説明

内視鏡観察を支援するシステムおよび方法、並びに、装置およびプログラム

【課題】被検体の体腔内に挿入された内視鏡下での体腔内の観察の際に、手術対象部位等の注目箇所と処置具との位置関係や相互の接近状況をより確実に把握する。
【解決手段】仮想内視鏡画像生成部24が、3次元医用画像形成部5によって形成された3次元医用画像を入力として、処置具位置検出部11でリアルタイムに検出された処置具の位置に対応する3次元医用画像中の位置から見た体腔内を表す仮想内視鏡画像を生成する。生成された仮想内視鏡画像はWSディスプレイ10に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の体腔内に挿入された内視鏡下での手術や検査等における、内視鏡観察を支援する技術に関するものであり、特に、被検体の体腔内を表す仮想内視鏡画像を用いて内視鏡観察を支援する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、腹腔鏡手術や胸腔鏡手術等の内視鏡下で行われる手術が注目されている。この内視鏡手術では、開腹や開胸等を行うことなく、内視鏡と処置具を刺入するための数センチ程度の穴を2、3個開けるだけで済むので、患者の負担が極めて小さいというメリットがある。一方で、内視鏡の限られた視野で手術を実施することは技術的難易度が高く、執刀を行う医師は熟練を要する。もし患者の血管や臓器を誤って傷つけてしまい、出血してしまった場合には、開腹、開胸等を伴う従来の手法による手術に移行せざるを得ない。
【0003】
一方、CT等での撮影によって得られた3次元ボリューム画像から内視鏡と類似した画像を生成する仮想内視鏡技術が知られている。この技術は、特に大腸の腫瘍を発見するために、内視鏡検査をすることなくCT撮影のみで腫瘍を発見する方法として北米で普及している。
【0004】
そして、仮想内視鏡画像を用いて内視鏡手術を支援する技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、内視鏡の位置をセンサで検出し、検出位置を視点とし、内視鏡よりも広い画角を有する仮想内視鏡画像を生成し、内視鏡撮影で得られた実内視鏡画像と仮想内視鏡画像とを重畳表示する装置が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、内視鏡の位置をリアルタイムに検出し、内視鏡と同じ視野を有し、視野内の血管配置が視覚化された仮想内視鏡画像を生成するとともに、内視鏡下での手術に用いられる処置具の位置をリアルタイムに検出し、仮想内視鏡画像中での処置具の位置に処置具を表す画像を合成した画像を生成し、合成画像と実内視鏡画像を表示する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−263053号公報
【特許文献2】特開2005−21353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの文献に記載された手法では、内視鏡の狭い視野を仮想内視鏡画像によって補うことはできるものの、仮想内視鏡画像は実内視鏡画像と同じ視点、同じ観察方向の画像であるから、手術対象部位等の注目箇所と処置具と内視鏡との位置関係によっては、仮想内視鏡画像や実内視鏡画像中に注目箇所や処置具が表示されない可能性があり、これらの位置関係が把握できないこともありうる。
【0009】
また、内視鏡画像では遠近感を把握しづらいので、これらの文献に記載された手法による仮想内視鏡画像や実内視鏡画像では、処置具の注目箇所への接近状況を把握することが困難となることもありうる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、被検体の体腔内に挿入された内視鏡下での体腔内の観察の際に、手術対象部位等の注目箇所と処置具との位置関係や注目箇所に対する処置具の接近状況をより確実に把握可能なシステムおよび方法、並びに、装置およびプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の内視鏡観察支援システムは、被検体の体腔内を表す3次元医用画像を形成する3次元医用画像形成手段と、前記体腔内に挿入された処置具の位置をリアルタイムに検出する処置具位置検出手段と、前記3次元医用画像を入力として、前記検出された処置具の位置に対応する前記3次元医用画像中の位置である対応処置具位置から見た前記体腔内を表す仮想内視鏡画像を生成する仮想内視鏡画像生成手段と、前記仮想内視鏡画像を表示する表示手段とを設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明の内視鏡観察支援方法は、被検体の体腔内を表す3次元医用画像を形成するステップと、前記体腔内に挿入された処置具の位置をリアルタイムに検出するステップと、前記3次元医用画像を入力として、前記検出された処置具の位置に対応する前記3次元医用画像中の位置である対応処置具位置から見た前記体腔内を表す仮想内視鏡画像を生成するステップと、前記仮想内視鏡画像を表示するステップとを有することを特徴とすることを特徴とする。
【0013】
本発明の内視鏡観察支援装置は、被検体の体腔内を表す3次元医用画像を取得する3次元医用画像取得手段と、位置検出手段によってリアルタイムに検出された前記体腔内に挿入された処置具の位置を取得する処置具位置取得手段と、前記3次元医用画像を入力として、前記取得された処置具の位置に対応する前記3次元医用画像中の位置である対応処置具位置から見た前記体腔内を表す仮想内視鏡画像を生成する仮想内視鏡画像生成手段と、前記仮想内視鏡画像を表示手段に表示させる表示制御手段とを設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明の内視鏡観察支援プログラムは、コンピュータに、被検体の体腔内を表す3次元医用画像を取得するステップと、位置検出手段によってリアルタイムに検出された前記体腔内に挿入された処置具の位置を取得するステップと、前記3次元医用画像を入力として、前記取得された処置具の位置に対応する前記3次元医用画像中の位置である対応処置具位置から見た前記体腔内を表す仮想内視鏡画像を生成するステップと、前記仮想内視鏡画像を表示手段に表示させるステップとを実行させることを特徴とする。
【0015】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0016】
本発明において、処置具の位置と同時に処置具が直進する向きも検出するようにし、検出された処置具が直進する向きに対応する3次元医用画像中での向きを有する対応処置具位置からの視線(処置具視線)上の画像情報が投影された仮想内視鏡画像を生成するようにしてもよい。このような仮想内視鏡画像の具体例としては、処置具視線を仮想内視鏡画像の視野の中心における視線(中心視線)とした仮想内視鏡画像が挙げられる。また、処置具視線上の画像情報が投影された仮想内視鏡画像中の位置を識別可能な態様で表すようにしてもよい。
【0017】
また、本発明において、体腔内の(第1の)注目構造物の3次元医用画像中での位置を特定するようにし、特定された(第1の)注目位置が仮想内視鏡画像における視野内に含まれる仮想内視鏡画像を生成するようにしてもよい。このような仮想内視鏡画像の具体例としては、対応処置具位置から、特定された(第1の)注目位置に向かう視線を仮想内視鏡画像の中心視線とした仮想内視鏡画像が挙げられる。また、(第1の)注目構造物のうちの少なくとも(第1の)注目位置を識別可能な態様で表すようにしてもよい。
【0018】
ここで、「(第1の)注目構造物」の具体例としては、内視鏡下での手術対象部位や、手術において注意を有する解剖学的構造物、すなわち、血管や、臓器、腫瘍等が挙げられる。これらの(第1の)注目構造物の位置の具体的な特定方法は、公知の画像認識技術を用いた自動的方法、ユーザの手動操作による方法、両者を組み合わせた方法のいずれであってもよい。
【0019】
さらに、本発明において、対応処置具位置と(第1の)注目構造物とが所定の基準を満たす程度に接近している場合には警告を提示するようにしてもよい。警告は仮想内視鏡画像中等に視覚的に提示してもよいし、他の感覚器に訴える方法で提示してもよい。
【0020】
さらにまた、本発明において、3次元医用画像中の体腔内の第2の注目構造物を検出するようにし、検出された第2の注目構造物が識別可能な態様の仮想内視鏡画像を生成するようにしてもよい。ここで、「第2の注目構造物」の具体例としては、第1の注目構造物と同様のものが挙げられる。したがって、例えば、第1の構造物は内視鏡下での手術対象部位とし、第2の注目構造物は手術において注意を有する解剖学的構造物とするか、あるいは、その逆とすることが考えられる。
【0021】
また、本発明において、体腔内に挿入された内視鏡の位置を検出するようにし、検出された内視鏡の位置に対応する3次元医用画像中の位置(対応内視鏡位置)が仮想内視鏡画像における視野内に含まれ、かつ、対応内視鏡位置が識別可能な態様で表された仮想内視鏡画像を生成するようにしてもよい。
【0022】
