説明

内皮細胞マーカーおよびその使用

血管形成および/または血管機能を阻害または促進する作用因を特定するための、活性化された内皮細胞と、休止状態の内皮細胞との間で示差的に発現されるβチューブリンイソ型の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、休止状態または活性化状態にある内皮細胞のマーカーの特定に関連し、より具体的には、これらの状態にある内皮細胞の間で示差的に発現されるマーカーとしてのβチューブリンイソ型に関連する。本発明によるβチューブリンイソ型は、休止状態の内皮細胞または活性化された内皮細胞と選択的に結合する作用因を特定するために、また、血管形成および/または血管機能を阻害または促進する作用因を特定するために使用することができる。したがって、そのような作用因は、血管形成に関連づけられる障害の処置において有用である。本発明によるβチューブリンイソ型はまた、治療剤に対する応答を予測するために使用することができ、および/または、疾患の進行をモニターすることができる。
【背景技術】
【0002】
血管形成、すなわち、既存の血管系からの新しい血管の形成は、リウマチ様関節炎、糖尿病性網膜症および乾癬を含めて、数多くの病理学的状態に伴うことが知られており、また、局所的な腫瘍進行および遠位転移の発達のための不可欠なプロセスでもある。
【0003】
新しい毛細管の形成は、正の因子および負の因子によって、同様にまた、腫瘍細胞、宿主内皮、間質細胞および細胞外マトリックス成分の間における複雑な相互作用によって制御される多段階プロセスである。このプロセスは、通常の場合には増殖因子(例えば、血管内皮増殖因子または塩基性線維芽細胞増殖因子など)によって媒介される既存の血管系への血管形成的刺激により始まる。この後には、細胞外マトリックスの分解、細胞接着の変化および破壊、細胞透過性における増大、ならびに、内皮細胞の活性化、例えば、内皮細胞の増殖および血管形成部位に向かうその遊走が続く。
【0004】
血管形成の後半の段階には、血管腔の形成、遊走している内皮細胞による安定化および分化、基底膜の産生、ならびに、血管床分化の誘導が含まれる。血管形成の最後の段階には、形成途中の脈管構造が安定な成熟した血管床になる、再構築として知られていることが含まれる。
【0005】
しかしながら、(正常な)健康な成人では、血管形成は事実上は停止されており、例えば、創傷治癒、毛髪成長、月経周期期間中の子宮内膜の再生、妊娠期間中の黄体の形成および成長などにおいて、また、傷害後の組織構造および組織機能の回復において、必要とされるときにだけ生じる。
【0006】
したがって、血管形成のプロセスに関与している内皮細胞(活性化された内皮細胞)が、関与していないそのような内皮細胞(休止状態の内皮細胞)から識別されることを可能にするマーカーを特定することが、この技術分野では求められている。このことは、血管形成に付随する疾患または状態の検出のためにだけ重要であるのではなく、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞に優先的に結合する作用因の特定を可能にする。
【0007】
本明細書において引用されるすべての参考文献は、いかなる特許または特許出願を含めて、本明細書により参照によって組み込まれる。数多くの先行技術刊行物が本明細書中では参照されるが、この参照は、これらの文書のいずれかが、この技術分野における、あるいは、オーストラリアまたはいずれかの他の国における共通する一般的な知識の一部を形成することを認めるものでないことが明確に理解される。
【発明の概要】
【0008】
第1の局面において、本発明は、血管形成および/または血管機能を阻害または促進する作用因を特定するための、活性化された内皮細胞と、休止状態の内皮細胞との間で示差的に発現されるβチューブリンイソ型の使用を提供する。
【0009】
1つの実施形態において、βチューブリンイソ型の発現は、休止状態の内皮細胞と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高く、その使用により、血管形成および/または血管機能を阻害する作用因が特定される。
【0010】
別の実施形態において、βチューブリンイソ型の発現は、活性化された内皮細胞と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高く、その使用により、血管形成および/または血管機能を促進する作用因が特定される。
【0011】
第2の局面において、本発明は、血管形成および/または血管機能を阻害する作用因を、この作用因と、休止状態の内皮細胞における発現と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高い発現を示すβチューブリンイソ型との相互作用についてアッセイすることによって特定するための、活性化された内皮細胞の使用を提供する。
【0012】
第3の局面において、本発明は、血管形成および/または血管機能を促進する作用因を、この作用因と、活性化された内皮細胞における発現と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高い発現を示すβチューブリンイソ型との相互作用についてアッセイすることによって特定するための、休止状態の内皮細胞の使用を提供する。
【0013】
第4の局面において、本発明は、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定するための、活性化された内皮細胞と、休止状態の内皮細胞との間で示差的に発現されるβチューブリンイソ型の使用を提供する。
【0014】
本発明の第4の局面の1つの実施形態において、βチューブリンイソ型の発現は、休止状態の内皮細胞と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高く、その使用により、活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因が特定される。
【0015】
本発明の第4の局面の別の実施形態において、βチューブリンイソ型の発現は、活性化された内皮細胞と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高く、その使用により、休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因が特定される。
【0016】
第5の局面において、本発明は、休止状態の内皮細胞における発現と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高い発現を有するβチューブリンイソ型の、活性化された内皮細胞のマーカーとしての使用を提供する。
【0017】
第6の局面において、本発明は、活性化された内皮細胞における発現と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高い発現を有するβチューブリンイソ型の、休止状態の内皮細胞のマーカーとしての使用を提供する。
【0018】
本発明の第5の局面および第6の局面の1つの実施形態において、マーカーは、治療剤に対する応答を予測するために、および/または、疾患の進行をモニターするために使用することができる。
【0019】
第7の局面において、本発明は、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定する方法を提供し、この場合、この方法は、
(a)活性化された内皮細胞と、休止状態の内皮細胞との間で示差的に発現されるβチューブリンイソ型を提供すること、
(b)候補作用因を(a)におけるβチューブリンイソ型に加えること、および
(c)βチューブリンイソ型に対する候補作用因の結合についてアッセイすること
を含み、
ただし、βチューブリンイソ型に結合する候補作用因が、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因である。
【0020】
本発明の第7の局面の1つの実施形態において、βチューブリンイソ型の発現は、休止状態の内皮細胞と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高く、その方法により、活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因が特定される。
【0021】
本発明の第7の局面の別の実施形態において、βチューブリンイソ型の発現は、活性化された内皮細胞と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高く、その方法により、休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因が特定される。
【0022】
第8の局面において、本発明は、活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定する方法を提供し、この場合、この方法は、
(a)活性化された内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)休止状態の内皮細胞における発現と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高い発現を有するβチューブリンイソ型に対する候補作用因の結合についてアッセイすること
を含み、
ただし、βチューブリンイソ型に結合する候補作用因が、活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因である。
【0023】
第9の局面において、本発明は、休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定する方法を提供し、この場合、この方法は、
(a)休止状態の内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)活性化された内皮細胞における発現と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高い発現を有するβチューブリンイソ型に対する候補作用因の結合についてアッセイすること
を含み、
ただし、βチューブリンイソ型に結合する候補作用因が、休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因である。
【0024】
第10の局面において、本発明は、活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定する方法を提供し、この場合、この方法は、
(a)活性化された内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)細胞の機能的性質に対する候補作用因の影響を明らかにすること
を含み、
ただし、細胞の機能的性質を変化させる候補作用因が、活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因である。
