説明

内燃機関のEGR装置

【課題】内燃機関の減速運転時においてEGR弁の応答性に起因する失火の発生を抑制することのできる内燃機関のEGR装置を提供する。
【解決手段】EGR装置40は、内燃機関10の排気通路30から吸気通路20に排気を戻すためのEGR通路41と、EGR通路41に設けられて排気流通面積を可変とするEGR弁42と、バッテリ60から供給される電力により駆動されてEGR弁42の開度を変更するステッピングモータ43とを備える。また、ステッピングモータ43を制御する電子制御装置70は、バッテリ60の電圧Vbを検出する電圧検出部71と、内燃機関10の減速運転時に、電圧検出部71により検出されるバッテリ60の電圧Vbが高いときには低いときに比べてEGR弁42の開閉速度が大きくなるようにステッピングモータ43の駆動周波数Fを大きく設定する駆動周波数設定部72aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路から吸気通路に排気を戻すためのEGR通路と、EGR通路に設けられて排気流通面積を可変とするEGR弁と、バッテリから供給される電力により駆動されてEGR弁の開度を変更するステッピングモータとを備える内燃機関のEGR装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内燃機関のEGR装置としては、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載のものも含めて従来のEGR装置においては、ステッピングモータを駆動してEGR弁の開度を変更することにより排気通路からEGR通路を通じて吸気通路へ戻される排気(以下、「EGRガス」)の流量(以下、「EGR量」)を調整するようにしている。これにより、排気中の窒素酸化物の低減が図られるようになっている。
【0003】
また、ガソリンエンジンでは、部分負荷運転時においてEGR弁を開弁してEGR量を増大すると、これにともないスロットル弁を通じてシリンダ内に供給される酸素量が減少するようになる。そこで、EGR量に拘わらずシリンダ内に供給される酸素量が所定量に維持されるように、EGR弁の開度を大きくするときには、これに合わせてスロットル弁の開度を大きくするようにしている。これにより、ポンピングロスを低減することができ、燃費の向上が図られるようになる。
【0004】
ここで、ステッピングモータの作動安定性は、その駆動周波数によるところが大きい。すなわち、一般に、駆動周波数を低く設定した方が、ステッピングモータの作動安定性が高くなり、脱調の発生が抑制されることとなる。また、ステッピングモータの作動安定性は駆動周波数の他、これを駆動するバッテリの電圧によっても異なるものとなる。すなわち、ステッピングモータの駆動周波数が同じであっても、バッテリの電圧が低い場合には作動安定性が低くなり、脱調等も生じやすいものとなる。
【特許文献1】特開2000―64910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリの電圧は、バッテリの充放電の履歴や外気温度等に応じて異なるものとなるため、従来は、通常想定されるバッテリの電圧の最低値であってもステッピングモータの作動安定性が確保できる程度にその駆動周波数を十分に低く設定するようにしている。しかしながら、この場合には、EGR弁の開閉速度をある程度犠牲にせざるを得ない。このため、内燃機関の減速運転時において、EGR弁を閉弁してEGR量を制限しようとしても、EGR弁の応答性が低いために、EGR弁の閉弁が完了するまでに過大な排気が吸気通路に戻されることとなり、失火を招くこととなる。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の減速運転時においてEGR弁の応答性に起因する失火の発生を抑制することのできる内燃機関のEGR装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気通路から吸気通路に排気を戻すためのEGR通路と、前記EGR通路に設けられて排気流通面積を可変とするEGR弁と、バッテリから供給される電力により駆動されて前記EGR弁の開度を変更するステッピングモータとを備える内燃機関のEGR装置において、前記バッテリの電圧を検出する電圧検出手段と、内燃機関の減速運転時に、前記電圧検出手段により検出される前記バッテリの電圧が高いときには低いときに比べて前記EGR弁の開閉速度が大きくなるように前記ステッピングモータの駆動周波数を大きく設定する駆動周波数設定手段とを備えることをその要旨としている。
