説明

円偏光分離シート及びその製造方法、並びにそれを用いた液晶表示装置

【課題】斜めから観察したときにも着色の生じない表示ができ且つ選択反射特性に優れた円偏光分離シート及びそれを備えた液晶表示装置、及び1層で広い選択反射帯域を有するコレステリック規則性を持った樹脂層を形成し、広帯域化の省エネルギー化が可能で生産性の高い円偏光分離シートを製造する方法。
【解決手段】重合性官能基を1分子あたり2つ備えた分子量600以上のアキラルな液晶性化合物(i)と、重合性官能基を1分子あたり1つ以上備えた分子量600未満でアキラルな化合物(ii)と、重合性官能基を1分子あたり1つ以上備えたカイラル剤と、光重合開始剤とを含む組成物を重合してなるコレステリック樹脂層を有する円偏光分離シートにおいて、波長350nm〜400nmのモル吸光係数が、光重合開始剤>液晶性化合物(i)>化合物(ii)の順である円偏光分離シート、およびその製造方法、並びにそれを用いた液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光分離シート及びその製造方法、並びにそれを用いた液晶表示装置に関し、さらに詳しくは、広帯域化を効率的に実現でき、広い選択反射帯域を持つコレステリック規則性を持つ樹脂の層を有する円偏光分離シート及びその製造方法、並びにそれを用いた液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コレステリック規則性を持つ樹脂層は、コレステリック規則性の螺旋回転方向と一致する回転方向の円偏光を反射する特性(以下、この特性を「選択反射特性」という。)を有している。この選択反射特性を示す波長帯域はコレステリック規則性の周期に依存している。コレステリック規則性の周期の分布幅を広くすることによって、選択反射特性を示す波長帯域(以下、選択反射帯域という。)の幅を広くすることができる。
【0003】
選択反射帯域を可視光の波長域に持つコレステリック規則性を持つ樹脂層を含んでなる円偏光分離シートを形成できれば、入射する自然光のうち、特定波長の円偏光のみを反射し、残りの円偏光を透過することができる。この反射された光を反射板等で前記樹脂層に再入射させることによって光の再利用ができる。
前記円偏光分離シートと1/4波長板とを組み合わせたものは、自然光を直線偏光に高効率で変換できる。この直線偏光の方向を液晶表示装置に備わるポリビニルアルコール製等の吸収型偏光子の透過方向と揃えることによって、高輝度の液晶表示装置を得ることができる。
【0004】
コレステリック規則性を有する樹脂(以下、コレステリック樹脂という。)層の選択反射帯域を広げる方法として、異なる選択反射帯域を有するコレステリック樹脂層を複数設ける方法、コレステリック樹脂層の周期を厚み方向に徐々に変化した構造にする方法などが知られている。
【0005】
特許文献1〜3には波長365nmにおけるモル吸光係数が50〜500dm3mol-1cm-1で特定構造を有する重合性メソゲン化合物を重合性カイラル剤及び光重合開始剤の存在下で光重合して、選択反射帯域の幅が200nm以上の広帯域コレステリック液晶フィルムを得ることが記載されている。そして、実施例に開示されている広帯域コレステリック液晶フィルムは、液晶層の総厚みが9μm以上のものである。
【0006】
【特許文献1】特開2004−233987号公報
【特許文献2】特開2004−219522号公報
【特許文献3】特開2004−264322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、本発明者の検討によると、従来の広帯域コレステリック液晶フィルムは、斜めからの観察において、表示に着色が生じることが判った。また、広帯域化処理の際、十分な選択反射特性を得るためには過酷な温度、光照射時間等の条件を設定する必要があり、製造工程の煩雑さの点において不利であった。
従って、本発明の目的は、広帯域化を効率的に実現しつつ、斜めから観察したときにも着色の生じない表示ができ且つ選択反射特性に優れた円偏光分離シート並びに該円偏光分離シートを備えた液晶表示装置を提供することにある。
また本発明の別の目的は、1層で広い選択反射帯域を有するコレステリック樹脂層を形成し、高い生産性で円偏光分離シートを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、コレステリック規則性を有する樹脂層を与えるコレステリック液晶性組成物として、特定の液晶性化合物と、低分子の化合物と、カイラル剤と、光重合開始剤とを含む組成物であって、当該成分が、その平均モル吸光係数において特定の関係を有するものを用いて得た円偏光分離シートが、低エネルギーでの効率的な広帯域化処理を実現しつつ、斜めから観察したときにも着色の生じない表示ができ且つ選択反射特性に優れていることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、下記のものが提供される:
〔1〕 重合性官能基を1分子あたり2つ備えた分子量が600以上のアキラルな液晶性化合物(i)と、重合性官能基を1分子あたり1つ以上備えた分子量が600未満でアキラルな化合物(ii)と、重合性官能基を1分子あたり1つ以上備えたカイラル剤と、光重合開始剤とを含むコレステリック液晶性組成物を重合してなるコレステリック規則性を有する樹脂層を1層以上有する円偏光分離シートにおいて、波長350nm〜400nmにおける平均モル吸光係数の大きさが、光重合開始剤>液晶性化合物(i)>化合物(ii)の順であることを特徴とする、円偏光分離シート。
〔2〕 前記光重合開始剤、前記液晶性化合物(i)、及び前記化合物(ii)の波長350nm〜400nmにおける平均モル吸光係数が、それぞれ2000M−1cm−1以上、800〜1800M−1cm−1、及び700M−1cm−1以下である前記円偏光分離シート。
〔3〕 前記コレステリック規則性を有する樹脂の層の総厚みが10μm以下である前記円偏光分離シート。
〔4〕 コレステリック規則性の周期が厚み方向で段階的に又は連続的に変化している前記円偏光分離シート。
〔5〕 前記円偏光分離シートの製造方法であって、基材フィルム上に、前記コレステリック液晶性組成物を塗布して塗膜を得る工程、前記塗膜に、波長350〜400nmの光を0を超え20mW/cm2以下の照度で0.1〜6秒間基材フィルム側から照射して前記コレステリック液晶性組成物を重合させる処理、及び重合させた前記コレステリック液晶性組成物のコレステリック規則性を調整する処理を1回以上行って半硬化膜を得る工程、及び前記半硬化膜をさらに硬化させ、前記コレステリック規則性を有する樹脂層を形成する工程を含む円偏光分離シートの製造方法。
〔6〕 偏光子A、液晶セル、偏光子B、1/4波長板及び前記円偏光分離シートをこの順に有する液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の円偏光分離シートは、短時間の光照射条件であっても広帯域化が可能であり、可視光領域において高い選択反射特性を示す。また、コレステリック樹脂層を薄くすることができる。さらに斜めからの観察によっても表示に着色がない。そのため、本発明の円偏光分離シートは、液晶表示装置の輝度向上フィルムとして好適である。
【0011】
本発明の円偏光分離シートが、斜めからの観察で表示に着色を生じない理由は定かではないが、その機構は次のように推定される。
コレステリック規則性を持つ樹脂層は、棒状液晶分子が捩れてらせん状に回転した構造を成している。コレステリック規則性を持つ樹脂層の屈折率はコレステリック規則性の周期等でその値が変わるが、一般に、nx=ny>nz(nx、nyは面内方向の主屈折率、nzは厚み方向の主屈折率)の関係を有している。
【0012】
厚み方向に変化するコレステリック規則性を有する樹脂層で反射される円偏光は、その波長によって、反射される場所、すなわち厚み方向の位置が異なる。例えば、400〜500nm、500〜600nm及び600〜700nmのそれぞれに選択反射帯域を持つコレステリック規則性を有する樹脂層を積層させたとき、400〜500nmの一方の円偏光は樹脂層に入射して直ぐの層で反射され、もう一方の円偏光は残りの樹脂層の中を透過する。500〜600nmの円偏光は樹脂層の中央辺りで反射され、もう一方の円偏光は残りの樹脂層の中を透過する。600〜700nmの円偏光は樹脂層から出射する直前の層で反射され、もう一方の円偏光は残りの樹脂層の中を透過する。このように、円偏光の波長によって、樹脂層を通過する距離が異なってくる。樹脂層を通過する距離が異なるために、各波長における位相変化量が異なってくる。この位相変化量の相違は斜め入射した光においてより顕著に表れる。
【0013】
本発明にしたがって特定の平均モル吸光係数を持つ光重合開始剤を用いると、コレステリック規則性の周期の幅を広げることができる。コレステリック規則性の周期は選択反射帯域に影響するので、周期の幅が広がることによって、選択反射帯域の幅が広くなる。その結果、同じ広さの選択反射帯域を確保するために必要な総厚みd(層の数及びヘリカル構造のピッチ数)を小さくすることができる。総厚みdを小さくできると、波長による位相変化の差異を大幅に小さくすることができる。本発明は、このような機構によって、選択反射特性を落とさずに、斜め入射した光の位相変化を大幅に抑制し、その結果、斜めからの観察における表示の着色を抑えることができるものと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1.円偏光分離シート