【0025】
第11の局面において、本発明は、休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定する方法を提供し、この場合、この方法は、
(a)休止状態の内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)細胞の機能的性質に対する候補作用因の影響を明らかにすること
を含み、
ただし、細胞の機能的性質を変化させる候補作用因が、休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因である。
【0026】
第12の局面において、本発明は、血管形成および/または血管機能を阻害または促進する作用因を特定する方法を提供し、この場合、この方法は、
(a)活性化された内皮細胞と、休止状態の内皮細胞との間で示差的に発現されるβチューブリンイソ型を提供すること、
(b)候補作用因を(a)におけるβチューブリンイソ型に加えること、および
(c)βチューブリンイソ型に対する候補作用因の結合についてアッセイすること
を含み、
ただし、βチューブリンイソ型に結合する候補作用因が、血管形成および/または血管機能を阻害または促進する作用因である。
【0027】
本発明の第12の局面の1つの実施形態において、βチューブリンイソ型の発現は、休止状態の内皮細胞と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高く、その方法により、血管形成および/または血管機能を阻害する作用因が特定される。
【0028】
本発明の第12の局面の別の実施形態において、βチューブリンイソ型の発現は、活性化された内皮細胞と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高く、その方法により、血管形成および/または血管機能を促進する作用因が特定される。
【0029】
第13の局面において、本発明は、血管形成および/または血管機能を阻害する作用因を特定する方法を提供し、この場合、この方法は、
(a)活性化された内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)休止状態の内皮細胞における発現と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高い発現を有するβチューブリンイソ型に対する候補作用因の結合についてアッセイすること
を含み、
ただし、βチューブリンイソ型に結合する候補作用因が、血管形成および/または血管機能を阻害する作用因である。
【0030】
第14の局面において、本発明は、血管形成および/または血管機能を促進する作用因を特定する方法を提供し、この場合、この方法は、
(a)休止状態の内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)活性化された内皮細胞における発現と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高い発現を有するβチューブリンイソ型に対する候補作用因の結合についてアッセイすること
を含み、
ただし、βチューブリンイソ型に結合する候補作用因が、血管形成および/または血管機能を促進する作用因である。
【0031】
第15の局面において、本発明は、血管形成および/または血管機能を阻害する作用因を特定する方法を提供し、この場合、この方法は、
(a)活性化された内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)細胞の機能的性質に対する候補作用因の影響を明らかにすること
を含み、
ただし、細胞の機能的性質を変化させる候補作用因が、血管形成および/または血管機能を阻害する作用因である。
【0032】
第16の局面において、本発明は、血管形成および/または血管機能を促進する作用因を特定する方法を提供し、この場合、この方法は、
(a)休止状態の内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)細胞の機能的性質に対する候補作用因の影響を明らかにすること
を含み、
ただし、細胞の機能的性質を変化させる候補作用因が、血管形成および/または血管機能を促進する作用因である。
【0033】
本発明の第10の局面、第11の局面、第15の局面および第16の局面の1つの実施形態において、細胞の機能的性質には、下記のいずれか1つまたは複数が含まれる:
(a)細胞の増殖、
(b)細胞の遊走、
(c)細胞が毛細管を形成することができること、
(d)細胞が血管形成に関与することができること、
(e)細胞が細胞同士の接触を維持することができること、
(f)細胞が機能的な血管を持続することができること、および
(g)αサブユニットが存在するとき、細胞内に存在するβチューブリンイソ型が重合することができること。
【0034】
本発明の第1の局面、第2の局面、第4の局面、第5の局面、第7の局面、第8の局面、第10の局面、第12の局面および第13の局面の1つの実施形態において、βチューブリンイソ型はβIチューブリンである。
【0035】
本発明の第1の局面、第3の局面、第4の局面、第6の局面、第7の局面、第9の局面、第11の局面、第12の局面および第14の局面の1つの実施形態において、βチューブリンイソ型はβIIIチューブリンである。
【0036】
第17の局面において、本発明は、本発明の第7の局面〜第16の局面のいずれか1つによって特定されるときの作用因を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】活性化されたヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)および休止状態のHUVECにおけるβIチューブリンイソ型のRNA発現およびタンパク質発現のグラフ表示結果を示す。
【0038】
【図2】活性化されたHUVECおよび休止状態のHUVECにおけるβIIIチューブリンイソ型のRNA発現およびタンパク質発現のグラフ表示結果を示す。
【0039】
【図3】Matrigelマトリックス表面における毛細管形成の期間中での活性化されたHUVECおよび休止状態のHUVECにおけるチューブリンイソ型βIタンパク質およびチューブリンイソ型βIIIタンパク質の発現のグラフ表示結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明者らは、βチューブリンイソ型の発現が、活性化された内皮細胞と、休止状態の内皮細胞との間で異なることを見出している。以前の研究では、βチューブリンイソ型の発現が、正常な細胞と、ガン性細胞との間で異なることが示されているが、内皮細胞における発現の違いは以前には知られておらず、また、予想もされていない。
【0041】
微小管は細胞骨格の円筒状の構造体であり、αチューブリンおよびβチューブリンのヘテロダイマーサブユニットから構成される。脊椎動物では、βチューブリンのイソ型が少なくとも7つ存在する。
【0042】
本明細書中で使用される用語「βチューブリンイソ型」は、現在知られており、また、発表されるβチューブリンのこれら7つのイソ型、本発明者らがNCBIのGenBankデータベースの分析から特定しているβチューブリンのイソ型、および、今までのところ特定されていないβチューブリンのイソ型を包含することが理解される。現在知られ、発表されているβチューブリンイソ型には、クラスI、クラスII、クラスIII、クラスIVa、クラスIVb、クラスVおよびクラスVIが含まれる。本発明者らは、さらなるヒトイソ型、すなわち、βVIIIチューブリンおよび新しいクラスIIイソ型(クラスIIa)を見出している。「βチューブリンイソ型」に対する参照はまた、そのイソ型をコードする核酸配列またはポリペプチド配列に対する参照でもある。ヒトβチューブリンイソ型の核酸およびポリペプチドの例には、下記のものが含まれる:
Beta I tubulin(Sullivan KFおよびCleveland DW,1986,PNAS USA 83(12):4327−4331)−Genbank Accession Numbers:それぞれNM_178014およびNP_821133;
Beta II tubulin(Sullivan KFおよびCleveland DW,1986,PNAS USA 83(12):4327−4331)−Genbank Accession Numbers:それぞれNM_178012およびNP_821080;
Beta IIa tubulin−Genbank Accession Numbers:それぞれNM_001069およびNP_001060;
Beta III tubulin(Sullivan KFおよびCleveland DW,1986,PNAS USA 83(12):4327−4331)−Genbank Accession Numbers:それぞれNM_006086およびNP_006077;
Beta IVa tubulin(Lopata MAおよびCleveland DW,1987,J. Cell Biol.105(4):1707−1720)−Genbank Accession Numbers:それぞれNM_006087およびNP_006078;
Beta IVb tubulin(Lopata MAおよびCleveland DW,1987,J. Cell Biol.105(4):1707−1720)−Genbank Accession Numbers:それぞれNM_006088およびNP_006079;
Beta V tubulin(Lopata MAおよびCleveland DW,1987,J. Cell Biol.105(4):1707−1720)−Genbank Accession Numbers:それぞれNM_032525およびNP_115914;
Beta VI tubulin(Wang D et al.,1996,J. Cell Biol.103(5):1903−1910)−Genbank Accession Numbers:それぞれNM_030773およびNP_110400;and
Beta VIII tubulin−Genbank Accession Numbers:それぞれNM_177987およびNP_817124.
【0043】
クラスIおよびクラスIVbに対応するイソ型が数多くの組織にわたって発現し、これに対して、クラスIIは脳のβチューブリンの主要成分である。クラスIIIおよびクラスIVaの発現は神経組織に限定され、クラスVは、脳を除いて、至るところで発現し、クラスVIイソ型が造血系細胞によって発現される。
【0044】
