説明

内燃機関の蒸発燃料処理装置

【課題】パージ再開時にパージ量を不必要に制限することなく空燃比変動を抑制でき、パージ実行頻度を高めることのできる内燃機関の蒸発燃料処理装置を提供する。
【解決手段】パージ制御機構は、パージガスの吸入量をパージ動作の実行時間に応じて減少させる一方、パージ動作の停止時間が限界時間に達しないことを条件に、停止後のパージ動作における吸入量の設定値を停止時間に応じて増加させ(ステップS25、S26)、停止時間が限界時間に達したことを条件に、その停止後のパージ動作における吸入量の設定値の停止時間に応じた増加を抑制し(ステップS28、S29)、パージ動作が停止後に再開されたときに空燃比がその基準値に対し一定範囲内に入ることを条件に、パージ動作の実行時間に応じた吸入量の減少度合いを通常より大きくする(ステップS22、S23)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の蒸発燃料処理装置に関し、特に燃料パージによる空燃比の変動を抑えるように制御される内燃機関の蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両駆動用の内燃機関(以下、エンジンともいう)で揮発性の高い燃料を用いる場合、燃料タンク内等で発生する蒸発燃料を活性炭を用いたキャニスタに吸着させておき、エンジンの運転中にキャニスタから燃料を脱離させて吸気通路内に吸入させるパージ動作を行う蒸発燃料処理装置が装備されている。また、このような蒸発燃料処理装置を備えた内燃機関においては、空燃比センサにより排気空燃比をモニタし、それを基に空燃比を目標空燃比に追従させる空燃比フィードバック制御が実行されることが多い。しかし、近時の車両においては、アイドリングストップ(アイドル時のエンジン停止制御)や燃料カット等を実行して燃費を高めるいわゆるエコラン制御が要求されることから、蒸発燃料処理装置におけるパージ動作の停止期間が長くなってしまい、パージ再開時における燃料ベーパの濃度が高くなり易くなっている。したがって、パージ再開時に空燃比が大きく変動しないように、吸入空気量に対するパージ流量の比率(以下、パージ率という)を適切に制御するパージ制御が要求される。
【0003】
パージ制御を行う従来の内燃機関の蒸発燃料処理装置としては、例えば燃料パージの停止期間中にキャニスタへの燃料の吸着量が増加して、パージガス中の燃料濃度が所定濃度まで上昇した場合、パージ再開時にパージ率を低下させる低デューティ制御を実行するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、燃料タンク内で蒸発ベーパが発生し易い条件が成立するときに積算動作する積算カウンタを設けておき、燃料パージの停止期間中は、燃料ベーパが発生し易い条件が成立すればその積算カウンタの積算値を所定周期でカウントアップさせ、一方、燃料パージの実行期間中は、その積算カウンタの積算値を所定周期でカウントダウンさせるとともに、積算カウンタ値が大きいほどインジェクタからの燃料噴射量を減少させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、エンジン始動後の一定期間内は所定パージ流量としてその間の空燃比フィードバック補正係数からパージされた燃料量を計算し、この燃料量を基に推定したキャニスタの燃料吸着量に応じてパージ制御弁の開度を補正するもの(例えば、特許文献3参照)、アイドルストップ時間が所定時間を超えた場合はパージ学習値がリセットされるもの(例えば、特許文献4参照)、あるいは、低デューティ比制御からの復帰時に空燃比フィードバック量が所定範囲内になっているときには、減少させたパージ率を一定の割合で復帰させるもの(例えば、特許文献5参照)等が、それぞれ知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−54308号公報
【特許文献2】特開2005−248913号公報
【特許文献3】特開2010−024991号公報
【特許文献4】特開2006−002574号公報
【特許文献5】特開2007−192145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来の内燃機関の蒸発燃料処理装置にあっては、夏季等の高温環境下や高地においてアイドリングストップ時間が長くなったり下り坂道が続くために長時間燃料カット制御が続いたりすると、キャニスタから吸着燃料を離脱させることができないパージ停止時間が続くことから、パージ再開時に適切なパージ量(パージ率)を設定できない場合があった。そのため、適切なパージ率を確保する必要から、アイドリングストップや燃料カット等を一時的に制限しなければならなくなる場合があった。
【0008】
例えば、パージ停止期間中に積算動作するカウンタや、燃料タンク内で蒸発ベーパが発生し易い条件が成立すると積算動作するカウンタを設ける従来の蒸発燃料処理装置にあっては、カウンタの積算期間中に燃料ベーパを液体の燃料に戻す環境変化が生じ得る。そのため、カウンタの積算時間のみに基づいてパージ制御を実行すると、実際にパージ量を制限する必要がないときにまでパージ量が制限されることがあり、エコラン制御による燃費低減効果が損なわれることになっていた。
【0009】
他の従来の蒸発燃料処理装置にあっても、パージ再開時からある程度の間はパージ率を抑える必要が生じてしまうため、やはり燃費が悪化することになっていた。
【0010】
そこで、本発明は、パージ停止時間が長くなってもパージ再開時にパージ量を不必要に制限することなく空燃比の変動を抑制するようにして、キャニスタからの燃料のパージ動作の実行頻度を十分に高めることができ、より低燃費な走行制御を可能ならしめる内燃機関の蒸発燃料処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る内燃機関の蒸発燃料処理装置は、上記課題解決のため、(1)内燃機関の燃料供給機構内で生じた蒸発燃料を吸着する吸着器と、前記吸着器に空気を通して前記吸着器から離脱した燃料および前記空気を含むパージガスを前記内燃機関の吸気管内に吸入させるパージ動作を実行するパージ機構と、前記パージガスの前記吸気管内への吸入量を制御して前記内燃機関における空燃比の変動を抑制するパージ制御機構と、を備えた内燃機関の蒸発燃料処理装置であって、前記パージ制御機構は、前記パージガスの前記吸入量を前記パージ動作の実行時間に応じて減少させる一方、前記パージ動作の停止される停止時間が予め設定された限界時間に達しないことを条件に、該停止後の前記パージ動作における前記パージガスの前記吸入量の設定値を前記停止時間に応じて増加させ、前記停止時間が前記限界時間に達したことを条件に、該停止後の前記パージ動作における前記パージガスの前記吸入量の設定値の前記停止時間に応じた増加を抑制し、前記パージ動作が前記停止後に再開されたときに前記空燃比が予め設定された基準値に対し一定範囲内に入ることを条件に、前記パージ動作の実行時間に応じた前記吸入量の設定値の減少度合いを通常より大きくする。
【0012】
この構成により、パージ動作の停止時間および実行時間に基づいてパージガスの流量が制御されるが、パージ動作の停止後の再開時に内燃機関の空燃比が基準値に対し一定の誤差範囲内に入っていれば、パージ動作の実行時間に応じたパージガス吸入量の設定値の減少度合いが通常より大きく設定される。したがって、パージ動作の再開までのパージ停止時間が長くなっていたとしても、パージ再開時のパージガスによって空燃比が実際に高くならない限りはパージ動作が制限されずに済むことになり、パージ量を不必要に制限することなくパージ動作による空燃比の変動を抑制することができ、キャニスタからの燃料のパージ動作の実行頻度を十分に高めることができる。その結果、より低燃費な走行制御を可能ならしめる内燃機関の蒸発燃料処理装置となる。
