説明

内装材の換気構造

【課題】屋内の水や湿気の多い場所に取り付けて使用される内装材に錆、カビ、結露等が発生しにくくすること。
【解決手段】 屋内の壁面4に取着され且つ内装材を前記壁面4から前方に浮かせた状態で取り付ける取付部材6と、前記内装材の裏面と前記壁面4との間に形成される裏面側空間22と、この裏面側空間22を前記内装材が取り付けられる屋内空間に連通させるための換気通路部30とを備えた内装材の換気構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装材の換気構造に関し、詳しくは屋内の壁面に取り付けて使用される内装材に、水や湿気により錆やカビが発生するのを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属系サイディング材や窯業系サイディング材からなる外装材の目地部を、ジョイナを介して連結すると共に、ジョイナと外装材との隙間に、ポリウレタン等の軟質の合成樹脂発泡体からなるパッキング部を圧縮変形させた状態で挿入した目地構造が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
一方、屋内の壁面に取り付ける内装材として、金属成形品の裏面に断熱材を貼り付けた金属板を使用するケースが増えている。特に浴室のような水や湿気の多い場所に金属板を取り付けて使用する場合は、金属板の端部の金属切断面や断熱材に水や湿気が回り込まないように、金属板の端部を止水構造にする必要がある。この場合、従来の外壁材の目地構造をそのまま適用すると、圧縮変形させた軟質の合成樹脂発泡体が高湿度が毎日続く環境下に常に晒されて、長年使用することで合成樹脂発泡体が劣化し、防水効果が低下する。金属板の金属切断面と、裏面に貼り付けた吸水性を有する断熱材は、水や湿気と接すると、錆が発生したり、カビの原因になったりするおそれがある。そのため金属板の使用が制限されている。
【0004】
なお、目地部にシリコンコーキングを塗布して水の進入を防止する技術もあるが、コーキング劣化による水進入が発生する場合がある。このため屋内の特に浴室に使用することには適さない。
【0005】
そこで、浴室のような水や湿気の多い場所に金属板などの内装材を取り付けて使用する場合に、錆、カビ、結露の発生を防止することが重要な課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−26168号公報
【特許文献2】特開平6−26167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、屋内の水や湿気の多い場所に取り付けて使用される内装材に錆、カビ、結露等が発生しにくくできる内装材の換気構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明は、屋内の壁面に取り付けられた内装材の換気構造であって、前記壁面に取着され且つ前記内装材を前記壁面から前方に浮かせた状態で取り付ける取付部材と、前記内装材の裏面と前記壁面との間に形成される裏面側空間と、この裏面側空間を前記内装材が取り付けられる屋内空間に連通させるための換気通路部とを備えることを特徴としている。
【0009】
また、前記取付部材に、前記換気通路部を一体に形成するのが好ましい。
【0010】
また、前記取付部材は、前記内装材の端部に嵌合される断面溝型の嵌合部を備えており、前記内装材の端部表面とこれに接する前記嵌合部の前面部分との隙間に、吸水時に膨張する樹脂材料よりなる水膨張性樹脂を介在させるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、内装材を屋内の水や湿気の多い場所に取り付けて使用する場合でも、内装材に錆、カビ、結露等が発生しにくくできるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の内装材として使用される金属板の換気構造の一実施形態を示している。(a)は図2のA−A線に沿う断面図であり、(b)は図2のB−B線に沿う断面図である。
【図2】同上の金属板を浴室の壁面に取り付けた一例を示す斜視図である。
【図3】図2のC−C線に沿う断面図である。
