説明

内視鏡装置

【課題】複数種類の発光素子群の選択的な切り換えを簡単な構成で実現した内視鏡装置を提供する。
【解決手段】所定の周波数特性を有する第1発光素子群と、第1発光素子群と並列接続されるとともに第1発光素子群と極性を異にして接続され第1発光素子群とは異なる周波数特性を有する第2発光素子群と、第1発光素子群の駆動中は第2発光素子群に流れる電流を抑制する第1状態と、第2発光素子群の中は第1発光素子群に流れる電流を抑制する第2状態とを選択可能に駆動制御する駆動制御部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野及び工業分野において内視鏡装置が広く利用されている。医療分野において用いられる内視鏡装置は、細長い挿入部を被検体の体腔内に挿入することによって体腔内の臓器等を観察したり、必要に応じて処置具挿通チャンネル内に挿入した処置具を用いて各種の処置を施す等に利用される。
【0003】
また、工業用分野において用いられる内視鏡装置は、細長い挿入部を被検体であるエンジン等の機械装置や工場配管等の内部に挿入することによって被検体内の傷や腐蝕等を観察したり、各種の処置等を行うのに利用される。
【0004】
このように内視鏡装置の観察対象となる部位は、暗所であるのが普通であることから、体腔内や機器内部へと挿入部を挿入し所望の観察対象部位へと導くと共に、所望の観察対象部位を照明するための光源が必要となる。
【0005】
従来の内視鏡装置においては、内視鏡の挿入部の先端部に発光ダイオード(LED)等の発光素子を設け、この発光素子を光源として観察対象部位を照射するように構成された照明装置を具備するものが種々提案されている。
【0006】
一般に、光源としての発光ダイオード(LED)は、通常の照明光源として使用される電球等のランプと比較して長寿命、低消費電力であることが知られている。
【0007】
また、発光ダイオード(LED)は、可視光領域の波長の光の発光をするものだけでなく、例えば紫外光や赤外光等の波長領域の光を発光し得るものがある。
【0008】
そこで、従来の工業用の内視鏡装置を用いて管内検査等を行う際の非破壊検査の1つとして蛍光探傷検査というものがある。この蛍光探傷検査は、通常の可視光による目視観察では発見が困難となる微細亀裂等を探傷するためになされる検査である。具体的には、例えば航空機のエンジンブレード等の観察対象物の表面に生じた微細な亀裂等による部材欠陥を発見する際等に行われる。
【0009】
この蛍光探傷検査は、次のようにしてなされる。即ち、まず観察対象物の表面に蛍光剤を塗布する。該対象物の表面に微細亀裂等が生じていれば、その欠陥部分から蛍光剤が浸透することになる。したがって、観察対象物の表面に蛍光剤を塗布し、余分な蛍光剤を除去した後に、紫外光を照射すると、紫外光により励起された光(蛍光)が蛍光剤から発することになる。この蛍光を観察することによって、観察対象物の表面の欠陥の有無を検査することができるというものである。
【0010】
一方、従来の内視鏡装置においては、内視鏡の挿入部の先端部位に設けられる先端部を着脱自在に構成したアダプタ式の内視鏡が種々提案されている。
【0011】
このような形態のアダプタ式内視鏡における先端部には、照明光源と撮像光学系等を備えて構成し、この先端部を内視鏡挿入部の先端側に捩じ込み等の締結手段を用いて着脱し得るようにしている。そして、先端部と内視鏡挿入部の先端側とを締結する際には、先端部側の電気接点と挿入部側の電気接点とが接触することで、両者の電気的な接続が確保されるように構成されている。
【0012】
例えば、図14〜図16は、従来のアダプタ式内視鏡における先端アダプタを示す図である。このうち、図14は、従来のアダプタ式内視鏡における先端アダプタの側断面図である。図15は、図14の先端アダプタの構成部材のうち照明ユニットの正面図を示している。なお、図14は、図15の[14]−[14]に沿う線で切断した側断面を示している。図16は、従来のアダプタ式内視鏡における照明ユニット関連の電気的な接続を簡易的に示す回路図である。
【0013】
図14,図15に示すように、この従来のアダプタ式内視鏡の先端アダプタ110は、着脱リング112と、照明ユニット113と、撮像光学ユニット115等によって主に構成されている。
【0014】
着脱リング112の内周面には、雌ネジからなるネジ溝112a,112bが設けられている。このネジ溝112a,112bは、内視鏡挿入部(図示せず)の先端部側に設けられる雄ネジに螺合し得るように形成されている。これにより、先端アダプタ110は挿入部の先端部に対して着脱自在となっている。
【0015】
照明ユニット113は、照明ユニット枠113aと、複数の発光素子であるLEDチップ113bと、照明用基板113cと、連結部材113dと、蛍光体分散樹脂113eと、保護用コーティング樹脂113k等によって主に構成されている。
【0016】
照明用基板113cは、照明ユニット枠113aの先端寄りの部位に内挿されている。照明用基板113cの実装面上には電極パターン113fが形成されており、この電極パターン113fに対してLEDチップ113bはボンディングワイヤ等によって電気的に接続されている。そして、照明用基板113cの前面側において、LEDチップ113bを覆うように蛍光体分散樹脂113eが設けられている。さらに、この蛍光体分散樹脂113eの前面を覆うように保護用コーティング樹脂113kが設けられている。
【0017】
照明用基板113cの裏面には、前面側の電極パターン113fと電気的に接続される2つの接点部113gに対してそれぞれに対応する2つの連結部材113dが接続されている。この連結部材113dは、先端アダプタ110が内視鏡挿入部の先端部(図示せず)に装着された時に、先端部側の電気接点と接触することによって、連結部材113dを介在として内視鏡挿入部と照明ユニット113との間の電気的な接続が確保されるようになっている。
【0018】
