説明

内視鏡システム及びその光源制御方法

【課題】特殊光観察時における術者の手間を減らす。
【解決手段】光源装置13の広帯域光源30から出射される広帯域光BBの光路に、Dミラー32及び集光レンズ35を順番に配置する。Dミラー32に向けて青色(B)狭帯域光Bnを出射する青色LD31を設ける。プロセッサ装置12に、電子内視鏡11による撮影で得られた特殊光画像データに基づき、被観察部位の種類を判別する部位判別部57を設ける。プロセッサ装置12のCPU54は、部位判別部57の判別結果に基づき、広帯域光BB及びB狭帯域光Bnが被観察部位の種類毎に予め定められた光量比で出射されるように、広帯域光源30及び青色LD31を制御する。これにより、照明光の切り替えを自動的に行うことができるので、術者の手間を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食道や胃などの複数の被観察部位の特殊光観察を行う内視鏡システム及びその光源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の狭い波長帯域の光(狭帯域光)を生体組織に照射して、生体組織内の血管などを強調した観察像を得る、いわゆる特殊光観察を行う内視鏡システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。血管(へモグロビン)の光吸収スペクトルは、415nm付近や540nm付近の帯域に吸収ピークを持つため、これらの内視鏡システムでは、狭帯域光として、415nm付近の光吸収率が高い帯域の波長を持つ青色(B)狭帯域光と、540nm付近の光吸収率が高い帯域の波長を持つ緑色(G)狭帯域光を照明光として使用している。
【0003】
血管の光吸収率が高い帯域に対応する狭帯域光を使用すると、観察像においては、血管部分は光が吸収されるため暗く、血管の周辺組織では吸収されずに、散乱、反射するため明るく写る。そして、照明光を狭帯域化することにより、光吸収率が高い帯域から外れる波長が照明光から取り除かれるため、血管部分において散乱、反射する成分が減り、血管とその周辺組織のコントラストが強調された観察像が得られる。
【0004】
また、生体組織内における光の散乱特性は、波長が長いほど低くなるため、波長が長い光ほど生体組織の深層まで到達する(深達度が高い)。そのため、B狭帯域光とより波長が長いG狭帯域光の2種類の狭帯域光を利用することにより、B狭帯域光により、生体組織表面近くの表層にある表層血管を強調した像を得て、G狭帯域光により、より深い中深層の血管を強調した像を得ることができる。
【0005】
特許文献1の内視鏡システムは、白色光源と、青色狭帯域光及び緑色狭帯域光をそれぞれ透過する2種類のバンドパスフィルタが設けられた回転フィルタとを有し、回転フィルタを回転させることにより2種類のバンドパスフィルタが交互に白色光源の光路に挿入されるタイミングに合わせて、イメージセンサにより2種類の狭帯域光による観察像を時分割で撮像する面順次方式の撮像方式が採用されている。面順次方式では、撮像した2枚の観察像を合成することにより、表層及び中深層の血管の両方が強調された観察像がモニタに表示される。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の面順次方式は、2種類の狭帯域光による観察像を順次撮像するため、フレームレートを上げにくいという問題がある。この問題の解決策として、例えば2種類の狭帯域光を同時に照射して、各狭帯域光による観察像を同時に取得する混合同時照射方式が検討されている(特許文献2参照)。混合同時照射方式によれば面順次方式に比べてフレームレートを上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−170009号公報
【特許文献2】特開2009−207584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特殊光観察では、被観察部位の種類によって観察対象が異なるので、観察対象をより見易くするために照明光の切り替えを行うのが通常である。例えば、食道には表層血管が集まっており、この表層血管を観察し易くするため、食道の特殊光観察では、B狭帯域光の光量をG狭帯域光の光量よりも増加させた照明光が用いられる。また、食道と胃との接合部にある噴門には中深層血管が集まっているので、噴門の特殊光観察ではG狭帯域光の光量をB狭帯域光の光量よりも増加させた照明光が用いられる。さらに、胃の特殊光観察では、暗部が奥まで広がっている胃の観察像を明るくするために、両狭帯域光に白色光を加えた照明光が用いられる。
【0009】
このような照明光の切り替えは手動で行う必要があるので、特に食道から胃までの特殊光観察を連続して行う場合には術者の手間が増えるという問題が発生する。
【0010】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、照明光の切替操作を行うことなく、被観察部位の種類に応じた最適な照明光で特殊光観察を行うことができる内視鏡システム及びその光源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の内視鏡システムは、特殊光観察に用いる複数種類の照明光のいずれかを選択的に出射する光源と、被検体内に挿入される挿入部を有し、前記光源から出射された前記照明光を挿入部先端部から前記被検体内の被観察部位へ照射する内視鏡と、前記被観察部位の種類を判別する部位判別手段と、前記部位判別手段が判別した前記被観察部位の種類に応じて、前記種類毎に予め定められた前記照明光を出射するように前記光源を制御する光源制御手段と、前記照明光が照射された前記被観察部位を撮像して観察像を得る撮像手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
前記複数種類の照明光は、少なくとも第1光と第2光とを光量比を変えて混合してなる複数種類の混合光であり、前記光源制御手段は、前記部位判別手段が判別した前記被観察部位の種類に応じて、予め定められた光量比の前記混合光を出射するように前記光源を制御することが好ましい。
【0013】
前記第1光は特定の波長帯域に制限された狭帯域光であるとともに、前記第2光は白色の広帯域光であり、前記光源制御手段は、前記部位判別手段の判別結果に応じて、前記狭帯域光の光量を前記広帯域光の光量よりも増加させた第1照明モードと、前記狭帯域光の光量と前記広帯域光の光量とがほぼ等しくなる第2照明モードと、前記狭帯域光の光量を前記広帯域光の光量よりも減少させた第3照明モードとのいずれかの照明モードで前記光源を制御することが好ましい。
【0014】