本発明の円偏光分離シートは、所定のコレステリック規則性を有する樹脂層を、1層以上有する。
【0015】
1−1.基材フィルム
本発明の円偏光分離シートにおいて、前記樹脂層は、好ましくは基材フィルムの上に設けられる。当該基材フィルムは、円偏光分離シートを十分に広帯域化させるため、波長350〜400nmにおける光線透過率が80%以上であるものが好ましく、95%以上であるものがさらに好ましい。
【0016】
かかる基材フィルムの材質としては、透明樹脂フィルム、ガラス基板等が挙げられる。代表的なものとしては、液晶層を効率よく製造することができる観点から、長尺の透明樹脂フィルムがより好ましい。透明樹脂フィルムは、一層のフィルムであっても、複層のフィルムであってもよいが、1mm厚で全光線透過率が80%以上のものが好ましい。
【0017】
透明樹脂フィルムの樹脂材料としては、脂環式構造を有する樹脂、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、UV透過アクリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ポリスチレン等が挙げられる。これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性等の観点から、脂環式構造を有する樹脂が好ましい。
【0018】
脂環式構造を有する樹脂は、繰り返し単位中に脂環式構造を有する非晶性の樹脂であり、主鎖中に脂環式構造を有する樹脂及び側鎖に脂環式構造を有する樹脂のいずれも用いることができる。脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を構成する炭素数に特に制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは6〜15個である。
【0019】
脂環式構造を有する樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は使用目的に応じて適宜選択されるが、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位が過度に少ないと、フィルムの耐熱性が低下するおそれがある。
【0020】
脂環式構造を有する樹脂は、具体的には、(1)ノルボルネン重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン重合体及びこれらの水素添加物がより好ましい。
【0021】
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネンモノマーの開環重合体、ノルボルネンモノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物;ノルボルネンモノマーの付加重合体、ノルボルネンモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネンモノマーの開環重合体水素添加物が最も好ましい。上記の脂環式構造を有する重合体は、例えば特開2002−321302号公報等に開示されている公知の重合体から選ばれる。
【0022】
本発明に好適な透明樹脂フィルムの樹脂材料は、そのガラス転移温度が、好ましくは80℃以上、より好ましくは100〜250℃の範囲である。ガラス転移温度がこのような範囲にある樹脂材料からなる透明樹脂フィルムは、高温下での使用における変形や応力が生じることがなく耐久性に優れる。
【0023】
本発明の基材フィルムとして好適な透明樹脂フィルムの樹脂材料の分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(樹脂材料が溶解しない場合にはトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)で測定したポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000〜100,000、好ましくは25,000〜80,000、より好ましくは25,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。
【0024】
本発明の基材フィルムとして好適な透明樹脂フィルムの樹脂材料の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、通常1〜10、好ましくは1〜4、より好ましくは1.2〜3.5の範囲である。
【0025】
本発明の基材フィルムとして好適な透明樹脂フィルムの樹脂材料は、その分子量2,000以下の樹脂成分(すなわち、オリゴマー成分)の含有量が、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。オリゴマ一成分の量が前記範囲内にあると、表面に微細な凸部が発生しづらくなり、厚みむらが小さくなり面精度が向上する。オリゴマー成分の量を低減するためには、重合触媒や水素化触媒の選択、重合、水素化等の反応条件、樹脂を成形用材料としてペレット化する工程における温度条件、等を最適化すればよい。オリゴマーの成分量は、前述のGPCによって測定することができる。
【0026】
本発明に用いる基材フィルムの厚みは特に制限されないが、生産性や薄型・軽量化の観点から、その厚みは、通常1〜1000μm、好ましくは5〜300μm、より好ましくは30〜100μmである。
【0027】
また、本発明に用いる基材フィルムは表面処理されているものが好ましい。表面処理を施すことにより、基材と後述する配向膜との密着性を高めることができる。表面処理の手段としては、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等が挙げられる。また、基材フィルムの上に、接着層(下塗り層)を設けることも、基材フィルムと配向膜との密着性を高める上で好ましい。
【0028】
また、本発明に用いる基材フィルムには、形成されるコレステリック樹脂層のヘリカル構造の配向方向を調整するために配向膜を基材表面に有することが好ましい。
【0029】
本発明に用いる配向膜は、コレステリック樹脂層の配向方向を調整できるものであれば、特に制限されない。
配向膜は、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、変性ポリアミドなどの樹脂を主成分とする塗布液を基材フィルムに膜状に積層し、乾燥させ、次いで一方向にラビングすることによって得られる。膜状に積層した塗布層を一方向にラビングすることで、コレステリック規則性を持つ樹脂層を一方向に配向規制することが可能になる。
【0030】
ラビングの方法は、特に制限されないが、例えばナイロンなどの合成繊維、木綿などの天然繊維からなる布やフェルトを巻き付けたロールで一定方向に配向膜を擦る方法が挙げられる。ラビングした時に発生する微粉末(異物)を除去して配向膜の表面を清浄な状態とするために、形成された配向膜をイソプロピルアルコールなどによって洗浄することが好ましい。配向膜にコレステリック規則性を持つ樹脂層を面内で一方向に配向規制する機能を持たせるために、ラビングする以外に、配向膜の表面に偏光紫外線を照射する方法が挙げられる。
【0031】
配向膜の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。
【0032】
上述の基材フィルム上において、以下に詳述するコレステリック液晶性組成物を重合させることにより、本発明の円偏光分離シートを得ることができる。
【0033】
1−2.コレステリック液晶性組成物
本発明において、コレステリック樹脂層は、重合性官能基を1分子あたり2つ備えた分子量が600以上のアキラルな特定の液晶性化合物(i)と、重合性官能基を1分子あたり1つ以上備えた分子量が600未満でアキラルな特定の化合物(ii)と、重合性官能基を1分子あたり1つ以上備えたカイラル剤と、特定の光重合開始剤とを含むコレステリック液晶性組成物を重合してなる。以下、コレステリック液晶性組成物の各成分について説明する。
【0034】
1−2−1.光重合開始剤
前記コレステリック液晶性組成物に含まれる光重合開始剤は、波長350〜400nmにおける平均モル吸光係数が、液晶性化合物(i)よりも大きく、好ましくは2000M-1cm-1以上、より好ましくは2500M-1cm-1以上、さらにより好ましくは2500〜100000M-1cm-1である。光重合開始剤の波長350〜400nmにおける平均モル吸光係数が上記範囲内にあると、本発明の円偏光分離シートの選択反射帯域の幅を広くすることができる。光重合開始剤の波長350〜400nmにおける平均モル吸光係数が液晶性化合物(i)の平均モル吸光係数より小さいと、コレステリック規則性の周期を厚み方向に変化させることが困難となり、円偏光分離シートの選択反射帯域の幅が狭くなるおそれがある。
なお、モル吸光係数は、濃度1.0×10-5g/mlのアセトニトリル溶液について光路長10mmの条件で分光光度スペクトルを測定して得られた吸光度から算出したものである。平均モル吸光係数は、ある波長範囲内のそれぞれの波長でのモル吸光係数の算術平均値である。
【0035】