【0013】
上記構成を有する本発明の内燃機関の蒸発燃料処理装置においては、(2)前記パージ制御機構は、空燃比センサからのフィードバック値を目標値に一致させるよう前記内燃機関の前記空燃比をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御装置から前記フィードバック値を取得し、該フィードバック値の大きさが前記一定範囲に対応する所定値以内であることを条件に、前記空燃比が前記基準値に対し前記一定範囲内に入ると判定することが好ましい。
【0014】
このようにすると、パージ再開時に、既存の空燃比フィードバック制御手段の空燃比フィードバック値の変化からパージ再開による空燃比の変化を精度良く把握でき、パージの実行頻度を高めつつ空燃比の変動を確実に抑制できる低コストの蒸発燃料処理装置となる。しかも、パージガス濃度が実濃度より濃いと誤判断して必要のないパージ動作を優先するようなこともなくなり、パージ再開時における空燃比フィードバック制御のための運転領域毎の学習処理が遅れてしまうといったことも防止される。
【0015】
本発明の内燃機関の蒸発燃料処理装置においては、(3)前記パージ制御機構は、前記パージ動作の停止時間に応じた積算動作と前記パージ動作の実行時間に応じた減算動作とを含む計数処理による計数値に基づいて前記パージガスの前記吸入量を制御し、前記計数値が予め設定された上限値に達したことを条件に前記パージ動作の停止時間に応じた前記パージガスの前記吸入量の増加を抑制するパージ抑制処理を実行する一方、該パージ抑制処理が実行されていないことと、前記パージ動作が前記停止後に再開されたときに前記空燃比が前記基準値に対し前記一定範囲内に入ることとを条件に、前記計数値に対する前記減算動作による減算量を通常より大きくすることが好ましい。
【0016】
この場合、パージ抑制が必要であるか否かの判断を必要時にのみ実行することになり、通常のパージ状態からパージ抑制状態に無駄に移行することを抑制できる。
【0017】
上記(3)の構成を有する場合、(4)前記パージ制御機構は、前記パージ動作の前記停止後の再開時に前記空燃比が前記基準値に対し前記一定範囲内に入ることを条件に、前記再開時の前記計数値を相対的に小さい値に減じて新たな計数値を設定し、該新たな計数値を用いて前記計数動作を再開することが好ましい。
【0018】
このようにすると、実質的にパージ抑制の必要が無いときには計数値を小さくして、パージ動作の実行頻度を確保することができる。
【0019】
上記(4)の構成を有する場合、(5)前記パージ制御機構は、前記計数処理を実行する計数器を有し、前記パージ動作の前記停止後の再開時に前記空燃比が前記基準値に対し前記一定範囲内に入ることを条件に、前記計数器の計数値をリセットして前記新たな計数値を設定することがより好ましい。
【0020】
この場合、処理が簡単であって、パージの実行頻度を十分に確保することができる。
【0021】
上記(4)または(5)の構成を有する場合、(6)前記パージ制御機構は、前記パージ動作の前記停止後の再開時に前記空燃比が前記基準値に対し前記一定範囲内に入った状態が予め設定された待ち時間だけ継続することを条件に、前記計数値を相対的に小さい値に減じることが好ましい。
【0022】
これにより、パージ再開時の空燃比の揺れに影響されずに、パージ制御できる。
【0023】
本発明の内燃機関の蒸発燃料処理装置においては、(7)前記パージ制御機構は、前記パージ動作の前記停止後の再開時に、前記内燃機関の吸入空気もしくは外気の温度または前記燃料供給機構に設けられた燃料タンク内の燃料の温度に応じて、前記内燃機関の吸入空気量に対する前記パージガスの前記吸入量の比率を可変制御し、前記吸入空気もしくは外気の温度または前記燃料の温度が高いほど前記パージガスの前記吸入量を制限するのがよい。
【0024】
この構成により、吸入空気温度、外気温度または燃料タンク内の燃料温度が低いときには、必要のないパージガスの流量制限がなされずに済む。なお、この場合、前記パージ制御機構は、前記計数値と前記吸入空気もしくは外気の温度または前記燃料タンク内の燃料の温度とに応じて、前記内燃機関の吸入空気量に対する前記パージガスの前記吸入量の比率を可変制御することがより好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、パージ停止時間が長くなってもパージ再開時にパージ量を不必要に制限することなく空燃比変動を抑制できるので、キャニスタからの燃料のパージ動作の実行頻度を十分に高めることができ、より低燃費な走行制御を可能ならしめる内燃機関の蒸発燃料処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の蒸発燃料処理装置の概略構成図である。
【図2】図2(a)は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の蒸発燃料処理装置におけるパージ時間に応じたパージ濃度学習値の変化とその変化のタンク内燃料温度によるばらつきを示すグラフであり、縦軸はパージ濃度学習値の変化量を、横軸はパージカット時間を示している。図2(b)は、吸入空気温度に応じたパージ再開時要求パージ量の制限度合いの違いを示す説明図で、縦軸は吸入空気温度、横軸はパージカット時間を示している。
【図3】本発明の一実施形態に係る内燃機関の蒸発燃料処理装置において実行されるパージ率制御の概略の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る内燃機関の蒸発燃料処理装置において実行されるパージ率制限処理の概略の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る内燃機関の蒸発燃料処理装置を搭載した車両において走行と停止を繰り返す一例の走行パターンで車両を走行試験した場合におけるパージ制御関連の制御変数の変化を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の他の実施形態に係る内燃機関の蒸発燃料処理装置の概略構成図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る内燃機関の蒸発燃料処理装置におけるタンク内燃料温度に応じたパージ再開時要求パージ量の制限度合いの違いを示す説明図で、縦軸はタンク内燃料温度、横軸はパージカット時間を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
(一実施形態)
図1〜図5は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の蒸発燃料処理装置の構成とその制御の概略の流れを示しており、本発明を揮発性の燃料を使用する内燃機関とその燃料タンク等を搭載した車両に適用したものである。
【0029】
まず、本実施形態の構成について説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の車両1には、エンジン10が搭載されるとともに、その車体下部側に、エンジン10で消費される燃料、例えばガソリンを貯留する燃料タンク25が搭載されている。
【0031】
