説明

内燃機関

【課題】クランクシャフトに駆動スプロケットが固設され、単一の締結部材でクランクケースに締結される板部材と、クランクケースおよびクランクシャフト間に介装される軸受との間にプッシュプラグ機構が設けられ、駆動スプロケットをクランクケースとの間に挟む位置でクランクシャフトにはスタータドリブンギヤが相対回転自在に支承される内燃機関において、プッシュプラグ機構を、クランクシャフトおよびクランクケース間に介設される軸受の近傍に配置した上で、カムチェーン周辺のレイアウトの簡素化を図る。
【解決手段】クランクシャフト36の軸線に沿う方向から見て締結部材94の軸線からオフセットしつつ駆動スプロケット62および板部材53間に配置される規制突部95が、板部材53の駆動スプロケット62側の側面に当接することを可能とするとともにスタータドリブンギヤに近接対向するようにしてクランクケース37に一体に突設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトを回転自在に支承するクランクケースの外側方で前記クランクシャフトに、カムシャフト側に回転動力を伝達するカムチェーンが巻き掛けられるようにして駆動スプロケットが固設され、前記クランクシャフトの軸線に沿う方向から見て前記駆動スプロケットの側方に配置される板部材が単一の締結部材で前記クランクケースに締結され、前記クランクケースおよび前記クランクシャフト間に介装される軸受および前記板部材間に、該軸受に当接するプッシュプラグを有するとともに前記軸受を前記クランクシャフトの軸方向他方側に弾発付勢するプッシュプラグ機構が設けられ、前記駆動スプロケットを前記クランクケースとの間に挟む位置で前記クランクシャフトにはスタータドリブンギヤが相対回転自在に支承される内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクシャフトの軸方向がたつきを防止するために、単一の締結部材でクランクケースに締結される板部材と、クランクケースおよびクランクシャフト間に介装される軸受との間にプッシュプラグ機構が設けられる内燃機関が、特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−197769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プッシュプラグ機構は、クランクシャフトの軸線方向から見たときに、クランクシャフトおよびクランクケース間に介設される軸受の近傍に配置されており、軸受周への構造が複雑となり、カムチェーンとの干渉を避けるためのレイアウトが複雑となりがちである。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、クランクシャフトの軸方向がたつきを防止するためのプッシュプラグ機構を、クランクシャフトおよびクランクケース間に介設される軸受の近傍に配置した上で、カムチェーン周辺のレイアウトの簡素化を図り得るようにした内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、クランクシャフトを回転自在に支承するクランクケースの外側方で前記クランクシャフトに、カムシャフト側に回転動力を伝達するカムチェーンが巻き掛けられるようにして駆動スプロケットが固設され、前記クランクシャフトの軸線に沿う方向から見て前記駆動スプロケットの側方に配置される板部材が単一の締結部材で前記クランクケースに締結され、前記クランクケースおよび前記クランクシャフト間に介装される軸受および前記板部材間に、該軸受に当接するプッシュプラグを有するとともに前記軸受を前記クランクシャフトの軸方向他方側に弾発付勢するプッシュプラグ機構が設けられ、前記駆動スプロケットを前記クランクケースとの間に挟む位置で前記クランクシャフトにはスタータドリブンギヤが相対回転自在に支承される内燃機関において、前記クランクシャフトの軸線に沿う方向から見て前記締結部材の軸線からオフセットしつつ前記駆動スプロケットおよび前記板部材間に配置される規制突部が、前記板部材の前記駆動スプロケット側の側面に当接することを可能とするとともに前記スタータドリブンギヤに近接対向するようにして前記クランクケースに一体に突設されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記規制突部が、前記駆動スプロケットの外周に前記カムチェーンを巻き掛ける際のガイド機能を果たすようにして、前記駆動スプロケットよりも前記スタータドリブンギヤ側に延びるように形成されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第2の特徴の構成に加えて、前記駆動スプロケットの外周のうち前記カムチェーンが巻き掛けられる部分と、前記軸受との間に配置されて前記カムチェーンの前記軸受側への移動を阻止する円弧状のカムチェーン巻き込み防止リブが、前記規制突部に連なって前記クランクケースに一体に設けられることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第2または第3の特徴の構成に加えて、前記カムチェーンに張力を付与するカムチェーンテンショナーが前記クランクケースに揺動可能に支承され、前記カムチェーンの張力を減少する側への前記カムチェーンテンショナーの揺動を規制する揺動規制部が、前記カムチェーン巻き込み防止リブの外周部に一体に連なって形成されることを第4の特徴とする。
【0010】