光重合開始剤は、紫外線等の光線によりエチレン性不飽和基を重合させるラジカル及び/又は酸を発生させることのできる化合物である。
光重合開始剤としては、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、などのハロメチル化トリアジン誘導体;ハロメチル化オキサジアゾール誘導体;2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ビス(3’−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(2’−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、(4’−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体などのイミダゾール誘導体;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなどのアントラキノン誘導体;ベンズアンスロン誘導体;ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体;
【0036】
2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトンなどのアセトフェノン誘導体;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン誘導体;p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸エステル誘導体;9−フェニルアクリジン、9−(p−メトキシフェニル)アクリジンなどのアクリジン誘導体;9,10−ジメチルベンズフェナジンなどのフェナジン誘導体;
【0037】
ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ-1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジ−フルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イルなどのチタノセン誘導体;特開2001−233842号公報に記載のオキシムエステル化合物、特開2004−359639号公報に記載のカルバゾールオキシム化合物などのオキシム誘導体などが挙げられる。これらの光重合開始剤は単独または複数組み合わせて使用される。
【0038】
これらのうち、波長350〜400nmの波長における平均モル吸光係数が高い観点から、ハロメチル化トリアジン誘導体、ハロメチル化オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アントラキノン誘導体、ベンズアンスロン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、オキシム誘導体が好ましく、オキシム誘導体が特に好ましい。特に、図1に示すように、波長200〜300nmの間に主吸収(モル吸光係数が最大値を示す波長域)があり、波長300〜400nmの間に副吸収(モル吸光係数が極大値を示す波長域)がある光重合開始剤が好ましい。
【0039】
光重合開始剤の量は、液晶性化合物(i)100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがさらに好ましい。
【0040】
1−2−2.液晶性化合物(i)
前記コレステリック液晶性組成物に含まれる液晶性化合物(i)は、重合することによってコレステリック規則性を持つ樹脂を得ることができるものであり、アキラルな光重合性の液晶性化合物を用いることができる。
本発明に用いる液晶性化合物(i)は、波長350〜400nmにおける平均モル吸光係数が前記光重合開始剤より小さく、且つ後に詳述する化合物(ii)よりも大きい。液晶性化合物(i)の波長350〜400nmにおける平均モル吸光係数は、好ましくは、800〜1800M-1cm-1、より好ましくは850〜1200M-1cm-1である。液晶性化合物(i)の波長350〜400nmにおける平均モル吸光係数が上記範囲内にあると、本発明の円偏光分離シートの選択反射帯域の幅を広くすることができる。液晶化合物(i)の波長350〜400nmにおける平均モル吸光係数が上記範囲より大きいと、液晶性化合物(i)による波長350〜400nmの光の吸収が大きすぎるために、コレステリック規則性の周期を厚み方向に変化させることが困難となり、円偏光分離シートの選択反射帯域の幅が狭くなるおそれがある。
【0041】
また、本発明に用いる液晶性化合物(i)は、コレステリック樹脂層の総厚みを薄くでき且つ選択反射帯域の幅を広げることができる観点から、その複屈折Δn(=ne-no;neは光重合性液晶化合物分子の長軸方向の屈折率、noは光重合性液晶化合物分子の短軸方向の屈折率)が0.18以上のものが好ましく、0.18〜0.40のものがより好ましく、0.18〜0.22のものが特に好ましい。Δnはセナルモン法によって測定できる。
上記範囲に入るΔnを有する光重合性液晶化合物は、棒状の光重合性液晶化合物から選択するのが好ましい。なお、光重合性液晶化合物のΔnはメソゲン基のπ共役系を増やすことで大きくすることができる。π共役系が増えるにつれて光重合性液晶化合物の紫外線の吸収帯は長波長側へ移動する。例えば、ベンゼンの最大吸収波長λmaxは260nmであるが、ナフタレン、アントラセンになるとλmaxはそれぞれ312nm、375nmとなる。
【0042】
本発明において液晶性化合物(i)としては、ネマチック液晶性化合物が好ましく、特に重合性官能基を有するネマチック液晶性化合物が好ましい。
【0043】
液晶性化合物(i)は、化合物1分子あたり2つの重合性官能基を有する。このようなネマチック液晶性化合物として、後述する棒状液晶性化合物(A)が好ましい。
【0044】
前記重合性官能基としては、具体的にはエポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、フマレート基、シンナモイル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、オキサゾリン基、メルカプト基、ビニル基、アリル基、メタクリル基、及びアクリル基が挙げられる。これらの重合性官能基を有することにより、液晶性化合物(i)を硬化させた際に、安定した化合物とすることができ、架橋により実用性の高い、好ましい膜強度が得られる。ここでいう好ましい膜強度とは鉛筆硬度(JIS K5400)でHB以上、好ましくはH以上である。膜強度がHBより低いと傷がつきやすくハンドリング性に欠けてしまうため好ましくない。好ましい鉛筆硬度の上限は、光学的性能や耐久性試験に悪影響を及ぼさなければ特に限定されない。
【0045】
前記1分子中に2つの重合性官能基を有する棒状液晶性化合物(A)としては、式(1)で表される化合物を挙げることができる。
3−C3−D3−C5−M−C6−D4−C4−R4 …式(1)
(式中、R3及びR4は重合性官能基であり、それぞれ独立して(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。D3及びD4は単結合、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。C3〜C6は単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−からなる群より選択される基を表す。Mはメソゲン基を表し、具体的には、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−等の結合基によって結合されて形成される。)
【0046】
前記、メソゲン基Mが有しうる置換基としては、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R5、−O−C(=O)−R5、−C(=O)−O−R5、−O−C(=O)−O−R5、−NR5−C(=O)−R5、−C(=O)−NR5、または−O−C(=O)−NR5を表す。ここで、R5は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、アルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR6−C(=O)−、−C(=O)−NR6−、−NR6−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、R6は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。前記「置換基を有してもよい炭素数1〜10個のアルキル基」における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
本発明において、棒状液晶性化合物(A)は非対称構造であることが好ましい。ここで非対称構造とは、一般式(1)において、メソゲン基Mを中心としてR3−C3−D3−C5−と−C6−D4−C4−R4とが異なる構造であることをいう。棒状液晶性化合物(A)として、非対称構造のものを用いることにより、配向均一性をより高めることができる。
【0047】
液晶性化合物(i)の分子量は、600以上、好ましくは680〜900とすることができる。
