内面溝付き管及びその製造方法並びに溝付きプラグ
【課題】製造時において、溝やフィンの割れ等を防止すること。
【解決手段】溝(2)の底部角部(2b)の円弧半径Rmmと、溝(2)の底部幅δmmとの比(R/δ)が0.10以上0.25以下で、フィン(3)の先端の円弧半径rmmと、溝(2)の底部幅δmmとの比(r/δ)が0.14以上0.20以下である。これにより、転造加工時において、管材料(銅材料)が溝付きプラグの溝に流れ込みやすくなる。
【解決手段】溝(2)の底部角部(2b)の円弧半径Rmmと、溝(2)の底部幅δmmとの比(R/δ)が0.10以上0.25以下で、フィン(3)の先端の円弧半径rmmと、溝(2)の底部幅δmmとの比(r/δ)が0.14以上0.20以下である。これにより、転造加工時において、管材料(銅材料)が溝付きプラグの溝に流れ込みやすくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面溝付き管及びその製造方法、並びにその製造に用いられる溝付きプラグに関し、特に、内面溝付き管の製造時における割れや破断の防止に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冷凍装置等の熱交換器(いわゆるフィンチューブ型熱交換器)の伝熱管として、管内面に多数の溝を形成して伝熱性能を高めた内面溝付き管がよく用いられている。例えば、特許文献1の内面溝付き管の内面には、管軸方向に螺旋状に延びるフィンが多数形成され、これらフィンの間に溝が形成されている。この内面溝付き管では、フィンの断面が先細の山型に形成され、溝の断面が逆台形状に形成されている。
【特許文献1】特開平8−174044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の内面溝付き管において、フィンや溝の形状を単に伝熱性能の設計条件に基づいて定めるだけでは、製造時にフィンに欠けが生じたり、溝の底部に割れが生じるという問題があった(図8参照)。さらに、熱交換器の組立において、複数のフィンプレートに貫通させた内面溝付き管を拡管して貫通孔に密着させる際、管内面のフィン等に上述した欠けや割れが存在すると、その割れが進行し、最悪の場合はフィンが脱落したり管自体が破断するという問題があった。
【0004】
ここで、内面溝付き管の製造時に、フィン等に欠けや割れが生じる原理について説明する。一般に、内面溝付き管は、外周面に溝が形成された溝付きプラグを素管に挿入した状態で、その素管の外面を押圧して、素管内面に溝付きプラグの溝形状を転写させることにより製造される。つまり、素管が押圧されると、素管の内壁が溝付きプラグの溝に流れ込むように変形し、素管内面にフィンや溝が形成される。その際、形成しようとするフィンや溝の形状、即ち溝付きプラグの溝形状によっては、素管材料が流れ込み難くなる。この素管材料の流動性が悪くなることで、フィン等に欠けや割れが生じる。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フィンや溝の形状を工夫することにより、製造時におけるフィン等の欠けや割れの発生を防止し、信頼性の高い内面溝付き管を提供すると共に、その製造方法並およびそれに用いられる溝付きプラグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、内面に複数の溝が形成された内面溝付き管を前提としている。そして、上記溝は、断面が逆台形状に形成されると共に該底部角部が円弧状に形成され、該底部角部の円弧半径Rmmと、上記溝の底部幅δmmとの比(R/δ)が0.10以上0.25以下となるものである。
【0007】
上記の発明では、外周面に突条および溝が形成された溝付きプラグを素管に挿入し、該素管の外面を押圧することで、溝付きプラグの溝形状を素管の内面に転写させる。具体的には、素管が押圧されると、素管の内壁面が溝付きプラグの溝形状に沿って塑性変形し、素管材料が溝付きプラグの突条先端から溝へ流れ込むことにより、素管の内面に複数の溝が形成される。つまり、溝付きプラグの突条が管の溝に対応する。
【0008】
ここで、例えば、管の溝の底部幅δ(溝付きプラグの突条の先端幅)が大きくなると、溝付きプラグにおいて素管材料が突条先端から溝へ流れ込み難くなる。これにより、管の溝部に割れ等の不良が発生する。ところが、本発明では、管において溝の底部角部の円弧半径Rが溝の底部幅δに対して適切に設定される。つまり、溝付きプラグにおいて、突条の先端角部がその突条の先端幅に対して適切に設定されるので、素管材料が突条先端から溝へ流れ込み易くなる。その結果、溝付きプラグの溝に素管材料が確実に流入する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記溝に隣接して先細に形成された突条は、頂部が円弧状に形成され、該頂部の円弧半径rmmと、上記溝の底部幅δmmとの比(r/δ)が0.14以上0.20以下となるものである。
【0010】
上記の発明では、管において突条頂部の円弧半径rが溝の底部幅δとの関係で規定される。つまり、溝付きプラグにおいて、溝の底部の円弧半径が突条の先端幅との関係で規定される。ここで、管において溝の底部幅δが大きくなると、溝付きプラグにおいて素管材料が溝へ流れ込み難くなり、溝の底部まで到達し難くなるが、この底部の円弧半径(管の突条頂部の円弧半径r)が適切に設定されるので、素管材料が溝の底部まで確実に流れ込む。
【0011】
第3の発明は、内面に複数の溝が形成された内面溝付き管を前提としている。そして、上記溝は、断面が逆台形状に形成されると共に該底部角部が円弧状に形成され、該底部角部の円弧半径Rmmと、上記溝に隣接して先細に形成された突条の頂角θ°との比(R/θ)が0.0006以上0.0014以下となるものである。
【0012】
上記の発明では、管において溝の底部角部の円弧半径Rが突条の頂角θとの関係で規定されるので、溝付きプラグにおいて素管材料が突条先端から溝へ流れ込み易くなる。つまり、例えば、管において突条の頂角θ(溝付きプラグの溝の頂角)が小さくなると、溝付きプラグにおいて突条の先端角部の角度が急となり素管材料の流れが乱れるが、この先端角部の円弧半径(管の溝の底部角部の円弧半径R)が適切に設定されるので、素管材料の流れが滑らかになる。その結果、素管材料が溝へ確実に流れ込む。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記突条は、頂部が円弧状に形成され、該頂部の円弧半径rmmと、上記突条の頂角θ°との比(r/θ)が0.0008以上0.0012以下となるものである。
【0014】
上記の発明では、管において突条頂部の円弧半径rが該突条の頂角θとの関係で規定される。つまり、溝付きプラグにおいて、溝の底部の円弧半径が該溝の頂角との関係で規定される。例えば、管において突条の頂角θ(溝付きプラグの溝の頂角)が小さくなると、溝付きプラグにおいて溝の底部が狭くなり、その底部まで素管材料が到達し難くなるが、その底部の円弧半径(管の突条頂部の円弧半径r)が適切に設定されるので、素管材料が溝の底部まで確実に流れ込む。
【0015】
第5の発明は、内面に複数の溝が形成された内面溝付き管を前提としている。そして、上記溝は、断面が逆台形状に形成されると共に該底部角部が円弧状に形成され、該底部角部の円弧半径Rmmと、上記溝に隣接して先細に形成された突条の高さhmmとの比(R/h)が0.13以上0.32以下となるものである。
【0016】
上記の発明では、管において溝の底部角部の円弧半径Rが突条の高さhとの関係で規定されるので、溝付きプラグにおいて素管材料が突条先端から溝へ流れ込み易くなる。つまり、例えば、管において突条の高さh(溝付きプラグの溝の深さ)が大きくなると、溝付きプラグにおいて素管材料が突条先端から溝へ十分には流れ込み難くなるが、この突条先端の角部の円弧半径(管の溝の底部角部R)が適切に設定されるので、素管材料が溝へ流れ込み易くなる。
【0017】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記突条は、頂部が円弧状に形成され、該頂部の円弧半径rmmと、上記突条の高さhmmとの比(r/h)が0.18以上0.26以下となるものである。
【0018】
上記の発明では、管において突条頂部の円弧半径rが該突条の高さhとの関係で規定される。つまり、溝付きプラグにおいて、溝の底部の円弧半径が該溝の深さとの関係で規定される。例えば、管において突条の高さh(溝付きプラグの溝の深さ)が大きくなると、溝付きプラグにおいて素管材料が溝の底部まで到達し難くなるが、その底部の円弧半径(管の突条頂部の円弧半径r)が適切に設定されるので、素管材料が溝の底部まで確実に流れ込む。
【0019】
第7の発明は、上記第2の発明において、上記突条の頂部の円弧半径rが0.04mmで、上記溝の底部角部の円弧半径Rが0.05mmで、上記溝の底部幅δが0.23mmである。
【0020】
上記の発明では、溝付きプラグにおいて、突条の先端角部の形状および溝の底部の形状が突条の先端幅に対して最適となる。したがって、素管材料の流動性が最適となり、素管材料が溝へ滑らかに且つ確実に流れ込む。
【0021】
