説明

内視鏡形状検出装置

【課題】内視鏡挿入部を進行・後退させる制御データを読み込む構成で挿入形状を検出でき、簡単な構成で挿入方向の検出を厳密にできて正確な挿入形状を検出することを可能とした内視鏡形状検出装置を提供する。
【解決手段】内視鏡の観察画像を光電変換する固体撮像素子29により撮像された対象部位の撮像信号を基に、目標の挿抜方向データ、湾曲部の湾曲制御データ、及び挿入部の挿抜制御データを算出し、内視鏡挿入部を進行・後退させるための挿抜方向を検出する湾曲・挿抜制御手段32と、前記湾曲・挿抜制御手段32の制御信号に応じて内視鏡の湾曲部を駆動して先端部の向きを変えると共に、挿入部を進行若しくは後退させる湾曲・挿抜駆動手段21と、前記湾曲・挿抜制御手段から制御データを取り込んで記憶する制御データ記憶手段33と、この制御データ記憶手段33において記憶された制御データから内視鏡の挿入形状データを生成するデータ処理手段12と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡挿入部の被検部内での形状を検出する内視鏡形状検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡は医療用分野及び工業用分野で広く用いられるようになった。特に、医療用分野で使用される挿入部が軟性の内視鏡では、この挿入部を屈曲した体腔内に口や肛門などから挿入することにより、切開することなく体腔内深部の臓器を診断したり、必要に応じて内視鏡に設けた管路チャンネル内に処置具を挿通してポリープ等を切除するなどの治療処置を行うことができる。
【0003】
例えば内視鏡を肛門側から挿入して大腸等の下部消化管内を検査する場合、屈曲した体腔内に挿入部を円滑に挿入するためにはある程度の熟練を要する。つまり、内視鏡の挿入作業を行う場合、体腔内の屈曲に応じて挿入部に設けた湾曲部を湾曲させる等の作業を円滑に行って挿入する必要があり、そのためには挿入部の先端位置等が、体腔内のどこに位置しているなど、現在の内視鏡挿入部の湾曲状態等を知ることができると便利である。このように大腸検査等において体腔内での内視鏡挿入部の形状を知ることにより、挿入作業が容易になり、患者に与える苦痛を軽減できる。
【0004】
そこで、内視鏡の挿入部にX線不透過部を形成し、X線による透視により内視鏡の挿入形状を得て、挿入部の先端位置や挿入部の湾曲状態を検出することが考えられている。
【0005】
しかし、X線による内視鏡形状の検出装置は大型であり、X線を照射するための装置を検査室に設けるためには検査室が十分に広くなければならない。また、術者は、内視鏡検査の際に、内視鏡の操作のほかに、X線を照射する操作を行わなければならなくなるので、術者にかかる負担が大きくなると共に、頻繁にX線照射を行うと被爆量が増大して患者や術者に対して有害になるおそれがあり、X線は内視鏡挿入部の挿入状態を検出する手段としては必ずしも好ましいものではない。
【0006】
また、特開平2−218330号公報に示されるように、内視鏡の挿入を容易にするために挿入方向を検出する装置が提案されているが、このような装置では挿入方向の検出の基準が観察像の明るさのみであり、被検部位によっては挿入方向の検出が難しかったり、精度良く検出できない場合があり、挿入部を円滑に挿入することが困難な場合があった。
【特許文献1】特開平2−218330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、従来の装置では、観察像の明るさで挿入方向を検出するものでは挿入部を円滑に挿入するために十分な挿入形状の検出ができなかったり、X線を照射して挿入形状を検出するものでは装置構成が大型で複雑化するなどの問題点があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、内視鏡挿入部を進行・後退させる制御データを読み込む構成で挿入形状を検出でき、簡単な構成で挿入方向の検出を厳密にできて正確な挿入形状を検出することを可能とした内視鏡形状検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による内視鏡形状検出装置は、内視鏡の観察画像を光電変換する固体撮像素子により撮像された対象部位の撮像信号を基に、目標の挿抜方向データ、湾曲部の湾曲制御データ、及び挿入部の挿抜制御データを算出し、内視鏡挿入部を進行・後退させるための挿抜方向を検出する湾曲・挿抜制御手段と、