前記狭帯域光は、ヘモグロビンの光の吸収スペクトルの吸収ピークに対応する波長を有する青色狭帯域光であり、前記光源制御手段は、前記部位判別手段が判別した前記被観察部位が食道である場合には前記第1照明モードを選択し、前記被観察部位が噴門である場合には前記第2照明モードを選択し、前記被観察部位が胃である場合には前記第3照明モードを選択することが好ましい。
【0015】
前記観察像を表示するモニタと、前記観察像のR,G,B画素値を、前記モニタのR,G,Bチャンネルの中で前記照明モードの種類に応じて予め定められたチャンネルに出力する表示制御手段と、を備えることが好ましい。
【0016】
前記表示制御手段は、前記第1〜第2照明モード時には前記B画素値を前記B,Gチャンネルに出力するとともに、前記G画素値を前記Rチャンネルに出力することが好ましい。また、前記表示制御手段は、前記第3照明モード時には前記R,G,B画素値をそれぞれ前記R,G,Bチャンネルに出力することが好ましい。
【0017】
前記第1照明モード時に、前記観察像の画像データに対して、高周波数成分を強調する高域通過フィルタ処理を施す高域通過フィルタ処理手段を備えることが好ましい。また、前記第2照明モード時に、前記観察像の画像データに対して、予め指定された範囲内の中周波数成分を強調する帯域通過フィルタ処理を施す帯域通過フィルタ処理手段を備えることが好ましい。
【0018】
前記部位判別手段は、前記観察像の画像データを解析することにより、前記被観察部位の種類を判別することが好ましい。また、前記部位判別手段は、前記観察像に表層血管が多く集まっている場合には前記被観察部位が食道であると判別するとともに、前記観察像に中深層血管が多く集まっている場合には前記被観察部位が噴門であると判別することが好ましい。
【0019】
また、本発明の内視鏡システムの光源制御方法は、特殊光観察に用いる複数種類の照明光のいずれかを選択的に出射する光源から出射された前記照明光を挿入部先端部から前記被検体内の被観察部位へ照射する第1ステップと、前記被観察部位の種類を判別する第2ステップと、前記第2ステップで判別した前記被観察部位の種類に応じて、前記種類毎に予め定められた前記照明光を出射するように前記光源を制御する第3ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の内視鏡システム及びその光源制御方法は、被観察部位の種類を判別して、この種類毎に予め定められた照明光を被観察部位へ照射するので、照明光の切替操作を行うことなく、被観察部位の種類に応じた最適な照明光で特殊光観察を行うことができる。その結果、術者の手間を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】内視鏡システムの概略図である。
【図2】電子内視鏡の挿入経路を説明するための説明図である。
【図3】内視鏡システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】マイクロフィルタの機能を説明するための説明図である。
【図5】データテーブルの説明図である。
【図6】特殊光観察処理の流れを示したフローチャートである。
【図7】特殊光観察モード時の光源装置を示すブロック図である。
【図8】カラーチャンネル割当が「特殊割当」に設定されたときのモニタの表示を説明するための説明図である。
【図9】食道の観察像の一例を示したものである。
【図10】噴門の観察像の一例を示したものである。
【図11】部位検出部が噴門を認識する処理の他実施形態を説明するための説明図である。
【図12】カラーチャンネル割当が「通常割当」に設定されたときのモニタの表示を説明するための説明図である。
【図13】胃の観察像の一例を示したものである。
【図14】特殊光画像データに空間周波数処理を施す第2実施形態の内視鏡システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図15】B狭帯域光と広帯域光との光量比を調整可能にした他実施形態の内視鏡システムの電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
図1に示すように、内視鏡システム10は、患者体内の被観察部位を撮像する電子内視鏡11と、電子内視鏡11により得られた撮像信号に基づいて被観察部位の観察像を生成するプロセッサ装置12と、被観察部位を照明する照明光を電子内視鏡11へ出射する光源装置13と、観察像を表示するモニタ14とを備えている。この内視鏡システムは、特に被観察部位として食道、噴門、胃の特殊光観察を行う際に用いられる。
【0023】
内視鏡システム10では、大別して、体内を白色光などの広帯域光で照明することで被観察部位を全体的に観察する通常観察モードと、被観察部位を波長帯域が制限された狭帯域光で照明して血管などを強調表示した状態で観察する特殊光観察モードとの2つの観察モードを有している。
【0024】
また、特殊光観察モードでは、被観察部位の種類に応じて、食道の特殊光観察に適した照明光を用いる第1照明モードと、噴門の特殊光観察に適した照明光を用いる第2照明モードと、胃の特殊光観察に適した照明光を用いる第3照明モードとのいずれかが選択的に実行される。
【0025】
電子内視鏡11は、体内に挿入される可撓性の挿入部16と、挿入部16の基端部に連設され、電子内視鏡11の把持及び挿入部16の操作に用いられる操作部17と、操作部17をプロセッサ装置12及び光源装置13にそれぞれ接続するユニバーサルコード18とを備えている。
【0026】
挿入部16の先端部位である挿入部先端部16aには、管内の照明や撮影に用いられる光学系、イメージセンサなどが内蔵されている。また、挿入部先端部16aの先端面には、観察窓19(図3参照)、照明窓20(図3参照)の他に、図示は省略するが送気送水ノズル、挿入部16内に挿通された鉗子チャネルの出口となる鉗子出口等が設けられている。挿入部先端部16aの後端には、湾曲自在な湾曲部16bが連設されている。
【0027】
操作部17には、アングルノブ21、操作ボタン22、鉗子入口23などが設けられている。アングルノブ21は、挿入部16の湾曲方向及び湾曲量を調整する際に回転操作される。操作ボタン22は、送気・送水や吸引等の各種の操作に用いられる。鉗子入口23は鉗子チャネルに連通している。
【0028】
ユニバーサルコード18には、送気・送水チャンネル、信号ケーブル、及びライトガイドなどが組み込まれている。このユニバーサルコード18の先端部にはコネクタ部25aが設けられている。このコネクタ部25aは光源装置13に接続する。また、コネクタ部25aからはコネクタ部25bが分岐している。このコネクタ部25bはプロセッサ装置12に接続する。
【0029】