第8の発明は、外周面に複数の突条が形成され、転造加工によって素管の内面に複数の溝を形成するために用いられる溝付きプラグを前提としている。そして、上記突条は、断面が先細の台形状に形成されると共に該先端角部が円弧状に形成され、該先端角部の円弧半径Rmmと、上記突条の先端幅δmmとの比(R/δ)が0.10以上0.25以下となるものである。
【0022】
上記の発明では、外周面に複数の突条および溝が形成された溝付きプラグを素管に挿入し、該素管の外面を押圧することで、溝付きプラグの溝形状を素管の内面に転写させる。具体的には、素管が押圧されると、素管の内壁面が溝付きプラグの溝形状に沿って塑性変形し、素管材料が溝付きプラグの突条先端から溝へ流れ込むことにより、素管の内面に螺旋状の溝が形成される。つまり、溝付きプラグの突条が管の溝に対応する。
【0023】
ここで、溝付きプラグにおいて、例えば、突条の先端幅δが大きくなると、素管材料が突条先端から溝へ流れ込み難くなる。これにより、管の溝や突条に割れ等の不良が発生する。ところが、本発明では、突条の先端角部の円弧半径Rが突条の先端幅δに対して適切に設定されるので、素管材料が突条先端から溝へ流れ込み易くなる。つまり、素管材料の流動性が向上し、溝付きプラグの溝に素管材料が確実に流入する。
【0024】
第9の発明は、上記第8の発明において、上記突条間に形成された略Vの字状の溝は、底部が円弧状に形成され、該底部の円弧半径rmmと、上記突条の先端幅δmmとの比(r/δ)が0.14以上0.20以下となるものである。
【0025】
上記の発明では、溝底部の円弧半径rが突条の先端幅δとの関係で規定される。ここで、突条の先端幅δが大きくなると、素管材料が溝へ流れ込み難くなり、溝の底部まで到達し難くなるが、この底部の円弧半径rが適切に設定されるので、突条先端から溝へ流れ込んだ素管材料が溝の底部まで確実に流れ込む。
【0026】
第10の発明は、外周面に複数の突条が形成され、転造加工によって素管の内面に複数の溝を形成するために用いられる溝付きプラグを前提としている。そして、上記突条は、断面が先細の台形状に形成されると共に該先端角部が円弧状に形成され、該先端角部の円弧半径Rmmと、上記突条間に形成された略Vの字状の溝の頂角θ°との比(R/θ)が0.0006以上0.0014以下となるものである。
【0027】
上記の発明では、突条の先端角部の円弧半径Rが溝の頂角θとの関係で規定されるので、素管材料が突条先端から溝へ流れ込み易くなる。つまり、例えば、溝の頂角θが小さくなると、突条の先端角部の角度が急となり素管材料の流れが乱れるが、この先端角部の円弧半径Rが適切に設定されるので、素管材料の流れが滑らかになる。その結果、素管材料が溝へ確実に流れ込む。
【0028】
第11の発明は、上記第10の発明において、上記突条間に形成された溝は、底部が円弧状に形成され、該底部の円弧半径rmmと、上記溝の頂角θ°との比(r/θ)が0.0008以上0.0012以下となるものである。
【0029】
上記の発明では、溝底部の円弧半径rが溝の頂角θとの関係で規定される。例えば、溝の頂角θが小さくなると、溝の底部が狭くなり、その底部まで素管材料が到達し難くなるが、その底部の円弧半径rが適切に設定されるので、突条先端から溝へ流れ込んだ素管材料が溝の底部まで確実に流れ込む。
【0030】
第12の発明は、外周面に複数の突条が形成され、転造加工によって素管の内面に複数の溝を形成するために用いられる溝付きプラグを前提としている。そして、上記突条は、断面が先細の台形状に形成されると共に該先端角部が円弧状に形成され、該先端角部の円弧半径Rmmと、上記突条間に形成された略Vの字状の溝の深さhmmとの比(R/h)が0.13以上0.32以下となるものである。
【0031】
上記の発明では、突条の先端角部の円弧半径Rが溝の深さhとの関係で規定されるので、素管材料が突条先端から溝へ流れ込み易くなる。つまり、例えば、溝の深さhが大きくなると、素管材料が突条先端から溝へ十分には流れ込み難くなるが、突条の先端角部の円弧半径Rが適切に設定されるので、素管材料が溝へ流れ込み易くなる。
【0032】
第13の発明は、上記第12の発明において、上記突条間に形成された溝は、底部が円弧状に形成され、該底部の円弧半径rmmと、上記溝の深さhmmとの比(r/h)が0.18以上0.26以下となるものである。
【0033】
上記の発明では、溝底部の円弧半径rが溝の深さhとの関係で規定される。例えば、溝の深さhが大きくなると、素管材料が溝の底部まで到達し難くなるが、その底部の円弧半径rが適切に設定されるので、突条先端から溝へ流れ込んだ素管材料が溝の底部まで確実に流れ込む。
【0034】
第14の発明は、上記第9の発明において、上記溝の底部の円弧半径rが0.04mmで、上記突条の先端角部の円弧半径Rが0.05mmで、上記突条の先端の幅δが0.23mmである。
【0035】
上記の発明では、突条の先端角部の形状および溝の底部の形状が突条の先端幅に対して最適となる。したがって、素管材料の流動性が最適となり、素管材料が溝へ滑らかに且つ確実に流れ込む。
【0036】
第15の発明は、請求項8乃至14の何れか1項の溝付きプラグ(20)を素管(P)に挿入し、その挿入位置に対応する素管(P)の外面を押圧する転造工程によって、上記素管(P)の内面に上記溝付きプラグ(20)の突条形状に対応した溝形状を形成するものである。
【0037】
上記の発明では、溝付きプラグが挿入された素管の外面を押圧することで、溝付きプラグの溝形状を素管の内面に転写させる(転造工程)。ここで、溝付きプラグにおいて、突条の先端角部の円弧半径Rや溝底部の円弧半径rは、素管材料が溝へ流れ込みやすい形状に規定されているので、素管における溝部や突条の割れ等が防止される。
【0038】
第16の発明は、上記第15の発明において、上記転造工程を行う前に、素管(P)を縮径加工するものである。
【0039】
上記の発明では、縮径された素管の内面に複数の溝が形成される。
【発明の効果】
【0040】
したがって、第1〜第7の発明によれば、内面溝付き管の谷底Rおよびフィン先端rを、溝の底部幅δ、突条の頂角θまたは突条の高さhとの関係で規定するようにしたので、素管材料を溝へ滑らかに流れ込ますことができる。つまり、溝の底部幅δや突条の頂角θ等に起因する素管材料の流動性の低下を抑制することができる。したがって、製造時において発生する突条や溝の割れ等を防止することができる。その結果、信頼性の高い内面溝付き管を提供することができる。
【0041】
また、第8〜第14の発明によれば、溝付きプラグのフィン先端Rおよび底部rを、突条の先端幅δ、溝の頂角θまたは溝の深さhとの関係で規定するようにしたので、素管材料を溝へ滑らかに流れ込ますことができる。したがって、内面溝付き管の製造において、突条や溝の割れ等を防止することができる。その結果、信頼性の高い溝付きプラグを提供することができる。
【0042】
また、第15または第16の発明によれば、突条や溝の割れ等を防止可能な内面溝付き管の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0044】
本実施形態の内面溝付き管は、冷凍装置等に設けられる熱交換器(いわゆる、フィン・アンド・チューブ型熱交換器)の伝熱管として用いられ、内部を冷媒が流れるものである。この内面溝付き管を流れる冷媒は、管周囲を流通する空気や水と熱交換して蒸発または凝縮する。本実施形態の内面溝付き管(以下、伝熱管(1)という。)は、材質が銅または銅合金である。なお、この材質は、これに限らず、アルミニウム等であってもよい。
【0045】
図1〜図3に示すように、上記伝熱管(1)の内面には、管軸方向に螺旋状に延びるフィン(3)が複数形成されている。このフィン(3)は、断面が先細の山形に形成された突条を構成している。そして、上記各フィン(3)の間には、隣接する溝(2)が形成されている。この溝(2)は、断面が逆台形状に形成されている。これら溝(2)やフィン(3)は、並行に形成され、且つ、管軸方向に対して所定の角度α(以下、リード角αという。)だけ傾斜している。
【0046】
上記フィン(3)は、先端部(3a)が円弧状に形成され、該先端部(3a)に連続して直線状の傾斜部(3b)が形成されている。上記溝(2)の底部は、底部平坦部(2a)が形成されている。この底部平坦部(2a)の両端には、フィン(3)の傾斜部(3b)に連続する底部角部(2b)が形成されている。そして、この底部角部(2b)は、円弧状に形成されている。つまり、上記フィン(3)の傾斜部(3b)および先端部(3a)の一部と、底部平坦部(2a)および底部角部(2b)とが、上記溝(2)を構成している。
【0047】
また、上記溝(2)およびフィン(3)は、本発明の特徴として、製造時に欠けや割れ等の不良が発生しないように、底部角部(2b)の円弧半径R(以下、谷底Rという。)および先端部(3a)の円弧半径r(以下、フィン先端rという。)が設定されている。
【0048】
具体的には、上記谷底Rと、溝(2)の底部幅δとの比(R/δ)が、0.10以上0.25以下に設定されている。なお、この比(R/δ)は、0.20以上0.23以下が望ましい。さらに、上記フィン先端rと、溝(2)の底部幅δとの比(r/δ)が、0.14以上0.20以下に設定されている。なお、この比(r/δ)は、0.16以上0.19以下が望ましい。ここで、溝(2)の底部幅δとは、傾斜部(3b)の延長線と底部平坦部(2a)の延長線との交点を結んだ距離を示すものである。