エンジン10は、火花点火式の多気筒内燃機関、例えば4サイクルの直列4気筒エンジンによって構成されている。このエンジン10は、4つの気筒11c(図1中に1つのみ模式的に図示する)を有しており、各気筒11cには、ピストン12で仕切られた燃焼室13が形成され、吸気弁16と排気弁17とが図示しない動弁機構により開閉可能に装備されるとともに、燃焼室13内に露出するよう点火プラグ18が配置されている。また、各気筒11c内のピストン12は、コネクティングロッド14を介してクランク軸15の対応するクランクスルー部分に連結されている。
【0032】
エンジン10の各気筒11cに対応する吸気ポート部分(詳細図示せず)にはインジェクタ21(燃料噴射弁)が装着されており、複数の気筒11cに対応する複数のインジェクタ21は、それぞれデリバリパイプ22に接続されている。このデリバリパイプ22には、車体の後方側の下部に搭載された燃料タンク25内の燃料ポンプ23から吐出された揮発性の高い燃料、例えばガソリンが、プレッシャレギュレータ24を介して供給されるようになっている。これら燃料ポンプ23およびプレッシャレギュレータ24は、燃料タンク25と共に燃料供給機構を構成している。
【0033】
また、エンジン10の吸気管26には、吸気脈動や吸気干渉を抑える所定の容積を有するサージタンク26aが設けられているとともに、上流側の図示しないエアクリーナの近傍で吸入空気量および吸入空気温度を検出するエアフローメータ27および吸入空気温度センサ28と、エアフローメータ27とサージタンク26aの間に位置するスロットルバルブ29とが、それぞれ装着されている。
【0034】
さらに、エンジン10の排気管31には、三元触媒からなる排気浄化用の触媒装置32と、この触媒装置32の近傍、例えば触媒装置32より上流側の排気通路中で排気空燃比を検出する限界電流形のA/Fセンサ33とが装着されている。なお、A/Fセンサ33は、触媒装置32より下流側の排気空燃比を検出するものでもよいし、排気酸素濃度を検出する酸素センサで構成されてもよい。また、触媒装置32より上流側のA/Fセンサ33と触媒装置32より下流側の排酸素センサとを併有する構成であってもよい。
【0035】
一方、燃料タンク25とエンジン10の吸気管26の間、例えば燃料タンク25とサージタンク26aの間には、燃料タンク25内で発生する蒸発燃料をエンジン10の吸気時に吸気管26内に放出させて燃焼させることができる蒸発燃料処理装置40(蒸発燃料処理手段)が介装されている。
【0036】
蒸発燃料処理装置40は、燃料タンク25、キャニスタ41(吸着器)、燃料吸入側配管42、パージ用配管43および大気導入管45を有するパージ機構46と、パージ用のバキュームソレノイドバルブ(以下、パージ用VSVという)44およびECU50を有するパージ制御機構47と、を含んで構成されている。
【0037】
キャニスタ41は、活性炭等の吸着体(図示せず)を内蔵しており、燃料タンク25で発生する蒸発燃料を吸着するよう燃料吸入側配管42によって燃料タンク25に接続されている。パージ用配管43は、キャニスタ41とサージタンク26aの間に配設されており、パージ用VSV44は、パージ用配管43の途中に設けられている。このパージ用VSV44は、エンジン10の運転時に開弁駆動方向の励磁電流をデューティ制御されることで、そのデューティ比PRGに応じたパージ率で、吸気管26内の吸気負圧によりキャニスタ41から離脱した燃料を空気と共にパージガスとしてサージタンク26a内に吸入させることができる。大気導入管45は、燃料タンク25のキャップ付きの給油口部25aの近傍の大気圧をキャニスタ41に導入することができる配管である。ECU50は、各種センサ情報に基づいて、パージ用VSV44をデューティ制御することにより、パージ率を制御することができる。
【0038】
このように、蒸発燃料処理装置40は、燃料タンク25からエンジン10への燃料供給機構、特に燃料タンク25内で生じた蒸発燃料を吸着するキャニスタ41と、そのキャニスタ41に空気を通してキャニスタ41から離脱した燃料および空気を含むパージガスをエンジン10の吸気管26内に吸入させるパージ動作を実行するパージ機構46と、パージガスの吸気管26内への吸入量を制御してエンジン10における空燃比の変動を抑制するパージ制御機構47と、を備えている。
【0039】
この蒸発燃料処理装置40は、パージ用VSV44が閉弁しているとき、エンジン10が停止している状態であっても、燃料タンク25内で気化した燃料ベーパをキャニスタ41に吸着させておくことができる。また、蒸発燃料処理装置40は、スロットルバルブ29の開度が予め設定された設定開度より小さい状態でのエンジン10の運転中にパージ用VSV44を開弁させて、パージ用配管43内にエンジン10の吸気負圧を導入し、キャニスタ41に吸着されていた燃料をキャニスタ41から離脱させて吸気管26内の吸入空気中に放出させるパージ動作を実行することができる。
【0040】
ECU50は、詳細なハードウェア構成を図示しないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性のバックアップ用メモリ、入出力インターフェース回路に加えて、定電圧電源や通信IC等を含んで構成されている。
【0041】
このECU50の入力インターフェース回路には、エンジン10に装着された各種センサ、例えばエアフローメータ27、吸入空気温度センサ28およびA/Fセンサ33の他に、クランクポジションセンサ61、スロットルポジションセンサ62、車速センサ63、カムポジションセンサ64および水温センサ65が、それぞれ接続されている。そして、これらセンサ群からのセンサ情報が、ECU50に取り込まれるようになっている。
【0042】
クランクポジションセンサ61は、クランク軸15の回転角度Neを検出し、スロットルポジションセンサ62は、スロットルバルブ29の開度を検出し、車速センサ63は、車両1の車速を検出する。また、カムポジションセンサ64は、図示しないカムシャフトの回転角度を検出し、水温センサ65は、エンジン10のウォータジャケット11w内の冷却水の温度thwを検出する。
【0043】
ECU50の出力インターフェース回路には、各気筒11に対応するインジェクタ21と、各気筒11の点火プラグ18を駆動する図示しないイグナイタ66と、スロットルバルブ29の開度を操作するスロットルモータ29aと、パージ用VSV44と、燃料ポンプ23その他のアクチュエータ類へ電源の供給を制御する図示しないリレースイッチ回路等が接続されている。
【0044】
ECU50は、主としてROMに格納された制御プログラムに従って、入力インターフェース回路から取り込んだセンサ情報、ROMやバックアップメモリ(以下、ROM等という)に予め格納された設定値情報およびマップデータ等に基づいて演算処理を実行し、その結果に応じて出力インターフェース回路からの制御信号出力を行うことで、エンジン10および補機類の制御を実行するようになっている。また、ECU50は、そのレジスタ機能等により、後述するパージ濃度カウンタやパージカット時間積算カウンタとしての機能を発揮できるようになっている。
【0045】
ECU50は、例えばエアフローメータ27及びクランクポジションセンサ61のセンサ情報から得られるエンジン10の1回転当りの吸入空気量に基づいて、目標空燃比となる燃料噴射量に相当するインジェクタ21の基本燃料噴射時間を演算し、この基本燃料噴射時間に最適空燃比となるよう各センサ信号に基づく補正処理を加え、適正な燃料噴射量で特定のクランク角に達する時点でインジェクタ21からの燃料噴射を実行するために、複数の制御値を算出する。また、ECU50は、エンジン10の運転状態に応じて、適正な点火時期やスロットル開度の制御等を実行するための複数の制御値をそれぞれ算出する。そして、ECU50の出力インターフェース回路からインジェクタ21を駆動し、エンジン10内での燃料噴射量を目標噴射量に制御するための燃料噴射信号や、イグナイタ66を介して点火プラグ18の点火時期を制御する点火時期制御信号、あるいは燃料ポンプ23等のアクチュエータ類をON/OFFさせるリレー切替信号等をそれぞれ出力するようになっている。
