説明

内部凝固検出装置及び内部凝固検出方法

【課題】連続鋳造装置で製造される鋳片を対象として、リフトオフ量の設定を接触方式では行わず、そのうえで、リフトオフ量の変動に影響されることなく鋳片の凝固位置を正確且つ確実に検出できるようにする。
【解決手段】本発明に係る内部凝固検出装置1は、鋳片Wに向けて超音波を送信する送信部5と、送信部5が送信した超音波であって鋳片Wを透過してきた超音波を受信する受信部6と、受信部6が受信した超音波の信号を基に鋳片Wの内部における凝固位置を判定する判定部21と、鋳片Wと送信部5との距離及び鋳片Wと受信部6との距離を計測する距離計測部22と、距離計測部22が計測した距離を基に、受信部6が受信した超音波の信号強度を補正する補正処理部23とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造装置で製造された鋳片を対象とする内部凝固検出装置及び内部凝固検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造装置では、転炉や二次精錬設備等から出鋼された溶鋼を取鍋による搬送を経てタンディッシュへ注入し、このタンディッシュで一時的に貯留させた溶鋼を鋳型へ注入し、鋳型から鋳片を引き抜くと共に垂直部、曲がり部、水平部へと誘導しつつ冷却することにより、鋳片を連続的に製造する。
製造される鋳片では、鋳型から下流側へ離れるにつれて凝固シェルの肉厚が増加し、反対に鋳片中心部の未凝固部が減少して、やがて凝固完了に至るようになる。このような連続鋳造装置による鋳片の製造では、鋳片の凝固位置(クレータエンド位置)が鋳造方向のどの位置にあるかを判定することが、鋳片の生産性や品質向上にとって極めて重要とされる。
【0003】
なぜなら、鋳造速度を上昇させると凝固位置は鋳片の鋳造方向下流側に移動するが、凝固位置が鋳片支持ロールの設置範囲を超えるとバルジングが起こり、場合によっては鋳造を停止させる必要が生じる。故に、凝固位置が明確でない場合には鋳造速度をむやみに増速できない(生産性を高められない)からである。また、扁平断面形のスラブ鋳片では、凝固位置が鋳片の幅方向に均一とならず、また時間によって凝固位置の幅方向形状が変動することもある。
【0004】
そこで従来、電磁超音波の探触子によって超音波の横波を鋳片に送信し、横波が液相である未凝固部を伝播しない性質を利用して、探触子の設置位置に凝固位置が到達したと判定する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1に開示された技術では、リフトオフ量(鋳片と探触子との間の距離)として設定する設定値だけ探触子から鋳片側へ突出させるようにタッチロールを設け、このタッチロールを鋳片に押し付ける構成としていた。これは、電磁超音波の探触子感度はリフトオフ量が大きいほど弱くなるため、高感度状態を維持させる(微弱な信号を検出する)ためにはリフトオフ量を小さくし且つ一定に保持させる必要があったからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−183449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
連続鋳造直後の鋳片は、表面温度が500℃を超え且つスケールも多い状態にある。そのため、このような状況下で特許文献1の技術を実施すると、探触子と鋳片の間にスケールが詰まって探触子を破損させたり、タッチロールが固着して探触子が案内ロールに巻き込まれたりするなどの問題があった。それ故、タッチロールによる接触方式でリフトオフ量の設定を行うことは採用できず、鋳片の凝固状態を安定して連続的に判定することは実現困難とされていた。
【0007】
ところで、鋳片を伝播し透過した超音波を受信する際の信号強度の変位に着目すれば、鋳片内部の状況、即ち、未凝固部が徐々に減少してゆく状況や凝固完了に至った状況を把握できることになる。しかし、タッチロールによる接触方式でリフトオフ量の設定を行わないものとすると、鋳片表面に現れるオシレーションマーク等の凹凸が原因でリフトオフ量は変動することになって、前記した超音波受信時の信号強度もリフトオフ量の変動に伴って変位してしまう。従って、この信号強度の変位が未凝固部の変位によるのか又はリフトオフ量の変動によるのかを判別できないことになる。
【0008】