撮像光学ユニット115は、複数の撮像レンズ115bと、レンズ保持筒115a等によって主に構成されている。この撮像光学ユニット115は、照明ユニット113の照明ユニット枠113aに内挿されている。
【0019】
このように構成された従来の形態の内視鏡における先端アダプタにおいて、照明ユニット113の複数のLEDチップ113bは、例えば図16の回路図に示すような形態で電気的に接続されている。図16に示す接続例では、4個のLEDチップ113bを直列接続した2つのグループを並列接続した例を示している。
【0020】
なお、図16の回路図は、先端アダプタ110と、挿入部及び操作部からなる内視鏡116とが、連結部材113dを介して互いの電気接点が電気的に接続した状態を示している。
【0021】
ここで、内視鏡116の例えば操作部内には電源制御部120が設けられていると共に、先端アダプタ110には装着状態識別用抵抗113rが設けられている。この装着状態識別用抵抗113rは、内視鏡116の先端部に対して先端アダプタ110が装着されたときに、電源制御部120によりその旨を検出し得るようにするために設けられているものである。
【0022】
このような形態のアダプタ式内視鏡装置においては、例えば通常の可視光観察用の先端アダプタや蛍光観察用の先端アダプタ等、用途別に異なる光源をそれぞれ備えた複数種類の先端アダプタを用意しておけば、所望する検査用途に応じて適宜、対応する先端アダプタに交換することで、さまざまな種類の内視鏡検査に対応することが可能な内視鏡装置を実現できる。
【0023】
しかしながら、上述したように、内視鏡装置の観察対象部位が暗所にある場合、内視鏡挿入部の先端部を所望の観察対象部位へと導く際には通常の可視光観察用の光源が適している一方、蛍光観察を行う際には蛍光観察用の光源が適する。したがって、例えば所望の観察対象部位が、奥まった場所にあるような場合であって蛍光探傷検査を行いたいといった場合には、上記した先端アダプタを交換する方法では対応しきれない場合がある。
【0024】
そこで、例えば単一の先端アダプタにおいて、波長の異なる複数種類の光源を備え、光源種類を切り換えて場合に応じた照明光源を発光し得るようにすれば至便である。
【0025】
例えば、図17〜図19は、従来のアダプタ式内視鏡において、上記従来のものとは異なる別の形態の先端アダプタの構成例を示す図である。このうち、図17は、従来のアダプタ式内視鏡における別形態の先端アダプタの側断面図である。図18は、図17の先端アダプタの構成部材のうち照明ユニットの正面図を示している。なお、図17は、図18の[17]−[17]に沿う線で切断した側断面を示している。図19は、従来のアダプタ式内視鏡において別の形態の先端アダプタにおける照明ユニット関連の電気的な接続を簡易的に示す回路図である。
【0026】
この形態の先端アダプタ110Aの構成は、上記従来の形態の先端アダプタ110と略同様である。この形態の先端アダプタ110Aでは、二種類の光源と、これら2種の光源を選択的に点灯させるための二系統の照明回路とを有して構成され、これら二系統の回路を切り換える切換スイッチ121を内視鏡116の操作部内に具備して構成した点が異なる。
【0027】
即ち、この形態の先端アダプタ110Aにおいては、例えば通常可視光を発光する複数のLEDチップ113b1と、例えば紫外光を発光する複数のLEDチップ113b2と、これら複数のLEDチップ113b1,113b2を実装するパターンを形成した照明用基板113Acと、3つの連結部材113d等を有して構成される。
【0028】
本例では、図18,図19に示すように、4個のLEDチップ113b1を直列接続させてなる回路と、4個のLEDチップ113b2を直列接続させてなる回路との二系統の照明用回路を形成している。これに合わせて、照明用基板113cの実装面上の電極パターン113fも設定されている。そして、照明用基板113Acの裏面には、3つの接点部113gが形成されていて、これら3つの接点部113gに対応させて3つの連結部材113dが設けられる。これにより、先端アダプタ110Aと内視鏡挿入部の先端との間は、上記3つの連結部材113dを介して電気的に接続される。
【0029】
内視鏡116の操作部内には、電源制御部120と、上記二系統の回路を選択的に切り換える切換スイッチ121が設けられている。その他の構成は、上述した従来のものと略同様である。なお、本例では、装着状態識別用抵抗113rの図示は省略している。
【0030】
このように構成された従来のアダプタ式内視鏡装置における別の形態の内視鏡の先端アダプタ110Aでは、内視鏡116の操作部内に設けた切換スイッチ121の切り換え操作によって、上記二系統の回路を選択的に切り換えることができる。したがって、所望のタイミングで内視鏡116の操作部を手元側で切り換え操作することによって、例えば通常の可視光観察用のLEDチップ113b1を含む回路に通電させて通常光を発光させたり、蛍光観察用のLEDチップ113b2を含む回路に通電させて蛍光観察用の光を発光させることができる。
なお、内視鏡装置における照明装置において、波長の異なる光を発光させる複数種類の光源を備え、各光源に対応する二系統の照明回路を構成し、各光源の光量をそれぞれ制御するという技術が、例えば特開2007−139822号公報等によって種々のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開2007−139822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
ところが、上述の従来の内視鏡装置における別の形態の先端アダプタの構成を採用した場合、例えば二系統の回路を切換スイッチ121の操作によって選択的に切り換えることができるのであるが、そのような回路を構成するために、限られたスペースしかない照明用基板113Acの前面及び裏面に形成するパターン113fが複雑化してしまうと共に、3つの接点113g及び3つの連結部材113d等を新たに加えて構成する必要がある。 したがって、従来の内視鏡装置において、単一の内視鏡において先端部に複数種類の光源を備え、これら複数種類の光源を適宜切り換え得るように構成したものは、複雑化、太径化してしまうおそれがあった。
【0033】
そこで、内視鏡挿入部の先端部に波長の異なる光を発光させる複数種類の発光素子群を具備する内視鏡を含む内視鏡装置において、複数種類の発光素子群の選択的な切り換えを簡単な構成で実現することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本実施態様にかかる内視鏡装置は、所定の周波数特性を有する第1発光素子群と、前記第1発光素子群と並列接続されるとともに、前記第1発光素子群と極性を異にして接続され、前記第1発光素子群とは異なる周波数特性を有する第2発光素子群と、前記第1発光素子群の駆動中は前記第2発光素子群に流れる電流を抑制する第1状態と、前記第2発光素子群の駆動中は前記第1発光素子群に流れる電流を抑制する第2状態とを選択可能に駆動制御する駆動制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本実施態様によれば、内視鏡挿入部の先端部に波長の異なる光を発光させる複数種類の発光素子群を具備する内視鏡を含む内視鏡装置において、複数種類の発光素子群の選択的な切り換えを簡単な構成で実現した内視鏡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態の内視鏡装置の全体を示す外観斜視図。
【図2】図1の内視鏡装置における内視鏡の挿入部の先端アダプタのみを取り出して拡大して示す拡大斜視図。
【図3】図2の矢印[III]方向から見た先端アダプタの正面図。
【図4】図2の先端アダプタの側断面図であって、図5の[IV]−[IV]線に沿って切断した場合の断面を示す図。
【図5】図2の先端アダプタにおける照明用基板を取り出して示す照明用基板の前面側の平面図。
【図6】図5の照明用基板の裏面側の平面図。
【図7】図1の内視鏡における発光素子と電源との接続を簡易的に示す回路図。
【図8】本発明の第2の実施形態の先端アダプタの正面図。
【図9】図8の先端アダプタの側断面図であって、図10の[IX]−[IX]線に沿って切断した場合の断面を示す図。
【図10】図8の先端アダプタにおける照明用基板を取り出して示す前面側の平面図。
【図11】図10の照明用基板の裏面側の平面図。
【図12】本発明の第2の実施形態の内視鏡装置における発光素子と電源との接続を簡易的に示す回路図。
【図13】本発明の第3の実施形態の内視鏡装置における発光素子と電源との接続を簡易的に示す回路図。
【図14】従来のアダプタ式内視鏡における先端アダプタの側断面図であって図15の[14]−[14]線で切断した断面を示す図。
【図15】図14の先端アダプタにおける照明用基板の正面図。
【図16】図14の内視鏡における発光素子と電源との接続を簡易的に示す回路図。
【図17】従来の別の形態のアダプタ式内視鏡における先端アダプタの側断面図であって図18の[17]−[17]線で切断した断面を示す図。
【図18】図17の先端アダプタにおける照明用基板の正面図。
【図19】従来の別の形態の内視鏡における発光素子と電源との接続を簡易的に示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。
【0038】
[第1の実施形態]
図1〜図7は、本発明の第1の実施形態を示す図である。このうち、図1は本発明の第1の実施形態の内視鏡装置の全体を示す外観斜視図である。図2は、図1の内視鏡装置における内視鏡の挿入部の先端アダプタのみを取り出して拡大して示す拡大斜視図である。図3は、図2の矢印[III]方向から見た先端アダプタの正面図である。図4は、図2の先端アダプタの側断面図である。なお、図4は、図5の[IV]−[IV]線に沿って切断した場合の断面を示している。図5,図6は、図2の先端アダプタにおける照明用基板を取り出して示す平面図である。このうち、図5は照明用基板の前面側の平面図である。図6は照明用基板の裏面側の平面図である。図7は、図1の内視鏡における発光素子と電源との接続を簡易的に示す回路図である。
【0039】
上記各実施形態の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0040】
まず、本実施形態の内視鏡装置1の全体構成を図1によって以下に簡単に説明する。
【0041】
図1に示すように、本実施形態の内視鏡装置1は、挿入部2及び操作部3からなる内視鏡と、装置本体4とによって主に構成されている。
【0042】
また、本実施形態の内視鏡装置1における内視鏡は、挿入部2の先端部位の構成部位を着脱自在に構成したアダプタ式の内視鏡である。
【0043】
内視鏡の挿入部2は、観察対象物となるエンジン等の内部に挿入されるものである。この挿入部2は、先端側から順に先端アダプタ10,先端部6,湾曲部7,可撓管部8が連設された形態で構成されている。
【0044】
先端アダプタ10は、内部に撮像光学系や照明光源を具備し、先端部6に対して図1における矢印A方向に着脱自在に構成されている。先端アダプタ10の詳細構成については後述する。
【0045】
先端部6は、先端アダプタ10と湾曲部7との間を着脱自在とするジョイント部を構成している。そのために、先端アダプタ10のネジ溝12a,12b(後述する;図4参照)に螺合する雄ネジが先端部6の外周面上に形成されている。また、先端部6には、例えばCCD,C−MOS等の撮像素子が内蔵されている。
【0046】
湾曲部7は、先端部6の基端側に一体に連設されている。湾曲部7は、図示しない関節駒を連設して形成されており、例えば上下左右の4方向に湾曲自在に構成されている。なお、湾曲部7の詳細な構成は、本発明とは直接関連しない点であるので、従来の内視鏡における同等の構成を有するものとして、その説明を省略する。
【0047】
可撓管部8は、湾曲部7の基端側に一体に連設されている。可撓管部8は、可撓性を有し、細長のチューブ状に形成されている。可撓管部8の基端側は、操作部3に連設されている。
【0048】
操作部3は、各種の操作部材を複数備えると共に、使用者が把持する把持部3hを有して構成されている。操作部3は、ユニバーサルケーブル9を介して装置本体4と接続されている。
【0049】
後述する図7の回路図の説明の際に詳述するが、操作部3には、電源制御部20が内蔵されている。また、操作部3に設けられる操作部材の一つとして、後述する光源切換スイッチに作用する光源切換操作部材(図中特に指示せず)が含まれているものとする。なお、上記電源制御部20の配置は、操作部3内に限ることはなく、この例とは別に、例えば装置本体4の内部に設けるようにしてもよい。
【0050】
装置本体4は、カメラコントロールユニット(CCU),記録装置,表示モニタ4m,電源ユニット等によって主に構成されている。
【0051】
カメラコントロールユニットは、先端部6の内部に設けられる撮像素子に対する制御信号を出力したり、この撮像素子からの出力信号を受信する等の撮像関係の各種信号処理を行うユニットである。
【0052】
記録ユニットは、処理画像情報を始めとした各種の情報等を記録するユニットである。
【0053】
表示モニタ4mは、カメラコントロールユニットによって信号処理された結果得られる画像や各種の情報を可視化して表示するための表示装置である。
【0054】
電源ユニットは、例えばカメラコントロールユニットや表示モニタ4m等の各ユニットに対して電力を供給するユニットであって、バッテリー等を含んで構成される。
【0055】
ユニバーサルケーブル9は、内視鏡の操作部3と装置本体4との間を電気的に接続するケーブルであって、例えば挿入部2の先端部6内の撮像素子との間を接続する信号線(不図示)や先端アダプタ10内の照明ユニット13(後述する;図2,図4参照)へと電力を供給する電力線等が挿通されている。
【0056】
次に、本実施形態の内視鏡装置1における先端アダプタ10の構成を図2〜図7を用いて以下に詳述する。
【0057】
先端アダプタ10は、着脱リング12と、照明ユニット13と、撮像光学ユニット15等によって主に構成されている。
【0058】
図4に示すように、着脱リング12は略管状に形成され、内周面にネジ溝12a,12bが設けられている。このネジ溝12a,12bは、上述したように内視鏡の挿入部2の先端部6(図1参照)側に設けられる雄ネジに螺合し得るように形成されている。これにより、先端アダプタ10は挿入部2の先端部6の先端側に対して着脱自在となっている。
【0059】
照明ユニット13は、略管状に形成される照明ユニット枠13aと、照明光源となる複数の発光素子(以下、LEDチップという)13bと、複数のLEDチップ13b1,13b2が実装される照明用基板13cと、照明用基板13cの実装面の裏面側の複数の接点部13gに接続される複数の連結部材13dと、LEDチップ13b1の前面側を覆うように設けられる蛍光体分散樹脂13eと、この蛍光体分散樹脂13eの前面を覆う保護用のコーティング樹脂13k等によって主に構成されている。
【0060】
なお、図2においては、複数のLEDチップ13bの配置を示すために、蛍光体分散樹脂13e及び保護用コーティング樹脂13kの図示を省略している。
【0061】
照明光源としてのLEDチップ13bは、許容される電流値が一定の場合、できるだけ多数を密に実装する程、得られる照明光量が大きくなるのは周知である。したがって、複数のLEDチップ13b1,13b2の実装個数は、本実施形態を説明する図面に示される数(8個を例示している)に限られることはなく、基板面積、又は回路設計により任意に設定することができる。
【0062】
本実施形態における照明光源としての発光素子としては、例えば波長の異なる光(周波数特性の異なる光,異なる分光分布,異なる単一ピーク波長,異なる帯域波長,異なる色温度等)を発光させる少なくとも二種類の発光素子である複数のLEDチップ13b1,13b2をそれぞれ同数具備している。
【0063】
このうち一方の種類のLEDチップ13b1としては、例えば可視光領域の波長の光を発光するものが適用される。このLEDチップ13b1は、例えば白色の可視光を発生させるLEDであり、観察対象物の管腔内等の暗所中において所望の観察部位へと導く際や通常の可視光観察を行う際に用いられる。
【0064】
また、他方の種類のLEDチップ13b2としては、例えば紫外光や赤外光等の波長領域の光を発光し得るものが適用される。このLEDチップ13b2は、観察対象物における所望の観察部位の蛍光探傷検査等の蛍光観察や赤外光観察等を行う際に用いられる。
【0065】
なお、本実施形態においては、可視光観察用のLEDチップ13b1と、蛍光観察用のLEDチップ13b2をそれぞれ4個ずつ照明用基板13c上に実装した例を示している。そして、本実施形態における照明ユニット13は、4個のLEDチップ13b1からなる一群と、4個のLEDチップ13b2からなる一群との2つのグループの発光素子を有している。
【0066】
これら複数のLEDチップ13b1,13b2は、照明用基板13cの実装面上に形成された複数の電極パターン13fに対してボンディングワイヤ等によって電気的に接続されている。
【0067】
これらの複数のLEDチップ13b1,13b2は、照明用基板13cの実装面上において図5の符号Bで示す二点鎖線で描かれる円上に沿って並べて配置されている。この二点鎖線Bは、照明用基板13cの実装面上において、最外周縁と開口13hの外周縁との間の基板上の略中間を通る円を想定している。
【0068】
また、各LEDチップ13b1,13b2は、照明用基板13cの実装面上において接点部13gの形成されている領域を除く領域に、上記二点鎖線Bの円上に沿って、かつ2つのグループが対象となるように配置されている。そして、各グループ内においては、個々のLEDチップ13b1同士又は個々のLEDチップ13b2同士は、図5の符号P1で示すように略等間隔となるように配置されている。
