説明

内燃機関用過給機のスラスト軸受

【課題】 銅合金の黄銅生地中に分散した針状Mn−Si系化合物の長径方向を制御し、耐焼付性に優れた内燃機関用過給機のスラスト軸受を提供する。
【解決手段】 スラスト軸受の摺動部3の表面2から深さ50μmまでの領域に分散する針状Mn−Si系化合物4の長径方向は当該摺動部3の表面2に対して角度30°〜150°と加工制御することにより、常に針状Mn−Si系化合物4の粒の表面積の大部分は黄銅生地に拘束される結果、摺動による脱落が抑制されるため、摺動中の軸受表面2および軸表面を傷つけることなく焼付を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐焼付性に優れた内燃機関の過給機に好適なスラスト軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用過給機の回転軸は、軸受箱内に配設したラジアル軸受及びスラスト軸受により支持され、その一端にタービン翼が取付けられ、他端にコンプレッサ翼が取付けられている。そして、スラスト軸受は、スラスト軸受対応のスラストカラーと係合して配設される。また、内燃機関用過給機の作動中、タービン翼と一体化されたスラストカラーが高速回転する際、係合して配設されるスラスト軸受とスラストカラーとの間で摺動が起こる。
【0003】
このため、内燃機関用過給機のスラスト軸受のスラストカラーと摺動する摺動部には、耐食性や耐摩耗性が要求されており、スラスト軸受の摺動部の材料として、特許文献1に示すように、黄銅生地中に針状に晶出する晶出型Mn−Si系化合物(以下、「針状Mn−Si系化合物」という)の粒を分散させた黄銅が用いられている。そして、特許文献1に開示される技術においては、黄銅生地中に針状に晶出させたMn−Si系化合物の伸長方向を、スラスト軸受の摺動部表面に対して平行方向に配設することにより、スラスト軸受の耐摩耗性が向上するという効果が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−42145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される技術のように、針状に晶出させたMn−Si系化合物が摺動部表面に対して平行方向に伸張して分散している状態、つまり針状Mn−Si系化合物の長径方向が摺動面に対して平行方向に配設された状態であると、摺動面の表面に露出する針状Mn−Si系化合物の粒は、その表面積の約半分は黄銅生地と接しないため、摺動によって容易にせん断され、Mn−Si系化合物が摺動部表面から容易に脱落する。そして、脱落したMn−Si系化合物が異物となり、摺動中の軸受表面および軸表面を傷つけ、最終的には焼付に至る懸念がある。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、耐焼付性に優れた内燃機関用過給機のスラスト軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明は、針状Mn−Si系化合物が黄銅生地中に晶出して分散する銅合金からなる内燃機関用過給機のスラスト軸受において、前記スラスト軸受の摺動部の表面から深さ50μmまでの領域に分散する前記針状Mn−Si系化合物は、前記摺動部の表面に対して垂直な方向の断面視野にて、当該摺動部の内部から表面に向かう長径方向が当該摺動部の表面に対して角度30°〜150°となるものが、前記領域に分散する全体の前記針状Mn−Si系化合物の50%以上であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の内燃機関用過給機のスラスト軸受において、前記摺動部表面において前記黄銅生地に分散する前記針状Mn−Si系化合物の平均粒子間距離が5〜80μmであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の内燃機関用過給機のスラスト軸受において、前記スラスト軸受の銅合金は、Znが20〜45質量%、Siが0.3〜2.0質量%、Mnが1.0〜6.0質量%、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金によって構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の内燃機関用過給機のスラスト軸受において、前記スラスト軸受の銅合金は、さらにFe、Al、Ni、Sn、Cr、Ti、Mo、Co、Zr、Sbより選択される少なくとも1種以上を総量で10質量%以下含有することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の内燃機関用過給機のスラスト軸受において、前記スラスト軸受の銅合金は、さらにPb、Biより選択される少なくとも1種以上を総量で10質量%以下含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明は、スラスト軸受の摺動部の表面から深さ50μmまでの領域の黄銅生地中に分散する針状Mn−Si系化合物は、摺動部の表面に対して垂直な方向の断面視野にて、当該摺動部の内部から表面に向かう長径方向が当該摺動部の表面に対して角度30°〜150°となるものが、深さ50μmまでの領域に晶出させた全体の針状Mn−Si系化合物の50%以上である。ここで、針状Mn−Si系化合物とは、Mn原子5個とSi原子3個からなる化合物であり、銅合金の黄銅生地中に針状の粒の形態で分散している。なお、本発明のスラスト軸受は、銅合金基地中に針状Mn−Si系化合物の他に、粒状の形態のMn−Si系化合物が析出して分散していても良い。