βチューブリンイソ型は、好ましくは精製された形態であり、この技術分野では知られている組換えDNA技術によって合成することができる。例えば、上記で列挙された核酸配列のいずれか1つを宿主細胞に導入することができる。典型的には、宿主細胞が、そのような核酸を含む発現ベクターによりトランスフェクションされる。様々な発現ベクター/宿主システムを、βチューブリンイソ型を含有し、発現させるために利用することができる。これらには、微生物(例えば、プラスミドDNA発現ベクターまたはコスミドDNA発現ベクターにより形質転換される細菌;酵母発現ベクターにより形質転換される酵母など);ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)が感染させられる昆虫細胞システム;あるいは、マウスもしく他の動物またはヒトの組織の細胞システムが含まれるが、これらに限定されない。哺乳動物細胞もまた、プラスミドシステム、コスミドシステムおよびウイルスシステム(例えば、ワクシニアウイルス発現システムなど)をはじめとする様々な発現ベクターを使用してβチューブリンイソ型ポリペプチドを発現させるために使用することができる。本発明は、用いられる宿主細胞またはベクターによって限定されない。多量のタンパク質が必要とされるときには、高レベルの発現を導くベクターを使用することができ、例えば、T5またはT7の誘導可能なバクテリオファージプロモーターを含有するベクターなどを使用することができる。
【0045】
αチューブリンイソ型およびβチューブリンイソ型は変化に富む組織発現を示し、重要なアミノ酸における置換によって互いに異なる。個々のチューブリンイソ型は、微小管の性質を、微小管の機能を調節することにより変えることができる。チューブリンイソ型のそれぞれに関連する発現および種々の性質において異なることは、個々のイソ型が、異なる組織では全く異なった役割を有し得ることを示唆する。
【0046】
様々なガンが、チューブリン結合剤(例えば、ドセタキセルおよびパクリタキセルなど)に対する抵抗性を、細胞のチューブリンイソ型の組成を変えることによって発達させる。例えば、βIチューブリンの発現における変化がタキソール抵抗性肺ガン細胞およびドセタキセル抵抗性乳ガン細胞株MCF−7において見出されている。さらに、チューブリンイソ型のβII、βIIIおよびβIVaの発現もまた、タキソール抵抗性肺ガン細胞およびMCF−7乳ガン細胞株において異なることが示されている。
【0047】
肺ガン細胞におけるβIIIチューブリンのノックダウンはパクリタキセル感受性における39%の増大をもたらすことが示されており、このことはさらに、βIIIチューブリンが、チューブリン結合剤に対する抵抗性を発達させることにおいて果たす重要性を強調する。チューブリン結合剤のコルヒチンがβIIIイソ型に対する最も低い結合親和性を有し、βIIIが微小管重合速度をインビトロで低下させることもまた示されている。
【0048】
本発明者らは、βチューブリンイソ型の発現が、活性化された内皮細胞と、休止状態の内皮細胞との間で異なることを見出している。さらなる研究において、βIチューブリンの発現が、休止状態の内皮細胞と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高いことが見出されている。さらなる研究では、βIIIチューブリンの発現が、活性化された内皮細胞と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高いことが確認されている。
【0049】
βIチューブリンおよびβIIIチューブリンの示差的な発現が現時点では示されているが、他のβチューブリンイソ型が、その分化および/または生活環の異なる段階にある内皮細胞において示差的に発現しているかもしれない。
【0050】
本発明の関連における「休止状態の」内皮細胞は、安定な血管または毛細管を維持することに関与し、かつ、非常に低い増殖活性および/または遊走活性を示すか、あるいは、増殖活性および/または遊走活性を全く示さない内皮細胞を意味することが理解される。インビトロにおいて、休止細胞を、内皮細胞を、この技術分野では知られている基礎培地で、または、この技術分野では知られているコンフルエントな培養条件のもとで培養することによって得ることができる。例えば、好適な培地は、0.1%のGA−1000(ゲンタマイシン、アンフォテリシン−B)および0.5%のウシ胎児血清を含有するEBM−2培地(Clonetics、米国)を含む。成長補助物がこの培養培地には存在しない。インビトロおよびインビボの両方で、休止状態の内皮細胞は通常、隣の内皮細胞に結合し、血管形成のプロセスに関与していない。
【0051】
血管形成のプロセスの期間中、内皮細胞は、通常の場合には増殖因子(例えば、血管内皮増殖因子または塩基性線維芽細胞増殖因子など)によって媒介される既存の血管系への血管形成的刺激を受けたときに活性化される。したがって、本発明の関連において、「活性化された」内皮細胞は、刺激されて、血管形成的刺激に応答している細胞である。この細胞は増殖中であり得るか、または遊走中であり得るか、または毛細管形成中であり得る。すなわち、「活性化された」内皮細胞は、血管形成のプロセスに関与する内皮細胞である。
【0052】
インビトロにおいて、活性化された内皮細胞を、内皮細胞を、成長補助物が添加された培地で培養することによって得ることができる。そのような様々な培地がこの技術分野では知られており、これらは、基礎EBM−2培地、hEGF、ヒドロコルチゾン、0.1%のGA−1000(ゲンタマイシン、アンフォテリシン−B)、2%のウシ胎児血清、血管内皮増殖因子(VEGF)、ヒト線維芽細胞増殖因子β、R−インスリン増殖因子−1、アスコルビン酸およびヘパリンを含有するEGM−2培地(Clonetics、米国)を含む。
【0053】
内皮細胞の活性化は、これらの細胞における1つまたは複数の遺伝子の発現における変化を、休止状態の内皮細胞における同じ1つまたは複数の遺伝子の発現と比較されたとき、引き起こす。これは「示差的発現」として知られており、第2のサンプル(または一組のサンプル)における当該成分のレベルまたは活性と比較されるような、第1のサンプル(または一組のサンプル)における成分(例えば、特定の遺伝子に対応する核酸および/またはそのコードされるタンパク質)のレベル、濃度または活性を示し、この場合、その成分を検出するために使用される方法により、この方法がこれら2つのサンプル(または一組のサンプル)に対して適用されたとき、異なるレベルまたは活性がもたらされる。一例として、第1のサンプルにおいてある1つの濃度で測定され、第2のサンプルにおいて異なる濃度で測定されるタンパク質は、第2のサンプルと比較して、第1のサンプルにおいて示差的に発現される。本質的には、そのようなタンパク質は、これら2つのサンプルを互いに識別するためのマーカーとして作用する。
【0054】
本明細書中で使用される用語「マーカー」は、「正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または、治療的介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定および評価される特徴」(NIHバイオマーカー定義作業グループ、1998)を意味することが理解される。本発明の関連において、好適なマーカーの一例が、βチューブリンイソ型核酸および/またはそのコードされるタンパク質である。マーカー測定値は、特定の生物学的プロセスに応答して、より高いか、または増大する場合があり、あるいは、より低いか、または低下する場合がある。すなわち、マーカー測定値が典型的には、特定の生物学的プロセスの非存在下で変化するならば、一定の測定値は、そのプロセスが生じていることを示し得る。マーカー測定値は絶対値または相対値(例えば、生物学的サンプルにおける2つの分子の相対的濃度)で表すことができる。本明細書中で使用される場合、「マーカー」に対する参照は、2つ以上のそのようなマーカーの組合せを包含する。
【0055】
本発明の関連において、βチューブリンイソ型の発現は、例えば、そのβチューブリンイソ型の発現を検出するための方法が、そのイソ型のレベルまたは活性が、休止細胞と比較して、活性化細胞においてより高いか、または、より大きいことを示すならば、(または、そのイソ型が活性化細胞において検出可能であり、休止細胞において検出できないならば)、休止状態の内皮細胞と比較して、活性化された内皮細胞において「より高い」として示される。
【0056】
発現における増大を、当業者に知られているいずれかの方法または技術によって測定することができる。当業者によって理解されるように、観測された増大は、その測定を行うために使用される具体的な方法または技術に依存して異なり得る。例えば、2つのサンプルの間(例えば、活性化された内皮細胞と、休止状態の内皮細胞との間)におけるβチューブリンイソ型の発現または活性のレベルにおける違いを、転写レベルで、すなわち、遺伝子にコードされる情報の、メッセンジャーRNA(mRNA)への変換において、または、翻訳レベルで、すなわち、mRNAの、タンパク質への変換において、または、両者の組合せで測定することができる。
【0057】
βチューブリンイソ型の発現または活性における変化をこの技術分野では知られているいずれかの方法によって測定することができる。そのような一般に使用されている方法には、示差的表示(Liang P他、1992、Science、257(5072):967)、再現的な差分析(Lisitsyn NA他、1993、Science、259(5097):946)、遺伝子発現の連続分析(Velculescu VE他、1995、Science、270(5235):4484)、および、より近年では、アレイに基づく技術(Schena M他、1995、Science、270(5235):467)が含まれる。
【0058】
単に例としてであるが、βチューブリンイソ型の示差的発現を転写レベルで明らかにする工程を、mRNAの存在を逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(定量的RT−PCRを含む)により検出することによって、または、マイクロチップ技術を利用する特異的な核酸アレイを使用して行うことができる。単に例としてであるが、βチューブリンイソ型の示差的発現を翻訳レベルで明らかにする工程を、例えば、ELISA、タンパク質の免疫化学的分析、プロテオームアレイ、または、フローサイトメトリーによって検出されるような分子内染色を使用して、mRNAによりコードされるタンパク質を検出することによって行うことができる。これらの方法のすべてがこの技術分野では広く知られている。
【0059】
本質的には、示差的発現を、休止状態の内皮細胞と比較して、活性化された内皮細胞において示すβチューブリンイソ型が、これらの細胞についてのマーカーを表し、かつ、これらの細胞タイプが互いに識別され、単離されることを可能にする。
【0060】
本発明は、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定するための方法における、示差的に発現されるβチューブリンイソ型の使用を提供する。
【0061】