図2に示すように、電子内視鏡11は、挿入部16が患者Hの口から体内に挿入される、いわゆる上部消化管内視鏡であり、図中の矢印で示すように食道E、噴門C、胃Sなどの各上部消化管の内部を順番に撮影する。
【0030】
図3に示すように、光源装置13は、広帯域光源30と、青色半導体レーザ装置(以下、単に青色LDという)31と、ダイクロイックミラー(以下、単にDミラーという)32と、可動絞り(以下、単に絞りという)34a,34bと、集光レンズ35と、ミラーシフト機構36と、光源駆動制御部37とを備えている。
【0031】
広帯域光源30は、例えばキセノンランプ、白色LED、マイクロホワイト光源(中心波長445nmの光を出射する光源と、この光の照射により励起発光する蛍光体とのセット)などが用いられ、波長が赤色領域から青色領域(約470〜700nm)にわたる白色の広帯域光BBを発生する。広帯域光源30は、広帯域光BBを常時出射する。そして、広帯域光源30から出射される広帯域光BBの光路の上流側から下流側に向かって、Dミラー32及び集光レンズ35が順に配置されている。
【0032】
青色LD31は、特殊光観察モード時に、青色の特定の波長帯域(例えば中心波長405nm)に制限された青色(B)狭帯域光BnをDミラー32に向けて出射する。このB狭帯域光Bnの光路は、広帯域光BBの光路と略直交している。なお、B狭帯域光Bnの光源として青色LDの代わりに、青色LEDなどを用いてもよい。
【0033】
B狭帯域光Bnの波長帯域は、ヘモグロビンの光の吸収スペクトルの吸収ピーク(415nm付近)にあわせて調整されている。生体組織の光散乱特性に関する知見などから、照射された光の波長が470nm付近を超えなければ、表層血管では照射された光のほとんどが吸収されて挿入部先端部16aに返らない。逆に表層血管の周辺の生体組織では、比較的強い散乱特性によって照射された光の多くが反射して挿入部先端部16aにまで返る。これにより、表層血管とその周辺の生体組織とのコントラストが極めて高くなるため、表層血管を十分に強調表示することができる。
【0034】
一方、中深層血管の強調表示は、上記特許文献1に記載のように緑色狭帯域光を用いることなく、広帯域光BBに含まれる波長が約500nm〜600nm付近の緑色光を用いて行われる。生体組織の光散乱特性に関する知見などから、照射された光の波長が500nm〜600nm付近の間では、光が表層血管よりも深部にある中深層血管に到達する。この光は中深層血管では吸収される一方で、中深層血管の周辺の生体組織では反射及び散乱される。その結果、中深層血管とその周りの生体組織とのコントラストが高くなるため、中深層血管などを十分に強調表示することができる。
【0035】
なお、広帯域光BBには緑光以外の光も含まれているが、中深層血管を強調表示可能な波長帯域は、表層血管を強調表示可能な波長帯域よりも十分に広い。このため、緑光以外の光の影響による中深層血管のコントラスト低下は最小限に抑えられる。逆に本実施形態では、特許文献1のように緑色狭帯域光を出射する狭帯域光源を別途設ける必要が無くなるので、省スペース化ならびに低コスト化が図れる。
【0036】
Dミラー32は、広帯域光BBの光路と、青色LD31から出射されるB狭帯域光Bnの光路とが交差する位置(以下、交差位置という)に進退自在に配置される。Dミラー32は、B狭帯域光Bnは反射するがこれ以外の波長の光は透過させる。これにより、広帯域光BBの大部分はDミラー32を透過して集光レンズ35に入射する。また、B狭帯域光BnはDミラー32により反射されて集光レンズ35に入射する。
【0037】
絞り34aは、広帯域光源30の前方に配置されており、広帯域光源30から出射する広帯域光BBの光量を調整する。絞り34bは、青色LD31の前方に配置されており、青色LD31から出射するB狭帯域光Bnの光量を調整する。
【0038】
集光レンズ35は、Dミラー32から入射した広帯域光BB、B狭帯域光Bnをライトガイド41に入射させる。ミラーシフト機構36は、Dミラー32を、交差位置と、この交差位置から退避させた退避位置との間で移動自在に保持する。このミラーシフト機構36は、プロセッサ装置12の制御の下、通常観察モード時にはDミラー32を退避位置に移動させ、特殊光観察モード時にはDミラー32を交差位置に移動させる。
【0039】
光源駆動制御部37は、プロセッサ装置12の制御の下、青色LD31からのB狭帯域光Bnの出射/出射停止を制御する。光源駆動制御部37は、通常観察モード時には青色LD31からのB狭帯域光Bnの出射を停止させ、特殊光観察モード時には青色LD31からB狭帯域光Bnを出射させる。
【0040】
また、光源駆動制御部37は、プロセッサ装置12の制御の下、絞り34a,34bを絞り込んだり、あるいは開いたりすることにより、絞り34a,34bの開口部の面積を変えることで、特殊光観察モードの各照明モード時に広帯域光源30及び青色LD31からそれぞれ出射される広帯域光BBとB狭帯域光Bnの光量比を制御する。光源駆動制御部37は、第1照明モード時にはB狭帯域光Bnの光量の方が大きくなり、第2照明モード時には広帯域光BBとB狭帯域光Bnの光量が等しくなり、さらに第3照明モード時には広帯域光BBの光量が大きくなるように、絞り34a,34bの制御を行う。
【0041】
上記各構成により、光源装置13は、通常観察モード時には広帯域光BBをライトガイド41に入射させ、第1〜第3照明モード時にはそれぞれ光量比の異なる広帯域光BBとB狭帯域光Bnとの混合光をライトガイド41に入射させる。
【0042】
電子内視鏡11は、ライトガイド41、CCD型イメージセンサ(以下、CCDという、撮像手段)44、アナログ処理回路(AFE:Analog Front End)45、撮像制御部46を備えている。ライトガイド41は大口径光ファイバ、バンドルファイバなどである。ライトガイド41は、その入射端が光源装置13に挿入されており、その出射端が挿入部先端部16a内に設けられた照射レンズ48に対向している。ライトガイド41から照射レンズ48に入射した照明光は、照明窓20を通して被観察部位に照射される。そして、被観察部位で反射/散乱した光は、観察窓19を通して集光レンズ51に入射する。
【0043】
CCD44は、複数のフォトダイオード52(以下、PD52という、図4参照)が2次元配列された撮像面44aを有しており、集光レンズ51から入射する被写体光を各PD52で電気的な撮像信号に変換してAFE45へ出力する。なお、CCDの代わりにMOS型のイメージセンサを用いてもよい。CCD44には、プロセッサ装置12により制御される撮像制御部46が接続している。CCD44は、撮像制御部46からの駆動信号に基づいて、所定のフレームレートで撮像信号をAFE45へ出力する。
【0044】