【0013】
そして、摺動部の表面に対して垂直な方向の断面視野にて、針状Mn−Si系化合物の当該摺動部の内部から表面に向かう長径方向を当該摺動部の表面に対して角度30°〜150°と加工制御することにより、摺動面の表面の近傍の存在する針状Mn−Si系化合物の粒は、その表面積の大部分は黄銅生地と接して強固に拘束されるようにすることができる。その結果、摺動による針状Mn−Si系化合物の粒の脱落が抑制されるため、摺動中の軸受表面および軸表面を傷つけることなく焼付を防止することができる。また、長径方向が、摺動面の表面に対して角度が30°〜150°となる針状Mn−Si系化合物の割合が全体の50%未満の場合には、脱落する割合が相対的に多くなるため焼付を完全に防止することができなくなるおそれがある。
【0014】
なお、長径方向が摺動面の表面に対する角度が45°〜135°となる針状Mn−Si系化合物の割合が全体の50%以上となる場合には、より耐焼付性を向上させることができることを発明者らは確認している。また、針状Mn−Siの長径方向を制御する領域を摺動面から50μmの深さとしたのは、内燃機関用過給機のスラスト軸受の許容最大摩耗深さが50μmだからである。
【0015】
また、過給機の作動時に前記スラスト軸受の温度が上昇すると、摺動部表面における黄銅生地と針状Mn−Si系化合物との熱膨張量の差により針状Mn−Si系化合物の周囲の黄銅生地を構成する金属原子の配列に欠陥(歪み)が生じる。原子の配列に欠陥(歪み)が生じた黄銅生地は、活性な状態となり潤滑油中に存在する硫黄成分と反応が起き易くなる。
【0016】
そして、請求項2に係る発明のように、摺動部の表面において黄銅生地に分散する針状Mn−Si系化合物の平均粒子間距離が5〜80μmとすると、スラスト軸受の摺動部の表面の黄銅生地全体が針状Mn−Si系化合物との熱膨張量の差による影響を均一に受けるので、摺動部の表面全体が均一に活性状態となり、摺動部の黄銅生地の表面に早期に硫化膜を形成することが可能となる。なお、平均粒子間距離とは、摺動部表面の黄銅生地に分散した針状Mn−Si系化合物の粒と、その粒が最も近接する他の針状Mn−Si系化合物の粒との間の距離の平均値であり、針状Mn−Si系化合物の粒間に存在する黄銅生地の平均の長さを表すことになる。このように、摺動部の表面における黄銅生地に分散した針状Mn−Si系化合物の平均粒子間距離を5〜80μmとするという特徴的な構成によって、過給機の作動時に黄銅生地の表面に早期に非金属である硫化膜が形成されるため、相手軸表面との金属面同士の摺動となることを防ぎ、スラスト軸受の耐焼付性を高めることができる。
【0017】
なお、添加するMn量とSi量が同じである銅合金の黄銅生地に分散する針状Mn−Si系化合物の平均粒子間距離が短い場合、黄銅生地に分散する針状Mn−Si系化合物が微細になる。そして、針状Mn−Si系化合物の平均粒子間距離が5μm未満の場合、針状Mn−Si系化合物が微細になり過ぎて、耐摩耗性の効果が小さくなることが実験で確認されている。一方、針状Mn−Si系化合物の平均粒子間距離が80μmを越えると、針状Mn−Si系化合物の粒子間の中央部付近の黄銅生地は、過給機の作動時の針状Mn−Si系化合物との熱膨張差による影響を受け難くなるために硫化膜が形成しがたくなる。
【0018】
請求項3に係る発明は、スラスト軸受の銅合金は、Znが20〜45質量%、Siが0.3〜2.0質量%、Mnが1.0〜6.0質量%、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金によって構成されている。Znは、耐食性に寄与する元素であり、20〜45質量%含有させている。Znが20質量%未満では、耐食性が十分でなく、45質量%を越えると、材料が脆くなる。より好ましくは、Znの含有量が28〜40質量%の範囲である。
【0019】
Siは、Mnと反応し、耐摩耗性の向上に寄与する化合物を形成する元素であり、0.3〜2.0質量%含有させている。Siが0.3質量%未満では、Mn−Si系化合物の形成量が少ないため、耐摩耗性が不十分となる。また、Siが2.0質量%を越えると、過剰にMn−Si系化合物が形成され、材料が脆くなる。より好ましくは、Siの含有量が0.6〜1.4質量%の範囲である。
【0020】
Mnは、Siと反応し、耐摩耗性の向上に寄与する化合物を形成する元素であり、1.0〜6.0質量%含有させている。Mnが1.0質量%未満では、Mn−Si系化合物の形成量が少ないため、耐摩耗性が不十分となる。また、Mnが6.0質量%を越えると、材料が脆くなる。より好ましくは、Mnの含有量が2.0〜4.0質量%の範囲である。
【0021】
