説明

内燃機関用潤滑油組成物

【課題】本発明が解決しようとする課題は、優れた省燃費性を維持しながら、高温デポジット防止性能を有する内燃機関用潤滑油組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、(A)成分として有機モリブデン化合物、(B)成分として100℃の動粘度が25mm/秒以上の基油、(C)成分として100℃の動粘度が12.5mm/秒未満の基油を含有し、100℃の動粘度が5mm/秒〜12.5mm/秒で、且つリン含量が800ppm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用潤滑油組成物に関し、更に詳しくは、優れた省燃費性を有し、且つ高温デポジット防止性能を持つ内燃機関用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関用潤滑油は、エンジン内部の潤滑や冷却、あるいは燃焼生成物の清浄分散等の役割を持っている。近年、地球温暖化防止のため自動車等の燃費を向上させ、二酸化炭素の排出量を抑制する要求が高まっていることから、内燃機関用潤滑油に燃費を向上させる機能を付与した省燃費型の内燃機関用潤滑油が検討および使用されている。
【0003】
省燃費型の内燃機関用潤滑油はエンジン内部で発生する摩擦を低減させることにより、内燃機関の燃費を向上させるが、具体的には、摩擦を低下させる添加剤(摩擦調整剤)として、モリブデンジチオカルバメイト等の有機モリブデン系の摩擦調整剤を配合することが一般的である。しかしながら、有機モリブデン系の摩擦調整剤を配合した内燃機関用潤滑剤は、高温下での酸化安定性が悪く、高温デポジットが発生しやすい。特に近年のリーンバーンエンジンや直噴エンジン等は、従来のエンジンに比べて高効率であり、燃焼温度も上昇する傾向にあるため、高温デポジットの発生による問題が大きくなっている。
【0004】
そこで様々な方法で高温デポジットを低減させる方法が提唱されてきた。例えば、特許文献1には、動粘度1.5〜13cSt(100℃)の鉱油および/または合成油を基油とし、(A)動粘度16〜45cSt(100℃)の鉱油および/または合成油3〜40質量%、および(B)粘度指数向上剤0.5〜15質量%を必須成分として含有することを特徴とするターボチャージャ付エンジン用マルチグレードエンジン油組成物が開示されている。また、特許文献2には、100℃における動粘度が2cSt〜13cStであり、ガスクロマトグラフ蒸留により測定した沸点範囲において480℃以上の重質成分を潤滑油基油全質量基準で1質量%以上含有する潤滑油成分を基油とすることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物が開示されている。また、特許文献2の[0021]〜[0026]段落には、摩擦調整剤として有機モリブデン系化合物を使用できることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−122595号公報
【特許文献2】特開平9−328694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に記載された組成物でも、有機モリブデン系の摩擦調整剤を配合すると、高温デポジットを十分に低減させることができず、高温デポジットの更なる低減が可能な省燃費型の内燃機関用潤滑油組成物が望まれていた。
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、優れた省燃費性を維持しながら、高温デポジット防止性能を有する内燃機関用潤滑油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者等は鋭意検討し、内燃機関用潤滑油組成物に有機モリブデン化合物及び特定の粘度の複数の基油を配合することにより、優れた省燃費性能および高温デポジット防止性能を付与できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、(A)成分として有機モリブデン化合物、(B)成分として100℃の動粘度が25mm/秒以上の基油、(C)成分として100℃の動粘度が12.5mm/秒未満の基油を含有し、100℃の動粘度が5mm/秒〜12.5mm/秒で、且つリン含量が800ppm以下であることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は、優れた省燃費性を維持しながら、高温デポジット防止性能を有する内燃機関用潤滑油組成物を提供したことにある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】TEOST33C試験機の概略図である。
【図2】TEOST33C試験におけるケース内の1サイクル中の温度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は(A)成分として有機モリブデン化合物を含有するが、有機モリブデン化合物としては、公知の有機モリブデン化合物であればいずれも使用することができ、例えば、モリブデンジチオカーバメイト、モリブデンジチオホスフェート、特公平5−62639号等に挙げられるモリブデンアミン化合物[三酸化モリブデン、モリブデン酸またはそのアルカリ塩から選ばれた1種又は2種以上の6価のモリブデン化合物と、RN(R、R、Rはそれぞれ水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基で同一であっても異なっていてもよく、R、R、Rの炭素原子数の合計は4以上)のアミノ化合物とを反応させて得られる油溶性モリブデン化合物]、特公平4−30959号等に挙げられるリン及び硫黄を含むモリブデン化合物[(a)少なくとも一つの6価のモリブデン化合物と;(b)硫化水素、水硫化アルカリ又はMS(Mはアルカリ金属またはアンモニウム基)で表わされる硫化アルカリから選ばれた少なくとも一つの化合物と;(c)
