説明

内視鏡及び内視鏡システム並びに補助照明具

【課題】簡便な構成で、鉗子チャンネル内に挿入した補助照明具で被検体内を照明するとき、安全に使用する。
【解決手段】内視鏡の挿入部先端に連設された先端部16aには、撮像光学系26、鉗子出口28が設けられている。鉗子出口28には、鉗子チャンネル32が接続されている。鉗子チャンネル32には、補助照明具11が挿入される。補助照明具11は、LED光源42と、第1及び第2の磁性体44,45とを備える。鉗子チャンネル32の付近には、移動阻止用磁性体51及び移動阻止用電磁石52が設けられている。移動阻止用電磁石52が非通電状態から通電状態に切り替えられたとき、第1及び第2の磁性体44,45が移動阻止用磁性体51及び移動阻止用電磁石52に引き付けられ、照明窓43の光軸L1が撮像光学系26の光軸L2と物体側で交差する方向に補助照明具11が傾く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置具挿通チャンネルに補助照明具を挿入して被検体内の被観察部位に照明光を照射する内視鏡及びこれを備えた内視鏡システム並びに補助照明具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、被検体内に挿入される挿入部の先端部に、被検体の像光を取り込むための観察光学系と、被検体に照明光を照射するための照明光学系とを備えている。照明光学系による照明光の照射角及び光軸方向は、観察光学系による観察範囲に合わせるように設定されている。
【0003】
従来の内視鏡では、照明光学系による照明光の照射角、光軸方向は固定されていたが、特許文献1記載の内視鏡では、光源装置から供給される光を導くライトガイドの出射端と、照明光学系の最先端側に位置する照明窓との間に、対向面が軸線方向に対して傾いた一対の透明部材を軸方向に沿って間隔可変に配置しており、これら一対の透明部材の間隔を変化させることにより、照明光の光軸の向きが変わるようにしている。
【0004】
また、特許文献2では、照明光学系を構成する照明レンズの1つを光軸方向に沿って移動させるアクチュエータを備えており、アクチュエータを駆動させて照明レンズを光軸方向に沿って移動させることにより照明光の配光特性、すなわち高い照度を照射する照射角を変化させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−334043号公報
【特許文献2】特開平10−239740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内視鏡では、被検体の表面に対して挿入部先端面が数ミリメートル程度まで近接する場合でも、鮮明な観察像が得られることが求められている。しかしながら、観察光学系と照明光学系とは同軸には設けられていないため、内視鏡の挿入部先端面を被検体の表面に近づけるにつれて、観察光学系による観察範囲、及び照明光学系による照明範囲がともに狭くなり、互いに重ならなくなる。よって、観察範囲には照明光が届かなくなり鮮明な観察像を得ることが困難になる。
【0007】
上記特許文献1及び2記載の内視鏡では、内視鏡の挿入部先端を被検体の表面に近接させたとき、観察範囲の変化に合わせて照明光の照射角や、光軸方向を変えることで対応することが考えられるが、一対の透明部材の間隔を可変させる機構、あるいは、照明レンズの1つを光軸方向に移動させる機構などが複雑であり、内視鏡のコスト増加の原因となる。
【0008】
そこで、出願人は、内視鏡の挿入部先端を被検体の表面に近接させて観察像が暗くなった場合、補助的な照明光を照射する補助照明具を、内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して使用することを検討している。ところが、内視鏡の鉗子チャンネルは、処置具の挿入を妨げないように内面が平滑に形成されていることが一般的であり、鉗子チャンネルに補助照明具を挿入した場合、鉗子チャンネルには引っ掛かるものがないため、補助照明具が内視鏡の挿入部先端面から突出してしまう。これにより、挿入部先端面から突出した補助照明具が被検体に当たったり、挿入部先端面に対する補助照明具の位置が定まらず、光量が変化したりするなどの不具合が生じる。