さらに本発明は、第1〜第4の特徴の構成のいずれかに加えて、前記板部材が、前記駆動スプロケット側の側面に前記規制突部を当接可能とした第1腕部と、第1腕部にほぼ直交する方向に延びて第1腕部の基端部に一体に連なる第2腕部とを有して略L字状に形成され、第1および第2腕部の連設部が前記締結部材で前記クランクケースに締結され、第1腕部の先端部および前記軸受間にプッシュプラグ機構が設けられ、第1腕部が前記規制突部から離反する側への前記板部材の回動を阻止するようにして第2腕部の側面に当接し得る回転規制部が前記クランクケースに一体に設けられることを第5の特徴とする。
【0011】
なお実施の形態の第1ボールベアリング48が本発明の軸受に対応し、実施の形態のボルト94が本発明の締結部材に対応する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の特徴によれば、単一の締結部材でクランクケースに締結される板部材の駆動スプロケット側への回動を規制突部で阻止するとともに、その規制突部でスタータドリブンギヤの駆動スプロケット側への移動規制を行うようにして、カムチェーン周辺のレイアウトを簡素化することができる。
【0013】
また本発明の第2の特徴によれば、駆動スプロケットの外周にカムチェーンを巻き掛ける際ん規制突部がガイド機能を果たすので、カムチェーンの組付け性を良好なものとすることができる。
【0014】
本発明の第3の特徴によれば、カムチェーンの軸受側への移動を阻止する円弧状のカムチェーン巻き込み防止リブが規制突部に連設されるので、カムチェーンの組付け時の作業性をより良好なものとすることができる。
【0015】
本発明の第4の特徴によれば、カムチェーンの張力を減少する側へのカムチェーンテンショナーの揺動を規制する揺動規制部が、カムチェーン巻き込み防止リブの外周部に一体に連なって形成されるので、カムチェーンの組付け時の作業性をさらに一層良好なものとすることができる。
【0016】
さらに本発明の第5の特徴によれば、略L字状に形成される板部材を単一の締結部材でクランクケースに締結しつつ、クランクケースに一体に設けられる規制突部および回転規制部で板部材の回転を規制するので、部品点数を少なくして組立工数を低減しつつ板部材をクランクケースに固定することができ、プッシュプラグ機構を軸受および板部材間に確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】自動二輪車の側面図である。
【図2】図1と同一方向から見た機関本体の縦断側面図であって図3の2−2線に沿う断面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図3の4矢示部拡大図である。
【図5】図3の5−5線拡大断面図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図5の7−7線断面図である。
【図8】図2の8−8線拡大断面図である。
【図9】図2の9−9線拡大断面図である。
【図10】図2の10−10線断面図である。
【図11】ステップを省略した状態での図2の11−11線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明すると、先ず図1において、この自動二輪車の車体フレームFは、フロントフォーク14を操向可能に支承するヘッドパイプ21と、該ヘッドパイプ21から後下がりに延びるメインフレーム16と、メインフレーム16の後部に連設されて後上がりに延びる左右一対のリヤフレーム17…とを備え、前記フロントフォーク14の下端に前輪WFが軸支され、フロントフォーク14の上部にはバー状の操向ハンドル18が連結され、フロントフォーク14には、前輪WFの上方を覆うフロントフェンダ19が支持される。
【0019】
メインフレーム16の中間部両側面にはハンガプレート20…がそれぞれ固着され、メインフレーム16の後部両側面にピボットプレート21…が固着される。
【0020】
メインフレーム16の下方には、たとえばシリンダ軸線をわずかに前上がりとした内燃機関Eが配置されており、この内燃機関Eは、前記ハンガプレート20…およびピボットプレート21…で支持されるようにして車体フレームFに懸架される。前記ピボットプレート21…には、リヤフォーク22の前端部が上下に夜動可能に支承されており、リヤフォーク22の後端に後輪WRが軸支される。また車体フレームFにおけるリヤフレーム17…およびリヤフォーク22間にはリヤクッション23が設けられる。
【0021】
車体フレームFには、該車体フレームFおよび前記内燃機関Eの一部を覆う合成樹脂製の車体カバー25が取付けられており、この車体カバー25は、メインフレーム16の左右両側に配置されるフロントサイドカバー26…と、ライダーの脚部を前方から覆うようにして両フロントサイドカバー26…の前部に連なるレッグシールド27…と、ヘッドパイプ15を前方から覆うようにして両レッグシールド27…に連なるフロントトップカバー28と、ヘッドパイプ15を後方側から覆うとともにメインフレーム16を上方から覆うようにしてフロントトップカバー28に連なるメインフレームトップカバー29と、前記両フロントサイドカバー26…の下部に連なるアンダーカバー30…と、車体フレームFの後部を両側から覆うリヤサイドカバー31とで構成される。
【0022】
前記リヤサイドカバー31の上部には乗車用シート32が配設され、後輪WRの後部上方を覆うリヤフェンダ33がリヤサイドカバー31に連設される。
【0023】
図2および図3を併せて参照して、前記内燃機関Eの機関本体35は、車幅方向に延びるクランクシャフト36を回転自在に支承するクランクケース37と、前記クランクシャフト36にコネクティングロッド43およびクランクピン44を介して連接されるピストン45を摺動自在に嵌合させるシリンダボア42を有して前記クランクケース37に結合されるシリンダブロック40と、前記ピストン45の頂部を臨ませる燃焼室46を前記シリンダブロック40との間に形成するようにしてシリンダブロック40に結合されるシリンダヘッド41とを備え、前記クランクケース37は、前記クランクシャフト36の軸線に直交する平面に沿う結合面47で結合される左および右ケース半体38,39から成る。
