説明

円形ワークの把持装置

【課題】 円形ワークの把持装置において、効率よく把持できしかも構造を簡素化する。
【手段】 把持装置10は、4個のフィンガーロッド20、このフィンガーロッド20の把持径を拡縮する際の案内をするガイドプレート21、このガイドプレート21へ対角状に形成されてフィンガーロッド20を対角方向へ案内する4本の対角溝である第1ガイド部22、第1ガイド部22と交わる角度でフィンガーロッド20を案内する一対の第2ガイド部23、この第2ガイド部23を移動させるための一対の可動部材24、この可動部材24を直線的に移動させるための一対のエアーシリンダ25を備える。
可動部材24の移動方向Aに対して第2ガイド部23は45°に傾斜し、可動部材24の移動量よりもフィンガーロッド20の移動量を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の直径を有する円形ワークに対して共通に使用できるようにした把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種直径の円形ワークを把持する把持装置として、把持中心に対し複数の把持爪の径方向の移動量を変化させることができるフレキシブルチャックが知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1に開示されるフレキシブルチャックを円形ワークの把持装置に使用しようとすれば、中心に対し拡径方向に複数の渦巻き状案内溝を点対称に配置した円板状のカム板を設け、この複数の渦巻き状案内溝にそれぞれカムフォロアを係合保持し、一方、径方向へ長く配置されたガイドをカムフォロアの数に対応して複数設け、それぞれにスライドを径方向移動自在に案内させ、各スライドに把持爪を取り付け、さらに各スライドとカムフォロアを係合し、カム板をアクチュエータで回転することが考えられる。
このようにすると、カム板を回転させることにより、各スライダを径方向へ移動させて各把持爪間の距離を変化させることにより直径の異なる種々なワークを把持可能になり、把持爪を円形ワークの直径の大きさによって交換することなく、共通の把持装置で把持することができる。
また、このような把持装置を使用したものとして、例えば円形ワークをベアリングとしてこれを圧入するためのベアリング圧入装置がある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平1−289693号公報
【特許文献2】特開2007−307624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のフレキシブルチャックを用いた場合、渦巻き状案内溝を介してカム板の回転運動(駆動量)を把持爪の径方向における直線移動へ変換しているため、変換効率、すなわち駆動量に対する把持爪の直線移動量の割合を大きくできず、把持爪を所定量直線移動させるためにはカム板をより大きく回転させることが必要になった。そのうえ、把持爪の径方向の移動量を大きくするには、カム板に形成される複数の渦巻き状案内溝の長さを円周方向に延長する必要があり、把持爪の数が多くなると延長した前記案内溝どうしが径方向で重なるため、把持爪の移動量を大きくするには制約がある。したがって駆動量に対する把持爪の移動量を大きくして変換効率を向上させ、かつ十分な移動量を確保できることが望まれている。
また、複数の渦巻き状案内溝を点対称に形成する必要性から高度な加工精度が要求され、かつ複雑な構造になるためコスト高になるので簡単な構造にすることも望まれている。
本願は、このような要請の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため請求項1に記載した発明は、複数の把持ロッドにより円形ワークを把持する把持装置において、
前記把持ロッド(20)を異なる方向に案内する第1ガイド部(22)と第2ガイド部(23)及びこの第2ガイド部(23)を移動させるため一つの直線(A)上を互いに反対側へ進退移動する一対の可動部材(24)を備え、
前記第2ガイド部(23)は一対で設けられ、各別に前記可動部材(24)へ取付けられ、かつ前記一つの直線(A)と直交する他の直線(B)方向へ延びて前記把持ロッド(20)を他の直線(B)方向へ移動自在に支持し、
前記第1ガイド部(22)は前記一つの直線(A)に所定角度をなす斜線(C)に沿って配置し、前記把持ロッド(20)を第1ガイド部(22)へ斜線(C)に沿って移動自在に支持するとともに、前記一つの直線(A)上における前記一対の可動部材(24)間の中心点(O)に対して対称に設けられ、