ここで、3次元医用画像が内視鏡下での観察前に取得されたものの場合には、3次元医用画像の撮像・取得時には、被検体の体腔内に内視鏡はまだ挿入されていないので、仮想内視鏡画像生成時に、位置検出手段によって検出された位置に対応する仮想内視鏡画像中の位置に、内視鏡を表すマーカー等を合成すればよい。一方、3次元医用画像が内視鏡下での観察中にリアルタイムに取得されたものであり、その画像中に内視鏡が表されている場合には、仮想内視鏡画像中にもその内視鏡が描出されるように仮想内視鏡画像を生成すればよい。
【0023】
さらに、本発明において、内視鏡によるリアルタイムの撮像によって体腔内を表す実内視鏡画像を形成するようにし、仮想内視鏡画像とともに、仮想内視鏡画像の生成時に用いられた処置具の位置が検出されたのとほぼ同じタイミングで形成された実内視鏡画像をさらに表示するようにしてもよい。これにより、内視鏡での撮像によりリアルタイムに形成された実内視鏡画像と、実内視鏡画像の形成とほぼ同じタイミングで位置検出手段によってリアルタイムに検出された処置具の位置から見た仮想内視鏡画像とが表示される。
【0024】
また、処置具の位置の検出に応じて仮想内視鏡画像の生成を繰り返し行えば、処置具の移動に応じて、実内視鏡画像も仮想内視鏡画像もリアルタイムに更新される。
【0025】
なお、実内視鏡画像と仮想内視鏡画像の表示は、1つの表示装置に行ってもよいし、複数の表示装置に別々に行ってもよい。複数の表示装置は、両画像を同時に観察可能なように物理的に同じ場所に並べられて設置されていてもよいし、両画像を個別に観察するために物理的に離れた場所に設置されていてもよい。
【0026】
また、「(第1の)注目位置が仮想内視鏡画像における視野内に含まれる」や「対応内視鏡位置が仮想内視鏡画像における視野内に含まれ(る)」とは、視点(対応処置具位置)から(第1の)注目位置や対応内視鏡位置に向かう視線上の画像情報が仮想内視鏡画像に反映されていればよく、例えば、処置具と(第1の)注目構造物または内視鏡との間に、臓器や血管、ヒダ等の構造物がある場合等には、仮想内視鏡画像中に内視鏡または(第1の)注目構造物が必ずしも表されていなくてもよい。
【0027】
「仮想内視鏡画像」の生成の際、対応処置具位置から体腔内の構造物の表面までの距離を仮想内視鏡画像の画素値の決定要素として用いてもよい。また、実内視鏡画像に表された体腔内各部とほぼ同じ外観の仮想内視鏡画像が得られるように定義されたカラーテンプレートを用いてもよい。ただし、このカラーテンプレートには、例えば、体腔内各部の色が実内視鏡画像とほぼ同じになるように定義されたものとしつつ、体腔内各部を必要に応じて半透明化し、実内視鏡画像では前方の遮蔽物等により観察することのできない後方の構造物を視認できるように定義されたものも含まれる。
【0028】
本発明において、3次元医用画像の形成・取得を内視鏡下での観察中に行う場合には、リアルタイムでその取得を行うようにしてもよい。その際、取得された3次元医用画像に対する画像認識処理により、内視鏡または処置具の位置を検出するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、被検体の体腔内を表す3次元医用画像を入力として、リアルタイムに検出された体腔内に挿入された処置具の位置に対応する3次元医用画像中の対応位置から見た体腔内を表す仮想内視鏡画像が生成され、表示される。ここで、表示される仮想内視鏡画像は、あたかも処置具が内視鏡であるかのような画像となるので、処置具の視点から体腔内を観察することが可能になり、実際の内視鏡による画像とあわせれば、多面的に体腔内を観察することが可能になる。したがって、注目箇所と処置具の位置関係をより確実に把握できるようになる。また、処置具の注目箇所に対する接近状況をより確実に把握できるようにもなる。これらにより、手術や検査等における手技のミス等の防止に資する。
【0030】
また、このとき、処置具の位置をリアルタイムに検出した結果のフィードバックによって仮想内視鏡の視点がリアルタイムに変更された仮想内視鏡画像が連続的に表示されるので、注目構造物への処置具の接近状況を、動的に、より的確に捉えることが可能になる。
【0031】
さらに、内視鏡によるリアルタイムの撮像によって体腔内を表す実内視鏡画像を形成するようにし、仮想内視鏡画像とともに、仮想内視鏡画像の生成時に用いられた内視鏡の位置および姿勢が検出されたのとほぼ同じタイミングで形成された実内視鏡画像を表示するようにすれば、表示される実内視鏡画像と仮想内視鏡画像とは、ほぼ同じ時点での体腔内の状態が表されたものとなり、実内視鏡画像と仮想内視鏡画像とが時間的同期を取って連続的に表示される。また、このとき、処置具の位置の検出に応じて仮想内視鏡画像の生成を繰り返し行えば、実内視鏡画像も仮想内視鏡画像もリアルタイムに更新される。すなわち、内視鏡の移動や回転等の操作に連動して実内視鏡画像の視野が変化するとともに、処置具の移動等の操作に連動して仮想内視鏡画像の視野も変化させることができる。このように、実内視鏡画像と仮想内視鏡画像によって相互補完的に体腔内を観察することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1から第9の実施形態となる内視鏡観察支援システムのハードウェア構成図
【図2】本発明の第1の実施形態における内視鏡観察支援システムの機能ブロック図
【図3】本発明の第1の実施形態における内視鏡観察支援処理の流れを表したフローチャート
【図4A】本発明の第1の実施形態における、処置具の位置と、仮想内視鏡の視点位置、中心視線、および画角の一例を模式的に表した図
【図4B】本発明の第1の実施形態における仮想内視鏡画像の一例を模式的に表した図
【図5】本発明の第2の実施形態における内視鏡観察支援システムの機能ブロック図
【図6】本発明の第2の実施形態における内視鏡観察支援処理の流れを表したフローチャート
【図7A】本発明の第2の実施形態における、処置具および注目構造物の位置と、仮想内視鏡の視点位置、中心視線、および画角の一例を模式的に表した図
【図7B】本発明の第2の実施形態における仮想内視鏡画像の一例を模式的に表した図
【図8】本発明の第3から第7の実施形態における内視鏡観察支援システムの機能ブロック図
【図9】本発明の第3から第7の実施形態における内視鏡観察支援処理の流れを表したフローチャート
【図10A】本発明の第3の実施形態における、処置具および注目構造物の位置と、仮想内視鏡の視点位置、中心視線、および画角の一例を模式的に表した図
【図10B】本発明の第3の実施形態における仮想内視鏡画像の一例を模式的に表した図
【図11A】本発明の第4の実施形態における、処置具および注目構造物の位置と、仮想内視鏡の視点位置、中心視線、および画角の一例を模式的に表した図
【図11B】本発明の第4の実施形態における仮想内視鏡画像の一例を模式的に表した図
【図12A】本発明の第5の実施形態における、処置具および注目構造物の位置と、仮想内視鏡の視点位置、中心視線、および画角の一例を模式的に表した図
【図12B】本発明の第5の実施形態における仮想内視鏡画像の一例を模式的に表した図
【図13A】本発明の第6の実施形態における、注目構造物と処置具の間に他の構造物が存在する場合の仮想内視鏡の視点位置、中心視線、および画角の一例を模式的に表した図
【図13B】本発明の第6の実施形態における仮想内視鏡画像の一例を模式的に表した図
【図14A】本発明の第7の実施形態における、視点からの腹腔内の解剖学的構造物の表面までの距離に応じて仮想内視鏡画像の表示色を変化させるためのカラーテンプレートの一例を模式的に表した図
【図14B】本発明の第7の実施形態における、視点からの距離に応じて表示色を変化させた仮想内視鏡画像の一例を模式的に表した図
【図15】本発明の第8の実施形態における内視鏡観察支援システムの機能ブロック図
【図16】本発明の第8の実施形態における内視鏡観察支援処理の流れを表したフローチャート
【図17】本発明の第8の実施形態における警告表示の一例を模式的に表した図
【図18】本発明の第9の実施形態における内視鏡観察支援システムの機能ブロック図
【図19】本発明の第9の実施形態における内視鏡観察支援処理の流れを表したフローチャート
【図20A】本発明の第9の実施形態における、注目構造物と要注意構造物と処置具の位置関係と、仮想内視鏡の視野の一例を模式的に表した図
【図20B】本発明の第9の実施形態における仮想内視鏡画像の一例を模式的に表した図
【図21】本発明の第10の実施形態となる内視鏡観察支援システムのハードウェア構成図
【図22】本発明の第10の実施形態における内視鏡観察支援システムの機能ブロック図
【図23】本発明の第10の実施形態における内視鏡観察支援処理の流れを表したフローチャート
【図24A】本発明の第10の実施形態における、処置具と内視鏡と注目構造物の位置関係と、仮想内視鏡の視点位置、中心視線、および画角の一例を模式的に表した図
【図24B】本発明の第10の実施形態における仮想内視鏡画像の一例を模式的に表した図
【図25】本発明の第11の実施形態における内視鏡観察支援システムの機能ブロック図
【図26】本発明の第11の実施形態における内視鏡観察支援処理の流れを表したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態となる内視鏡観察支援システムについて説明する。