【0024】
前記クランクケース37には、前記クランクシャフト36を回転自在に支承する複数の支持壁部、この実施の形態では、第1および第2支持壁部38a,39aが、クランクシャフト36の軸線に直交する平面に沿うようにしつつ前記クランクシャフト36の軸方向に間隔をあけて設けられ、第1および第2支持壁部38a,39aを回転自在に貫通するクランクシャフト36と、第1および第2支持壁部38a,39aとの間に第1および第2ボールベアリング48,49が介装される。しかも第1および第2支持壁部38a,39aには、左および右ケース半体38,39の鋳造時に鋼製ブッシュ50,51が鋳込まれており、第1および第2ボールベアリング48,49における外輪48a,49aの外周は鋼製ブッシュ50,51に当接する。
【0025】
図4を併せて参照して、第1ボールベアリング48と、第1支持壁部38aの外面に固定される板部材53との間には、第1ボールベアリング48の軸方向がたつきを抑えるために第1ボールベアリング48をクランクシャフト36の軸方向他方側に付勢するプッシュプラグ機構54が設けられる。
【0026】
このプッシュプラグ機構54は、第1支持壁部38aに設けられた摺動孔55に摺動自在に嵌合されるプッシュプラグ56と、該プッシュプラグ56および前記板部材53間に縮設されるコイルスプリング57とから成り、プッシュプラグ56は第1ボールベアリング48の外輪48aの肩部に当接される。
【0027】
第1支持壁部38aから突出したクランクシャフト36の一端部には、椀状のアウターロータ59が固定され、アウターロータ59と協働して発電機58を構成するインナーステータ60が、前記発電機58を覆うようにしてクランクケース37の左側に結合される発電機カバー61に固定されて前記アウターロータ59内に配置される。
【0028】
前記発電機58および第1支持壁部38a間には駆動スプロケット62が配置されており、この駆動スプロケット62は、第1支持壁部38aの外側方で前記クランクシャフト36に固定される。ところで前記クランクケース37の左ケース半体38には、前記駆動スプロケット62を周囲から覆うようにして第1支持壁部38aから突出する周壁部38bが一体に設けられ、前記発電機カバー61は前記周壁部38bに結合される。
【0029】
また前記駆動スプロケット62を前記クランクケース37の第1支持壁部38aとの間に挟む位置に配置されるスタータドリブンギヤ67が、ニードルベアリング68を介して前記クランクシャフト36に相対回転自在に支承されており、このスタータドリブンギヤ67は一方向クラッチ69を介して前記発電機58のアウターロータ59に連結される。而して前記スタータドリブンギヤ67は、機関本体35に配設されるスタータモータ(図示せず)に連動、連結されるものであり、スタータモータからの始動用回転動力は、スタータドリブンギヤ67、一方向クラッチ69およびアウターロータ59を介してクランクシャフト36に伝達されることになる。
【0030】
前記シリンダヘッド41には、図2で示すように、カムシャフト66が回転自在に支承されており、このカムシャフト66の一端部には被動スプロケット63が固定される。而して前記駆動スプロケット62および前記被動スプロケット63と、それらのスプロケット62,63に巻き掛けられるカムチェーン64とで調時伝動機構65が構成され、この調時伝動機構65は、前記クランクシャフト36の回転動力を、回転数を1/2に減速しつつ前記カムシャフト66に伝達する。前記駆動スプロケット62の回転に応じて前記カムチェーン64は図2の矢印70で示す走行方向に走行するものであり、前記クランクケース37、前記シリンダブロック40および前記シリンダヘッド41には、前記カムチェーン64を走行させるカムチェーン通路71が形成される。
【0031】
前記シリンダブロック40には、前記カムチェーン通路71側に突出する第1支軸72が設けられており、この第1支軸72に回転自在に支承されるガイドホイール73が、該ガイドホイール73の上下を走行する前記カムチェーン64に係合することでカムチェーン64の揺れが防止される。また前記カムチェーン通路71の前記クランクケース37内への開口端において前記駆動スプロケット62の前方斜め下方に配置される補助スプロケット74が第2支軸75を介してクランクケース37の左ケース半体38に回転自在に支承される。この補助スプロケット74は、前記駆動スプロケット62に引き込まれる直前でカムチェーン64を上方に押し上げる働きをするとともに、カムチェーン通路71内をシリンダヘッド41からクランクケース37側に戻るオイルをカムチェーン64側に飛散させる働きも果たす。
【0032】
図5および図6を併せて参照して、前記クランクケース37には、筒状のボス78が前記クランクケース37から側方に突出するようにして一体に設けられる。而してこの実施の形態では、前記ボス78が、第1支持壁部38aの外面から側方に突出するようにして第1支持壁部38aに一体に連なって上下に延びるとともに周壁部38bから前方斜め下方に突出してクランクケース37の左ケース半体38に一体に設けられており、少なくとも一部をクランクケース37の底壁37aよりも下方に配置するようにした締結部材であるシーリングボルト79が前記ボス78の突出先端部すなわち下端部に締結され、前記ボス78の突出先端部から延びる保護用突部80が、前記シーリングボルト79を車両の進行方向前方から保護するようにして前記ボス78に一体に連設される。