前記第2ガイド部(23)を前記一つの直線(A)に沿って進退移動させることにより、前記把持ロッド(20)を前記第1ガイド部(22)に沿って斜めに移動させるようにしたことを特徴とする。
【0005】
請求項2に記載の発明は上記請求項1において、前記第1ガイド部(22)は、前記直交する直線(A・B)を挟んで対称に計4個設けられ、前記把持ロッド(20)もこの第1ガイド部(22)に対応して計4個設けられていることを特徴とする。
【0006】
請求項3に記載の発明は上記請求項1において、前記第2ガイド部(23)はガイド溝(23a)を備え、このガイド溝(23a)に前記把持ロッド(20)に設けられたカムフォロア(34)が嵌合していることを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載の発明は上記請求項1〜3のいずれかにおいて、前記第1ガイド部(22)は長穴状のガイド溝(22a)であり、このガイド溝(22a)を前記把持ロッド(20)が貫通するとともに、この把持ロッド(20)の外周部に形成されたフランジ(35)が前記ガイド溝(22a)を跨いで前記ガイドプレート(21)の表面へ摺接することを特徴とする。
【0008】
請求項5に記載の発明は上記請求項1又は2において、前記第1ガイド部(22)における前記斜線(C)と前記一つの直線(A)とのなす角度が45度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、一つの直線(A)を底辺、斜線(C)を斜辺とし、直線(A)と斜線(C)の交点(O)を頂点、斜辺上の一点から一つの直線(A)へ下ろした直線を対辺、とする直角三角形を考えたとき、可動部材を底辺上で移動すると、この可動部材によって斜辺上を移動する把持ロッドの移動量が可動部材の移動量よりも大きくなる。このため駆動量を把持ロッドの移動量に変換するための変換効率が向上し、装置の小型化が可能になる。しかも第1ガイド部は斜めの直線状であるから、構造が簡単になって容易に形成できる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、第1ガイド部を計4個設け、これに対応して把持ロッドも計4個設けたので、各把持ロッドを対角線方向にて移動させることにより、円形ワークを4点で確実に支持できる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、第2ガイド部のガイド溝へ把持ロッドに設けられたカムフォロアを嵌合させたので、把持ロッドをスムーズに移動させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、第1ガイド部がガイド溝であり、このガイド溝を貫通する把持ロッドの外周部に形成したフランジがガイド溝を跨いでガイドプレートの表面へ摺接するので、フランジにより把持ロッドの倒れを防ぎ、円形ワークの把持をより確実にすることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、可動部材の進退方向に沿う一つの直線(A)に対して斜線(C)のなす角度を45度にしたので、可動部材の移動量に対して把持ロッドの移動量を約1.4倍にできる
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて一実施例を説明する。図1はベアリング圧入装置の全体斜視図である。このベアリング圧入装置は、予め各種サイズが用意されたベアリングを選択してベアリング取付部へ圧入するための装置であり、その一部に本願発明に係る円形ワークの把持装置が使用されている。またベアリングが本実施例における円形ワークに相当する。
【0015】
このベアリング圧入装置の略中央には、取付け部材1(例えば車両のエンジンブロック)に形成された各種サイズのベアリング取付け穴2(被圧入部)に対応したサイズのベアリング3を圧入する際に使用される組立部4が配置されている。
【0016】
組立部4の図右側には、各種サイズからなる複数のベアリング3を組立部4に対し供給するベアリング供給部5が配置されており、このベアリング供給部5には、各種サイズのベアリング3の内径を嵌合保持する複数の専用治具を備えたベアリングホルダー6が搬送トレー7上に長手方向に一定間隔で整列位置決めされ、レール8上にスライド自在に載置されている。レール8は組立部4へ延びている。以下、レール8の長さ方向と平行な方向を左右方向X、これと直交する図の上下方向を上下方向Z、X及びZと直交する方向を前後方向Yとする。
