる可能性のある期間におけるイオン電流の検出を無効にすることが考えられている。(例えば、特許文献1を参照。)
また、イオン電流が所定電流値を下回った際に、マイクロコンピュータを利用した制御装置におけるマイクロコンピュータの割り込み処理を利用して点火からの経過時間を記録し、次の点火があった時点で最後に記録された前記経過時間を燃焼の持続時間として判断するとともに、イオン電流が所定電流値を下回る回数を検出し、検出した回数が所定回数以上となった際にはその時点で最後に記録された前記経過時間を燃焼の持続時間として決定し、決定された燃焼の持続時間を利用して燃焼状態を判断する方法も考えられている。(例えば、特許文献2を参照。)
【特許文献1】特開平10−159699号公報
【特許文献2】特開平9−228940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の検出方法を採用した場合、前記検出期間以降に発生するイオン電流は全く検知されない。すなわち、特許文献1の検出方法では、検出期間以降に後燃えが発生しても、後燃えに由来するイオン電流が検出できず、燃焼の持続時間を過小に見積もってしまう不具合が発生し得る。
【0005】
また、特許文献2の検出方法を採用した場合、特に高回転数域では、隣接する気筒における点火などに伴うノイズが高密度に発生するが、このようなノイズに由来するイオン電流の立ち下がりをすべて検出すると、単位時間あたりのマイクロコンピュータの割り込み処理の回数が増す。しかして、前記割り込み処理の回数が非常に大きくなると、マイクロコンピュータが過負荷状態となり、このようなマイクロコンピュータを利用した制御装置が並行して行う空燃比制御や進角制御等の他の制御も円滑に行えなくなる不具合が発生し得る。
【0006】
本発明は、前記課題を解決すべく、制御装置のマイクロコンピュータが過負荷状態となることを防ぎつつ、燃焼状態の判断をより正確に行えるようにするための新たな方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る内燃機関の燃焼状態検知方法は、内燃機関の燃焼室に点火毎にイオン電流を発生させ、所定の検出期間内においてイオン電流が所定電流値を上回る毎、及び/又はイオン電流が所定電流値を下回る毎にマイクロコンピュータを利用した制御装置が実行中の処理を一時中断する割り込み処理を実行し、その割り込み処理によって測定したイオン電流に基づき燃焼状態を判断する内燃機関の燃焼状態検知方法であって、イオン電流が所定電流値を上回る回数及び/又はイオン電流が所定電流値を下回る回数が予め設定した最大検出回数に達した時点で前記割り込み処理を禁止するとともに、機関回転数が低い運転領域での低回転運転時には前記検出期間内に発生する前記割り込み処理が略全て許可されるように前記最大検出回数を設定し、機関回転数が高い運転領域での高回転運転時には低回転運転時と比較して前記最大検出回数を小さくしていることを特徴とする。
【0008】
このように制御を行えば、低回転運転時には、ノイズの発生密度及びノイズに由来する単位時間あたりの割り込み処理の発生回数は少ないので、前記検出期間内に発生する前記割り込み処理を略全て許可しても制御装置にかかる負荷は比較的小さく、従って前記割り込み処理を略全て許可することにより後燃えを検出しやすくできる。すなわち、より正確に燃焼状態の判断を行うことができる。一方、高回転運転時において前記最大検出回数を小さくしていることから、高回転運転時において単位時間あたりの割り込み処理の発生回数を少なくでき、従って高回転運転時において制御装置のマイクロコンピュータが過負荷状態になることを防ぎつつ後燃えに由来するイオン電流を検出し燃焼状態の判断を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のような構成であるから、低回転運転時においては正確に持続時間の判断を行うことができるようにしつつ、高回転運転時においては前記最大検出回数を小さくすることにより単位時間あたりの割り込み処理の回数を制限でき、制御装置のマイクロコンピュータが過負荷状態になることを防ぎつつ後燃えに由来するイオン電流を検出し燃焼の持続時間の判断を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