前記湾曲・挿抜制御手段の制御信号に応じて内視鏡の湾曲部を駆動して先端部の向きを変えると共に、挿入部を進行若しくは後退させる湾曲・挿抜駆動手段と、
前記湾曲・挿抜制御手段から制御データを取り込んで記憶する制御データ記憶手段と、
この制御データ記憶手段において記憶された制御データから内視鏡の挿入形状データを生成するデータ処理手段と、
を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内視鏡形状検出装置は、内視鏡挿入部を進行・後退させる制御データを読み込む構成で挿入形状を検出でき、簡単な構成で挿入方向の検出を厳密にできて正確な挿入形状を検出することができる利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例】
【0012】
図1ないし図5は本発明の第1実施形態に係り、図1は内視鏡装置のシステム構成を示す構成図、図2は内視鏡形状検出装置の構成を示す構成図、図3は姿勢検出回路の構成を示すブロック図、図4は第1実施形態の動作を説明するためのフローチャート、図5は第1実施形態の形状検出処理を説明する作用説明図である。
【0013】
図1に示すように、内視鏡装置は、体腔内に挿入され対象部位の観察、処置を行うための内視鏡1と、この内視鏡1を接続し内視鏡で得られた対象部位の画像を観察するための内視鏡観察装置2と、内視鏡1と接続され内視鏡挿入部の形状を検出する内視鏡形状検出装置3と、内視鏡観察装置2より出力される内視鏡画像と内視鏡形状検出装置3より出力される内視鏡形状画像とを表示する表示装置4とを備えて構成されている。
【0014】
内視鏡1は、体腔内に挿入する挿入部1aの基端部に操作部1bが連設され、この操作部1bよりライトガイドや信号ケーブルを内蔵したユニバーサルコード5が延出して構成されており、ユニバーサルコード5の端部が内視鏡観察装置2に接続されている。また、操作部1bより信号伝送ケーブル6が延出しており、この信号伝送ケーブル6を介して内視鏡形状検出装置3と接続されている。そして、内視鏡形状検出装置3と内視鏡観察装置2とが接続ケーブル7を介して接続され、信号の伝送が行われるようになっている。
【0015】
内視鏡観察時には、術者によって検査ベッド8に横たわる患者9の体腔内に内視鏡1の挿入部1aを挿入し、挿入部1aの先端部に組み込まれた撮像素子により対象部位の画像を得る。このとき、内視鏡観察装置2からの撮像素子駆動信号により撮像素子において光電変換が行われ、得られた画像は内視鏡観察装置2へ電気信号(撮像信号)として伝送される。内視鏡観察装置2の内部では、内視鏡1からの撮像信号を処理して対象部位の画像を映像信号に変換し、表示装置4に出力する。表示装置4は、内視鏡観察装置2の出力を受信して画像表示を行うことにより、内視鏡画像として患者体内の観察画像を術者に視覚的に提供する。
【0016】
次に、図2及び図3を参照して、内視鏡形状検出装置3の構成について説明する。
【0017】
内視鏡形状検出装置3は、内視鏡1の所定部位の姿勢を電気信号に変換する3方向ジャイロ(ジャイロスコープ)10と、この3方向ジャイロ10のアナログ出力をデジタルデータとして検出する姿勢検出回路11と、姿勢検出回路11で検出されたデジタルデータを監視・蓄積して内視鏡の挿入形状データを生成するデータ処理回路12と、データ処理回路12で得られた挿入形状データを基に映像信号を生成する信号処理手段13とを備えて構成され、この信号処理手段13から出力される映像信号を視覚的な画像として表示する表示装置4に接続されている。
【0018】
直交する3方向の傾きの変位を検出する3方向ジャイロ10は、内視鏡1の挿入部1aの内部に複数設けてあり、先端部から基端部まで所定の間隔(隣りのジャイロまでの区間で挿入部1aの曲率が一定となる間隔)で配置してある。そして、各々の3方向ジャイロ10に姿勢検出回路11が接続されている。なお、3方向ジャイロ10は、挿入部1aに設けるのに限らず、挿入部1aのチャンネル内に挿入可能なプローブに複数設けて挿入部1a内に配置するようにしても良い。
【0019】
この3方向ジャイロ10は、図3に示すように、±90度の範囲で傾きに比例した電圧信号に変換する圧電振動ジャイロ10aを3軸直交系の各軸方向の傾き変位を検出するように配置して構成してあり、各々の圧電振動ジャイロ10aが姿勢検出回路11に接続されている。
【0020】