【0048】
1−2−3.化合物(ii)
前記コレステリック液晶性組成物に含まれる化合物(ii)は、化合物1分子あたり重合性官能基を1つ以上備えるアキラルな化合物である。当該重合性官能基としては、液晶性化合物(i)について例示した重合性官能基と同様のものとすることができる。
【0049】
化合物(ii)は、波長350〜400nmにおける平均モル吸光係数が、液晶性化合物(i)よりも小さい。化合物(ii)の波長350〜400nmにおける平均モル吸光係数は、好ましくは、700M-1cm-1以下、より好ましくは10〜550M-1cm-1である。化合物(ii)の波長350〜400nmにおける平均モル吸光係数が上記範囲内にあると、本発明の円偏光分離シートの選択反射帯域の幅を広くすることができる。
【0050】
化合物(ii)の分子量は、600未満、好ましくは250〜450とすることができる。
液晶性化合物(i)と化合物(ii)の重量比は、95/5〜50/50であることが好ましく、90/10〜70/30とすることがさらに好ましい。液晶性化合物(i)及び化合物(ii)の和に対する液晶性化合物(i)の割合を95重量%以下とすることにより、配向欠陥の発生を抑制し円偏光分離特性等の光学的性能を良好なものとすることができる。また、液晶性化合物(i)の割合を50重量%以上とすることにより、高い液晶性を維持し、所望の光学的性能を得ることができる。化合物(ii)は、液晶性を有していてもよく、有していなくても良いが、液晶性を有することが好ましい。
【0051】
前記化合物(ii)としては、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができる:
1−A1−B−A2−R2 (2)
【0052】
一般式(2)において、R1及びR2の一方は重合性官能基であり、それぞれ独立して(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。他方は非重合性官能基であり、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、及びシアノ基からなる群より選択される基である。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの意味である。
【0053】
前記アルキル基及びアルキレンオキサイド基は置換されていないか若しくはハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい。前記ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基は炭素原子数1〜2個のアルキル基、アルキレンオキサイド基と結合していてもよい。
【0054】
一般式(2)において、A1及びA2はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基を表す。前記1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基は、置換されていないか若しくはハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜10個のアルキル基、ハロゲン化アルキル基で1つ以上置換されていてもよい。A1及びA2のそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0055】
1及びA2として特に好ましいものとしては、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基が挙げられる。これらの芳香環骨格は脂環式骨格と比較して比較的剛直であり、上記棒状液晶性化合物のメソゲンとの親和性が高く、配向均一能がより高くなる。
【0056】
一般式(2)において、Bは単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−C=N−N=C−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−からなる群より選択される。
【0057】
Bとして特に好ましいものとしては、単結合、−OCO−、−C=N−N=C−が挙げられる。
【0058】
一般式(2)の化合物は、液晶性を有することが好ましい。一般式(2)の化合物は、その融点が、50℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
【0059】
1−2−4.カイラル剤
前記コレステリック液晶性組成物は、重合性官能基を1分子あたり1つ以上、好ましくは1つ以上3つ以下備えたカイラル剤を含む。当該重合性官能基としては、液晶性化合物(i)及び化合物(ii)について例示した重合性官能基と同様のものとすることができる。
【0060】
前記カイラル剤の分子量は、600〜1200、好ましくは800〜1000とすることができる。カイラル剤の波長350〜400nmにおける平均モル吸光係数は、特に限定されないが、好ましくは、0〜500M-1cm-1、より好ましくは10〜250M-1cm-1とすることができる。
【0061】
前記カイラル剤は、そのヘリカルツイスティングパワー(HTP)が、25℃において9.0以上であることが好ましい。HTPは、さらに好ましくは30.0以上とすることができる。ここで、HTPは、下記式(3):
HTP=1/(P×0.01C) …式(3)
により求められる。式中、Cは重合の際の光重合開始剤および光重合性液晶化合物を含む光重合性組成物中のカイラル剤の含有割合(重量%)を表し、Pは前記光重合性組成物中の前記ネマチック液晶性化合物のピッチ長(nm)を表す。ここで、液晶性化合物のピッチ長Pは、選択反射中心波長λ、及び光重合性組成物を基材フィルム上に塗布し得られた液晶層の平均屈折率nから、λ=n×Pの関係式より求めることができる。選択反射中心波長を測定する方法は特に限定されないが、具体的には例えば、分光光度計(例えば大塚電子社製、瞬間マルチ測光システムMCPD−3000)と顕微鏡(例えばニコン社製、偏光顕微鏡ECLIPSE E600−POL)を使用して測定することができる。また、屈折率nの測定方法も特に限定されないが、具体的には例えば、プリズムカプラやアッベ屈折率計を使用したり、または選択反射波長を測定する際に、コレステリック液晶層に対する入射角が大きくなると選択反射波長が短波長側へ選択反射帯域がシフトする性質を利用して、以下の関係式(4)より求めることができる。
【0062】
λ=λn×cos〔sin-1(sinφ/n)〕 …式(4)
式(4)中、φは入射角、λnはφ=0の時の選択反射中心波長を表す。HTPが高いカイラル剤を用いることにより、液晶性化合物の液晶性を損なうことなく液晶性化合物のピッチを縮め捩れを高めることができ、さらに後述する温度依存性パラメータを容易に調整することができる。
【0063】
前記カイラル剤の具体例としては、特開2005−289881号公報、特開2004−115414号公報、特開2003−66214号公報、特開2003-313187号公報、特開2003−342219号公報、特開2000−290315号公報、特開平6−072962号公報、米国特許第6468444号公報、WO98/00428号公報、特開2007−176870号公報、等に掲載されるものを適宜使用することができ、例えばBASF社パリオカラーのLC756として入手できる。
【0064】
前記カイラル剤は、所望する光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。前記カイラル剤の含有割合は、前記コレステリック液晶性組成物中、通常1〜60重量%である。
【0065】
1−2−5.任意成分
前記コレステリック液晶性組成物は、前記の必須成分に加えて、以下に述べる任意成分を含むことができる。
【0066】
前記コレステリック液晶性組成物は、硬化後の膜強度向上や耐久性向上のために、任意に架橋剤を含有することができる。当該架橋剤としては、コレステリック液晶性組成物を塗布した塗膜の硬化時に同時に反応したり、硬化後に熱処理を行って反応を促進したり、又は湿気により自然に反応が進行して硬化液晶層の架橋密度を高めることができ、かつ配向均一性を悪化させないものを適宜選択し用いることができ、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。架橋剤の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ) アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;が挙げられる。また、該架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度や耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。
前記架橋剤の配合割合は、コレステリック規則性を有する樹脂層中に0.1〜15重量%となるようにすることが好ましい。該架橋剤の配合割合が0.1重量%より少ないと架橋密度向上の効果が得られず、逆に15重量%より多いと液晶層の安定性を低下させてしまうため好ましくない。
【0067】