【0046】
さらに、ECU50は、三元触媒からなる触媒装置32の排気浄化能力を十分に引き出せるよう、A/Fセンサ33の検出情報を基に公知の空燃比フィードバック制御を実行する空燃比制御プログラムを有している。この空燃比フィードバック制御においては、A/Fセンサ33によって検出される排気空燃比が目標値の排気空燃比になるようにインジェクタ21の燃料噴射量TAUを増減補正するための補正係数(以下、空燃比FB補正係数という)が算出される。
【0047】
また、ECU50は、パージ実行条件として、空燃比フィードバック制御のために要求される学習が可能となる空燃比FB実行条件が成立し、かつ、パージ実行に適した水温条件(例えば80°C以上)および積算吸入空気量条件が成立するという条件が成立するか否かを判定する。そして、そのパージ実行条件が成立し、エンジン10のガス流量毎の複数の学習領域について後述する空燃比FB補正係数の学習が完了していることを原則として、パージ動作を開始するようになっている。例えば、車両走行中に一定の吸入空気量での空燃比が基準値に対して所定値(例えば理論空燃比に対してその5〜10%程度の誤差がある値)以内に収まってくると、学習がほぼ完了したことになって学習完了フラグが立ち、その段階以降にパージ動作が開始される。なお、エンジン10の暖機完了前のように冷却水温thwが低い場合には、水温補正によってパージ以外の燃料増量が実施され、パージ流量制御は実行されないことになる。
【0048】
ガス流量毎の複数の学習領域についての空燃比FB補正係数の学習とは、吸気系のセンサ27、28やインジェクタ21等の劣化による空燃比ずれを抑制するためのものであり、この学習が完了していないと、パージ動作のみに起因する空燃比ずれを精度良く検出し難いため、原則としてパージ動作に先行して実行される。なお、空燃比FB補正係数の学習処理自体は、公知の処理と同様であるので、ここでは詳述しない。
【0049】
空燃比フィードバック条件は、例えば、エンジン10の始動後であること、燃料カット中でないこと、水温センサ65の検出水温thwが70℃以上であること、燃料噴射量TAUがインジェクタ21の最小燃料噴射量以上であること、A/Fセンサ33が活性状態であること等の条件であり、これらを全て満たすとフィードバック実行条件が成立し、1つでも満たさない条件があれば不成立となる。
【0050】
フィードバック実行条件が成立している場合には、ECU50は、なまし処理(平均化処理)した空燃比フィードバック値(補正量)かそれに対応する空燃比FB補正係数を算出する。
【0051】
例えば、空燃比FB補正係数の場合、その基準値は「1」となるが、この場合、A/Fセンサ33の出力を所定の判定レベルと比較して、そのセンサ出力がリッチからリーンに反転したときには空燃比フラグを「0」(リーン)にセットし、そのセンサ出力がリーンからリッチに反転したときにはECU50のレジスタ機能により設定される空燃比フラグを「1」(リッチ)にセットする。そして、その空燃比フラグに基づき、空燃比FB補正係数をA/Fセンサ33の出力変化に応じて操作する。すなわち、空燃比フラグが「0」から「1」に変化するか、「1」から「0」に変化したときには、、空燃比FB補正係数をその変化の方向である増加方向または減少方向に所定量スキップさせる。一方、空燃比フラグが「1」または「0」を継続している間は、空燃比FB補正係数を徐々に増加させまたは徐々に減少させる積分処理を実行する。さらに、そのような処理後の空燃比FB補正係数に対して上下限のガード処理を行って、前記スキップ毎又は所定時間毎になまし(平均化)処理された空燃比FB補正係数を算出するようになっている。
【0052】
空燃比FB補正係数は、このように所定時間毎のなまし処理を行って算出される。なおこの場合、なまし処理された空燃比フィードバック値は、なまし処理された空燃比FB補正係数の基準値(=1)とのずれに相当し、空燃比フィードバック値の基準値は「0」となる。以下、なまし処理された空燃比FB補正係数または空燃比フィードバック値のいずれかを指して、単に空燃比フィードバック値という。
【0053】
ECU50は、また、低燃費走行制御プログラムを搭載しており、この低燃費走行制御プログラムに従って、アイドリングストップやアクセルOFF時の燃料カット制御等を実行して燃費を高めるいわゆるエコラン制御を実行することができるようになっている。
【0054】
以上のような制御機能に加え、ECU50は、パージガスの吸入量をパージ動作の停止時間に応じて増加させたり、パージ動作の実行時間に応じて減少させたりするパージ率制御を実行する機能と、パージ動作の一定時間以上の停止後の再開時には、空燃比が予め設定された基準値に対し一定の誤差範囲内に入ることを条件に、パージ動作の実行時間に応じたパージガスの吸入量の減少度合いを通常より大きくする機能とを発揮できるようになっている。
【0055】
具体的には、蒸発燃料処理装置40によりサージタンク26a内へのパージ動作が実行されると、そのパージガスが吸入空気およびインジェクタ21から噴射燃料と共に燃焼室13内に吸入される。そのため、燃焼室13内に吸入される予混合ガスの空燃比は、吸入空気量およびインジェクタ21からの燃料噴射量だけでなく、パージガスの流量(空気量)およびパージガス中の燃料の濃度によっても変化することになる。したがって、パージ動作の実行時には、エンジン10の吸入空気量のみならず、パージガスの流量およびパージガス中の燃料濃度に応じて、インジェクタ21から噴射される燃料噴射量が補正されることになる。
【0056】
そこで、ECU50は、A/Fセンサ33からの空燃比フィードバック値(それに対応する空燃比FB補正係数でもよい)を所定時間毎に監視して、蒸発燃料処理装置40によるパージガス中の蒸発燃料の濃度をパージ濃度学習値として学習するようになっている。ここでのパージ濃度学習値は、例えばパージ率1%の基準補正量のパージ動作による空燃比のズレを補正する補正係数に対応する値であり、キャニスタ41に燃料が吸着されておらず、パージガス中の蒸発燃料の濃度がゼロとなるとき(空燃比フィードバック値が「0」となるとき)のパージ濃度学習値を「0」に設定している。
【0057】
パージ濃度学習値は、空燃比フィードバック値が更新される度にまたは所定値以上変化する度に更新されるようになっている。また、ECU50は、空燃比フィードバック値がその基準値域(基準値「0」と略同等の一定範囲を含む)を超える正の値であるときには、前回のパージ濃度学習値に所定値(例えば0.1%)を加算して、今回のパージ濃度学習値とする。すなわち、目標空燃比よりもリーン側の実空燃比で燃焼する状態を補正するために空燃比フィードバック値が理論空燃比より大きいことを表すプラス側(リーン側)の値になるときには、パージ濃度を高めるよう所定値を加算してパージ濃度学習値を更新する。反対に、空燃比フィードバック値がその基準値域を下回る負の値であるとき、すなわち、目標空燃比よりもリッチ側の実空燃比で燃焼する状態を補正するために空燃比フィードバック値が理論空燃比より小さいことを表すマイナス側(リッチ側)の値になるときには、パージ濃度を低下させるよう、ECU50は、前回のパージ濃度学習値から所定値(例えば0.1%)を減算して、今回のパージ濃度学習値とするようになっている。
【0058】