本明細書中で使用される用語「選択的に相互作用する」は、1つの内皮細胞タイプを、すなわち、活性化された内皮細胞タイプまたは休止状態の内皮細胞タイプを他方の内皮細胞タイプに優先して標的とするか、あるいは、1つの内皮細胞タイプに対して、すなわち、活性化された内皮細胞タイプまたは休止状態の内皮細胞タイプに対して他方の内皮細胞タイプに優先して結合するか、あるいは、1つの内皮細胞タイプを、すなわち、活性化された内皮細胞タイプまたは休止状態の内皮細胞タイプを他方の内皮細胞タイプに優先して認識する作用因を意味することが理解される。したがって、活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因は、活性化された内皮細胞に対抗する活性を示す作用因であり、例えば、これらの細胞の機能を、休止状態の内皮細胞の機能が調節され得るよりも低い濃度で調節することができる作用因である。作用因は、その作用因が、1つの細胞タイプについて、他方の細胞タイプよりも少なくとも5倍〜100倍またはそれ以上の優先度を有するならば、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞に対する選択性を示す。作用因の選択性を、そのIC50値、すなわち、測定された活性における50%の低下を引き起こす作用因の濃度を明らかにすることによって求めることができる。代替では、作用因の選択性を、EC50値、すなわち、インビトロまたはインビボでのその最大効果の50%を得るために要求される作用因の濃度を明らかにすることによって求めることができる。
【0062】
作用因は、βチューブリンイソ型のそのような細胞におけるより高い発現のために、活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する。代替では、作用因は、休止状態の細胞におけるβチューブリンイソ型のより高い発現のために、休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する。
【0063】
チューブリン重合を標的とする作用因に対するガン細胞抵抗性の発達が、特定のチューブリンイソ型の過剰発現と相関すること(例えば、βIIIの発現がパクリタキセルに対する抵抗性と相関すること)が明らかにされている。本発明者らは、内皮細胞による治療剤に対する応答がまた、特定のチューブリンイソ型の発現レベルによって、結果として、βチューブリンイソ型を含めて、様々なチューブリンイソ型の発現レベルによって影響されると考えられ、内皮細胞による治療剤に対する応答が作用因の効力の予測となり得ることを仮定する。
【0064】
さらに、種々の腫瘍細胞によって放出される血管形成促進性増殖因子の多様性を考えた場合、種々の腫瘍タイプにおける内皮細胞が、腫瘍タイプおよび/または進行段階と相関し得る異なるチューブリンイソ型を発現すると考えられる。
【0065】
したがって、本発明は、治療剤に対する応答を予測するために、および/または、疾患の進行をモニターするために使用することができるマーカーとしての、示差的に発現されるβチューブリンイソ型の使用を可能にする。
【0066】
内皮細胞は不可欠な役割を血管形成および/または血管機能において果たすので、本発明はまた、これらのプロセスに影響を及ぼすことができ、したがって、血管形成に関連づけられる障害または状態の予防または処置において有用性を有する作用因を特定するための方法における、示差的に発現されるβチューブリンイソ型の使用を可能にする。
【0067】
用語「血管機能」は、本明細書中で定義される場合、正常な環境または病原性の環境のもとにある様々な器官/組織に血管が導かれること、および、そのような器官/組織から血管が導かれることを示す。この用語は、新しい血管の形成を包含するのではなく、むしろ、以前に確立された血管ネットワーク、例えば、確立された腫瘍に存在する血管ネットワークなどを包含する。
【0068】
用語「血管形成」は、本明細書中で定義される場合、新しい血管の形成(これはまた、血管新生と呼ばれる)、および/あるいは、既存の血管、例えば、腫瘍における血管、もしくは、腫瘍と、周囲の組織との間における血管などの体積、直径もしくは長さにおける増大、または、そのような既存の血管の透過性を変化させることを示す。
【0069】
血管形成プロセスは非常に動的であり、多くの場合、遺伝子発現の協調された空間的および時間的な波を必要とする。その複雑な性質のために、血管形成のプロセスは、1つまたは複数の非常に重要な工程が妨害されることによる中断を受けやすく、そのため、数多くの疾患状態または病気が血管形成における上昇または低下から生じ得るか、あるいは、血管形成における上昇または低下によって悪化し得る。
【0070】
制御されない血管形成または高まった血管形成の結果であるか、あるいは、低下した血管系が有益である血管形成関連の障害または状態の例には、血管新生を必要とするガン、腫瘍成長および腫瘍転移、加齢性黄斑変性(滲出型または萎縮型)、糖尿病性網膜症および他の増殖性網膜症(未熟児網膜症を含む)、網膜血管障害、黄斑障害、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化プラークおよび骨粗鬆症における毛細管増殖、異常な肥厚、関節炎、リウマチ様関節炎、変形性関節症、慢性関節リウマチ、乾癬、乾癬性プラーク、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化、アテローム性動脈硬化プラーク、心筋梗塞からの水腫、ブドウ膜炎、網膜炎、色素性網膜炎、脈絡膜炎、水晶体後線維増殖症、血管新生緑内障、糖尿病性黄斑浮腫、角膜の血管新生、角膜移植片血管新生、角膜移植片拒絶、網膜/脈絡膜の血管新生、偶角の血管新生(ルベオーシス)、眼の血管新生疾患、血管再狭窄、動静脈奇形(AVM)、髄膜種、血管腫、血管線維腫、甲状腺過形成(グレーヴズ病を含む)、角膜移植および他の組織移植、肺の炎症、急性肺傷害/急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症、高血圧(例えば、原発性肺高血圧)、悪性肺滲出、脳浮腫(例えば、急性脳卒中/閉鎖性頭部傷害/外傷に関連する脳浮腫)、滑膜の炎症、リウマチ様関節炎におけるパンヌス形成、骨化性筋炎、肥大性骨形成、難治性腹水症、多嚢胞性卵巣疾患、子宮内膜症、細胞外液喪失疾患(3rd spacing of fluid disease)(膵炎、コンパートメント症候群、火傷、腸疾患)、子宮筋腫、早産、慢性的炎症(例えば、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)など)、腎臓の同種移植片拒絶、ネフローゼ症候群、望まれないか、または異常な良性組織塊成長、肥満、脂肪組織塊成長、血友病性関節、肥厚性瘢痕、毛髪成長の阻害、オスラー・ウェーバー症候群、化膿性肉芽腫、水晶体後線維増殖症、強皮症、トラコーマ、血管接着、滑膜炎、皮膚炎、子癇前症、腹水症、心内膜液滲出(例えば、心膜炎に関連する心内膜液滲出など)、胸水、胃腸の潰瘍形成、慢性気道炎症および血管炎が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
例えば、眼の血管新生が、成人における失明の最も一般的な原因として関係しており、また、黄斑変性の滲出型または萎縮型の両方を含めて、およそ20の眼疾患の病理の根底にある。糖尿病性網膜症では、網膜に形成される新しい毛細管が硝子体液に侵入し、出血および失明を引き起こす。いくつかの以前から存在している状態(例えば、リウマチ様関節炎および変形性関節症など)では、新しく形成された毛細血管が関節に侵入し、軟骨を破壊する。
【0072】
ガンの例にはまた、限定されないが、この技術分野において知られているように、形質転換された細胞および不死化された細胞、固形腫瘍、骨髄増殖性疾患、芽細胞腫、扁平上皮ガン(例えば、上皮の扁平上皮ガン)、肺ガン(小細胞肺ガン、非小細胞肺ガン、肺の腺ガンおよび肺の扁平上皮ガンを含む)、腹膜のガン、肝細胞ガン、胃ガン(gastric cancerまたはstomach cancer)(胃腸ガンを含む)、膵臓ガン、神経膠芽細胞腫、子宮頸ガン、卵巣ガン、肝臓ガン、膀胱ガン、ヘパトーム、乳ガン、結腸ガン、直腸ガン、結腸直腸ガン、子宮内膜ガンまたは子宮ガン、漿液性腺ガン、子宮内膜様腺ガン、明細胞腺ガン、粘液性腺ガン、ブレンナー腫瘍、奇形腫、未分化胚細胞腫、絨毛ガン、線維腫、顆粒膜細胞腫、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、未分化卵巣ガン、唾液腺ガン、腎臓ガンまたは腎ガン、前立腺ガン、外陰ガン、甲状腺ガン、肝ガン、肛門ガン、陰茎ガン、頭部および/または頸部のガン、ユーイング肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、脂肪肉腫、末梢性神経上皮腫、滑膜肉腫、ホジキン病などが含まれ得る。
【0073】
不適切に停止または低下させられた血管形成の結果であるか、あるいは、増大した血管系が有益である血管形成関連の障害または状態の例には、創傷治癒、毛髪成長、妊娠期間中の黄体の形成および成長、傷害後の組織構造および組織機能の回復、虚血性肢疾患、心筋虚血および冠状動脈疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書中で使用される用語「作用因」には、ペプチド、小さい有機化合物、抗体およびアンチセンス/遺伝子サイレンシング剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
ペプチドは、広く知られている技術を使用して、過度な実験を行うことなくスクリーニングすることができるペプチドライブラリーの形態である場合がある。例えば、ポリペプチド標的に結合するペプチドについてペプチドライブラリーをスクリーニングするための様々なアッセイがこの技術分野では広く知られている(米国特許第5556762号、同第5750373号、同第4708871号、同第4833092号、同第5223409号、同第5403484号、同第5571689号、同第5663143号、ならびに、PCT公開番号WO84/03506および同WO84/03564を参照のこと)。
【0076】
バクテリオファージ(ファージ)ディスプレーライブラリーが一般にスクリーニングされる。ファージディスプレーは、様々な変化ポリペプチドがバクテリオファージ粒子の表面におけるコートタンパク質に対する融合タンパク質として呈示される技術である(Scott JKおよびSmith GP、1990、Science、249:386)。ファージディスプレーの有用性は、選択的にランダム化されたタンパク質変化体(またはランダムにクローン化されたcDNA)の大きいライブラリーが、高い親和性で標的分子に結合するそのような配列について迅速かつ効率的に選別されるという事実にある。
【0077】
ほとんどのファージディスプレー方法では、繊維状ファージが使用されるが、ラムダ状ファージディスプレーシステム、T4ファージディスプレーシステムおよびT7ファージディスプレーシステムもまた、この技術分野では知られている。基本的なファージディスプレー概念の多くの他の改善および変法もまた開発されている。これらの改善により、ディスプレーシステムの能力が、選択された標的分子に対する結合についてペプチドライブラリーをスクリーニングするために、また、機能的なタンパク質を、所望される性質についてこれらのタンパク質をスクリーニングすることの潜在的可能性を伴って呈示するために強化される。
【0078】