【化1】

(X、X、Y、Yは酸素または硫黄原子で同一でも異なっていてもよく、nは0または1であり、R、Rは有機残基で同一でも異なってもよい)で表わされる化合物またはその塩と;(d)6価のモリブデン化合物を5価又は4価に還元できる還元剤(ただし、b、c成分を除く)とを反応させて得られた化合物]等が挙げられる。
【0012】
こうした有機モリブデン化合物の中でも、摩擦低減の効果が大きいことから、下記の一般式(1)で表されるモリブデンジチオカーバメイトが好ましい:
【化2】

(式中、R〜Rは、炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基を表し、X〜Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【0013】
上記一般式(1)のR〜Rは、炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基であり、こうした基としては、例えば、ブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ターシャリペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ステアリル基、2−ブチルオクチル基、2−ブチルデシル基、2−ヘキシルオクチル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルデシル基、2−ヘキシルドデシル基、モノメチル分枝−イソステアリル基等のアルキル基;ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オレイル基等のアルケニル基が挙げられる。これらの中でも、摩擦低減の効果が高いことからアルキル基が好ましく、炭素数6〜16のアルキル基がより好ましく、炭素数8〜13のアルキル基が更に好ましい。なお、R〜Rは同一であっても、異なっていてもよい。
【0014】
〜Xは酸素原子又は硫黄原子であり、X〜Xの全てが酸素原子あるいは硫黄原子であってもよく、X〜Xが酸素原子と硫黄原子の混合物であってもよい。しかし摩擦低減の効果が高く、腐食性が少ないことから酸素原子/硫黄原子=1/3〜3/1(モル比)の比率にあることが好ましい。
【0015】
上記の有機モリブデン化合物は、1種あるいは2種以上の混合物でもよく、本発明の内燃機関用潤滑油組成物の添加量は規定されないが、添加量が少ないと摩擦低減効果が得られない場合があり、また添加量多すぎると、本発明の内燃機関用潤滑油組成物の持つ高温デポジット防止性能の効果を上回る高温デポジットが発生する場合があるため、本発明の内燃機関用潤滑油組成物の全量に対してモリブデン量で200〜2000ppmになるように添加するのが好ましく、200〜1500ppmがより好ましく、300〜1000ppmが更に好ましい。
【0016】
本発明に使用する(B)成分は、100℃の動粘度が25mm/秒以上の基油であり、こうした基油としては鉱油系基油、合成系基油あるいはこれらの混合油を用いることができる。鉱油系基油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油等を挙げることができ、これらの溶剤精製油、水素化処理油あるいはワックス異性化油等を用いてもよい。合成系基油としては、例えば、ポリαオレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル、ポリフェニルエーテル等を用いることができる。これらの中でも、ブライトストック等のパラフィン系鉱油や、高粘度のポリαオレフィンが好ましい。
【0017】
これらの基油は、(B)成分として単独あるいは混合して用いることができるが、100℃の動粘度が25mm/秒以上でなければならず、好ましくは25〜100mm/秒、より好ましくは25〜80mm/秒、更に好ましくは30〜60mm/秒である。100℃の動粘度が25mm/秒未満になると、高温デポジット防止性能が十分に発揮されない。また粘度があまりにも高すぎると取扱いが困難になる場合や、均一に配合するのに時間がかかる等の問題があるため、動粘度は100mm/秒以下であることが好ましい。
【0018】
(B)成分の配合量は特に規定されないが、配合量があまりに少ないと高温デポジット防止性能の効果が発揮されない場合があり、また、配合量があまりに多すぎると本発明の内燃機関用潤滑油組成物の100℃における動粘度を12.5mm/秒以下にすることが困難になる場合や、低温粘度が上昇して省燃費効果が低減する場合がある。こうしたことから、(B)成分の配合量は本発明の内燃機関用潤滑油組成物の全量に対して1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましく、5〜20質量%が更に好ましい。
【0019】
本発明に使用する(C)成分は、100℃の動粘度が12.5mm/秒未満の基油である。こうした基油としては、鉱油系基油、合成系基油あるいはこれらの混合油を用いることができ、こうした基油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、これらの鉱油の溶剤精製処理油、水素化処理油あるいはワックス異性化処理油、あるいはこれらの処理を複数組み合わせた鉱油等の鉱油系基油;ポリαオレフィン、ポリイソブチレ等の合成油が挙げられる。
【0020】
(C)成分の動粘度が12.5mm/秒以上になると、本発明で規定している動粘度の範囲内の潤滑油組成物を製造できない。また、(C)成分の動粘度が12.5mm/秒未満であっても、あまりに高い粘度の基油になると、添加できる高粘度基油の添加量が減るために高温デポジットの発生を効率よく低減できない場合や、本発明の内燃機関用潤滑油組成物の低温粘度が上昇して省燃費効果が低減する場合がある。よって(C)成分の100℃の動粘度は、1〜11mm/秒であることが好ましく、2〜8mm/秒であることがより好ましく、2〜5mm/秒であることが更に好ましい。
【0021】
更に、省燃費性の向上という観点から(C)成分の粘度指数は100以上であることが好ましく、110以上がより好ましく、120以上が更に好ましい。低粘度基油の粘度指数が100未満になると、最終製品である内燃機関用潤滑油組成物の低温粘度が上昇して省燃費の効果が得られない場合がある。
【0022】
(C)成分の配合量は、他の添加剤等を配合した本発明の内燃機関用潤滑油組成物の100℃における動粘度が5mm/秒〜12.5mm/秒になるように配合すればよく、具体的には本発明の潤滑油組成物全量に対して50〜95質量%、好ましくは60〜85質量%配合すればよい。
【0023】
また、上記(A)〜(C)成分を含有する本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、リン量が800ppm以下でなければならない。リンは基油中に微量に存在する場合もあるが、内燃機関用潤滑油組成物に添加するリン系添加剤由来のものがほとんどである。こうしたリン系添加剤としては、例えば、モリブデンジチオホスフェート、亜鉛ジチオホスフェート等の金属含有の添加剤;モノオクチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、モノオレイルホスフェート、ジオレイルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリクレジルホスファイト、チオリン酸エステル等の極圧剤;カルシウムホスフェート、マグネシウムホスフェート、バリウムホスフェート等の清浄剤が挙げられる。
【0024】
これらのリン系添加剤は1種あるいは2種以上を添加してもよいが、その添加量はリン量として800ppm以下でなければならない。800ppm以下であれば高温デポジットの発生量はリン濃度にほとんど影響を受けないが、リン濃度が800ppmを超えると高温デポジットの発生量が急激に増えてしまう。しかし、リン濃度があまりに低いと内燃機関用潤滑油として耐摩耗性や酸化防止性に劣る場合があるので、リンが一定量以上存在することが好ましく、具体的なリン量としては300〜800ppmが好ましく、500〜800ppmがより好ましい。なお、添加するのに最も適したリン化合物は、耐摩耗性や酸化防止性に優れる亜鉛ジチオホスフェートである。
【0025】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、100℃における動粘度が5mm/秒〜12.5mm/秒である。5mm/秒未満になると、油膜が十分に形成されず摺動面で磨耗が生じる恐れがあり、12.5mm/秒より大きくなると油膜が厚くなりすぎて摩擦損失が増加して省燃費性能を損なう問題が生じる。
【0026】
本発明における高温デポジットとは、300℃あるいは400℃以上の高温において生成する、内燃機関用潤滑油組成物に起因した不溶解物のことである。こうした高温デポジットがエンジン内部や過給機のベアリング等に付着・堆積すると、エンジンや過給機の性能低下やトラブルを招く恐れがある。
【0027】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は高温デポジットの発生量が少ないことが最大の特徴である。高温デポジットを確認するには公知の試験で評価すればいずれの試験でもよいが、より厳密な評価ができることから、ILSAC(International Lubricant Standardization and Approval Committee)で採用しているTEOST33C試験(ASTM D6335)で評価することが好ましい。高温デポジットの量は少なければ少ないほどよいが、具体的には、実使用時においてエンジン性能や過給機性能の低下がほとんど見られないことから、TEOST33C試験において40mg以下が好ましく、30mg以下がより好ましい。
【0028】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、粘度指数向上剤、流動点降下剤、極圧剤、油性向上剤、酸化防止剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、金属不活性剤、防錆剤および消泡剤等の添加剤をいずれか1種以上を添加することが好ましい。なお、これらの添加剤を配合する場合は、内燃機関用潤滑油組成物全量に対するリン含量が800ppm以下、好ましくは300〜800ppmとなるように特に注意する必要がある。
【0029】