【0008】
上記構成によれば、内燃機関の減速運転時に、バッテリの電圧が高いときには低いときに比べてEGR弁の開閉速度が大きくされる。このため、通常想定されるバッテリの電圧の最低値に対応してステッピングモータの駆動周波数を低く設定する従来のEGR装置に比べて、EGR弁の応答性を高めることができる。これにより、内燃機関の減速運転時においてEGRガスを好適に制限することができるようになる。従って、内燃機関の減速運転時においてEGR弁の応答性に起因する失火の発生を抑制することができるようになる。
【0009】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関のEGR装置において、前記駆動周波数設定手段は、前記電圧検出手段により検出される前記バッテリの電圧が高いときほど前記ステッピングモータの駆動周波数が高くなるようにこれをバッテリの電圧に応じて連続的にまたは段階的に設定することをその要旨としている。
【0010】
ステッピングモータの脱調は、バッテリの電圧が低いときほど、またステッピングモータの駆動周波数が高いときほど発生し易くなる。上記構成によれば、バッテリの電圧に応じてこれが高いときほどステッピングモータの駆動周波数を高く設定するようにしているため、脱調の発生を好適に抑制しつつEGR弁の応答性を高めることができるようになる。これにより、内燃機関の減速運転時においてEGRガスを一層好適に制限することができるようになる。従って、内燃機関の減速運転時においてEGR弁の応答性に起因する失火の発生を一層抑制することができるようになる。
【0011】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の内燃機関のEGR装置において、前記電圧検出手段により検出される前記バッテリの電圧が低いときには高いときに比べて前記EGR弁の最大開度が小さくなるように前記ステッピングモータの駆動範囲を小さく設定する駆動範囲設定手段を備えることをその要旨としている。
【0012】
請求項1または請求項2に記載の発明によるようにバッテリの電圧に応じてステッピングモータの駆動周波数、すなわちEGR弁の開閉速度を可変設定する一方で、例えばこうして可変設定されるEGR弁の開閉速度に拘わらずEGR弁の最大開度を一定に設定すると、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、EGR弁の開閉速度が大きいときに合わせてEGR弁の開度を大きく設定すると、EGR弁の開閉速度が小さいときには大きいときに比べてEGR弁の閉弁が完了するまでに多くの時間を要することとなる。その結果、内燃機関の減速運転時においてEGR弁の閉弁が完了するまでに過大な排気が吸気通路に戻されることとなり、失火を招くおそれがある。
【0013】
この点上記構成によれば、バッテリの電圧が低いときには高いときに比べてEGR弁の最大開度が小さく制限されるため、内燃機関の減速運転時において、EGR弁の開度がEGR弁の開閉速度に対して過度に大きく設定されることを抑制することができるようになる。従って、内燃機関の減速運転時においてEGR弁の開度がEGR弁の開閉速度に対して過度に大きくなることに起因する失火の発生を抑制することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1〜図6を参照して、本発明にかかる内燃機関のEGR装置を車載内燃機関(以下、「内燃機関10」)のEGR装置40として具体化した一実施形態について詳細に説明する。なお内燃機関10は、筒内直接噴射式のものである。
【0015】
図1に、内燃機関10及び内燃機関10を制御する電子制御装置70の概略構成を示す。