このようにパージ濃度学習値は、検出空燃比がリッチ側であるかリーン側であるかによって検出空燃比を理論空燃比に近付ける方向に徐々に変化させるように更新される。このパージ濃度学習値は、キャニスタ41内の燃料吸着量に対応しており、上述のように更新されつつECU50のRAM内に保持される。
【0059】
より具体的には、ECU50は、パージ濃度学習値を所定の正負のカウント値の範囲内でカウントするパージ濃度学習値カウンタ51を有しており、このパージ濃度学習値カウンタ51は、パージ濃度学習値の更新時に空燃比フィードバック値がその基準値域を超えるとカウントアップされ、パージ濃度学習値の更新時に空燃比フィードバック値がその基準値域を下回るとカウントダウンされるようになっている。そして、ECU50は、このパージ濃度学習値カウンタ51のカウント値に対応するパージ濃度学習値に基づいて、パージ動作毎のパージ流量(例えば、パージガスの吸入量と吸入空気量との比であるパージ率)および燃料供給量を算出するようになっている。すなわち、ECU50は、パージ動作の停止時間に応じた積算動作とパージ動作の実行時間に応じた減算動作と含む計数処理を実行し、その係数処理による計数値に基づいてパージ率を制御することでパージガスの吸入量を制御し、各気筒11に対するそのパージガスの吸入量および燃料濃度に応じた燃料供給量分だけインジェクタ21の燃料噴射量を減量補正するようになっている。
【0060】
また、ECU50は、スロットル開度およびエンジン回転速度Neに基づいて、そのときの吸気管内負圧(推定値)を算出するか推定マップから読み出し、その吸気管内負圧に対してパージ用VSV44の全開状態(開度(駆動デューティ比)100%)での全開流量[L/min]に相当する全開パージ率を算出するか、予めROM等に格納された2次元の全開流量マップ(吸気管内負圧―全開流量マップ)から読み込む。また、パージ開始直後の経過時間毎のパージ率を小さい値から徐々に大きくしていくためにROM等に格納された目標パージ率マップを参照して、例えばパージ開始直後の初期濃度学習時間中(例えば、1分程度の間)は数%以下となる最小の目標パージ率epgrtgt(%)を設定し、その次の徐変期間について最小パージ率から10%を超える程度に徐々に増加するパージ率を設定し、それ以降は上限の目標パージ率に設定する。さらに、パージガス中の燃料はインジェクタ21からの燃料噴射量TAUのように精度良く制御できず、パージガスのパージ率が高くなると空燃比の乱れが生じ易くなるため、燃料噴射量TAUを減量補正する際における最大補正量TAUminに達しないようにパージ率を制限すべく、そのTAUminから逆算したtau補正限界パージ率epgrlmt(%)を算出する。そして、これら3つのパージ率の制限値を基にパージ流量が最小となる制限値を最終制限値として、この最終制限値の制限(上限ガード)を加えた最終終パージ率epgrmxが算出され、この最終終パージ率epgrmxでのパージ制御が実施される。
【0061】
また、ECU50は、アイドリングストップや燃料カット制御等によってパージ動作が停止されると、その停止時点から予め設定されたカウントアップ時間に達する度にカウントアップする積算動作を実行して、その停止時点からの総停止時間(以下、パージカット時間ともいう)を計測するパージカット積算カウンタ52を有している。
【0062】
さらに、ECU50は、パージ動作の一定時間以上の停止後にパージ動作が再開されるときには、空燃比フィードバック値がその基準値(=0)に対し一定の誤差の範囲(例えば数%未満)内に入ることを条件に、パージ動作の実行時間に応じたパージガスの吸入量の減少度合い、例えばパージ濃度学習値カウンタ51のカウントダウンの度合いを通常より大きくする機能を発揮できるようになっている。
【0063】
具体的には、パージ制御機構47としてのECU50は、パージ動作の一定時間以上の停止後にパージ動作が再開されるとき、エンジン10の空燃比フィードバック制御を実行する制御装置としての機能により算出した空燃比フィードバック値を取得し、その空燃比フィードバック値が所定値以内であることを条件に、燃焼空燃比が理論空燃比に対してマイナス側の値であって比較的大きさの小さい一定範囲(例えば、−5%から0%の範囲)内に入ると判定する。そして、そのような判定結果が得られると、パージカット積算カウンタ52のカウント値を「0」にリセットする。なお、ここでの所定値は、例えばアイドル運転状態でパージ動作を実行しても、吹き上がりや排気ガス浄化性能の低下が生じない範囲内となるように設定される。
【0064】
さらに、ECU50は、パージ動作の停止時間に応じた積算動作とパージ動作の実行時間に応じた減算動作と含む計数処理による計数値が予め設定された上限値に達したことを条件に、パージ動作の停止時間に応じたパージガスの吸入量の増加を抑制する低デューティ制御を実行するようになっている。ここにいう低デューティ制御は、例えばパージカット積算カウンタ52のカウント値(計数値)が長時間のパージカット時間に対応する第1のカウント値に達すると、それ以降のパージガスの吸入量の要求値(以下、要求パージ量という)の増加を制限することで、パージ用VSV44の駆動デューティを低く抑える制御(パージ抑制制御)である。また、この低デューティ制御は、パージカット積算カウンタ52のカウント値が、第1のカウント値より長く、パージカット時間とパージガス中の燃料濃度との比例関係を損なう程度に長時間(例えば500秒程度;タンクの形状や大きさによって異なる)のパージカット時間に相当する上限のカウント値に達したとき、例えばパージ濃度学習値カウンタ51のカウント値(パージ濃度学習値)をキャニスタ41の吸着量ゼロに相当するカウント値(例えば「0」)あるいは予め設定された下限値(パージ率の最小値)にリセットする制御である。
【0065】
ECU50は、さらに、パージ抑制処理が実行されていないことと、パージ動作がその一定時間以上の停止後に再開されたときに空燃比フィードバック値がその基準値(=0)に対し一定範囲(例えば、−5%から0%)内に入ることとを条件に、パージカット積算カウンタ52のカウント値に対するパージ動作実行時の減算動作による減算量を通常より大きくするようになっている。
【0066】
より具体的には、ECU50は、パージ動作の一定時間以上の停止後の再開時に空燃比フィードバック値がその基準値に対し一定範囲内に入ることを条件に、例えばその再開時におけるパージカット積算カウンタ52のカウント値を相対的に小さい値(例えば数分の一程度)に減じて新たなカウントを設定するか、パージカット積算カウンタ52のカウント値を「0」にリセットして、その新たな計数値を用いてパージカット時間の計数動作を再開する。
【0067】
また、ECU50は、パージ動作の停止後の再開時に空燃比フィードバック値がその基準値に対して一定範囲内に入った状態が予め設定された待ち時間だけ継続することを条件に、パージカット積算カウンタ52のカウント値を相対的に小さい値に減じるようになっている。
【0068】
加えて、パージ制御機構としてのECU50は、パージ動作の停止後の再開時に、エンジン10の吸入空気または外気の温度に応じて、エンジン10の吸入空気量に対するパージガスの吸入量の比率、すなわちパージ率を可変制御して、エンジン10の吸入空気または外気の温度が高いほどにパージ量、すなわち、パージガスの吸入量を制限できるようになっている。
【0069】
