説明

円柱形状はんだ片

【課題】本発明は、はんだ片と被搭載面との間にフラックスを充分に介在させることが可能なはんだ片を提供することを第1の目的としている。さらに本発明は、この第1の目的に加え、はんだ片を搭載するにあたりはんだ片の搭載率を改善可能なはんだ片を提供することを第2の目的としている。
【解決手段】本発明は、少なくとも一方の端面に凹部を有することを特徴とする略円柱形状はんだ片である。凹部は、はんだ片の端面の外周縁部に形成されていてもよいし、当該端面の中央部に形成されていてもよく、さらに双方に形成されていてもよい。凹部は、はんだ片の両端面にあってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱形状はんだ片に係わる。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やパーソナルコンピュータ等の情報電子機器に対するコンパクト化や多機能化の要請にともない情報機器に組み込まれる電子部品の高密度実装化が望まれている。そして、電子部品の代表的な例である図2(a)・(b)に示す半導体素子71では高密度実装に対応できるよう、その接続端子711に微小なはんだバンプ73を形成したフリップチップ接続が採用されている。
【0003】
上記はんだバンプは、原料となるはんだを接続端子に置き、これをリフローすることにより形成される。そして、原料となるはんだを接続端子面に置く方法としては、はんだペースト印刷法、はんだメッキ法、はんだボール搭載法などがあるが、一定体積のはんだバンプを効率的に形成できるという利点のあるはんだボール搭載法が広く使用されており、本願出願人も下記特許文献1でマスクによる振込方式を用いたボール搭載法について出願している。なお、ボール搭載法としては、振込方式の他に吸着ヘッドを用いた吸着方式が周知である。
【0004】
フリップチップ接続は電子部品の小型化に有利な接続方法であり高密度実装に用いられているが、近年の更なる高密度実装化の要請により接続端子が狭ピッチ化している。ここで、上記はんだボール搭載法において接続端子が狭ピッチ化すると、接続端子に搭載されたはんだボール同士が接近したり接触したりし、隣接した接続端子が短絡し接続不良が生じる恐れがあるという問題がある。また、比較的体積の大きなはんだバンプを形成する場合には、隣接する接続端子間のピッチ距離よりもはんだボールの直径が大きくなるため、はんだボールの搭載そのものが寸法制約上物理的に出来ないという問題がある。
【0005】
上記問題を解消する技術の一例が下記特許文献2〜7に開示されている。特許文献2には柱状はんだを形成したパッケージ基板が、特許文献3には円柱状のバンプを形成した半導体パッケージが開示されており、かかる柱状はんだや円柱状バンプをはんだペースト印刷法により形成する技術が開示されている。また、特許文献4〜7には、線材や棒材の切断により、またははんだシートの打ち抜きにより円柱形状のはんだ片を形成する技術が開示されている。そして、図2(c)に示すように、接続端子711のピッチ距離より直径の小さな円柱形状はんだ片90を、その端面が接続端子711に接するよう搭載すれば上記問題を解消することができる。
【特許文献1】特開2005−101502号公報
【特許文献2】特開平10−256425号公報
【特許文献3】特開平10−163365号公報
【特許文献4】特開昭59−13592号公報
【特許文献5】特開2002−26183号公報
【特許文献6】特開平11−135667号公報
【特許文献7】特開平11−214570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には以下の問題がある。まず第1の問題はフラックスの充填性の問題である。すなわち、図9(a)に示すように、接続端子711には、(1)被搭載面である接続端子711の表面及びはんだ片90の表面に存在する酸化膜をリフロー時に除去する、(2)搭載されたはんだ片90を接続端子711へ仮固定する、ことを目的として円柱形状はんだ片(以下はんだ片と言う場合がある。)の搭載前にフラックスfが塗布されている。ここで、はんだ片90の端面が平坦である場合には、はんだ片90の端面と接続端子711の表面とが密接するため両者の間には間隙が生じ難く、はんだ片90の底部にフラックスfが介在し難い状態となる。そのため、フラックスfは上記機能を発揮できず、例えば上記(1)の観点においては、酸化膜の除去不足により溶融したはんだ片90の濡れ広がりが阻害され所望のはんだバンプ73が形成されなかったり、はんだバンプ73と接続端子711との接合界面に欠陥が形成されるという問題が生じる。また、上記(2)の観点においては、はんだ片90が接続端子711に充分に仮固定されず、搭載工程の後の操作における外力で接続端子711から脱落し、その結果はんだ片90が脱落した接続端子711にははんだバンプ73が形成されないという問題が生じる。