このように、いずれの方法を採用するにしても、鋳片の凝固位置を正確且つ確実に検出するのは困難となっていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、リフトオフ量の変動に影響されることなく鋳片の凝固位置を正確且つ確実に検出できるようにした内部凝固検出装置及び内部凝固検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る内部凝固検出装置は、連続鋳造装置により製造された鋳片に向けて超音波を送信する送信部と、前記送信部が送信した超音波であって鋳片を透過してきた超音波を受信する受信部と、前記受信部が受信した超音波の信号を基に鋳片の内部における凝固位置を判定する判定部と、を有すると共に、前記鋳片と送信部との距離及び鋳片と受信部との距離を計測する距離計測部と、前記距離計測部が計測した距離を基に、受信部が受信した超音波の信号強度を補正する補正処理部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
前記送信部は鋳片の一方側に配置され、前記受信部は鋳片を挟んで送信部と対向する鋳片の他方側へ配置されているものとするとよい。
更に好ましくは、前記送信部及び受信部は、鋳片に沿って配置されていて当該鋳片の内部に渦電流を発生させるコイルと、前記コイルの背面に配備され且つ渦電流が発生する鋳片内の領域に磁場を形成する磁石と、を備えるものであるとするのがよい。
【0011】
また、前記補正処理部は、前記距離計測部が計測した距離が短くなった場合は、受信部が受信した超音波の信号強度を小さくし、前記距離計測部が計測した距離が長くなった場合は、受信部が受信した超音波の信号強度を大きくするように構成されているものとするのがよい。
好ましくは、前記距離計測部は、前記コイルから構成されているものとするのがよい。
【0012】
一方、本発明に係る鋳片の内部凝固検出方法は、連続鋳造装置により製造された鋳片に向けて送信部から超音波を送信する送信ステップと、前記送信ステップが送信した超音波であって鋳片を透過してきた超音波を受信部で受信する受信ステップと、前記受信ステップが受信した超音波の信号を基に鋳片の内部における凝固位置を判定する判定ステップと、を有すると共に、前記鋳片と送信部との距離及び鋳片と受信部との距離を計測する距離計測ステップと、前記距離計測ステップが計測した距離を基に、前記受信ステップにて受信した超音波の信号強度を補正する補正処理ステップと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る内部凝固検出装置及び内部凝固検出方法は、リフトオフ量の変動に影響されることなく鋳片の凝固位置を正確且つ確実に検出できるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る内部凝固検出装置を示したブロック構成図である。
【図2】鋳片に対して電磁超音波を送信させる状況を説明する模式図である。
【図3】連続鋳造装置を示した側断面図である。
【図4】図3のA部において鋳片内部の状況を示した図である。
【図5】送信部及び受信部の大きさについて説明した図である。
【図6】送信部に印加される周波数と発生する渦電流との関係を説明した図である。
【図7】別の実施形態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1及び図2は、本発明に係る内部凝固検出装置1の第1実施形態を示している。
この内部凝固検出装置1は、図3に示す連続鋳造装置2により製造された鋳片Wに電磁超音波を送信し、鋳片Wから受信される電磁超音波の状況(非受信を含む)によって鋳片W内の凝固位置を判定するものである。
【0016】
図1に示すように、内部凝固検出装置1は、鋳片Wに近接して設置される電磁超音波の送信部5及び受信部6と、これら送信部5及び受信部6を制御すると共に、受信部6が受信した信号の処理を行う制御部7と、を備えている。さらに、内部凝固検出装置1は、鋳片Wと送信部5との距離及び鋳片Wと受信部6との距離を計測する距離計測部22と、距離計測部22が計測した距離を基に、受信部6が受信した超音波の信号強度を補正する補正処理部23とを備えている。
【0017】
なお、図3に示すように、連続鋳造装置2は、取鍋10からの溶鋼が供給されるタンディッシュ11と、このタンディッシュ11からの溶鋼が注入される鋳型12と、この鋳型12から引き抜かれた鋳片Wを案内するために、鋳型12の下方で鋳片Wの鋳造方向(長手方向)に沿って設けられる複数の案内ロール13とを有している。
このような連続鋳造装置2において製造される鋳片Wは、鋳型12から下方へ垂直に引き出される垂直部14aと、この垂直部14aから水平方向へ向けて曲がりつつ引き出される曲がり部14bと、この曲がり部14bから水平方向に沿って引き出される水平部14cとを経て、水平部14cの下流側に設置されるガス切断装置(図示略)へ向けて搬送される。
【0018】
鋳片Wは、水平部14cに到達した状態で鋳片中心部の未凝固部が全て凝固して、凝固完了に至り、その後にガス切断装置による切断が行われるようになっている。そのため、この水平部14cに対して本発明の内部凝固検出装置1が設置される。