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリ(C1〜18)アルキルメタクリレート、(C1〜18)アルキルアクリレート/(C1〜18)アルキルメタクリレート共重合体、ジエチルアミノエチルメタクリレート/(C1〜18)アルキルメタクリレート共重合体、エチレン/(C1〜18)アルキルメタクリレート共重合体、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、エチレン/プロピレン共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、スチレン/イソプレン水素化共重合体等が挙げられる。あるいは、分散性能を付与した分散型もしくは多機能型粘度指数向上剤を用いてもよい。重量平均分子量は10,000〜1,500,000、好ましくは30,000〜1,000,000程度である。これらの粘度指数向上剤の好ましい配合量は、内燃機関用潤滑油組成物に対して0.1〜20質量%。より好ましくは0.3〜15質量%である。
【0030】
流動点降下剤としては、例えば、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリビニルアセテート等が挙げられ、重量平均分子量は1000〜100,000、好ましくは3,000〜80,000程度である。これらの流動点降下剤の好ましい配合量は、内燃機関用潤滑油組成物に対して0.005〜3質量%、より好ましくは0.01〜2質量%である。
【0031】
極圧剤としては、例えば、硫化油脂、オレフィンポリスルフィド、ジベンジルスルフィド等の硫黄系添加剤;モノオクチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリフェニルフォスファイト、トリブチルフォスファイト、チオリン酸エステル等のリン系化合物;チオリン酸金属塩、チオカルバミン酸金属塩、酸性リン酸エステル金属塩等の有機金属化合物などが挙げられる。これら極圧剤の好ましい配合量は、内燃機関用潤滑油組成物に対して0.01〜2質量%、より好ましくは0.05〜1質量%である。
【0032】
油性向上剤としては、例えば、オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸類;オレイルグリセリンエステル、ステリルグリセリンエステル、ラウリルグリセリンエステル等のエステル類;ラウリルアミド、オレイルアミド、ステアリルアミド等のアミド類;ラウリルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミン等のアミン類;ラウリルグリセリンエーテル、オレイルグリセリンエーテル等のエーテル類が挙げられる。これら油性向上剤の好ましい配合量は、内燃機関用潤滑油組成物に対して0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜3質量%である。
【0033】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−ターシャリブチルフェノール(以下、ターシャリブチルをt−ブチルと略記する。)、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ステアリル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オレイル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ドデシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸デシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、テトラキス{3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル}メタン、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸グリセリンモノエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸とグリセリンモノオレイルエーテルとのエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ブチレングリコールジエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸チオジグリコールジエステル、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)サルファイド、トリス{(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル―オキシエチル}イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ビス{2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル}サルファイド、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラフタロイル―ジ(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジルサルファイド)、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−{ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)}プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