抗体の形態での作用因を、抗体ファージライブラリーをスクリーニングすることによって特定することができる。ファージを、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から発現される抗原結合ドメインを呈示するために利用することができる。目的とする抗原(例えば、示差的に発現されるβチューブリンイソ型)と結合する抗原結合ドメインを発現するファージを、抗原を用いて、例えば、標識された抗原、あるいは、固体表面またはビーズに結合させたか、または捕獲された抗原を使用して選択または特定することができる。これらの方法で使用されるファージは典型的には、ファージ遺伝子IIIのタンパク質またはファージ遺伝子VIIIのタンパク質のどちらかに組換え融合されたFab抗体ドメイン、Fv抗体ドメインまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインとともにファージから発現されるfd結合ドメインおよびM13結合ドメインを含む繊維状ファージである。例示的な方法が、例えば、米国特許第5969108号に示される。ファージディスプレー方法では、機能的な抗体ドメインが、機能的な抗体ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面に呈示される。具体的には、V領域およびV領域をコードするDNA配列が動物cDNAライブラリーまたは合成cDNAライブラリーから増幅される。ファージ選択の後、ファージから得られる抗体コード領域を、ヒト抗体または任意の他の所望される抗原結合フラグメントを含めて、完全な抗体を作製するために単離および使用することができる。
【0079】
小さい有機化合物は通常、サイズが約2000ダルトン未満であり、代替では、サイズが、約1500ダルトン未満、750ダルトン未満、500ダルトン未満、250ダルトン未満または200ダルトン未満である。小さい有機化合物には、アルデヒド、ケトン、オキシム、ヒドラゾン、セミカルバゾン、カルバジド、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、N−置換ヒドラジン、ヒドラジド、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、カルボン酸、エステル、アミド、ウレア系化合物、カルバマート、カルボナート、ケタール、チオケタール、アセタール、チオアセタール、アリールハリド、アリールスルホナート、アルキルハリド、アルキルスルホナート、芳香族化合物、複素環式化合物、アニリン系化合物、アルケン、アルキン、ジオール、アミノアルコール、オキサゾリジン系化合物、オキサゾリン系化合物、チアゾリジン系化合物、チアゾリン系化合物、エナミン、スルホンアミド、エポキシド、アジリジン系化合物、イソシアナート、スルホニルクロリド、ジアゾ化合物または酸クロリドなどが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0080】
化学ライブラリーの一部としての小さい有機化合物をスクリーニングすることができ、または、知られている方法論を使用して合成することができる(例えば、PCT公開番号WO00/00823および同WO00/39585を参照のこと)。ポリペプチド標的に結合することができる小さい有機化合物のライブラリーをスクリーニングするための様々な技術がこの技術分野では広く知られている(PCT公開番号WO00/00823および同WO00/39585を参照のこと)。
【0081】
アンチセンス/遺伝子サイレンシング剤には、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびアンチセンスRNA(例えば、短い干渉性RNA(siRNA)分子など)が含まれる。当業者によって理解されるように、siRNAは、転写されたRNAの一部のセグメントの相補体であり、その結果、そのセグメントに結合し、そうすることにおいて、問題にされている遺伝子の発現を調節するか、または沈黙させるRNAの短い配列である。
【0082】
問題にされている遺伝子を調節するか、または沈黙させるために使用されるsiRNA分子は、一本鎖アンチセンス、二本鎖アンチセンス、または、化学的修飾を伴う二本鎖アンチセンスの形態であり得る。
【0083】
本明細書中で使用される用語「阻害する(“inhibit”)」または用語「促進する(“promote”)」、あるいは、用語「阻害する(“inhibiting”)」または用語「促進する(“promoting”)」は、特定された作用因が、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは70%、75%、85%、90%、95%またはそれ以上の全体的な低下または増大をそれぞれ引き起こすことができることを意味することが理解される。
【0084】
血管形成および血管機能の関連において、「阻害する」または「促進する」は、血管のサイズまたは数、血管形成関連の障害(血管関連の腫瘍成長を含む)における血管形成の量、あるいは、ガンにおける転移の存在またはサイズを示すことができる。
【0085】
血管形成および/または血管機能を阻害または促進する作用因の能力、あるいは、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因の能力を、この技術分野では知られているいずれかの方法によって測定することができる。例えば、作用因がそのような細胞の1つまたは複数の機能的性質に対して有する影響について試験するアッセイを使用することができる。血管形成に関して、そのような方法は、増殖、遊走および毛細管形成を含めて、内皮細胞が血管形成の期間中に進めるサイクルを利用することができる。血管機能に関して、そのような方法は、毛細管破壊アッセイの使用により、確立された毛細管に対する作用因の影響についてアッセイすることができる。他のアッセイでは、細胞外基底膜における毛細管形成のプロセスに対する作用因の影響を調べることができる。適切なアッセイの最近の総説については、Staton CA他(2004)、Int.J.Path.、85:233〜248を参照のこと。
【0086】
単に例としてであるが、血管形成または血管機能の阻害または促進の程度を調べるためのインビトロ方法には、正味の細胞数を明らかにする、内皮細胞および/またはガン細胞および/またはガン細胞株の増殖アッセイ、あるいは、細胞周期の速度論を評価するアッセイが含まれ得る。正味の細胞数を、血球計を使用して測定することができ、または、生細胞に存在するミトコンドリアによる3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミドの切断から生じるホルマザン生成物の量の測定により測定することができる(Denizot FおよびLang R、1986、J.Immunol.Methods、89:271〜277;Wemme H他、1992、Immunobiology、185:78〜79)。代替では、DNA合成が細胞増殖の尺度であり、DNA合成を内皮細胞におけるチミジン取り込みによってアッセイすることができ、または、DNA結合色素によってアッセイすることができる。細胞周期速度論が典型的には、フローサイトメトリー分析と一緒になったDNA結合分子(例えば、ブロモデオキシウリジンなど)を使用することによって評価される。
【0087】
内皮細胞遊走アッセイでは、作用因の存在下における内皮細胞の走化性の程度が測定される。例えば、改変されたBoydenチャンバーアッセイを使用することができ(Alessandri G他、1983、Cancer Res.、43:1790〜1797)、このアッセイでは、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞がフィルターの上側に置かれ、フィルターを横断する細胞遊走の程度が、下部チャンバーに入れられる作用因の存在下で測定される。フィルターを横断する活性化された内皮細胞の遊走の阻害は、その作用因が本質的に抗血管形成性であることを示し、これに対して、フィルターを横断する休止状態の内皮細胞の遊走は、その作用因が本質的に血管形成促進性であることを示す。
【0088】
表面における剥皮領域への内皮細胞遊走もまた測定することができる。そのような方法は典型的には、ひっかき傷治癒アッセイとして示される。このアッセイでは、内皮細胞の単層物が調製され、単層物の一部が、内皮細胞がないように剥がされ、すなわち、傷つけられる。その後、試験されている作用因の存在下で遊走し、剥皮領域を満たす細胞の能力を顕微鏡によりモニターすることができる(Pepper MS他、1990、J.Cell Biol.、111:743〜755)。
【0089】
内皮細胞による毛細管様細管の形成についてアッセイするインビトロ方法もまた、作用因による血管形成の阻害または促進を評価するために、あるいは、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因の能力を測定するために好適である。そのような分化アッセイは通常、内皮細胞の接着、遊走、および、細管への分化をインビボ状況に近い様式で刺激する、フィブリン、コラーゲンまたはMatrigelからなるマトリックスの表面における内皮細胞の培養を伴う(Lawley TJおよびKuboto Y、1989、J.Invest.Dermatol.、93:59S〜61S;Kanzawa S、1993、Ann.Plast.Surg.、30:244〜251)。
【0090】
器官培養アッセイ、例えば、大動脈リングアッセイ(Nicosia RFおよびOttinetti A、1990、Lab.Invest.、63:115〜122)およびヒヨコ大動脈弓アッセイ(Muthukkaruppan VR他、2000、Proc.Am.Assoc.Cancer Res.、41:65)などもまた使用することができる。ラット大動脈リングアッセイでは、単離されたラット大動脈がセグメントに切断され、セグメントが、一般にはマトリックス含有環境(例えば、Matrigelなど)で培養される。その後の7日間〜14日間にわたって、外植片が内皮細胞(および他の細胞)の成長についてモニターされる。これは、外植片が試験作用因の添加によって影響を受けるからである。定量化が、外植片からの血管様伸長物の長さおよび存在量の測定によって達成される。内皮選択的試薬(例えば、フルオレセイン標識されたBSL−Iなど)の使用は、ピクセルカウント数による定量化を可能にする。
【0091】
上記で記載されたアッセイを含めて、インビトロ細胞型アッセイでは、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞の供給源を代表するために適切に培養されている内皮細胞を用いることができ、あるいは、βチューブリンイソ型を過剰発現する、組換え核酸分子により安定的に形質転換されている内皮細胞を用いることができる。例えば、βIチューブリンを過剰発現する細胞株は、活性化された内皮細胞を表す。同様に、βIIIチューブリンを過剰発現する細胞株は、休止状態の内皮細胞を表す。
【0092】
単に例としてであるが、血管形成の阻害または促進の程度を調べるためのインビボ方法は、ポリマーマトリックスを、例えば、スポンジまたはMatrigelプラグの形態で、動物(例えば、マウスなど)に皮下移植することを含むことができる(Plunkett MLおよびHailey JA、1990、Lab.Invest.、62:510〜517;Dellian M他、1996、Am.J.Pathol.、149:59〜72)。血管形成の阻害の程度を測定するために、マトリックスには、1つまたは複数の血管形成誘導因子が、試験されている作用因と一緒に含浸される。その後、作用因の存在下における血管新生の程度を、この技術分野において一般に知られている様々な方法によって、例えば、免疫組織学的染色(例えば、スポンジにおける血管のインテグリン状態、または、血管形成のマーカーであるCD31抗原の検出)、スポンジの血液/ヘモグロビン含有量、または、血中の放射性トレーサーのレベルなどによって評価することができる(Mahadevan V他、1989、Cancer Res.、49:415〜419;Plunkett MLおよびHailey JA、1990、Lab.Invest.、62:510〜517)。血管形成を促進する作用因の能力を測定するために、血管形成誘導因子がマトリックスから除外され、再び、血管新生の程度が調べられる。
【0093】
ニワトリ絨毛尿膜アッセイ(Nguyen M他、1994、Microvasc.Res.、47:31〜40;Ribatti D他、1996、Int.J.Dev.Biol.、40:1189〜1197)(これは一般にはCAMアッセイとして示される)もまた、血管形成を研究するための適切なインビボアッセイである。試験される作用因が最初に、徐放性ポリマーペレットにおいて調製されるか、または、ゼラチンスポンジによって吸収されるか、または、プラスチックディスク表面に風乾される。これらのペレット、スポンジまたはディスクはまた、作用因が、血管形成を阻害または促進するその能力について試験されているかに依存して、1つまたは複数の血管形成誘導因子(例えば、VEGFまたは塩基性線維芽細胞増殖因子など)を含むことができる。その後、これらは、胚形成したニワトリ卵の殻に開けられた窓を介してCAMに移植される。その後、好適なインキュベーション期間の後、作用因の存在下でのCAMにおける血管形成の量を、実体顕微鏡を使用して評価することができる。この技術の変法もまた使用することができ、この場合には、殻のないニワトリ胚が、作用因を加える前にペトリ皿において培養される。
【0094】
他の好適なインビボ方法には、角膜血管形成アッセイ(Gimbrone MAJ他、1974、J.Natl.Cancer Inst.、52:413〜427;Muthukkaruppan VRおよびAuerbach R、1979、Science、205:1416〜1418)、例えば、ウサギ角膜ポケットアッセイなど、背側気嚢モデル(Oikawa T他、1997、Anticancer Res.、17:1881〜1886;Yonekura K他、1999、Clin.Cancer Res.、5:2185〜2191;Semba T他、2004、Clin.Cancer Res.、10:1430〜1438)、ならびに、チャンバーアッセイ、例えば、ウサギ耳チャンバー(Dudar TEおよびJain RK、1983、Microvasc.Res、25:1〜21;Gerlowski LおよびJain RK、1986、Microvasc.Res.、31:288〜305)、背側皮膚チャンバー(Leunig M他、1992、Cancer Res.、62:6553〜6560;Dellian M他、1996、Am.J.Pathol.、149、59〜72)など、ならびに、頭蓋窓アッセイ(Levasseur JE他、1975、Stroke、6:308〜317)が含まれる。
【0095】
腫瘍モデルもまた、作用因による血管形成および/または血管機能の阻害を調べるための好適なインビボシステムとして役立ち得る。腫瘍を、好適な宿主において、同系的に、同所的に(起源の組織において)、または、免疫不全マウスにおける異種移植片として成長させることができ、腫瘍成長および宿主生存に対する作用因の影響を求めることができる(Stribbling SM他、2000、Hum.Gene.Ther.、11:285〜292;Brown NJ他、2002、Br.J.Cancer、86:1813〜1816;Tercel M他、2003、J.Medicinal.Chem.、46:2132〜2151;Staton CA他、2004、Blood、103:601〜606)。特定のサイズを越えての腫瘍の成長は、腫瘍に酸素および栄養分を供給し、老廃物を除くために役立つ血管の発達(すなわち、血管形成)に依存する。したがって、組織学的アッセイを、腫瘍モデルにおけるこれらの新しい血管の形成に対する作用因の影響を評価するために使用することができる。
【0096】
血管形成および/または血管機能を阻害または促進する作用因の能力、あるいは、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因の能力はまた、インビトロでのチューブリン重合に対する作用因の影響を評価することによって測定することができる。様々な好適なチューブリン重合アッセイがこの技術分野では知られており、また、市販されている(例えば、Cytoskeleton,Inc.から得られるチューブリン重合キット)。
【0097】
本質的には、作用因の存在下で微小管に重合するチューブリンの能力を、OD340nmでのチューブリン溶液の光学濃度における増大を観測することによって、または、蛍光における変化によって追跡することができる。吸光度に基づくアッセイ(Shelanski ML他、1973、PNAS、70:765〜768)では、光散乱が実際に測定され、この場合、光散乱が大きいほど、少ない光が検出器に到達する。このアッセイは、重合の初期段階では実際よりも少なく表される短い微小管形成に対する感度が高くない。
【0098】
蛍光に基づくアッセイ(Bonne D他、1985、J.Biol.Chem.、280(5):2819〜2825)では、重合していないチューブリンモノマーと比較して、微小管の微小管立体配座に優先的に結合する蛍光団DAPIが使用される。
【0099】
両方のアッセイ形式は、類似する速度論的重合プロフィルをもたらす。このプロフィルが、プロトフィラメント構造またはリング様構造へのチューブリンモノマーの凝集に対応する核形成期によって表される。これらの核形成中心により、プロトフィラメントを伸長させ、微小管と呼ばれる円柱を閉じるより特異的な凝集のための枠組みがもたらされる。さらなる微小管伸長が重合期によって表され、平衡が、モノマーと、微小管との管で達成されるとき、この段階は定常状態として示される。
【0100】
数多くのタイプのチューブリンリガンドが存在する。例えば、モノマーに結合し、その重合を阻害するチューブリンリガンド(例えば、ビンブラスチン)、および、重合を高めるチューブリンリガンド(例えば、パクリタキセル)が存在する。リガンドを高めることは核形成期を低下させ、重合速度および重合度を増大させる(すなわち、より高い定常状態値)。重合を阻害するモノマー結合リガンドの場合、すべての段階が反対方向に影響を受ける。他のチューブリンリガンドが、チューブリンに結合するその部位に基づいて区別される。作用因が結合する部位でのチューブリンイソ型の間のアミノ酸配列における違いにより、特定のチューブリンイソ型についての結合性作用因の親和性が影響を受ける。
【0101】
血管形成および/または血管機能を阻害または促進する作用因の能力、あるいは、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因の能力はまた、チューブリン結合アッセイを使用して測定することができる。例えば、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞、あるいは、βチューブリンイソ型を過剰発現する細胞株、あるいは、示差的に発現されたβチューブリンイソ型ポリペプチドを、試験されている作用因と、関連のあるβチューブリンイソ型との間での複合体の形成について測定するために使用することができる。
【0102】
本発明の方法はハイスループットスクリーニングのために好適である。
【0103】
活性化された内皮細胞と選択的に相互作用し、その機能に影響を及ぼす作用因、および/または、増大した発現をこれらの細胞において示すβチューブリンイソ型(例えば、βIチューブリン)に結合する作用因は、血管形成および/または血管機能を阻害し得る作用因であると見なされ、したがって、制御されない血管形成または高まった血管形成から生じる血管形成関連の障害または状態、あるいは、低下した血管系が有益である疾患または状態を処置または予防するために使用することができる。同様に、休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用し、その機能に影響を及ぼす作用因、および/または、増大した発現をこれらの細胞において示すβチューブリンイソ型(例えば、βIIIチューブリン)に結合する作用因は、血管形成および/または血管機能を促進し得る作用因であると見なされ、したがって、不適切に停止または低下された血管形成から生じる血管形成関連の障害または状態、あるいは、増大した血管系が有益である疾患または状態を処置または予防するために使用することができる。
【0104】
用語「処置」および用語「予防」は、所望される薬理学的効果および/または生理学的効果を得るために、対象、組織または細胞に影響を及ぼすことを意味し、
(a)障害または状態を、障害の素因を有し得るが、障害を有するとして未だ診断されていない対象において生じさせないこと;
(b)障害または状態を阻害すること、すなわち、その発達を停止させること;または
(c)障害または状態の影響を緩和または改善すること、すなわち、障害または状態の影響の退行を生じさせること
を包含する。
【0105】
用語「対象」は、本明細書中で使用される場合、医薬的に有効な作用因による処置または予防を必要とする障害または状態を有する任意の動物を示す。対象は哺乳動物(好ましくは、ヒト)であり得るか、あるいは、ヒト以外の霊長類または霊長類以外の動物(例えば、動物モデル試験で使用される動物など)であり得る。本発明の作用因はヒトの医学的処置における使用のために好適であることが特に意図される一方で、本発明の作用因はまた、伴侶動物(例えば、イヌおよびネコなど)、および、家畜動物(例えば、ウマ、ポニー、ロバ、ラバ、ラマ、アルパカ、ブタ、ウシおよびヒツジなど)、または、動物園動物(例えば、霊長類、ネコ科動物、イヌ科動物、ウシ科動物および有蹄類など)を含めて、獣医学的処置に対しても適用可能である。
【0106】
本明細書中に記載される方法によって特定される作用因は本発明の範囲に含まれることが理解される。
【0107】
本明細書全体を通して、他に内容を特記しない限り、用語「含む(comprise)」またはその文法的変形(comprisesまたはcomprising)は、述べられた要素もしくは完全体または要素もしくは完全体の群を包含するが、他のいかなる要素もしくは完全体または要素もしくは完全体の群を除外しないことを意味する。