次に、第2の問題は、はんだ片90の端面の外周縁部にエッジが存在することに起因するはんだ片の搭載率の低下に関する問題である。すなわち、例えば振込方式では、図9(b)に示すように、接続端子711に対応して位置決めされた位置決め開口部521にはんだ片90を装入し、位置決め開口部521を通じて接続端子711に搭載する。ここで、はんだ片90の端面が平坦でその外周縁部にエッジ94が存在する場合には、当該エッジ94が位置決め開口部521の内面に突き当たり噛み込むため円滑にはんだ片90が装入されず、その結果はんだ片90が搭載されない接続端子711が生じ、はんだ片90の搭載率が低下するという問題を招来する。また、吸着方式では、図9(c)に示すように、吸着ヘッド60に設けられた貫通孔状の吸着部61に端面を真空吸着したはんだ片90を接続端子711に位置合わせし、真空を破壊することで接続端子711に搭載する。ここで、はんだ片90を真空吸着する際に吸着部61とはんだ片90の軸心とが一致していない場合も多く、図示するように位置ずれした状態で吸着され、その結果外周縁部のエッジ94が吸着部61の吸着口に噛み込んだはんだ片90が発生する。この状態のはんだ片90は真空破壊されても容易に吸着部61から離脱せず、もってはんだ片90が搭載されない接続端子711が生じ、はんだ片90の搭載率が低下するという問題を招来する。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題を鑑みてなされたものであり、はんだ片と被搭載面との間にフラックスを充分に介在させることが可能なはんだ片を提供することを第1の目的としている。さらに本発明は、この第1の目的に加え、はんだ片を搭載するにあたりはんだ片の搭載率を改善可能なはんだ片を提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成する本発明の態様は、少なくとも一方の端面に凹部を有することを特徴とする略円柱形状はんだ片である。
【0009】
かかる態様の発明によれば、はんだ片の凹部を有する端面をフラックスが塗布された被搭載面に載置することにより、当該凹部と被搭載面とで形成される空間にフラックスは充填され、はんだ片と被搭載面との間にはフラックスが充分に介在する。したがって、フラックスの不足に伴い生じる上記第1の問題が解消される。
【0010】
なお、上記態様の発明において、凹部は、はんだ片の端面の外周縁部に形成されていてもよいし、当該端面の中央部に形成されていてもよく、さらに双方に形成されていてもよい。
【0011】
さらに加えて、はんだ片は凹部を他方の端面にも有する、換言すればはんだ片の両端面に凹部を有していることが、はんだ片を被搭載面に搭載するにあたり端面を選択するという操作を不要にするという観点から工業生産上望ましい。
【0012】
さらに、上記第2の目的を達成するためには、はんだ片の端面の外周縁部にはR面が形成されていることが望ましい。このようにはんだ片を構成することで、振込方式のはんだ片搭載工法においてはんだ片の外周縁部がマスクの位置決め開口部の内面に突き当たった場合でも、R面により噛み込みが防止されはんだ片は下方に落下し、位置決め開口部に円滑に装入され、また吸着方式のはんだ片搭載工法において吸着部にエッジによりはんだ片の外周縁部が噛み込むことが防止され、被搭載面に対するはんだ片の搭載率を向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記説明したように、本発明の構成によれば、本発明の第1の目的であるはんだ片と被搭載面との間にフラックスを充分に介在させることが可能なはんだ片を提供すること、加えて、本発明の第2の目的である振込方式を用いてはんだ片を搭載するにあたり搭載率を改善可能なはんだ片を提供するという課題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明について、その実施態様に基づき説明する。なお、本発明は以下で説明する実施態様にのみ限定されず、同一性の範囲の中で適宜改変して実施することが可能であり、また、各実施態様を構成する要素は適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0015】
[第1実施態様]
本発明に係わるはんだ片の第1の実施態様について図1〜5を参照しつつ説明する。ここで、図1は第1態様のはんだ片の構成を示す正面図、図2は図1のはんだ片が搭載される電子部品である半導体素子の構成を説明する図、図3は図1のはんだ片を図2の半導体素子に搭載する搭載装置の正面図、図4は図3の搭載装置を構成するマスクを説明する図、図5は図3の搭載装置の動作によるはんだ片の搭載方法を説明する図である。