具体的には、図2(a)に示すように、パージ濃度学習値は、パージ動作の停止時間であるパージカット時間Tpcが長くなると、マイナス側に大きくなる変化の傾向を持っているが、その変化の程度は外気温度等に影響されるタンク内燃温の高低によって大きく相違する。そこで、図2(b)に示すように、例えば、吸入空気温度(外気温度またはタンク内燃料温度でもよい)が高い状態でのパージ動作の再開時に、直前のパージカット時間が比較的短時間であれば、要求されるパージ動作の制限度合いが中、直前のパージカット時間が比較的長時間であれば要求されるパージ動作の制限度合いが大となるパージ制御の場合、吸入空気温度が低い状態でのパージ再開時には、直前のパージカット時間が比較的短時間であれば要求されるパージ動作の制限度合いが小、直前のパージカット時間が比較的長時間であれば要求されるパージ動作の制限度合いが中となるように、要求パージ量の制限度合いを空気温度に応じて変化させるようになっている。
【0070】
なお、燃料タンク25付近の外気温度は、吸入空気温度センサ28によって検出される吸気温度と、各種運転条件および車両走行条件における吸気温度と燃料タンク25付近の外気温度との関係を予めの実験により把握し、マップや計算式により算出可能にすることで、推定可能となる。あるいは、エンジンルーム内で高温となる部分や燃料タンク25側に熱が伝わり易い部分の温度との相関性が強い部分で、吸気管26内の吸気温度を検出するようにしてもよい。
【0071】
次に、作用について説明する。
【0072】
上述のように構成された本実施形態においては、パージ制御機構47を構成するECU50によって、車両1の図示しないキースイッチ(イグニッションスイッチ)が投入された状態下で、図3に示すようなパージ率制御と、図4に示すようなパージ濃度等の更新処理とが実行される。
【0073】
まず、図3に示すパージ率制御は、キースイッチ投入状態下で、所定時間毎の割込み処理により実行される。ここでのパージ率は、エンジン10の吸入空気量に対する蒸発燃料処理装置40から供給されるパージガスの流量(空気量)の比である。
【0074】
このパージ率制御では、まず、最初にステップS11で水温条件(冷却水温thw≧80℃以上)および空燃比フィードバック条件が成立するか否かが判定される(ステップS11)。このとき、水温条件および空燃比フィードバック条件が共に成立すれば(ステップS11でYesの場合)、次いで、空燃比フィードバック制御中であるか否かが判定される(ステップS12)。
【0075】
最初のステップS11でいずれかの条件が成立しない場合(ステップS11でNoの場合)、あるいは、次のステップS12で空燃比フィードバック制御中でない場合(ステップS12でNoの場合)、共に、パージ実行フラグをリセットするとともにパージ率をゼロにセットして(ステップS18、S19)、今回の処理を終了する。
【0076】
ステップS12で空燃比フィードバック制御中であるとき(ステップS12でYesの場合)、次いで、パージ実行フラグをセットした後(ステップS13)、全開パージ率epgr100(%)、目標パージ率epgrtgt(%)およびtau補正限界パージ率epgrlmt(%)を、順次算出する(ステップS14〜S16)。
【0077】
そして、これら3つのパージ率の制限値を基にパージ流量が最小となる制限値を最終制限値として、最終パージ率epgrmxを算出する(ステップS17)。
【0078】
図4のパージ濃度等の更新処理は、キースイッチ投入状態下で、繰り返し実行される。
【0079】
まず、一定時間以上停止した後にパージ動作を再開しようとしている状態か否かが判定される(ステップS21)。そして、その判定結果がYesになるまで、この最初の判定ステップS21が一定の周期で繰り返される。
【0080】
一定時間以上停止した後にパージ動作を再開しようとしている状態になり、最初の判定ステップS21の判定結果がYesになると、次いで、空燃比フィードバック値(なまし値)がその基準値に対し所定値以内か、例えば理論空燃比に対する検出空燃比の誤差が−5%から0%の範囲内か否かが判定される(ステップS22)。
【0081】
このとき、空燃比フィードバック値が基準値に対し所定値以内であれば、パージカット積算カウンタ52のカウント値が「0」にリセットされる(ステップS23)。これは、パージ濃度が不確定と判断され得る程度に長時間のパージカット時間が経過した後であっても、そのとき空燃比フィードバック値からパージガス中の燃料濃度が濃くないことが検出できるので、キャニスタ41の燃料吸着量に対応するパージ濃度学習値を「0」に戻して、パージカット積算カウンタ52のカウント値を低デューティ制御に移行する条件となる上限のカウント値から離して、パージ量を十分に確保するための処理である。
【0082】
一方、このとき、空燃比フィードバック値がその基準値に対し所定値以内から外れていれば、次いで、パージ動作中か否かが判定される(ステップS24)。そして、パージ動作中であれば(ステップS24でYesの場合)、そのパージ動作の実行時間に応じてパージカット積算カウンタ52のカウント値が減算処理され(ステップS25)、パージ動作中でなければ(ステップS24でNoの場合)、パージ動作の停止時間に応じてパージカット積算カウンタ52のカウント値が加算処理される(ステップS26)。
【0083】
次いで、パージカット積算カウンタ52のカウント値に対し、「0」を下限とし、前述の上限のカウント値を上限値とする上下限ガード処理が施される(ステップS27)。
【0084】
次いで、パージカット積算カウンタ52のカウント値がその上限値に等しいか否かがチェックされ(ステップS28)、パージカット積算カウンタ52のカウント値がその上限値に達していれば(ステップS28でYesの場合)、パージ用VSV44の低デューティ制御に移行し(ステップS29)、パージカット積算カウンタ52のカウント値がその上限値に達していなければ、パージカット積算カウンタ52のカウント値および吸入空気温度等に応じてパージ率が制限される(ステップS30)。
【0085】
上述のような処理が実行される本実施形態では、車両1の走行中にアイドリングストップ制御や燃料カット制御によって、車両1の停止中にエンジン10が比較的長時間停止したり車両1の走行中でもアクセルOFF状態が続くと燃料カット状態が比較的長時間続いたりする場合がある。
【0086】
このような場合、パージカット時間の積算値から蒸発燃料ガスの濃度を単に推定する程度では、パージ動作の実行時間を十分に確保できないが、本実施形態では、パージ動作の停止時間および実行時間に基づいてパージガスの流量が制御されるだけではなく、パージ動作の比較的長時間停止後のパージ動作の再開時に内燃機関の空燃比が基準値に対し一定の誤差範囲内に入っていれば、パージ動作の実行時間に応じたパージガスの流量の減少度合いが通常より大きくなる。
【0087】
したがって、パージ動作の再開までの停止時間が長くなっていたとしても、パージ再開時のパージガスによって空燃比が実際に高くならない限りはパージ動作が制限されずに済むことになり、パージ量を不必要に制限することなくパージ動作による空燃比の変動を抑制することができ、キャニスタからの燃料のパージ動作の実行頻度を十分に高めることができる。その結果、車両1のより低燃費な走行制御を可能ならしめる蒸発燃料処理装置40となる。
【0088】
ちなみに、図5は、車両1の走行と停止(アイドリングストップ状態を含む)を繰り返す走行試験を行った場合における、パージ実行フラグ、パージカット積算カウンタ52のカウント値、低デューティフラグ、パージ濃度学習値、パージ用VSV44の駆動デューティ比[%]の変化を示している。なお、同図にはA/Fセンサ33の検出空燃比や空燃比フィードバック値を図示しないが、ここでの空燃比フィードバック値は、エンジン10の運転時にパージ動作が実行されるとき、専ら目標空燃比に対してマイナス側(リッチ側)の値となり、パージ濃度学習値も同様にマイナス側で推移している。