【0017】
ベアリング供給部5には、予め取付対象の取付穴2に対して選択されたベアリングホルダー6に対応するベアリング3が把持装置10から供給される。この把持装置10(後述する)は、例えば、ロボットハンドの先端に取付けられ、図示しない各種ベアリングの保管場所からベアリングホルダー6に対応する一つのベアリング3を選択し、これを把持してベアリングホルダー6の上へ搬送し、ベアリングホルダー6の上で解放して、外径側の輪状をなすレース部をベアリングホルダー6の先端周囲へ被せるようになっている。
【0018】
組立部4には、組立台11が設けられ、その上にスライドテーブル12a・12bがX・Y方向へ移動自在に支持されている。各スライドテーブル12a・12bには作業穴13が設けられ、各作業穴13は組立台11の上方に配置されたバックアップ部材14と下方に配置された圧入部材16を結ぶ軸線Lへ選択的に移動されるようになっている。
【0019】
バックアップ部材14の先端にはバックアップロッド15が設けられ、圧入部材16の先端には圧入ロッド17が設けられ、軸線Lはこれらバックアップロッド15と圧入ロッド17の中心を結ぶ線である。
バックアップ部材14は、門型支持枠18の上部横梁にバックアップロッド15を下方に向けて取付けられており、圧入部材16は圧入ロッド17を上方に向くように組立部4に設けられた図示省略の支持部に立設保持されている。
【0020】
このベアリング圧入装置によりベアリングを圧入するには、まず、ベアリング供給部5において、把持装置10により多種類のベアリングが保管されているベアリング保管場所から特定のベアリング3を選択して把持し、このベアリングの内径に対応する外径を有するベアリングホルダー6の上へ移動し、ベアリングホルダー6の上にベアリング3を被せて解放する。把持装置10はベアリングの解放後元のベアリング保管場所へ戻る。
このベアリング3が取付けられたベアリングホルダー6はトレー7と共にレール8上を圧入部材16の上へ移動し、ベアリングホルダー6並びにベアリング3の中心を軸線L上に一致させて停止する。
【0021】
このとき、バックアップロッド15と圧入ロッド17は、それぞれスライドテーブル12a又は12bの上方又は下方へ退避されている。
そこで、、組立部4の図左側に配置されたサイドテーブル9上の置かれた取付け部材1がスライドテーブル12a又は12bの上に載置される。このとき取付け部材1は取付穴2を下向きにした状態で作業穴13と一致させられ、かつ取付穴2の中心が軸線Lと一致するように位置決めされる。
【0022】
続いて、バックアップロッド15を下降移動させて取付け部材1の上面に当接させ、同時に取付け部材1の下方から圧入ロッド17を上昇させる。圧入ロッド17はベアリングホルダー6を押し上げて作業穴13へ入れ、さらにベアリング3を取付穴2へ圧入する。
このとき、取付穴2の反対側をバックアップロッド15で支持するため、圧入ロッド17によるベアリング3の圧入が容易かつ確実に行われる。この圧入後はバックアップロッド15と圧入ロッド17を再び退避させ、トレー7をベアリング供給部5へ戻す。
この一連の工程は、作業者による図示しない操作盤のボタン操作することによりシーケンシャルな動作で行うことができるようになっている。
【0023】
次に、把持装置10に付き詳細に説明する。図2は把持装置を上下反転した状態の斜視図、図3はその展開図、図4は把持装置のガイド溝にそれぞれ係合し中間点に対し開閉移動する把持ロッドを通る図5の4−4断面図であり、図5は図4の5−5断面図である。
【0024】
まず、図2及び3において、把持装置10は、ベアリングの把持部である金属製で丸棒状をなす4個のフィンガーロッド20、このフィンガーロッド20の把持径を拡縮する際の案内をするガイドプレート21、このガイドプレート21へ対角状に形成されてフィンガーロッド20を対角方向へ案内する4本の対角溝である第1ガイド部22、第1ガイド部22と交わる角度でフィンガーロッド20を案内する一対の第2ガイド部23、この第2ガイド部23を移動させるための一対の可動部材24、この可動部材24を直線的に移動させるための一対のエアーシリンダ25を備える。一対の可動部材24はそれぞれ同一直線上を互いに反対側へ進退移動する。
【0025】
なお、以下の説明において、可動部材24の移動方向をA方向(横方向)、第2ガイド部23によるフィンガーロッド20の案内方向をB方向(前後方向)、第1ガイド部22の配置方向をC方向(対角方向)ということにする。ABCは同一平面内にあり、AとBは直交し、Cはこれらと傾いて交わり、本実施例ではそれぞれ45°傾いている。
