説明

円形ないし楕円形の内部流路を有する暖房パネルを含む浮床構造の暖房システム

【課題】 本発明は、円形ないし楕円形の内部流路を有する暖房パネルを含む浮床構造の暖房システムを提供する。
【解決手段】 本発明による暖房パネルは、円形ないし楕円形の内部流路を有するので、従来の六角形の内部流路を有する暖房パネルの問題点である耐圧性の限界を克服し、優れた耐圧性を提供する。また、本発明による浮床構造の暖房システムは、熱効率を向上させ、床の防音及び防振機能を能率よく改善し、さらに、浮床構造物の内部空間に電線や配管などのユーティリティ設備を設けることができるので、暖房システムや、その他のユーティリティ設備の施工と補修を、より容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート自体の内部に内部流路を有する暖房パネル及びそれを含む暖房システムに係り、さらに詳しくは、プレート式暖房パネルの内部に形成された内部流路が円形ないし楕円形である暖房パネルを、浮床構造物に設けて、耐圧性、防音及び断熱機能を改善させた暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、一戸建て、マンションのような住居用建築物に適用される暖房システムは湿式工法であって、コンクリート床にパイプを埋設し、このパイプに温水のような暖房流体を供給して床を加熱する構造が通常に使われる。図13に従来の技術による、湿式オンドル暖房システムの断面を示した。
【0003】
同図によれば、従来の技術による湿式オンドル暖房システム1’は、スラブ26上に形成される断熱層18’、断熱層18’上に形成される気泡コンクリート層16、気泡コンクリート層16上に所定の形態で設けられるパイプ13、及びパイプ13が十分に覆われるように気泡コンクリート層16上に形成されるモルタル層14からなり、このモルタル層14上に仕上げ材22を設けて、建物の床構造が完成される。
【0004】
ここで示した湿式オンドル暖房システム1’は、気泡コンクリート層16内部の空気層によって、スラブ26に伝達される騒音や振動などを吸収し、また、温水供給時にパイプ13の熱がスラブ26方向に伝達されることを抑えてパイプ13の熱損失を減らす。また、気泡コンクリート層16の下部に形成される断熱層18’によって、さらにパイプ13の熱損失を抑える構造を有する。
【0005】
このことにより、前記構造では気泡コンクリート層16の高さを十分に確保することが望ましく、一般的に、断熱層18’は20mm、気泡コンクリート層16は70mm、モルタル層14は30〜40mmの高さがあり、スラブ26上面から最終仕上げ材22までの高さは約120〜130mmとなる。
【0006】
前述した湿式オンドル暖房システムは、構造上、次のような短所がある。
【0007】
第1に、気泡コンクリート層16と断熱層18’は断熱効果に優れず、暖房システムの熱効率が低いという実情である。一例として示した暖房システム構造では、床の表面温度を30℃程度に加熱するために、温水供給装置で約70〜80℃の温水を供給しなければならず、熱損失が大きくエネルギーの節約に不利である。
【0008】
第2に、気泡コンクリート層16だけでは騒音と振動を効率よく遮断できず、防音機能が微弱であり、特にマンションのような住居用建築物に求められる防音レベルを満たせない。
【0009】
第3に、気泡コンクリート層16とモルタル層14が床全体に形成されるため、セメント形成にかかる時間ほど施工期間が延びる。また、パイプ13に漏水のような異常が発生した場合、パイプ13を補修するためにはモルタル層14を破壊しなければならず、暖房システムの補修が難しくなるのみならず補修費用も高くつく。
【0010】
前記湿式暖房システムの問題点を解決すべく開発された乾式暖房パネルは、コンクリート、合成樹脂、黄土のような材質のパネルに温水パイプを内蔵あるいは挿入するための凹溝または固定部材を備えており、組立式暖房システムであって、予め作製された乾式パネルを現場で簡単に組立、施工できるので工期が短縮され、補修の点で改善されたという長所がある。しかし、前記乾式暖房パネルは、温水パイプが設けられた部位に輻射熱が集中し、線発熱であることから温度偏差がひどく発生して、暖房効率面で非効率的である。また、金属または合成樹脂製の配管自体が高価である。さらに、配管による熱損失が発生し、また配管表面に結露現象が発生してパネルが湿潤化するという問題点がある。
【0011】