−リン酸ジエステル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)サルファイド、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス{3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル等のフェノール系酸化防止剤;1−ナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン、p−オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、p−ノニルフェニル−1−ナフチルアミン、p−ドデシルフェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジオクチル−p−フニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系酸化防止剤;ジピリジルアミン、ジフェニルアミン、p,p’−ジ−n−ブチルジフェニルアミン、p,p’−ジ−t−ブチルジフェニルアミン、p,p’−ジ−t−ペンチルジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、p,p’−ジノニルジフェニルアミン、p,p’−ジデシルジフェニルアミン、p,p’−ジドデシルジフェニルアミン、p,p’−ジスチリルジフェニルアミン、p,p’−ジメトキシジフェニルアミン、4,4’−ビス(4−α,α−ジメチルベンゾイル)ジフェニルアミン、p−イソプロポキシジフェニルアミン、ジピリジルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、フェノチアジンカルボン酸エステル、フェノセレナジン等のフェノチアジン系酸化防止剤;亜鉛ジチオホスフェートが挙げられる。これら酸化防止剤の好ましい配合量は、内燃機関用潤滑油組成物に対して0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜4質量%である。
【0034】
金属系清浄剤としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのスルフォネート、フェネート、サリシレート、フォスフェート及びこれらの過塩基性塩が挙げられる。これらの中でも過塩基性塩が好ましく、過塩基性塩の中でもTBN(トータルベーシックナンバー)が30〜500mgKOH/gのものがより好ましい。更に、リン及び硫黄原子のないサリシレート系の清浄剤が好ましい。これらの金属系清浄剤の好ましい配合量は、内燃機関用潤滑油組成物に対して0.5〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%である。
【0035】
無灰分散剤としては、例えば、重量平均分子量約500〜3000のアルキル基またはアルケニル基が付加されたコハク酸イミド、コハク酸エステル、ベンジルアミン又はこれらのホウ素変性物等が挙げられる。これらの無灰分散剤の好ましい配合量は、内燃機関用潤滑油組成物に対して0.5〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%である。
【0036】
金属不活性剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、テトラアルキルチウラムジサルファイド等が挙げられる。これら金属不活性剤の好ましい配合量は、内燃機関用潤滑油組成物に対して0.01〜3質量%、より好ましくは0.02〜2質量%である。
【0037】
防錆剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、酸化パラフィンワックスカルシウム塩、酸化パラフィンワックスマグネシウム塩、牛脂脂肪酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアミン塩、アルケニルコハク酸又はアルケニルコハク酸ハーフエステル(アルケニル基の分子量は100〜300程度)、ソルビタンモノエステル、ノニルフェノールエトキシレート、ラノリン脂肪酸カルシウム塩等が挙げられる。これらの防錆剤の好ましい配合量は、内燃機関用潤滑油組成物に対して0.01〜3質量%、より好ましくは0.02〜2質量%である。
【0038】
消泡剤としては、例えば、ポリジメチルシリコーン、トリフルオロプロピルメチルシリコーン、コロイダルシリカ、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、アルコールエトキシ/プロポキシレート、脂肪酸エトキシ/プロポキシレート、ソルビタン部分脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの消泡剤の好ましい配合量は、内燃機関用潤滑油組成物に対して0.001〜0.1質量%、より好ましくは0.001〜0.01質量%である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等において「%」は特に記載が無い限り質量基準である。
下記の表1および表2に示した配合表に従い、試験に使用した内燃機関用潤滑油組成物(試験油)を作成し、以下に示した方法でTEOST33C試験および省燃費性試験を実施し、結果を表1および表2に示した。なお、配合に使用した基油及びその性状は表3に示した。
【0040】