前記コレステリック液晶性組成物は、それを基材フィルム上に塗布して得られる塗膜の表面張力を調整し、膜厚を均一にするために、任意に界面活性剤を含むことができる。
当該界面活性剤としては、配向を阻害しないものを適宜選択して使用することができる。当該界面活性剤としては、具体的には、疎水基部分にシロキサン、フッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤が好適に使用でき、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤は、OMNOVA社PolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652、ネオス社フタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D、セイミケミカル社サーフロンのKH−40等を用いることができる。界面活性剤の配合割合はコレステリック規則性を有する樹脂層中0.05重量%〜3重量%となるようにすることが好ましい。該界面活性剤の配合割合が0.05重量%より少ないと空気界面における配向規制力が低下して配向欠陥が生じる場合があるため好ましくない。逆に3重量%より多い場合には、過剰の界面活性剤が液晶分子間に入り込み、配向均一性を低下させる場合があるため好ましくない。
【0068】
前記コレステリック液晶性組成物は、基材フィルム上に形成された樹脂層の空気側表面の配向状態を制御するために、配向調整剤を含むことができる。配向調整剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、あるいはこれらの変性物などが挙げられる。
【0069】
前記コレステリック液晶性組成物は、溶媒を含むことができる。前記溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の具体例としては、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、エーテル類が挙げられる。特に環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が好ましい。また、二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。溶媒の含有割合は、溶媒以外の固形分全量に対する割合として50〜70重量%とすることができる。
【0070】
前記コレステリック液晶性組成物は、さらに他の任意成分として、ポットライフ向上のための重合禁止剤、耐久性向上のための酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を挙げることができる。これらの任意成分は、所望する光学的性能を低下させない範囲で添加できる。
【0071】
本発明のコレステリック液晶性組成物において、前記各成分の組み合わせとしては、特に、下記(イ)〜(ハ)の組み合わせが好ましい:
(イ)化合物(i)として、ネマチック液晶性があり、且つ1分子中2つの重合性官能基を有する化合物
(ロ)化合物(ii)として、液晶性があり、キラリティが無く、且つ1分子中1つの重合性官能基を有する化合物
(ハ)カイラル剤として、キラリティがあり且つ1分子中1以上の重合性官能基を有する化合物
さらに、上記(ハ)において、カイラル剤が非液晶性であるものがさらに好ましい。
【0072】
1−2−6.コレステリック液晶性組成物の物性
前記コレステリック液晶性組成物は、その複屈折Δn値が0.18以上、好ましくは0.22以上であることが望ましい。組成物のΔn値が0.30以上であると、紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。このような高いΔn値を有することにより、高い光学的性能(例えば、円偏光分離特性)を有する円偏光分離シートを与えることができる。Δnはセナルモン法によって測定できる。
前記好ましい複屈折値を有するコレステリック液晶性組成物は、液晶性化合物(i)をネマチック液晶性化合物、特に棒状液晶性化合物(A)から適宜選択することにより得ることができる。
【0073】
上記組成物が2種以上の液晶性化合物(i)を含む場合は、そのΔn値は、各ネマチック液晶化合物のΔn値と各含有比率から求めることができる。
【0074】
1−3.樹脂層
本発明における樹脂層は、前記コレステリック液晶性組成物を重合してなるものであり、コレステリック規則性を有する。コレステリック規則性とは、コレステリック規則性を有する樹脂(以下、コレステリック樹脂という。)層平面の法線方向に進むにしたがって分子軸の角度が次々にずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造はヘリカルな構造と呼ばれる。該平面の法線(ヘリカル軸)は、コレステリック樹脂層の厚み方向に略平行になっていることが好ましい。
【0075】
本発明の円偏光分離シートを構成するコレステリック樹脂層は、選択反射特性を可視光の全波長領域にわたって示すことが好ましい。具体的には、青色(波長410〜470nm)、緑色(波長520〜580nm)、赤色(波長600〜660nm)のいずれの波長域の光についても選択反射特性を示すコレステリック樹脂層であることが好ましい。
【0076】
選択反射特性を示す波長は、コレステリック樹脂におけるヘリカル構造のピッチ(=コレステリック規則性の周期)に依存する。ヘリカル構造のピッチとは、ヘリカル構造において、コレステリック樹脂層平面の法線方向に進むにしたがって、分子軸の方向が少しずつずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでのヘリカル軸方向の距離のことである。このヘリカル構造のピッチの大きさを変えることによって、選択反射特性を示す波長を変えることができる。
従って、本発明の円偏光分離シートにおけるコレステリック規則性は、その周期が厚み方向で段階的に又は連続的に変化するものであることが好ましい。すなわち、ヘリカル構造の法線方向のピッチ長さの平均値が、円偏光分離シートの厚さ方向に増加又は減少していることが好ましい。
【0077】
本発明の円偏光分離シートを構成するコレステリック樹脂層は、1層であってもよいし、2以上の層であってもよい。2以上の層から構成することにより、コレステリック規則性の周期を厚み方向で段階的に又は連続的に変化させることができるので、好ましい。2以上の層から構成する場合には、すべてのコレステリック樹脂層の周期が厚み方向で段階的に又は連続的に変化するものであることが好ましい。そして、2以上の層である場合はそのうちの少なくとも一つの層が、1層である場合はその層が、150nm以上の選択反射帯域幅を有することが好ましい。
【0078】
円偏光分離シートを複数層のコレステリック樹脂層で形成する場合には、例えば、青色の波長域の光で円偏光分離機能を発揮するヘリカル構造のピッチを有するコレステリック樹脂層、緑色の波長域の光で円偏光分離機能を発揮するヘリカル構造のピッチを有するコレステリック樹脂層及び赤色の波長域の光で円偏光分離機能を発揮するヘリカル構造のピッチを有するコレステリック樹脂層を積層する態様、青色〜緑色波長域の光で円偏光分離機能を発揮するヘリカル構造のピッチを有するコレステリック樹脂層及び緑色〜赤色の波長域の光で円偏光分離機能を発揮するヘリカル構造のピッチを有するコレステリック樹脂層を積層する態様などの任意の態様を選択することができる。また、各コレステリック樹脂層は反射する円偏光の回転方向が同じになるように積層することが好ましい。また、各コレステリック樹脂層の積層順序は、ヘリカル構造のピッチの大きさで、昇順又は降順になるようにするのが、視野角の広い液晶表示装置を得るために好ましい。これらコレステリック樹脂層の積層は、単に重ね置いただけでもよいし、粘着剤や接着剤を介して貼り合わせてもよい。
【0079】
コレステリック樹脂層の総厚みdは、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、特に好ましくは7μm以下である。総厚みdが上記厚みよりも小さくなることによって波長による位相変化量の相違が小さくなる。なお、総厚みとは、コレステリック樹脂層が2以上の層である場合は、各層の厚みの合計を、コレステリック樹脂層が1層である場合にはその厚みを指す。
【0080】
本発明の円偏光分離シートを構成するコレステリック樹脂層は、その平均屈折率が1.5〜1.8であることが好ましい。
【0081】
本発明の円偏光分離シートは、例えば、以下に述べる本発明の円偏光分離シートの製造方法によって製造することができる。
【0082】
2.円偏光分離シートの製造方法
本発明の円偏光分離シートの製造方法は、前記基材フィルム上に、前記コレステリック液晶性組成物を塗布して塗膜を得る工程;前記塗膜に、波長350〜400nmの光を0を超え20mW/cm2以下の照度で0.1〜6秒間基材フィルム側から照射して前記コレステリック液晶性組成物を重合させる処理、及び重合させた前記コレステリック液晶性組成物のコレステリック規則性を調整する処理を1回以上行って半硬化膜を得る工程;及び前記半硬化膜をさらに硬化させ、前記コレステリック規則性を有する樹脂層を形成する工程を含む。
【0083】