姿勢検出回路11は、各々の圧電振動ジャイロ10aごとに設けられた3つの同一の回路系統から構成され、一対一で圧電振動ジャイロ10aの出力する電気信号が入力される。それぞれの回路系統は、ローパスフィルタ(以降、LPFと記す)11a、増幅回路11b、アナログ−デジタル変換器(以降、ADCと記す)11cから構成されている。さらに姿勢検出回路11は、前記3系統の各ADC11cで変換され出力されるデータを取り込み、データ処理回路12の要求するタイミングで出力するデータバッファ11dを備えている。
【0021】
次に、図4及び図5を参照して、第1実施形態に係る内視鏡形状検出装置の動作について説明する。
【0022】
内視鏡形状検出装置3は、術者により形状検出の動作の開始が指示されると、まずステップS1で、データ処理回路12内に設けられた図示しない監視タイマーや内視鏡の挿入形状データを記憶するための記憶手段としてのメモリなどのパラメータを初期化する。このときに姿勢検出回路11のADC11cのA/D変換周期も所定値にセットされる。
【0023】
次に、ステップS2で、前記監視タイマーの計数が開始されると共にADC11cのA/D変換も開始され、各姿勢検出回路11のデータバッファ11dにおいて、検出された3方向ジャイロ10の各軸方向の角度変位量を表す電圧データがラッチされる。そしてステップS3で、前記データバッファ11dのデータはデータ処理回路12に読み込まれ、圧電振動ジャイロ10aの特性に対応させた変位量に変換された後、3方向ジャイロ10の各ポイント毎に姿勢データとしてメモリ内のデータに加算され蓄積される。この後、ステップS4で監視タイマーの計数が終了したか否か判断し、終了していない場合はステップS2に戻ることにより、監視タイマーが所定の値までの計数を終了するまでこの蓄積処理を繰り返す。
【0024】
そして、監視タイマーの計数が終了すると、ステップS5に進み、この所定時間内に蓄積した姿勢データから各ポイント毎での軸ベクトルを算出する。この軸ベクトルは、内視鏡1の操作部1bから挿入部1aの先端部へ沿った方向を正の向きとし、大きさ1の単位ベクトルとして算出する。
【0025】
次いで、ステップS6で、各ポイントの軸ベクトルを用いて挿入形状データを生成する。この過程では、最も操作部よりに配置された一番目の3方向ジャイロを原点とし、このジャイロの検出した軸ベクトルと次のポイントに配置された二番目の3方向ジャイロの検出した軸ベクトルとを含む平面を基準面とした座標系を考える。
【0026】
図5を基に挿入形状データの生成手順を説明する。図5は前記座標系における基準面上での隣り合う2つのポイントの軸ベクトルを示す説明図である。
【0027】
まず、各3方向ジャイロ10は、隣のジャイロまでの区間で内視鏡1の挿入部1aの曲率が一定となる間隔に配置することによりジャイロ間内視鏡形状は円弧を描くことになるため、図5に示すように、2つの軸ベクトルの内積より求めたベクトルのなす角θ1を中心角とし、配置した間隔すなわち円弧の長さから半径r1を算出する。この求めた中心角θ1と半径r1および検出点P1の座標値から検出点P2の座標値を求める。
【0028】
次に、この検出点P2と検出点P3を次の区間として、中心角θ2と半径r2および検出点P2の座標値から検出点P3の座標値を求める。
【0029】
同様の算出処理を最後の区間まで繰り返し、全ジャイロの位置座標を確定し、内視鏡の挿入形状データを生成する。
【0030】
このようにしてデータ処理回路12で生成した挿入形状データは、信号処理手段13に伝送されて映像信号に変換され、表示装置4に内視鏡形状画像として表示される。
【0031】
図4に戻り、ステップS7で形状検出の動作が終了したか否かを判断し、終了していない場合はステップS2に戻ることにより、形状検出動作の終了まで以上の処理を繰り返す。これにより、術者によって形状検出の終了が選択され指示されるまで内視鏡形状画像の表示の更新が繰り返される。
【0032】
以上説明したように、第1実施形態では、内視鏡挿入部内部に複数個の空間姿勢を検出する手段を設けると共に、所定時間内の各個所の姿勢情報を記憶する手段と、各姿勢情報から内視鏡の挿入形状情報を生成する手段と、挿入形状情報を視覚的に表示する手段とを設けることにより、内視鏡挿入形状を術者に提供するようになっている。このとき、既知の間隔で設けられた空間姿勢検出手段からの姿勢変化量を所定時間間隔で採取したデータから内視鏡挿入部の軸ベクトルを算出し、この軸ベクトルと既知の距離から内視鏡の挿入形状を検出して表示手段に表示するようにしている。
【0033】