この図1に概略的に示したエンジン100は、自動車用の4サイクル4気筒のもので、その吸気系1には図示しないアクセルペダルに応動して開閉するスロットルバルブ2が配設され、その下流側にはサージタンク3が設けられている。サージタンク3に連通する一方の端部近傍には、さらに燃料噴射弁5が設けてあり、その燃料噴射弁5を、電子制御装置6により制御するようにしている。燃焼室30を形成するシリンダヘッド31には、吸気弁32及び排気弁33が配設されるとともに、火花を発生するとともにイオン電流Iを検出するための電極となるスパークプラグ18が取り付けてある。また排気系20には、排気ガス中の酸素濃度を測定するためのO2 センサ21が、図示しないマフラに至るまでの管路に配設された触媒装置である三元触媒22の上流の位置に取り付けられている。なお、図1にあっては、エンジン100の1気筒の構成を代表して図示している。
【0012】
電子制御装置6は、中央演算処理装置7と、記憶装置8と、入力インターフェース9と、出力インターフェース11とを具備してなるマイクロコンピュータシステムを主体に構成されている。入力インターフェース9には、サージタンク3内の圧力すなわち吸気管圧力を検出するための吸気圧センサ13から出力される吸気圧信号a、エンジン100の回転状態を検出するためのカムポジションセンサ14から出力される気筒判別信号G1とクランク角度基準位置信号G2とエンジン回転数信号b、車速を検出するための車速センサ15から出力される車速信号c、スロットルバルブ2の開閉状態を検出するためのアイドルスイッチ16から出力されるIDL信号d、エンジン100の冷却水温を検出するための水温センサ17から出力される水温信号e、上記したO2 センサ21から出力される電流信号h等が入力される。一方、出力インターフェース11からは、燃料噴射弁5に対して燃料噴射信号fが、またスパークプラグ18に対してイグニションパルスgが出力されるようになっている。
【0013】
このスパークプラグ18には、イオン電流Iを測定するためのバイアス用電源24が接続され、入力インターフェース9とこのバイアス電源24との間にはイオン電流測定用回路25が接続されている。バイアス用電源24は、イグニションパルスgが消滅した時点でスパークプラグ18にイオン電流測定のためのバイアス電圧を印加するものである。そして、電圧の印加により、スパークプラグ18の電極間に流れたイオン電流Iは、イオン電流測定用回路25により測定される。また、イオン電流測定用回路25は、後述する波形整形回路たるコンパレータ25aを有し、電子制御装置6の入力インターフェース9に電気的に接続され、電圧の印加により発生したアナログ信号であるイオン電流を、方形波(パルス)状に波形整形して出力する。コンパレータ25aは、図2に示すように、あらかじめ設定された所定電流値Irefとバイアス用電源24を介して入力されるイオン電流Iionとを比較し、イオン電流Iionが所定電流値Irefを上回った場合に出力信号Ioutを出力する。すなわち、出力信号Ioutは、図3に示すように、所定電流値Irefを上回った時点で立ち上がり(オンし)、下回った時点で立ち下がる(オフする)方形波となる。このコンパレータ25aの出力端は、イオン電流Iionの持続時間を計時するために入力インターフェース9を介して中央演算処理装置7に接続される。このようなバイアス用電源24とイオン電流測定用回路25とは、当該分野でよく知られている種々のものを適用することができる。なお、本実施形態では、点火タイミングが360°CAだけ異なる2つの気筒からのイオン電流Iionを合成して電子制御装置6に入力するようにしている。なお、前記図3において、(a)には低回転時におけるイオン電流Iion及び波形整形後の方形波を、また、(b)には高回転時におけるイオン電流Iion及び波形整形後の方形波をそれぞれ示している。また、前記図3の(a)及び(b)は、時間軸のスケールを共通にしてある。また、前記図3においては、点火タイミングをToffとして示している。
【0014】
電子制御装置6には、吸気圧センサ13から出力される吸気圧信号aとカムポジションセンサ14から出力されるエンジン回転数信号bとを主な情報とし、エンジン100の運転状態に応じて決まる各種の補正係数で基本噴射時間(基本噴射量)を補正して燃料噴射弁開成時間すなわちインジェクタ最終通電時間を決定し、その決定された通電時間により燃料噴射弁5を制御して、エンジン負荷に応じた燃料を吸気系1に噴射させるためのプログラムが内蔵してある。
【0015】
また、このようにエンジン100の燃料噴射を制御する一方、点火毎に燃焼室30内に流れるイオン電流Iを検出して、エンジン100の運転領域の全領域において燃焼状態を判定し得るように、電子制御装置6はプログラミングしてある。具体的には、燃焼室30内に点火毎にイオン電流Iionを発生させ、イオン電流Iionの消滅するまでの持続時間を測定するとともに、所定の検出期間が終了した時点、すなわち本実施形態では点火からクランク角が360°CA進行した時点でその時点までに測定していたイオン電流Iionの持続時間を燃焼の持続時間として決定するようにプログラムしてある。
【0016】