【0033】
前記クランクケース37の左ケース半体38には、前記カムチェーン64に張力を付与するカムチェーンテンショナー81が回動可能に支承され、前記カムチェーンテンショナー81を押すプッシュロッド82を収容する収容孔83が前記ボス78に形成される。
【0034】
前記カムチェーンテンショナー81の中間部は、第3支軸84を介して第1支持壁部38aに回動可能に支承される。このカムチェーンテンショナー81の一端部にはテンションスプロケット85が軸支され、このテンションスプロケット85が、前記カムチェーン64のうち前記駆動スプロケット62から前記被動スプロケット63に向かう途中で前記カムチェーン64に上方から押えるように噛合する。
【0035】
前記カムチェーンテンショナー81の他端部には、前記プッシュロッド82がロッドヘッド86を介して当接するものであり、円筒状に形成されるプッシュロッド82の下半部が前記収容孔83に摺動可能に嵌合される。プッシュロッド82の上半部は前記ボス78の上端から上方に突出し、プッシュロッド82の上端部に弾性材料から成る前記ロッドヘッド86が固着される。
【0036】
前記プッシュロッド82の下端部には、チェックバルブ86が設けられており、このチェックバルブ86および前記シーリングボルト79間で前記ボス78の下部内には油圧室87が形成され、前記プッシュロッド82を上方に付勢するコイルばね88が前記プッシュロッド82および前記シーリングボルト79間に介設されるようにして油圧室87に収容される。
【0037】
前記チェックバルブ86は、前記プッシュロッド82の下端部に固着されるバルブシート89と、該バルブシート89よりも下方で前記プッシュロッド82の下端部に固着されるバルブキャップ90と、バルブシート89およびバルブキャップ90間に遊嵌されるボール91とで構成されるものであり、バルブシート89には、前記ボール91で閉じ得る弁孔92が設けられ、前記バルブキャップ90には前記油圧室87に通じる透孔93が設けられる。
【0038】
而して前記プッシュロッド82は、前記油圧室87内のコイルばね88が発揮するばね力で前記ロッドヘッド86を前記カムチェーンテンショナー81の他端部に押し当てる側に付勢されており、それによってカムチェーンテンショナー81が、前記カムチェーン64をテンションスプロケット85で上方から押さえる側に回動付勢される。而してカムチェーン64からの反力を受けることによってプッシュロッド82がコイルばね88のばね力に抗して後退する場合には、バルブシート89の弁孔92がボール91で閉じられることによって油圧室87にオイルが閉じ込められ、プッシュロッド82の必要以上の後退が阻止される。
【0039】
前記クランクケース37における左ケース半体38の下部には前記油圧室87に通じる通路102が設けられており、この通路102の外端開口部を閉じるボルト103が前記左ケース半体38の下部に螺合される。
【0040】
ところで前記板部材53は、前記クランクシャフト36の軸線に沿う方向から見て前記駆動スプロケット62の側方に配置されており、単一のボルト94で前記クランクケース37における左ケース半体38の第1支持壁部38aに締結される。而して板部材53は、第1腕部53aと、第1腕部53aにほぼ直交する方向に延びて第1腕部53aの基端部に一体に連なる第2腕部53bとを有して略L字状に形成され、第1および第2腕部53a,53bの連設部が前記ボルト94で前記クランクケース37の第1支持壁部38aに締結され、第1腕部83aの先端部および第1ボールベアリング48間にプッシュプラグ機構54が設けられる。
【0041】
図7を併せて参照して、前記板部材53の前記駆動スプロケット62側の側面、すなわち第1腕部83aには、前記クランクシャフト36の軸線に沿う方向から見て前記ボルト94の軸線からオフセットしつつ前記駆動スプロケット62および前記板部材53間に配置されるようにして第1支持壁部38aに一体に突設される規制突部95が当接可能であり、また前記規制突部95から離反する側への前記板部材53の回動を阻止するようにして第2腕部83bの側面に当接し得る回転規制部96が第1支持壁部38aに一体に設けられる。
【0042】
しかも前記規制突部95は、その先端を前記スタータドリブンギヤ67に近接対向させるようにして第1支持壁部38aから突出されており、前記駆動スプロケット62の外周に前記カムチェーン64を巻き掛ける際のガイド機能を果たすようにして円弧状に形成されつつ、前記駆動スプロケット62よりも前記スタータドリブンギヤ67側に延びるように形成される。
【0043】
また前記駆動スプロケット62の外周のうち前記カムチェーン64が巻き掛けられる部分と、第1ボールベアリング48との間に配置されて前記カムチェーン64の第1ボールベアリング48側への移動を阻止する円弧状のカムチェーン巻き込み防止リブ97が、前記規制突部95に連なって前記クランクケース37の第1支持壁部38aに一体に設けられる。
【0044】
さらに前記カムチェーン64の張力を減少する側への前記カムチェーンテンショナー81の揺動を規制する揺動規制部98が、前記カムチェーン巻き込み防止リブ97の外周部に一体に連なって形成される。
【0045】
第1支持壁部38aおよび前記周壁部38bと、第1支持壁部38aから突出しつつ前記周壁部38bから上方に延びる前記ボス78と、第1支持壁部38aから間隔をあけた位置で前記ボス78に当接する前記板部材53とで、上方に開放したオイル溜め凹部99が形成され、円筒状である前記プッシュプラグ56に、前記オイル溜め凹部99をプッシュプラグ56内に通じさせる複数の連通孔100…が設けられ、それらの連通孔100…よりも上方で前記プッシュプラグ56には、クランクケース37および発電機カバー61間の空間にプッシュプラグ56内を通じさせる複数の通気孔101…が設けられる。