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、簡便な構成で、且つ鉗子チャンネル内に挿入した補助照明具で被検体内を照明するとき、安全に使用することが可能な内視鏡、内視鏡システム、及び補助照明具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の内視鏡は、被検体内に挿入される挿入部と、前記挿入部の先端に配され、被検体の像光を取り込むための観察光学系と、前記挿入部内に配された処置具挿通チャンネルと、前記先端に配され、前記処置具挿通チャンネルに接続される処置具出口とが設けられ、前記処置具挿通チャンネルに、先端部に設けられた照明光学系を通して照明光を照射する補助照明具が挿入される内視鏡において、前記処置具挿通チャンネル内の所定位置に前記補助照明具を引き付ける磁力を発生し、前記処置具挿通チャンネルの軸方向における前記補助照明具の移動を阻止する移動阻止手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
前記移動阻止手段は、前記処置具挿通チャンネルの付近に複数設けられ、前記処置具挿通チャンネルの軸方向において互いに異なる位置から前記補助照明具を引き付ける磁力をそれぞれ発生することが好ましい。
【0012】
前記移動阻止手段は、前記補助照明具に設けられた磁性体を引き付ける移動阻止用磁性体からなることが好ましい。あるいは、前記移動阻止手段は、磁力を発生しない非通電状態と、磁力を発生して前記補助照明具に設けられた磁性体を引き付ける通電状態との間で切り替えが行われる移動阻止用電磁石からなることが好ましい。
【0013】
前記移動阻止手段は、前記処置具挿通チャンネルの周方向において互いに反対側の位置に配され、発生する磁力が前記補助照明具をそれぞれ引き付けることにより、前記照明光学系の光軸が、前記観察光学系の光軸と物体側で交差することが好ましい。
【0014】
前記移動阻止手段は、前記補助照明具に設けられた第1の磁性体を引き付ける移動阻止用磁性体と、磁力を発生しない非通電状態と、磁力を発生して前記補助照明具に設けられた第2の磁性体を引き付ける通電状態との間で切り替えが行われる移動阻止用電磁石とからなり、前記移動阻止用磁性体及び前記移動阻止用電磁石を前記処置具挿通チャンネルの周方向において互いに反対側の位置に配し、前記移動阻止用電磁石が非通電状態のとき、
前記移動阻止用磁性体から発生する磁力が前記補助照明具を引き付けることにより、前記照明光学系の光軸が前記観察光学系の光軸と平行に配され、前記移動阻止用電磁石が非通電状態から通電状態に切り替わるとき、前記移動阻止用磁性体及び前記移動阻止用電磁石から発生する磁力が前記補助照明具をそれぞれ引き付けることにより、前記照明光学系の光軸が、前記観察光学系の光軸と物体側で交差することが好ましい。
【0015】
前記移動阻止手段は、前記処置具挿通チャンネルの内部に突出しない位置に配されていることが好ましい。
【0016】
本発明の内視鏡システムは、前記内視鏡と、前記補助照明具とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の補助照明具は、被検体内に挿入される挿入部、前記挿入部の先端に配され、被検体の像光を取り込むための観察光学系、前記挿入部内に配された処置具挿通チャンネル、及び前記先端に配され、前記処置具挿通チャンネルに接続される処置具出口を備える内視鏡の前記処置具挿通チャンネルに挿入される補助照明具において、前記処置具挿通チャンネルに挿入される筐体と、前記筐体の先端部に設けられ、被検体内に照明光を照射するための照明光学系と、前記内視鏡に設けられた移動阻止手段が発生する磁力により前記処置具挿通チャンネル内の所定位置に引き付けられて前記処置具挿通チャンネルの軸方向における移動が阻止される磁性体とを備えることを特徴とする。
【0018】
前記磁性体は、前記筐体の外周面付近に複数設けられ、前記筐体の軸方向において互いに異なる位置に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、処置具挿通チャンネル内の所定位置に補助照明具を引き付ける磁力を発生する移動阻止手段によって、処置具挿通チャンネルの軸方向における補助照明具の移動を阻止しているので、内視鏡を簡便な構成とし、且つ鉗子チャンネル内に挿入した補助照明具で被検体内を照明するとき、安全に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】内視鏡システムの外観斜視図である。
【図2】電子内視鏡の先端部の構成を示す斜視図である。
【図3】図2のA−a線に沿った断面図である。
【図4】補助照明具の構成を示す斜視図である。
【図5】鉗子チャンネルに補助照明具を挿入した状態(A)及び補助照明具が所定位置に引き付けられた状態(B)を示す説明図である。