【0049】
また、本実施形態の伝熱管(1)は、フィン先端rが0.04mm、谷底Rが0.05mm、溝(2)の谷底幅δが0.23mm、フィン頂角θが40°、フィン高さhが0.18mmに設定されている。また、その他の寸法および角度については、管の外径がφ7mm、溝(2)の条数Nが50条、溝(2)のリード角αが18°、谷底肉厚tが0.25mmに設定されている。
【0050】
また、本発明は、谷底Rおよびフィン先端rについて溝の底部幅δとの関係で規定する代わりに、フィン頂角θ°との関係で規定するようにしてもよい。具体的に、上記谷底Rと、フィン頂角θ°との比(R/θ)が、0.0006以上0.0014以下に規定される。なお、この比(R/θ)は、0.0011以上0.0014以下が望ましい。上記フィン先端rと、フィン頂角θ°との比(r/θ)が、0.0008以上0.0012以下に規定される。なお、この比(r/θ)は、0.0009以上0.0011以下が望ましい。
【0051】
また、谷底Rおよびフィン先端rについてフィン高さhとの関係で規定するようにしてもよい。具体的に、上記谷底Rと、フィン高さhとの比(R/h)が、0.13以上0.32以下に規定される。なお、この比(R/h)は、0.25以上0.31以下が望ましい。上記フィン先端rと、フィン高さhとの比(r/h)が、0.18以上0.26以下に規定される。なお、この比(r/h)は、0.20以上0.25以下が望ましい。
【0052】
〈伝熱管の製造方法〉
次に、上記伝熱管(1)の製造方法について、図4〜図6を参照しながら説明する。図4に示すように、本実施形態の伝熱管の製造装置(10)は、転造ボール(11)と、保持ダイス(12)と、保持プラグ(13)と、連結軸(14)と、溝付きプラグ(20)とを備えている。
【0053】
上記保持ダイス(12)は、円環状に形成され、素管(P)の外面に接するように配置されている。上記保持プラグ(13)は、素管(P)に挿入されて保持ダイス(12)との間で素管(P)を挟み込むように構成されている。上記転造ボール(11)は、保持ダイス(12)の下流側(図4における右側)に配置され、素管(P)の外面に接しながら遊星回転して該素管(P)を押圧するように構成されている。上記溝付きプラグ(20)は、素管(P)の転造ボール(11)に対応する位置に挿入されるものである。上記溝付きプラグ(20)は、連結軸(14)によって保持プラグ(13)に回転自在に連結されている。
【0054】
図5および図6に示すように、上記溝付きプラグ(20)は、円筒状に形成され、外周面に複数の螺旋状のフィン(22)が形成されている。このフィン(22)間には、螺旋状の溝(21)が形成されている。これら溝(21)および突条(22)は、並行に形成され、且つ、軸方向に対して所定の角度だけ傾斜している。
【0055】
上記溝付きプラグ(20)のフィン(22)は、断面が先細の台形状に形成された突条を構成している。上記フィン(22)は、先端部(22a)の両端である先端角部(22b)が円弧状に形成され、該先端角部(22b)に連続して直線状の傾斜部(22c)が形成されている。上記溝付きプラグ(20)の溝(21)は、底部(21a)が円弧状に形成され、フィン(22)の傾斜部(22c)に連続している。つまり、上記フィン(22)の傾斜部(22c)および先端角部(22b)と、底部(21a)とが、上記溝(21)を構成している。そして、上記溝付きプラグ(20)の溝(21)およびフィン(22)は、それぞれ上記伝熱管(1)のフィン(3)および溝(2)に対応するように形成されている。
【0056】
また、上記溝付きプラグ(20)についても、製造時に伝熱管(1)のフィン(3)等に割れ等の不良が発生しないように、即ち上述した伝熱管(1)のフィン(3)や溝(2)の形状に加工できるように、先端角部(22b)の円弧半径R(以下、フィン先端Rという。)および底部(21a)の円弧半径r(以下、谷底rという。)が設定されている。
【0057】
つまり、上記フィン先端Rと、フィン先端幅δとの比(R/δ)が、0.10以上0.25以下に設定されている。上記谷底rと、フィン先端幅δとの比(r/δ)が、0.14以上0.20以下に設定されている。ここで、フィン先端幅δとは、先端部(22a)の延長線と傾斜部(22c)の延長線との交点を結んだ距離を示すものである。具体的に、本実施形態の溝付きプラグ(20)は、谷底rが0.04mm、フィン先端Rが0.05mm、フィン先端幅δが0.23mm、溝(21)の頂角θが40°、溝深さhが0.18mmに設定されている。
【0058】
また、この溝付きプラグ(20)においても、本発明は、フィン先端Rおよび谷底rについてフィン先端幅δとの関係で規定する代わりに、溝(21)の頂角θ°との関係で規定するようにしてもよい。つまり、上記フィン先端Rと、溝(21)の頂角θ°との比(R/θ)が、0.0006以上0.0014以下に規定される。上記谷底rと、溝(21)の頂角θ°との比(r/θ)が、0.0008以上0.0012以下に規定される。
【0059】
また、上記フィン先端Rおよび谷底rについてフィン高さhとの関係で規定するようにしてもよい。つまり、上記フィン先端Rと、フィン高さhとの比(R/h)が、0.13以上0.32以下に規定される。上記谷底rと、フィン高さhとの比(r/h)が、0.18以上0.26以下に規定される。
【0060】
なお、溝付きプラグ(20)において、上述した各比(R/δ、r/δ、R/θ、r/θ、R/h、r/h)の望ましい値の範囲は、上記伝熱管(1)において記載した値の範囲と同様である。
【0061】
本実施形態の製造装置(10)では、素管(P)を縮径加工する第1工程と、その縮径された素管(P)を転造加工する第2工程とが行われる。
【0062】
上記第1工程では、平滑管である素管(P)が保持ダイス(12)に挿通される。この素管(P)の内部に、転造用の潤滑油が注入され、連結軸(14)で繋がった保持プラグ(13)および溝付きプラグ(20)が挿入される。その後、素管(P)が抽伸方向(図4に矢印で示す方向)に引き抜かれる。そうすると、素管(P)が保持ダイス(12)および保持プラグ(13)の間で縮径される(縮径加工)。
【0063】
上記第2工程では、第1工程で縮径された素管(P)がさらに引き抜かれ、転造ボール(11)を通過する。この通過の際、素管(P)が転造ボール(11)によって溝付きプラグ(20)へ押圧される。そうすると、素管(P)の内壁面が溝付きプラグ(20)の溝(21)形状に沿って塑性変形する。具体的には、図6に示すように、素管材料(銅材料または銅合金材料)が、溝付きプラグ(20)の先端部(22a)から傾斜部(22c)に沿って溝(21)の底部(21a)へ流れ込む。これにより、溝付きプラグ(20)の溝(21)形状が素管(P)の内面に転写される(転造加工)。
【0064】
ところで、伝熱管(1)は、必要伝熱量に基づく内表面積を確保できるように、さらに液冷媒が溝(2)に沿って管頂部まで到達する環状流となるように、溝(2)やフィン(3)の形状が設計される。つまり、内表面積が大きいほど冷媒と空気等との熱交換量を増大させることができ、環状流とすることによって管内の全体を伝熱に利用することができる。その結果、伝熱管(1)の伝熱性能を高めることができる。具体的に、溝(2)の条数Nと、溝(2)のリード角αと、フィン頂角θと、フィン高さhとが、上記の設計条件に基づいて設定される。そして、上記4つの数値が定まると、溝(2)の谷底幅δが自ずと定められる。また、管内の冷媒圧力に基づいて谷底肉厚tが設定され、伝熱管(1)の必要強度が確保される。
【0065】
ここで、例えば、設計条件によって伝熱管(1)の溝(2)の谷底幅δが大きくなると、溝付きプラグ(20)において、素管材料が先端部(22a)から傾斜部(22c)へ流れ込み難くなる。ところが、本実施形態では、上述したように、溝付きプラグ(20)のフィン先端Rおよび底部rをフィン先端幅δ(伝熱管(1)の谷底幅δ)との関係で規定している。つまり、溝付きプラグ(20)において、素管材料が溝(21)へ流れ込み易くなるように、フィン先端幅δに応じてフィン先端Rおよび底部rが設定される。これにより、素管材料は、先端部(22a)から先端角部(22b)に沿って傾斜部(22c)へ流れ易くなり、さらに傾斜部(22c)から底部(21a)まで流れ易くなる。したがって、素管材料を溝付きプラグ(20)の溝(21)に確実に流入させることができる。その結果、伝熱管(1)の溝(2)やフィン(3)における欠けや割れ等の不良を発生させずにすむ。
【0066】
また、設計条件によって伝熱管(1)のフィン(3)の頂角θ(溝付きプラグ(20)の溝(21)の頂角θ)が小さくなると、溝付きプラグ(20)において、素管材料が先端部(22a)から傾斜部(22c)へ流れ込み難くなる。つまり、先端部(22a)から傾斜部(22c)への素管材料の流れ込み角度が急となるため、素管材料の流れが乱れ、素管材料の溝(21)への流入が不十分となる。ところが、上述したように、溝付きプラグ(20)のフィン先端Rおよび底部rを溝(21)の頂角θ(伝熱管(1)のフィン頂角θ)との関係で適切に設定すれば、溝(21)形状がその頂角θに応じて素管材料が流れ込み易い形状となる。したがって、素管材料を溝付きプラグ(20)の溝(21)に確実に流入させることができる。