第1実施形態によれば、内視鏡形状検出のためにX線などの外部より信号発生する手段を設ける必要がないため、システムが簡単な構成で内視鏡の挿入形状を検出し表示することができる。また、形状検出の際にX線による被爆等のおそれがなく、安全に内視鏡の挿入形状を得ることが可能である。
【0034】
また、内視鏡挿入部の各検出ポイントでの姿勢と検出手段の設置間隔のデータから簡略な推定処理の繰り返しのみで挿入形状データを生成することができるため、処理の高速化を図ることが可能である。また、各検出ポイントでの挿入部の方向ベクトルが検出されるため、挿入形状データ生成時のデータ補間処理の精度が向上し、形状をより正確に求めることが可能となる。
【0035】
図6ないし図9は本発明の第2実施形態に係り、図6は内視鏡形状検出装置の構成を示す構成図、図7は状態変化検出回路の構成を示すブロック図、図8は第2実施形態の動作を説明するためのフローチャート、図9は第2実施形態の形状検出処理を説明する作用説明図である。
【0036】
図6に示すように、内視鏡1は、挿入部1aの先端側に湾曲可能な湾曲部1cと対物光学系等を備えた先端部1dとを有しており、操作部1bには、内視鏡1の先端部1dの向きを変えるための湾曲操作部1e(上下方向湾曲用),1f(左右方向湾曲用)が設けられている。また、内視鏡1には、術者が内視鏡1の挿入部1aを挿入・抜去した長さを表す挿抜量と捻って回転させた回転量とを検出して電気信号に変換する挿抜・回転量検出手段15と、内視鏡1の湾曲操作部1e,1fの操作量を湾曲部1cの湾曲量として検出し電気信号に変換する湾曲量検出手段16とを設けている。
【0037】
内視鏡形状検出装置3は、前記挿抜・回転量検出手段15と湾曲量検出手段16の出力をデジタルデータとして検出する状態変化検出回路17と、状態変化検出回路17で検出されたデジタルデータを監視・蓄積して内視鏡の挿入形状データを生成するデータ処理回路12と、データ処理回路12で得られた挿入形状データを基に映像信号を生成する信号処理手段13とを備えて構成され、この信号処理手段13から出力される映像信号を視覚的な画像として表示する表示装置4に接続されている。
【0038】
挿抜・回転量検出手段15は、図7に示すように、内視鏡1の挿入部1aに常に接触して自由な方向に回転する検出ボール15aと、この検出ボール15aと常に接触して挿入部1aの長手方向の移動量を検出する挿抜量検出用ロータリーエンコーダ15bと、同じく検出ボール15aと常に接触して挿入部1aの外周方向の回転量を検出する回転量検出用ロータリーエンコーダ15cとから構成されている。また、湾曲量検出手段16は、湾曲操作部1e,1fのそれぞれの回転軸に常に接触して上下左右方向の湾曲量を検出する湾曲量検出用ロータリーエンコーダ16a,16bから構成されている。
【0039】
状態変化検出回路17は、各々のロータリーエンコーダごとに設けられた4つの同一の回路系統から構成され、それぞれの回路系統は、LPF17a,増幅回路17b,ADC17cを有している。さらに、状態変化検出回路17は、前記4系統の各ADC17cで変換され出力されるデータをラッチして貯え、データ処理回路12の要求するタイミングで出力するデータバッファ17dを備えている。
【0040】
次に、図8及び図9を参照して、第2実施形態に係る内視鏡形状検出装置の動作について説明する。
【0041】
内視鏡形状検出装置3は、術者により形状検出の動作の開始が指示されると、まずステップS11で、データ処理回路12内に設けられた図示しない監視タイマーや状態変化を表すデジタルデータを記憶するための記憶手段としてのメモリなどのパラメータを初期化する。このときに状態変化検出回路17のADC17cのA/D変換周期も所定値にセットされる。
【0042】
次に、ステップS12で、前記監視タイマーの計数が開始されると共にADC17cのA/D変換も開始され、状態変化検出回路17のデータバッファ17dにおいて、検出された内視鏡1の挿入部1aの挿抜量、回転量、湾曲量の変化分を表す電圧データがラッチされる。そしてステップS13で、前記データバッファ17dのデータはデータ処理回路12に読み込まれ、ロータリーエンコーダの特性に対応させた変位量に変換された後、所定の変位量より大きいかどうか、すなわち内視鏡の状態変化があったか否かが判断される。
【0043】
ステップS13で、変位量が所定の量より小さい場合はそのまま監視タイマーの計数を続ける。一方、変位量が所定の量より大きい場合はステップS14〜S19の処理に移り、各状態変化を記憶するメモリに変位量を蓄積した後、監視タイマーの計数を続ける。すなわち、ステップS14の判断で内視鏡の状態変化が回転量の変化である場合はステップS15で内視鏡回転量の増減分をメモリに蓄積し、ステップS16の判断で内視鏡の状態変化が挿入量の変化である場合はステップS17で内視鏡挿入量の増減分をメモリに蓄積し、ステップS18の判断で内視鏡の状態変化が内視鏡先端部の湾曲量の変化である場合はステップS19で湾曲量及び湾曲方向をメモリに蓄積する。