図4に示すように、CCD44は、各PD52上に2次元配列された赤色、緑色、青色のマイクロフィルタFR,FG,FBを備えるカラーCCDである。CCD44は、マイクロフィルタFRとその下方(図中では側方、以下同じ)に配置されたPD52とからなるR画素、マイクロフィルタFGとその下方に配置されたPD52とからなるG画素、マイクロフィルタFBとその下方に配置されたPD52とからなるB画素を備える。
【0045】
マイクロフィルタFRは、広帯域光BBのうち、赤色帯域の赤色(R)光を透過させる。マイクロフィルタFGは、広帯域光BBのうち、緑色帯域の緑色(G)光を透過させる。マイクロフィルタFBは、広帯域光BBのうち、青色帯域の青色(B)光を透過させる。各マイクロフィルタFR,FG,FBにより、撮像面44aに入射する光をRGBの3色に分離することができる。なお、B光にはB狭帯域光Bnが含まれる。
【0046】
図3に戻って、AFE45は、図示は省略するが、相関二重サンプリング回路(CDS)、自動ゲイン制御回路(AGC)、及びアナログ/デジタル変換器(A/D)から構成されている。CDSは、CCD44からの撮像信号に対して相関二重サンプリング処理を施してノイズを除去する。AGCは、CDSによりノイズが除去された撮像信号を増幅する。A/Dは、AGCで増幅された撮像信号を、所定のビット数のデジタルな撮像信号に変換してプロセッサ装置12に送る。
【0047】
プロセッサ装置12は、メモリ53と、CPU54と、デジタル信号処理部(Digital Signal Processor:DSP)55と、フレームメモリ56と、部位判別部57と、表示制御回路58と、モード切替スイッチ59とを備えている。メモリ53には、内視鏡システム10を制御するための各種のプログラムやデータの他に、データテーブル61が格納されている。
【0048】
CPU54は、プロセッサ装置12の各部、並びに光源装置13のミラーシフト機構36や光源駆動制御部37に信号線で接続されており、メモリ53から読み出したプログラムやデータに基づき、これらを統括的に制御する。
【0049】
DSP55は、AFE45から入力される撮像信号に対し、ホワイトバランス調整、色調処理、階調処理、シャープネス処理などの信号処理を行う。DSP55は、通常観察モード時には、AFE45から入力されるB撮像信号、G撮像信号、R撮像信号に上記信号処理を施すことによって、B,G,Rの3色の画素値を持つ通常画像データを生成する。この通常画像データはフレームメモリ56に記憶される。
【0050】
一方、DSP55は、観察モードが特殊光観察モードに設定されている場合に、AFE45から入力されるB撮像信号(B狭帯域撮像信号を含む)、G撮像信号、R撮像信号に適宜信号処理を施すことによって、B,G,Rの3色の画素値を持つ特殊光画像データを生成する。この特殊光画像データもフレームメモリ56に記憶される。
【0051】
部位判別部57は特殊光観察モード時に作動する。この部位判別部57は、フレームメモリ56に新たに記憶された特殊光画像データを解析して、被観察部位が食道E、噴門C、及び胃Sのいずれであるかを判別する。例えば、食道Eから胃Sに至る上部消化管の径は、一定ではなく各部においてそれぞれ異なっている。具体的に、上部消化管の径は噴門Cが一番小さくなり、逆に胃Sが一番大きくなる。特殊光画像データにおいて、挿入部先端部16aの進行方向前方に位置する上部消化管の内部空間は暗部BL(図9参照)となる。このため、暗部BLの面積を求めることで、被観察部位の種類を判別することができる。
【0052】
また、食道Eには表層血管が集まるとともに、噴門Cには中深層血管が集まっている。このため、これら表層血管や中深層血管をランドマークとして、被観察部位の種類を判別することができる。
【0053】
例えば部位判別部57は、暗部BLの面積が所定の面積下限値以上かつ面積上限値未満であり、さらに表層血管の密度が所定の密度上限値以上である場合には、被観察部位が食道Eであると判別する。また、部位判別部57は、暗部BLの面積が面積下限値未満でかつ中深層血管の密度が密度上限値以上である場合には、被観察部位が噴門Cであると判別する。そして、部位判別部57は、暗部BLの面積が面積上限値以上である場合には、被観察部位が胃Sであると判別する。この部位判別部57の判別結果は、CPU54に逐次入力される。
【0054】
表示制御回路58は、観察モードが通常観察モードである場合には、フレームメモリ56から通常画像データを読み出し、この通常画像データに基づいてモニタ14に通常画像を表示させる。モニタ14に通常画像を表示する際には、図4に示すように、通常画像データのB,G,Rの3色の画素値を、それぞれモニタ14のBチャンネル、Gチャンネル、Rチャンネルに割り当てて出力する。
【0055】
一方、表示制御回路58は、観察モードが第1〜第2照明モードである場合には、フレームメモリ56から特殊光画像データを読み出し、この特殊光画像データに基づいてモニタ14に特殊光画像を表示させる。この特殊光画像を表示する際には、CCD44のB画素で取得したB画素値をモニタ14のB,Gチャネルに割り当て、G画素で取得したG画素値をモニタ14のRチャネルに割り当てる(図8参照)。モニタ14に表示される特殊光画像の表層血管部分は、B狭帯域光Bnの吸収により画素値が「0」に近くなることで、B,Gチャネルが暗くなり、Rチャネルのみが相対的に明るくなるので、茶色に表示される。また、中深層血管部分は、波長500nm〜600nm付近のG光の吸収によりRチャネルが暗くなるので、B,Gチャネルを混合したシアン色や緑色などで表示される。
【0056】
また、表示制御回路58は、観察モードが第3照明モードである場合には、通常観察モード時と基本的に同様にして、特殊光画像データのB,G,Rの3色の画素値を、それぞれモニタ14のBチャンネル、Gチャンネル、Rチャンネルに割り当てて出力する。
【0057】
モード切替スイッチ59は、例えばプロセッサ装置12のフロントパネルなどに設けられており、内視鏡システム10の観察モードを通常観察モードまたは特殊光観察モードに切り替える際に操作される。CPU54は、モード切替スイッチ59で設定された観察モードの種類に応じて、光源装置13の各部を制御して、この光源装置13から出射される照明光の種類を切り替える。なお、モード切替スイッチ59は、電子内視鏡11の操作部17に設けてもよい。
【0058】
図5に示すように、データテーブル61には、第1〜第3照明モードと、各照明モードにそれぞれ対応した被観察部位(食道E、噴門C、胃S)と、B狭帯域光Bnと広帯域光BBとの光量比(以下、単に光量比という)と、モニタ14の各カラーチャンネルへの各色画素値の割当を示すカラーチャンネル割当とが対応付けて格納されている。
【0059】