【0108】
本明細書において使用される単数形態(a,anおよびthe)は、他に内容を明確に示さない限り、複数の側面を包含することにも注意しなければならない。
【0109】
本発明は、明確化および理解の目的のために、ある程度詳細に記載されているが、本明細書に記載された実施形態および方法に対して種々の改変および変更が、本明細書に開示された本発明の概念の範囲から逸脱することなくなされ得ることは当業者に明白である。
【実施例】
【0110】
本発明がさらに、下記の実験例を参照することによって詳しく記載される。これらの実施例は例示目的のためにだけ提供され、別途指定されない限り、限定的であることが意図されない。したがって、本発明は、本明細書中に提供される教示の結果として明白になるありとあらゆる変形を包含する。
【0111】
(実施例1)
チューブリンイソ型βIおよびチューブリンイソ型βIIIの発現を、活性化された内皮細胞および休止状態の内皮細胞において転写レベルおよび翻訳レベルで調べた。
【0112】
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を増殖因子の存在下(活性化)または非存在下(休止状態)のどちらかで一晩培養した。例えば、活性化細胞については、HUVECを、成長補助物(基礎EBM−2培地、hEGF、ヒドロコルチゾン、GA−1000(ゲンタマイシン、アンフォテリシン−B)、2%ウシ胎児血清、血管内皮増殖因子、ヒト線維芽細胞増殖因子−β、R−インスリン増殖因子−1、アスコルビン酸およびヘパリン)を含有するEGM−2培地(Clonetics、米国)において6.25x10細胞/T75フラスコで播種した。休止細胞については、HUVECを、成長補助物を含まないEBM−2基礎培地(基礎EBM−2培地、0.1%のGA−1000(ゲンタマイシン、アンフォテリシン−B)および0.5%のFBS)において3.75x10個で播種した。それぞれの培養培地を翌日に取り替えた。細胞を、集める前に48時間、加湿下、37℃、5%COでインキュベーションした。
【0113】
転写での分析のために、総RNAを、RNeasy Miniキット(Qiagen)を製造者の説明書に従って使用して休止細胞および活性化細胞から単離した。単離されたRNAはまた、ゲノムDNAの混入を除くために、TURBO DNase(Ambion、Austin、TX、米国)により処理された。総RNA(1μg/μl)を、M−MLVH(promega)を製造者の説明書に従って使用して逆転写した。リアルタイムPCRをRotorGene(商標)2000(Corbett Research)で行った。βIチューブリンの発現を検出するために使用されたプライマーは、フォワード側が5’−CCCCATACATACCTTGAGGCGA−3’で、リバース側が5’−GCCAAAAGGACCTGAGCGAA−3’であり、βIIIチューブリンについては5’−ATGAGGGAGATCGTGCACAT−3’および5’−CCCCTGAGCGGACACTGT−3’であった。PCR反応はAmpliTaq Gold酵素(Applied Biosystems)を使用し、製造者の説明書に従った。サイクル処理条件は典型的には、94℃で12分間、35サイクルについては、94℃で45秒間、60℃で60秒間、72℃で60秒間の35サイクルであり、その後、72℃での10分間の最後の伸長が続いた。すべてのデータを、5’−AGGGGCTAACAATGGACACC−3’および5’−CCGAAGATAAGGGGGAACTACT−3’のプライマーを使用して増幅されたハウスキーピング遺伝子POLR2K(RNAポリメラーゼII)の発現に対して正規化した。
【0114】
翻訳での分析のために、タンパク質を、下記の手順を使用して休止細胞および活性化細胞から集めた。細胞をPBSにより2回洗浄した。細胞を、改変RIPA緩衝液(50mM Tris−HCl(pH7.4)、1%NP−40、0.25%デオキシコール酸Na、150mM NaCl、1mM EDTA、1x完全プロテアーゼ阻害剤(Roche))における、撹拌を伴う4℃で15分間のインキュベーションによって溶解した。その後、溶解された細胞を13000rpmで15分間遠心分離し、上清を回収した。
【0115】
βIチューブリンおよびβIIIチューブリンの相対的な存在量を、βI特異的抗体およびβIII特異的抗体をそれぞれ使用するウエスタン分析のデンシトメトリー、次いで、β−アクチンコントロールの存在量に対して正規化することによって求めた。簡単に記載すると、サンプルを下記のように調製した:5μg〜10μgの総タンパク質を、NuPAGE(登録商標)電気泳動システム(Invitrogen、Carlsbad、CA、米国)を使用して電気泳動した。タンパク質を、NuPAGE(登録商標)の4%〜12%のBis−tris Precastポリアクリアミドゲルで、NuPAGE(登録商標)MES SDS泳動緩衝液(Invitrogen)(付録6.2)において135Vで70分間、電気泳動した。電気泳動後、タンパク質を、転写緩衝液において30Vで60分間、Amersham Hybond(商標)−C Extraニトロセルロースメンブラン(GE Healthcare、英国)に転写した。その後、メンブランを4℃で一晩、または、室温で1時間、5%スキムミルク/TBS−Tにおいてブロッキング処理した。メンブランをTBS−Tで3回洗浄した(1回の洗浄につき5分間)。その後、メンブランを、1:500〜1:50000の希釈度の特異的抗体、すなわち、抗βIチューブリン(T7816、Sigma)、抗βIIIチューブリン(MMS−435P、Canvance)または抗β−アクチン(A11126、Molecular Probes)のいずれかで、室温で60分間、または、4℃で一晩インキュベーションした。抗体は5%スキムミルク/TBS−TまたはTBS−Tで希釈された。メンブランをTBS−Tで3回、5分間にわたって洗浄した。その後、メンブランを、5%スキムミルク/TBS−TまたはTBS−Tにおけるヒツジ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート(AP326P、Silenus、Melbourne、オーストラリア)の1:5000希釈物で60分間インキュベーションした。メンブランをTBS−T(付録6.2)で3回洗浄した(1回の洗浄につき5分間)。ブロットを、Amersham ECL Plus(商標)ウエスタンブロッティング検出キット(GE Healthcare、英国)を製造者の説明書に従って使用して発色させた。ブロットを、化学発光サンプルトレーを使用するImageMaster VDS−CL(GE Healthcare、英国)で可視化した。バンドを、image−J(NIH、米国)ソフトウエアを使用して定量し、β−アクチンの存在量に対して正規化した。
【0116】
図1において認められ得るように、活性化されたHUVECは、休止状態のHUVECと比較されたとき、βIチューブリンRNA(A)およびβIチューブリンタンパク質(B)における増大を示す。さらに、図2に示されるように、休止状態のHUVECは、活性化されたHUVECと比較されたとき、増大したβIIIチューブリンRNA(A)およびβIIIチューブリンタンパク質(B)を示す。
【0117】
(実施例2)
チューブリンイソ型βIおよびチューブリンイソ型βIIIの発現をMatrigelマトリックスの表面における毛細管形成の期間中に調べた。マイクロタイタープレートの35mmウエルを250μlのmatrigel(BD Biosciences)により被覆し、37℃で20分間インキュベーションした。250μlのmatrigelの2回目の被覆を加え、その後、37℃で20分間インキュベーションした。HUVECを3.33x10細胞/ウエルで播種した。細胞を、0時間、3時間、6時間、24時間および32時間で集めた。細胞を40カゼイン溶解単位のディスパーゼ(BD biosciences)との37℃での2時間のインキュベーションによってmatrigelから剥がした。反応を、EDTA濃度を6.5mMに上げることによって停止させた。その後、実施例1において上記で記載されたように、タンパク質を集め、ウエスタンブロットにより分析した。
【0118】
図3Aは、0時間、3時間、6時間、24時間および32時間の時点における毛細管形成の程度を示す。内皮細胞が、0時間、3時間および6時間の時点では、毛細管を形成するプロセスにある。毛細管が24時間および32時間の時点までに形成されている。図3Bに示されるように、毛細管を形成するプロセスにあるHUVECは、毛細管を形成し終わり、静止状態または休止状態にある細胞と比較して、βIチューブリンにおける増大を示す。さらに、図3Cに示されるように、毛細管を形成し終わり、静止しているHUVECは、依然として毛細管を形成し続けている細胞、すなわち、活性化状態にある細胞におけるβIIIのレベルと比較されたとき、βIIIチューブリンにおける増大を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管形成および/または血管機能を阻害または促進する作用因を特定するための、活性化された内皮細胞と、休止状態の内皮細胞との間で示差的に発現されるβチューブリンイソ型の使用。
【請求項2】
βチューブリンイソ型の発現は、休止状態の内皮細胞と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高く、その使用により、血管形成および/または血管機能を阻害する作用因が特定される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
βチューブリンイソ型の発現は、活性化された内皮細胞と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高く、その使用により、血管形成および/または血管機能を促進する作用因が特定される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
血管形成および/または血管機能を阻害する作用因を、この作用因と、休止状態の内皮細胞における発現と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高い発現を示すβチューブリンイソ型との相互作用についてアッセイすることによって特定するための、活性化された内皮細胞の使用。
【請求項5】
血管形成および/または血管機能を促進する作用因を、この作用因と、活性化された内皮細胞における発現と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高い発現を示すβチューブリンイソ型との相互作用についてアッセイすることによって特定するための、休止状態の内皮細胞の使用。
【請求項6】
活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定するための、活性化された内皮細胞と、休止状態の内皮細胞との間で示差的に発現されるβチューブリンイソ型の使用。