また、一対の可動部材24を結びA方向と平行な直線上において一対の可動部材24の中間点を中心点Oとしたとき、この中心点Oを通りかつABCの各方向と平行な直線をそれぞれ直線A、B、Cという場合もある。さらに直線Cは斜線Cもしくは対角線という場合もある。
【0026】
図3に示すように、4個のフィンガーロッド20はそれぞれ、一端を対応する第1ガイド部22においてガイドプレート24を貫通して図の上方へ突出させる。第1ガイド部22は、A及びB方向からそれぞれ45°をなすようガイドプレート21に中心から90°間隔で対角方向に形成された長穴状をなす4個の斜め溝からなり、中心点Oに対して対称に設けられ、各フィンガーロッド20はこの第1ガイド部22に案内されて斜めに移動する。直線A及びBに対して線対称でもある。また、第1ガイド部22は対角方向へ形成された4本のガイド溝22aで構成されるので、各フィンガーロッド20は互いに対角方向へ移動自在でもある。
【0027】
各フィンガーロッド20の他端はエアーシリンダ25の長さ方向すなわちA方向に対向配置された一対の第2ガイド部23へ嵌合される。第2ガイド部23は図の上方へ開放されらチャンネル溝状をなし、その溝の長さ方向をB方向に一致させている。各第2ガイド部23内へは2個一組のフィンガーロッド20が長さ方向に間隔を持って嵌合され、この嵌合状態で各フィンガーロッド20は第2ガイド部23の長さ方向(B方向)へ移動自在になっている。
【0028】
各第2ガイド部23は取付部材26によりそれぞれ対応する可動部材24の上へボルト止め等の適宜取付手段で取付けられ、可動部材24と一体に移動するようになっている。取付部材26は第2ガイド部23の長さ方向中間部へ一体又は別体に設けられ、第2ガイド部23の長さ方向と直交する方向(A方向)へ舌片状に突出して可動部材24の上に重なるようになっている。
【0029】
各可動部材24は、それぞれ一方のエアーシリンダ25によりA方向へ長く配置されたリニアガイド27に沿って進退自在である。一対のエアーシリンダ25内には図示省略のピストンが互いに逆向き配置され、それぞれ端部のエアー供給ポート25aから供給される圧縮空気により逆方向へ移動し、ラックピニオン機構を介して各可動部材24を互いに逆方向へ移動させ、接近又は離間するよう進退移動させるようになっている。
【0030】
各エアーシリンダ25は相互に連結一体化され、さらにそれぞれの長さ方向両端部上に一対の支柱28が設けられている。各支柱28の先端をガイドプレート21の4隅に形成された穴21aへ通し、図の上方からナット29で締結することにより全体が一体化される。
【0031】
図4に示すように、第2ガイド部23のガイド溝23a内にはフィンガーロッド20の上端部へ回転自在に取付けられているカムフォロア30が嵌合し、ガイド溝23a内を回動自在になっている。カムフォロア30の取付軸31は、第1ガイド部22のガイド溝22a内に入っているフィンガーロッド20の上端部に設けられた小径部32の軸心部へネジ止めされている。小径部32の周囲にはローラー33が取付けられ、第1ガイド部22のガイド溝22a内壁へ回動自在に接触している。ローラー33はガイドプレート21の上面へガイド溝22aを跨いで重なる摺動座金34と、ガイドプレート21の下面へガイド溝22aを跨いで摺動自在に重なるフィンガーロッド20のフランジ35で挟まれて抜け止めされている。フランジ35はフィンガーロッド20の外周部へ一体に形成されるが、別体に形成して溶接等で一体化してもよい。
【0032】
このようにすると、ローラー33により第1ガイド部22のガイド溝22a内をフィンガーロッド20がスムーズに移動可能になるとともに、上下の摺動座金34とフランジ35でガイドプレート21へ摺接するので、フィンガーロッド20をガイドプレート21に対して垂直状態を保ちながら移動させることができる。このためベアリングを把持する際に偏荷重が作用しても安定した把持力を得ることができる。
【0033】
左右一対をなす第2ガイド部23は、A方向へ進退し、ガイド溝23aはB方向へ延びる。AB及び第1ガイド部22の中心線と平行するCはそれぞれ中心点Oで交わる。AとCは角度αで交わる。なお本実施例ではα=45°である。
第2ガイド部23がA方向へ進退すると、カムフォロア30も一緒にA方向へ移動しようとするが、カムフォロア30が取付けられているフィンガーロッド20は長さ方向中間部を第1ガイド部22で案内されているため、カムフォロア30はガイド溝23a内をB方向へ移動し、その結果、フィンガーロッド20は第1ガイド部22に案内されて対角方向へ移動し、各フィンガーロッド20に内接する円である把持円36がその直径を変化させて拡縮する。