【0016】
まず、はんだ片が搭載される半導体素子の構成について図2に基づいて説明する。図2おいて、符号71が半導体素子であり、符号72は半導体素子71が接続端子721へフリップチップ接続される基板である。半導体素子71には、基板72に接続するためのはんだバンプ73がエリアアレイ状に下面に突設されている。そして、はんだバンプ73は、図2(c)に示すように、半導体素子71に設けられた接続端子711の表面(被搭載面)にはんだ片10を搭載し、その後リフローすることにより形成される。なお、以下では、半導体素子71を複数含む半導体ウエハ71aにはんだ片を搭載する場合を例として本発明を具体的に説明するが、本発明の対象は半導体ウエハに限定されることはなく、個々の半導体素子や樹脂製基板の接続端子にはんだ片を搭載する場合にも適用することができる。
【0017】
第1態様に係わるはんだ片の構成を図1(a)〜(c)に示す。図1(a)に示すはんだ片10は略円柱形状をなしており、外周面11、一方の端面12及び他方の端面13とから構成されている。そして、一方の端面12の外周縁部にはR面14が形成されており、端面12の頂部を基準としてはんだ片10の軸心方向に沿い眺めた場合に端面12はその外周縁部に凹部15を有している。ここで、図1(a)のはんだ片10では、はんだ片10を接続端子711に搭載する際に端面の選択操作を不要にするため、他方の端面13にも同様にR面16が形成されており、端面13の外周縁部にも凹部17を有するよう構成してあるが、本発明の第1の目的を達成するためには凹部は少なくとも一方の端面12のみに形成してあればよい。
【0018】
図1(b)・(c)は、図1(a)のはんだ片の変形例としてのはんだ片20・30を示したものである。図1(b)のはんだ片20は、一方の端面22及び他方の端面23ともに全て曲面24・26で構成された例である。このはんだ片20も、端面22・23の頂部を基準としてはんだ片20の軸心方向に沿い眺めた場合に端面22・23はその外周縁部に凹部25・27を有していることとなる。さらに、図1(c)のはんだ片30は、図1(a)のはんだ片10のR面14・16に代え、一方の端面32及び他方の端面33の双方の外周縁部にC面34・36を形成した例であり、端面32・33の頂部を基準としてはんだ片30の軸心方向に沿い眺めた場合に端面32・33はその外周縁部に凹部35・37を有していることとなる。
【0019】
上記はんだ片10を、図2の半導体ウエハ71aに形成された各接続端子711に搭載する搭載装置の一例について図3・4に基づいて説明する。
【0020】
図3に示す搭載装置50において、符号52はマスクである。マスク52は、図4に示すように、半導体ウエハ71aの接続端子711の配列パターンに対応し形成され、更にはんだ片10の直径Φ2よりも僅かに大きな直径Φ1を有する貫通孔状の位置決め開口部521を備えている。そして、マスク52には、接続端子711に塗布されたフラックスfが下面523に付着しないよう、図4(b)に示すように半導体ウエハ71aの表面に接することで間隙gを形成する突起部524が設けられている。
【0021】
ここで、マスク52は、半導体ウエハ71aに対し位置決めした時、接続端子711の表面からマスク22の上面522までの距離tが、はんだ片10の軸心方向の長さLに対し0.8L以上であって1.4L未満となる厚みに形成することが好ましい。すなわち、マスク52の厚みが0.8L未満の場合には、マスク52の上面522に対しはんだ片10の頂部が露出しすぎるため一度位置決め開口部521に充填されたはんだ片10が位置決め開口部521から抜け出やすく、1.4Lより大きい場合は、位置決め開口部521に複数個のはんだ片10が充填されやすいからである。なお、マスク52は一種の治具で繰返して使用されるものであり、金属板、樹脂板、積層品または成膜品などの板状の基材が使用される。そして位置決め開口部521は、基材をレーザ加工やエッチング加工して形成することができる。
【0022】
図3において符号57は振込具である。振込具57はブラシ状となるよう配設された複数のワイヤーを有し、当該複数のワイヤーの先端はマスク52の上面に接触可能に配置され、振込具57はマスク52の上面に対し水平移動可能に構成されている。この振込具57を構成するワイヤーを例えば軟質の樹脂やゴム、紙、金属などを主体とした柔軟性のある素材で形成することで、はんだ片10の変形を防止しつつマスク52の上面522を移動させることができる。なお、振込具57としては、上記ブラシ状の構成のみならず例えばスキージ状の振込具やエアーブラシ等を使用することができる。