本実施形態では、中央演算処理装置7内に、電子制御装置6の内部クロック信号CLKにより作動するフリーラニングカウンタが設定してあり、このフリーラニングカウンタによりイオン電流Iionの持続時間を測定するようになっている。すなわち、中央演算処理装置7におけるフリーラニングカウンタは、点火毎にリセットされ、コンパレータ25aから出力信号Ioutの立ち上がりが入力される毎にインプットキャプチャー割り込み状態となり、前記出力信号Ioutの立ち下がりにより割り込みがリセットされるまで計時を行い割り込みがリセットされた時点の測定時間を保持し、イオン電流Iionの持続時間として出力するものである。なお、割り込みがかかっていない状態でフリーラニングカウンタは計時を停止しており、再度割り込みがかかった場合には、前回割り込みがリセットされる時点で保持された測定時間からフリーラニングカウンタの計時を再開するようにしている。すなわち、点火Toff以降における割り込み状態にある時間の累計を計時するようにしている。そして、割り込みがリセットされる毎に割り込みがリセットされた時点の測定時間を保持し、イオン電流Iionの持続時間として出力するようにしている。
【0017】
また、本実施形態では、イオン電流Iionが所定電流値Irefを上回る回数である検出回数COUNTを検出し、イオン電流Iionが所定電流値Irefを下回った時点で前記検出回数COUNTが所定の最大検出回数Cmaxに達していることが判定された場合にはその時点までに測定していたイオン電流Iionの持続時間を燃焼の持続時間として決定するようにプログラムしてある。
【0018】
しかして本実施形態では、前記最大検出回数Cmaxを、エンジン回転数が低い運転領域での低回転運転時には前記検出期間内に発生する前記割り込み処理が略全て許可されるような第1の所定値に設定しているとともに、エンジン回転数が高い運転領域での高回転運転時には、前記第1の所定値と比較して小さい第2の所定値に前記最大検出回数Cmaxを設定するようにしている。具体的には、エンジン回転数が所定の閾値以上である高回転運転時には、ノイズが頻繁に発生することにより前記割り込み処理が頻繁に発生し中央演算処理装置7が過負荷状態になることを防ぐべく、前記第2の所定値を、中央演算処理装置7が過負荷状態とならない範囲で最大限の前記割り込み処理の回数ないしそれ以下となるように設定している。一方、エンジン回転数が所定の閾値以下である低回転運転時には、前記検出期間内に発生する前記割り込み処理が略全て許可される程度に十分大きな値で、かつ前記第2の所定値よりも大きく、中央演算処理装置7が過負荷状態とならない範囲の値に前記第1の所定値を設定している。なお、以下に述べる例では、第1の所定値を12回、第2の所定値を6回にそれぞれ設定している。
【0019】
イオン電流Iionを検出し、燃焼の持続時間を判断するプログラムの概略手順を、フローチャートである図4を参照して説明する。
【0020】
ステップS1では、検出回数COUNTを0にセットする。
【0021】
ステップS2では、エンジン回転数を検出する。
【0022】
ステップS3では、ステップS2で検出したエンジン回転数が前記閾値以下であるか否か、すなわち低回転運転であるかもしくは高回転運転であるかを判定し、エンジン回転数が前記閾値以下であれば、すなわち低回転運転であれば前記第1の所定値、そうでなければ、すなわち高回転運転であれば前記第1の所定値よりも小さな前記第2の所定値に最大検出回数Cmaxを設定する。
【0023】
ステップS4では、イオン電流Iionを波形整形して得られた出力信号Ioutのパルス波形の立ち上がりエッジを検出する。前記立ち上がりエッジを検出した場合には、ステップS5に進む。一方、前記立ち上がりエッジを検出しなかった場合には、ステップS7に進む。
【0024】
ステップS5では、検出回数COUNTに1を加える。
【0025】
ステップS6では、インプットキャプチャー割り込み状態とし、前記出力信号Ioutの立ち下がりにより割り込みがリセットされるまで前記イオン電流Iionの持続時間の計時を行い、割り込みがリセットされた時点の前記イオン電流Iionの持続時間を記録する。
【0026】
ステップS7では、前記検出回数COUNTが前記最大検出回数Cmaxを越えるか又はクランク角度が点火Toffの時点から360°CA進行しているか否かを判定する。入力回数COUNTが前記最大検出回数Cmaxを越えている又はクランク角度が点火Toffの時点から360°CA進行している場合には、ステップS8に進む。一方、前記検出回数COUNTが前記最大検出回数Cmax以下である場合には、ステップS4に戻る。
【0027】
ステップS8では、最後に記録された前記イオン電流Iionの持続時間を、燃焼の持続時間として記憶装置8の所定領域に記録し、処理を終了する。