【0034】
次に、把持円36の拡縮について説明する。図6は各フィンガーロッド20を中心O方向すなわち内方へ移動させた状態(以下、閉じるという)、図7は各フィンガーロッド20を外方へ移動させた状態(以下、開くという)、をそれぞれ示す。
このように把持円36を変化させれば外径の異なるベアリングを把持可能となる。但し、同一サイズのベアリングを把持したり、解放する場合も同様であり、フィンガーロッド20を閉じればベアリングを把持でき、開けばベアリング3が解放される。
【0035】
図6に示されるように、左右一対の可動部材24が互いに接近すると、各第2ガイド部23において、B方向に間隔をもっている一対のカムフォロア30が接近し、一方側(例えば、図の左側)の第2ガイド部23に重なる一組の第1ガイド部22においてそれぞれローラー33がガイド溝22a内を回動してC方向に沿って中心点Oへ向かう。他方側(例えば、図の右側)も同様である。その結果、各フィンガーロッド20は中心Oに向かって対角方向(C方向)に移動し、相互間の距離が縮まって閉じるため、把持円36は縮径して小径のものとなり、小径のベアリング3すなわち小径円形ワーク用の把持状態となる。
【0036】
逆に、図7に示されるように、左右一対の可動部材24が互いに離間させると、各第2ガイド部23において、B方向に間隔をもっている一対のカムフォロア30が離間し、一方側(例えば、図の左側)の第2ガイド部23に重なる一組の第1ガイド部22においてそれぞれローラー33がガイド溝22a内を回動してC方向に沿って中心点Oから遠ざかる外方へ向かう。他方側(例えば、図の右側)も同様である。その結果、各フィンガーロッド20は外方に向かって対角方向(C方向)に移動し、相互間の距離が拡大して開くため、把持円36は拡径して大径のものとなり、大径のベアリング3すなわち大径円形ワーク用の把持状態となる。
【0037】
次に、本実施例の作用を説明する。把持するベアリング3の外径(把持円)のサイズは、品番によって予め決定されているので、この品番をエアーシリンダ25の制御装置(図示省略)に入力すると、制御装置が一対のエアーシリンダ25に対する圧縮空気の供給を制御し、各フィンガーロッド20により入力された品番と対応する把持円を形成する。すなわち図4に示すように、エアーシリンダ25によって可動部材24をA方向に沿って進退させる。このとき中心点Oに向かって可動部材24を接近させれば、図6に示すように、各フィンガーロッド20を閉じ方向に対角移動させて把持円36を縮径させ、小径のベアリング3を把持する状態となる。
一方、一対の可動部材24をA方向に沿って逆方向、すなわち外方へ移動させて離間させれば、図7に示すように、各フィンガーロッド20を開き方向に対角移動させて把持円36を拡径させ、大径のベアリング3を把持する状態となる。
【0038】
このとき、各フィンガーロッド20は、第1ガイド部22内にローラー33が位置し、第2ガイド部23内にカムフォロア30が位置することにより、円滑に移動するとともに均等に移動する。このため、各フィンガーロッド20に周囲を把持されるベアリング3は大小いずれのサイズも確実に把持可能になるとともに、中心位置が一定するため正確に芯出しされる。
【0039】
しかも、可動部材24のA方向における移動量(駆動量)よりもフィンガーロッド20のC方向における移動量を大きくすることができる。
図8をこれを原理的に示す。一つのフィンガーロッド20の位置を頂点Qとし、ここからA方向へ垂線を下ろして交点をPとすれば、三角形状OPQは直角三角形となり、底辺OPはAと平行、対辺PQはBと平行、斜辺QOはCと平行になる。また各辺の長さを底辺がa、対辺がb、斜辺QOがcとする。
【0040】
可動部材24が中心点Oへ向かって底辺OP上を距離aだけ移動すると、フィンガーロッド20は斜辺QO上を中心点Oへ向かって距離cだけ移動し、距離c=a/cosαの関係があり、c>aとなるから、可動部材24の移動距離よりもフィンガーロッド20の移動距離のほうが常に大きくなる。
【0041】
ここで本実施例にあっては、α=45°であるから、a:b:c=1:1:√2である。したがって、フィンガーロッド20の移動量は、可動部材24の移動量に対し√2倍すなわち約1.4倍の拡大した移動量を得ることができる。しかもα=45°の場合は把持するベアリング3の外周を均等間隔で把持できる。但しαの設定は自由である。ちなみに、α=60°とすれば、フィンガーロッド20の移動量は、可動部材24の移動量に対し2倍の拡大した移動量を得ることができる。