前記温水パイプ型乾式暖房パネルの問題点を解決すべく開発されたプレート自体の内部に暖房流体が流れる内部流路を有するプレート式暖房パネルが、米国特許第5,080,166号及び韓国公開特許第2002−95733号に開示されている。これらの内部流路型暖房パネルは、線発熱であるパイプ型暖房パネルに比べて暖房流体が局部的ではなくパネル全体に分布して流れる面発熱なので暖房効率が極めて高く、よって燃料費が節減できる。また、パイプが要らないため、複雑な配管作業を要せず配管費用が節減され、さらに、配管による熱損失及び結露現象がなく、また、パネルの軽量化が実現され、施工と補修が極めて容易になるという長所がある。
【0012】
しかし、図2に示したように、従来のプレート式内部流路型暖房パネル2’は内部流路12’の形状が六角形なので角立った角部が脆弱であるという短所がある。さらに、個別暖房の場合は暖房流体の最大水圧は3.5kgf/cmを越えないが、中央暖房及び地域暖房の場合は暖房流体の最大水圧が約6〜7kgf/cmに至り、地域及び層高によっては局部的にこれより高い場合もある。従って、中央暖房あるいは地域暖房に内部流路型暖房パネルを設けようとする場合は、前記水圧条件下で変形や漏水がないよう暖房パネルの耐圧性能を考慮しなければならない。
【0013】
日本国実開昭51−69458号には床を構成する十分な強度を有する断熱材床パネルの表面にジグザグ状の溝を形成し、このジグザグ溝内に暖房用温水配管を埋め込み、該断熱材床パネル上に、このジグザグ温水配管の周面に密着させて放熱用金属板を載置固定させた温水利用床暖房式パネルが開示されているが、前記パネルは前述したように線発熱構造であることから熱効率が不良で、浮床構造は二重床ではあるが防音/防振層の不在によって防音性能に劣る。
【0014】
韓国公開特許第1995−6363号には内部温水路を有する組立式オンドル板が開示されているが、前記オンドル板の内部温水路はその断面が六角形なので、前述したように耐圧性において脆弱であるという短所がある。
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,080,166号
【特許文献2】韓国公開特許第2002−95733号
【特許文献3】日本国実開昭51−69458号
【特許文献4】韓国公開特許第1995−6363号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は前述した従来の技術の問題点を解決するために案出されたもので、その目的は、内部流路を有するプレート式暖房パネルにおいて、内部流路を円形ないし楕円形化して耐圧性を向上させた暖房パネルを提供することである。
【0017】
本発明のその他の目的は、前記円形ないし楕円形の内部流路を有する暖房パネルを用いて、湿式オンドル暖房システムにおける気泡コンクリート層やモルタル層のようなセメント層なしに乾式暖房システムを構成することによって、暖房システムの施工と補修を容易にし、且つ、断熱機能を強化して暖房システムの熱効率を向上させ、さらに防音と防振効果が改善された暖房システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述した目的を達成するため、本発明は、暖房流体が流れる内部流路を有するように向かい合って一体に成形された上下部プレート、いずれか一つのプレートからもう一つのプレートに向かって上下対称に延びて上下部プレートを連結する多数の接合部材、前記の多数の接合部材によってプレート自体の内部に形成された内部流路、及び暖房流体の供給と排出がなされる二つの流体連結部を備える暖房パネルにおいて、
前記接合部材の上下向かい合う両側面が上下部プレートから中央に向かって狭まるよう傾斜して延び、その上下部プレートから上下部接合部材が延び始める部分が円形ないし楕円形の曲線をなすことにより、円形ないし楕円形の内部流路を有する暖房パネルを提供する。
【0019】
本発明の望ましい実施の形態による暖房パネルは、前記上下部プレートを連結している接合部分である接合部材の底面部から中心部位を除いたエッジ部であり、そこから前記上下部プレートに向かって上下部接合部材がさらに延び始める部分に、溝が形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の望ましい実施の形態による暖房パネルは、暖房パネルの縁側に存在する内部流路についても円形ないし楕円形化するために、前記暖房パネル同士のパネル間を連結するために設けられた前記上下部プレートの各縁部に突出形に形成されたパネル連結部において、その内部流路と隣接した部位に溝が形成されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、スラブと対向する一面に規則的な内部空間を有しながら前記スラブ上に一定の高さに配置される浮床構造物、