【0044】
なおここで、前記の挿入量、回転量、湾曲量は、図8の(a)に示すように挿入部軸ベクトルと先端部軸ベクトルとを設定した場合に、湾曲量は図8の(b)に示すように挿入部軸ベクトルと先端部軸ベクトルとのなす角、挿入量は図8の(c)に示すように挿入部軸ベクトルに沿った先端部軸ベクトルの移動量、回転量は図8の(d)に示すように挿入部軸ベクトルを中心軸とした先端部軸ベクトルの回転角というようにそれぞれ定義される。
【0045】
この後、ステップS20で監視タイマーの計数が終了したか否か判断し、終了していない場合はステップS12に戻ることにより、監視タイマーが所定の値までの計数を終了するまでこの蓄積処理を繰り返す。
【0046】
そして、監視タイマーの計数が終了すると、ステップS21に進み、この所定時間内に蓄積した各変位量のデータから内視鏡1の先端部1dの軌跡を算出する。次いで、ステップS22で、前段階で求めた先端部1dの軌跡から内視鏡の挿入形状データを生成し、画像化する。このとき、データ処理回路12により生成された挿入形状データは信号処理手段13に伝送されて映像信号に変換され、表示装置4に内視鏡形状画像として表示される。
【0047】
その後、ステップS23で形状検出の動作が終了したか否かを判断し、終了していない場合はステップS12に戻ることにより、形状検出動作の終了まで以上の処理を繰り返す。これにより、術者によって形状検出の終了が選択され指示されるまで内視鏡形状画像の表示の更新が繰り返される。
【0048】
以上説明したように、第2実施形態では、術者が行う内視鏡挿入の挿抜量・回転量・湾曲量を検出する手段を内視鏡に設けると共に、所定時間内の各変化量を記憶する手段と、挿入操作情報から内視鏡先端部の移動の軌跡を算出し内視鏡の挿入形状情報を生成する手段と、挿入形状情報を視覚的に表示する手段とを設けることにより、内視鏡挿入形状を術者に提供するようになっている。このとき、所定時間間隔で採取した術者の行う内視鏡挿入の操作情報から内視鏡先端の移動した軌跡を空間座標として算出し、内視鏡の挿入形状を検出して表示手段に表示するようにしている。
【0049】
第2実施形態によれば、内視鏡自体に検出手段を外付けで設けることができるため、内視鏡形状検出のために特別な内視鏡を準備する必要がなく、既存のシステムと組み合わせて使用することが可能であり、第1実施形態と同様に簡単な構成で正確な内視鏡の挿入形状を検出できる効果が得られる。
【0050】
さらに、図10及び図11を参照して、第2実施形態の変形例について説明する。図10は圧力検出回路の構成を示すブロック図、図11は第2実施形態の変形例の動作を説明するためのフローチャートである。
【0051】
この変形例では、図10に示すように、内視鏡1の挿入部1aの側面部に複数の圧力センサ18を設け、内視鏡形状検出装置3には圧力検出回路19を設けるようにしている。複数の圧力センサ18は、挿入部1aの軸方向及び周方向にそれぞれ所定の間隔で設けられ、周方向の位置毎に挿入部軸方向の各ポイントのセンサがそれぞれまとめられてマルチプレクサ20に接続されている。そして、各マルチプレクサ20が圧力検出回路19に接続されている。
【0052】
圧力検出回路19は、状態変化検出回路17と同様に、各々のマルチプレクサ20ごとに複数(図では4つ)の同一の回路系統(LPF19a,増幅回路19b,ADC19c)を有すると共に、各ADC19cから出力されるデータを取り込み、データ処理回路12の要求するタイミングで出力するデータバッファ19dを備えて構成されている。
【0053】
図11に示すように本変形例では、図8に示した第2実施形態の動作手順において、内視鏡の状態変化の変位量を蓄積する際に、挿抜量、回転量、湾曲量の蓄積の他に、内視鏡1の挿入部1aの側面の圧力変化量を蓄積する動作を加えたものである。すなわち、ステップS18及びS19の後に、ステップS24の判断で内視鏡の状態変化が内視鏡の側面の圧力変化である場合はステップS25で圧力変化のあった位置及び変化量をメモリに蓄積する。他のステップは第2実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0054】