【0023】
図3において符号51は半導体ウエハ71aを保持するホルダである。ホルダ51は、ホルダ51の左方に立設した壁部513と、接続端子を上方に向け水平な姿勢で半導体ウエハ71aが装着される挿着凹部512と、挿着凹部512の底面に開口した開口部511aと外部に開口した開口部511bと、開口部511aと511bを連通する流体通路511と、開口部511bにおいて流体通路511に連結し負圧を発生する負圧発生手段を備えている。以上の構成によりホルダ51は、挿着凹部512に半導体ウエハ71aを装着した後に負圧発生手段で負圧を発生することにより、挿着凹部512の底面に半導体ウエハ71aが密着するよう構成されている。
【0024】
図3において符号59はホルダ51を昇降させるホルダ昇降手段である。このホルダ昇降手段59は、半導体ウエハ71aがホルダ51に装着される前には最も下降した状態となることでホルダ51を初期位置に位置決めし、半導体ウエハ71aが装着された後には所定の高さまで上昇した状態となりはんだ片10を半導体ウエハ71aに搭載するためホルダ51を図に示す搭載位置に位置決めするよう構成されている。
【0025】
図3において符号53はマスク52を水平方向に移動させるマスク水平移動手段である。このマスク水平移動手段53は、上記のように半導体ウエハ71aが搭載位置に位置決めされる前は右終端まで後退した状態となることでマスク52を初期位置に位置決めし、半導体ウエハ71aが搭載位置に位置決めされた後には初期位置からマスク52を左方に移動させ、図示するようにマスク52の左側端面を壁部213の右側面に当接させ、図4に示すように位置決め開口部221を接続端子711に対応するようにマスク52を位置決めするよう構成されている。
【0026】
図3において符号54はマスク52の上面にはんだ片10を供給するはんだ片供給手段であり、符号56はマスク52の上面に残存する余剰のはんだ片を除去するはんだ片除去手段である。このはんだ片供給手段54は、マスク52の右側端の上方に配置され、はんだ片10を供給する供給部541を有し、接続端子711の個数よりも多いはんだ片10を定量秤量し、マスク52の上面に供給する。また、はんだ片除去手段56は、マスク52の左側端に配設されはんだ片10を吸引する吸引部561を有し、位置決め開口部521に装入されずマスク52の上面に残存した余剰のはんだ片10を吸引し除去する。
【0027】
上記搭載装置50によるはんだ片10の搭載動作について図3乃至5を参照して説明する。まず、図3に示すように、予めフラックスfが接続端子711の上面に塗布された半導体ウエハ71aをホルダ51にセットする。その後、ホルダ昇降手段59はホルダ51を上昇させ、半導体ウエハ71aを搭載位置へ位置決めする。次いで、マスク水平移動手段53はマスク52を搭載位置へ移動させ、図5(a)に示すように、半導体ウエハ71aに対しマスク52を位置合わせする。このとき、水平面内では位置決め開口部521が接続端子711に対応するように、更に鉛直方向においては、突起部が半導体ウエハ71aの表面に突き当てられることでマスク52の下面と接続端子71の上面との間に所定の間隙が形成されるようマスク52は位置合わせされる。
【0028】
はんだ片供給手段54は、上記搭載位置へ位置決めされたマスク52の上面に接続端子711の個数以上のはんだ片10を供給する。次いで、搭載装置50は、図5(b)に示すように、振込具57を水平移動させることでマスク22の上面に供給されたはんだ片10をその複数のワイヤーの先端で捕捉しつつ移動させる。すると、はんだ片10は位置決め開口部521の上方まで移動し、位置決め開口部521に装入され、その端面12を底面にした状態で接続端子711の上面に載置される。
【0029】
ここで、図5(b)においてA部の拡大断面図である図5(c)に示すように、接続端子711の上面に当接する端面12の外周縁部には凹部15が形成されているので、当該凹部15と接続端子711の表面とで形成される空間にはフラックスfが充填される。さらに、図5(b)においてB部で示すように、はんだ片10の外周縁部にはR面14が形成されているので、装入されたはんだ片10の外周縁部が位置決め開口部521の内面に突き当たった場合でも、当該R面14により内面に噛み込まずはんだ片10は位置決め開口部521の中を落下する。
【0030】
次いで、搭載装置50は、位置決め開口部521に装入されなかった残余のはんだ片10をマスク52の左側端まで振込具57で移動させ、はんだ片除去手段56は余剰のはんだ片10を吸引し除去する。次いで、ホルダ昇降手段59はホルダ51を下降させて、図5(d)に示すように、半導体ウエハ71aを初期位置へ位置決めすることで半導体ウエハ71aの上方からマスク52を取外す。以上のようにはんだ片10が搭載された半導体ウエハ71aをリフローすれば、図5(e)に示すようにはんだバンプ73が形成される。