【請求項7】
βチューブリンイソ型の発現は、休止状態の内皮細胞と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高く、その使用により、活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因が特定される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
βチューブリンイソ型の発現は、活性化された内皮細胞と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高く、その使用により、休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因が特定される、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
休止状態の内皮細胞における発現と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高い発現を有するβチューブリンイソ型の、活性化された内皮細胞のマーカーとしての使用。
【請求項10】
活性化された内皮細胞における発現と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高い発現を有するβチューブリンイソ型の、休止状態の内皮細胞のマーカーとしての使用。
【請求項11】
マーカーは、治療剤に対する応答を予測するために、および/または、疾患の進行をモニターするために使用することができる、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定する方法であって、この方法は、
(a)活性化された内皮細胞と、休止状態の内皮細胞との間で示差的に発現されるβチューブリンイソ型を提供すること、
(b)候補作用因を(a)におけるβチューブリンイソ型に加えること、および
(c)βチューブリンイソ型に対する候補作用因の結合についてアッセイすること
を含み、
ただし、βチューブリンイソ型に結合する候補作用因が、活性化された内皮細胞または休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因である、方法。
【請求項13】
βチューブリンイソ型の発現は、休止状態の内皮細胞と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高く、その方法により、活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因が特定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
βチューブリンイソ型の発現は、活性化された内皮細胞と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高く、その方法により、休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因が特定される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定する方法であって、この方法は、
(a)活性化された内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)休止状態の内皮細胞における発現と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高い発現を有するβチューブリンイソ型に対する候補作用因の結合についてアッセイすること
を含み、
ただし、βチューブリンイソ型に結合する候補作用因が、活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因である、方法。
【請求項16】
休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定する方法であって、この方法は、
(a)休止状態の内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)活性化された内皮細胞における発現と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高い発現を有するβチューブリンイソ型に対する候補作用因の結合についてアッセイすること
を含み、
ただし、βチューブリンイソ型に結合する候補作用因が、休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因である、方法。
【請求項17】
活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定する方法であって、この方法は、
(a)活性化された内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)細胞の機能的性質に対する候補作用因の影響を明らかにすること
を含み、
ただし、細胞の機能的性質を変化させる候補作用因が、活性化された内皮細胞と選択的に相互作用する作用因である、方法。
【請求項18】
休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因を特定する方法であって、この方法は、
(a)休止状態の内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)細胞の機能的性質に対する候補作用因の影響を明らかにすること
を含み、
ただし、細胞の機能的性質を変化させる候補作用因が、休止状態の内皮細胞と選択的に相互作用する作用因である、方法。
【請求項19】
血管形成および/または血管機能を阻害または促進する作用因を特定する方法であって、この方法は、
(a)活性化された内皮細胞と、休止状態の内皮細胞との間で示差的に発現されるβチューブリンイソ型を提供すること、
(b)候補作用因を(a)におけるβチューブリンイソ型に加えること、および
(c)βチューブリンイソ型に対する候補作用因の結合についてアッセイすること
を含み、
ただし、βチューブリンイソ型に結合する候補作用因が、血管形成および/または血管機能を阻害または促進する作用因である、方法。
【請求項20】
βチューブリンイソ型の発現は、休止状態の内皮細胞と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高く、その方法により、血管形成および/または血管機能を阻害する作用因が特定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
βチューブリンイソ型の発現は、活性化された内皮細胞と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高く、その方法により、血管形成および/または血管機能を促進する作用因が特定される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
血管形成および/または血管機能を阻害する作用因を特定する方法であって、この方法は、
(a)活性化された内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)休止状態の内皮細胞における発現と比較されたとき、活性化された内皮細胞においてより高い発現を有するβチューブリンイソ型に対する候補作用因の結合についてアッセイすること
を含み、
ただし、βチューブリンイソ型に結合する候補作用因が、血管形成および/または血管機能を阻害する作用因である、方法。
【請求項23】
血管形成および/または血管機能を促進する作用因を特定する方法であって、この方法は、
(a)休止状態の内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)活性化された内皮細胞における発現と比較されたとき、休止状態の内皮細胞においてより高い発現を有するβチューブリンイソ型に対する候補作用因の結合についてアッセイすること
を含み、
ただし、βチューブリンイソ型に結合する候補作用因が、血管形成および/または血管機能を促進する作用因である、方法。
【請求項24】
血管形成および/または血管機能を阻害する作用因を特定する方法であって、この方法は、
(a)活性化された内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)細胞の機能的性質に対する候補作用因の影響を明らかにすること
を含み、
ただし、細胞の機能的性質を変化させる候補作用因が、血管形成および/または血管機能を阻害する作用因である、方法。
【請求項25】
血管形成および/または血管機能を促進する作用因を特定する方法であって、この方法は、
(a)休止状態の内皮細胞を提供すること、
(b)候補作用因を(a)における細胞に加えること、および
(c)細胞の機能的性質に対する候補作用因の影響を明らかにすること
を含み、
ただし、細胞の機能的性質を変化させる候補作用因が、血管形成および/または血管機能を促進する作用因である、方法。
【請求項26】
細胞の機能的性質には、下記のいずれか1つまたは複数が含まれる、請求項17,18,24および25のいずれかに記載の方法:
(a)細胞の増殖、
(b)細胞の遊走、
(c)細胞が毛細管を形成することができること、
(d)細胞が血管形成に関与することができること、
(e)細胞が細胞同士の接触を維持することができること、
(f)細胞が機能的な血管を持続することができること、および
(g)αサブユニットが存在するとき、細胞内に存在するβチューブリンイソ型が重合することができること。
【請求項27】
βチューブリンイソ型はβIチューブリンである、請求項2,4,7および9のいずれかに記載の使用または請求項13,15,17,20および22のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
βチューブリンイソ型はβIIIチューブリンである、請求項3,5,8および10のいずれかに記載の使用または請求項14,16,18,21および23のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
請求項12〜28のいずれかに記載の方法によって特定されるときの作用因。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−501805(P2011−501805A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527293(P2010−527293)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001467
【国際公開番号】WO2009/043104
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(502386053)バイオノミックス リミテッド (13)
【Fターム(参考)】