圧力センサ18の出力はマルチプレクサ20を介して圧力検出回路19に送られ、ここで各ポイントの圧力が検出されて電圧データとしてデータバッファ19dにラッチされる。このデータはデータ処理回路12に読み込まれ、各ポイントの圧力変化量のデータに変換されて前述のように挿抜量などと同様の手順で蓄積される。
【0055】
この圧力データは、各ポイントで内視鏡1の挿入部1aが体腔内組織と接触している圧力を表しており、その部分の挿入部1aが先端部1dの軌跡からずれたことを示している。したがって、各変位量のデータから算出した先端部1dの軌跡を基に内視鏡の挿入形状データを生成する際に、先端部以外の挿入部分について、この圧力データに基づいて補正を行う。
【0056】
この変形例では、内視鏡挿入部と体腔内組織との接触の度合いによって挿入形状データの生成時に補正を行うことにより、より正確な挿入形状を求めることができる。
【0057】
図12及び図13は本発明の第3実施形態に係り、図12は内視鏡形状検出装置及び内視鏡自動挿入制御装置のシステム構成を示す構成図、図13は第3実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【0058】
図12に示すように、内視鏡1は、制御信号に応じて内視鏡1の湾曲部1cを駆動して先端部1dの向きを変えると共に、挿入部1aを体腔内に進行もしくは後退させる湾曲・挿抜駆動手段21を備えている。この内視鏡1は、湾曲・挿抜駆動手段21を含む内視鏡1の制御及び信号処理を行う自動挿入制御装置22に接続されており、自動挿入制御装置22には、内視鏡形状検出装置3と表示装置4とが接続されている。
【0059】
内視鏡1には、照明光を先端部1dへ伝送するライトガイド23、照明光を先端部1dから対象部位へ出射する配光レンズ24、対象部位からの反射光による像を通過させる対物レンズ25、対象部位の像を操作部1bへ伝送するイメージガイド26、通常観察用の視野の観察窓と自動挿入用の視野の観察窓とを切り換える視野マスク27、対象部位の像を結像する結像レンズ28、結像された対象部位の像を光電変換するCCD等の固体撮像素子29が設けられている。また、自動挿入制御装置22には、ライトガイド23に照明光を供給するための光源30及び集光レンズ31と、内視鏡1の固体撮像素子29から出力される撮像信号を基に映像信号を生成する信号処理手段13とが設けられている。
【0060】
自動挿入制御装置22内の光源30から出射され、集光レンズ31で集光された照明光は、ライトガイド23の端部に入射してこのライトガイド23,配光レンズ24を経て先端部1dより対象部位へ照射される。照明された対象部位の像は、対物レンズ25,イメージガイド26,視野マスク27,結像レンズ28を経て固体撮像素子29によって光電変換され、対象部位の画像の撮像信号として自動挿入制御装置22内の信号処理手段13に送られて信号処理が施され、映像信号に変換される。この映像信号は表示装置4に送られて内視鏡画像として患者体内の観察画像が表示される。
【0061】
また、自動挿入制御装置22は、前記光源30の点灯を制御すると共に、固体撮像素子29により撮像された対象部位の画像を基に内視鏡1の挿入部1aを進行・後退させるための挿抜方向を検出して湾曲・挿抜駆動手段21を制御する湾曲・挿抜制御手段32を備えている。
【0062】
一方、内視鏡形状検出装置3は、自動挿入制御装置22の湾曲・挿抜制御手段32から制御データの情報を取り込み記憶する制御データ記憶手段33と、記憶された制御データから内視鏡1の挿入形状データを生成するデータ処理回路12と、生成された挿入形状データから湾曲・挿抜制御手段32で検出した挿抜方向を補正する挿抜方向補正手段34とを備えている。
【0063】
また、データ処理回路12により生成した挿入形状データは、自動挿入制御装置22の信号処理手段13で映像信号に変換されて表示装置4へ送られ、表示装置4において内視鏡1の挿入形状を表す内視鏡形状画像を選択的に表示できるようになっている。
【0064】
次に、図13を参照して、第3実施形態に係る内視鏡形状検出装置の動作について説明する。なお、自動挿入制御装置22の動作については、ここでは詳しい説明は省略するが、特開平2−218330号公報に開示されているように、通常観察よりも狭い視野をスキャンして暗い方向を検出することにより、内視鏡の挿入方向を検出でき、その検出した挿入方向に内視鏡が挿入されるよう挿入制御を行うことによって、挿入部1aを容易に自動挿入することができる。
【0065】