前記浮床構造物上に形成される断熱層、及び、
前記断熱層上に設けられ、暖房流体が流れる内部流路を有するように向かい合って一体に成形された上下部プレートと、いずれか一つのプレートからもう一つのプレートに向かって上下対称に延びて上下部プレートを連結する多数の接合部材と、前記の多数の接合部材によってプレート自体の内部に形成された内部流路と、暖房流体の供給と排出がなされる二つの流体連結部とを備え、前記接合部材の上下向かい合う両側面が上下部プレートから中央に向かって狭まるよう傾斜して延び、その上下部プレートから上下部接合部材が延び始める部分が円形ないし楕円形の曲線をなすことにより、円形ないし楕円形の内部流路を有する暖房パネル
を含む暖房システムを提供する。
【0022】
本発明の暖房システムは、マンションのような住居用建築物に求められる防音水準を満たすよう、望ましくは前記スラブと浮床構造物との間に設けられる防音/防振層をさらに含む。
【0023】
また、本発明による暖房システムは、暖房パネルの熱伝導機能を増大させるよう、望ましくは前記暖房パネルの上部に設置される高い熱伝導率を有する金属プレートをさらに含む。前記金属プレートは、アルミニウムがメッキされた鋼板であることが望ましい。
【0024】
本発明の実施例に係る前記浮床構造物は、前記スラブ上に所定間隔を隔てて配置され所定の高さを有する多数の支持部材、及び該支持部材上に設けられるプレート部材を含む。
【0025】
前記プレート部材及び支持部材は木材よりなるか、あるいは、該プレート部材はシートモルディングコンパウンド(Sheet Molding Compound、SMC)を含む高分子樹脂パネルよりなる。選択的に、前記支持部材が前記プレート部材にネジで螺合されるように構成することができ、これにより前記スラブからプレート部材の高さの調整が可能となる。
【0026】
本発明のその他の実施例に係る前記浮床構造物は、前記スラブと対向する一面に規則的な内部空間を有するスチロフォームプレートよりなる。
【0027】
このように、本発明の暖房システムは、内部空間を有する浮床構造物によって防音及び断熱機能を向上し、金属プレートの採用によって暖房パネルの熱伝導機能を増大し、浮床構造物に形成された内部空間に電線や配管などのユーティリティ設備を設けられることによって暖房システムやその他ユーティリティ設備の補修を容易にするという長所を有する。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明の暖房パネルは、円形ないし楕円形の内部流路を有するので従来の六角形の内部流路を有する暖房パネルの問題点である耐圧性の限界を克服し、耐圧性に優れているため、暖房流体の供給水圧が高い地域暖房及び中央暖房においてもより安定的に適用可能である。
【0029】
また、本発明による浮床構造の暖房システムは、熱効率を向上させ、床の防音及び防振機能を効率よく改善し、さらに浮床構造物の内部空間に電線や配管などのユーティリティ設備を設けることができるので暖房システムやその他ユーティリティ設備の施工と補修をより容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付した図面に基づき本発明の望ましい実施例を詳述する。
【0031】
図1は従来の内部流路を有するプレート式暖房パネルの斜視図であり、図2は図1のA−A線断面図である。暖房パネル2’は暖房流体が流れる内部流路12’を有するように向かい合った上下部プレート4’、6’が一体に成形されたパネルであり、作製と成形が容易になるよう熱可塑性プラスチック素材で作製され、また、暖房流体がより広い面積で建築物の床(壁や天井にも適用可能)と接するよう床について最大限の面積を有する平坦なプレート状に構成されている。
【0032】
前記暖房パネル2’は、図面に示したように、一般的に一対の長辺と短辺を有する長方形構造であるが、暖房システムの施工時における暖房パネル2’の連続配列をより容易にするために、六角形、八角形など多角形の構造にすることも可能である。
【0033】
前記暖房パネル2’のいずれか一つの対角方向に向かい合う二カ所の角には、暖房流体の供給と排出がなされる2個の流体連結部8’が、それぞれ暖房パネル2’と一体に設けられており、該流体連結部8’は別の接続部材を使って別の暖房パネルの流体連結部と連結される。
【0034】
図2は従来のプレート式暖房パネルの内部流路の形状を示した図1のA−A線断面図である。上下部プレート4’、6’は多数の接合部材4a’、6a’と内部流路12’によって定義される。前記接合部材4a’、6a’は、それぞれ、上部プレート4’から下部プレート6’に向かって、または逆に、下部プレート6’から上部プレート4’に向かって上下対称に延びて、上下部プレートを連結する。
【0035】
前記接合部材4a’、6a’は上下部プレート4’、6’を連結及び支持しつつ外力による上下部プレート4’、6’の変形を防止するのみならず、暖房流体が流れる内部流路12’を形成し、かつ暖房流体が暖房パネル2’の特定部分で集中したり停滞せず、全体に均一に分布するよう暖房流体の流れに抵抗を与える役割を果たす。
【0036】
図2に示したように、従来の暖房パネル2’では、上下部接合部材4a’、6a’によって上下部プレート4’、6’の内部に形成された内部流路12’の縦断面が六角形になっている。その鋭く角立った角部が脆弱であるため、供給される暖房流体の水圧が高い場合、脆弱な角部に応力集中現象が発生して、臨界点に達すると、暖房パネル2’に変形や漏水が発生したり破壊される恐れがある。
【0037】
図3〜図5は本発明による暖房パネル2であり、前記の従来の暖房パネル2’の問題点を改善して、内部流路を円形に近く成形することによって、耐圧性を画期的に改善したものである。
【0038】
図3及び図4に示したように、本発明による暖房パネル2は、円形に近い内部流路12を有する。本発明における暖房パネル2は、円形に近い内部流路12を構成するために、 上下部接合部材4a、6aの向かい合う両側面が上下部プレート4、6から中央に向かって狭まるよう傾斜して延び、その上下部プレート4、6から上下部接合部材4a、6aが延び始める箇所(d)が円形に近い曲線をなし、
さらに、上下部プレート4、6を連結している接合部分である接合部材4a、6aの底面部から中心部位(b)を除いた部分であり、そこから上下部プレート4、6に向かって上下部接合部材4a、6aがさらに延び始める部分であるエッジ部(a)に、溝が形成されている。
【0039】
本発明による暖房パネル2を製造するのに用いられる成型方法としては、中空成形(blow molding)、射出成形、圧出成形などが可能であるが、なかでも中空成形法を用いて製造するのが望ましい。中空成形は吹込成形とも呼ばれ、分割金型内に加熱溶融した熱可塑性プラスチック成形材料を注入して加熱軟化した後その内部に空気を吹き込んで中空製品を成形する方法である。
【0040】
本発明において接合部材4a、6aは、図面に示したように、望ましくは横断面が円形であるが、四角形、六角形など多角形構造も可能であり、接合部材4a、6aの立体的形状によって本発明における円形に近い内部流路12を構成する溝構造(a、b、c)や曲線部(d)の立体的形状も相違する。
【0041】
前記接合部材4a、6aは所定の直径と間隔を持って一定したパターンに配置されており、上下部プレート4、6から延びて中央に向かって直径が狭まる円筒形の陥没した陰刻構造をなしている。
【0042】
本発明の暖房パネル2は上下部プレート4、6が一体に成形されたものなので、便宜上、横断面の中央軸を基準にして上下部プレート4、6及び上下部接合部材4a、6aに区分する。また、接合部材4a、6aは上下部プレート4、6から延びたものなので、本発明において接合部材4a、6aの境界は、上下部プレート4、6の上面部の縁部(d)から延び始めて、上下部が接合されている接合部材4a、6aの底面部(b)までと定義する。
【0043】
本発明によって内部流路12の上下部の形状を円形ないし楕円形化するため、上下部プレート4’、6’のように角度が形成されていた従来の暖房パネル2’とは異なり、上下部プレート4、6から延び始める部分(d)を曲面化し、それに対応する内部流路12の上下部の形状を円形ないし楕円形化することを可能にした。
【0044】
図3の立体的構造で示されているように、上下部プレート4、6から接合部材4a、6aが延び始める部分(d)は緩やかな傾斜の曲線をなしているが、上下部接合部材4a、6aの両側面では前記(d)部分より大きい角度に傾斜している。
【0045】
また、本発明によって内部流路12の両側面の形状を円形ないし楕円形化するため、接合部材4a、6aの平坦な底面部(b)における円形のエッジ部(a)に溝を成形することによって、これに対応する内部流路12の両側面の形状を円形ないし楕円形化することを可能にした。
【0046】
前記溝構造は、図3に示したように上から見てわかるとおり、接合部材4a、6aの底面部においてエッジ(a)部分がドーナッツ状の円形溝をなしていることから、相対的に底面部における残りの中央部位(b)が円筒形に突出している。
【0047】