【0046】
図8を併せて参照して、前記クランクケース37における第1支持壁部38aよりも内方でクランクケース37内の下部には、側面視で前記ボス78と重なるようにしてオイルパン125が形成されており、このオイルパン125に貯留されたオイルは、クランクケース37における右ケース半体39側に配設されるオイルポンプ126で汲み上げられ、機関本体35の各潤滑部に供給される。
【0047】
而して前記オイルポンプ126は、ポンプケース127内に、該ポンプケース127で回転自在に支承されるポンプ軸128に固定されるインナーロータ129と、該インナーロータ129に噛合するアウターロータ130とが収容されて成るトロコイドポンプである。前記ポンプケース127は、前記インナーロータ129および前記アウターロータ130を収容するようにして前記右ケース半体39側に向けて開放した凹部131を有するケース主体132と、ケース主体132の右ケース半体39側の面にボルト134…で締結されて前記凹部131を閉じる平板状のカバー部材133とで構成され、ケース主体132およびカバー部材133は、複数のボルト135,135…による共締めで前記右ケース半体39に締結される。
【0048】
前記オイルパン125および前記オイルポンプ126間を結ぶ吸入路136が、前記右ケース半体39の下部に形成されており、この吸入路136の途中に介在するオイルストレーナ137が右ケース半体39に取付けられる。またクランクケース37における右ケース半体39側の底壁37aには、前記吸入路136内に通じるドレンポート138が上下に延びるようにして設けられ、このドレンポート138を液密に閉じるドレンボルト139が前記底壁37aに螺合される。
【0049】
前記ポンプケース127から右ケース半体39側に突出した前記ポンプ軸138の端部に被動歯車140が固定され、前記クランクシャフト36の右ケース半体39からの突出部には前記被動歯車140に噛合する駆動歯車141(図3参照)が固定される。
【0050】
再び図3に注目して、第2支持壁部39aから突出したクランクシャフト36の他端部には、該クランクシャフト36を同軸に囲繞する円筒状の筒軸104が相対回転自在に装着されており、クランクシャフト36は遠心クラッチ105を介して前記筒軸104に連結される。また前記筒軸104は、一次減速装置106、ダンパラバー107およびクラッチ108を介してメインシャフト109に連結されるものであり、メインシャフト109およびカウンタシャフト110間には、選択的に確立可能な複数変速段の歯車列、この実施の形態では第1速〜第4速歯車列G1,G2,G3,G4が設けられる。
【0051】
前記メインシャフト109および前記カウンタシャフト110は、前記クランクシャフト36と平行な軸線を有するものであり、前記クランクシャフト36よりも後方に配置される前記メインシャフト109の一端部はクランクケース37の左側壁に第3ボールベアリング111を介して回転自在に支承される。またメインシャフト109はクランクケース37の右側壁を回転自在に貫通するものであり、クランクケース37の右側壁および前記メインシャフト109間には第4ボールベアリング112が介設される。また前記カウンタシャフト110は、前記メインシャフト109よりも後方に配置されており、クランクケース37の左側壁を回転自在に貫通するものであり、クランクケース37の左側壁およびカウンタシャフト110間には第5ボールベアリング113が介設され、前記カウンタシャフト110の他端部はクランクケース37の右側壁に第6ボールベアリング114を介して回転自在に支承される。
【0052】
前記一次減速装置106は、前記筒軸104に設けられる駆動歯車115と、該駆動歯車115に噛合する被動歯車116とから成るものであり、被動歯車116は、前記クランクケース37の右側壁から突出した前記メインシャフト109の他端部に相対回転自在に支承される。前記クラッチ108は、前記一次減速装置106の被動歯車116にダンパラバー107を介して連結されるクラッチアウタ117と、前記メインシャフト109の他端部に固定されるクラッチインナ118とを備える。而して前記遠心クラッチ105および前記クラッチ108を覆うクラッチカバー119が前記クランクケース37の右側に結合される。
【0053】
前記クランクケース37の左側壁から突出した前記カウンタシャフト110の一端部には駆動スプロケット120が固着されており、この駆動スプロケット120と、後輪WRに固定される被動スプロケット121(図1参照)とに無端状のチェーン122が巻き掛けられる。
【0054】
図9を併せて参照して、前記メインシャフト109には、キック始動機構144から始動用動力を入力可能である。このキック始動機構144は、クラッチカバー119から一部を外方に突出させるようにして前記クランクケース37で回転自在に支承されるキック軸145と、第4歯車列G4の一部を構成しつつ前記カウンタシャフト110に回転自在に支承される第4速用被動歯車143に噛合して前記キック軸145に回転自在かつ軸方向相対移動不能として装着される駆動歯車146と、キック軸145の正転時にキック軸145および駆動歯車146間を連結するようにして駆動歯車146およびキック軸145間に設けられる一方向クラッチ147とを備える。
【0055】
一方向クラッチ147は、キック軸145に軸方向相対移動を可能とするとともに相対回転を不能として嵌装されるクラッチ体148と、該クラッチ体148の回転に摩擦抵抗を付与する摩擦ばね149とを有するものであり、駆動歯車146およびクラッチ体148の対向面には、噛合時にクラッチ体148すなわちキック軸145の正転のみを駆動歯車145に伝達するラチェット歯150,151が形成される。
【0056】
また右ケース半体39およびキック軸145間には、内外二重に配置されるねじりコイルばねから成るキック戻しばね152が設けられており、このキック戻しばね152によって前記キック軸145が戻し側にばね付勢される。
【0057】
図2に注目して、前記クランクケース37のおける左ケース半体38の周壁部38bよりも下方で左ケース半体38の下部側壁からはシフトスピンドル153の一部が突出され、該シフトスピンドル153の突出端部にはシフトペダル154が設けられる。また前記周壁部38bよりも下方で前記左ケース半体38の下部側壁には内方側に凹む肉抜き凹部155が形成される。
【0058】
図10および図11を併せて参照して、前記クランクケース37の底壁37aには、ステップホルダ156を締結するための複数のステップボスが下方に突出して一体に設けられるものであり、この実施の形態では、左および右ケース半体38,39の結合面47を相互間に挟むように並ぶ左右一対の前部ステップボス157,157と、それらの前部ステプボス157…よりも後方で前記結合面47を相互間に挟むように並ぶ左右一対の後部ステップボス158,158とが、下方に突出するようにして前記底壁37aに一体に突設される。
【0059】
前記ステップホルダ156は、前部ステップボス157…および後部ステップボス158…間の中央部で車幅方向に延びる棒部材159と、前記結合面47よりも左側で前部および後部ステップボス157,158にボルト160,161で締結されるようにして前記棒部材159に固着される左側ステー162と、前記結合面47よりも右側で前部および後部ステップボス157,158にボルト160,161で締結されるようにして前記棒部材159に固着される右側ステー163とを備える。
【0060】
前記棒部材159の左右両端部は上方に立ち上がるように屈曲されており、棒部材159の両端にステップ164、164が設けられる。
【0061】
クランクケース37には、識別用刻印が刻まれる平面164aを有する刻印プレート部165が一体に設けられるものであり、前部ステップボス157…および後部ステップボス158…の1つ、この実施の形態では、左側の後部ステップボス158および前記底壁37aに連なるようにして前記刻印プレート部165がクランクケース37に一体に設けられる。
【0062】
ところで前記クランクケース37は、クランクシャフト36の軸線に直交する平面に沿う結合面47で結合されるようにして複数のボルト166,166…で締結される左および右ケース半体38,39から成るものであるが、複数の前記ボルト166,166…のうち相互に隣接した2つのボルト166,166をそれぞれ挿通せしめる2つの結合用ボス167,167間を結ぶ連結リブ168で前記肉抜き凹部155の下部側壁が形成され、前記刻印プレート部165が側面視で前記連結リブ168の少なくとも一部に重なるようにしつつ該連結リブ168に一体に連なって形成される。
【0063】
しかも前部ステップボス157…および後部ステップボス158…のうち前記刻印プレート部165が連なる1つのステップボスを含む一部のステップボスの上方、この実施の形態では後部ステップボス158,158の上方にキック始動機構144が配置されており、後部ステップボス158…の前記クランクケース37の底壁37aからの突出量が、前記キック始動機構144との干渉を回避しつつ締結長さを確保するようにして、残余の前記ステップボスである前部ステップボス157,157の前記底壁37aからの突出量よりも長さδ(図2参照)だけ大きく設定される。
【0064】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、機関本体35のクランクケース37には、筒状のボス78がクランクケース37から側方に突出するようにして一体に設けられており、ボス78の突出先端部にシーリングボルト79が締結されるのであるが、ボス78の突出先端部から延びる保護用突部80が、前記シーリングボルト79を車両の進行方向前方から保護するようにしてボス78に一体に連設されるので、保護用突部80の強度を確保しつつ、保護用突部80を小型化することができる。
【0065】
しかもクランクシャフト36の軸方向に間隔をあけてクランクケース37に設けられる第1および第2支持壁部38a,39aのうちクランクシャフト36の軸方向に沿う一端側に配置される第1支持壁部38aの外側方でクランクシャフト36に駆動スプロケット62が固設され、駆動スプロケット62に巻き掛けられるカムチェーン64に張力を付与するカムチェーンテンショナー81が第1支持壁部38aに回動可能に支承され、カムチェーンテンショナー81を押すプッシュロッド82を収容する収容孔83が、第1支持壁部38aの外面に一体に連なって上下に延びるボス78に形成され、第1支持壁部38aよりも内方でクランクケース37内の下部に、側面視で前記ボス78と重なるようにしてオイルパン125が形成されるので、ボス78が設けられることによってオイルパン125の容量が小さくなることを回避してオイルパン125の容量を確保しつつ、クランクケース37の軽量化を図ることができる。
【0066】
また駆動スプロケット62を周囲から覆うようにして第1支持壁部38aから突出する周壁部38bがクランクケース37の左ケース半体38に一体に設けられ、第1支持壁部38aおよび周壁部38bと、第1支持壁部38aから突出しつつ周壁部38bから上方に延びる前記ボス78と、第1支持壁部38aから間隔をあけた位置で前記ボス78に当接する板部材53とで、上方に開放したオイル溜め凹部99が形成され、円筒状であるプッシュロッド82に、該プッシュロッド82内に前記オイル溜め凹部99を通じさせる連通孔100…が設けられるので、オイル溜め凹部99の容積を比較的大きくし、円筒状のプッシュロッド82に設けられた連通孔100…でオイル溜め凹部99のオイルをプッシュロッド82内に導くことでプッシュロッド82へのオイル供給を良好なものとすることができる。
【0067】
またボス78の下部が周壁部38bから下方に突出され、周壁部38bよりも下方で前記クランクケース37における左ケース半体38の下部側壁からはシフトスピンドル153の一部が突出され、前記周壁部38bよりも下方で左ケース半体38の下部側壁に内方側に凹む肉抜き凹部155が形成され、クランクケース37の底壁37aには、ステップホルダ156を締結するための複数のステップボスすなわち左右一対ずつの前部ステップボス157…および後部ステップボス158…が下方に突出して一体に設けられ、識別用刻印が刻まれる平面165aを有する刻印プレート部165が複数の前記ステップボスステップボス157…,158…の1つである左側の後部ステップボス158および底壁37aに連なるようにしてクランクケース37に一体に設けられるので、識別用刻印が刻まれる平面165aの面積を確保して刻印プレート部165を配置することを容易とするとともに、1つのステップボス158および刻印プレート部165を相互に補強することができる。
【0068】
またクランクケース37が、クランクシャフト36の軸線に直交する平面に沿う結合面47で結合されるようにして複数のボルト166,166…で締結される左および右ケース半体38,39から成り、複数の前記ボルト166,166…のうち相互に隣接した2つのボルト166,166をそれぞれ挿通せしめる2つの結合用ボス167,167間を結ぶ連結リブ168で肉抜き凹部155の下部側壁が形成され、前記刻印プレート部165が側面視で前記連結リブ168の少なくとも一部に重なるようにしつつ連結リブ168に一体に連なって形成されるので、連結リブ168を刻印プレート部165で補強して肉抜き凹部155の容積を増大し、クランクケース37の軽量化に寄与することができる。
【0069】
さらに前部ステップボス157…および後部ステップボス158…ののうち前記刻印プレート部165が連なる1つのステップボス158を含む一部のステップボス、この実施の形態では後部ステップボス158,158の上方にキック始動機構144が配置されており、後部ステップボス158…の前記クランクケース37の底壁37aからの突出量が、前記キック始動機構144との干渉を回避しつつ締結長さを確保するようにして、残余の前記ステップボスである前部ステップボス157,157の前記底壁37aからの突出量よりも長さδ(図2参照)だけ大きく設定されるので、クランクケース37の大型化を回避しつつステップボス157…,158…へのステップホルダ156の締結を強固なものとすることができ、クランクケース37の底壁37aからの突出量が大きくなるのは刻印プレート部165が連なる1つのステップボス158を含む左右一対の後部ステップボス158,158であるので、刻印プレート部165を上下方向に比較的大きくすることができる。
【0070】
ところでクランクケース37における第1支持壁部38aの外側方でクランクシャフト36には、カムチェーン64が巻き掛けられるようにして駆動スプロケット62が固設され、クランクシャフト36の軸線に沿う方向から見て駆動スプロケット62の側方に配置される板部材53が単一のボルト94で第1支持壁部38aに締結され、第1支持壁部38aおよびクランクシャフト36間に介装される第1ボールベアリング48との間に、第1ボールベアリング48における外輪48aの肩部に当接するプッシュプラグ56を有するとともに第1ボールベアリング48を弾発付勢するプッシュプラグ機構54が設けられ、駆動スプロケット62を第1支持壁部38aとの間に挟む位置でクランクシャフト36にはスタータドリブンギヤ67が相対回転自在に支承されるのであるが、クランクシャフト36の軸線に沿う方向から見て前記ボルト94の軸線からオフセットしつつ前記駆動スプロケット62および板部材53間に配置される規制突部95が、板部材53の駆動スプロケット62側の側面に当接することを可能とするとともにスタータドリブンギヤ67に近接対向するようにして第1支持壁部38aに一体に突設される。
【0071】
したがって単一のボルト94でクランクケース37の第1支持壁部38aに締結される板部材53の駆動スプロケット62側への回動を規制突部95で阻止するとともに、その規制突部95でスタータドリブンギヤ67の駆動スプロケット62側への移動規制を行うようにして、カムチェーン64周辺のレイアウトを簡素化することができる。
【0072】
また規制突部95が、駆動スプロケット62の外周にカムチェーン64を巻き掛ける際のガイド機能を果たすようにして、駆動スプロケット62よりもスタータドリブンギヤ67側に延びるように形成されるので、カムチェーン64の組付け性を良好なものとすることができる。
【0073】
また駆動スプロケット62の外周のうちカムチェーン64が巻き掛けられる部分と、第1ボールベアリング48との間に配置されてカムチェーン64の第1ボールベアリング48側への移動を阻止する円弧状のカムチェーン巻き込み防止リブ97が、規制突部95に連なって第1支持壁部38aに一体に設けられるので、カムチェーン64の組付け時の作業性をより良好なものとすることができる。
【0074】
またカムチェーン64に張力を付与するカムチェーンテンショナー81が第1支持壁部38aに揺動可能に支承され、カムチェーン64の張力を減少する側へのカムチェーンテンショナー81の揺動を規制する揺動規制部98が、カムチェーン巻き込み防止リブ97の外周部に一体に連なって形成されるので、カムチェーン64の組付け時の作業性をさらに一層良好なものとすることができる。