【図4】内装材の他例としてセメント硬化物からなる窯業系板材を用いた例を示し、(a)は最上部の窯業系板材の上端部付近の断面図であり、(b)は最下部の窯業系板材の下端部付近の断面図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態を示し、取付部材に一体に形成された換気通路部付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図2は浴室の壁面に内装材として金属板1を取り付けた状態を示している。なお図1(a)は図2のA−A線に沿う断面図、図1(b)は図2のB−B線に沿う断面図、図3は図2のC−C線に沿う断面図である。
【0015】
以下において、壁面4とは、浴室に既に構築されている壁パネル5の表面を指す。なお、壁面4は、壁パネル5の表面以外に壁下地の表面も含むものとする。
【0016】
内装材として使用される金属板1は、図1に示すように、薄肉の金属成形品2の裏面に断熱材3を貼り付けて構成される。金属成形品2は、例えば薄肉の断面波形状に形成されている。断熱材3は吸水性を有する発泡性樹脂等からなる。
【0017】
金属板1を壁面4に取り付ける取付部材6は、金属板1の上下両端部1a,1bのいずれか一方に嵌合される断面溝型の嵌合部7と、浴室の壁面4に固定される固定部12とが一体に構成されている。
【0018】
取付部材6は、第1取付部材6Aと、第2取付部材6Bの2種類からなる。
【0019】
第1取付部材6Aは、図1に示すように、金属板1の上端部1b又は下端部1aのいずれか一方を壁面4に取り付けるための役物として使用される。本例の第1取付部材6Aは、前側フランジ板8と後側フランジ板9と連結板10とからなる断面溝型の嵌合部7を備えた長尺部材で構成される。嵌合部7の後側フランジ板9は壁面4に固定される固定部12を兼用している。
【0020】
第2取付部材6Bは、図3に示すように、上下に隣合う金属板1の端部1a,1b同士を互いに連結し且つこれらを壁面4に取り付けるための役物として使用される。本例の第2取付部材6Bは、断面溝型の第1嵌合部7Aと、該第1嵌合部7Aと反対方向に開口した断面溝型の第2嵌合部7Bとを一体に備えた長尺部材で構成される。第1及び第2嵌合部7A,7Bは、それぞれ、前側フランジ板8と後側フランジ板9とこれらを連結する連結板10とからなる。前側フランジ板8の下半部と連結板10の下面と後側フランジ板9の下半部とで、下方に開口した断面溝型の第1嵌合部7Bが構成される。前側フランジ板8の上半部と連結板10の上面と後側フランジ板9の上半部とで、上方に開口した断面溝型の第2嵌合部7Aが構成される。また、各嵌合部7の後側フランジ板9は、それぞれ、壁面4に固定される固定部12を兼用している。
【0021】
上記取付部材6(6A,6B)の嵌合部7(7A,7B)の前側フランジ板8は、それぞれ、折り曲げ可能な材料で形成されている。これにより、嵌合部7の開口幅が可変可能となり、取付部材6は異なる金属板1の厚みに対応できるようになっている。
【0022】
上記嵌合部7の内面には、図1、図3に示すように、金属板1の端部表面1cと前側フランジ板8とが接する隙間部分に、水膨張性樹脂14が介在されている。水膨張性樹脂14は、金属板1の端部表面1cの全幅に亘って延びており、接着剤を用いて動かないように貼着してある。この水膨張性樹脂14は、吸水時に膨張する樹脂材料、例えば水膨張性ポリエーテル型ポリウレタンエラストマーからなる。水膨張性樹脂14は、吸水時に膨張することで断熱材3の端面3a側(図1、図3参照)から水や湿気が進入するのを防止する働きをする。
【0023】
なお、断熱材3の裏面には全面に亘ってアルミシート15が貼り付けてあり、裏面側からの水や湿気の進入が防がれている。
【0024】
上記取付部材6の後側フランジ板9と壁面4との間には、スペーサ部材23が介在されている。このスペーサ部材23は、金属板1を壁面4の前方に浮かせて配置するためのものである。スペーサ部材23により、金属板1の裏面と壁面4との間には裏面側空間22が形成される。この裏面側空間22は、後述する換気通路部30を介して浴室空間16と連通している。本例では、取付部材6の後側フランジ板9と壁面4との間にスペーサ部材23を挟み込んである。そして釘11を後側フランジ板9からスペーサ部材23を貫通して壁面4に打入することで、裏面側空間22を確保した状態で取付部材6が壁面4に対して固着される。
【0025】
本例のスペーサ部材23は、横方向に長く連続しておらず、横方向に複数個、間隔をあけて配置される。裏面側空間22は隣合うスペーサ部材23間の隙間から換気通路部30を通じて浴室空間16に連通している。なお、スペーサ部材23を横方向に長く連続させてもよい。この場合、スペーサ部材23の一部に凹み或いは孔を設け、該凹み或いは孔を通じて、裏面側空間22と換気通路部30とを連通させれるようにすればよい。