前記(a)部分に形成された溝の内外部直径、深さ、幅、断面形状は、暖房パネル2の構造的、外観的及び機能的安定性を逸脱しない範囲で内部流路12を円形ないし楕円形の構造に成形することができる限り、特に限定されない。
【0048】
また、図5に示した通り、本発明における暖房パネル2は、別の締結部材によってパネル同士を連結できるよう暖房パネル2の4辺の縁に突出形のパネル連結部10が形成されている。該突出形パネル連結部10にも内部流路12と隣接した部位が窪んだ直線形の溝(c)を設けることによって、暖房パネル2の縁側においても内部流路12の円形ないし楕円形化が可能である。
【0049】
前記(c)部分の溝構造は、前記(a)部分の溝構造と対応し(図4)、また、暖房パネル2の枠形状及び構造によって多様である。
【0050】
以上により図3〜図5に示した本発明の望ましい実施の形態を説明してきたが、曲線部(d)だけを適用した場合や、溝構造(a、b、c)だけを適用した場合も可能である。しかし、曲線部(d)と溝構造(a、b、c)の両方を適用した場合において内部流路がより円形に近くなるので、前記両構造を全て適用することが望ましい。
【0051】
本発明の実施の形態において、内部流路を円形に近く作るよう曲線部(d)だけを適用した場合(試験例1)、溝構造(a、b、c)だけを適用した場合(試験例2)、両構造を全て適用した場合(試験例3)の暖房パネルと、従来の六角形の内部流路を有する暖房パネル(比較例)の耐圧性能を測定して比較した。その結果は表1の通りである。
【0052】
【表1】

【0053】
表1から分かるように、本発明によって曲線部(d)だけを適用した場合(試験例1)、及び溝構造(a、b、c)だけを適用した場合(試験例2)において耐圧性が従来のパネルに比べてそれぞれ33%向上した。特に両構造を全て適用した場合(試験例3)の暖房パネルは、従来のパネルに比べて100%、すなわち耐圧性が2倍も向上することが確認できた。
【0054】
図面においては本発明における円形に近い内部流路を有する暖房パネルについてだけ示されているが、本発明の実施の形態によれば完全な円形の内部流路を有する暖房パネルも実質的に可能である。
【0055】
具体的には、接合部材のエッジ溝である(a)部分及びパネル連結部の溝である(c)部分の溝をさらに深く形成し、(d)部分の角度を円形に近くなるよう大きくし、接合部材の間隔を調整することによって、内部流路の真円化が十分可能である。このように内部流路の形状を真円化すれば、暖房パネルの耐圧性が、円形に近い楕円形の内部流路を有する場合より、さらに向上される。
【0056】
図8は本発明の実施例1による暖房システムの断面図である。図に示した暖房システム1において暖房パネル2の下部にはEPS(Expanded Polystyrene)などで作製される断熱層18が形成され、暖房パネル2の熱損失を最小化する。
【0057】
暖房パネル2の上部には金属プレート20と仕上げ材22が設けられる。金属プレート20は高い熱伝導率を有する鉄板、望ましくはアルミニウムがメッキされた鋼板(ALメッキ鋼板)よりなり、その優れた熱伝導特性によって暖房パネル2の熱伝導機能を増大させ暖房効率を高める。また、金属プレート20は暖房パネル2の強度を補って、床に加わる荷重をさらに堅固に支持し、接合部材4a、6aによって凹凸化された暖房パネル2の表面を均一にカバーして仕上げ材22の施工をより容易にする。
【0058】
このように断熱層18と金属プレート20との間に形成される暖房パネル2の構造は熱効率の実験結果、温水供給装置(図示せず)による約40〜50℃の温水供給で床の表面温度を30℃程度に加熱する効果を示し、前述したパイプ式暖房システムと比較して熱効率を向上させる結果が得られた。
【0059】
一方、暖房パネル2と断熱層18を足した高さは実質的に40mm前後であって、約120〜130mmの高さに形成される前述したパイプ式暖房システムと比較して、80〜90mmの高さの余裕空間が得られる。
【0060】
前記の余裕空間を最大限活用するため、本発明の暖房システム1は、前記余裕空間に規則的な内部空間を有する、浮床(floating floor)構造物を提供する。
【実施例1】
【0061】
本発明の実施例1が提供する浮床構造物24は、図8に示したように、スラブ26上に所定間隔を隔てて配置される多数の支持部材28と、該支持部材28上に暖房パネル2と平行に設けられるプレート部材30よりなる。
【0062】
本実施例において前記支持部材28とプレート部材30は木材で構成され、支持部材28とスラブ26との間には一例として防音パッド、ゴムパッキングなどの形態による防音/防振層32が形成され、スラブ26に対する支持部材28の固定を堅固にしつつ床の防音及び防振機能を向上させる。