【0031】
[第2実施態様]
本発明に係わるはんだ片の第2の実施態様について図6を参照しつつ説明する。ここで、図6(a)は第2態様のはんだ片の構成を示す正面図、同図(b)は第2態様のはんだ片が接続端子に搭載された状態を示す図である。
【0032】
第2態様に係わるはんだ片は、図6(a)に示すように略円柱形状をなしており、外周面41、一方の端面42及び他方の端面43とから構成されている。そして、一方の端面42の外周縁部には円環状に凸部44が形成されており、また当該凸部44により端面12の中央部には椀状の凹部45が形成されている。ここで、上記第1態様のはんだ片10〜30と同様な見方をすると、端面42の頂部、すなわち凸部44の頂点を基準としてはんだ片40の軸心方向に沿い眺めた場合に端面42はその中央部に凹部45を有していることとなり。
【0033】
このはんだ片40は、上記搭載装置50を用いることで半導体素子72へ同様に搭載することができ、図6(b)に、その端面42を底面にした状態で接続端子711の上面に載置された状態を示す。同図に示すように、接続端子711の上面に当接する端面42の中央部には凹部45が形成されているので、当該凹部45と接続端子711の表面とで形成される空間にはフラックスfが充填される。
【0034】
上記第1態様及び第2態様のはんだ片は例えば線状に成形されたはんだを所望の長さに切断したり、所定の厚みのはんだシートを円柱状のパンチで打ち抜き略円柱形状のはんだ片素材を形成し、そのはんだ片素材の端面を適宜加工することにより製造することができるが、以下図7及び図8を参照して説明する製造方法によれば好適に第1態様及び第2態様のはんだ片を製造することができる。
【0035】
図7に示すはんだ片製造装置80は、複数個のはんだ球bをバッチ式で一括して圧延して縮径し、はんだ片10を製造する構成となっている。なお、本態様で供給するはんだ球bは、形成すべきはんだ片10とほぼ同一の体積を有するものである。
【0036】
かかる構成のはんだ片製造装置80において、符号81は第1の圧延面811が底面に形成された第1の圧延部である。本態様における第1の圧延部81は例えば金属製の矩形平板状部材であり、第1の圧延面811が水平状態となるよう移動部83の固定手段831に固定されている。そして、第1の圧延面811ははんだ片10が直接接触するので、はんだ片10の外周面の損傷を防止するため平滑な面とされている。
【0037】
符号82は、X軸方向の大きさが第1の圧延部81より大きな金属製の矩形平板状部材である第2の圧延部である。第2の圧延部82は、ベース基板85の上面中央部に設けられている。そして、第2の圧延部82の上面には第2の圧延面821が形成されており、第2の圧延面821は第1の圧延面811と間隙Gを介し対向して平行に配置されている。
【0038】
符号83は、第1の圧延部81をX軸に沿いに水平移動させる移動部である。本態様の移動部83は空気圧やモータを利用したリニアアクチュエーターで構成され、第1の圧延部81の上面に取り付けられる固定手段831と、固定手段831をX軸方向に所定のストロークで駆動する水平駆動手段832とから構成されている。しかるに、第1の圧延部81の水平移動動作は移動部83により位置的及び速度的に制御される。。
【0039】
符号84は、Z軸に沿い第1の圧延面811に対し垂直方向に、移動部83を介して第1の圧延部81を昇降させ、第1の圧延面811と第2の圧延面821との間隙Gを調整する間隙調整部である。本態様の間隙調整部84は、水平駆動手段832の両端が固定される一対の固定手段843a、843bと、ベース基板85の上面であって第2の圧延部82の右側に設けられ固定手段843aをZ軸方向に駆動する垂直駆動手段841と、第2の圧延部82の左側に設けられ垂直駆動手段841の動作に従動する従動手段842とから構成されている。なお、垂直駆動手段841は水平駆動手段832と同様にリニアアクチュエーターで構成されるが、間隙調整部84は間隙Gの大きさを精度良く調整する必要があるので例えばリニアガイド、ボール螺子及びサーボモータとを組み合わせたリニアアクチュエーターなど位置決め制御精度の高いリニアアクチュエーターで構成されている。
【0040】
符号86は、第2の圧延面821にはんだ球bを供給する原料供給部である。原料供給部86は、複数個のはんだ球bを格納可能な格納手段861と、格納手段861に格納された多数のはんだ球bから一定数のはんだ球bを切り出して第2の圧延面821へ分散して供給する供給手段862とを有する。