【0075】
また板部材53が、駆動スプロケット62側の側面に規制突部95を当接可能とした第1腕部53aと、第1腕部53aにほぼ直交する方向に延びて第1腕部53aの基端部に一体に連なる第2腕部53bとを有して略L字状に形成され、第1および第2腕部53a,53bの連設部が前記ボルト94で第1支持壁部38aに締結され、第1腕部53aの先端部および第1ボールベアリング48間にプッシュプラグ機構54が設けられ、第1腕部53aが規制突部95から離反する側への板部材53の回動を阻止するようにして第2腕部53bの側面に当接し得る回転規制部96が第1支持壁部38aに一体に設けられるので、部品点数を少なくして組立工数を低減しつつ板部材53をクランクケース37に固定することができ、プッシュプラグ機構54を第1ボールベアリング48および板部材53間に確実に保持することができる。
【0076】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0077】
36・・・クランクシャフト
37・・・クランクケース
48・・・軸受である第1ボールベアリング
53・・・板部材
53a・・・第1腕部
53b・・・第2腕部
54・・・プッシュプラグ機構
56・・・プッシュプラグ
62・・・駆動スプロケット
64・・・カムチェーン
66・・・カムシャフト
67・・・スタータドリブンギヤ
81・・・カムチェーンテンショナー
94・・・締結部材であるボルト
95・・・規制突部
97・・・カムチェーン巻き込み防止リブ
96・・・回転規制部
98・・・揺動規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフト(36)を回転自在に支承するクランクケース(37)の外側方で前記クランクシャフト(36)に、カムシャフト(66)側に回転動力を伝達するカムチェーン(64)が巻き掛けられるようにして駆動スプロケット(62)が固設され、前記クランクシャフト(36)の軸線に沿う方向から見て前記駆動スプロケット(62)の側方に配置される板部材(53)が単一の締結部材(94)で前記クランクケース(37)に締結され、前記クランクケース(37)および前記クランクシャフト(36)間に介装される軸受(48)および前記板部材(53)間に、該軸受(48)に当接するプッシュプラグ(56)を有するとともに前記軸受(48)を前記クランクシャフト(36)の軸方向他方側に弾発付勢するプッシュプラグ機構(54)が設けられ、前記駆動スプロケット(62)を前記クランクケース(37)との間に挟む位置で前記クランクシャフト(36)にはスタータドリブンギヤ(67)が相対回転自在に支承される内燃機関において、前記クランクシャフト(36)の軸線に沿う方向から見て前記締結部材(94)の軸線からオフセットしつつ前記駆動スプロケット(62)および前記板部材(53)間に配置される規制突部(95)が、前記板部材(53)の前記駆動スプロケット(62)側の側面に当接することを可能とするとともに前記スタータドリブンギヤ(67)に近接対向するようにして前記クランクケース(37)に一体に突設されることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記規制突部(95)が、前記駆動スプロケット(62)の外周に前記カムチェーン(64)を巻き掛ける際のガイド機能を果たすようにして、前記駆動スプロケット(62)よりも前記スタータドリブンギヤ(67)側に延びるように形成されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関。
【請求項3】
前記駆動スプロケット(62)の外周のうち前記カムチェーン(64)が巻き掛けられる部分と、前記軸受(48)との間に配置されて前記カムチェーン(64)の前記軸受(48)側への移動を阻止する円弧状のカムチェーン巻き込み防止リブ(97)が、前記規制突部(95)に連なって前記クランクケース(37)に一体に設けられることを特徴とする請求項2記載の内燃機関。
【請求項4】
前記カムチェーン(64)に張力を付与するカムチェーンテンショナー(81)が前記クランクケース(37)に揺動可能に支承され、前記カムチェーン(64)の張力を減少する側への前記カムチェーンテンショナー(81)の揺動を規制する揺動規制部(98)が、前記カムチェーン巻き込み防止リブ(97)の外周部に一体に連なって形成されることを特徴とする請求項2または3記載の内燃機関。
【請求項5】
前記板部材(53)が、前記駆動スプロケット(62)側の側面に前記規制突部(95)を当接可能とした第1腕部(53a)と、第1腕部(53a)にほぼ直交する方向に延びて第1腕部(53a)の基端部に一体に連なる第2腕部(53b)とを有して略L字状に形成され、第1および第2腕部(53a,53b)の連設部が前記締結部材(94)で前記クランクケース(37)に締結され、第1腕部(53a)の先端部および前記軸受(48)間にプッシュプラグ機構(54)が設けられ、第1腕部(53a)が前記規制突部(95)から離反する側への前記板部材(53)の回動を阻止するようにして第2腕部(53b)の側面に当接し得る回転規制部(96)が前記クランクケース(37)に一体に設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−256824(P2011−256824A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133990(P2010−133990)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】