【0063】
このように、図8に示した暖房システム1は、浮床構造物24が多数の支持部材28の間に内部空間(B)を有し、この内部空間(B)が浮床構造物24上で発生した騒音と振動などを吸収してスラブ26に伝達される量を減らし、また、支持部材28とスラブ26との間に設けられた防音/防振層32が支持部材28を通してスラブ26に伝達される騒音と振動などを効果的に遮断する。
【0064】
さらに、本実施例は、浮床構造物24によって建築物の床の防音と防振機能を向上させるだけではなく、建物の施工時に壁体間に設けられていた電線や配管などのユーティリティ設備を浮床構造物24の内部空間(B)に設けることができるようになるため、コンクリート層を破壊することなく暖房システムやその他ユーティリティ設備の補修を容易に行うことを可能にするという長所を有する。
【実施例2】
【0065】
図9は本発明の実施例2による暖房システムの断面図であり、図10は支持部材とプレート部材の結合状態を説明するための図9の部分拡大図である。
【0066】
本実施例において浮床構造物34はプレート部材36が木材以外にもシートモルディングコンパウンドのような高分子樹脂パネルよりなり、多数の支持部材38はプレート部材36とネジで螺合され、スラブ26からプレート部材36の高さの調整が可能である。
【0067】
支持部材38の外周面にネジ山が形成され、支持部材38と結合するプレート部材36には支持部材38が嵌合できる溝36aが形成され、溝36aの内周縁には支持部材38のネジ山とかみ合うネジ山が形成される。
【0068】
図11は、図9に示した支持部材38とプレート部材36の底面図である。支持部材38の下端には支持部材38の回転を可能にするネジ頭の溝38aが形成され、作業者が床を施工する時、支持部材38を回転させ所望の高さになるようスラブ26とプレート部材36の間隔調整を容易に行なえる。
【実施例3】
【0069】
図12は本発明の実施例3による暖房システムの断面図である。本実施例において浮床構造物はスラブ26と対向する一面に規則的な内部空間(B)を有するスチロフォームプレート40よりなり、このようなスチロフォームプレート40は断熱層18の断熱機能を補強して、前述した実施例の構造に比べて暖房パネル2の熱損失をさらに効率よく減少させる長所を有する。
【0070】
以上、本発明の望ましい実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付した図面の範囲内で様々に変形して実施可能であり、また本発明の範囲に属することは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、プレート自体の内部に内部流路を有する暖房パネル及びそれを含む暖房システムに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、従来の内部流路を有するプレート式暖房パネルの斜視図である。
【図2】図2は、従来のプレート式暖房パネルにおける内部流路の形状を示した図1のA−A線断面図である。
【図3】図3は、本発明による円形に近い内部流路を有する暖房パネルの斜視図である。
【図4】図4は、本発明による暖房パネルにおける円形に近い内部流路の形状を示した断面図である。
【図5】図5は、本発明による暖房パネルにおける突出形パネル連結部の断面図である。
【図6】図6は、従来の内部流路を有するプレート式暖房パネルの平面図写真である。
【図7】図7は、本発明による暖房パネルの平面図写真である。
【図8】図8は、本発明の実施例1による暖房システムの断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施例2による暖房システムの断面図である。
【図10】図10は、支持部材とプレート部材の結合状態を説明するための図9の部分拡大図である。
【図11】図11は、図9に示した支持部材とプレート部材の底面図である。
【図12】図12は、本発明の実施例3による暖房システムの断面図である。
【図13】図13は、従来の技術による湿式オンドル暖房システムの断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1、1’ 暖房システム
2、2’ 暖房パネル
4、4’ 上部プレート
4a、4a’ 上部接合部材
6、6’ 下部プレート
6a、6a’ 下部接合部材
8’ 流体連結部
10 パネル連結部
12、12’ 内部流路
13 パイプ
14 モルタル層
16 気泡コンクリート層
18、18’ 断熱層
20 金属プレート