【図6】挿入部先端を被検体に近接させた状態(A)及び電磁石を通電状態として補助照明具を傾けた状態(B)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように、内視鏡システム2は、電子内視鏡10、補助照明具11、プロセッサ装置12、光源装置13、送気・送水装置14、電源制御装置15などから構成されている。送気・送水装置14は、光源装置13に内蔵され、エアーの送気を行う周知の送気装置(ポンプなど)14aと、光源装置13の外部に設けられ、洗浄水を貯留する洗浄水タンク14bから構成されている。電子内視鏡10は、被検体内に挿入される挿入部16と、挿入部16の基端部分に連設された操作部17と、プロセッサ装置12及び光源装置13に接続されるコネクタ18と、操作部17とコネクタ18との間を繋ぐユニバーサルコード19とを有する。
【0022】
挿入部16は、その先端に設けられ、被検体内撮影用の撮像素子としてのCCD型イメージセンサ(図3参照。以下、CCDという)36等が内蔵された先端部16aと、先端部16aの基端に連設された湾曲自在な湾曲部16bと、湾曲部16bの基端に連設された可撓性を有する可撓管部16cとからなる。
【0023】
コネクタ18は複合タイプのコネクタであり、プロセッサ装置12、及び光源装置13、送気・送水装置14がそれぞれ接続されている。操作部17には、湾曲部16bを上下左右に湾曲させるためのアングルノブ21や、後述する送気・送水用ノズル29(図2参照)からエアー、水を噴出させるための送気・送水ボタン22といった操作部材が設けられている。また、操作部17には、鉗子チャンネル32(処置具挿通チャンネル)に電気メス等の処置具、及び補助照明具11を挿入するための鉗子口23が設けられている。
【0024】
プロセッサ装置12は、光源装置13と電気的に接続され、内視鏡システム2の動作を統括的に制御する。プロセッサ装置12は、ユニバーサルコード19や挿入部16内に挿通された伝送ケーブルを介して電子内視鏡10に給電を行い、CCD36の駆動を制御する。また、プロセッサ装置12は、伝送ケーブルを介してCCD36から出力された撮像信号を取得し、各種画像処理を施して画像データを生成する。プロセッサ装置12で生成された画像データは、プロセッサ装置12にケーブル接続されたモニタ20に観察画像として表示される。
【0025】
図2及び図3に示すように、先端部16aは、先端硬性部24と、この先端硬性部24の先端側に装着される先端保護キャップ25と、撮像光学系26(観察光学系)と、照明窓27a,27bと、鉗子出口28(処置具出口)と、送気・送水用ノズル29とを備える。先端硬性部24は、ステンレス鋼等の金属からなり、長手方向に沿って複数の貫通孔が形成されている。この先端硬性部24の各貫通孔に撮像部30、ライトガイド(図示せず)、鉗子チャンネル32などの各種部品が嵌合して固定されている。先端硬性部24の後端は、湾曲部16bを構成する先端の湾曲駒33に連結されている。また、先端硬性部24の外周には、外皮チューブ34が被覆される。
【0026】
先端保護キャップ25は、ゴムまたは樹脂等からなり、挿入部16の軸方向と略直交する面であり、挿入部16の先端面を構成する平坦面25aが形成されている。先端保護キャップ25には、撮像光学系26、照明窓27a,27b、及び送気・送水用ノズル29を露呈させる貫通孔25b〜25e、及び鉗子出口28が形成されている。一対の照明窓27a,27bは、撮像光学系26を挟んで対称な位置に配されている。
【0027】
図3に示すように、撮像部30は、撮像光学系26(観察光学系)と、撮像光学系26を保持する鏡筒35、CCD36などからなる。鏡筒35は、先端部16aの中心軸に撮像光学系26の光軸が平行となるように先端硬性部24に取り付けられる。撮像光学系26は、レンズ群及びプリズムから構成され、レンズ群のうち、最も先端側に位置するレンズ26Aが先端部16aの先端面、すなわち先端保護キャップ25の貫通孔25bから露呈する。撮像光学系26の出射端側には、CCD36が配設されており、撮像光学系26で取り込まれた観察範囲の像光は、CCD36の受光面(図示せず)に結像されて撮像信号に変換される。CCD36から出力された撮像信号は、信号ケーブル37を介してプロセッサ装置12へ伝送される。
【0028】
照明窓27a,27bは、照射レンズを兼ねており、被検体内の被観察部位に光源装置13からの照明光を照射する。照明窓27a,27bは、ライトガイド(図示せず)の出射端が面している。ライトガイドは、多数の光ファイバー(例えば、石英からなる)を束ねて形成されたものである。このライトガイドは、挿入部16、操作部17、ユニバーサルコード19、及びコネクタ18の内部を通っており、被検体内の被観察部位に光源装置13からの照明光を照明窓27a,27bに導く。