内部凝固検出装置1が備える送信部5は、連続鋳造された鋳片Wに対して電磁超音波(横波)を送信するものであり、これに対して受信部6は、送信部5が送信した電磁超音波であって且つ鋳片Wに伝播して透過した電磁超音波を受信するところである。送信部5は、鋳片Wの一方側で鋳片Wに沿って配置されており、受信部6は、鋳片Wを挟んで送信部5と対向する位置(鋳片Wの他方側)で鋳片Wに沿って配置されている。
【0019】
図2(a)に示すように、送信部5は、鋳片Wの内部に渦電流を発生させるレーストラック型(渦巻き型)のコイル18と、このコイル18の背面に配備され且つ渦電流が発生する鋳片W内の領域に磁場を形成させる磁石19とを有している。
具体的には、鋳片Wの一方側に永久磁石である磁石19が、例えば、鋳片W側が図2(a)の左からS極とN極、鋳片Wに対して背を向ける側がN極とS極のように配備され、鋳片Wと磁石19との間であって鋳片Wの表面と平行にコイル18が配備されている。なお、連続鋳造によって1000℃にも達する高温となっている鋳片Wに対し、電磁超音波を伝播させるためには、リフトオフ量(コイル18と鋳片Wとの間の距離)は小さくする必要がある。このリフトオフ量は最大で10mm程度とするのが好適とされる。
【0020】
このような構成の送信部5は、コイル18に電流を流すことで鋳片W内に渦電流を誘起させ、この渦電流と磁界との相互作用により発生するローレンツ力により鋳片内に振動を励起させ、鋳片W内に電磁超音波を発生させる。
これに対し、受信部6は、送信部5と同様にレーストラック型(渦巻き型)のコイル18と磁石19とを有したもので、これらコイル18と磁石19とが、送信部5の場合とは鋳片Wを境として反転した(逆向きの)配置で設けられている。この受信部6は、送信部5から鋳片Wに向けて送信され鋳片W内を伝播してきた超音波を、送信部5の動作の逆を辿ることで受信する。
【0021】
ところで、図4に示すように、送信部5によって送信された電磁超音波は、鋳片Wの凝固部では鋳片W内を伝播するが、鋳片W内に液相である未凝固部が存在すると電磁超音波は減衰され、伝播しないか又は伝播しにくいという現象が生じる。そのため、所定の信号強度を有した電磁超音波を受信部6が受信するか否かを監視することにより、鋳片W内に未凝固部が残っているか否か、すなわち、凝固が完了しているか否かを判別することができる。
【0022】
一方、内部凝固検出装置1が備える制御部7は、送信部5及び受信部6を制御したり、受信部6から得られる信号を処理したりするところで、コンピュータなどによって構成された信号処理部20を有している。この信号処理部20は、判定部21と距離計測部22と補正処理部23とを有している。
また、制御部7は、送信部5に対応して設けられた送信側の信号切替部25と、受信部6に対応して設けられた受信側の信号切替部26と、これら信号切替部25,26と信号処理部20との間に接続されたインピーダンス検出部27及び凝固位置検出部28とを有している。
【0023】
信号切替部25,26は、信号処理部20の判定部21が信号処理を行うときには送信部5、受信部6と凝固位置検出部28とを接続し、距離計測部22が信号処理を行うときには送信部5、受信部6とインピーダンス検出部27とを接続するように、回路を切り替えるためのものである。
信号処理部20の判定部21は、受信部6が受信した電磁超音波の信号を基に鋳片Wの内部における凝固位置を判定するところである。従って、この判定部21が信号処理を行うときには、送信側の信号切替部25は、送信部5が鋳片Wへ向けて電磁超音波を送信する状態とされ、また受信側の信号切替部26は、受信部6が鋳片Wに生じた渦電流から電磁超音波を受信する状態とされて、凝固位置検出部28から判定部21へ信号を出力できるようにする。
【0024】
これに対し、信号処理部20の距離計測部22は、鋳片Wと送信部5との距離(送信側のリフトオフ量)及び鋳片Wと受信部6との距離(受信側のリフトオフ量)を計測するところである。なお、この距離計測部22において、送信側のリフトオフ量や受信側のリフトオフ量を計測するための具体的な構成は、送信部5や受信部6が備えるコイル18を利用するものとなっている。
【0025】
すなわち、図2(b)に示すように、電磁超音波を発生するために鋳片W内に生じた渦電流に誘起され、コイル18に電流が生じることになる。このときコイル18で検出されるインピーダンスは、送信側のリフトオフ量や受信側のリフトオフ量が変動するのに伴って変位するようになる。そこで、この距離計測部22は、このインピーダンスの変化から距離を算出する構成となっている。
【0026】
このようなことから、この距離計測部22が信号処理を行うときには、送信側の信号切替部25は、送信部5が鋳片Wへ向けて電磁超音波を送信した後、この送信を一旦停止させ、鋳片Wに生じた渦電流から送信部5のコイル18を介してインピーダンス検出部27でインピーダンスの検出ができる状態とし、インピーダンス検出部27から距離計測部22へ信号を出力できるようにする。
【0027】