【0067】
また、設計条件によって伝熱管(1)のフィン高さhが大きくなると、溝付きプラグ(20)において、素管材料が特に溝(21)の底部(21a)まで到達し難くなる。ところが、上述したように、溝付きプラグ(20)のフィン先端Rおよび底部rを溝(21)の深さh(伝熱管(1)のフィン高さh)との関係で適切に設定すれば、溝(21)形状がその深さhに応じて素管材料が底部(21a)まで確実に流れ込む形状となる。したがって、素管材料を溝付きプラグ(20)の溝(21)に確実に流入させることができる。
【0068】
ここで、上述した何れの場合においても、フィン先端Rおよび底部rを大きくするほど、素管材料の溝(21)への流入性は高まるが、伝熱管(1)の内表面積が小さくなり伝熱性能が低下してしまう。したがって、フィン先端Rおよび底部rの上限値は、必要伝熱量を確保できる範囲で設定される。
【0069】
このように、本実施形態では、伝熱管(1)の谷底Rおよびフィン先端r、つまり溝付きプラグ(20)のフィン先端Rおよび底部rを、設計条件により設定される各種パラメータの数値に応じて規定するようにした。したがって、伝熱管(1)の機能性(伝熱性能等)を確保しつつ、加工性についても向上させることができる。その結果、信頼性の高い伝熱管(1)を提供することができる。
【0070】
〈評価結果〉
次に、伝熱管(1)の製造時の割れ等の評価試験結果について、図7を参照しながら説明する。なお、この試験は、何れのケース(ケース1〜3)も、伝熱管の外径がφ7mm、溝(2)の条数Nが50条、溝(2)のリード角αが18°、谷底肉厚tが0.25mmの条件で行った。
【0071】
図7に示すように、ケース1およびケース3は、フィン(3)や溝(2)に欠けや割れ等が発生し、ケース2は、全く割れ等が発生しなかった。このように、ケース2について、上述した谷底Rおよびフィン先端rと谷底幅δ等との比の規定数値範囲を満たしていることが分かる。一方、ケース1およびケース3について、上述した規定数値範囲から外れていることが分かる。
【0072】
《その他の実施形態》
例えば、上記実施形態では、熱交換器に用いる銅製の伝熱管を対象としたが、水道管等の別用途の管を対象としてもよい。
【0073】
また、上記伝熱管(1)の溝(2)の形状は、螺旋状に限るものでなく、例えば軸方向に沿って延びる直線溝であってもよい。
【0074】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明は、内面に螺旋溝を有する内面溝付き管及びその製造方法、並びにその製造に用いられる溝付きプラグとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施形態に係る伝熱管を示す縦断面図である。
【図2】実施形態に係る伝熱管を示す横断面図である。
【図3】実施形態に係る伝熱管の要部を示す横断面図である。
【図4】実施形態に係る製造装置を示す構成図である。
【図5】実施形態に係る溝付きプラグを示す斜視図である。
【図6】実施形態に係る溝付きプラグの要部を示す横断面図である。
【図7】評価試験の結果を示す表である。
【図8】溝およびフィンの割れ等を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 伝熱管(内面溝付き管)
2 溝
2b 底部角部
3 フィン(突条)
3a 先端部
10 製造装置
11 転造ボール
12 保持ダイス
13 保持プラグ
20 溝付きプラグ
21 溝
21a 底部
22 フィン(突条)
22b 先端角部
P 素管
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面溝付き管及びその製造方法、並びにその製造に用いられる溝付きプラグに関し、特に、内面溝付き管の製造時における割れや破断の防止に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冷凍装置等の熱交換器(いわゆるフィンチューブ型熱交換器)の伝熱管として、管内面に多数の溝を形成して伝熱性能を高めた内面溝付き管がよく用いられている。例えば、特許文献1の内面溝付き管の内面には、管軸方向に螺旋状に延びるフィンが多数形成され、これらフィンの間に溝が形成されている。この内面溝付き管では、フィンの断面が先細の山型に形成され、溝の断面が逆台形状に形成されている。
【特許文献1】特開平8−174044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の内面溝付き管において、フィンや溝の形状を単に伝熱性能の設計条件に基づいて定めるだけでは、製造時にフィンに欠けが生じたり、溝の底部に割れが生じるという問題があった(図8参照)。さらに、熱交換器の組立において、複数のフィンプレートに貫通させた内面溝付き管を拡管して貫通孔に密着させる際、管内面のフィン等に上述した欠けや割れが存在すると、その割れが進行し、最悪の場合はフィンが脱落したり管自体が破断するという問題があった。
【0004】
ここで、内面溝付き管の製造時に、フィン等に欠けや割れが生じる原理について説明する。一般に、内面溝付き管は、外周面に溝が形成された溝付きプラグを素管に挿入した状態で、その素管の外面を押圧して、素管内面に溝付きプラグの溝形状を転写させることにより製造される。つまり、素管が押圧されると、素管の内壁が溝付きプラグの溝に流れ込むように変形し、素管内面にフィンや溝が形成される。その際、形成しようとするフィンや溝の形状、即ち溝付きプラグの溝形状によっては、素管材料が流れ込み難くなる。この素管材料の流動性が悪くなることで、フィン等に欠けや割れが生じる。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フィンや溝の形状を工夫することにより、製造時におけるフィン等の欠けや割れの発生を防止し、信頼性の高い内面溝付き管を提供すると共に、その製造方法並およびそれに用いられる溝付きプラグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、内面に複数の溝が形成された内面溝付き管を前提としている。そして、上記溝は、断面が逆台形状に形成されると共に該底部角部が円弧状に形成され、該底部角部の円弧半径Rmmと、上記溝の底部幅δmmとの比(R/δ)が0.10以上0.25以下となるものである。
【0007】
上記の発明では、外周面に突条および溝が形成された溝付きプラグを素管に挿入し、該素管の外面を押圧することで、溝付きプラグの溝形状を素管の内面に転写させる。具体的には、素管が押圧されると、素管の内壁面が溝付きプラグの溝形状に沿って塑性変形し、素管材料が溝付きプラグの突条先端から溝へ流れ込むことにより、素管の内面に複数の溝が形成される。つまり、溝付きプラグの突条が管の溝に対応する。
【0008】
ここで、例えば、管の溝の底部幅δ(溝付きプラグの突条の先端幅)が大きくなると、溝付きプラグにおいて素管材料が突条先端から溝へ流れ込み難くなる。これにより、管の溝部に割れ等の不良が発生する。ところが、本発明では、管において溝の底部角部の円弧半径Rが溝の底部幅δに対して適切に設定される。つまり、溝付きプラグにおいて、突条の先端角部がその突条の先端幅に対して適切に設定されるので、素管材料が突条先端から溝へ流れ込み易くなる。その結果、溝付きプラグの溝に素管材料が確実に流入する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記溝に隣接して先細に形成された突条は、頂部が円弧状に形成され、該頂部の円弧半径rmmと、上記溝の底部幅δmmとの比(r/δ)が0.14以上0.20以下となるものである。
【0010】
上記の発明では、管において突条頂部の円弧半径rが溝の底部幅δとの関係で規定される。つまり、溝付きプラグにおいて、溝の底部の円弧半径が突条の先端幅との関係で規定される。ここで、管において溝の底部幅δが大きくなると、溝付きプラグにおいて素管材料が溝へ流れ込み難くなり、溝の底部まで到達し難くなるが、この底部の円弧半径(管の突条頂部の円弧半径r)が適切に設定されるので、素管材料が溝の底部まで確実に流れ込む。
【0011】
第3の発明は、内面に複数の溝が形成された内面溝付き管を前提としている。そして、上記溝は、断面が逆台形状に形成されると共に該底部角部が円弧状に形成され、該底部角部の円弧半径Rmmと、上記溝に隣接して先細に形成された突条の頂角θ°との比(R/θ)が0.0006以上0.0014以下となるものである。
【0012】
上記の発明では、管において溝の底部角部の円弧半径Rが突条の頂角θとの関係で規定されるので、溝付きプラグにおいて素管材料が突条先端から溝へ流れ込み易くなる。つまり、例えば、管において突条の頂角θ(溝付きプラグの溝の頂角)が小さくなると、溝付きプラグにおいて突条の先端角部の角度が急となり素管材料の流れが乱れるが、この先端角部の円弧半径(管の溝の底部角部の円弧半径R)が適切に設定されるので、素管材料の流れが滑らかになる。その結果、素管材料が溝へ確実に流れ込む。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記突条は、頂部が円弧状に形成され、該頂部の円弧半径rmmと、上記突条の頂角θ°との比(r/θ)が0.0008以上0.0012以下となるものである。
【0014】
上記の発明では、管において突条頂部の円弧半径rが該突条の頂角θとの関係で規定される。つまり、溝付きプラグにおいて、溝の底部の円弧半径が該溝の頂角との関係で規定される。例えば、管において突条の頂角θ(溝付きプラグの溝の頂角)が小さくなると、溝付きプラグにおいて溝の底部が狭くなり、その底部まで素管材料が到達し難くなるが、その底部の円弧半径(管の突条頂部の円弧半径r)が適切に設定されるので、素管材料が溝の底部まで確実に流れ込む。
【0015】
第5の発明は、内面に複数の溝が形成された内面溝付き管を前提としている。そして、上記溝は、断面が逆台形状に形成されると共に該底部角部が円弧状に形成され、該底部角部の円弧半径Rmmと、上記溝に隣接して先細に形成された突条の高さhmmとの比(R/h)が0.13以上0.32以下となるものである。
【0016】
上記の発明では、管において溝の底部角部の円弧半径Rが突条の高さhとの関係で規定されるので、溝付きプラグにおいて素管材料が突条先端から溝へ流れ込み易くなる。つまり、例えば、管において突条の高さh(溝付きプラグの溝の深さ)が大きくなると、溝付きプラグにおいて素管材料が突条先端から溝へ十分には流れ込み難くなるが、この突条先端の角部の円弧半径(管の溝の底部角部R)が適切に設定されるので、素管材料が溝へ流れ込み易くなる。
【0017】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記突条は、頂部が円弧状に形成され、該頂部の円弧半径rmmと、上記突条の高さhmmとの比(r/h)が0.18以上0.26以下となるものである。
【0018】
上記の発明では、管において突条頂部の円弧半径rが該突条の高さhとの関係で規定される。つまり、溝付きプラグにおいて、溝の底部の円弧半径が該溝の深さとの関係で規定される。例えば、管において突条の高さh(溝付きプラグの溝の深さ)が大きくなると、溝付きプラグにおいて素管材料が溝の底部まで到達し難くなるが、その底部の円弧半径(管の突条頂部の円弧半径r)が適切に設定されるので、素管材料が溝の底部まで確実に流れ込む。
【0019】
第7の発明は、上記第2の発明において、上記突条の頂部の円弧半径rが0.04mmで、上記溝の底部角部の円弧半径Rが0.05mmで、上記溝の底部幅δが0.23mmである。
【0020】
上記の発明では、溝付きプラグにおいて、突条の先端角部の形状および溝の底部の形状が突条の先端幅に対して最適となる。したがって、素管材料の流動性が最適となり、素管材料が溝へ滑らかに且つ確実に流れ込む。
【0021】
第8の発明は、外周面に複数の突条が形成され、転造加工によって素管の内面に複数の溝を形成するために用いられる溝付きプラグを前提としている。そして、上記突条は、断面が先細の台形状に形成されると共に該先端角部が円弧状に形成され、該先端角部の円弧半径Rmmと、上記突条の先端幅δmmとの比(R/δ)が0.10以上0.25以下となるものである。
【0022】
上記の発明では、外周面に複数の突条および溝が形成された溝付きプラグを素管に挿入し、該素管の外面を押圧することで、溝付きプラグの溝形状を素管の内面に転写させる。具体的には、素管が押圧されると、素管の内壁面が溝付きプラグの溝形状に沿って塑性変形し、素管材料が溝付きプラグの突条先端から溝へ流れ込むことにより、素管の内面に螺旋状の溝が形成される。つまり、溝付きプラグの突条が管の溝に対応する。
【0023】
ここで、溝付きプラグにおいて、例えば、突条の先端幅δが大きくなると、素管材料が突条先端から溝へ流れ込み難くなる。これにより、管の溝や突条に割れ等の不良が発生する。ところが、本発明では、突条の先端角部の円弧半径Rが突条の先端幅δに対して適切に設定されるので、素管材料が突条先端から溝へ流れ込み易くなる。つまり、素管材料の流動性が向上し、溝付きプラグの溝に素管材料が確実に流入する。
【0024】
第9の発明は、上記第8の発明において、上記突条間に形成された略Vの字状の溝は、底部が円弧状に形成され、該底部の円弧半径rmmと、上記突条の先端幅δmmとの比(r/δ)が0.14以上0.20以下となるものである。
【0025】
上記の発明では、溝底部の円弧半径rが突条の先端幅δとの関係で規定される。ここで、突条の先端幅δが大きくなると、素管材料が溝へ流れ込み難くなり、溝の底部まで到達し難くなるが、この底部の円弧半径rが適切に設定されるので、突条先端から溝へ流れ込んだ素管材料が溝の底部まで確実に流れ込む。
【0026】
第10の発明は、外周面に複数の突条が形成され、転造加工によって素管の内面に複数の溝を形成するために用いられる溝付きプラグを前提としている。そして、上記突条は、断面が先細の台形状に形成されると共に該先端角部が円弧状に形成され、該先端角部の円弧半径Rmmと、上記突条間に形成された略Vの字状の溝の頂角θ°との比(R/θ)が0.0006以上0.0014以下となるものである。
【0027】
上記の発明では、突条の先端角部の円弧半径Rが溝の頂角θとの関係で規定されるので、素管材料が突条先端から溝へ流れ込み易くなる。つまり、例えば、溝の頂角θが小さくなると、突条の先端角部の角度が急となり素管材料の流れが乱れるが、この先端角部の円弧半径Rが適切に設定されるので、素管材料の流れが滑らかになる。その結果、素管材料が溝へ確実に流れ込む。
【0028】
第11の発明は、上記第10の発明において、上記突条間に形成された溝は、底部が円弧状に形成され、該底部の円弧半径rmmと、上記溝の頂角θ°との比(r/θ)が0.0008以上0.0012以下となるものである。
【0029】
上記の発明では、溝底部の円弧半径rが溝の頂角θとの関係で規定される。例えば、溝の頂角θが小さくなると、溝の底部が狭くなり、その底部まで素管材料が到達し難くなるが、その底部の円弧半径rが適切に設定されるので、突条先端から溝へ流れ込んだ素管材料が溝の底部まで確実に流れ込む。
【0030】
第12の発明は、外周面に複数の突条が形成され、転造加工によって素管の内面に複数の溝を形成するために用いられる溝付きプラグを前提としている。そして、上記突条は、断面が先細の台形状に形成されると共に該先端角部が円弧状に形成され、該先端角部の円弧半径Rmmと、上記突条間に形成された略Vの字状の溝の深さhmmとの比(R/h)が0.13以上0.32以下となるものである。
【0031】
上記の発明では、突条の先端角部の円弧半径Rが溝の深さhとの関係で規定されるので、素管材料が突条先端から溝へ流れ込み易くなる。つまり、例えば、溝の深さhが大きくなると、素管材料が突条先端から溝へ十分には流れ込み難くなるが、突条の先端角部の円弧半径Rが適切に設定されるので、素管材料が溝へ流れ込み易くなる。
【0032】
第13の発明は、上記第12の発明において、上記突条間に形成された溝は、底部が円弧状に形成され、該底部の円弧半径rmmと、上記溝の深さhmmとの比(r/h)が0.18以上0.26以下となるものである。
【0033】
上記の発明では、溝底部の円弧半径rが溝の深さhとの関係で規定される。例えば、溝の深さhが大きくなると、素管材料が溝の底部まで到達し難くなるが、その底部の円弧半径rが適切に設定されるので、突条先端から溝へ流れ込んだ素管材料が溝の底部まで確実に流れ込む。
【0034】
第14の発明は、上記第9の発明において、上記溝の底部の円弧半径rが0.04mmで、上記突条の先端角部の円弧半径Rが0.05mmで、上記突条の先端の幅δが0.23mmである。
【0035】
上記の発明では、突条の先端角部の形状および溝の底部の形状が突条の先端幅に対して最適となる。したがって、素管材料の流動性が最適となり、素管材料が溝へ滑らかに且つ確実に流れ込む。
【0036】
第15の発明は、請求項8乃至14の何れか1項の溝付きプラグ(20)を素管(P)に挿入し、その挿入位置に対応する素管(P)の外面を押圧する転造工程によって、上記素管(P)の内面に上記溝付きプラグ(20)の突条形状に対応した溝形状を形成するものである。
【0037】
上記の発明では、溝付きプラグが挿入された素管の外面を押圧することで、溝付きプラグの溝形状を素管の内面に転写させる(転造工程)。ここで、溝付きプラグにおいて、突条の先端角部の円弧半径Rや溝底部の円弧半径rは、素管材料が溝へ流れ込みやすい形状に規定されているので、素管における溝部や突条の割れ等が防止される。
【0038】
第16の発明は、上記第15の発明において、上記転造工程を行う前に、素管(P)を縮径加工するものである。
【0039】
上記の発明では、縮径された素管の内面に複数の溝が形成される。
【発明の効果】
【0040】
したがって、第1〜第7の発明によれば、内面溝付き管の谷底Rおよびフィン先端rを、溝の底部幅δ、突条の頂角θまたは突条の高さhとの関係で規定するようにしたので、素管材料を溝へ滑らかに流れ込ますことができる。つまり、溝の底部幅δや突条の頂角θ等に起因する素管材料の流動性の低下を抑制することができる。したがって、製造時において発生する突条や溝の割れ等を防止することができる。その結果、信頼性の高い内面溝付き管を提供することができる。