【0029】
鉗子出口28は、挿入部16内に配設された鉗子チャンネル32に接続され、操作部17の鉗子口23に連通している。鉗子チャンネル32には、鉗子口23を通して補助照明具11が挿入される。鉗子チャンネル32に挿入された補助照明具11は、鉗子出口28から先端面が露呈される。
【0030】
図3及び図4に示すように、補助照明具11は、鉗子チャンネル32の内径よりも小さい外径の略円筒形状に形成された筐体41と、筐体41に内蔵されるLED光源42と、筐体41の先端に取り付けられる照明光学系としての照明窓43と、筐体41に取り付けられた第1及び第2の磁性体44,45と、LED光源42に電力を供給する電源ケーブル46、電源ケーブル46の基端側に設けられた電源コネクタ47(図1参照)とを備える。電源ケーブル46は、筐体41を鉗子チャンネル32の先端側へ送り込めるように、筐体41を押圧可能とする程度の剛性を有する。電源コネクタ47は、電源制御装置15に接続される。
【0031】
LED光源42は、例えば三色のLEDチップを用いて1つの発光源として白色光を得るものや、蛍光体をLED光により励起発光させて白色光を形成するものなど、白色光を照射するLED光源であればよい。照明窓43は、LED光源42の先端側を覆っている。LED光源42から供給される照明光(白色光)は、照明窓43を通って先端側へ照射される。また、照明窓43は、平凸レンズであり、LED光源からの照明光を拡散して被検体に照射する。この照明窓43から照射される照明光の照射角は、電子内視鏡10の照明窓27a,27bからの照明光による照射角よりも広いことが好ましい。
【0032】
また、LED光源42は、電源ケーブル46、電源コネクタ47を介して電源制御装置15から電力が供給されることにより照明光を照射する。図示は省略するが、電源制御装置15は操作ユニットに接続されている。操作ユニットは、LED光源42のオン/オフを切り替えるためのボタンなどを備える。電源制御装置15は、操作ユニットの操作に従って電力供給を制御する。
【0033】
第1の磁性体44は、フェライト磁石やネオジム磁石などの永久磁石であり、略円筒形状に形成されている。この第1の磁性体44は、筐体41の基端部に設けられ、補助照明具11が鉗子チャンネル32に挿入されたとき、後述する移動阻止用磁性体51が発生する磁力により引き付けられる。また、第1の磁性体44は、筐体41の外周面41aと同軸、且つ外周面41aから突出しない位置に配されている。本実施形態では、第1の磁性体44は、筐体41の外周面41aと同じ外径に形成され、外周面41aと連続するように配設されている。なお、これに限らず、第1の磁性体44は、移動阻止用磁性体51からの磁力により引き付けられる位置に配設すればよく、例えば筐体41の内部に配置してもよい。
【0034】
第2の磁性体45は、第1の磁性体44と同様の永久磁石であり、略円筒形状に形成されている。この第2の磁性体45は、筐体41の先端部に設けられ、補助照明具11が鉗子チャンネル32に挿入されたとき、後述する移動阻止用電磁石52から発生する磁力によって引き付けられる。なお、第2の磁性体45は、第1の磁性体44と同様に、筐体41と同軸、且つ外周面41aから突出しない位置に配されている。第1の磁性体44及び第2の磁性体45は、互いの極性が逆になっており、例えば、第1の磁性体44は外周面側がN極で内周面側がS極であるのに対して、第2の磁性体45は外周面側がS極で内周面側がN極である。
【0035】
電子内視鏡10には、移動阻止手段としての移動阻止用磁性体51及び移動阻止用電磁石52が設けられている。移動阻止用磁性体51は、鉗子チャンネル32の周方向において撮像光学系26から最も遠い位置、且つ鉗子チャンネル32の軸方向において平坦面25aから補助照明具11の筐体41の長さと略同じ間隔を置く位置に設けられている。なお、移動阻止用磁性体51としては、磁性体44,45と同様に永久磁石を用いる。移動阻止用磁性体51及び移動阻止用電磁石52は、鉗子チャンネル32の内部に突出しない位置、本実施形態では、鉗子チャンネル32の外周面に沿って配置されている。これにより、処置具を鉗子チャンネル32に挿通させて使用するとき、処置具の動きを妨げることがない。
【0036】
移動阻止用磁性体51は、第1の磁性体44を引き付ける磁力を発生するように極性が設定されており、例えば、第1の磁性体44は外周面側がN極で内周面側がS極であるのに対して、移動阻止用磁性体51は内周面側(第1の磁性体44と対面する側)がS極で外周面側がN極である。
【0037】
移動阻止用磁性体51が発生する磁力が第1の磁性体44を引き付けることにより、補助照明具11が、鉗子チャンネル32内、且つ平坦面25aから補助照明具11の先端面(すなわち、照明窓43の先端面)が突出しない所定位置に引き付けられる。この所定位置に引き付けられた補助照明具11は、鉗子チャンネル32の軸方向における移動が阻止される。
【0038】
移動阻止用電磁石52は、鉗子チャンネル32の軸方向において移動阻止用磁性体51と互いに異なる位置にあり、なお且つ第1の磁性体44が移動阻止用磁性体51に引き付けられているとき、第2の磁性体45と対面する位置にある。本実施形態では、移動阻止用電磁石52は、平坦面25aの付近、且つ鉗子チャンネル32の周方向において撮像光学系26に最も近接する位置、すなわち鉗子チャンネル32を挟んで移動阻止用磁性体51の反対側に配されている。
【0039】
移動阻止用電磁石52は、磁力を発生しない非通電状態と、磁力を発生する通電状態とが切り替えられる電磁石である。移動阻止用電磁石52が非通電状態のとき、鉗子チャンネル32内に挿入された補助照明具11は、第1の磁性体44だけが移動阻止用磁性体51に引き付けられて鉗子チャンネル32の内周面と当接し、筐体41が鉗子チャンネル32の軸方向に沿った方向に配される。これにより、照明窓43の光軸L1が撮像光学系26の光軸L2と平行に配される。
【0040】
一方、移動阻止用電磁石52が非通電状態から通電状態に切り替えられたとき、移動阻止用電磁石52が発生する磁力により補助照明具11の第2の磁性体45が引き付けられる。移動阻止用電磁石52は、通電状態のとき、第2の磁性体45を引き付ける磁力を発生するように極性が設定されており、例えば、第2の磁性体45は外周面側がS極で内周面側がN極であるのに対して、移動阻止用電磁石52は内周面側(第2の磁性体45と対面する側)がN極で外周面側がS極である。第1及び第2の磁性体44,45が移動阻止用磁性体51及び移動阻止用電磁石52に引き付けられることにより、補助照明具11は、鉗子チャンネル32の軸方向における移動が阻止されるとともに、筐体41が鉗子チャンネル32の軸方向に沿った方向から、鉗子チャンネル32の軸方向と交差する方向に傾く。これにより、照明窓43の光軸L1が撮像光学系26の光軸L2と物体側で交差する。このように移動阻止用磁性体51及び移動阻止用電磁石52に引き付けられることにより、照明窓43の光軸L1の方向が規定される。
【0041】
なお、この移動阻止用電磁石52は、図示しない電源ケーブルを介してプロセッサ装置12に接続されており、プロセッサ装置12の操作により電力供給の有無が切り替えられる。そして、プロセッサ装置12から電源ケーブルを介して電力が供給されているとき、移動阻止用電磁石52は通電状態となって磁力を発生し、電力供給が停止されているとき、移動阻止用電磁石52は非通電状態となって磁力を発生しなくなる。
【0042】
上記構成の作用について図5及び図6を参照して説明する。被検体内に挿入部16を挿入し、電子内視鏡10での観察を行っている際、図5(A)に示すように、挿入部16の平坦面25aが被検体の表面Hに近接して照明窓27a,27bによる照明範囲及び撮像光学系26による観察範囲が狭くなり、観察像が暗くなる場合がある。このような場合、ユーザーは、補助照明具11を鉗子チャンネル32内へ挿入して使用する。なお、このとき、移動阻止用電磁石52は非通電状態となっており、磁力を発生していない。
【0043】
鉗子口23から鉗子チャンネル32内へ挿入された補助照明具11の筐体41は、電源ケーブル46を介して押し込まれることにより、挿入部16の先端側へ送り込まれていく。補助照明具11の筐体41が、挿入部16の先端部16a付近まで到達したとき、筐体41の先端側に位置する第2の磁性体45と、移動阻止用磁性体51の極性が逆であることから、筐体41を挿入部16の先端側へ送り込む際、ユーザーは若干の抵抗力を感じるが、この抵抗力を乗り越えて補助照明具11の筐体41をさらに押し込むと、第1の磁性体44が移動阻止用磁性体51に引き付けられる。これにより、補助照明具11は、鉗子チャンネル32内、且つ平坦面25aから突出しない所定位置に引き付けられ、鉗子チャンネル32の軸方向における移動が阻止される(図5(B)に示す状態)。この状態で、電源制御装置15の制御によりLED光源42がオンされると、補助照明具11は、鉗子出口28を通して被検体の表面Hに照明光を照射することが可能となる。
【0044】