内燃機関10の燃焼室11には、吸気通路20が接続されており、燃焼に供せられる空気は吸気通路20を通じて燃焼室11に供給される。また、吸気通路20の途中にはサージタンク21が設けられており、サージタンク21の上流側にはスロットル弁22が設けられている。そして、スロットル弁22の開度を変更すると、これに応じて、吸気通路20を通じて燃焼室11に供給される空気量が調節されるようになっている。
【0016】
また、燃焼室11には、排気通路30が接続されており、燃焼室11にて燃焼した後の排気は排気通路30を通じて外部に排出される。
また、内燃機関10には、燃焼室11から排気通路30に排出された排気の一部を吸気通路20に戻すためのEGR装置40が設けられている。EGR装置40は、サージタンク21と排気通路30とを連通するEGR通路41、EGR通路41に設けられて排気流通面積を可変とするEGR弁42、及びEGR弁42を開閉駆動するためのステッピングモータ43を備えている。そして、ステッピングモータ43の駆動を通じてEGR弁42の開度を変更すると、これに応じて、EGR通路41を通じてサージタンク21に戻される排気(以下、「EGRガス」)の流量(以下、「EGR量」)が調節される。
【0017】
また、内燃機関10には、その運転状態を検出するための各種センサが設けられている。すなわち、アクセルペダルの踏み込み量(以下、「アクセル開度ACCP」)を検出するアクセル開度センサ51、内燃機関10のクランクシャフト12の回転から機関回転速度NEを検出する機関回転速度センサ52、及び車両の走行速度(以下、「車速SPD」)を検出する車速センサ53が設けられている。また、スロットル弁22の開度(以下、「スロットル開度TA」)を検出するスロットル開度センサ54が設けられている。また、スロットル弁22の上流側には、吸入空気の量(以下、「吸入空気量GA」)を検出する吸入空気量センサ55が設けられている。なお、これらセンサ以外にも各種のセンサが必要に応じて設けられている。これら各センサ51〜55の検出信号は、内燃機関10の各種制御を実行する電子制御装置70に入力される。
【0018】
車両には、ステッピングモータ43や電子制御装置70等の各種装置に対して電力を供給するためのバッテリ60が搭載されている。
電子制御装置70は、各種制御を実行するためのプログラム及び演算用マップ、並びに制御の実行に際して算出される各種データ等を記憶するメモリを備えている。そして、上記各センサ51〜55をはじめとする各種センサの出力値により把握される内燃機関10の運転状態等に基づいて、例えば次の各制御を実行する。すなわち、機関運転状態に基づいて目標EGR開度を算出し、目標EGR開度に応じてステッピングモータ43を駆動するEGR制御を実行する。
【0019】
ここで、ステッピングモータ43の作動安定性は、その駆動周波数Fによるところが大きい。すなわち、一般に、駆動周波数Fを低く設定した方が、ステッピングモータ43の作動安定性が高くなり、脱調の発生が抑制されることとなる。また、ステッピングモータ43の作動安定性は駆動周波数Fの他、これを駆動するバッテリ60の電圧Vbによっても異なるものとなる。すなわち、ステッピングモータ43の駆動周波数Fが同じであっても、バッテリ60の電圧Vbが低い場合には作動安定性が低くなり、脱調等も生じやすいものとなる。
【0020】
ところで、バッテリ60の電圧Vbは、バッテリ60の充放電の履歴や外気温度等に応じて異なるものとなるため、従来は、通常想定されるバッテリ60の電圧Vbの最低値であってもステッピングモータ43の作動安定性が確保できる程度にその駆動周波数Fを十分に低く設定するようにしている。しかしながら、この場合には、EGR弁42の開閉速度をある程度犠牲にせざるを得ない。このため、内燃機関10の減速運転時において、EGR弁42を閉弁してEGR量を制限しようとしても、EGR弁42の応答性が低いために、EGR弁42の閉弁を完了するまでに過大な排気が吸気通路20に戻されることとなり、失火を招くこととなる。
【0021】
そこで、本実施形態では、電子制御装置70を通じて以下の制御を実行することにより、内燃機関10の減速運転時においてEGR弁42の応答性に起因する失火の発生を抑制するようにしている。すなわち、電圧検出部71を通じてバッテリ60の電圧Vbを検出し、駆動周波数設定部72aを通じて、内燃機関10の減速運転時に、電圧検出部71により検出されるバッテリ60の電圧Vbが高いときには低いときに比べてEGR弁42の開閉速度が大きくなるようにステッピングモータ43の駆動周波数Fを大きく設定するようにしている。ここで、図2に示すように、ステッピングモータ43の脱調は、バッテリ60の電圧Vbが低いときほど、またステッピングモータ43の駆動周波数Fが高いときほど発生し易くなる。このため、駆動周波数設定部72aを通じて、電圧検出部71により検出されるバッテリ60の電圧Vbが高いときほどステッピングモータ43の駆動周波数Fが高くなるようにこれをバッテリ60の電圧Vbに応じて連続的に設定するようにしている。
【0022】
ところで、バッテリ60の電圧Vbに応じてステッピングモータ43の駆動周波数F、すなわちEGR弁42の開閉速度を可変設定する一方で、例えばこうして可変設定されるEGR弁42の開閉速度に拘わらずEGR弁42の最大開度を一定に設定すると、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、EGR弁42の開閉速度が大きいときに合わせてEGR弁42の開度を大きく設定すると、EGR弁42の開閉速度が小さいときには大きいときに比べてEGR弁42の閉弁が完了するまでに多くの時間を要することとなる。その結果、内燃機関10の減速運転時においてEGR弁42の閉弁を完了するまでに過大な排気が吸気通路20に戻されることとなり、失火を招くおそれがある。
【0023】
そこで、本実施形態では、電子制御装置70を通じて以下の制御を実行することにより、内燃機関10の減速運転時においてEGR弁42の開度がEGR弁42の開閉速度に対して過度に大きくなることに起因する失火の発生を抑制するようにしている。すなわち、駆動範囲設定部72bを通じて、電圧検出部71により検出されるバッテリ60の電圧Vbが低いときには高いときに比べてEGR弁42の最大開度が小さくなるようにステッピングモータ43の駆動範囲を小さく設定するようにしている。
【0024】
次に、図3及び図4を参照して、ステッピングモータ43の駆動量STEPを設定する処理について詳細に説明する。尚、図3は、ステッピングモータの駆動量STEPを設定するための処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、電子制御装置70によって繰り返し実行される。また、図4は、機関回転速度NE及び機関負荷KLとステッピングモータ43の駆動量STEPとの関係を規定したマップである。図4(a)に、バッテリ60の電圧Vbが低電圧側にあるときに適用される低電圧用マップ、図4(b)に、バッテリ60の電圧Vbが通常電圧であるときに適用される通常電圧用マップ、図4(c)に、バッテリ60の電圧Vbが高電圧側にあるときに適用される高電圧用マップを示す。
【0025】
この処理では、まず、そのときのバッテリ60の電圧Vbが第1の所定電圧Vth1以下であるか否かを判断する(ステップS11)。そして、バッテリ60の電圧Vbが第1の所定電圧Vth1以下であるときには(ステップS11:「YES」)、バッテリ60の電圧Vbが低電圧側にあるものとして、次に、図4(a)に示す低電圧用マップを参照してステッピングモータ43の駆動量STEPを設定して(ステップS12)、この一連の処理を終了する。なお、本実施形態では、機関負荷KLとして、そのときの吸入空気量GAと、そのときの機関回転速度NEにおいて得られる吸入空気量の最大値である最大吸気量GAmaxとの比「GA/GAmax」を用いている。
【0026】
一方、ステップS11の判断処理において、バッテリ60の電圧Vbが第1の所定電圧Vth1以下でないときには(ステップS11:「NO」)、次に、バッテリ60の電圧Vbが第2の所定電圧Vth2以下であるか否かを判断する(ステップS13)。そしてこの結果、バッテリ60の電圧Vbが第2の所定電圧Vth2以下であるときには(ステップS13:「YES」)、バッテリ60の電圧Vbが通常電圧であるものとして、次に、図4(b)に示す通常電圧用マップを参照してステッピングモータ43の駆動量STEPを設定して(ステップS14)、この一連の処理を終了する。
【0027】