【0041】
上記はんだ片製造装置80の動作について図8を参照して説明する。まず、供給工程である。はんだ片製造装置80は、図8(a)に示すように、相向かい配置された第1の圧延面811と第2の圧延面821(1対の圧延面)との間隙Gを、間隙調整部84によりはんだ球bの直径よりも大きな寸法g1とする。そして、その状態に設定された間隙Gに原料供給部86から一定数のはんだ球bを供給する。すると、供給されたはんだ球bは第2の圧延面821に載置される。
【0042】
次いで、圧延工程に進む。はんだ片製造装置80は、図8(b)に示すように、不図示の移動部83で第1の圧延部81をX軸方向に沿い所定のストロークで往復移動させるとともに、不図示の間隙調整部84で第1の圧延部81を下降させて間隙Gを減少させる。すると、間隙Gの大きさがはんだ球bの直径と相等しくなったとき、はんだ球bは、第1の圧延面811および第2の圧延面821双方に直接接触して挟まれた状態となる。そして、第1の圧延面811及び第2の圧延面821との速度差により、第1の圧延面811が左へ移動する往動作では図示反時計回り方向の回転力が、第1の圧延面811が右へ移動する復動作では時計回り方向の回転力がはんだ球bに付与される。そして、はんだ片製造装置80は、図8(c)に示すように、第1の圧延面811のX軸方向に沿う往復移動動作を維持してはんだ球bを同方向に転動させつつ、はんだ片10の所望の直径に対応する大きさg2まで更に間隙Gを減少させる。
【0043】
以上の工程により、第1の圧延面811と第2の圧延面821との間ではんだ球bは圧延され縮径されて、所望の直径を有する略円柱形状のはんだ片10が形成される。ここで、上記はんだ球bを圧延し縮径する期間や製造諸元を適宜調整することによりR面14・16が形成され端面12・13の外周縁部に凹部15・17を有するはんだ片10を形成することができる。また、同様にしてはんだ片20又は40も形成することができる。その後、第1の圧延部81の往復移動動作を停止するとともに上昇させ、はんだ片10を取り出す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1態様のはんだ片の構成を示す正面図である。
【図2】図1のはんだ片が搭載される電子部品である半導体素子の構成を説明する図である。
【図3】図1のはんだ片を図2の半導体素子に搭載する搭載装置の正面図である。
【図4】図3の搭載装置を構成するマスクを説明する図である。
【図5】図3の搭載装置の動作によるはんだ片の搭載方法を説明する図である。
【図6】第2態様のはんだ片の構成を示す正面図及び第2態様のはんだ片が接続端子に搭載された状態を示す図である。
【図7】はんだ片製造装置の構成を示す正面図である。
【図8】図7のはんだ片製造装置の動作を説明する図である。
【図9】従来技術の問題を説明する図である。
【符号の説明】
【0045】
10(20〜40) はんだ片
11(21、31、41) 外周面
12(22、32、42) 一方の端面
13(23、33、43) 他方の端面
15(25、35、45) 凹部
17(27、37、47) 凹部
50 はんだ片搭載装置
51 ホルダ
52 マスク
53 マスク水平移動手段
54 はんだ片供給手段
56 はんだ片除去手段
57 振込具
59 ホルダ昇降手段
71 半導体素子
71a 半導体ウエハ
711 接続端子
72 基板
80 はんだ片製造装置
81 第1の圧延部
82 第2の圧延部
83 移動部
84 間隙調整部
85 ベース
86 原料供給部
b はんだ球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の端面に凹部を有することを特徴とする略円柱形状はんだ片。
【請求項2】
前記凹部が前記端面の外周縁部に形成されている請求項1に記載の略円柱形状はんだ片
【請求項3】
前記凹部が前記端面の中央部に形成されている請求項1又は2のいずれかに記載の略円柱形状はんだ片。
【請求項4】
前記凹部を他方の端面にも有する請求項1乃至3のいずれかに記載の略円柱形状はんだ片。
【請求項5】
前記端面の外周縁部にはR面が形成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の略円柱形状はんだ片。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−105021(P2010−105021A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280036(P2008−280036)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】