【0028】
このような構成において、点火毎にスパークプラグ18にバイアス電圧が印加され、点火Toffの直後からイオン電流Iionが燃焼室30内に発生する。その後、検出回数COUNTを0にセットし、エンジン回転数を検出し、最大検出回数Cmaxを設定する。すなわち、ステップS1→S2→S3を順に実行する。
【0029】
イオン電流値の大きなピークが上死点TDC近傍で発生し、その後はなだらかに減衰する。この場合、立ち上がりエッジが検出されるまでは、ステップS4→S7を順に実行し、ステップS7を実行した後ステップS4に戻る。最初の立ち上がりエッジが検出されると、割り込み処理が実行されて検出回数COUNTが1となり、その回数は最大検出回数Cmax以下であるので、ステップSS4→S5→S6→S7を順に実行してイオン電流Iionの持続時間を記録し、ステップS7を実行した後ステップS4に戻る。その後、立ち上がりエッジが検出される毎に割り込み処理を実行し、イオン電流Iionの持続時間を測定して割り込みがリセットされた時点のイオン電流Iionの持続時間を記録する。
【0030】
低回転数域においては、クランク角度が360°CA進行するのに要する時間が長いので、隣接する気筒の点火等に伴うノイズの発生間隔も長く、従って単位時間あたりのパルス波形の立ち上がりエッジの発生回数が少ないので、最大検出回数Cmaxを大きくしてより正確に燃焼の持続時間を測定できるようにしている。例えば、図3の(a)に示す例においては、最大検出回数Cmaxを12回に設定している。これに対して、点火Toffの時点から次の点火Toffの時点までの間における立ち上がりエッジの発生回数は8回であるので、最大検出回数Cmaxに至らない。したがって、立ち上がりエッジを検出しない場合は、ステップS4→S7を順に実行し、ステップS7を実行した後ステップS4に戻るようにしているとともに、立ち上がりエッジが検出された際には、割り込み処理を行いステップS4→S5→S6→S7を順に実行してイオン電流Iionの持続時間を測定して記録し、ステップS7を実行した後ステップS4に戻る。そして、クランク角度が点火Toffの時点から360°CA進行した時点でステップS8を実行し、最後、すなわち8回目に記録されたイオン電流Iionの持続時間を燃焼の持続時間として記録する。
【0031】
一方、高回転数域においては、クランク角度が360°CA進行するのに要する時間が短いので、隣接する気筒の点火等に伴うノイズの発生間隔も短く、従って単位時間あたりのパルス波形の立ち上がりエッジの発生回数が多くなるので、最大検出回数Cmaxを小さくして単位時間あたりの割り込み処理の回数を制限している。例えば、図3の(b)に示す例においては、最大検出回数Cmaxを6回に設定している。これに対して、点火Toffの時点から次の点火Toffの時点までの間における立ち上がりエッジの発生回数は8回であり、最大検出回数Cmaxを越える。このような場合では、立ち上がりエッジの検出回数が最大検出回数Cmaxに達するまでは、上記した低回転数域の場合と同様の制御を行う。つまり、立ち上がりエッジが検出されないときは、ステップS4→S7を順に実行し、ステップS7を実行した後ステップS4に戻る手順により立ち上がりエッジを検出するまで待機し、立ち上がりエッジを検出する毎に、ステップS4→S5→S6→S7を順に実行してイオン電流Iionの持続時間を測定して記録し、ステップS7を実行した後ステップS4に戻る。この後、立ち上がりエッジの検出回数COUNTが最大検出回数Cmaxに達した場合、すなわちこの例では6回目の立ち上がりエッジを検出した場合は、ステップS7を実行した後ステップS8を実行して以後の割り込み処理を禁止し、最後、すなわち6回目に記録されたイオン電流Iionの持続時間を燃焼の持続時間として記録する。
【0032】
そして、電子制御装置6には、前記燃焼の持続時間をパラメータとして点火時期、空燃比等の各種パラメータを算出するプログラムも内蔵してあり、上述した制御により燃焼の持続時間が記録された後、前記プログラムに基づき前記各種パラメータを算出してエンジン100の燃焼状態の制御を行うようにしている。また、記録された燃焼の持続時間が所定の閾値よりも大きい場合には後燃えが発生しているものと判断してこれを解消すべく点火時期や空燃比の制御を行うようにしている。
【0033】