前記基材フィルム上に前記コレステリック液晶性組成物を塗布し塗膜を得る工程は、公知の方法、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法等により実施することができる。塗布後、必要に応じて塗布面を乾燥することにより、塗膜を得ることができる。
【0084】
前記塗膜に波長350〜400nmの光を照射し前記コレステリック液晶性組成物を重合させる処理は、当該波長域を含むより広い波長域の光を照射して行ってもよいが、光源からの光をバンドパスフィルターに透過させる等することにより、波長350〜400nmの光を選択的に多く含む光を照射することが好ましい。特に、前記液晶性化合物(i)のΔnが0.18以上のとき、該液晶性化合物(i)の紫外線の吸収端が350nm付近まで伸びてくるため、液晶性化合物(i)による吸収の小さい、波長350〜400nmの光を選択的に照射することが好ましい。この波長域を含む光を照射することによって、塗膜の厚み方向全体に渡って効率的に光重合開始剤による光重合性液晶化合物の重合が開始される。
【0085】
前記照射処理において、波長350〜400nmの光の照射は、0を超え20mW/cm2以下の照度で0.1〜6秒間、好ましくは0.1〜5秒間、より好ましくは0.1〜3秒間、基材フィルム側から行う。前記照射の工程においては、円偏光分離シートの選択反射帯域の幅を広くするために、照度および照射時間を前記範囲内で適宜調整し、光重合性液晶化合物の重合転化率が100%にならない程度の照射量で光を照射することが好ましい。光重合性液晶化合物の重合転化率が100%になるまでの紫外線照射量は、光重合性液晶化合物の種類によって異なるが、重合転化率が100%になるまでの照射量は、波長350〜400nmの光照射量の合計で、通常、200〜1500mJ/cm2である。
【0086】
重合させた前記コレステリック液晶性組成物のコレステリック規則性を調整する処理は、例えば、液晶相を示す温度範囲内で加熱する方法、光重合した状態の塗膜にさらに光重合性液晶化合物を含む組成物を塗布し、さらに光重合する方法;光重合した塗膜に非液晶性化合物を塗布する方法が挙げられる。これらのうち液晶相を示す温度範囲内で加熱する方法(加温処理)が好ましい。加温処理における加熱温度は、コレステリック液晶性組成物の種類によって適宜選択でき、通常50〜115℃である。加熱時間は通常0.1〜180秒間、好ましくは0.1〜120秒間、より好ましくは0.1〜90秒間である。
【0087】
本発明では、上記光照射の処理、及びコレステリック規則性を調整する処理を1回以上行ない、半硬化膜を得る。特に、前記光照射及び規則性調整の処理を交互に複数回繰り返すことにより、コレステリック規則性を有する樹脂層のピッチをより大きく変化させた半硬化膜を得ることが可能である。光照射及び規則性調整の条件は反射帯域を調整するために、回数毎にそれぞれ適宜調整することができる。繰り返しの回数に制限はないが、生産性、設備上の観点から2回であることが好ましい。また、1回で長時間照射する方法では重合度が大きくなり分子が動きにくくなるため、コレステリック規則性を有する樹脂層のピッチが変化しにくくなる。
【0088】
本発明の製造方法では、続いて半硬化膜を硬化させる。
硬化方法としては、前記塗膜がコレステリック規則性を有する状態で硬化すれば特に制限されないが、本硬化紫外線を積算光量が10mJ/cm2以上となるように照射することが好ましい。ここで、本硬化紫外線とは、塗膜を完全に硬化させることのできる波長範囲もしくは照度に設定した紫外線を意味する。
【0089】
本硬化紫外線の積算光量は、好ましくは10〜1000mJ/cm2、より好ましくは50〜800mJ/cm2の範囲で選定される。積算光量は基材面において、紫外線光量計を使用して測定、または照度計を使用して照度を測定し、積算光量=照度×時間で算出することにより選定する。照射方向は、塗膜側と基材側のどちらからでも良いが、紫外線の照射効率が良い点から、塗膜側から照射することが好ましい。
【0090】
また、本発明においては、上記本硬化紫外線照射を、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。窒素雰囲気下で行うことにより、酸素による重合阻害の影響を低減することが可能である。本硬化紫外線照射時の酸素濃度は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、特に好ましくは500ppm以下である。
【0091】
本発明においては、半硬化膜を硬化させる前に冷却する工程を有することが好ましい。20℃〜40℃に維持された光重合性塗膜に上述の本紫外線を照射することにより、コレステリック規則性調整工程後のコレステリック規則性を有する樹脂層のピッチの状態を維持することができる。
【0092】
本発明の製造方法にしたがって、前記コレステリック液晶性組成物の塗膜に紫外線を照射すると、ヘリカル構造のピッチの大きさが厚さ方向に段階的または連続的に変化したコレステリック樹脂層を得ることができる。
紫外線照射でピッチの大きさが段階的または連続的に変化した樹脂層が得られる機構は詳細に判っていないが、つぎのような機構でピッチに傾斜が生じると考えられる。液晶性化合物(i)と、化合物(ii)と、カイラル剤と、光重合開始剤とを含有してなる層に照射された紫外線の受光強度は、層の表面(紫外線照射面)側では強い。層の中では紫外線は光重合開始剤によって吸収されるので層の深さが増すほどに紫外線受光強度が弱くなる。したがって、層の表面(紫外線照射面)から層の深さが増すにつれて重合度の差が生じる。生じた重合体のうち重合度の高い重合体の濃度が層表面側で高くなり、未反応成分として残った液晶化合物(i)及びカイラル剤等の単量体や重合度の低い重合体が拡散して層の反対側へと移動する。最終的に、カイラル剤を含む各単量体の濃度が層の深さ方向で連続的に変化した濃度勾配が形成される。カイラル剤の量はヘリカル構造のピッチの大きさに影響を与える。このようにして、厚み方向に対して段階的または連続的にヘリカル構造のピッチが変化したコレステリック樹脂層を得ることができる。
【0093】
本発明の製造方法によって、1層のコレステリック樹脂層で、可視光領域全体に選択反射特性を示す円偏光分離シートを得ることができるが、必要に応じて、複数層のコレステリック樹脂層で分担して可視光領域全体に選択反射特性を示す円偏光分離シートを得ることができる。円偏光分離シートを複数層のコレステリック樹脂層で形成すると、通常、コレステリック規則性の周期が厚み方向で段階的に変化したコレステリック樹脂層になる。
【0094】
本発明の円偏光分離シートは、反射率が30%以上となる入射角0度の光の最大波長が好ましくは700nm以上、より好ましくは730nm以上である。また、反射率が30%以上となる入射角60度の光の最大波長が好ましくは570nm以上、より好ましくは600nm以上である。これら最大波長が前記範囲になっていることによって、斜めから観察したときの表示の着色を無くすことができる。
【0095】
3.本発明の液晶表示装置
本発明の円偏光分離シートを、偏光子A、液晶セル、及び偏光子Bを少なくとも有する液晶表示装置に、1/4波長板と組み合わせて取り付け、偏光子A、液晶セル、偏光子B、1/4波長板、本発明の円偏光分離シートの順に配列することによって、液晶表示装置の輝度を向上させることができる。
【0096】
本発明に用いる偏光子A及びBは液晶表示装置等に用いられている公知の偏光子である。本発明に用いる偏光子は互いに直角に交わる二つの直線偏光の一方を透過するものである。例えば、ポリビニルアルコールフィルムやエチレン酢酸ビニル部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料などの二色性物質を吸着させて一軸延伸させたもの、前記親水性高分子フィルムを一軸延伸して二色性物質を吸着させたもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルムなどが挙げられる。その他に、グリッド偏光子、多層偏光子などの偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。これらのうちポリビニルアルコールを含有する直線偏光子が好ましい。
【0097】
本発明に用いる偏光子の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の平均厚みは好ましくは5〜80μmである。
偏光子Aの偏光透過軸と偏光子Bの偏光透過軸とは、通常、直角になるように、液晶セルを挟むようにして配置する。偏光子は吸湿によって偏光性能が変化することがある。これを防ぐために保護フィルムが偏光子AまたはBの両面に通常貼り合わせてある。
【0098】
液晶セルは、数μmのギャップを隔てて対向する透明電極を設けた2枚のガラス基板の間に液晶物質を充填し、この電極に電圧を掛けて液晶の配向状態を変化させてここを通過する光の量を制御するものである。
液晶物質の配向状態を変化させる方式(動作モード)などによって、液晶セルは分類され、例えば、TN(Twisted Nematic)型液晶セル、STN(Super Twisted Nematic)型液晶セル、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型液晶セル、IPS(In Plane Switching)型液晶セル、VA(Vertical Alignment)型液晶セル、MVA(Multiple Vertical Alignment)型液晶セル、OCB(Optical Compensated Bend)型液晶セルなどが挙げられる。