【0034】
図1は、本発明の第1の実施形態となる内視鏡観察支援システムの概要を示すハードウェア構成図である。図に示したように、このシステムは、内視鏡1、デジタルプロセッサ2、光源装置3、実内視鏡画像用ディスプレイ4、モダリティ5、処置具6、処置具用マーカー7a、位置センサ8、画像処理ワークステーション9、画像処理ワークステーション用ディスプレイ(以下、WSディスプレイ)10から構成されている。
【0035】
本実施形態では、内視鏡1は腹腔用の硬性鏡であり、被検体の腹腔内に挿入される。光源装置3から光ファイバーで導かれた光が内視鏡1の先端部から照射され、内視鏡1の撮像光学系により被検体の腹腔内の画像が得られる。デジタルプロセッサ2は、内視鏡1で得られた撮像信号をデジタル画像信号に変換し、ホワイトバランス調整やシェーディング補正等のデジタル信号処理によって画質の補正を行った後、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格で規定された付帯情報を付加して、実内視鏡画像データ(IRE)を出力する。出力された実内視鏡画像データ(IRE)は、DICOM規格に準拠した通信プロトコルに従って、LAN経由で画像処理ワークステーション9に送信される。また、デジタルプロセッサ2は、実内視鏡画像データ(IRE)をアナログ信号に変換して実内視鏡画像用ディスプレイ4に出力し、実内視鏡画像用ディスプレイ4には実内視鏡画像(IRE)が表示される。内視鏡1での撮像信号の取得は所定のフレームレートで行われるので、実内視鏡用ディスプレイ4では、実内視鏡画像(IRE)が腹腔内を表す動画として表示される。さらに、内視鏡1では、ユーザの操作に応じて静止画撮影も可能である。
【0036】
モダリティ5は、被検体の検査対象部位を撮影することにより、その部位を表す3次元医用画像の画像データ(V)を生成する装置であり、ここではCT装置とする。この3次元医用画像データ(V)にもDICOM規格で規定された付帯情報が付加されている。また、3次元医用画像データ(V)も、DICOM規格に準拠した通信プロトコルに従って、LAN経由で画像処理ワークステーション9に送信される。
【0037】
処置具用マーカー7aおよび位置センサ8は公知の3次元位置計測装置を構成する。処置具用マーカー7aは、処置具6の手元付近に設けられており、光学式の位置センサ8によって、所定の時間間隔でマーカー7aの3次元位置が検出される。処置具用マーカー7aは複数のマーカー片から構成されているので、位置センサ8は、各マーカー片の位置関係から処置具6の姿勢も検出可能である。ここで、処置具6の姿勢は、処置具が挿入された向きを表すベクトルであり、処置具の直進する向きと一致する。また、オフセット計算によって、処置具6の先端部の3次元位置PSTを算出することができる。位置センサ8は、算出された処置具6の3次元位置データPST、および、3次元姿勢データDSTを、USBインターフェースを介して画像処理ワークステーション9に送信する。
【0038】
画像処理ワークステーション9は、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、データバス等の周知のハードウェア構成を備えたコンピュータであり、入力装置(ポインティングデバイス、キーボード等)や、WSディスプレイ10が接続されている。また、画像処理ワークステーション9は、デジタルプロセッサ2やモダリティ5とはLAN接続されており、位置センサ8とはUSB接続されている。さらに、画像処理ワークステーション9は、周知のオペレーティングシステムや各種アプリケーション・ソフトウェア等がインストールされたものであり、本発明の内視鏡観察支援処理を実行させるためのアプリケーションもインストールされている。これらのソフトウェアは、CD−ROM等の記録媒体からインストールされたものであってもよいし、インターネット等のネットワーク経由で接続されたサーバの記憶装置からダウンロードされた後にインストールされたものであってもよい。
【0039】
図2は、本発明の第1の実施形態における内視鏡観察支援システムを機能レベルで分割したブロック図である。図に示したように、本発明の第1の実施形態となる内視鏡観察得支援システムは、内視鏡1、実内視鏡画像形成部2、実内視鏡画像用ディスプレイ4、3次元医用画像形成部5、WSディスプレイ10、処置具位置検出部11、実内視鏡画像取得部21、処置具位置取得部22、3次元医用画像取得部23、仮想内視鏡画像生成部24、表示制御部25から構成されている。なお、図1に示したハードウェア機器と図2に示した各機能ブロックとが概ね1対1に対応する場合には同じ符号を付している。すなわち、実内視鏡画像形成部2の機能は図1のデジタルプロセッサによって実現され、3次元医用画像形成部5の機能は図1のモダリティによって実現される。一方、処置具位置検出部11の機能は、処置具用マーカー7aおよび位置センサ8によって実現される。また、破線枠は画像処理ワークステーション9を示しており、破線枠内の各処理部の機能は、画像処理ワークステーション9で所定のプログラムを実行することによって実現される。さらに、実内視鏡画像IRE、処置具検出位置PST、処置具検出姿勢DST、処置具位置PT、処置具姿勢DT、3次元医用画像V、仮想内視鏡画像IVEは、各々、破線枠内の各処理部によって、画像処理ワークステーション9の所定のメモリ領域に対して読み書きされるデータである。
【0040】
次に、図3に示したフローチャートを用いて、本発明の第1の実施形態となる内視鏡観察支援システムで行われるユーザの操作や、上記各処理部で行われる処理の概略的な流れを説明する。
【0041】
まず、内視鏡1を用いた被検体の腹腔内の観察に先立って、3次元医用画像形成部5による被検体の腹腔内の撮像により、3次元医用画像Vが形成される。画像処理ワークステーション9では、3次元医用画像取得部23が、3次元医用画像形成部5によって形成された3次元医用画像Vを取得する(#2)。
【0042】
次に、図3のフローチャートの右側に付記したように、注目構造物を対象とする内視鏡下手術中、すなわち、内視鏡1を用いた被検体の腹腔内の観察中は、観察が終了するまで(#12; YES)、実内視鏡画像形成部2は、所定のフレームレートで、体腔内に挿入された内視鏡1による実内視鏡画像IREを繰り返し形成し、形成された実内視鏡画像IREは実内視鏡画像用ディスプレイ4にスルー動画としてリアルタイムに表示される。また、処置具位置検出部11は、所定の時間間隔で、体腔内に挿入された処置具6の位置PSTおよび姿勢DSTを繰り返しリアルタイムに検出する。
【0043】
画像処理ワークステーション9では、実内視鏡画像取得部21が、実内視鏡画像形成部2で形成された実内視鏡画像IREを取得し(#4)、これとほぼ同じタイミングで、処置具位置取得部22が、処置具位置検出部11で検出された処置具検出位置PSTおよび処置具検出姿勢DSTを取得し、取得された処置具検出位置PSTおよび処置具検出姿勢DSTを3次元医用画像Vの座標系における位置および姿勢に変換して得られた処置具位置PTおよび姿勢DTを出力する(#6)。
【0044】
また、内視鏡画角取得部25は、画像処理ワークステーション9の所定のメモリ領域から内視鏡1の画角AEを取得する(#5)。
【0045】
仮想内視鏡画像生成部24は、3次元医用画像取得部23によって取得された3次元医用画像Vを入力として、処置具位置取得部22で取得された処置具位置PTを視点とし、処置具姿勢DT、すなわち、処置具の直進する向きを仮想内視鏡の視野の中心における視線とする仮想内視鏡画像IVEを生成する(#8)。
【0046】
そして、表示制御部25は、実内視鏡画像取得部21によって取得された実内視鏡画像IREと、仮想内視鏡画像生成部24によって生成された仮想内視鏡画像IVEとをWSディスプレイ10に表示させる(#10)。
【0047】
画像処理ワークステーション9では、観察終了を指示する操作が行わない限り(#12; No)、新たな実内視鏡画像IREの取得(#4)、その時点での処置具位置PTおよび処置具姿勢DTの取得(#6)、仮想内視鏡画像IVEの生成(#8)、実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEの表示の更新(#10)が繰り返し行われる。これにより、WSディスプレイ10では、実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEとが時間的に同期した連続表示が実現される。一方、観察終了を指示する操作が行われた場合には(#12; Yes)、画像処理ワークステーション9は、上記ステップ#4から#10までの繰返し処理を終了する。
【0048】
次に、画像処理ワークステーション9内の各処理部で行われる処理の詳細について説明する。
【0049】
実内視鏡画像取得部21は、実内視鏡画像形成部(デジタルプロセッサ)2との通信により、実内視鏡画像IREを受信し、画像処理ワークステーション9の所定のメモリ領域の格納する通信インターフェースであり、実内視鏡画像取得部21からの要求に基づいて実内視鏡画像形成部2から実内視鏡画像IREが転送される。
【0050】
処置具位置取得部22は、処置具位置検出部11との通信により処置具検出位置PSTおよび処置具検出姿勢DSTを取得する通信インターフェースとしての機能と、取得した処置具検出位置PSTおよび処置具検出姿勢DSTを位置センサ8の3次元座標系から3次元医用画像Vの3次元座標系の座標値で表現された処置具位置PTおよび処置具姿勢DTに変換して画像処理ワークステーション9の所定のメモリ領域に格納する機能とを有する。前者の通信インターフェース機能では、処置具位置取得部22からの要求ベースで処置具位置検出部11から処置具検出位置PSTおよび処置具検出姿勢DSTが取得される。また、後者の座標変換機能では、位置センサの3次元座標系における各座標軸と3次元医用画像Vの3次元座標系における各座標軸との向きの対応関係に基づいて、座標軸の回転量を予め求めておくとともに、3次元医用画像Vの原点に相当する被検体中の位置の、位置センサ8の3次元座標系における座標値を予め計測しておき、この原点の座標値に基づいて、両座標軸の平行移動量を求めておけば、その回転量の回転とその平行移動量の平行移動を行う行列を用いて、位置センサ8の3次元座標系で表現された処置具検出位置PSTおよび処置具検出姿勢DSTを3次元医用画像Vの3次元座標系の座標値で表現された処置具位置PTおよび処置具姿勢DTに変換することができる。
【0051】
3次元医用画像取得部23は、3次元医用画像形成部5から3次元医用画像Vを受信し、画像処理ワークステーション9の所定のメモリ領域に格納する通信インターフェース機能を有する。
【0052】
仮想内視鏡画像生成部24は、3次元医用画像Vを入力として、図4Aに示したように、処置具6の位置PTを仮想内視鏡の視点位置VPVEとし、処置具6の姿勢ベクトルDTを仮想内視鏡の視野の中心を通る視線ベクトル(以下、中心視線ベクトル)VLVEとし、プログラムの処理パラメータや設定ファイルから与えられた仮想内視鏡の画角の初期値AVE0を画角AVEとし、その画角AVEの範囲内で、仮想内視鏡の視点位置VPVEからの放射状の複数の視線を設定し、公知の中心投影によるボリュームレンダリング法により、各視線上の画素値を投影した仮想内視鏡画像IVEを生成する。図4Bは生成された仮想内視鏡画像IVEを模式的に表したものである。ここで、ボリュームレンダリングの際には、実内視鏡画像IREに表された腹腔内各部とほぼ同じ外観の画像が得られるように色や透明度が予め定義されたカラーテンプレートが用いられる。
【0053】
表示制御部28は、実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEとを並べた表示画面を生成し、WSディスプレイ10に出力する。これにより、WSディスプレイ10には、実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEとが並べられた表示画面が表示される。
【0054】
以上のように、本発明の第1の実施形態では、仮想内視鏡画像生成部24が、3次元医用画像Vを入力として、処置具6の位置PTを仮想内視鏡の視点位置VPVEとし、処置具6の姿勢ベクトルDTを仮想内視鏡の中心視線ベクトルVLVEとする仮想内視鏡画像IVEを生成し、表示制御部28が実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEをWSディスプレイ10に表示させる。ここで、表示される仮想内視鏡画像IVEは、処置具6の位置PTから処置具6が直進する向きに体腔内を見た様子を表す画像、すなわち、あたかも処置具6が内視鏡であるかのような画像となるので、処置具6の視点から体腔内を観察することが可能になり、実内視鏡画像IREとあわせれば、多面的に体腔内を観察することが可能になる。
【0055】
また、このとき、処置具位置検出部11が処置具6の位置をリアルタイムに検出した結果のフィードバックによって仮想内視鏡の視野がリアルタイムに変更された仮想内視鏡画像IVEが連続的に表示されるので、体腔内での処置具6の移動状況を、動的に、より的確に捉えることが可能になる。
【0056】
さらに、実内視鏡画像形成部2が、内視鏡1によるリアルタイムの撮像によって体腔内を表す実内視鏡画像IREを形成し、仮想内視鏡画像IVEの生成時に用いられた処置具6の位置が検出されたのとほぼ同じタイミングで形成された実内視鏡画像IREが表示されるので、実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEとは、ほぼ同じ時点での体腔内の状態が表されたものとなり、実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEとが時間的同期を取って連続的に表示される。また、このとき、内視鏡1の移動や回転等の操作に連動して実内視鏡画像IREの視野が変化するとともに、処置具6の移動や回転等の操作に連動して仮想内視鏡画像IVEの視野も変化する。このように、本発明の第1の実施形態では、実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEによって、リアルタイムに、かつ、相互補完的に体腔内を観察することが可能になる。
【0057】
さらにまた、仮想内視鏡画像生成部24が、実内視鏡画像IREに表された腹腔内各部とほぼ同じ外観の画像が得られるように色や透明度が予め定義されたカラーテンプレートを用いて仮想内視鏡画像IVEを生成するので、表示制御部25によって実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEとがWSディスプレイ10に並べられて表示された際、両画像を違和感なく観察することができる。
【0058】
なお、上記実施形態において、仮想内視鏡の画角の初期値AVE0を内視鏡1の画角よりも広くすることによって、内視鏡1の視野をより広範囲に補えるようにすることが好ましい。
【0059】
上記実施形態では、仮想内視鏡の視野が処置具6の位置PTおよび姿勢DTのみによって決定されているので、仮想内視鏡画像IVE中に体腔内の注目すべき構造物が必ずしも含まれているとは限らず、処置具6と注目すべき構造物との位置関係や接近状況を確認するためには、処置具6を移動させる必要がある場合もあった。
【0060】
そこで、本発明の第2の実施形態では、仮想内視鏡の視野を処置具6の位置と注目すべき構造物の位置に基づいて決定するようにした。図5は、本発明の第2の実施形態における内視鏡観察支援システムの機能ブロック図であり、図に示したように、第1の実施形態に対して注目位置特定部26が付加されている。
【0061】
図6は、本発明の第2の実施形態における内視鏡観察支援処理の流れを表したフローチャートであり、図に示したように、第1の実施形態のステップ#2で3次元医用画像Vが取得された後、注目位置特定部26が、3次元医用画像取得部23によって取得された3次元医用画像Vに表された体腔内の注目構造物(例えば手術対象部位)の指定操作を受け付けるユーザインターフェースを提示し、取得された3次元医用画像Vに基づいて、指定された注目構造物の3次元医用画像V中での位置PIを特定し(#3)、その後、第1の実施形態と同様に、実内視鏡画像IREの取得が行われる(#4)、ここで、フローチャートの右側に付記したとおり、処置具位置検出部11は処置具検出姿勢DSTを出力せず、処置具検出位置PSTのみを出力するので、ステップ#6では、処置具位置取得部22が処置具位置PTのみを取得する。以降は第1の実施形態と同様である。
【0062】
次に、本発明の第2の実施形態における各処理部の詳細な処理内容のうち、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0063】
この注目位置特定部26は、公知のMPR法により3次元医用画像Vから生成された所定の断面を表す断面画像中に、画像処理ワークステーション9のポインティングデバイスやキーボードを用いて注目構造物の指定する操作を受け付けるユーザインターフェースを提示する。例えば、ポインティングデバイスによって、断面画像中の注目構造物がクリックされると、注目位置特定部26は、クリックにより指定された注目構造物の3次元医用画像V中での位置PIを特定し、画像処理ワークステーション9の所定のメモリ領域に格納する。ここで、注目構造物として、手術対象の部位や手術時における要注意箇所等が、ユーザの所望に応じて指定される。
【0064】
また、前述のとおり、処置具位置検出部11は処置具検出姿勢DSTを出力せず、処置具位置取得部22も処置具姿勢DTを出力しない。
【0065】
仮想内視鏡画像生成部24は、3次元医用画像Vを入力として、図7Aに示したように、処置具6の位置PTを仮想内視鏡の視点位置VPVEとし、処置具6の位置PTから注目構造物の位置PIに向かう視線を仮想内視鏡の中心視線ベクトルVLVEとし、画角の初期値AVE0を画角AVEとする仮想内視鏡画像IVEを生成する。
【0066】
以上のように、本発明の第2の実施形態では、仮想内視鏡画像生成部24によって生成された仮想内視鏡画像IVEは、図7Bに示したように、注目構造物の位置PIが視野の中心に表されたものとなり、仮想内視鏡画像IVE中に注目構造物が必ず含まれるようになる。したがって、処置具6と注目構造物との位置関係や接近状況を、処置具6の操作を行うことなく、より確実に把握することができるようになる。
【0067】
一方、第2の実施形態で生成された仮想内視鏡画像IVEでは、処置具6が直進する向きを画像中から把握することは困難である。
【0068】
そこで、以下では、処置具6と注目構造物との位置関係や接近状況と、処置具6が直進する向きの両方の把握を容易にした実施形態について説明する。
【0069】
図8は、本発明の第3から第5の実施形態における内視鏡観察支援システムの機能ブロック図であり、図に示したとおり、第2の実施形態において、処置具位置検出部11が処置具検出姿勢DSTを検出するようにし、処置具位置取得部22が処置具姿勢DTを取得するようにしたものである。図9に示したフローチャートにおいても同様に、ステップ#6において、処置具の位置PTとともに姿勢DTが取得される点、および、ステップ#4から#10が繰り返し行われる間、処置具の位置PSTだけでなく姿勢DSTも検出される点が、第2の実施形態と異なる。
【0070】
本実施形態では、仮想内視鏡画像生成部24は、3次元医用画像Vを入力として、図10Aに示したように、処置具6の位置PTを仮想内視鏡の視点位置VPVEとし、処置具6の姿勢ベクトルDTを仮想内視鏡の中心視線ベクトルVLVEとし、注目構造物の位置PIが仮想内視鏡の視野内に含まれるような画角AVEを有する仮想内視鏡画像IVEを生成する。ここで、仮想内視鏡の画角AVEは、例えば、仮想内視鏡の視点位置VPVEと注目構造物の位置PIとを結ぶベクトルと仮想内視鏡の中心視線ベクトルVLVEとのなす角をαとすると、仮想内視鏡の画角AVEは、2αに定数を加えたり、所定の1より大きい係数を乗じたりすることによって求めることができる。
【0071】
以上のように、本発明の第3の実施形態では、仮想内視鏡画像生成部24によって生成された仮想内視鏡画像IVEでは、図10Bに示したように、視野の中心方向が処置具6の直進方向を表しており、視野内には注目構造物が含まれている。
【0072】
本発明の第4の実施形態は、仮想内視鏡の視野の設定方法の変形例である。本実施形態では、仮想内視鏡画像生成部24は、3次元医用画像Vを入力として、図11Aに示したように、処置具6の位置PTを仮想内視鏡の視点位置VPVEとし、処置具6の位置PTから注目構造物の位置PIに向かう視線を仮想内視鏡の中心視線ベクトルVLVEとし、処置具6の姿勢ベクトルDTが仮想内視鏡の視野内に含まれるような画角AVEを有する仮想内視鏡画像IVEを生成する。ここで、仮想内視鏡の画角AVEは、例えば、姿勢ベクトルDTと仮想内視鏡の中心視線ベクトルVLVEとのなす角をβとすると、仮想内視鏡の画角AVEは、2βに定数を加えたり、所定の1より大きい係数を乗じたりすることによって求めることができる。
【0073】
本実施形態では、仮想内視鏡画像生成部24が、さらに、仮想内視鏡画像IVE中の、姿勢ベクトルDT上の画像情報が投影される位置を算出し、算出された位置に、処置具6の直進方向を表すマーカーAPT(図11Bでは星印)を付加する。
【0074】
以上のように、本発明の第4の実施形態では、仮想内視鏡画像生成部24によって生成された仮想内視鏡画像IVEは、図11Bに示したように、視野の中心に注目構造物PIが必ず存在するとともに、処置具6の直進方向が画像中に示されたものとなる。
【0075】
本発明の第5の実施形態も、仮想内視鏡の視野の設定方法の変形例である。本実施形態では、仮想内視鏡画像生成部24は、3次元医用画像Vを入力として、図12Aに示したように、処置具6の位置PTを仮想内視鏡の視点位置VPVEとし、姿勢ベクトルDTと、処置具6の位置PTから注目構造物の位置PIに向かうベクトルとがなす角θを2等分する視線を仮想内視鏡の中心視線ベクトルVLVEとし、姿勢ベクトルDTおよび注目構造物が仮想内視鏡の視野内に含まれるような画角AVEを有する仮想内視鏡画像IVEを生成する。ここで、仮想内視鏡の画角AVEは、例えば、θに定数を加えたり、所定の1より大きい係数を乗じたりすることによって求めることができる。
【0076】
本実施形態でも、仮想内視鏡画像生成部24が、さらに、仮想内視鏡画像IVE中の、姿勢ベクトルDT上の画像情報が投影される位置を算出し、算出された位置に、処置具6の直進方向を表すマーカーAPT(図12Bでは星印)を付加する。
【0077】
以上のように、本発明の第5の実施形態では、仮想内視鏡画像生成部24によって生成された仮想内視鏡画像IVEは、図11Bに示したように、注目構造物PIが視野内に必ず存在するとともに、処置具6の直進方向が画像中に示されたものとなる。
【0078】
このように、本発明の第3から第5の実施形態によれば、仮想内視鏡画像生成部24が、処置具6の直進方向と注目構造物の両方が表された仮想内視鏡画像IVEを生成するので、処置具6と注目構造物との位置関係や接近状況と、処置具6が直進する向きの両方を、より容易にかつより確実に把握することが可能になり、手術や検査等における手技のミス等の防止に資する。
【0079】
なお、上記第3から第5の各実施形態において、仮想内視鏡の画角を決定する際、内視鏡1の画角よりも広い画角の初期値AVE0を予め定めておき、上記で求められた画角の値が初期値AVE0よりも小さい場合には、初期値AVE0を画角AVEとすることによって、仮想内視鏡の画角AVEが内視鏡1の画角よりも広くなるようにしてもよい。逆に、求められた画角AVEが所定の閾値以上の場合となる場合には、画角設定エラーとして、所定のエラー処理(処理の中断や処置具6の姿勢の変更や注目構造物の位置PIの修正等を促す警告メッセージの表示等)を行うようにしてもよい。また、画角の初期値AVE0を必要以上に大きな値にせずに、上記の角α、β、θに応じた画角AVEが決定されるようにすれば、例えば、注目構造物が仮想内視鏡の視野の中心に近い場合には、画角AVEを狭くして拡大率を大きく設定することができ、その結果、仮想内視鏡の視野内が拡大され、観察しやすくなる。
【0080】
また、注目構造物の位置PIが投影される仮想内視鏡画像IVE上の位置にもマーカー等を付加するようにしてもよい。あるいは、注目位置特定部24が、ユーザによって指定された注目構造物の位置PIに基づいて、注目構造物全体を表す領域を抽出するようにし、仮想内視鏡画像生成部27が、この注目構造物領域に対しては、他の構造物とは異なるカラーテンプレートを用いてボリュームレンダリングを行うようにすれば、図10B等に示した仮想内視鏡画像IVE中において注目構造物の領域を識別性の高い態様で表すことが可能になり、仮想内視鏡画像IVEはさらに観察しやすいものとなる。なお、上記の注目構造物領域の抽出には、例えば、本出願人が提案する特開2008-245719号公報に記載の手法を用いることができる。具体的には、注目構造物領域内の任意の点PIの設定を受け付け(以下、この点をユーザ設定点と呼ぶ)、予め定義しておいた病変領域のありうる大きさの情報を用いて、病変領域が存在し得る3次元の存在範囲を決定し、設定された点と、決定された存在範囲の外側の点とに基づいて、グラフカット法等の領域分割方法などを用いて病変領域を抽出することができる。
【0081】
本発明の第6の実施形態は、仮想内視鏡画像生成部24におけるボリュームレンダリング処理の変形例であり、内視鏡観察支援システムのハードウェア構成、および、機能ブロック、処理の全体的な流れ等、本変形例で示されていない部分は、第3の実施形態と同様とする。
【0082】
図13Aは、注目構造物と処置具6との位置関係の一例を模式的に表したものである。図に示したように、仮想内視鏡画像IVEの視点となる処置具6の位置PTと注目構造物との間を他の解剖学的構造物が遮っている場合、その解剖学的構造物の不透明度が高くなるようにカラーテンプレートが定義されていると、その解剖学的構造物の後方にある注目構造物は仮想内視鏡画像IVEには描出されなくなってしまう。そこで、本発明の第6の実施形態では、仮想内視鏡画像生成部24が、体腔内各部を半透明に表示するように不透明度が定義されたカラーテンプレートを用いて仮想内視鏡画像IVEを生成するようにする。これにより、生成された仮想内視鏡画像IVEは、図13Bに模式的に表したように、注目構造物の位置PIと処置具位置PTとの間にある解剖学的構造物が半透明化され、その解剖学的構造物の後方にある注目構造物の位置PIが視認可能なものとなる。特に、上記第3から第5の実施形態の変形例で説明したように、注目構造物領域を抽出しておき、他の領域と異なるカラーテンプレートを用いるようにすれば、注目構造物の位置PIと処置具位置PTとの間に解剖学的構造物が存在していても、注目構造物領域全体を視認性の高い態様で表すことが可能になる。このように腹腔内の解剖学的構造物を半透明化した画像は、実内視鏡画像形成部2で形成することは不可能であるから、実内視鏡画像IREを補完するものとしてこの半透明化された仮想内視鏡画像IVEを用いることは、実用的価値が極めて高い。
【0083】
本発明の第7の実施形態も、仮想内視鏡画像生成部24におけるボリュームレンダリング処理の変形例であり、内視鏡観察支援システムのハードウェア構成、および、機能ブロック、処理の全体的な流れ等、本変形例で示されていない部分は、第3の実施形態と同様とする。
【0084】
図14Aは、本発明の第7の実施形態で用いられるカラーテンプレートの一例を模式的に表したものである。図に示したように、このカラーテンプレートは、処置具6の位置PT(仮想内視鏡の視点位置PVEと同じ)から腹腔内の構造物の表面までの距離に応じて仮想内視鏡画像IVEの色を変化させるように定義されている。仮想内視鏡画像生成部24は、例えば、中心投影の際の各視線上において、所定の閾値以上に画素値が急激に変化する位置、あるいは、画素値が所定の閾値以上となる位置を腹腔内の構造物の表面として検出し、処置具6の位置PTから腹腔内の構造物の表面までの距離を算出しておき、このカラーテンプレートを用いて、検出された構造物の表面の仮想内視鏡画像IVEでの画素値を決定するようにすれば、図14Bに模式的に例示したように、生成される仮想内視鏡画像IVEは、構造物の表面について、処置具6の位置PTからの距離が近いほど色が淡く、その距離が遠いほど色が濃いものとなる。このようにすれば、遠近感を捉えにくい仮想内視鏡画像IVEの遠近感を補うことが可能になり、処置具6の腹腔内構造物(注目構造物を含む)への接近状況をより容易に把握できるようになる。
【0085】
本発明の第8の実施形態は、図15の機能ブロック図に示したように、第3の実施形態に警告判定部27を付加した構成となっており、内視鏡観察支援システムのハードウェア構成は、第3の実施形態と同様である。
【0086】
この警告判定部27は、画像処理ワークステーション9に実装される処理部であり、処置具6の位置PTと注目構造物の位置PIとの間の距離を算出し、算出された距離が所定の閾値よりも小さい場合、すなわち、処置具6が注目構造物に許容できない程度に接近している場合に、警告メッセージWMを出力するものである。
【0087】
図16は、本発明の第8の実施形態における内視鏡観察支援処理の流れを表したフローチャートであり、図に示したように、第3の実施形態のステップ#10の実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEの表示の後、警告判定部27が、上記距離と上記閾値とを比較し(#11.1)、上記距離が上記閾値よりも小さい場合(#11.1; Yes)、警告メッセージWMを出力し、表示制御部25が、図17に例示したように、注目構造物の位置PIの近傍に「接近注意」のコメント付きの矢印マークを重畳表示させる。これにより、注目構造物に対して、処置具6が異常に接近した状態を容易に認識することが可能になり、処置具6の誤操作の未然防止に資する。このような警告表示は、注目位置特定部26において、注目構造物として、手術時に傷をつけると大出血を招く血管等が指定された場合に特に効果的である。
【0088】
なお、警告メッセージを外部に出力する方法は、上記のように仮想内視鏡画像IVEに重畳表示する方法の他、警告音や音声を出力する方法であってもよいし、警告メッセージの重畳表示と警告音等の出力の両方を行ってもよい。また、上記距離に応じた危険度を段階的に定義した危険度判定テーブルを予め用意しておき、警告判定部27が、算出された距離に基づいてこの危険度判定テーブルを参照して危険度を決定し、この危険度の値を警告メッセージWMとして出力し、表示制御部25が危険度に応じたアイコン等をWSディスプレイ10に表示させるようにしてもよい。
【0089】
本発明の第9の実施形態は、図18の機能ブロック図に示したように、第1の実施形態に要注意構造物検出部28を付加した構成となっており、内視鏡観察支援システムのハードウェア構成は、第3の実施形態と同様である。
【0090】
要注意構造物検出部28は、画像処理ワークステーション9に実装される処理部であり、3次元医用画像Vを入力として、公知の画像認識手法により、要注意構造物領域RAを検出する。図20Aは、処置具6と注目構造物と要注意構造物との位置関係の一例を模式的に表したものである。この例では、要注意構造物検出部28は公知の血管抽出処理を行うことにより、腹壁の裏側にある注意すべき血管領域RAを検出している。
【0091】
図19は、本発明の第9の実施形態における内視鏡観察支援処理の流れを表したフローチャートであり、図に示したように、第3の実施形態のステップ#3で注目位置PIを特定した後、要注意構造物検出部28が要注意構造物領域RAを検出する(#3.1)。また、ステップ#8において、仮想内視鏡画像生成部24は、要注意構造物領域RAが視認可能になるように定義されたカラーテンプレートを用いて仮想内視鏡画像IVEを生成する。図20Bは、生成される仮想内視鏡画像IVEの一例を模式的に表したものである。図に示した仮想内視鏡画像IVEは、腹壁を表す画素が半透明化され、血管を表す画素の視認性が高くなるように色や不透明度が定義されたカラーテンプレートを用いることによって生成されたものである。これにより、要注意構造物の視認性が高まるので、内視鏡1や処置具6の誤操作の未然防止に資する。
【0092】
なお、要注意構造物検出部28は、ユーザの手動操作により要注意構造物領域RAを検出するようにしてもよい。また、要注意構造物領域RAに対して、矢印等のマーカーやテキストコメント等のアノテーションを重畳表示させるようにしてもよい。
【0093】
本発明の第10の実施形態は、注目構造物と内視鏡1と処置具6の姿勢ベクトルのすべてが視野に含まれるような仮想内視鏡画像を生成するものであり、図21のハードウェア構成図に示したように、図1に示した第1の実施形態に内視鏡用マーカー7bを付加した構成となっている。
【0094】
内視鏡用マーカー7bは、処置具用マーカー7aと同様に、位置センサ8とともに3次元位置計測装置を構成するものであり、内視鏡1の手元付近に設けられており、位置センサ8によって、所定の時間間隔でマーカー7bの3次元位置が検出され、オフセット計算によって、内視鏡1の先端部の3次元位置PSEを算出することができる。
【0095】
図22は、本発明の第10の実施形態の機能ブロック図であり、図8に示した第3の実施形態に、内視鏡位置検出部12、内視鏡位置取得部29が付加された構成となっている。ここで、内視鏡位置検出部12の機能は、図21の内視鏡用マーカー7bおよび位置センサ8によって実現される。また、内視鏡位置PEは、破線枠内の各処理部によって、画像処理ワークステーション9の所定のメモリ領域に対して読み書きされるデータである。
【0096】
図23は、本発明の第10の実施形態における内視鏡観察支援処理の流れを表したフローチャートであり、図の右側に付記したように、内視鏡1を用いた被検体の腹腔内の観察中は、観察が終了するまで(#12; YES)、実内視鏡画像形成部2が実内視鏡画像IREを繰り返し形成し、処置具位置検出部11が処置具6の位置PSTおよび姿勢DSTを検出するだけでなく、内視鏡位置検出部12が、所定の時間間隔で、体腔内に挿入された内視鏡1の位置PSEを繰り返しリアルタイムに検出する。また、ステップ#6で処置具6の位置と姿勢の取得を行った後、内視鏡位置取得部29が、内視鏡位置検出部12で検出された内視鏡検出位置PSEを取得し、取得された内視鏡位置PSEを3次元医用画像Vの座標系における位置に変換して得られた内視鏡位置PEを出力する(#7)。
【0097】
そして、仮想内視鏡画像生成部24は、仮想内視鏡画像IVEを生成する際に、内視鏡位置取得部29によって取得された内視鏡位置PEに基づいて、仮想内視鏡画像IVE中の内視鏡位置PEに対応する位置に内視鏡1が存在することを識別可能な態様で表した仮想内視鏡画像IVEを生成する(#7)。以降の処理の流れ(#10から#12)は第3の実施形態と同様である。
【0098】
次に、各処理部のうち本実施形態に特有の点について詳細に説明する。
【0099】
内視鏡位置取得部29は、処置具位置取得部22と同様に、内視鏡位置検出部12との通信により内視鏡検出位置PSEを取得する通信インターフェースとしての機能と、取得した内視鏡検出位置PSEを位置センサ8の3次元座標系から3次元医用画像Vの3次元座標系の座標値で表現された内視鏡位置PEに変換して画像処理ワークステーション9の所定のメモリ領域に格納する機能とを有する。
【0100】
仮想内視鏡画像生成部24は、まず、3次元医用画像Vを入力として、図24Aに模式的に示したように、処置具6の位置PTを仮想内視鏡の視点位置VPVEとし、処置具6の姿勢ベクトルDTを仮想内視鏡の中心視線ベクトルVLVEとし、注目構造物の位置PI、および、内視鏡1の位置PEが仮想内視鏡の視野内に含まれるような画角AVEを有する仮想内視鏡プレ画像を生成する。ここで、仮想内視鏡の画角AVEは、例えば、仮想内視鏡の視点位置VPVEと注目構造物の位置PIとを結ぶベクトルと仮想内視鏡の中心視線ベクトルVLVEとのなす角をα1、仮想内視鏡の視点位置VPVEと内視鏡位置PEとを結ぶベクトルと仮想内視鏡の中心視線ベクトルVLVEとのなす角をα2とすると、仮想内視鏡の画角AVEは、2α1、2α2のうち大きい方の値に定数を加えたり、所定の1より大きい係数を乗じたりすることによって求めることができる。図24Aでは、注目構造物の位置PIよりも内視鏡位置PEの方が視野の中心から離れているので、2α2に基づいて画角AVEが決定される。
【0101】