【0041】
また、第8〜第14の発明によれば、溝付きプラグのフィン先端Rおよび底部rを、突条の先端幅δ、溝の頂角θまたは溝の深さhとの関係で規定するようにしたので、素管材料を溝へ滑らかに流れ込ますことができる。したがって、内面溝付き管の製造において、突条や溝の割れ等を防止することができる。その結果、信頼性の高い溝付きプラグを提供することができる。
【0042】
また、第15または第16の発明によれば、突条や溝の割れ等を防止可能な内面溝付き管の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0044】
本実施形態の内面溝付き管は、冷凍装置等に設けられる熱交換器(いわゆる、フィン・アンド・チューブ型熱交換器)の伝熱管として用いられ、内部を冷媒が流れるものである。この内面溝付き管を流れる冷媒は、管周囲を流通する空気や水と熱交換して蒸発または凝縮する。本実施形態の内面溝付き管(以下、伝熱管(1)という。)は、材質が銅または銅合金である。なお、この材質は、これに限らず、アルミニウム等であってもよい。
【0045】
図1〜図3に示すように、上記伝熱管(1)の内面には、管軸方向に螺旋状に延びるフィン(3)が複数形成されている。このフィン(3)は、断面が先細の山形に形成された突条を構成している。そして、上記各フィン(3)の間には、隣接する溝(2)が形成されている。この溝(2)は、断面が逆台形状に形成されている。これら溝(2)やフィン(3)は、並行に形成され、且つ、管軸方向に対して所定の角度α(以下、リード角αという。)だけ傾斜している。
【0046】
上記フィン(3)は、先端部(3a)が円弧状に形成され、該先端部(3a)に連続して直線状の傾斜部(3b)が形成されている。上記溝(2)の底部は、底部平坦部(2a)が形成されている。この底部平坦部(2a)の両端には、フィン(3)の傾斜部(3b)に連続する底部角部(2b)が形成されている。そして、この底部角部(2b)は、円弧状に形成されている。つまり、上記フィン(3)の傾斜部(3b)および先端部(3a)の一部と、底部平坦部(2a)および底部角部(2b)とが、上記溝(2)を構成している。
【0047】
また、上記溝(2)およびフィン(3)は、本発明の特徴として、製造時に欠けや割れ等の不良が発生しないように、底部角部(2b)の円弧半径R(以下、谷底Rという。)および先端部(3a)の円弧半径r(以下、フィン先端rという。)が設定されている。
【0048】
具体的には、上記谷底Rと、溝(2)の底部幅δとの比(R/δ)が、0.10以上0.25以下に設定されている。なお、この比(R/δ)は、0.20以上0.23以下が望ましい。さらに、上記フィン先端rと、溝(2)の底部幅δとの比(r/δ)が、0.14以上0.20以下に設定されている。なお、この比(r/δ)は、0.16以上0.19以下が望ましい。ここで、溝(2)の底部幅δとは、傾斜部(3b)の延長線と底部平坦部(2a)の延長線との交点を結んだ距離を示すものである。
【0049】
また、本実施形態の伝熱管(1)は、フィン先端rが0.04mm、谷底Rが0.05mm、溝(2)の谷底幅δが0.23mm、フィン頂角θが40°、フィン高さhが0.18mmに設定されている。また、その他の寸法および角度については、管の外径がφ7mm、溝(2)の条数Nが50条、溝(2)のリード角αが18°、谷底肉厚tが0.25mmに設定されている。
【0050】
また、本発明は、谷底Rおよびフィン先端rについて溝の底部幅δとの関係で規定する代わりに、フィン頂角θ°との関係で規定するようにしてもよい。具体的に、上記谷底Rと、フィン頂角θ°との比(R/θ)が、0.0006以上0.0014以下に規定される。なお、この比(R/θ)は、0.0011以上0.0014以下が望ましい。上記フィン先端rと、フィン頂角θ°との比(r/θ)が、0.0008以上0.0012以下に規定される。なお、この比(r/θ)は、0.0009以上0.0011以下が望ましい。
【0051】
また、谷底Rおよびフィン先端rについてフィン高さhとの関係で規定するようにしてもよい。具体的に、上記谷底Rと、フィン高さhとの比(R/h)が、0.13以上0.32以下に規定される。なお、この比(R/h)は、0.25以上0.31以下が望ましい。上記フィン先端rと、フィン高さhとの比(r/h)が、0.18以上0.26以下に規定される。なお、この比(r/h)は、0.20以上0.25以下が望ましい。
【0052】
〈伝熱管の製造方法〉
次に、上記伝熱管(1)の製造方法について、図4〜図6を参照しながら説明する。図4に示すように、本実施形態の伝熱管の製造装置(10)は、転造ボール(11)と、保持ダイス(12)と、保持プラグ(13)と、連結軸(14)と、溝付きプラグ(20)とを備えている。
【0053】
上記保持ダイス(12)は、円環状に形成され、素管(P)の外面に接するように配置されている。上記保持プラグ(13)は、素管(P)に挿入されて保持ダイス(12)との間で素管(P)を挟み込むように構成されている。上記転造ボール(11)は、保持ダイス(12)の下流側(図4における右側)に配置され、素管(P)の外面に接しながら遊星回転して該素管(P)を押圧するように構成されている。上記溝付きプラグ(20)は、素管(P)の転造ボール(11)に対応する位置に挿入されるものである。上記溝付きプラグ(20)は、連結軸(14)によって保持プラグ(13)に回転自在に連結されている。
【0054】
図5および図6に示すように、上記溝付きプラグ(20)は、円筒状に形成され、外周面に複数の螺旋状のフィン(22)が形成されている。このフィン(22)間には、螺旋状の溝(21)が形成されている。これら溝(21)および突条(22)は、並行に形成され、且つ、軸方向に対して所定の角度だけ傾斜している。
【0055】
上記溝付きプラグ(20)のフィン(22)は、断面が先細の台形状に形成された突条を構成している。上記フィン(22)は、先端部(22a)の両端である先端角部(22b)が円弧状に形成され、該先端角部(22b)に連続して直線状の傾斜部(22c)が形成されている。上記溝付きプラグ(20)の溝(21)は、底部(21a)が円弧状に形成され、フィン(22)の傾斜部(22c)に連続している。つまり、上記フィン(22)の傾斜部(22c)および先端角部(22b)と、底部(21a)とが、上記溝(21)を構成している。そして、上記溝付きプラグ(20)の溝(21)およびフィン(22)は、それぞれ上記伝熱管(1)のフィン(3)および溝(2)に対応するように形成されている。
【0056】
また、上記溝付きプラグ(20)についても、製造時に伝熱管(1)のフィン(3)等に割れ等の不良が発生しないように、即ち上述した伝熱管(1)のフィン(3)や溝(2)の形状に加工できるように、先端角部(22b)の円弧半径R(以下、フィン先端Rという。)および底部(21a)の円弧半径r(以下、谷底rという。)が設定されている。
【0057】
つまり、上記フィン先端Rと、フィン先端幅δとの比(R/δ)が、0.10以上0.25以下に設定されている。上記谷底rと、フィン先端幅δとの比(r/δ)が、0.14以上0.20以下に設定されている。ここで、フィン先端幅δとは、先端部(22a)の延長線と傾斜部(22c)の延長線との交点を結んだ距離を示すものである。具体的に、本実施形態の溝付きプラグ(20)は、谷底rが0.04mm、フィン先端Rが0.05mm、フィン先端幅δが0.23mm、溝(21)の頂角θが40°、溝深さhが0.18mmに設定されている。
【0058】
また、この溝付きプラグ(20)においても、本発明は、フィン先端Rおよび谷底rについてフィン先端幅δとの関係で規定する代わりに、溝(21)の頂角θ°との関係で規定するようにしてもよい。つまり、上記フィン先端Rと、溝(21)の頂角θ°との比(R/θ)が、0.0006以上0.0014以下に規定される。上記谷底rと、溝(21)の頂角θ°との比(r/θ)が、0.0008以上0.0012以下に規定される。
【0059】
また、上記フィン先端Rおよび谷底rについてフィン高さhとの関係で規定するようにしてもよい。つまり、上記フィン先端Rと、フィン高さhとの比(R/h)が、0.13以上0.32以下に規定される。上記谷底rと、フィン高さhとの比(r/h)が、0.18以上0.26以下に規定される。
【0060】
なお、溝付きプラグ(20)において、上述した各比(R/δ、r/δ、R/θ、r/θ、R/h、r/h)の望ましい値の範囲は、上記伝熱管(1)において記載した値の範囲と同様である。
【0061】
本実施形態の製造装置(10)では、素管(P)を縮径加工する第1工程と、その縮径された素管(P)を転造加工する第2工程とが行われる。
【0062】
上記第1工程では、平滑管である素管(P)が保持ダイス(12)に挿通される。この素管(P)の内部に、転造用の潤滑油が注入され、連結軸(14)で繋がった保持プラグ(13)および溝付きプラグ(20)が挿入される。その後、素管(P)が抽伸方向(図4に矢印で示す方向)に引き抜かれる。そうすると、素管(P)が保持ダイス(12)および保持プラグ(13)の間で縮径される(縮径加工)。
【0063】