このとき、湾曲・挿抜制御手段32は、固体撮像素子29から出力される撮像信号を基に、目標の挿抜方向データ、湾曲部1cの湾曲制御データ、及び挿入部1aの挿抜制御データを算出し、これらのデータによって湾曲・挿抜駆動手段21を制御して挿入部1aを駆動する。また、前記3つのデータは、内視鏡形状検出装置3の制御データ記憶手段33に記憶される。
【0066】
内視鏡形状検出装置3は、術者により形状検出の動作の開始が指示されると、まずステップS31で、データ処理回路12内に設けられた図示しない監視タイマーや湾曲・挿抜の制御データを記憶するための記憶手段としてのメモリなどのパラメータを初期化する。
【0067】
次に、ステップS32で、前記監視タイマーの計数が開始され、データ処理回路12において湾曲・挿抜制御手段32によって算出され制御データ記憶手段33に記憶された目標の挿抜方向データ、湾曲部1cの湾曲制御データ、及び挿入部1aの挿抜制御データの読み込みを開始する。そしてステップS33で、これらの3つのデータが、所定の量より大きいかどうか、すなわち内視鏡の状態変化があったか否かが判断される。
【0068】
ステップS33で、前記データが所定の量より小さい場合はそのまま監視タイマーの計数を続ける。一方、所定の量より大きい場合はステップS34〜S37の処理に移り、各制御データを対応するメモリに蓄積した後、監視タイマーの計数を続ける。すなわち、ステップS34の判断で内視鏡の状態変化が挿入量の変化である場合はステップS35で内視鏡挿入量の増減分をメモリに蓄積し、ステップS36の判断で内視鏡の状態変化が内視鏡先端部の湾曲量の変化である場合はステップS37で湾曲量及び湾曲方向をメモリに蓄積する。
【0069】
この後、ステップS38で監視タイマーの計数が終了したか否か判断し、終了していない場合はステップS32に戻ることにより、監視タイマーが所定の値までの計数を終了するまでこの蓄積処理を繰り返す。
【0070】
そして、監視タイマーの計数が終了すると、ステップS39に進み、この所定時間内に蓄積した各制御量のデータから内視鏡1の先端部1dの軌跡を算出する。次いで、ステップS40で、前段階で求めた先端部1dの軌跡から内視鏡の挿入形状データを生成し、信号処理手段13に伝送する。そして、この伝送された挿入形状データは信号処理手段13によって映像信号に変換され、表示装置4に出力されて内視鏡形状画像として表示される。
【0071】
その後、ステップS41で形状検出の動作が終了したか否かを判断し、終了していない場合はステップS32に戻ることにより、形状検出動作の終了まで以上の処理を繰り返す。これにより、術者によって形状検出の終了が選択され指示されるまで内視鏡形状画像の表示の更新が繰り返される。
【0072】
さらに、本実施形態では予め挿入形状のサンプルデータをデータ処理回路12内のメモリに記憶しておき、現在生成された挿入形状データと比較することにより、先端部1dがどの部位に存在しているかを推定することができる。挿抜方向補正手段34は、この推定された部位情報から湾曲量に制限範囲を設定し、予め読み込んでおいた挿抜方向データを補正する。この補正データが自動挿入制御装置22の湾曲・挿抜制御手段32に伝送されると、湾曲・挿抜制御手段32は補正された挿抜方向データに基づき、次の湾曲量と挿抜量を算出する。
【0073】
以上説明したように、第3実施形態では、内視鏡の挿抜方向を判断することにより湾曲制御と挿抜制御を行う内視鏡自動挿入装置から湾曲制御情報と挿抜制御情報の値を所定時間毎に取り込み蓄積する記憶手段と、記憶手段のデータを処理して形状情報を得る形状情報生成手段と、この形状情報に基づき自動挿入の挿抜方向を補正する挿抜方向補正手段とを設けることにより、自動挿入を容易に行うことができるようになっている。このとき、内視鏡の湾曲制御情報と挿抜制御情報の蓄積データから挿入された内視鏡挿入部の形状を生成し、全体の形状とあらかじめ記憶しておいたサンプル形状データと比較することにより現在の内視鏡先端が患者の体内でどの部位に存在するかを判断する。そして、検出した挿抜方向を各部位によって所定の範囲で限定し必要に応じて補正するようにしている。
【0074】
第3実施形態によれば、自動挿入制御装置から制御データを読み込む構成だけで挿入形状を検出することができるため、挿入方向の検出をより厳密にでき、正確な内視鏡の挿入形状検出が可能であると共に、第1実施形態と同様にシステム構成を簡単にすることができる効果が得られる。
【0075】
[付記]