【0026】
上記換気通路部30は、金属板1の下方及び上方にそれぞれ設けられている。上部側の第1取付部材6Aは、図1(a)に示すように、天井面17から離して配置され、この天井面17と第1取付部材6Aとの隙間が上側の換気通路部30となっている。下部側の第1取付部材6Aは、図1(b)に示すように、床面18の上方に浮かせて配置され、この床面18と第1取付部材6Aとの隙間が下側の換気通路部30となっている。
【0027】
次に、上記金属板1の施工手順の一例を説明する。
【0028】
金属板1の表面を浴室空間16に向けた状態で、複数の金属板1を壁面4の下から上に順に取り付けていく。
【0029】
先ず最下部の金属板1の下端部1aは、図1(b)に示すように、第1取付部材6Aを用いて取り付ける。第1取付部材6Aを床面18から離した位置で、後側フランジ板9をスペーサ部材23を介して釘11で壁面4に固定する。第1取付部材6Aを床面18から離して取り付けることで、第1取付部材6Aと床面18との間に換気通路部30が形成される。その後、上に開口した嵌合部7に金属板1の下端部1aを嵌め込み、金属板1の端部表面1cと前側フランジ板8の内面との隙間に水膨張性樹脂14を介在させる。
【0030】
次に、上下に隣合う金属板1の端部1a,1b同士の取り付けは、図3に示すように、第2取付部材6Bを用いて行う。第2取付部材6Bの後側フランジ板9をスペーサ部材23を介して釘11で壁面4に固定する。その後、下向きに開口した第1嵌合部7Bに下段の金属板1の上端部1bを嵌合させ、上向きに開口した第2嵌合部7Aに上方から上段の金属板1の下端部1aを嵌合させる。さらに、金属板1の端部表面1cと嵌合部7の前側フランジ板8との隙間に水膨張性樹脂14を介在させる。
【0031】
最後に、最上部の金属板1の上端部1bの取り付けは、前述の金属板1の下端部1aの取り付けと同じ要領で、図1(a)に示すように、第1取付部材6Aを用いて行う。このとき、第1取付部材6Aを天井面17から離して取り付けることで、第1取付部材6Aと天井面17との間に換気通路部30が形成される。また、下に開口した嵌合部7に金属板1の上端部1bを嵌め込み、水膨張性樹脂14を介在させる。
【0032】
しかして、金属板1を屋内の壁面4に取り付けた状態で、金属板1の裏面側に裏面側空間22が形成されると共に、金属板1の上下両端側にそれぞれ換気通路部30が形成される。これにより、浴室空間16を換気することによって、裏面側空間22の水や湿気が換気通路部30を通じて浴室空間16に抜けていくので、裏面側空間22に水や湿気が溜まりにくくなる。
【0033】
しかも、浴室空間16を換気すると、裏面側空間22に対向する壁面4の表面温度が浴室内温度とほぼ同じになるので、温度差に起因する結露が発生しにくくなり、結露やカビ、ダニなどが発生するのを防止することが可能になる。
【0034】
さらに、金属板1の表裏両面は金属成形品2とアルミシート15とで防水されている。一方、金属板1の端面には取付部材6の嵌合部7が嵌合していると共に、金属板1の端部表面1cと嵌合部7の前側フランジ板8との隙間に水膨張性樹脂14を介在させている。従って、嵌合部7内に水や湿気が進入すると水膨張性樹脂14で吸い取られ、このとき水膨張性樹脂14が吸水によって膨張することで、当該隙間が完全に塞がれることで止水効果が増大する。これにより、金属板1の端面において金属成形品2の切断面と断熱材3の端面3aとが防水されるので、金属切断面2aで錆が生じにくくなり、断熱材3の端面3aから水や湿気が染み込んで、断熱材3に反りが生じにくくなる。
【0035】
この結果、浴室のような水や湿気の多い場所に金属板1を取り付けて使用する場合であっても、金属板1の錆、カビ、結露の発生を防止できるものである。
【0036】
また、取付部材6(6A,6B)を取り付ける釘11は、金属板1の背後に隠れて前方から見えないため、すべての金属板1が良好な表面意匠を有するものとなる。
【0037】
また本例では、取付部材6の嵌合部7の前側フランジ板8を折り曲げ可能な材料で構成しているので、前側フランジ板8を折り曲げて嵌合部7の開口幅を可変させることができる。これにより、取付部材6は異なる金属板1の厚みに容易に対応できるようになる。また、取付部材6の嵌合部7の後側フランジ板9は、壁面4に固定される固定部12を兼ねている。従って、固定部12を別途設ける必要がなくなり、取付部材6の構造を簡素化できる。
【0038】