【0069】
照明用基板13cは、例えば、略リング形状に形成されていて、その略中央部分には撮像レンズ15b(後述する;図3,図4参照)の前面を露呈させて観察対象物からの光束を先端アダプタ10内へと導く開口13hが穿設されている。この照明用基板13cは、照明ユニット枠13aの先端寄りの部位に内挿されている。照明用基板13cが照明ユニット枠13aに装着された状態においては、照明用基板13cの実装面、即ちLEDチップ13bが実装されている面が、前面に向けて露呈するようになっている。そして、照明用基板13cの前面側には、LEDチップ13b1を覆うように蛍光体分散樹脂13eが設けられている。さらに、蛍光体分散樹脂13eの前面側には、これを覆うように保護用コーティング樹脂13kが設けられている。すなわち、LEDチップ13b1が青色を発光する素子である場合は、LEDチップ13b1に蛍光体分散樹脂13eを覆うことにより白色光とすることができる。
【0070】
また、照明用基板13cの裏面側には、同基板13cの前面側に設けられる電極パターン13fに対してスルーホールを介して電気的に接続される2つの接点部13gが設けられている。この2つの接点部13gは、照明用基板13cの開口13hを挟んで略対向する位置に、径方向に角度約180度離して配置している。そして、この2つの接点部13gには、それぞれに連結部材13dが接続されている。
【0071】
この連結部材13dは、先端アダプタ10が内視鏡の挿入部2の先端部6(図1参照)に装着された時に、先端部6の内部に設けられる電気接点(図示せず)と接触するようになっている。これによって、先端アダプタ10の照明ユニット13は、連結部材13dを介して内視鏡の挿入部2と電気的に接続されている。先端部6の電気接点(不図示)は、挿入部2,操作部3,ユニバーサルケーブル9を挿通して装置本体4の内部へと延出される信号線,電力線と電気的に接続されている。これにより、先端アダプタ10の照明ユニット13は、装置本体4の電源ユニットや制御ユニット等との間で電気的に接続されている。
【0072】
撮像光学ユニット15は、直視型の撮像光学系を構成する複数の撮像レンズ15bと、これら複数の撮像レンズ15bを固定保持するレンズ保持筒15a等によって主に構成されている。
【0073】
本実施形態においては、撮像レンズ15bは三枚の光学レンズで構成している。そして、これら三枚の光学レンズ(撮像レンズ15b)は、所定の間隔を置いて光軸に沿う方向に並べて配置され、レンズ保持筒15aの内部においてそれぞれが接着剤等を用いて固定保持されている。そして、この撮像光学ユニット15は、照明ユニット13の照明ユニット枠13aに内挿されている。
【0074】
このように構成される本実施形態の内視鏡装置1における先端アダプタ10の照明ユニット13と、挿入部2及び操作部3からなる内視鏡16との間の電気的な接続は、例えば図7の回路図に示すような形態となっている。
【0075】
図7において、先端アダプタ10の照明ユニット13と挿入部2の先端部との間は、連結部材13dを介して電気的に接続される。挿入部2の基端側に連設される操作部3は、光源切換スイッチ3aと電源制御部20とを含む駆動制御部を有している。光源切換スイッチ3aは、操作部3に設けられる複数の操作部材のうちの光源切換操作部材の操作により作用するスイッチ手段である。この場合において、光源切換スイッチ3aと光源切換操作部材とによって、光源切換操作手段が構成される。
【0076】
なお、光源切換スイッチ3aは、図7に示すように、機械的な電気部品によって構成してもよいし、これに代えて、電源制御部20により制御する電気的なスイッチ回路によって構成してもよい。
【0077】
また、先端アダプタ10の照明ユニット13は、上述したように、二種類のLEDチップ13b1,13b2が、それぞれ複数(図示の例では各4個)有している。そして、先端アダプタ10は、装着状態識別用抵抗13rを具備している。この装着状態識別用抵抗13rは、内視鏡16の挿入部2の先端部に対して先端アダプタ10が装着されたときに、電源制御部20によりその旨を検出する電気部品である。
【0078】
二種類のLEDチップ13b1,13b2は、図7に示す接続例では、複数(4個)のLEDチップ13b1を直列接続した一群(第1発光素子群)と、複数(4個)のLEDチップ13b2を直列接続した一群(第2発光素子群)との2つのグループを並列接続している。
【0079】
このような回路構成によって、LEDチップ13b1の直列群の回路中における向きV1と、LEDチップ13b2の直列群の回路中における向きV2とは、互いに対して逆向きとなる。つまり、第1発光素子群と第2発光素子群とは極性を異にして接続されている。したがって、これにより各グループ(群)を流れる電流の方向は互いに対して逆方向となる。
【0080】
複数のLEDチップ13b1,13b2が、このような形態で配列された図7に示す回路において、例えば可視光観察用のLEDチップ13b1を発光させる場合には、操作者による光源切換スイッチ3aの所定の操作がなされることにより、図7の回路中におけるスイッチ3aの接点レバーS1が操作部3内の回路接点T2に接続され、かつスイッチ3aの接点レバーS2が操作部3内の回路接点T1に接続されたものとする。
【0081】
この状態で、図7の回路において、電源制御部20のプラス(+)側から所定の電流が矢印V方向に流れると、同回路中において電流は、接点レバーS1から回路接点T2を経て連結部材13dを介して一群のLEDチップ13b1を矢印V1方向に流れて、これらのLEDチップ13b1を発光させる。その後、電流は、別の連結部材13dを通って回路接点T1から接点レバーS2を経て電源制御部20のマイナス(−)側へと戻る。これにより、内視鏡装置1は、可視光観察を行い得る状態(第1状態)になる。
【0082】