カラーチャンネル割当は、通常割当と特殊割当との2種類からなる。通常割当では、画像データのB,G,Rの3色の画素値を、それぞれモニタ14のBチャンネル、Gチャンネル、Rチャンネルに出力する。また、特殊割当では、画像データのB画素値をB,Gチャネルに出力するとともに、G画素値をRチャネルに出力する。これにより、CPU54は、データテーブル61を参照することで、被観察部位の種類から、照明モードと、光量比と、カラーチャンネル割当とをそれぞれ決定することができる。
【0060】
CPU54は、ROMから読み出した各種プログラムを逐次実行することで、出射制御部(光源制御手段)63及び表示制御部64として機能する。出射制御部63は、特殊光観察モード時に作動する。この出射制御部63は、部位判別部57の判別結果に基づき、データテーブル61を参照して、部位判別部57が判別した被観察部位に対応する照明モードと、この照明モードに対応する光量比とを決定し、この決定結果に従って光源駆動制御部37を制御する。これにより、部位判別部57が判別した被観察部位の特殊光観察に適した照明光が光源装置13から出射される。
【0061】
表示制御部64は、特殊光観察モード時に作動する。表示制御部64は、データテーブル61を参照して、出射制御部63が決定した照明モードに対応するカラーチャンネル割当を決定し、この決定結果に従って表示制御回路58を制御する。これにより、被観察部位の種類に応じて、モニタ14に表示される観察像の色調が切り替わる。
【0062】
次に、図6に示すフローチャートを用いて上記構成の内視鏡システム10の作用、特に特殊光観察モード時における動作について詳しく説明する。プロセッサ装置12や光源装置13などの電源がONされて内視鏡検査の準備処理(以下、検査準備処理という)が行われると、CCD44の駆動が開始されるとともに、広帯域光源30から広帯域光BBが出射される。なお、内視鏡システム10は、電源ON時の初期状態では通常観察モードに設定されるが、広帯域光BBを用いた通常観察は従来と基本的に同じであるため、通常観察モードでの検査については説明を省略する。
【0063】
検査準備処理の完了後に、挿入部16を患者Hの口から食道E内に挿入する。そして、食道Eから胃Sまでの特殊光観察を連続して行う場合には、モード切替スイッチ59を特殊光観察モードに切り替える。なお、特殊光観察モードでは、初期状態で例えば第1照明モードが設定される。
【0064】
CPU54は、モード切替スイッチ59が特殊光観察モードに切り替えられたときに、光源装置13のミラーシフト機構36に対して挿入指令を発する。ミラーシフト機構36は、CPU54からの挿入指令を受けて、Dミラー32を交差位置に移動させる。
【0065】
また、特殊光観察モードへの切替と同時に、CPU54の出射制御部63及び表示制御部64が作動する。出射制御部63は、光源駆動制御部37に対して、光量比(Bn:BB=4:1)の情報を含む第1照明モード切替指令を発する。表示制御部64は、新たな特殊光画像データがフレームメモリ56に格納されるまで待機する。
【0066】
図7に示すように、光源駆動制御部37は、出射制御部63からの第1照明モード切替指令を受けて絞り34a,34bを制御して、青色LD31及び広帯域光源30からそれぞれB狭帯域光Bn、広帯域光BBを光量比4:1で出射させる。
【0067】
広帯域光源30から出射された広帯域光BBは、Dミラー32を透過して集光レンズ35に入射する。また、青色LD31から出射されたB狭帯域光Bnは、Dミラー32により集光レンズ35に向けて反射される。これにより、集光レンズ35には、光量比4:1のB狭帯域光Bnと広帯域光BBの混合光(以下、第1混合光という)Bn,BBが入射する。この第1混合光Bn,BBは集光レンズ35を通してライトガイド41に入射する。
【0068】
ライトガイド41に入射した第1混合光Bn,BBは、照射レンズ48を通って照明窓20から食道E内に照射される。これにより、食道E内で反射/散乱した第1混合光Bn,BBが、観察窓19及び集光レンズ51を通ってCCD44に入射する。
【0069】
図8に示すように、CCD44に入射した第1混合光Bn,BBのうち、マイクロフィルタFBに入射したB光やB狭帯域光Bnは、マイクロフィルタFBを透過してその下方に配置されたPD52で受光される。また、マイクロフィルタFGに入射したG光は、マイクロフィルタFGを透過してその下方に配置されたPD52で受光される。さらに、マイクロフィルタFRに入射したR光は、マイクロフィルタFRを透過してその下方に配置されたPD52で受光される。各PD52は、受光した光を電気的な撮像信号に変換してAFE45へ出力する。AFE45は、CCD44からの各色撮像信号に各種信号処理を施して、デジタルな各色撮像信号をプロセッサ装置12のDSP55へ出力する。
【0070】
各色撮像信号は、DSP55により各種信号処理が施された後、特殊光画像データとしてフレームメモリ56に記憶される。そして、表示制御部64は、新たな特殊光画像データがフレームメモリ56に格納されたときに、観察モードが第1照明モードである場合には、データテーブル61を参照してカラーチャンネル割当を特殊割当に決定する。次いで、表示制御部64は、表示制御回路58に対して特殊割当表示指令を発する。
【0071】
表示制御回路58は、表示制御部64からの特殊割当表示指令を受けて、新たにフレームメモリ56に記憶された特殊光画像データを読み出し、特殊光画像データのB画素値をモニタ14のB,Gチャネルに出力するとともに、G画素値をモニタ14のRチャネルへ出力する。これにより、モニタ14に食道E内の観察像66a(図9参照)が表示される。
【0072】
図9に示すように、第1照明モード下ではB狭帯域光Bnの光量を増加させているのでB狭帯域撮像信号が増幅される。その結果、観察像66a中では、食道Eに集まっている表層血管が茶色でより強調表示される。これにより、表層血管を集中的に観察することができる。なお、図中の符号V1は表層血管である。
【0073】
観察像66aの表示と並行して、部位判別部57は、新たにフレームメモリ56に記憶された特殊光画像データを解析して得た暗部BLの面積、茶色で表示される表層血管の密度、及びシアン色や緑色等で表示される中深層血管の密度などに基づき被観察部位の種類を判別し、この判別結果をCPU54へ送る。
【0074】
部位判別部57が被観察部位を食道Eと判別した場合には、上述の第1照明モード下での照明光の出射、特殊光画像データの取得、観察像66aの表示、被観察部位の判別が継続して実行される。
【0075】