スラスト軸受の銅合金には、請求項4に係る発明のように、さらにFe、Al、Ni、Sn、Cr、Ti、Mo、Co、Zr、Sbより選択される少なくとも1種以上を総量で10質量%以下含有させてもよい。これらの元素は、銅合金のマトリクスの強化に寄与する元素であるが、0.1質量%未満であるとその効果がなく、10質量%を越えると、材料が脆くなる。また、これらの元素は、MnやSiと結合し、化合物を形成することもある。本発明における針状Mn−Si系化合物は、上記の元素との化合物であってもよい。
【0022】
スラスト軸受の銅合金には、請求項5に係る発明のように、さらにPb、Biより選択される少なくとも1種以上を総量で10質量%以下含有させてもよい。これらの元素は、潤滑性の向上に寄与する元素であるが、0.1質量%未満であるとその効果がなく、10質量%を越えると、材料が脆くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】スラスト軸受の平面模式図及び断面模式図である。
【図2】スラスト軸受の摺動部の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本実施形態に係る針状Mn−Si系化合物を黄銅生地中に分散した銅合金を用いた実施例A〜Eと比較例A〜Cについて、針状Mn−Si系化合物の長径方向の角度及び平均粒子間距離を測定すると共に、軸受試験機を用いた表1に示す焼付試験を行った。実施例A〜E及び比較例A〜Cの成分組成を表2に示す。実施例A〜E及び比較例A〜Cは全て、鋳造法により表2に示す成分組成の銅合金鋳物を作製した後、熱間押出加工を施し円筒形状のスラスト軸受を作製した。また、鋳造時においては、銅合金の黄銅生地中に針状Mn−Si系化合物を晶出させた。この銅合金鋳物は、熱間押出加工を施すことにより、針状Mn−Si系化合物が、押出方向に平行となるように配設した。その後、軸受形状へ熱間鍛造加工をする際に、後述する摺動部3の塑性変形量を制御することで、摺動部3近傍の針状Mn−Si系化合物の長径方向を制御した。また、銅合金鋳物を作製するときの鋳造条件や熱間押出加工時及び熱間鍛造加工時の条件を変えることにより、摺動部の表面から深さ50μmまでの領域に分散する針状Mn−Si系化合物の摺動部の表面に対して垂直な方向の断面視野での長径方向の角度及び摺動部の表面での針状Mn−Si系化合物の平均粒子間距離を表3に値となるように制御することができる。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
ところで、鋳造法により作製して熱間押出加工した円筒形状のスラスト軸受1は、図1に示すように、摺動面2の内径に接する一部が過給機のスラストカラーと摺動する摺動部3として使用されるものである。そして、その摺動部3の表面2に対して垂直な方向の断面視野において、図2に示すように、摺動部3の内部から表面2に向かう針状Mn−Si系化合物4の長径方向の当該摺動部3の表面2に対する角度α(以下、「針状Mn−Si系化合物4の長径方向の角度」という。)とした場合に、30°≦α≦150°となるように熱間鍛造加工が施される。
【0029】
そして、実施例A〜E及び比較例A〜Cについて、黄銅生地中に分散する針状Mn−Si系化合物4の長径方向の角度について、摺動部3の表面2に対して垂直な方向の断面において、摺動部3の表面2から深さ50μmまでの領域に分散する針状Mn−Si系化合物4のうち、長径方向が摺動部3の表面2に対して角度αが30°〜150°であるものの割合を測定した。また、針状Mn−Si系化合物4の平均粒子間距離は、摺動部3の表面2における、針状Mn−Si系化合物4の粒と、その粒が最も近接する他の針状Mn−Si化合物4の粒との間の距離の平均値を測定した。これらの測定は、電子顕微鏡を用いて軸受摺動部3の断面および軸受摺動部3の表面2の組成像を200倍で撮影し、得られた組成像から一般的な画像解析手法(解析ソフト:Image-Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)等を用いて測定できる。そして、その測定結果を表3に示す。
【0030】
また、実施例A〜E、比較例A〜Cについて、軸受試験機を用いた焼付試験を表2に示す条件で実施した。なお、スラスト軸受の背面温度が250℃となった場合を焼付と判断し、焼付がおこらなかった限界の負荷(面圧)の値を表3に示す。
【0031】
実施例A〜Cは、黄銅生地中に分散する針状Mn−Si系化合物の長径方向が摺動部表面に対して角度30°〜150°であるものの割合を50%以上に制御しており、且つ摺動部表面での平均粒子間距離を5〜80μmになるようにした。なお、実施例A、Bについては、黄銅生地中に分散する針状Mn−Si系化合物の長径方向が摺動部表面に対して角度45°〜135°であるものの割合を50%以上に制御している。
【0032】
実施例Dは、黄銅生地中に分散する針状Mn−Si系化合物の長径方向が摺動部表面に対して角度30°〜150°であるものの割合を50%以上に制御しているが、摺動部表面での針状Mn−Si系化合物の平均粒子間距離が80μmを超えるようにした。
【0033】