上記第2工程では、第1工程で縮径された素管(P)がさらに引き抜かれ、転造ボール(11)を通過する。この通過の際、素管(P)が転造ボール(11)によって溝付きプラグ(20)へ押圧される。そうすると、素管(P)の内壁面が溝付きプラグ(20)の溝(21)形状に沿って塑性変形する。具体的には、図6に示すように、素管材料(銅材料または銅合金材料)が、溝付きプラグ(20)の先端部(22a)から傾斜部(22c)に沿って溝(21)の底部(21a)へ流れ込む。これにより、溝付きプラグ(20)の溝(21)形状が素管(P)の内面に転写される(転造加工)。
【0064】
ところで、伝熱管(1)は、必要伝熱量に基づく内表面積を確保できるように、さらに液冷媒が溝(2)に沿って管頂部まで到達する環状流となるように、溝(2)やフィン(3)の形状が設計される。つまり、内表面積が大きいほど冷媒と空気等との熱交換量を増大させることができ、環状流とすることによって管内の全体を伝熱に利用することができる。その結果、伝熱管(1)の伝熱性能を高めることができる。具体的に、溝(2)の条数Nと、溝(2)のリード角αと、フィン頂角θと、フィン高さhとが、上記の設計条件に基づいて設定される。そして、上記4つの数値が定まると、溝(2)の谷底幅δが自ずと定められる。また、管内の冷媒圧力に基づいて谷底肉厚tが設定され、伝熱管(1)の必要強度が確保される。
【0065】
ここで、例えば、設計条件によって伝熱管(1)の溝(2)の谷底幅δが大きくなると、溝付きプラグ(20)において、素管材料が先端部(22a)から傾斜部(22c)へ流れ込み難くなる。ところが、本実施形態では、上述したように、溝付きプラグ(20)のフィン先端Rおよび底部rをフィン先端幅δ(伝熱管(1)の谷底幅δ)との関係で規定している。つまり、溝付きプラグ(20)において、素管材料が溝(21)へ流れ込み易くなるように、フィン先端幅δに応じてフィン先端Rおよび底部rが設定される。これにより、素管材料は、先端部(22a)から先端角部(22b)に沿って傾斜部(22c)へ流れ易くなり、さらに傾斜部(22c)から底部(21a)まで流れ易くなる。したがって、素管材料を溝付きプラグ(20)の溝(21)に確実に流入させることができる。その結果、伝熱管(1)の溝(2)やフィン(3)における欠けや割れ等の不良を発生させずにすむ。
【0066】
また、設計条件によって伝熱管(1)のフィン(3)の頂角θ(溝付きプラグ(20)の溝(21)の頂角θ)が小さくなると、溝付きプラグ(20)において、素管材料が先端部(22a)から傾斜部(22c)へ流れ込み難くなる。つまり、先端部(22a)から傾斜部(22c)への素管材料の流れ込み角度が急となるため、素管材料の流れが乱れ、素管材料の溝(21)への流入が不十分となる。ところが、上述したように、溝付きプラグ(20)のフィン先端Rおよび底部rを溝(21)の頂角θ(伝熱管(1)のフィン頂角θ)との関係で適切に設定すれば、溝(21)形状がその頂角θに応じて素管材料が流れ込み易い形状となる。したがって、素管材料を溝付きプラグ(20)の溝(21)に確実に流入させることができる。
【0067】
また、設計条件によって伝熱管(1)のフィン高さhが大きくなると、溝付きプラグ(20)において、素管材料が特に溝(21)の底部(21a)まで到達し難くなる。ところが、上述したように、溝付きプラグ(20)のフィン先端Rおよび底部rを溝(21)の深さh(伝熱管(1)のフィン高さh)との関係で適切に設定すれば、溝(21)形状がその深さhに応じて素管材料が底部(21a)まで確実に流れ込む形状となる。したがって、素管材料を溝付きプラグ(20)の溝(21)に確実に流入させることができる。
【0068】
ここで、上述した何れの場合においても、フィン先端Rおよび底部rを大きくするほど、素管材料の溝(21)への流入性は高まるが、伝熱管(1)の内表面積が小さくなり伝熱性能が低下してしまう。したがって、フィン先端Rおよび底部rの上限値は、必要伝熱量を確保できる範囲で設定される。
【0069】
このように、本実施形態では、伝熱管(1)の谷底Rおよびフィン先端r、つまり溝付きプラグ(20)のフィン先端Rおよび底部rを、設計条件により設定される各種パラメータの数値に応じて規定するようにした。したがって、伝熱管(1)の機能性(伝熱性能等)を確保しつつ、加工性についても向上させることができる。その結果、信頼性の高い伝熱管(1)を提供することができる。
【0070】
〈評価結果〉
次に、伝熱管(1)の製造時の割れ等の評価試験結果について、図7を参照しながら説明する。なお、この試験は、何れのケース(ケース1〜3)も、伝熱管の外径がφ7mm、溝(2)の条数Nが50条、溝(2)のリード角αが18°、谷底肉厚tが0.25mmの条件で行った。
【0071】
図7に示すように、ケース1およびケース3は、フィン(3)や溝(2)に欠けや割れ等が発生し、ケース2は、全く割れ等が発生しなかった。このように、ケース2について、上述した谷底Rおよびフィン先端rと谷底幅δ等との比の規定数値範囲を満たしていることが分かる。一方、ケース1およびケース3について、上述した規定数値範囲から外れていることが分かる。
【0072】
《その他の実施形態》
例えば、上記実施形態では、熱交換器に用いる銅製の伝熱管を対象としたが、水道管等の別用途の管を対象としてもよい。
【0073】
また、上記伝熱管(1)の溝(2)の形状は、螺旋状に限るものでなく、例えば軸方向に沿って延びる直線溝であってもよい。
【0074】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明は、内面に螺旋溝を有する内面溝付き管及びその製造方法、並びにその製造に用いられる溝付きプラグとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施形態に係る伝熱管を示す縦断面図である。
【図2】実施形態に係る伝熱管を示す横断面図である。
【図3】実施形態に係る伝熱管の要部を示す横断面図である。
【図4】実施形態に係る製造装置を示す構成図である。
【図5】実施形態に係る溝付きプラグを示す斜視図である。
【図6】実施形態に係る溝付きプラグの要部を示す横断面図である。
【図7】評価試験の結果を示す表である。
【図8】溝およびフィンの割れ等を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 伝熱管(内面溝付き管)
2 溝
2b 底部角部
3 フィン(突条)
3a 先端部
10 製造装置
11 転造ボール
12 保持ダイス
13 保持プラグ
20 溝付きプラグ
21 溝
21a 底部
22 フィン(突条)
22b 先端角部
P 素管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に複数の溝が形成された内面溝付き管であって、
上記溝は、断面が逆台形状に形成されると共に該底部角部が円弧状に形成され、該底部角部の円弧半径Rmmと、上記溝の底部幅δmmとの比(R/δ)が0.10以上0.25以下である
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項2】
請求項1において、
上記溝に隣接して先細に形成された突条は、頂部が円弧状に形成され、該頂部の円弧半径rmmと、上記溝の底部幅δmmとの比(r/δ)が0.14以上0.20以下である
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項3】
内面に複数の溝が形成された内面溝付き管であって、
上記溝は、断面が逆台形状に形成されると共に該底部角部が円弧状に形成され、該底部角部の円弧半径Rmmと、上記溝に隣接して先細に形成された突条の頂角θ°との比(R/θ)が0.0006以上0.0014以下である
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項4】
請求項3において、
上記突条は、頂部が円弧状に形成され、該頂部の円弧半径rmmと、上記突条の頂角θ°との比(r/θ)が0.0008以上0.0012以下である
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項5】
内面に複数の溝が形成された内面溝付き管であって、
上記溝は、断面が逆台形状に形成されると共に該底部角部が円弧状に形成され、該底部角部の円弧半径Rmmと、上記溝に隣接して先細に形成された突条の高さhmmとの比(R/h)が0.13以上0.32以下である
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項6】
請求項5において、
上記突条は、頂部が円弧状に形成され、該頂部の円弧半径rmmと、上記突条の高さhmmとの比(r/h)が0.18以上0.26以下である
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項7】
請求項2において、
上記突条の頂部の円弧半径rが0.04mmで、上記溝の底部角部の円弧半径Rが0.05mmで、上記溝の底部幅δが0.23mmである
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項8】
外周面に複数の突条が形成され、転造加工によって素管の内面に複数の溝を形成するために用いられる溝付きプラグであって、
上記突条は、断面が先細の台形状に形成されると共に該先端角部が円弧状に形成され、該先端角部の円弧半径Rmmと、上記突条の先端幅δmmとの比(R/δ)が0.10以上0.25以下である
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項9】
請求項8において、
上記突条間に形成された略Vの字状の溝は、底部が円弧状に形成され、該底部の円弧半径rmmと、上記突条の先端幅δmmとの比(r/δ)が0.14以上0.20以下である
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項10】
外周面に複数の突条が形成され、転造加工によって素管の内面に複数の溝を形成するために用いられる溝付きプラグであって、
上記突条は、断面が先細の台形状に形成されると共に該先端角部が円弧状に形成され、該先端角部の円弧半径Rmmと、上記突条間に形成された略Vの字状の溝の頂角θ°との比(R/θ)が0.0006以上0.0014以下である
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項11】
請求項10において、
上記突条間に形成された溝は、底部が円弧状に形成され、該底部の円弧半径rmmと、上記溝の頂角θ°との比(r/θ)が0.0008以上0.0012以下である
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項12】
外周面に複数の突条が形成され、転造加工によって素管の内面に複数の溝を形成するために用いられる溝付きプラグであって、
上記突条は、断面が先細の台形状に形成されると共に該先端角部が円弧状に形成され、該先端角部の円弧半径Rmmと、上記突条間に形成された略Vの字状の溝の深さhmmとの比(R/h)が0.13以上0.32以下である
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項13】
請求項12において、
上記突条間に形成された溝は、底部が円弧状に形成され、該底部の円弧半径rmmと、上記溝の深さhmmとの比(r/h)が0.18以上0.26以下である
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項14】
請求項9において、
上記溝の底部の円弧半径rが0.04mmで、上記突条の先端角部の円弧半径Rが0.05mmで、上記突条の先端の幅δが0.23mmである
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項15】
請求項8乃至14の何れか1項の溝付きプラグ(20)を素管(P)に挿入し、その挿入位置に対応する素管(P)の外面を押圧する転造工程によって、上記素管(P)の内面に上記溝付きプラグ(20)の突条形状に対応した溝形状を形成する
ことを特徴とする内面溝付き管の製造方法。
【請求項16】
請求項15において、
上記転造工程を行う前に、素管(P)を縮径加工する
ことを特徴とする内面溝付き管の製造方法。
【請求項1】
内面に複数の溝が形成された内面溝付き管であって、
上記溝は、断面が逆台形状に形成されると共に該底部角部が円弧状に形成され、該底部角部の円弧半径Rmmと、上記溝の底部幅δmmとの比(R/δ)が0.10以上0.25以下である
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項2】
請求項1において、
上記溝に隣接して先細に形成された突条は、頂部が円弧状に形成され、該頂部の円弧半径rmmと、上記溝の底部幅δmmとの比(r/δ)が0.14以上0.20以下である
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項3】
内面に複数の溝が形成された内面溝付き管であって、
上記溝は、断面が逆台形状に形成されると共に該底部角部が円弧状に形成され、該底部角部の円弧半径Rmmと、上記溝に隣接して先細に形成された突条の頂角θ°との比(R/θ)が0.0006以上0.0014以下である
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項4】
請求項3において、
上記突条は、頂部が円弧状に形成され、該頂部の円弧半径rmmと、上記突条の頂角θ°との比(r/θ)が0.0008以上0.0012以下である
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項5】
内面に複数の溝が形成された内面溝付き管であって、
上記溝は、断面が逆台形状に形成されると共に該底部角部が円弧状に形成され、該底部角部の円弧半径Rmmと、上記溝に隣接して先細に形成された突条の高さhmmとの比(R/h)が0.13以上0.32以下である
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項6】
請求項5において、
上記突条は、頂部が円弧状に形成され、該頂部の円弧半径rmmと、上記突条の高さhmmとの比(r/h)が0.18以上0.26以下である
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項7】
請求項2において、
上記突条の頂部の円弧半径rが0.04mmで、上記溝の底部角部の円弧半径Rが0.05mmで、上記溝の底部幅δが0.23mmである
ことを特徴とする内面溝付き管。
【請求項8】
外周面に複数の突条が形成され、転造加工によって素管の内面に複数の溝を形成するために用いられる溝付きプラグであって、
上記突条は、断面が先細の台形状に形成されると共に該先端角部が円弧状に形成され、該先端角部の円弧半径Rmmと、上記突条の先端幅δmmとの比(R/δ)が0.10以上0.25以下である
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項9】
請求項8において、
上記突条間に形成された略Vの字状の溝は、底部が円弧状に形成され、該底部の円弧半径rmmと、上記突条の先端幅δmmとの比(r/δ)が0.14以上0.20以下である
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項10】
外周面に複数の突条が形成され、転造加工によって素管の内面に複数の溝を形成するために用いられる溝付きプラグであって、
上記突条は、断面が先細の台形状に形成されると共に該先端角部が円弧状に形成され、該先端角部の円弧半径Rmmと、上記突条間に形成された略Vの字状の溝の頂角θ°との比(R/θ)が0.0006以上0.0014以下である
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項11】
請求項10において、
上記突条間に形成された溝は、底部が円弧状に形成され、該底部の円弧半径rmmと、上記溝の頂角θ°との比(r/θ)が0.0008以上0.0012以下である
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項12】
外周面に複数の突条が形成され、転造加工によって素管の内面に複数の溝を形成するために用いられる溝付きプラグであって、
上記突条は、断面が先細の台形状に形成されると共に該先端角部が円弧状に形成され、該先端角部の円弧半径Rmmと、上記突条間に形成された略Vの字状の溝の深さhmmとの比(R/h)が0.13以上0.32以下である
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項13】
請求項12において、
上記突条間に形成された溝は、底部が円弧状に形成され、該底部の円弧半径rmmと、上記溝の深さhmmとの比(r/h)が0.18以上0.26以下である
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項14】
請求項9において、
上記溝の底部の円弧半径rが0.04mmで、上記突条の先端角部の円弧半径Rが0.05mmで、上記突条の先端の幅δが0.23mmである
ことを特徴とする溝付きプラグ。
【請求項15】
請求項8乃至14の何れか1項の溝付きプラグ(20)を素管(P)に挿入し、その挿入位置に対応する素管(P)の外面を押圧する転造工程によって、上記素管(P)の内面に上記溝付きプラグ(20)の突条形状に対応した溝形状を形成する
ことを特徴とする内面溝付き管の製造方法。
【請求項16】
請求項15において、
上記転造工程を行う前に、素管(P)を縮径加工する
ことを特徴とする内面溝付き管の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2007−218566(P2007−218566A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42960(P2006−42960)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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