一方、蛍光観察用のLEDチップ13b2を発光させる場合には、操作者による光源切換スイッチ3aの所定の操作がなされることにより、図7の回路中においてスイッチ3aの接点レバーS1が操作部3内の回路接点T1に接続され、かつスイッチ3aの接点レバーS2が操作部3内の回路接点T2に接続されたものとする。
【0083】
この状態で、図7の回路において、電源制御部20からプラス(+)側から所定の電流が図7の矢印V方向へ供給されると、同回路中において電流は、接点レバーS1から回路接点T1を経て連結部材13dを介して一群のLEDチップ13b2を矢印V2方向に流れて、これらのLEDチップ13b1を発光させる。その後、別の連結部材13dを通って回路接点T2から接点レバーS2を経て電源制御部20のマイナス(−)側に戻る。これにより、内視鏡装置1は、蛍光探傷検査等の蛍光観察を行い得る状態(第2状態)になる。
【0084】
以上説明したように上記第1の実施形態によれば、単一の先端アダプタ10における照明ユニット13に二種類の発光素子、即ち可視光観察用の複数のLEDチップ13b1と蛍光観察用の複数のLEDチップ13b2とを備えると共に、操作部3に光源切換スイッチ3aを設け、この光源切換スイッチ3aに作用する光源切換操作部材を操作するのみで、上記二種類の発光素子のいずれか一方を選択的に使用し得る状態に切り換えることができる。
【0085】
したがって、内視鏡装置1を用いて行う一連の観察作業の際に、先端アダプタ10の交換をすることなく、操作部3の手元操作(光源切り換え操作)を行うことによって、通常の可視光観察と蛍光観察とを作業を中断することなく円滑に実行することができる。
【0086】
ここで、蛍光観察に代えて、赤外光観察としてもよい。すなわち、通常の可視光観察と赤外光観察とを切り替えることにより、赤外光と反応するものを見ることができる。
【0087】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態の内視鏡装置について、以下に説明する。
【0088】
図8〜図12は、本発明の第2の実施形態を示す図である。このうち、図8は本実施形態の先端アダプタの正面図である。図9は、本実施形態の先端アダプタの側断面図である。なお、図9は、図10の[IX]−[IX]線に沿って切断した場合の断面を示している。図10,図11は、本実施形態の先端アダプタにおける照明用基板を取り出して示す平面図である。このうち、図10は照明用基板の前面側の平面図である。図11は照明用基板の裏面側の平面図である。図12は、本実施形態の内視鏡装置における発光素子と電源との接続を簡易的に示す回路図である。
【0089】
本発明の第2の実施形態の内視鏡装置の全体構成は、上述の第1の実施形態と同様である。本実施形態においては、内視鏡の挿入部の先端アダプタにおける照明ユニットのLEDチップの実装レイアウトが異なるのみである。つまり、本実施形態における照明用基板の電極パターンは、上述の第1の実施形態のものと異なる形態で形成しており、これによって照明系の回路構成を異ならせて構成している。したがって、本実施形態の以下の説明においては、上述の第1の実施形態とは異なる部位のみを詳述するに留め、その他の構成についての説明は省略する。なお、本実施形態を説明するのに際し必要となる上述の第1の実施形態と同様の構成部材には同じ符号を用い、上述の第1の実施形態の説明で用いた図面を参照するものとする。
【0090】
本実施形態の内視鏡装置における先端アダプタ10Aは、着脱リング12と、照明ユニット13Aと、撮像光学ユニット15等によって主に構成されている。
【0091】
着脱リング12と撮像光学ユニット15の構成は、上述の第1の実施形態と略同様である。
【0092】
照明ユニット13Aは、上述の第1の実施形態と同様に、略管状に形成される照明ユニット枠13Aaと、複数のLEDチップ13bと、照明用基板13Acと、連結部材13dと、蛍光体分散樹脂13eと、保護用コーティング樹脂13k等によって主に構成されている。
【0093】
このうち、連結部材13dと、蛍光体分散樹脂13eと、保護用コーティング樹脂13kは、上述の第1の実施形態と全く同様のものが適用される。また、LEDチップ13b1,13b2自体も、上述の第1の実施形態で適用されるものと全く同様のものが適用されている。
【0094】
ただし、本実施形態においては、照明用基板13Acの実装面上における複数のLEDチップ13b1,13b2の実装形態が異なる。これに伴って、照明用基板13Acの実装面上に形成される電極パターン13f及び接点部13gの配置が異なると共に、開口13hの形状が多少異なる。したがって、撮像光学ユニット15のレンズ保持筒15aの前面投影形状も、上述の第1の実施形態とは異なる形状となっているが、開口13hやレンズ保持筒15aの形状の相違は、本発明の本質に直接関連しない部分である。
【0095】
照明用基板13Acの実装面上における複数のLEDチップ13b1,13b2の配置は、上述の第1の実施形態と同様である。即ち、複数のLEDチップ13b1,13b2は、照明用基板13Acの実装面上において接点部13gの形成されている領域を除く領域に、図10の二点鎖線Bの円上に沿って所定の間隔P1を持って並べて配置されている。このとき、複数のLEDチップ13b1,13b2は、二点鎖線Bの円上に沿って交互に配置している。
【0096】
本実施形態における照明用基板13Acの電極パターン13fは、照明用基板13Acの外周縁に沿うように形成される複数のパターンと、開口13hの外周縁に沿うように形成される複数のパターンとによってなる(図10,図11参照)。そして、本実施形態においては、2つの接点部13gは、開口13hの外周縁に沿う複数のパターンのうちの2つのパターンに対して各別に接続されている。この場合において、2つの接点部13gは、並設された形態で配置されている。
【0097】