【0089】
しかし、同図中に二点鎖線で示す従来のパージ制御では、パージカット積算カウンタのカウント値が時間の経過に伴って大きくなっていき、ある程度の時間が経過した段階でパージカット積算カウンタのカウント値が上限値に達してしまい、低デューティー制御への移行を要求する低デューティ実行フラグが立つ状態となってしまう。
【0090】
これに対し、本実施形態では、パージ再開時に空燃比フィードバック値がその基準値に対し所定値以内であれば、パージカット積算カウンタ52のカウント値が「0」にリセットされるから、パージ再開時のパージガスによって空燃比が実際に高くならない限りはパージ動作が制限されずに済む。したがって、同図中に二点鎖線で示す従来のVSV駆動デューティのように駆動デューティ比(パージ率)を不必要に制限する必要がなく、同図中に実線で示すVSV駆動デューティのように十分にパージ率を高めて、パージ動作による空燃比の変動を抑制することができる。よって、キャニスタ41からの燃料のパージ動作の実行頻度を十分に高めることができる。しかも、空燃比フィードバック値がその基準値に対し所定値以内であれば、例えばアイドル状態でパージ動作を実行しても吹き上がりや排気ガス浄化性能の低下を確実に抑制できる。
【0091】
本実施形態では、また、パージ制御機構47を構成するECU50が、エンジン10の空燃比フィードバック制御を実行する制御装置としての自らの特定機能部から空燃比フィードバック値を取得し、その空燃比フィードバック値が所定値以内であることを条件に、検出空燃比がその基準値である理論空燃比に対して一定の誤差の範囲内に入ると判定する。したがって、パージ動作の再開時に、既存の空燃比フィードバック制御手段の空燃比フィードバック値の変化からパージ再開による空燃比の変化を精度良く把握でき、パージ濃度学習値に基づく空燃比の推定では過渡的にその推定値が不正確となってしまうような状態下にあっても、パージの実行頻度を高めつつ空燃比の変動を確実に抑制できる低コストの装置となる。しかも、パージガス濃度が実濃度より濃いと誤判断して必要のないパージ動作を優先するようなこともなくなるから、パージ再開時における空燃比フィードバック制御のための運転領域毎の学習処理が遅れてしまうといったことも防止される。
【0092】
さらに、本実施形態では、パージカット積算カウンタ52のカウント値が上限値に達したことを条件に低デューティ制御(パージ抑制処理)を実行する一方、その低デューティ制御が実行されていないことと、パージ動作の再開時に空燃比が基準値に対し一定範囲内に入ることとを条件に、パージカット積算カウンタ52のカウント値に対する減算動作による減算量を通常より大きくする。したがって、パージ抑制が必要であるか否かの判断を必要時にのみ実行することになり、通常のパージ状態からパージ抑制状態に無駄に移行することも有効に抑制できる。
【0093】
加えて、ECU50は、パージ動作の再開時に空燃比フィードバック値がその基準値に対し一定範囲内に入ることを条件に、その再開時のパージカット積算カウンタ52のカウント値を相対的に小さい値に減じて、例えばリセットとして新たなカウント値を設定し、その新たなカウント値を用いて計数動作を再開することができる。したがって、実質的にパージ抑制の必要が無いときにはそのカウント値を十分に小さくして、パージの実行頻度を十分に確保することができる。
【0094】
また、ECU50は、パージ動作の再開時に空燃比フィードバック値がその基準値に対し一定範囲内に入った状態が予め設定された待ち時間だけ継続することを条件に、パージカット積算カウンタ52のカウント値を相対的に小さい値に減じるので、パージ動作の再開時における空燃比の揺れの影響を受け難いパージ制御ができる。
【0095】
さらに、本実施形態では、パージカット積算カウンタ52のカウント値を用いる上記制御に加えて、パージ動作の再開時にエンジン10の吸入空気または外気の温度に応じてパージ率を可変制御し、エンジン10の吸入空気または外気の温度が高いほどにパージ量を制限することができるので、吸入空気または外気の温度が低いときに、必要のないパージガスの流量制限がなされずに済む。
【0096】
このように、本実施形態によれば、パージ停止時間が長くなってもパージ再開時にパージ量を不必要に制限することなく空燃比変動を抑制できるので、キャニスタ41からの燃料のパージ動作の実行頻度を十分に高めることができる。その結果、より低燃費な走行制御を可能ならしめる内燃機関の蒸発燃料処理装置40を提供することができる。
【0097】
なお、上述の各実施形態においては、パージ制御機構47を構成するECU50が、そのパージ濃度学習値カウンタ51およびパージカット積算カウンタ52のカウント値とエンジン10の吸入空気温度または外気温度とに応じて、パージ率の可変制御を実行するものとしたが、エンジン10の周囲の外気温度に代えて燃料タンク25内の燃料温度を用いてもよい。次に、そのような場合の実施形態について説明する。
【0098】
(他の実施形態)
図6および図7は、本発明の他の実施形態に係る内燃機関の蒸発燃料処理装置を示している。
【0099】
本実施形態は、図6に示すように、上述の一実施形態の蒸発燃料処理装置の構成に加えて、燃料タンク25内の燃料の温度を検出するタンク内燃料温度センサ71を設けたものである。したがって、ここでは、上述の一実施形態の蒸発燃料処理装置と同一の構成については図6中に同一の参照番号で示し、上述の一実施形態の蒸発燃料処理装置と相違する点について説明する。
【0100】
本実施形態においては、パージ制御機構としてのECU50が、上述したようなパージカット積算カウンタ52のカウント値および空燃比フィードバック値に応じたパージ率制御に加えて、パージ動作の停止後の再開時に、タンク内燃料温度センサ71から得られる燃料タンク25内の燃料の温度thfに応じて(あるいは、タンク内燃料温度センサ71から得られる燃料温度thfとエンジン10の吸入空気または外気の温度とに応じて)、パージ率を可変制御するようになっている。そして、タンク内燃料温度センサ71から得られる燃料温度thf(あるいは、さらにエンジン10の吸入空気または外気の温度)が高いほどにパージ量、すなわち、パージガスの吸入量を制限できるようになっている。
【0101】
具体的には、図2(a)に示したようなパージ濃度学習値とタンク内燃温との関係に基づいて、図7に示すように、タンク内燃料温度センサ71の検知情報であるタンク内燃料温度thfが高い状態でのパージ動作の再開時に、直前のパージカット時間が比較的短時間であれば、要求されるパージ動作の制限度合いが中、直前のパージカット時間が比較的長時間であれば要求されるパージ動作の制限度合いが大となるパージ制御の場合、タンク内燃料温度thfが低い状態でのパージ再開時には、直前のパージカット時間が比較的短時間であれば要求されるパージ動作の制限度合いが小、直前のパージカット時間が比較的長時間であれば要求されるパージ動作の制限度合いが中となるように、要求パージ量の制限度合いをタンク内燃料温度thfに応じて変化させるようになっている。
【0102】
本実施形態においても、パージ動作の停止時間および実行時間に基づいてパージガスの流量が制御されるだけではなく、パージ動作の比較的長時間停止後のパージ動作の再開時にエンジン10の空燃比が基準値に対し一定の誤差範囲内に入っていれば、パージ動作の実行時間に応じたパージガスの流量の減少度合いが通常より大きくなる。
【0103】