また、受信側の信号切替部26についても同様に、受信部6が鋳片Wからの電磁超音波の受信を行った後、この受信を一旦停止させ、鋳片Wに生じた渦電流から受信部6のコイル18を介してインピーダンス検出部27でインピーダンスの検出ができる状態とし、インピーダンス検出部27から距離計測部22へ信号を出力できるようにする。
一方、信号処理部20の補正処理部23は、距離計測部22が計測した距離(送信側や受信側のリフトオフ量)を基に、受信部6が受信した電磁超音波の信号強度を補正するところである。
【0028】
この補正処理部23による補正が必要な理由は、鋳片Wに生じた長手方向の微少なうねり変形や鋳片表面に現れるオシレーションマーク等の凹凸が原因でリフトオフ量が変動したとき、これに伴い、電磁超音波を受信した際の信号強度も変位してしまうことにある。すなわち、この信号強度の変位が未凝固部の存在によるのか又はリフトオフ量の変動によるのかを判別できないという不具合を解消するために、補正を行う。
【0029】
補正処理部29による具体的な補正の方法としては、距離計測部22が計測した距離が短くなった場合には、受信部6が受信した電磁超音波の信号強度を所定量だけ小さくし、反対に、距離計測部22が計測した距離が長くなった場合には、受信部6が受信した電磁超音波の信号強度を所定量だけ大きくする、というものである。具体的な目安としては、本発明者らが行った実験的により、距離計測部22が計測した距離(リフトオフ量)が設定値(例えば10mm)から1mm短くなると信号のゲインを6dB小さくし、反対に1mm長くなると信号のゲインを6dB大きくすれば、信号強度はほぼ一定に保たれるという知見が得られている。
【0030】
次に、内部凝固検出装置1の使用状況に基づいて、本発明に係る内部凝固検出方法を説明する。
内部凝固検出方法は、送信ステップと、受信ステップと、判定ステップと、距離計測ステップと、補正処理ステップとを備えている。
送信ステップでは、連続鋳造装置2により製造された鋳片Wに向けて送信部5から電磁超音波を送信する。
【0031】
受信ステップでは、送信ステップで送信した電磁超音波であって鋳片Wを透過してきた電磁超音波を受信部6で受信する。
判定ステップでは、受信ステップで受信した電磁超音波の信号(非受信を示す「信号無し」を含む)を基に、鋳片W内の凝固状況を判定する。すなわち、鋳片W内に未凝固部が存在しているときと凝固が完了しているときとでは、電磁超音波が透過するか否か、或いは、受信した信号強度が強いか弱いかの違いがあるので、これらによって凝固位置の判定が可能となっている。
【0032】
距離計測ステップでは、電磁超音波の送受信タイミング間で信号切替部25,26の切り替えを行い、インピーダンス検出部27によりインピーダンスを検出する。検出されたインピーダンスは、距離計測部22へと出力され、鋳片Wと送信部5との距離(送信側のリフトオフ量)及び鋳片Wと受信部6との距離(受信側のリフトオフ量)として算出される。
【0033】
補正処理ステップでは、距離計測ステップが計測した距離を基に、受信ステップで受信した電磁超音波の信号強度を補正する。すなわち、送信部5と鋳片Wとの設定距離と、受信部6と鋳片Wとの設定距離とを加算した設定値に対し、送受信側のリフトオフ量の合計が小さいときには、補正処理部23において信号に乗ずるゲインを小さくし(−6dB/mm)、反対に大きいときには、補正処理部23において信号に乗ずるゲインを大きくする(6dB/mm)という補正処理がなされる。
【0034】
このようにすることで、送受信側での実質的なリフトオフ量が変動するような異常が生じても、リフトオフ量の変動を補正した状態で、送信部5から受信部6へ向けての電磁超音波検出が可能となり、正確且つ確実に鋳片Wにおける凝固位置の判定が行えることになる。
なお、図5(a)に示す如く、鋳片表面においては、オシレーションマーク等の表面凹凸や表面粗度が大きい部分が存在することがある。この場合、送信部5、受信部6のコイル18の面積が小さいと、表面凹凸の凹部と凸部とでインピーダンス値が頻繁に変位し、その結果、平均的なインピーダンスを検出することが難しくなる。そこで、図5(b)に示すように、送信部5、受信部6のコイル18を、鋳片Wの表面に沿って大きくするのが好適となる。
【0035】
また、図6(a)に示すように、送信部5、受信部6のコイル18に印加する電流の周波数を大きくする(高周波にする)と、鋳片Wの表面に近い位置(表面凹凸が現れている層)で渦電流が生じるようになり、このような状態では渦電流が不完全となってインピーダンス検出を行うことが困難となる。そこで、図6(b)に示すように、送信部5、受信部6のコイル18に印加する電流の周波数を小さくする(低周波にする)ことにより、鋳片Wの表面から所定深さの位置へ的確に渦電流を生じさせ、インピーダンス検出を確実なものとして、平均的な距離を計測させるようにするのが好適である。
【0036】