本実施形態においても、複数のLEDチップ13b1,13b2は、照明光源としての発光素子であって、波長の異なる光を発光させる二種類の発光素子が適用されており、また、各LEDチップ13b1,13b2は、それぞれ同数設けている。
【0098】
なお、本実施形態においても、LEDチップ13b1は可視光観察用であり、LEDチップ13b2は、蛍光観察用とし、それぞれ4個ずつを照明用基板13Ac上に実装した例を示している。
【0099】
照明ユニット13Aにおける複数のLEDチップ13b1,13b2は、例えば図12の回路図に示すような形態で電気的に接続されている。即ち、図12に示す接続例では、種類の異なるLEDチップ13b1,13b2の1個ずつを互いに逆向きに並列接続した一群の発光素子群(グループ)を複数(本実施形態では4つ)直列接続している。
【0100】
このような回路構成により、本実施形態においても、LEDチップ13b1の直列群の回路中における向きV1と、LEDチップ13b2の直列群の回路中における向きV2は、互いに対して逆向きとなる。したがって、これにより各グループを流れる電流の方向は互いに対して逆方向となる。このような形態によって複数のLEDチップ13b1,13b2が配列された図12に示す回路においても、上述の第1の実施形態と全く同様の作用となる。その他の構成は、上述の第1の実施形態と略同様である。また、蛍光体分散樹脂13eは、LEDチップ13b1の表面に塗布することができる。
【0101】
以上説明したように上記第2の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、二種類の複数のLEDチップ13b1,13b2は、照明用基板13Acの実装面上において、その径方向に配置するのに際して、それぞれ種類ごとに交互に配置し得るようにしたので、各種類の光源を選択的に発光させる際に、照射範囲や照射方向において偏り無く、常に効率的な配光特性を得ることができる。
【0103】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態の内視鏡装置について、以下に説明する。
【0104】
本実施形態の内視鏡装置の基本的な構成は、上述の各実施形態の構成と略同様である。本実施形態においては、内視鏡の挿入部の先端アダプタにおける照明ユニットの回路構成が異なるのみである。したがって、本実施形態の以下の説明においては、上述の第1の実施形態とは異なる部位のみを詳述するに留め、その他の構成についての説明は省略する。なお、本実施形態を説明するのに際し必要となる上述の第1の実施形態と同様の構成部材には同じ符号を用い、上述の第1の実施形態の説明で用いた図面を参照するものとする。
【0105】
図13は、本発明の第3の実施形態の内視鏡装置における発光素子と電源との接続を簡易的に示す回路図である。
【0106】
本実施形態における内視鏡装置は、上述の各実施形態と同様に、先端アダプタ10B,挿入部2,操作部3等からなる内視鏡16と、図示しない装置本体4(図1参照)等によって構成される。操作部3は、電源制御部20Bを有して構成されている。
【0107】
本実施形態の内視鏡16においては、上述の各実施形態における機械的な光源切換スイッチ3aに代えて、電気的なスイッチ回路によって構成している。即ち、本実施形態においては、装置本体4のカメラコントロールユニット(CCU)等によって電源制御部20を電気的(ソフトウエア的)に制御して、電源制御部20から照明ユニットへと供給する電流の方向を制御している。
【0108】
また、先端アダプタ10Bは、上述の各実施形態と同様の構成部材に加えて、さらに、電流低下用抵抗13uと、この電流低下用抵抗13uに流れる電流の方向を規定するために整流作用を有するダイオードの電子素子(以下、ダイオード13tという)を有している。
【0109】
電流低下用抵抗13uは、種類の異なるLEDチップ13b1,13b2の特性に合わせて流れる電流値を制御するための電流制御手段の一部を構成するものである。したがって、電流低下用抵抗13uは、照明回路に適用するLEDチップに応じた適正な抵抗値を持つものが、適宜適用される。
【0110】
なお、図13においては、LEDチップ13b1,13b2は、図面の煩雑化をさけるために、それぞれ2個ずつのみを図示しているが、LEDチップ13b1,13b2の実装個数は、上述したように図面に示される数(各2個)に限られることはなく、回路設計により任意に設定することができるのは当然である。
【0111】
このような回路構成を有する本実施形態において、例えば可視光観察用のLEDチップ13b1を発光させる場合には、操作者が光源切換操作部材を操作することにより生じる指示信号を受けて装置本体4のカメラコントロールユニット(CCU)が電源制御部20を電気的(ソフトウエア的)に制御して、図13の矢印V1方向への電流を供給する。すると、同回路中において電流は、連結部材13dを介して一群のLEDチップ13b1を通過する矢印V1方向とダイオード13t,電流低下用抵抗13uを通過する矢印V3方向とに分流する。したがって、複数のLEDチップ13b1を流れる電流値は、電源制御部20Bにより供給される電流値に対して低下する。このようにして、複数のLEDチップ13b1が発光し、よって、内視鏡装置1は可視光観察を行い得る状態になる。
【0112】
一方、蛍光観察用のLEDチップ13b2を発光させる場合には、操作者が光源切換操作部材を操作することにより生じる指示信号を受けて装置本体4のカメラコントロールユニット(CCU)が電源制御部20を電気的(ソフトウエア的)に制御して、図13の矢印V2方向への電流を供給する。すると、同回路中において電流は、連結部材13dを介して一群のLEDチップ13b2を通過する矢印V2方向にのみ流れる。このとき、電流低下用抵抗13u側には、ダイオード13tの作用によって電流は流れない。したがって、複数のLEDチップ13b2を流れる電流値は、電源制御部20Bにより供給される電流値と同等のものである。このようにして、複数のLEDチップ13b2が発光し、よって、内視鏡装置1は蛍光探傷検査等の蛍光観察を行い得る状態になる。