次に、仮想内視鏡画像生成部24は、内視鏡位置PEに内視鏡1が存在する状態を表す内視鏡形状画像MEを生成する。具体的には、内視鏡形状画像MEは、上記特許文献2に記載されたように、データベースに格納された内視鏡1の形状を表す画像と、内視鏡位置PEに基づいて生成される。そして、仮想内視鏡画像生成部24は、仮想内視鏡プレ画像と内視鏡形状画像MEをアルファブレンディング等の公知の手法により合成することにより、仮想内視鏡画像IVEを生成する。なお、上記のように内視鏡形状画像MEを生成せずに、仮想内視鏡プレ画像中の内視鏡位置PEに対応する位置に、内視鏡1を表す矢印やアイコン等のマーカーやテキストコメント等のアノテーションを重畳することによって仮想内視鏡画像IVEを生成するようにしてもよい。
【0102】
図24Bは、本実施形態で生成された仮想内視鏡画像IVEの一例を模式的に表したものであり、図に示したように、仮想内視鏡画像IVE中の内視鏡位置PEに対応する位置に内視鏡形状画像MEが重畳されている。
【0103】
以上のように、本発明の第10の実施形態によれば、注目構造物の位置PIだけでなく、内視鏡1の位置PEも視野に含まれる仮想内視鏡画像IVEが生成されるので、処置具6と注目構造物だけでなく、内視鏡1も含めた相互の位置関係や接近状況を確実に把握することが可能になる。
【0104】
また、このとき、内視鏡位置検出部12が内視鏡1の位置をリアルタイムに検出した結果のフィードバックによって仮想内視鏡の視野や画像内容がリアルタイムに変更された仮想内視鏡画像IVEが連続的に表示されるので、処置具6と注目構造物だけでなく、内視鏡1も含めた相互の位置関係や接近状況を、動的に、より的確に捉えることが可能になる。
【0105】
さらに、実内視鏡画像形成部2が、内視鏡1によるリアルタイムの撮像によって体腔内を表す実内視鏡画像IREを形成し、仮想内視鏡画像IVEの生成時に用いられた内視鏡1および処置具6の位置が検出されたのとほぼ同じタイミングで形成された実内視鏡画像IREが表示されるので、実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEとは、ほぼ同じ時点での体腔内の状態が表されたものとなり、実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEとが時間的同期を取って連続的に表示される。また、このとき、内視鏡1の移動や回転等の操作に連動して実内視鏡画像IREの視野が変化するとともに、処置具6だけでなく内視鏡1の操作にも連動して仮想内視鏡画像IVEの視野や画像内容も変化する。このように、本発明の第10の実施形態では、実内視鏡画像IREと仮想内視鏡画像IVEによって、さらにリアルタイムに、かつ、相互補完的に体腔内を観察することが可能になる。
【0106】
本発明の第11の実施形態は、3次元医用画像Vを内視鏡を用いた観察時にリアルタイムに形成、取得するものであり、この場合、第10の実施形態のハードウェア構成(図21参照)のうち、処置具用マーカー7a、内視鏡用マーカー7b、位置センサ8は不要である。
【0107】
図25は、本発明の第11の実施形態における内視鏡観察支援システムの機能ブロック図である。図に示したように、第10の実施形態の処置具位置検出部11、内視鏡位置検出部12、処置具位置取得部22、内視鏡位置取得部29の代わりに、内視鏡・処理具位置認識部30を付加した構成となっている。すなわち、内視鏡・処置具位置認識部30は、本発明の位置検出手段に相当する。
【0108】
内視鏡・処置具位置認識部30は、画像処理ワークステーション9に実装される処理部であり、3次元医用画像Vを入力として、公知のパターン認識処理により、3次元医用画像V中の内視鏡1または処置具6を表す領域を抽出し、内視鏡位置PEおよび処置具位置PT、処置具姿勢DTを認識する。
【0109】
図26は、本発明の第11の実施形態における内視鏡観察支援処理の流れを表したフローチャートである。図に示したように、ステップ#4で実内視鏡画像IREの取得が行われた後、3次元医用画像取得部24による3次元医用画像Vの取得が行われ(#6.1)、内視鏡・処置具位置認識部30が、3次元医用画像取得部24によって取得された3次元医用画像Vに基づいて内視鏡位置PEおよび処置具位置PT、処置具姿勢DTを認識する(#6.2)。また、ステップ#8において、仮想内視鏡画像生成部24は、内視鏡・処置具位置認識部30で抽出された内視鏡1を表す領域が所定の色で表示されるように定義されたカラーテンプレートを用いて仮想内視鏡画像IVEを生成する。したがって、第10の実施形態のように、内視鏡1の形状画像を生成する必要はない。このように、3次元医用画像Vを内視鏡を用いた観察時にリアルタイムで形成、取得するようにすれば、取得された3次元医用画像Vは、実内視鏡画像IREとほぼ同じ時点での腹腔内の様子を表したものとなるので、内視鏡下での観察前に取得された3次元医用画像Vを用いた場合よりも実際の腹腔内の様子がリアルタイムに正確に再現された仮想内視鏡画像IVEが生成される。ただし、この実施形態では、ステップ#2およびステップ#6.1で3次元医用画像Vの撮像の際、座標軸の原点に対応する被検体の位置や座標軸の向きが変動しないよう、撮影体位に注意する必要がある。
【0110】
なお、本発明の第11の実施形態の場合、被検体の被曝量低減のため、モダリティ5としては超音波診断装置を用いるのが好ましい。
【0111】
上記の各実施形態はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきものではない。
【0112】
この他、上記の実施形態におけるシステム構成、ハードウェア構成、処理フロー、モジュール構成、ユーザインターフェースや具体的処理内容等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0113】
例えば、システム構成については、上記の実施形態では、図1や図21のハードウェア構成では、モダリティ5と画像処理ワークステーション9が直接接続されているが、画像保管サーバをLAN上に接続し、モダリティ5で形成された3次元医用画像Vは、いったん画像保管サーバのデータベースに格納されるようにし、画像処理ワークステーション9からの要求に応じて、画像保管サーバから画像処理ワークステーション9に3次元医用画像Vが転送されるようにしてもよい。
【0114】
また、内視鏡1は、硬性鏡ではなく、軟性鏡やカプセル型内視鏡を用いてもよい。
【0115】
モダリティ5は、上記のCT装置や超音波診断装置のほか、MRI装置等を用いてもよい。
【0116】
WSディスプレイ10は、公知の立体視表示に対応したディスプレイとし、仮想内視鏡画像IVEを立体視用の画像として表示するようにしてもよい。例えば、WSディスプレイ10として左右両眼用の2つの視差画像を用いて立体視表示を実現する方式のものを採用した場合、仮想内視鏡画像生成部24は、視点位置VPVEから左右両眼の視差の分だけずらした各眼の位置を設定し、設定された各眼の位置を視点とする中心投影により、左右各眼用の仮想内視鏡視差画像を生成するようにし、表示制御部25が、左眼用の仮想内視鏡視差画像をWSディスプレイ10の左眼用の表示画素に表示させ、右眼用の仮想内視鏡視差画像をWSディスプレイ10の右眼用の表示画素に表示させるように制御すればよい。
【0117】
処置具位置検出部11や内視鏡具位置検出部12は、磁気式のものを用いてもよいし、上記特許文献2に記載されているように、ジャイロやロータリーエンコーダ等を用いてもよい。
【0118】
さらに、観察部位は腹腔内ではなく、胸腔内等、内視鏡下での観察に適した被検体の他の部位であってもよい。
【0119】
画像処理ワークステーション9においては、上記実施形態では、実内視鏡画像形成部2で実内視鏡画像IREが形成される周期は、仮想内視鏡画像生成部24で仮想内視鏡画像IVEが生成される周期よりも短いものとして、通信負荷を考慮して、実内視鏡画像取得部21からの要求ベースでの画像受信としているが、実内視鏡画像形成部2で順次形成される実内視鏡画像IEのすべてを実内視鏡画像取得部21が受信するようにしてもよい。この場合、表示制御部25が、仮想内視鏡画像生成部24による仮想内視鏡画像IVEの生成タイミングとは非同期に、実内視鏡画像IREの受信の度にWSディスプレイ10の実内視鏡画像IREの表示を更新させるようにしてもよい。
【0120】
処置具位置取得部22は、処置具位置検出部11で所定の時間間隔で検出される処置具位置PSTおよび姿勢DSTのすべてを受信しておき、図3等のステップ#4の処理が呼び出されるタイミングで受信した処置具位置PSTおよび姿勢DSTのみを後者の座標変換機能によって処置具位置PEおよび姿勢DTに変換して出力するようにしてもよい。内視鏡位置取得部29についても同様である。
【0121】
また、処置具位置取得部22や内視鏡位置取得部29で行われる座標変換を仮想内視鏡画像生成部24で行うようにしてもよい。
【0122】
注目位置特定部26は、公知の画像認識技術(血管や臓器の抽出手法や異常陰影検出手法等)を用いて注目位置を自動的に特定するようにしてもよい。
【0123】
さらに、仮想内視鏡画像生成部24は、例えば、手術対象部位、要注意血管、要注意臓器、処置具というように複数の注目位置を視点とする仮想内視鏡画像をさらに生成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 内視鏡