他方、ステップS13の判断処理において、バッテリ60の電圧Vbが第2の所定電圧Vth2以下でないときには(ステップS13:「NO」)、バッテリ60の電圧Vbが高電圧側にあるものとして、次に、図4(c)に示す高電圧用マップを参照してステッピングモータ43の駆動量STEPを設定する(ステップS15)。そして、この一連の処理を終了する。
【0028】
ここで、図4に示すように、ステッピングモータ43の駆動量STEPが「0」とされると、EGR弁42は全閉となる。また、ステッピングモータ43の駆動量STEPが大きくなるほど、EGR弁42の開度は大きくなる。また、図4(a)〜図4(c)に併せ示すように、バッテリ60の電圧Vbがいずれの場合であってもEGR弁42の最小開度が全閉状態となるように、ステッピングモータ43の駆動量STEPの最小値は「0」に設定されている。また、バッテリ60の電圧Vbが高いときほどEGR弁42の最大開度が大きくなるように、ステッピングモータ43の駆動量STEPの最大値が設定されている。
【0029】
次に、図5及び図6を参照して、ステッピングモータ43の駆動周波数Fを設定する処理について詳細に説明する。尚、図5は、ステッピングモータ43の駆動周波数Fを設定するための処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、電子制御装置70によって繰り返し実行される。また、図6は、バッテリ60の電圧Vbとステッピングモータの駆動周波数Fとの関係を規定したマップである。
【0030】
この処理では、まず、車速SPDとアクセル開度ACCPとに基づいて減速信号が出力されているか否かを判断する(ステップS21)。ここでは、例えば車速SPDが所定速度以上であり、且つアクセル開度ACCPが「0」であるときに減速信号が出力されるようになっている。ここで、減速信号が出力されているときには(ステップS21:「YES」)、次に、そのときのバッテリ60の電圧Vbが第1の所定電圧Vth1以下であるか否かを判断する(ステップS22)。そしてその結果、バッテリ60の電圧Vbが第1の所定電圧Vth1以下であるときには(ステップS22:「YES」)、バッテリ60の電圧Vbが低電圧側にあるものとして、次に、ステッピングモータ43の駆動周波数Fを所定値F1に設定して(ステップS23)、この一連の処理を一旦終了する。ここで、所定値F1は、通常想定されるバッテリ60の電圧Vbの最低値であってもステッピングモータ43の作動安定性が確保できる程度に十分に低く設定される。
【0031】
一方、ステップS21の判断処理において、減速信号が出力されていないときには(ステップS21:「NO」)、次に、ステップS23の処理に移行して、ステッピングモータ43の駆動周波数Fを上記所定値F1に設定して(ステップS23)、この一連の処理を一旦終了する。
【0032】
他方、ステップS22の判断処理において、バッテリ60の電圧Vbが第1の所定電圧Vth1以下でないときには(ステップS22:「NO」)、バッテリ60の電圧Vbが通常電圧あるいは高電圧側にあるものとして、次に、図6に示すマップを参照してステッピングモータ43の駆動周波数FXを設定する(ステップS24)。そして、この一連の処理を一旦終了する。ここで、図6に示すように、バッテリ60の電圧Vbが高いときほどステッピングモータ43の駆動周波数FXが高くなるように、バッテリ60の電圧Vbに応じて駆動周波数FXが連続的に設定される。ちなみに、バッテリ60の電圧Vbが第1の所定電圧Vth1であるときには、ステッピングモータ43の駆動周波数Fは所定値F2に設定されるが、この所定値F2は上記所定値F1よりも大きな値となっている。
【0033】
以上説明した本実施形態にかかる内燃機関のEGR装置によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)バッテリ60の電圧Vbを検出する電圧検出部71と、内燃機関10の減速運転時に、電圧検出部71により検出されるバッテリ60の電圧Vbが高いときには低いときに比べてEGR弁42の開閉速度が大きくなるようにステッピングモータ43の駆動周波数Fを大きく設定する駆動周波数設定部72aとを備えることとした。内燃機関10の減速運転時に、バッテリ60の電圧Vbが高いときには低いときに比べてEGR弁42の開閉速度が大きくされる。このため、通常想定されるバッテリ60の電圧の最低値に対応してステッピングモータ43の駆動周波数を低く設定する従来のEGR装置に比べて、EGR弁42の応答性を高めることができる。これにより、内燃機関10の減速運転時においてEGRガスを好適に制限することができるようになる。従って、内燃機関10の減速運転時においてEGR弁42の応答性に起因する失火の発生を抑制することができるようになる。