そして、さらに挿入部16の平坦面25aが被検体の表面Hに近接した場合(図6(A)に示す状態)、補助照明具11による照明範囲が狭まるため、観察像が暗くなることがある。このような場合、上述したように、プロセッサ装置12を操作して移動阻止用電磁石52を通電状態に切り替える。移動阻止用電磁石52が非通電状態から通電状態に切り替えられたとき、補助照明具11が移動阻止用磁性体51及び移動阻止用電磁石52に引き付けられることにより、照明窓43の光軸L1が撮像光学系26の光軸L2と物体側で交差する。これにより、補助照明具11の照明範囲が、撮像光学系26の観察範囲と重なるため、撮像光学系26から取り込まれる観察像を明るくすることができる(図6(B)に示す状態)。
【0045】
以上のようにして、電子内視鏡10は、簡便な構成で、鉗子チャンネル32の軸方向における補助照明具11の移動を阻止しているので、平坦面25aからの補助照明具11の突出を防止することができる。これにより、補助照明具11が被検体にぶつかったり、補助照明具11による照明光が突然変化したりすることを防ぐことができるため、鉗子チャンネル32に補助照明具11を挿入して使用するとき、内視鏡システム2を安全に使用することができる。
【0046】
なお、上記実施形態の電子内視鏡10では、移動阻止用磁性体51及び移動阻止用電磁石52が、鉗子チャンネル32を挟んで互いに反対側の位置に配設されているが、本発明はこれに限るものではなく、鉗子チャンネル32の周方向において互いに同じ位置に設けてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、電子内視鏡10に設けられ、鉗子チャンネル32の軸方向における補助照明具11の移動を阻止する移動阻止手段として、1つの移動阻止用磁性体51及び1つの移動阻止用電磁石52を備えているが、本発明はこれに限らず、移動阻止手段としては、両方とも移動阻止用磁性体、または両方とも移動阻止用電磁石でもよい。さらにまた、3つ以上の移動阻止手段を設けてもよい。なお、移動阻止手段として両方とも移動阻止用磁性体にした場合、上記実施形態のように、通電状態/非通電状態の切り替えにより補助照明具11が傾いて照明窓43の光軸L1の方向が変化することがないため、照明窓43の光軸L1が撮像光学系26の光軸L2と物体側で交差する方向に補助照明具11が常時セットされる。
【0048】
また、移動阻止手段として、両方とも移動阻止用電磁石にした場合、内視鏡システム2で補助照明具11を使用しないときは、移動阻止用電磁石を両方とも非通電状態とする。これにより、補助照明具11を使用せず、処置具を電子内視鏡10の鉗子チャンネル32に挿入して使用するとき、移動阻止用電磁石から発生される磁力の影響を処置具が受けることを考慮しなくてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、移動阻止手段を構成する移動阻止用磁性体51、補助照明具11に設けられる第1及び第2の磁性体44,45として永久磁石を示しているが、永久磁石に限らず、鉄、ニッケル、コバルトなど磁性を帯びることが可能な磁性体であればよい。さらにまた、補助照明具11に設けられる磁性体の位置としては、上記実施形態で示した第1及び第2の磁性体44,45の位置に限定されるものではなく、筐体41の軸方向において互いに異なる位置であればよい。また、1つの補助照明具11に対して、3つ以上の磁性体を設けてもよい。
【0050】
上記実施形態においては、移動阻止手段としての移動阻止用磁性体51、移動阻止用電磁石52は、鉗子チャンネル32の外周面に沿って配されているが、本発明は、これに限らず、鉗子チャンネル32の付近で、且つ発生する磁力が鉗子チャンネル32の内部に届く位置に配すればよい。
【0051】
上記実施形態においては、補助照明具11として、LED光源42を内蔵する構成を示したが、補助照明具の構成としてはこれに限らず、外部の光源装置からライトガイドで光を導き、ライトガイドの出射端に設けた照明光学系で照明光を照射する構成でもよい。
【0052】
上記実施形態においては、撮像装置を用いて被検体の状態を撮像した画像を観察する電子内視鏡を例に上げて説明しているが、本発明はこれに限るものではなく、光学的イメージガイドを採用して被検体の状態を観察する内視鏡にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
2 内視鏡システム
10 電子内視鏡
11 補助照明具
16 挿入部
26 撮像光学系(観察光学系)
28 鉗子出口
32 鉗子チャンネル
41 筐体
42 LED光源
43 照明窓(照明光学系)
44 第1の磁性体
45 第2の磁性体