実施例Eは、黄銅生地中に分散する針状Mn−Si系化合物の長径方向が摺動部表面に対して角度30°〜150°であるものの割合を50%以上に制御しているが、摺動部表面での針状Mn−Si系化合物の平均粒子間距離が5μm未満となるようにした。
【0034】
比較例A〜Cは、黄銅生地中に分散する針状Mn−Si系化合物の長径方向が摺動部表面に対して角度30°〜150°であるものの割合を50%未満としている。
【0035】
焼付試験において、表3に示すように、黄銅生地中に分散する針状Mn−Si系化合物の長径方向が摺動部の表面に対して角度30°〜150°であるものの割合が50%以上である実施例A〜Eは耐焼付性が高く、50%未満の比較例A〜Cは耐焼付性が低い。
【0036】
焼付試験後の摺動部の表面観察において、実施例A〜Eは比較例A〜Cと比較して、摺動部表面に線状傷が少なかった。特に、黄銅生地中に分散する針状Mn−Si系化合物の長径方向が摺動部表面に対して角度30°〜150°であるものの割合が大きいものほど、その傾向が顕著に見られた。これは、針状Mn−Si系化合物の摺動部の内部から表面に向かう長径方向と摺動部の表面との角度30°〜150°と加工制御することにより、摺動部の表面の近傍に存在する針状Mn−Si系化合物の粒は、表面の一部分のみが摺動部の表面に露出し、粒の表面積の大部分は黄銅生地と接し拘束されるようにすることができる。この結果、針状Mn−Si系化合物が摺動中に摺動部に表面から脱落することを抑制されたようになる。さらに、実施例A、Bは黄銅生地中に分散する針状Mn−Si系化合物の長径方向が摺動部表面に対して角度45°〜135°であるものの割合を50%以上に制御していることで、針状Mn−Si系化合物の脱落を抑制する効果がより向上したので、特に耐焼付性が向上したと推定する。
【0037】
実施例Dは、実施例A〜Cと比較して耐焼付性がそれほど上昇しなかった。実施例Dの試験後の摺動部表面は一部金属光沢を呈していた。これは、摺動部表面での平均粒子間距離が長いため、摺動中に摺動部表面全体に均質な硫化膜を形成できなかったものと推定される。それに対して、実施例A〜Cは、摺動部表面での平均粒子間距離を5〜80μmになるようにしたため、試験中に黄銅生地の表面に早期に非金属である硫化膜が均一に形成されたため、相手軸表面との金属面同士の摺動となることを防ぎ、スラスト軸受の耐焼付性をより高めることができたものと推定される。
【0038】
また、実施例Eについても、実施例A〜Cと比較して耐焼付性がそれほど上昇しなかった。これは、摺動部表面での針状Mn−Si系化合物が全体的に小さくなりすぎたためと推定される。
【0039】
上記の結果から、望ましくは摺動部表面での針状Mn−Si系化合物の平均粒子間距離を適正化(5〜80μm)した方が耐焼付性を改善することができると考えられる。
【符号の説明】
【0040】
1 スラスト軸受
2 摺動面(摺動部の表面)
3 摺動部
4 針状Mn−Si系化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状Mn−Si系化合物が黄銅生地中に晶出して分散する銅合金からなる内燃機関用過給機のスラスト軸受において、
前記スラスト軸受の摺動部の表面から深さ50μmまでの領域に分散する前記針状Mn−Si系化合物は、前記摺動部の表面に対して垂直な方向の断面視野にて、当該摺動部の内部から表面に向かう長径方向が当該摺動部の表面に対して角度30°〜150°となるものが、前記領域に分散する全体の前記針状Mn−Si系化合物の50%以上であることを特徴とする内燃機関用過給機のスラスト軸受。
【請求項2】
前記摺動部の表面において前記黄銅生地に分散する前記針状Mn−Si系化合物の平均粒子間距離が5〜80μmであることを特徴とする請求項1記載の内燃機関用過給機のスラスト軸受。
【請求項3】
前記スラスト軸受の銅合金は、Znが20〜45質量%、Siが0.3〜2.0質量%、Mnが1.0〜6.0質量%、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金によって構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の内燃機関用過給機のスラスト軸受。
【請求項4】
前記スラスト軸受の銅合金は、さらにFe、Al、Ni、Sn、Cr、Ti、Mo、Co、Zr、Sbより選択される少なくとも1種以上を総量で10質量%以下含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の内燃機関用過給機のスラスト軸受。
【請求項5】
前記スラスト軸受の銅合金は、さらにPb、Biより選択される少なくとも1種以上を総量で10質量%以下含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の内燃機関用過給機のスラスト軸受。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−215251(P2012−215251A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81301(P2011−81301)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】