(1) 内視鏡の挿入部に複数配設され、この配設した点の回転角を検出し電気信号に変換する回転角検出手段を直交する3軸上に配置してなる姿勢検出センサ手段と、
前記姿勢検出センサ手段の出力を所定間隔で標本化する姿勢検出手段と、
複数の前記姿勢検出手段が標本化した複数の姿勢情報から内視鏡の挿入形状を検出する形状検出手段と、
を備えたことを特徴とする内視鏡形状検出装置。
【0076】
(2) 前記姿勢検出センサ手段は、ジャイロスコープであることを特徴とする付記1に記載の内視鏡形状検出装置。
【0077】
(3) 術者が行う内視鏡挿入部の挿抜操作の操作量を検出する操作量検出センサ手段と、
前記操作量検出センサ手段の出力を所定間隔で標本化する操作量検出手段と、
複数の前記操作量検出手段が標本化した複数の操作量情報から内視鏡の挿入形状を検出する形状検出手段と、
を備えたことを特徴とする内視鏡形状検出装置。
【0078】
(4) 内視鏡自動挿入制御装置と組み合わせて使用する内視鏡形状検出装置において、
前記内視鏡自動挿入制御装置の行う挿抜操作の制御データを取り込み記憶する記憶手段と、
所定間隔で読み出した前記記憶手段のデータから内視鏡の挿入形状を検出する形状検出手段と、
を備えたことを特徴とする内視鏡形状検出装置。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内視鏡装置のシステム構成を示す構成図
【図2】第1実施形態の内視鏡形状検出装置の構成を示す構成図
【図3】姿勢検出回路の構成を示すブロック図
【図4】第1実施形態の動作を説明するためのフローチャート
【図5】第1実施形態の形状検出処理を説明する作用説明図
【図6】本発明の第2実施形態に係る内視鏡形状検出装置の構成を示す構成図
【図7】状態変化検出回路の構成を示すブロック図
【図8】第2実施形態の動作を説明するためのフローチャート
【図9】第2実施形態の形状検出処理を説明する作用説明図
【図10】第2実施形態の変形例に係る圧力検出回路の構成を示すブロック図
【図11】第2実施形態の変形例の動作を説明するためのフローチャート
【図12】本発明の第3実施形態に係る内視鏡形状検出装置及び内視鏡自動挿入制御装置のシステム構成を示す構成図
【図13】第3実施形態の動作を説明するためのフローチャート
【符号の説明】
【0080】
1…内視鏡
1a…挿入部
1c…湾曲部
1d…先端部
2…内視鏡観察装置
3…内視鏡形状検出装置
4…表示装置
10…3方向ジャイロ
10a…圧電振動ジャイロ
11…姿勢検出回路
11a…ローパスフィルタ(LPF)
11b…増幅回路
11c…アナログ−デジタル変換器(ADC)
11d…データバッファ
12…データ処理回路
13…信号処理手段
21…湾曲・挿抜駆動手段
29…固定撮像素子
32…湾曲・挿抜制御手段
33…制御データ記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の観察画像を光電変換する固体撮像素子により撮像された対象部位の撮像信号を基に、目標の挿抜方向データ、湾曲部の湾曲制御データ、及び挿入部の挿抜制御データを算出し、内視鏡挿入部を進行・後退させるための挿抜方向を検出する湾曲・挿抜制御手段と、
前記湾曲・挿抜制御手段の制御信号に応じて内視鏡の湾曲部を駆動して先端部の向きを変えると共に、挿入部を進行若しくは後退させる湾曲・挿抜駆動手段と、
前記湾曲・挿抜制御手段から制御データを取り込んで記憶する制御データ記憶手段と、
この制御データ記憶手段において記憶された制御データから内視鏡の挿入形状データを生成するデータ処理手段と、
を備えていることを特徴とする内視鏡形状検出装置。
【請求項2】
前記データ生成手段で生成した挿入形状データから前記湾曲・挿抜制御手段で検出した挿抜方向を補正する挿抜方向補正手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡形状検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−90098(P2007−90098A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348352(P2006−348352)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【分割の表示】特願平9−176121の分割
【原出願日】平成9年7月1日(1997.7.1)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】