51 移動阻止用磁性体
52 移動阻止用電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される挿入部と、
前記挿入部の先端に配され、被検体の像光を取り込むための観察光学系と、
前記挿入部内に配された処置具挿通チャンネルと、
前記先端に配され、前記処置具挿通チャンネルに接続される処置具出口とが設けられ、
前記処置具挿通チャンネルに、先端部に設けられた照明光学系を通して照明光を照射する補助照明具が挿入される内視鏡において、
前記処置具挿通チャンネル内の所定位置に前記補助照明具を引き付ける磁力を発生し、前記処置具挿通チャンネルの軸方向における前記補助照明具の移動を阻止する移動阻止手段を備えたことを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記移動阻止手段は、前記処置具挿通チャンネルの付近に複数設けられ、前記処置具挿通チャンネルの軸方向において互いに異なる位置から前記補助照明具を引き付ける磁力をそれぞれ発生することを特徴とする請求項1記載の内視鏡。
【請求項3】
前記移動阻止手段は、前記補助照明具に設けられた磁性体を引き付ける移動阻止用磁性体からなることを特徴とする請求項2記載の内視鏡。
【請求項4】
前記移動阻止手段は、磁力を発生しない非通電状態と、磁力を発生して前記補助照明具に設けられた磁性体を引き付ける通電状態との間で切り替えが行われる移動阻止用電磁石からなることを特徴とする請求項2項記載の内視鏡。
【請求項5】
前記移動阻止手段は、前記処置具挿通チャンネルの周方向において互いに反対側の位置に配され、発生する磁力が前記補助照明具をそれぞれ引き付けることにより、前記照明光学系の光軸が、前記観察光学系の光軸と物体側で交差することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記移動阻止手段は、前記補助照明具に設けられた第1の磁性体を引き付ける移動阻止用磁性体と、磁力を発生しない非通電状態と、磁力を発生して前記補助照明具に設けられた第2の磁性体を引き付ける通電状態との間で切り替えが行われる移動阻止用電磁石とからなり、前記移動阻止用磁性体及び前記移動阻止用電磁石を前記処置具挿通チャンネルの周方向において互いに反対側の位置に配し、前記移動阻止用電磁石が非通電状態のとき、前記移動阻止用磁性体から発生する磁力が前記補助照明具を引き付けることにより、前記照明光学系の光軸が前記観察光学系の光軸と平行に配され、前記移動阻止用電磁石が非通電状態から通電状態に切り替わるとき、前記移動阻止用磁性体及び前記移動阻止用電磁石から発生する磁力が前記補助照明具をそれぞれ引き付けることにより、前記照明光学系の光軸が、前記観察光学系の光軸と物体側で交差することを特徴とする請求項2記載の内視鏡。
【請求項7】
前記移動阻止手段は、前記処置具挿通チャンネルの内部に突出しない位置に配されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の内視鏡と、前記補助照明具とを備えることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項9】
被検体内に挿入される挿入部、前記挿入部の先端に配され、被検体の像光を取り込むための観察光学系、前記挿入部内に配された処置具挿通チャンネル、及び前記先端に配され、前記処置具挿通チャンネルに接続される処置具出口を備える内視鏡の前記処置具挿通チャンネルに挿入される補助照明具において、
前記処置具挿通チャンネルに挿入される筐体と、
前記筐体の先端部に設けられ、被検体内に照明光を照射するための照明光学系と、
前記内視鏡に設けられた移動阻止手段が発生する磁力により前記処置具挿通チャンネル内の所定位置に引き付けられて前記処置具挿通チャンネルの軸方向における移動が阻止される磁性体とを備えることを特徴とする補助照明具。
【請求項10】
前記磁性体は、前記筐体の外周面付近に複数設けられ、前記筐体の軸方向において互いに異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項9記載の補助照明具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−130555(P2012−130555A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286096(P2010−286096)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】