一方、挿入部16が食道Eのさらに奥に押し込まれて、挿入部先端部16aが噴門Cの近傍に到達した場合には、観察像66a中の暗部BLの面積と、表層血管の密度とが減少するとともに、中層血管の密度が増加する。このため、部位判別部57は、暗部BLの面積が所定の面積下限値未満となり、かつ中深層血管の密度が所定の密度上限値以上になった場合には、被観察部位が噴門Cであると判別し、この判別結果をCPU54へ送る。
【0076】
出射制御部63は、部位判別部57の判別結果に基づき、データテーブル61を参照して、観察モードを第2照明モードに決定するとともに、光源駆動制御部37に対して、光量比(Bn:BB=1:1)の情報を含む第2照明モード切替指令を発する。
【0077】
光源駆動制御部37は、出射制御部63からの第2照明モード切替指令を受け絞り34a,34bを制御して、光量比Bn:BB=1:1となるように青色LD31及び広帯域光源30からそれぞれ出射されるB狭帯域光Bn、広帯域光BBの光量を調整する。これにより、光量比1:1のB狭帯域光Bnと広帯域光BBの混合光(以下、第2混合光という)Bn,BBが噴門C及びその周辺に照射される。
【0078】
噴門Cの周辺で反射/散乱した第2混合光Bn,BBは、観察窓19などを通してCCD44に入射する。これにより、第1照明モード時と同様に特殊光画像データが生成されてフレームメモリ56に記憶される。
【0079】
表示制御部64は、新たな特殊光画像データがフレームメモリ56に格納されたときに、観察モードが第2照明モードである場合には、データテーブル61の参照結果に基づき、表示制御回路58に対して特殊割当表示指令を発する。これにより、図10に示すように、モニタ14に噴門Cの近傍の観察像66bが表示される。なお、図中の符号V2は中深層血管である。
【0080】
第2照明モードでは第1照明モードよりも広帯域光BBの光量を増加させているので、この広帯域光BB中に含まれる波長500nm〜600nm付近のG光の光量も増加する。その結果、観察像66b中では噴門Cの周辺に集まっている中深層血管がシアン色や緑色等でより強調表示される。これにより、中深層血管を集中的に観察することができる。
【0081】
なお、第1照明モード下では広帯域光BBの光量が少ないため、特殊光画像データを解析しても中深層血管が検出し難い。このため、挿入部先端部16aが噴門Cの近傍に到達したときに、部位判別部57による中深層血管の密度の判定結果が実際の密度よりも低くなった場合には、第2照明モードへの切り替えが遅れるおそれがある。この場合には、噴門Cの周辺の中深層血管が観察し難くなることがある。
【0082】
そこで、図11に示すように、部位判別部57が噴門Cを認識する認識度が100%(例えば、暗部BLの面積が所定の面積下限値「X」未満、かつ中深層血管の密度が所定の密度上限値「Y」以上)に達する前の段階、認識度が例えば20%に達した時に第2照明モードへの切り替えを行ってもよい。なお、認識度20%とは、例えば暗部BLの面積が「2X」未満、かつ中深層血管の密度が「Y/2」以上というような、噴門Cの存在をある程度は予測可能な値である。
【0083】
このように、噴門Cの存在を予測して第2照明モードへの切り替えを早めることで、部位判別部57による中深層血管の検出精度が上がるため、噴門Cを認識する確度が高くなる。その結果、挿入部先端部16aが噴門Cの近傍に到達したときに、迅速に第2照明モードに切り替えられる。なお、この切替時には、認識度に応じて広帯域光BBの光量を徐々に増加させてもよい。
【0084】
図6に戻って、観察像66bの表示と並行して、部位判別部57は、新たにフレームメモリ56に記憶された特殊光画像データを解析して被観察部位の種類を判別し、この判別結果をCPU54へ送る。そして、部位判別部57が被観察部位を噴門Cと判定した場合には、上述の第2照明モード下での照明光の出射、特殊光画像データの取得、観察像66bの表示、被観察部位の判別が継続して実行される。
【0085】
一方、挿入部16がさらに奥に押し込まれて、挿入部先端部16aが胃Sの内部に到達した場合には、胃Sの内部は暗いので観察像66b中の暗部BLの面積が急激に増加する。このため、部位判別部57は、暗部BLの面積が所定の面積上限値以上になった場合には、被観察部位が胃Sであると判別し、この判別結果をCPU54へ送る。
【0086】
出射制御部63は、部位判別部57の判別結果に基づき、データテーブル61を参照して、観察モードを第3照明モードに決定するとともに、光源駆動制御部37に対して、光量比(Bn:BB=1:2)の情報を含む第3照明モード切替指令を発する。
【0087】
光源駆動制御部37は、出射制御部63からの第3照明モード切替指令を受け絞り34a,34bを制御して、光量比Bn:BB=1:2となるように青色LD31及び広帯域光源30の出射光量をそれぞれ制御する。これにより、光量比1:2のB狭帯域光Bnと広帯域光BBの混合光(以下、第3混合光という)Bn,BBが胃Sの内部に照射される。
【0088】
胃Sの内部で反射/散乱した第3混合光Bn,BBは、観察窓19などを通してCCD44に入射する。これにより、第1〜第2照明モード時と同様に特殊光画像データが生成されてフレームメモリ56に記憶される。
【0089】
表示制御部64は、新たな特殊光画像データがフレームメモリ56に格納されたときに、観察モードが第3照明モードである場合には、データテーブル61の参照結果に基づき、表示制御回路58に対して通常割当表示指令を発する。
【0090】
図12に示すように、表示制御回路58は、表示制御部64からの通常割当表示指令を受けて、新たにフレームメモリ56に記憶された特殊光画像データを読み出し、特殊光画像データのB,G,Rの3色の画素値を、それぞれモニタ14のBチャンネル、Gチャンネル、Rチャンネルに出力する。これにより、図13に示すように、モニタ14に胃Sの観察像66cが表示される。
【0091】
第3照明モードでは、第1〜第2照明モードよりも広帯域光BBの光量を増加させているので、暗い胃Sの内部の観察を行う際に、観察像66cが暗くなって見づらくなることが防止される。また、カラーチャンネル割当を「通常割当」に切り替えることで、明るい通常観察像をベースとして表層血管を観察することができるので、暗い胃Sの内部でも表層血管が見づらくなることが防止される。
【0092】
図6に戻って、観察像66cの表示と並行して、部位判別部57は、新たにフレームメモリ56に記憶された特殊光画像データを解析して被観察部位の種類を判別し、この判別結果をCPU54へ送る。そして、部位判別部57が被観察部位を胃Sと判定した場合には、上述の第3照明モード下での照明光の出射、特殊光画像データの取得、観察像66cの表示、被観察部位の判別が継続して実行される。
【0093】