従って、本実施形態によれば、低回転運転時には点火Toffの時点からクランク角度が360°CA進行するまで前記立ち上がりエッジを検出し続け、その都度割り込み処理を行い割り込み状態にある状態の時間すなわちイオン電流Iionの持続時間の累計を燃焼の持続時間として記録することにより燃焼の持続時間を正確に測定することができる。その一方で、高回転運転時にはイオン電流Iionにノイズが頻繁に発生するので、前記立ち上がりエッジの検出回数COUNTのカウントを最大検出回数Cmaxまでで打ち切り、割り込み制御の回数を抑えることにより、中央演算処理装置7が過負荷状態となることを防ぎ、他の制御の妨げにならないように燃焼の持続時間を測定できるようになる。しかも、高回転運転時には、低回転運転時と比較して最大検出回数Cmaxを減少させているので、短時間に多数回の割り込み制御が発生して中央演算処理装置7が過負荷状態となり他の制御の妨げになる不具合の発生を抑えつつ、燃焼の持続時間を正確に測定できる効果をより好適に実現できる。そして、燃焼の持続時間を正確に測定できるようになるので、これに基づき、後燃えに代表される不正な燃焼状態の検知をより正確に行うことができるようになる。
【0034】
なお、本発明は以上に述べた実施の形態に限られない。
【0035】
例えば、イオン電流Iionが所定電流値Irefを下回る毎にイオン電流Iionの持続時間の測定値を記録するようにし、検出期間が終了した時点又はイオン電流Iionが所定電流値Irefを下回った回数がエンジン回転数に対応する最大検出回数に達した時点で前記測定値を燃焼の持続時間として記録するようにしてもよい。また、イオン電流Iionが所定電流値Irefを上回った回数と下回った回数との合計がエンジン回転数に対応する最大検出回数に達した時点で前記測定値を燃焼の持続時間として記録するようにしてもよい。さらに、出力信号Ioutの立ち上がりから出力信号Ioutの立ち下がりまでの時間の累計でなく、点火Toffの時点から出力信号Ioutの立ち下がりまでの経過時間を燃焼の持続時間として記録するようにしてもよい。
【0036】
また、最大検出回数Cmaxは、上述した例に限らず、中央演算処理装置7が過負荷状態とならない範囲で任意に設定してよい。なお、イオン電流Iionが所定電流値Irefを上回る回数とイオン電流Iionが所定電流値Irefを下回る回数との合計を検出する場合は、最大検出回数Cmaxはイオン電流Iionが所定電流値Irefを上回る回数のみを検出する場合、又はイオン電流Iionが所定電流値Irefを下回る回数のみを検出する場合の2倍となる。
【0037】
そして、エンジン回転数と最大検出回数との対応を示す最大検出回数マップを記憶装置の所定領域に記憶し、点火が行われる毎に、エンジン回転数をパラメータとして前記検出回数マップを参照し最大検出回数を求めるようにしてもよい。この場合、前記最大検出回数は、高回転数になるほど小さく、具体的にはエンジン回転数に略反比例させて単位時間あたりの割り込み回数が略一定になるようにするとよい。
【0038】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの概略図。
【図2】同実施形態に係る波形整形を行う電気回路のブロック図。
【図3】同実施形態に係る作用説明図。
【図4】同実施形態に係る制御装置が行う処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0040】
6…電子制御装置
7…中央演算処理装置
8…記憶装置
9…入力インターフェース
11…出力インターフェース
24…バイアス用電源
25…イオン電流測定用回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室に点火毎にイオン電流を発生させ、所定の検出期間内においてイオン電流が所定電流値を上回る毎、及び/又はイオン電流が所定電流値を下回る毎にマイクロコンピュータを利用した制御装置が実行中の処理を一時中断する割り込み処理を実行し、その割り込み処理によって測定したイオン電流に基づき燃焼状態を判断する内燃機関の燃焼状態検知方法であって、
イオン電流が所定電流値を上回る回数及び/又はイオン電流が所定電流値を下回る回数が予め設定した最大検出回数に達した時点で前記割り込み処理を禁止するとともに、
機関回転数が低い運転領域での低回転運転時には前記検出期間内に発生する前記割り込み処理が略全て許可されるように前記最大検出回数を設定し、機関回転数が高い運転領域での高回転運転時には低回転運転時と比較して前記最大検出回数を小さくしていることを特徴とする内燃機関の燃焼状態検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−57558(P2006−57558A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241366(P2004−241366)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】