【0099】
本発明に用いる1/4波長板は、入射光に対して1/4波長の位相差を与えるものである。位相差は入射光の波長によって生じかたが異なるので、通常、可視光線の中心波長、例えば550nm付近において1/4波長の位相差を与えるものを1/4波長板と称している。
【0100】
本発明においては、広帯域1/4波長板を用いることができる。広帯域1/4波長板とは、波長410〜660nmを含む可視光領域のどの波長でもほぼ1/4波長の位相差を与えるものである。ほぼ1/4とは、0.15〜0.40、好ましくは0.18〜0.36、より好ましくは0.20〜0.30の範囲であることを意味する。
【0101】
さらに、1/4波長板として、位相補償機能を有するものを用いることができる。位相補償機能を有する1/4波長板とは、550nm付近において、1/4波長の位相差を与えるものであるとともに、0nm未満、好ましくは−2000〜−10nmの厚み方向のレターデーションRth(=((nx+ny)/2-nz)×d);nx,nyは面内主屈折率、nzは法線方向の主屈折率、dは厚さ)を与えるものである。
【0102】
広帯域1/4波長板として、例えば、波長550nm付近において1/2波長の位相差を与える1/2波長板と、550nm付近において1/4波長の位相差を与える1/4波長板を積層したもの;正の固有複屈折値を有する材料からなるD層と、負の固有複屈折値を有する樹脂からなるE層とを有し、前記D層とE層が同一方向に分子配向したものが挙げられる。また、市販されている広帯域位相差フィルムWRF(帝人社製)等を用いることができる。
【0103】
本発明の液晶表示装置では、円偏光分離シートは、1/4波長板や偏光子Bと一体になっていてもよい。一体とする方法は特に制限されない。円偏光分離シートと、1/4波長板や偏光子Bとを、粘着剤や接着剤を用いて貼り合わせればよい。なお、偏光子Bの偏光透過軸は、1/4波長板から出射される直線偏光の方向と略平行になるように配置する。偏光透過軸と直線偏光の方向とがなす角度が略平行であるとは、その角度が0〜3°の角度であることを意味する。
【0104】
本発明の液晶表示装置では、1/4波長板に前述のような位相補償機能が付与されていない場合は、さらに、面内のレターデーションを実質的に有さず、かつ、厚み方向のレターデーションRth(Rth={(nx+ny)/2-nz}×d:式中、nx、nyは面内方向の主屈折率を表し、nzは厚み方向の主屈折率を表し、dは膜厚を表す。)が、−20nm〜−1000nm、好ましくは−50nm〜−500nmの範囲にある位相補償素子を本発明の円偏光分離シートと1/4波長板との間に備えていることが好ましい。この際、位相補償素子と1/4波長板とが一体となっていることが好ましい。
このような範囲のRthを有する位相補償素子は、1/4波長板に斜めから入射する光の位相差を補償する機能を有する。
【0105】
この位相補償素子は、主屈折率nx、ny及びnzが、nz>nx、nz>ny、及びnx≒nyの関係を満たすことが必要である。なお、この主屈折率は、自動複屈折計[例えば、王子計測器(株)製「KOBRAシリーズ」等]により測定することができる。なお、nx≒nyとは、屈折率差が、通常0.0002以内、好ましくは0.0001以内、より好ましくは0.00005以内のことである。
【0106】
また、この位相補償素子の、面内方向のレターデーションRe(Re=(nx-ny)×d:nx、ny及びdは前記と同じ意味を表す。)は、通常20nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下である。
このような光学特性を有する位相補償素子は、負の固有複屈折値を有する材料の層を含むフィルムを延伸配向させることによって得ることができる。
【0107】
図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す図である。図2に示すように、反射板20、冷陰極管19、拡散板18、プリズムシート(図示せず)、基材16上に形成されたコレステリック樹脂層17からなる円偏光分離シート21、位相補償素子15、1/4波長板14、偏光子B 13、液晶セル12、偏光子A 11の順に配置されている。そして、基材16、コレステリック樹脂層17、位相補償素子15,1/4波長板14は一体となっている。光源からの光には右偏光と左偏光とが含まれている。その光が円偏光分離シート21に入射すると、一方の回転方向の円偏光(図中光の進行方向に向って右回転の円偏光)はそのままの回転方向を維持したまま円偏光分離シート21を透過する。他方の回転方向の円偏光(図中光の進行方向に向って左回転の円偏光)は円偏光分離シートで反射される(反射された円偏光は光の進行方向に向って左回転のままである)。透過した円偏光は1/4波長板により偏光子Bの透過軸と平行な直線偏光に変換される。一方、反射された円偏光は光源の背後に配置された反射板によって反射され、再び円偏光分離シートに入射する。このようにして、光源から出射した光が有効利用され、画面の表示輝度を向上させることができる。
【0108】
なお、前記拡散板は、一般に、粒子状の拡散材が樹脂等のマトリックス中に均一に分散し、それによって光を散乱拡散する機能を有する板として知られているものである。前記プリズムシートは、一般に、散乱等により広く進行方向が広がった光をシート面法線方向に狭める機能を有するシートとして知られているものである。
また、図2において、位相補償機能を有する1/4波長板と円偏光分離シートの間に、拡散シートを介在させてもよい。拡散シートは、一般に、透明フィルムの上に粒子状の拡散材が均一に分散するように積層されたものであり、光を散乱拡散する機能を有するシートとして知られているものである。
【0109】
本発明では、円偏光分離シートの、1/4波長板側の面に、光拡散性を備えていることが好ましい。光拡散性とは、光を散乱拡散する性質のことである。光拡散性を備えさせるために、例えば、円偏光分離シートの表面に、粒子状の拡散材を均一に分散するように積層させる方法、基材に粒子状の拡散材を均一に分散する方法、または前記拡散シートを円偏光分離シートに貼りあわせる方法などが挙げられる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。また、部および%は、特に記載のない限り質量基準である。
【0111】
本実施例で行った評価方法は以下のとおりである。
<反射帯域>
平行化された白色光を、円偏光分離シートに入射角0度で入射させ、分光器(相馬光学社製:S−2600)を用いて反射スペクトルを測定した。選択反射帯域の幅は、最大反射率の半値幅(すなわち最大反射率の1/2となる最大波長と最小波長の差)とした。
<膜厚測定>
ULVAC社製 表面形状測定装置:DEKTAK 6M を用いて測定した。
【0112】
実施例、比較例で用いたバンドパスフィルターの光線透過率を図3に示した。光線透過率が5%以上の領域が350〜400nmにあり、帯域幅が50nmである。
【0113】
実施例、比較例で用いた、脂環式構造を有する樹脂からなるフィルムの300〜400nmの光線透過率を図4に示す。
【0114】
(位相補償機能を有する1/4波長板)
メタクリル酸メチル97.8重量%とアクリル酸メチル2.2重量%とからなるモノマー組成物を、バルク重合法により重合させ、樹脂ペレットを得た。
【0115】
特公昭55−27576号公報の実施例3に準じて、ゴム粒子を製造した。このゴム粒子は、球形3層構造を有し、芯内層が、メタクリル酸メチル及び少量のメタクリル酸アリルの架橋重合体であり、内層が、主成分としてのアクリル酸ブチルとスチレン及び少量のアクリル酸アリルとを架橋共重合させた軟質の弾性共重合体であり、外層が、メタクリル酸メチル及び少量のアクリル酸エチルの硬質重合体である。また、内層の平均粒子径は0.19μmであり、外層をも含めた粒径は0.22μmであった。
【0116】
上記樹脂ペレット70重量部と、上記ゴム粒子30重量部とを混合し、二軸押出機で溶融混練して、メタクリル酸エステル重合体組成物A(ガラス転移温度105℃)を得た。
【0117】
上記メタクリル酸エステル重合体組成物A(b層)、及びスチレン無水マレイン酸共重合体(ガラス転移温度130℃)(a層)を温度280℃で共押出成形することにより、b層/a層/b層の三層構造で、各層が45/70/45(μm)の平均厚みを有する複層フィルムを得た。この複層フィルムを、延伸温度128℃、延伸倍率1.4倍、延伸速度10m/分でテンター一軸延伸し、延伸複層フィルム(位相差補償素子)を得た。さらにこの位相差補償素子の片面を、濡れ指数が56dyne/cmになるようにコロナ放電処理を施した。
【0118】
得られた1/4波長板の波長550nmにおけるレターデーション値は、厚み方向のレターデーションRth=−118nm、面内方向のレターデーションRe=140nmであった。
【0119】
(偏光子(A))
ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させて得られた偏光フィルムの両面に、平均厚み60μmのトリアセチルセルロースフィルムを貼り合わせ一体化させて、偏光子(A)を得た。
【0120】
実施例1