<TEOST33C試験:高温デポジット試験>
ASTM D6335の試験方法に準拠し、TEOST33C試験機(Tannas Co.社製)を使用して試験を行った。図1は、TEOST33C試験機の概略図である。具体的な試験方法は、図1に示した装置のケース(1)内のロッド(金属棒)(2)を図2に示した温度になるように加熱および冷却しながら、ケース(1)内のロッド(2)に、試験油を貯留した反応室(4)からポンプ(3)を用いて一定量の試験油を流した。この工程を1サイクルとし、このサイクルを12回繰り返した後、ロッドを取り出して付着したデポジット(付着物)の質量並びに試験油全量をフィルターでろ過して試験油中のデポジットの質量を測定し、この質量の合計値を高温デポジット量とした。なお、反応室(4)内の試験油には、水分を含んだ空気と一酸化窒素ガスを一定量吹き込んだ。なお、水分を含んだ空気としては、空気を50mlのフラスコに入った30mlの水にバブリングさせたものを使用した。
詳しい試験条件を下記に示した:
(試験条件)
温度:200〜480℃
テストサイクル:12サイクル
テスト時間:9.5分/1サイクル(全テスト時間114分)
試験油量:106ml
触媒:ナフテン酸鉄(鉄量として100ppm試験油に添加)
ポンプ速度:0.49ml/分
Oガス流量:3.5ml/分
空気流量:3.5ml/分
【0041】
<省燃費性試験>
各試験油について、SRV試験機を用いて以下の条件で摩擦係数を測定した。摩擦係数が低いほど省燃費性が高いことを示す。
上部試験片:円柱状試験片(φ15×22mm、材質SUJ−2)
下部試験片:円盤状試験片(φ24×6.85mm、材質SUJ−2)
荷重:200N
振幅:1.0mm
サイクル:50Hz
測定温度:80℃
測定時間:15分
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
なお、上記本発明品および比較品に使用した各成分の詳細は下記の通りである:
粘度指数向上剤:ポリメタクリレート系粘度指数向上剤
清浄剤:カルシウムサリシレート(TBN280)
分散剤:ポリアルケニルコハク酸イミド
酸化防止剤:ベンゼンプロパン酸−3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒ
ドロキシオクチルエステルとジオクチルジフェニルアミンの1:1(質量比
)混合物
亜鉛ジチオホスフェート:ジ直鎖アルキル(炭素数4〜6の混合物)ジチオリン酸亜鉛(
リン含量:8.67%)
モリブデンジチオカルバメート:一般式(1)のR〜Rは炭素数8または13の混合
物、XおよびXは酸素原子、XおよびXは硫黄
原子(モリブデン含量17.5%)
また、使用した基油およびその性状は以下の表3に記載の通りである:
【0045】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関であればいずれの内燃機関であってもその潤滑油として使用することができ、中でもガソリンエンジンのエンジン油として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ケース 2 ロッド 3 ポンプ 4 反応室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として有機モリブデン化合物、(B)成分として100℃の動粘度が25mm/秒以上の基油、(C)成分として100℃の動粘度が12.5mm/秒未満の基油を含有し、100℃の動粘度が5mm/秒〜12.5mm/秒で、且つリン含量が800ppm以下であることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項2】
内燃機関用潤滑油組成物全量に対して、(A)成分をモリブデン量として200〜2000ppm、(B)成分を1〜30質量%、(C)成分を50〜95質量%含有していることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項3】
(A)成分が下記の一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関用潤滑油組成物:
【化1】

(式中、R〜Rは炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基又はアルケニル基を表し、X〜Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【請求項4】
粘度指数向上剤、流動点降下剤、極圧剤、油性向上剤、酸化防止剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、金属不活性剤、防錆剤および消泡剤からなる群から選択される1種または2種以上の添加剤を含有してなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項5】
極圧剤として亜鉛ジチオホスフェートを内燃機関用潤滑油組成物全量に対してリン含量として300〜800ppm含有することを特徴とする請求項4記載の内燃機関用潤滑油組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−46555(P2012−46555A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186834(P2010−186834)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】