さらに、金属板1を既存の壁面4から浮かして施工するので、リフォーム時には既存の壁面4をそのまま残して、金属板1の新規設置や交換等が可能となるため、リフォームが容易になる利点もある。
【0039】
図4は内装材として、吸水性を有するセメント硬化物25の表面を防水被膜26で覆った窯業系板材27の取付構造を示している。裏面側空間22及び換気通路部30を備える点、及び、取付部材6とスペーサ部材23を備える点は、図2の実施形態と同様であり、図2と対応する部位には同一符号を付しておく。本例では、窯業系板材27の背後に換気通路部30と連通する裏面側空間22を設けていることで、裏面側空間22に水や湿気が溜まりにくく、結露によるカビ、ダニ等の発生を防止できる効果が得られる。また、釘11が露出しない良好な表面意匠を有する効果も得られる。さらに、セメント硬化物25の表面が防水被膜26で覆われていると共に、セメント硬化物25の裏面及び実部40にも同様な防水被膜(図示せず)が施されている。セメント硬化物25の端面25a側に第1取付部材6Aの嵌合部7を嵌め込み、水膨張性樹脂14を介在させることで、該端面25aからの水や湿気の進入を防止できるものである。
【0040】
図5は、取付部材6の他の実施形態であり、嵌合部7の外側であって、嵌合部7の開口方向と反対方向に中空枠状の固定部12を一体に突出させてある。固定部12が天井面17に釘やビス(図示せず)を用いて固着可能とされる。固定部12の内部には換気通路部30が一体に形成されており、この換気通路部30を介して裏面側空間22と浴室空間16とが互いに連通している。他の構成は、図1(a)の実施形態と同様であり、対応する部位には同一符号を付しておく。本例では、取付部材6の固定部12内に形成した換気通路部30が裏面側空間22と屋内空間とを連通させるので、取付部材6が換気通路部30を兼ねる構造となる。本例の取付部材6は、金属板1に限らず、図4の窯業系板材27にも同様に適用可能である。
【0041】
前記図2において、内装材(金属板1或いは窯業系板材27)を壁コーナー部19を挟んで直交する2つの壁面4,4aの一方のみに取り付ける場合を図示したが、これに限らず、2つの壁面4,4aにそれぞれ取り付けてもよいものである。また、内装材を壁面4の全体に取り付ける場合に限らず、壁面4の一部に部分的に取り付けてもよく、いずれの場合も、内装材が浴室のインテリア、仕上げ用の飾り壁として機能するようになる。
【0042】
また、内装材を取り付ける壁面4として、既に構築されている壁パネル5の壁面4を例示したが、これに限らず、壁下地の表面に直接、内装材を取り付けることも可能である。
【0043】
また、水や湿気の多い場所として浴室空間16を例示したが、浴室以外の洗面室などの水廻り設備にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 金属板
2 金属成形品
3 断熱材
4 壁面
6 取付部材
7 嵌合部
12 固定部
14 水膨張性樹脂
17 天井面
18 床面
19 壁コーナー部
22 裏面側空間
23 スペーサ部材
25 セメント硬化物
26 防水被膜
27 窯業系板材
30 換気通路部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内の壁面に取り付けられた内装材の換気構造であって、前記壁面に取着され且つ前記内装材を前記壁面から前方に浮かせた状態で取り付ける取付部材と、前記内装材の裏面と前記壁面との間に形成される裏面側空間と、この裏面側空間を前記内装材が取り付けられる屋内空間に連通させるための換気通路部とを備えることを特徴とする内装材の換気構造。
【請求項2】
前記取付部材に、前記換気通路部を一体に形成したことを特徴とする請求項1記載の内装材の換気構造。
【請求項3】
前記取付部材は、前記内装材の端部に嵌合される断面溝型の嵌合部を備えており、前記内装材の端部表面とこれに接する前記嵌合部の前面部分との隙間に、吸水時に膨張する樹脂材料よりなる水膨張性樹脂を介在させたことを特徴とする請求項1又は2記載の内装材の換気構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−46959(P2012−46959A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190021(P2010−190021)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】