【0034】
(2)駆動周波数設定部72aを通じて、電圧検出部71により検出されるバッテリ60の電圧Vbが高いときほどステッピングモータ43の駆動周波数FXが高くなるようにこれをバッテリ60の電圧Vbに応じて連続的に設定することとした。これにより、脱調の発生を好適に抑制しつつEGR弁42の応答性を高めることができるようになる。これにより、内燃機関10の減速運転時においてEGRガスを一層好適に制限することができるようになる。従って、内燃機関10の減速運転時においてEGR弁42の応答性に起因する失火の発生を一層抑制することができるようになる。
【0035】
(3)駆動範囲設定部72bを通じて、電圧検出部71により検出されるバッテリ60の電圧Vbが低いときには高いときに比べてEGR弁42の最大開度が小さくなるようにステッピングモータ43の駆動範囲を小さく設定することとした。これにより、バッテリ60の電圧Vbが低いときには高いときに比べてEGR弁42の最大開度が小さく制限されるため、内燃機関10の減速運転時において、EGR弁42の開度がEGR弁42の開閉速度に対して過度に大きく設定されることを抑制することができるようになる。従って、内燃機関10の減速運転時においてEGR弁42の開度がEGR弁42の開閉速度に対して過度に大きくなることに起因する失火の発生を抑制することができるようになる。
【0036】
なお、本発明にかかる内燃機関のEGR装置は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0037】
・上記実施形態では、ステッピングモータ43の駆動量STEPを設定するためのマップを、低電圧用マップ、通常電圧用マップ、及び高電圧用マップの3つの中からバッテリ60の電圧Vbに応じて適宜選択するようにしている。しかし、本発明の駆動範囲設定手段はこれに限られるものではなく、他に例えば、こうしたマップを、低電圧用マップ及び高電圧用マップの2つの中からバッテリ60の電圧Vbに応じて適宜選択するようにしてもよい。また、こうしたマップを4つ以上設け、バッテリ60の電圧Vbに応じて適宜選択するようにしてもよい。
【0038】
・上記実施形態によるように、バッテリ60の電圧Vbが低いときには高いときに比べてEGR弁42の最大開度が小さくなるようにステッピングモータ43の駆動範囲を小さく設定することが、内燃機関10の減速運転時においてEGR弁42の開度がEGR弁42の開閉速度に対して過度に大きくなることに起因する失火の発生を抑制する上では望ましい。しかしながら、本発明は、このようにバッテリ60の電圧Vbに応じてステッピングモータ43の駆動範囲を可変設定するものに限られるものではない。すなわち、バッテリ60の電圧Vbに応じてステッピングモータ43の駆動周波数、すなわちEGR弁の開閉速度を可変設定しながらも、こうして可変設定されるEGR弁の開閉速度に拘わらずEGR弁の最大開度を一定に設定するようにしてもよい。こうした場合であっても、内燃機関10の減速運転時においてEGR弁42の応答性に起因する失火の発生をある程度は抑制することができるようにはなる。
【0039】
・上記実施形態では、バッテリ60の電圧Vbが高いときほどステッピングモータ43の駆動周波数FXが高くなるようにこれをバッテリ60の電圧Vbに応じて連続的に設定するようにしているが、本発明の駆動周波数設定手段はこれに限られるものではない。他に例えば、バッテリ60の電圧Vbが高いときほどステッピングモータ43の駆動周波数Fが高くなるようにこれをバッテリ60の電圧Vbに応じて段階的に設定するようにしてもよい。また、バッテリ60の電圧Vbが高いときと低いときとでステッピングモータ43の駆動周波数Fを切り替えるようにしてもよい。
【0040】
・上記実施形態では、バッテリ60の電圧Vbを検出する電圧検出部71が電子制御装置70に内蔵される構成について例示したが、本発明の電圧検出手段はこれに限られるものではなく、これを電子制御装置70とは別体の電圧センサとして設けるようにしてもよい。