脂環式構造を有する樹脂からなるフィルム(株式会社オプテス製、ゼオノアフィルムZF14−100、厚さ100μm)の片面をコロナ放電し、次いでその面にポリビニルアルコール(クラレ社製、ポバールMP203)の5重量%水溶液を塗布し、100℃で3分間乾燥した後、フェルトのロールでラビングして、配向膜を形成させて、基材を得た。
【0121】
液晶性化合物(i)、化合物(ii)、カイラル剤、光重合開始剤、界面活性剤及び溶媒としての2−ブタノンを、表1に示す割合にて配合し、Δn=0.23のコレステリック液晶性組成物を得た。
この組成物を、前記基材の配向膜を設けた面に塗布し、乾燥させ、厚み5.1μmの塗布膜を形成した。この時、塗布膜の選択波長中心は555nm、選択反射帯域幅は75nmであった。基材面側からバンドパスフィルター(350〜400nm)を透過させた紫外線(水銀キセノンランプ:HOYA製EXECURE3000、200W)を波長350〜400nmの照射量として10mW/cm2で一秒間照射した。その後、100℃のホットプレート上に1分間放置し、次いで紫外線(メタルハライドランプ:GS YUASA社製)を塗布膜形成面側に波長350〜400nmの照度150mW/cm2で5秒間照射して塗布膜を硬化させて、コレステリック樹脂層(厚み5.1μm)を有する円偏光分離シートP1を得た。厚みは、コレステリック液晶性組成物の塗布量を調整することにより制御した。得られた円偏光分離シートP1の選択反射帯域幅は455nmから745nmまでの290nmであった。
照度の測定には、紫外線照度計(オーク製作所製、UV−M03)を用いた。
【0122】
実施例2〜4及び比較例1〜4
コレステリック液晶性組成物の配合割合を表1に示す通り変更した他は実施例1と同様に操作し、円偏光分離シートP2〜P8を得、選択反射帯域幅を測定した。結果を表1に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
表1において、組成は全て重量部を表す。また、表1中の化合物の詳細は下記の通りである:
液晶性化合物(i)−A:350〜400nmにおける平均モル吸光係数987M−1cm−1、Δn0.23
液晶性化合物(i)−B:350〜400nmにおける平均モル吸光係数1011M−1cm−1、Δn0.32
液晶性化合物(i)−C:350〜400nmにおける平均モル吸光係数292M−1cm−1、Δn0.20
化合物(ii)−A:下記式(ii)−Aで表される化合物、350〜400nmにおける平均モル吸光係数17M−1cm−1
化合物(ii)−B:下記式(ii)−Bで表される化合物、350〜400nmにおける平均モル吸光係数504M−1cm−1
化合物(ii)−C:下記式(ii)−Cで表される化合物、350〜400nmにおける平均モル吸光係数774M−1cm−1
化合物(ii)−D:下記式(ii)−Dで表される化合物、350〜400nmにおける平均モル吸光係数1670M−1cm−1
なお、化合物(ii)−Aは非液晶性、化合物(ii)−B〜化合物(ii)Dは液晶性である。
カイラル剤:非液晶性、350〜400nmにおける平均モル吸光係数36M−1cm−1
光重合開始剤X:350〜400nmにおける平均モル吸光係数2600M-1cm-1であり、図1に示すようなモル吸光係数の分布を有する化合物(ADEKA社製、アデカオプトマー1919)
光重合開始剤Y:350〜400nmにおける平均モル吸光係数50M-1cm-1
(チバスペシャルティケミカルズ社製、Irgacure907)
【0125】
【化1】

【0126】
実施例5
光反射板、冷陰極管、拡散板及びプリズムシートからなるバックライトユニットの上に、前記実施例1で得られた円偏光分離シートP1、位相補償機能を有する1/4波長板、偏光子(A)、液晶セル、偏光子(A)の順に載置して、液晶表示装置を得た。この液晶表示装置を白表示させ、そのときの正面方向の輝度(正面輝度)を、視野角測定評価装置(メーカー:Autronic−MELCHERS社製、商品名:ErgoScope)を用いて測定した。正面輝度比は、液晶表示装置の構成に円偏光分離シートがない場合の正面輝度に対する円偏光分離シートがある場合の正面輝度の比である。この液晶表示装置は、斜めから観察しても、正面方向から観察した場合と同じ色合いであり、画面の着色は見られなかった。正面輝度比は1.33であった。
【0127】
実施例6
光反射板、冷陰極管、拡散板及びプリズムシートからなるバックライトユニットの上に、前記実施例2で得られた円偏光分離シートP2、位相補償機能を有する1/4波長板、偏光子(A)、液晶セル、偏光子(A)の順に載置して、液晶表示装置を得た。この液晶表示装置は、斜めから観察しても、正面方向から観察した場合と同じ色合いであり、画面の着色は見られなかった。正面輝度比は1.31であった。
【0128】
実施例7
光反射板、冷陰極管、拡散板及びプリズムシートからなるバックライトユニットの上に、前記実施例3で得られた円偏光分離シートP3、位相補償機能を有する1/4波長板、偏光子(A)、液晶セル、偏光子(A)の順に載置して、液晶表示装置を得た。この液晶表示装置は、斜めから観察しても、正面方向から観察した場合と同じ色合いであり、画面の着色は見られなかった。正面輝度比は1.31であった。
【0129】
実施例8
光反射板、冷陰極管、拡散板及びプリズムシートからなるバックライトユニットの上に、前記実施例4で得られた円偏光分離シートP4、位相補償機能を有する1/4波長板、偏光子(A)、液晶セル、偏光子(A)の順に載置して、液晶表示装置を得た。この液晶表示装置は、斜めから観察しても、正面方向から観察した場合と同じ色合いであり、画面の着色は見られなかった。正面輝度比は1.30であった。
【0130】
比較例5〜8
円偏光分離シートを比較例1〜4で得たP5〜P8に変更した他は、実施例5と同様に操作し、液晶表示装置を得た。これらの液晶表示装置は何れも、正面方向および斜めから観察すると、画面の着色が見られた。なお、比較例5〜8の正面輝度比は、各々、1.12、1.08、1.18及び1.17であった。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に用いられる光重合開始剤のモル吸光係数の分布の一例を示す図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の構成例を示す図である。
【図3】本実施例及び比較例で用いたバンドパスフィルターの光線透過率分布を示す図である。
【図4】本実施例及び比較例で用いた基材フィルムの光線透過率分布を示す図である。
【符号の説明】
【0132】
11:偏光子A
12:液晶セル
13:偏光子B
14:1/4波長板
15:位相補償素子
16:基材
17:コレステリック樹脂層
18:拡散板
19:冷陰極管
20:光反射板
21:円偏光分離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性官能基を1分子あたり2つ備えた分子量が600以上のアキラルな液晶性化合物(i)と、
重合性官能基を1分子あたり1つ以上備えた分子量が600未満でアキラルな化合物(ii)と、
重合性官能基を1分子あたり1つ以上備えたカイラル剤と、
光重合開始剤とを含むコレステリック液晶性組成物を重合してなるコレステリック規則性を有する樹脂層を1層以上有する円偏光分離シートにおいて、
波長350nm〜400nmにおける平均モル吸光係数の大きさが、光重合開始剤>液晶性化合物(i)>化合物(ii)の順であることを特徴とする、円偏光分離シート。
【請求項2】
前記光重合開始剤、前記液晶性化合物(i)、及び前記化合物(ii)の波長350nm〜400nmにおける平均モル吸光係数が、それぞれ2000M−1cm−1以上、800〜1800M−1cm−1、及び700M−1cm−1以下である請求項1に記載の円偏光分離シート。
【請求項3】
前記コレステリック規則性を有する樹脂の層の総厚みが10μm以下である請求項1又は2に記載の円偏光分離シート。
【請求項4】
コレステリック規則性の周期が厚み方向で段階的に又は連続的に変化している請求項1〜3のいずれか1項に記載の円偏光分離シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の円偏光分離シートの製造方法であって、
基材フィルム上に、前記コレステリック液晶性組成物を塗布して塗膜を得る工程、
前記塗膜に、波長350〜400nmの光を0を超え20mW/cm2以下の照度で0.1〜6秒間基材フィルム側から照射して前記コレステリック液晶性組成物を重合させる処理、及び重合させた前記コレステリック液晶性組成物のコレステリック規則性を調整する処理を1回以上行って半硬化膜を得る工程、及び
前記半硬化膜をさらに硬化させ、前記コレステリック規則性を有する樹脂層を形成する工程を含む円偏光分離シートの製造方法。
【請求項6】
偏光子A、液晶セル、偏光子B、1/4波長板及び
請求項1〜4のいずれか1項に記載の円偏光分離シートをこの順に有する液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−58679(P2009−58679A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224741(P2007−224741)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】