22 仕上げ材
24、34 浮床構造物
26 スラブ
28、38 支持部材
30、36 プレート部材
32 防音/防振層
36a ネジ溝
38a ネジ頭
40 スチロフォームプレート
a、c 溝
B 内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房流体が流れる内部流路を有するように向かい合って一体に成形された上下部プレート、いずれか一つのプレートからもう一つのプレートに向かって上下対称に延びて上下部プレートを連結する多数の接合部材、前記の多数の接合部材によってプレート自体の内部に形成された内部流路、及び暖房流体の供給と排出がなされる二つの流体連結部を備える暖房パネルにおいて、
前記接合部材の上下向かい合う両側面が上下部プレートから中央に向かって狭まるよう傾斜して延び、その上下部プレートから上下部接合部材が延び始める部分が円形ないし楕円形の曲線をなすことにより、円形ないし楕円形の内部流路を有する暖房パネル。
【請求項2】
前記上下部プレートを連結している接合部分である接合部材の底面部から中心部位を除いたエッジ部であり、そこから前記上下部プレートに向かって上下部接合部材がさらに延び始める部分に、溝が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の暖房パネル。
【請求項3】
前記暖房パネル同士のパネル間を連結するために設けられた前記上下部プレートの各縁部に突出形に形成されたパネル連結部において、その内部流路と隣接した部位に溝が形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の暖房パネル。
【請求項4】
スラブと対向する一面に規則的な内部空間を有しながら前記スラブ上に一定の高さに配置される浮床構造物、
前記浮床構造物上に形成される断熱層、及び、
前記断熱層上に設けられ、暖房流体が流れる内部流路を有するように向かい合って一体に成形された上下部プレートと、いずれか一つのプレートからもう一つのプレートに向かって上下対称に延びて上下部プレートを連結する多数の接合部材と、前記の多数の接合部材によってプレート自体の内部に形成された内部流路と、暖房流体の供給と排出がなされる二つの流体連結部とを備え、前記接合部材の上下向かい合う両側面が上下部プレートから中央に向かって狭まるよう傾斜して延び、その上下部プレートから上下部接合部材が延び始める部分が円形ないし楕円形の曲線をなすことにより、円形ないし楕円形の内部流路を有する暖房パネル
を含む暖房システム。
【請求項5】
前記スラブと浮床構造物との間に設けられる防音/防振層をさらに含む、請求項4に記載の暖房システム。
【請求項6】
前記暖房パネルの上部に設置される高い熱伝導率を有する金属プレートをさらに含む、請求項4に記載の暖房システム。
【請求項7】
前記金属プレートが、アルミニウムがメッキされた鋼板であることを特徴とする、請求項6に記載の暖房システム。
【請求項8】
前記浮床構造物が、前記スラブ上に所定間隔を隔てて配置され所定の高さを有する多数の支持部材と、該支持部材上に設けられるプレート部材を含むことを特徴とする、請求項4に記載の暖房システム。
【請求項9】
前記プレート部材と支持部材が木材よりなることを特徴とする、請求項8に記載の暖房システム。
【請求項10】
前記プレート部材がシートモルディングコンパウンド(Sheet Molding Compound、SMC)を含む高分子樹脂パネルよりなることを特徴とする、請求項8に記載の暖房システム。
【請求項11】
前記支持部材が、前記プレート部材にネジで螺合され、前記スラブからプレート部材の高さの調整が可能であることを特徴とする、請求項8に記載の暖房システム。
【請求項12】
前記浮床構造物が、前記スラブと対向する一面に規則的な内部空間を有するスチロフォームプレートよりなることを特徴とする、請求項4に記載の暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−504929(P2006−504929A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501735(P2005−501735)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001502
【国際公開番号】WO2004/113797
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(596006592)エルジ ケミカル リミテッド (4)
【Fターム(参考)】