【0041】
・上記実施形態では、駆動周波数設定手段を通じて、内燃機関10の減速運転時に、バッテリ60の電圧Vbに応じてステッピングモータ43の駆動周波数を可変設定するようにしているが、これに加えて、内燃機関10の加速運転時等においても、バッテリ60の電圧Vbに応じてステッピングモータ43の駆動周波数を可変設定するようにしてもよい。
【0042】
・要するに、バッテリの電圧を検出する電圧検出手段と、内燃機関の減速運転時に、電圧検出手段により検出されるバッテリの電圧が高いときには低いときに比べてEGR弁の開閉速度が大きくなるようにステッピングモータの駆動周波数を大きく設定する駆動周波数設定手段とを備えるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明にかかる内燃機関のEGR装置の一実施形態について、内燃機関及びこれを制御する電子制御装置を中心とした概略構成を示す模式図。
【図2】バッテリの電圧及びステッピングモータの駆動周波数とステッピングモータの脱調の発生の有無との関係を示すグラフ。
【図3】同実施形態におけるステッピングモータの駆動量を設定するための処理手順を示すフローチャート。
【図4】同実施形態におけるステッピングモータの駆動量を設定するためのマップ。
【図5】同実施形態におけるステッピングモータの駆動周波数を設定するための処理手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態におけるステッピングモータの駆動周波数を設定するためのマップ。
【符号の説明】
【0044】
10…内燃機関、11…燃焼室、12…クランクシャフト、20…吸気通路、21…サージタンク、22…スロットル弁、30…排気通路、40…EGR装置、41…EGR通路、42…EGR弁、43…ステッピングモータ、51…アクセル開度センサ、52…機関回転速度センサ、53…車速センサ、54…スロットル開度センサ、55…吸入空気量センサ、60…バッテリ、70…電子制御装置、71…電圧検出部、72a…作動周波数設定部、72b…駆動範囲設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路から吸気通路に排気を戻すためのEGR通路と、前記EGR通路に設けられて排気流通面積を可変とするEGR弁と、バッテリから供給される電力により駆動されて前記EGR弁の開度を変更するステッピングモータとを備える内燃機関のEGR装置において、
前記バッテリの電圧を検出する電圧検出手段と、
内燃機関の減速運転時に、前記電圧検出手段により検出される前記バッテリの電圧が高いときには低いときに比べて前記EGR弁の開閉速度が大きくなるように前記ステッピングモータの駆動周波数を大きく設定する駆動周波数設定手段とを備える
ことを特徴とする内燃機関のEGR装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関のEGR装置において、
前記駆動周波数設定手段は、前記電圧検出手段により検出される前記バッテリの電圧が高いときほど前記ステッピングモータの駆動周波数が高くなるようにこれをバッテリの電圧に応じて連続的にまたは段階的に設定する
ことを特徴とする内燃機関のEGR装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内燃機関のEGR装置において、
前記電圧検出手段により検出される前記バッテリの電圧が低いときには高いときに比べて前記EGR弁の最大開度が小さくなるように前記ステッピングモータの駆動範囲を小さく設定する駆動範囲設定手段を備える
ことを特徴とする内燃機関のEGR装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−275523(P2009−275523A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124764(P2008−124764)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】