2 デジタルプロセッサ
3 光源装置
4 実内視鏡画像用ディスプレイ
5 モダリティ
6 処置具
7a 処置具用マーカー
7b 内視鏡用マーカー
8 位置センサ
9 画像処理ワークステーション
10 画像処理ワークステーション用ディスプレイ
11 処置具位置検出部
12 内視鏡位置検出部
21 実内視鏡画像取得部
22 処置具位置取得部
23 3次元医用画像取得部
24 仮想内視鏡画像生成部
25 表示制御部
26 注目位置特定部
27 警告判定部
28 要注意構造物検出部
29 内視鏡位置取得部
30 内視鏡・処置具位置認識部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の体腔内を表す3次元医用画像を形成する3次元医用画像形成手段と、
前記体腔内に挿入された処置具の位置をリアルタイムに検出する処置具位置検出手段と、
前記3次元医用画像を入力として、前記検出された処置具の位置に対応する前記3次元医用画像中の位置である対応処置具位置から見た前記体腔内を表す仮想内視鏡画像を生成する仮想内視鏡画像生成手段と、
前記仮想内視鏡画像を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする内視鏡観察支援システム。
【請求項2】
前記処置具位置検出手段が、前記処置具の位置と同時に該処置具が直進する向きも検出するものであり、
前記仮想内視鏡画像生成手段が、前記処置具が直進する向きに対応する前記3次元医用画像中での向きを有する前記対応処置具位置からの視線である処置具視線上の画像情報が投影された前記仮想内視鏡画像を生成するものであることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項3】
前記仮想内視鏡画像生成手段は、前記処置具視線上の画像情報が投影された前記仮想内視鏡画像中の位置を識別可能な態様で表した前記仮想内視鏡画像を生成するものであることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項4】
前記仮想内視鏡画像生成手段が、前記処置具視線を前記仮想内視鏡画像の視野の中心における視線である中心視線とする前記仮想内視鏡画像を生成するものであることを特徴とする請求項2または3に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項5】
前記体腔内の注目構造物の前記3次元医用画像中での位置を特定する注目位置特定手段をさらに備え、
前記仮想内視鏡画像生成手段が、前記特定された注目位置が前記仮想内視鏡画像における視野内に含まれる前記仮想内視鏡画像を生成するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項6】
前記体腔内の注目構造物の前記3次元医用画像中での位置を特定する注目位置特定手段をさらに備え、
前記仮想内視鏡画像生成手段が、前記対応処置具位置から前記特定された注目位置に向かう視線を前記仮想内視鏡画像の中心視線とする前記仮想内視鏡画像を生成するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項7】
前記仮想内視鏡画像生成手段は、前記注目構造物のうちの少なくとも前記注目位置を識別可能な態様で表した前記仮想内視鏡画像を生成するものであることを特徴とする請求項5または6に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項8】
前記対応処置具位置と前記注目構造物とが所定の基準を満たす程度に接近している場合には警告を提示する警告手段をさらに備えたことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項9】
前記3次元医用画像中の前記体腔内の第2の注目構造物を検出する第2の注目構造物検出手段をさらに備え、
前記仮想内視鏡画像生成手段は、前記第2の注目構造物を識別可能な態様で表した前記仮想内視鏡画像を生成するものであることを特徴とする請求項5から8のいずれか1項に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項10】
前記注目構造物は内視鏡下での手術対象部位であることを特徴とする請求項5から9のいずれか1項に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項11】
前記注目構造物は内視鏡下での手術において注意を有する解剖学的構造物であることを特徴とする請求項5から9のいずれか1項に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項12】
前記注目構造物と前記第2の注目構造物の一方は内視鏡下での手術対象部位であり、他方は前記内視鏡下での手術において注意を有する解剖学的構造物であることを特徴とする請求項9に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項13】
前記仮想内視鏡画像生成手段は、前記対応処置具位置から前記体腔内の構造物の表面までの距離に応じて前記仮想内視鏡画像の画素値を決定するものであることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項14】
前記仮想内視鏡画像生成手段は、内視鏡による撮像によって得られる実内視鏡画像に表された体腔内各部とほぼ同じ外観の前記仮想内視鏡画像が得られるように定義されたカラーテンプレートを用いて前記仮想内視鏡画像の画素値を決定するものであることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項15】
前記体腔内に挿入された内視鏡の位置を検出する内視鏡位置検出手段をさらに備え、
前記仮想内視鏡画像生成手段が、前記検出された内視鏡の位置に対応する前記3次元医用画像中の位置である対応内視鏡位置が前記仮想内視鏡画像における視野内に含まれ、かつ、前記対応内視鏡位置が識別可能な態様で表された前記仮想内視鏡画像を生成するものであることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項16】
前記内視鏡によるリアルタイムの撮像によって該体腔内を表す実内視鏡画像を形成する実内視鏡画像形成手段をさらに備え、
前記表示手段が、前記仮想内視鏡画像の生成時に用いられた前記処置具の位置が検出されたのとほぼ同じタイミングで形成された前記実内視鏡画像をさらに表示するものであることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の内視鏡観察支援システム。
【請求項17】
被検体の体腔内を表す3次元医用画像を形成するステップと、
前記体腔内に挿入された処置具の位置をリアルタイムに検出するステップと、
前記3次元医用画像を入力として、前記検出された処置具の位置に対応する前記3次元医用画像中の位置である対応処置具位置から見た前記体腔内を表す仮想内視鏡画像を生成するステップと、
前記仮想内視鏡画像を表示するステップとを有することを特徴とする内視鏡観察支援方法。
【請求項18】
被検体の体腔内を表す3次元医用画像を取得する3次元医用画像取得手段と、
位置検出手段によってリアルタイムに検出された前記体腔内に挿入された処置具の位置を取得する処置具位置取得手段と、
前記3次元医用画像を入力として、前記取得された処置具の位置に対応する前記3次元医用画像中の位置である対応処置具位置から見た前記体腔内を表す仮想内視鏡画像を生成する仮想内視鏡画像生成手段と、
前記仮想内視鏡画像を表示手段に表示させる表示制御手段とを備えたことを特徴とする内視鏡観察支援装置。
【請求項19】
コンピュータに、
被検体の体腔内を表す3次元医用画像を取得するステップと、
位置検出手段によってリアルタイムに検出された前記体腔内に挿入された処置具の位置を取得するステップと、
前記3次元医用画像を入力として、前記取得された処置具の位置に対応する前記3次元医用画像中の位置である対応処置具位置から見た前記体腔内を表す仮想内視鏡画像を生成するステップと、
前記仮想内視鏡画像を表示手段に表示させるステップとを実行させることを特徴とする内視鏡観察支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25】
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【図26】
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【図14A】
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【図14B】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−212245(P2011−212245A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83604(P2010−83604)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】