一方、部位判別部57が被観察部位を噴門Cまたは食道Eと判定した場合には、上述の第2照明モード、第1照明モードでの照明光の出射、特殊光画像データの取得、観察像の表示、被観察部位の判別が実行される。これにより、胃Sの観察後に、患者Hの体内から挿入部16を抜く場合には、特殊光観察モードが第3照明モード、第2照明モード、第1照明モードの順番で切り替わる。
【0094】
特殊光観察時に、挿入部先端部16aから照明光が照射される被観察部位の種類に応じてB狭帯域光Bnと広帯域光BBの光量比を変えることにより、光源装置13から出射される照明光の種類を切り替えているので、術者が照明光の切替操作を行うことなく、被観察部位の種類に応じた最適な照明光で特殊光観察を行うことができる。その結果、術者の手間を省くことができる。
【0095】
[第2実施形態]
次に、図14を用いて本発明の第2実施形態の内視鏡システム70について説明を行う。上記第1実施形態の内視鏡システム10では、被観察部位の種類に応じてB狭帯域光Bnと広帯域光BBの光量比を変えているが、内視鏡システム70では、第1実施形態と同様に光量比を変えた上でさらに被観察部位の種類に応じて異なる空間周波数処理を特殊光画像データに施す。なお、内視鏡システム70は、プロセッサ装置71を除けば、第1実施形態の内視鏡システム10と同じ構成であるので、上記第1実施形態と機能・構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0096】
プロセッサ装置71は、基本的には第1実施形態のプロセッサ装置12と同じ構成である。ただし、プロセッサ装置71では、特殊光観察モード時にCPU72が空間周波数処理部(高域通過フィルタ処理手段、帯域通過フィルタ処理手段)73として機能するとともに、メモリ53にデータテーブル74が格納されている。
【0097】
空間周波数処理部73は、部位判別部57による被観察部位の判別結果に基づき、データテーブル74を参照して、フレームメモリ56に格納された特殊光画像データに対して予め定められた空間周波数処理のいずれかを施す。この空間周波数処理には、特殊光画像データの高周波数成分を強調する高域通過フィルタ(High-Pass Filter:HPF)処理と、指定範囲内の中周波数成分を強調する帯域通過フィルタ(Bandwidth-Pass Filter:BPF)処理とがある。なお、空間周波数処理は公知であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0098】
データテーブル74は、基本的に第1実施形態のデータテーブル61と同じであるが、さらに被観察部位(食道E、噴門C、胃S)の種類に、空間周波数処理の「実行の有無」及び「種類」が対応付けて格納されている。具体的に、食道Eの特殊光観察を行う第1照明モードでは「HPF」が設定され、噴門Cの特殊光観察を行う第2照明モードでは「BPF」が設定され、胃Sの特殊光観察を行う第3照明モードでは空間周波数処理を行わない「×」が設定されている。
【0099】
空間周波数処理部73は、食道E内の表層血管を集中的に観察する第1照明モード時には、フレームメモリ56に格納された特殊光画像データに対してHPF処理を施す。HPF処理により表層血管のエッジが強調されるので、第1実施形態よりも表層血管がより強調表示される。
【0100】
また、空間周波数処理部73は、噴門Cの周辺の中深層血管を集中的に観察する第2照明モード時には、フレームメモリ56に格納された特殊光画像データに対してBPF処理を施す。BPF処理により中深層血管が強調されるので、第1実施形態よりも中深層血管がより強調表示される。なお、中深層血管を強調表示可能なBPFの指定周波数の範囲は実験やシミュレーション等で決定される。
【0101】
第1〜第2照明モード時に特殊光画像データに空間周波数処理を施す以外の処理については第1実施形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0102】
[第3実施形態]
上記第1実施形態では、第1〜第3照明モードでそれぞれB狭帯域光Bnと広帯域光BBとの光量比が固定されているが、例えば図15に示すように、データテーブル61の代わりにデータテーブル75をメモリ53に格納することによって、第1〜第3照明モードでそれぞれ光量比を調整可能になる。
【0103】
光量比の調整は、例えばフットスイッチ76などを用いて術者が手動で段階的に行ってもよく、あるいは部位判別部57が判別した暗部BLの面積、表層血管や中深層血管の密度に応じてCPU54が自動的に行ってもよい。各照明モード下における光量比の調整幅は、実験やシミュレーション等で適宜決定される。ここで、フットスイッチ76を用いて光量比の調整を行う場合には、例えばスイッチ操作回数に応じて、光量比を調整可能範囲内で段階的(0.5、0.6、・・・1.5、0.5、・・・)に変化させてもよい。
【0104】
なお、データテーブル75では、広帯域光BBの光量を調整することで光量比の調整を行っているが、B狭帯域光Bnの光量あるいは両光Bn,BBの光量を調整することで光量比の調整を行ってもよい。また、第2実施形態も同様に、第1〜第3照明モードでそれぞれ光量比を調整可能にしてもよい。
【0105】
上記各実施形態では、部位判別部57が判別した被観察部位の種類に応じて照明モードを自動的に切り替えているが、この切り替えを手動で行う手動切替モードを別途に設けてもよい。
【0106】
上記各実施形態では、カラーイメージセンサとして1CCD方式のCCD44を用いているが、この代わりに3個のCCDとプリズムとからなる、いわゆる3CCD方式を採用してもよい。また、上記各実施形態では、プロセッサ装置のCPUにより光源装置の各部を制御しているが、これら各部を制御するCPU等の制御部を光源装置に設けてもよい。
【0107】
上記各実施形態では、特殊光観察モード時に、被観察部位に応じて光量比が異なるB狭帯域光Bnと広帯域光BBとの混合光を光源装置13から出射しているが、例えば照明光として広帯域光BBの代わりに緑色狭帯域光を用いてもよい。また、被観察部位に応じて、光量比が異なる3種類以上の各種照明光の混合光を出射する場合にも本発明を適用することができる。
【0108】
上記各実施形態では、被観察部位として食道Eから胃Sまでの上部消化管を例にあげて説明を行ったが、例えば体内の各種被観察部位を観察する内視鏡システムにも本発明を適用することができる。
【0109】
上記各実施形態の部位判別部57は、特殊光画像データを解析することにより照明光が照射される被観察部位の種類を判別しているが、各種方法を用いて被観察部位の種類を判別してもよい。例えば、被観察部位のPHの検出結果に基づいて被観察部位の種類を判別することができる(特許3321235号参照)。また、例えばコンピュータ断層撮影(CT)装置を利用するなど、患者体内での挿入部先端部16aの位置を検出する各種位置検出方法を用いても、被観察部位の種類を判別することができる。また、食道E及び胃S内部の形状や、噴門Cの形状などの単純なパターン認識で被観察部位の種類を判別してもよい。
【0110】
上記各実施形態では、光源装置13から電子内視鏡11へ広帯域光BBやB狭帯域光Bnを出射しているが、これら両光の光源である広帯域光源30及び青色LD31を挿入部先端部16a内に設けてもよい。
【0111】
上記各実施形態では、表層血管や中深層血管の特殊光観察を行う内視鏡システムについて例に挙げて説明を行ったが、特定の波長の光を利用して行う蛍光観察(Auto Fluorescence Imaging)、赤外光観察(Infra Red Imaging)、光線力学的診断(Photodynamic diagnosis)などの各種特殊光観察に用いられる内視鏡システムに本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0112】
10,70 内視鏡システム
11 電子内視鏡
12,71 プロセッサ装置
13 光源装置
14 モニタ
30 広帯域光源
31 青色LD
34a,34b 絞り
37 光源駆動制御部
54,72 CPU
57 部位判別部
58 表示制御回路
61,74,75 データテーブル
63 出射制御部
64 表示制御部
73 空間周波数処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特殊光観察に用いる複数種類の照明光のいずれかを選択的に出射する光源と、
被検体内に挿入される挿入部を有し、前記光源から出射された前記照明光を挿入部先端部から前記被検体内の被観察部位へ照射する内視鏡と、
前記被観察部位の種類を判別する部位判別手段と、
前記部位判別手段が判別した前記被観察部位の種類に応じて、前記種類毎に予め定められた前記照明光を出射するように前記光源を制御する光源制御手段と、
前記照明光が照射された前記被観察部位を撮像して観察像を得る撮像手段と、
を備えることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記複数種類の照明光は、少なくとも第1光と第2光とを光量比を変えて混合してなる複数種類の混合光であり、
前記光源制御手段は、前記部位判別手段が判別した前記被観察部位の種類に応じて、予め定められた光量比の前記混合光を出射するように前記光源を制御することを特徴とする請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記第1光は特定の波長帯域に制限された狭帯域光であるとともに、前記第2光は白色の広帯域光であり、
前記光源制御手段は、前記部位判別手段の判別結果に応じて、前記狭帯域光の光量を前記広帯域光の光量よりも増加させた第1照明モードと、前記狭帯域光の光量と前記広帯域光の光量とがほぼ等しくなる第2照明モードと、前記狭帯域光の光量を前記広帯域光の光量よりも減少させた第3照明モードとのいずれかの照明モードで前記光源を制御することを特徴とする請求項2記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記狭帯域光は、ヘモグロビンの光の吸収スペクトルの吸収ピークに対応する波長を有する青色狭帯域光であり、
前記光源制御手段は、前記部位判別手段が判別した前記被観察部位が食道である場合には前記第1照明モードを選択し、前記被観察部位が噴門である場合には前記第2照明モードを選択し、前記被観察部位が胃である場合には前記第3照明モードを選択することを特徴とする請求項3記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記観察像を表示するモニタと、
前記観察像のR,G,B画素値を、前記モニタのR,G,Bチャンネルの中で前記照明モードの種類に応じて予め定められたチャンネルに出力する表示制御手段と、を備えることを特徴とする請求項3または4記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記第1〜第2照明モード時には前記B画素値を前記B,Gチャンネルに出力するとともに、前記G画素値を前記Rチャンネルに出力することを特徴とする請求項5記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記第3照明モード時には前記R,G,B画素値をそれぞれ前記R,G,Bチャンネルに出力することを特徴とする請求項5または6記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記第1照明モード時に、前記観察像の画像データに対して、高周波数成分を強調する高域通過フィルタ処理を施す高域通過フィルタ処理手段を備えることを特徴とする請求項3ないし7いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記第2照明モード時に、前記観察像の画像データに対して、予め指定された範囲内の中周波数成分を強調する帯域通過フィルタ処理を施す帯域通過フィルタ処理手段を備えることを特徴とする請求項3ないし8いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記部位判別手段は、前記観察像の画像データを解析することにより、前記被観察部位の種類を判別することを特徴とする請求項1ないし9いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記部位判別手段は、前記観察像に表層血管が多く集まっている場合には前記被観察部位が食道であると判別するとともに、前記観察像に中深層血管が多く集まっている場合には前記被観察部位が噴門であると判別することを特徴とする請求項10記載の内視鏡システム。
【請求項12】
特殊光観察に用いる複数種類の照明光のいずれかを選択的に出射する光源から出射された前記照明光を挿入部先端部から前記被検体内の被観察部位へ照射する第1ステップと、
前記被観察部位の種類を判別する第2ステップと、
前記第2ステップで判別した前記被観察部位の種類に応じて、前記種類毎に予め定められた前記照明光を出射するように前記光源を制御する第3ステップと、
を有することを特徴とする内視鏡システムの光源制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−152333(P2012−152333A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13148(P2011−13148)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】