したがって、パージ動作の再開までの停止時間が長くなっていたとしても、パージ再開時のパージガスによって空燃比が実際に高くならない限りはパージ動作が制限されずに済むことになり、パージ量(パージ率)を不必要に制限することなくパージ動作による空燃比の変動を抑制することができ、キャニスタ41からの燃料のパージ動作の実行頻度を十分に高めることができる。
【0104】
しかも、本実施形態においては、燃料タンク25内の燃料温度が低いときにも、必要のないパージガスの流量制限がなされずに済む。したがって、本実施形態においても、車両1のより低燃費な走行制御を可能ならしめる蒸発燃料処理装置40を提供することができる。
【0105】
なお、上述の各実施形態においては、揮発性の燃料をガソリンとしたが、アルコール混合割合が高い燃料等、他の燃料であってもよい。
【0106】
また、パージ動作再開時に空燃比フィードバック値がその基準値に対し所定値以内であるときのパージカット積算カウンタ52の減算動作による減算量の増加は、カウンタリセットによって最も大きい減算量とすることができるが、これに限定されず、他の下限または最小のカウント値への変更となってもよい。
【0107】
さらに、このようなパージ動作再開時の空燃比フィードバック値の把握に要する時間td(図5参照)については、特に言及しなかったが、パージ再開直後に空燃比が過渡的に変化する時間(例えば、1〜2秒)程度の短時間でよい。
【0108】
以上説明したように、本発明は、パージ停止時間が長くなってもパージ再開時にパージ量を不必要に制限することなく空燃比変動を抑制できるので、キャニスタからの燃料のパージ動作の実行頻度を十分に高めることができ、より低燃費な走行制御を可能ならしめる内燃機関の蒸発燃料処理装置を提供することができるものである。このような内燃機関の蒸発燃料処理装置は、燃料パージによる空燃比の変動を抑えるように制御される内燃機関の蒸発燃料処理装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 車両
10 エンジン(内燃機関)
11w ウォータジャケット
13 燃焼室
15 クランク軸
21 インジェクタ(燃料噴射弁)
23 燃料ポンプ(燃料供給機構)
24 プレッシャレギュレータ(燃料供給機構)
25 燃料タンク(燃料供給機構)
26 吸気管
26a サージタンク
27 エアフローメータ(吸気系のセンサ)
28 吸入空気温度センサ(吸気系のセンサ)
29 スロットルバルブ
31 排気管
32 触媒装置
33 A/Fセンサ(空燃比センサ)
40 蒸発燃料処理装置
41 キャニスタ(吸着器)
42 燃料吸入側配管
43 パージ用配管
44 パージ用VSV(パージ要バキュームソレノイドバルブ、パージ制御バルブ)
46 パージ機構
47 パージ制御機構
50 ECU
51 パージ濃度学習値カウンタ
52 パージカット積算カウンタ
61 クランクポジションセンサ
62 スロットルポジションセンサ
63 車速センサ
64 カムポジションセンサ
65 水温センサ
66 イグナイタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料供給機構内で生じた蒸発燃料を吸着する吸着器と、前記吸着器に空気を通して前記吸着器から離脱した燃料および前記空気を含むパージガスを前記内燃機関の吸気管内に吸入させるパージ動作を実行するパージ機構と、前記パージガスの前記吸気管内への吸入量を制御して前記内燃機関における空燃比の変動を抑制するパージ制御機構と、を備えた内燃機関の蒸発燃料処理装置であって、
前記パージ制御機構は、前記パージガスの前記吸入量を前記パージ動作の実行時間に応じて減少させる一方、前記パージ動作の停止される停止時間が予め設定された限界時間に達しないことを条件に、該停止後の前記パージ動作における前記パージガスの前記吸入量の設定値を前記停止時間に応じて増加させ、前記停止時間が前記限界時間に達したことを条件に、該停止後の前記パージ動作における前記パージガスの前記吸入量の設定値の前記停止時間に応じた増加を抑制し、前記パージ動作が前記停止後に再開されたときに前記空燃比が予め設定された基準値に対し一定範囲内に入ることを条件に、前記パージ動作の実行時間に応じた前記吸入量の設定値の減少度合いを通常より大きくすることを特徴とする内燃機関の蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
前記パージ制御機構は、空燃比センサからのフィードバック値を目標値に一致させるよう前記内燃機関の前記空燃比をフィードバック制御する空燃比フィードバック制御装置から前記フィードバック値を取得し、該フィードバック値の大きさが前記一定範囲に対応する所定値以内であることを条件に、前記空燃比が前記基準値に対し前記一定範囲内に入ると判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
前記パージ制御機構は、前記パージ動作の停止時間に応じた積算動作と前記パージ動作の実行時間に応じた減算動作と含む計数処理による計数値に基づいて前記パージガスの前記吸入量を制御し、前記計数値が予め設定された上限値に達したことを条件に前記パージ動作の停止時間に応じた前記パージガスの前記吸入量の増加を抑制するパージ抑制処理を実行する一方、該パージ抑制処理が実行されていないことと、前記パージ動作が前記停止後に再開されたときに前記空燃比が前記基準値に対し前記一定範囲内に入ることとを条件に、前記計数値に対する前記減算動作による減算量を通常より大きくすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。
【請求項4】
前記パージ制御機構は、前記パージ動作の前記停止後の再開時に前記空燃比が前記基準値に対し前記一定範囲内に入ることを条件に、前記再開時の前記計数値を相対的に小さい値に減じて新たな計数値を設定し、該新たな計数値を用いて前記計数動作を再開することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。
【請求項5】
前記パージ制御機構は、前記計数処理を実行する計数器を有し、前記パージ動作の前記停止後の再開時に前記空燃比が前記基準値に対し前記一定範囲内に入ることを条件に、前記計数器の計数値をリセットして前記新たな計数値を設定することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。
【請求項6】
前記パージ制御機構は、前記パージ動作の前記停止後の再開時に前記空燃比が前記基準値に対し前記一定範囲内に入った状態が予め設定された待ち時間だけ継続することを条件に、前記計数値を相対的に小さい値に減じることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。
【請求項7】
前記パージ制御機構は、前記パージ動作の前記停止後の再開時に、前記内燃機関の吸入空気もしくは外気の温度または前記燃料供給機構に設けられた燃料タンク内の燃料の温度に応じて、前記内燃機関の吸入空気量に対する前記パージガスの前記吸入量の比率を可変制御し、前記吸入空気もしくは外気の温度または前記燃料の温度が高いほど前記パージガスの前記吸入量を制限することを特徴とする請求項1ないし請求項6のうちいずれか1の請求項に記載の内燃機関の蒸発燃料処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113143(P2013−113143A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257868(P2011−257868)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】