【0113】
以上説明したように上記第3の実施形態によれば、上述の各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0114】
また、本実施形態によれば、種類の異なる発光素子を適正な電流値で発光させるための電流低下用抵抗13uと、整流作用を持つダイオード13tとを設けて構成している。この構成により、複雑な制御を行うことなく簡単な構成で、種類の異なる発光素子に対して常に適正な電流値で電力の供給を行なうことができる。
【0115】
なお、上述の各実施形態では、本発明をアダプタ式の内視鏡に適用した場合を例に挙げて説明しているが、本発明を適用し得るのはアダプタ式内視鏡のみに限られることはなく、先端部が挿入部と一体式の内視鏡に対しても同様に適用し得るのは当然である。
【0116】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施し得ることが可能であることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、工業分野の内視鏡装置だけでなく、医療分野の内視鏡装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0118】
1……内視鏡装置
2……挿入部
3……操作部
3a……光源切換スイッチ
4……装置本体
6……先端部
7……湾曲部
8……可撓管部
9……ユニバーサルケーブル
10,10A,10B,110,110A……先端アダプタ
12,112……着脱リング
13,13A,113……照明ユニット
13a,13Aa,113a……照明ユニット枠
13b,13b1,13b2,113b,113b1,113b2……LEDチップ
13c,13Ac,113c,113Ac……照明用基板
13d,113d……連結部材
13e,113e……蛍光体分散樹脂
13f,113f……電極パターン
13g,113g……接点部
13h……開口
13k,113k……保護用コーティング樹脂
13r,113r……装着状態識別用抵抗
13t……ダイオード
13u……電流低下用抵抗
15,115……撮像光学ユニット
15a,115a……レンズ保持筒
15b,115b……撮像レンズ
16,116……内視鏡
20,20B,120……電源制御部
121……切換スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数特性を有する第1発光素子群と、
前記第1発光素子群と並列接続されるとともに、前記第1発光素子群と極性を異にして接続され、前記第1発光素子群とは異なる周波数特性を有する第2発光素子群と、
前記第1発光素子群の駆動中は前記第2発光素子群に流れる電流を抑制する第1状態と、前記第2発光素子群の駆動中は前記第1発光素子群に流れる電流を抑制する第2状態とを選択可能に駆動制御する駆動制御部と、
を備えた内視鏡装置。
【請求項2】
前記第1発光素子群の周波数は、前記第2発光素子群の周波数と異なる分光分布を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記第1発光素子群の周波数、及び前記第2発光素子群の周波数は、単一ピーク波長で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記第1発光素子群の周波数、及び前記第2発光素子群の周波数は、帯域波長で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記第1発光素子群の周波数特性、及び前記第2発光素子群の周波数特性は、色温度が異なるものであることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記二種類の発光素子群のうちの一方は、通常可視光を発光するものであり、他方は紫外線若しくは赤外線を発光するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記内視鏡は、照明回路を流れる電流量を制御する電流制御手段を、さらに有してなることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記電流制御手段は、前記照明回路内において前記二種類の発光素子群のうち一方の発光素子群に流れる電流量を低下させる電流低下用抵抗であることを特徴とする請求項7に記載の内視鏡装置。
【請求項9】
異なる波長の光を発光する少なくとも二種類の発光素子と、前記発光素子を複数実装する基板とを有する照明ユニットを挿入部の先端部に具備する内視鏡を含んで構成される内視鏡装置において、
前記二種類の発光素子を種類毎に選択的に発光させるための光源切換操作手段と、
前記光源切換操作手段の操作指示にしたがって電源の制御を行う電源制御部と、
を具備し、
前記二種類の発光素子群は、種類毎に複数の発光素子を直列接続してなる第1の発光素子群及び第2の発光素子群によって構成され、
前記第1の発光素子群を流れる電流方向と前記第2の発光素子群を流れる電流方向とは互いに対してそれぞれが反対方向に流れるように接続されており、
前記光源切換操作手段の所定の操作指示を受けて前記電源制御部による電流の供給制御がなされるとき、前記第1の発光素子群のみが点灯する状態と、前記第2の発光素子群のみが点灯する状態とのいずれかに選択的に切り換え得るように構成されていることを特徴とする内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−133662(P2011−133662A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293079(P2009−293079)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】