ところで、鋳片の凝固位置においては、未凝固部と凝固完了部と間が固液混合領域となっており、電磁超音波が伝播はするけれども凝固位置に比べて伝播しにくい状況となる。そのために、この固液混合領域によって生じる信号強度の変位と、鋳片Wの表面粗度が大きいときに表面での信号散乱が生じて電磁超音波の信号強度が変位する状況とを見分けるのは、困難となっている。しかしながら、本実施形態のように、送信部5、受信部6のコイル18に印加する電流の周波数を低周波にすることで、鋳片Wの表面粗度の影響を排除でき、固液混合領域を含む鋳片内部の状態を高精度で判別することが可能になる。
【0037】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、送信部5、受信部6が備えるコイル18は、レーストラック型のコイルに限定されず、例えば、メアンダ型のコイルとすることもできる。
送信部5、受信部6が備えるコイル18を用いて送信側及び受信側のリフトオフ量を計測する構成以外に、図7に示すように、送信部5、受信部6とは別に、レーザ距離計などの非接触型の距離検出器35,36を設けて送信側及び受信側のリフトオフ量を計測する構成を採用してもよい。
【0038】
送信部5と受信部6とを鋳片Wの同じ側に並設するか又は一体化する(電磁超音波の送信後、受信に切り替える構成とする等)ことにより、受信部6は、鋳片Wから反射した電磁超音波を受信させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 内部凝固検出装置
2 連続鋳造装置
5 送信部
6 受信部
7 制御部
10 取鍋
11 タンディッシュ
12 鋳型
13 案内ロール
14a 垂直部
14b 曲がり部
14c 水平部
18 コイル
19 磁石
20 信号処理部
21 判定部
22 距離計測部
23 補正処理部
25 信号切替部
26 信号切替部
27 インピーダンス検出部
28 凝固位置検出部
29 補正処理部
35 距離検出器
36 距離検出器
W 鋳片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造装置により製造された鋳片に向けて超音波を送信する送信部と、前記送信部が送信した超音波であって鋳片を透過してきた超音波を受信する受信部と、前記受信部が受信した超音波の信号を基に鋳片の内部における凝固位置を判定する判定部と、を有すると共に、
前記鋳片と送信部との距離及び鋳片と受信部との距離を計測する距離計測部と、
前記距離計測部が計測した距離を基に、受信部が受信した超音波の信号強度を補正する補正処理部と、
を備えていることを特徴とする鋳片の内部凝固検出装置。
【請求項2】
前記送信部は鋳片の一方側に配置され、前記受信部は鋳片を挟んで送信部と対向する鋳片の他方側へ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の鋳片の内部凝固検出装置。
【請求項3】
前記送信部及び受信部は、鋳片に沿って配置されていて当該鋳片の内部に渦電流を発生させるコイルと、前記コイルの背面に配備され且つ渦電流が発生する鋳片内の領域に磁場を形成する磁石と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳片の内部凝固検出装置。
【請求項4】
前記補正処理部は、前記距離計測部が計測した距離が短くなった場合は、受信部が受信した超音波の信号強度を小さくし、前記距離計測部が計測した距離が長くなった場合は、受信部が受信した超音波の信号強度を大きくするように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鋳片の内部凝固検出装置。
【請求項5】
前記距離計測部は、前記コイルから構成されていることを特徴とする請求項3に記載の鋳片の内部凝固検出装置。
【請求項6】
連続鋳造装置により製造された鋳片に向けて送信部から超音波を送信する送信ステップと、
前記送信ステップが送信した超音波であって鋳片を透過してきた超音波を受信部で受信する受信ステップと、
前記受信ステップが受信した超音波の信号を基に鋳片の内部における凝固位置を判定する判定ステップと、を有すると共に、
前記鋳片と送信部との距離及び鋳片と受信部との距離を計測する距離計測ステップと、
前記距離計測ステップが計測した距離を基に、前記受信ステップにて受信した超音波の信号強度を補正する補正処理ステップと、
を備えていることを特徴とする鋳片の内部凝固検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−215413(P2012−215413A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79513(P2011−79513)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】