【0042】
このため、可動部材24に対する駆動量が小さくても把持円を大きく拡縮できるので、駆動量に対して把持爪であるフィンガーロッド20の移動量を大きくして変換効率を向上させることが可能になり、効率よい把持作業が可能となる。そのうえ、駆動装置(エアシリンダ25)を小型化できるため、全体を小型・軽量化できる。
【0043】
しかも、第1ガイド部22は直線状の単純形状であるため形成が容易であり、把持円を大きくするため第1ガイド部22を外方へ延長させても、他の第1ガイド部22と干渉するようなことは生じないので、大小により大きく異なる種々サイズのベアリング3に対して
【0044】
なお、本願発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、円形ワークはベアリングに限らず、ギヤ、ワッシャ、オイルシール等が種々可能である。
把持ロッドであるフィンガーロッド20は必ずしも丸棒状である必要はなく、種々の非円形断面を採用できる。また素材も金属に限定されない。
また、第1ガイド部22及び第2ガイド部23はガイド溝でなくレール等のガイド部材であってもよい。

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例の把持装置が使用されたベアリング圧入装置の全体斜視図
【図2】実施例の把持装置を下面側から視た斜視図
【図3】図2の状態における把持装置の分解図
【図4】図5の4−4断面図
【図5】図4の5−5断面図
【図6】大径ベアリングを把持する状態を示す図
【図7】小径ベアリングを把持する状態を示す図
【図8】変換効率の原理的説明図
【符号の説明】
【0046】
3…ベアリング(円形ワーク)、10…把持装置、 20…フィンガーロッド(把持ロッド)、 21…ガイドプレート、22:第1ガイド部、23:第2ガイド部、24…可動部材、25:エアシリンダ、30…カムフォロア、 36…把持円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の把持ロッドにより円形ワークを把持する把持装置において、
前記把持ロッド(20)を異なる方向に案内する第1ガイド部(22)と第2ガイド部(23)及びこの第2ガイド部(23)を移動させるため一つの直線(A)上を互いに反対側へ進退移動する一対の可動部材(24)を備え、
前記第2ガイド部(23)は一対で設けられ、各別に前記可動部材(24)へ取付けられ、かつ前記一つの直線(A)と直交する他の直線(B)方向へ延びて前記把持ロッド(20)を他の直線(B)方向へ移動自在に支持し、
前記第1ガイド部(22)は前記一つの直線(A)に所定角度をなす斜線(C)に沿って配置し、前記把持ロッド(20)を第1ガイド部(22)へ斜線(C)に沿って移動自在に支持するとともに、前記一つの直線(A)上における前記一対の可動部材(24)間の中心点(O)に対して対称に設けられ、
前記第2ガイド部(23)を前記一つの直線(A)に沿って進退移動させることにより、前記把持ロッド(20)を前記第1ガイド部(22)に沿って斜めに移動させるようにしたことを特徴とする円形ワークの把持装置。
【請求項2】
前記第1ガイド部(22)は、前記直交する直線(A・B)を挟んで対称に計4個設けられ、前記把持ロッド(20)もこの第1ガイド部(22)に対応して計4個設けられていることを特徴とする請求項1に記載した円形ワークの把持装置。
【請求項3】
前記第2ガイド部(23)はガイド溝(23a)を備え、このガイド溝(23a)に前記把持ロッド(20)に設けられたカムフォロア(34)が嵌合していることを特徴とする請求項1に記載した円形ワークの把持装置。
【請求項4】
前記第1ガイド部(22)は長穴状のガイド溝(22a)であり、このガイド溝(22a)を前記把持ロッド(20)が貫通するとともに、この把持ロッド(20)の外周部に形成されたフランジ(35)が前記ガイド溝(22a)を跨いで前記ガイドプレート(21)の表面へ摺接することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載したベアリング圧入装置。
【請求項5】
前記第1ガイド部(22)における前記斜線(C)と前記一つの直線(A)とのなす角度が45度であることを特徴とする請求項1又は2に記載した円形ワークの把持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate