説明

円筒体の表面検査装置

【課題】筋状凹凸部のうち欠陥となるものだけを検出できる円筒体の表面検査装置を提供する。
【解決手段】本発明は、円筒体Wの上方に配置される照明光源11と、円筒体Wの上方に照明光源11に対応して配置されるビームスプリッター13と、前記ビームスプリッター13の上方に配置される表面状態認識手段2と、を備え、照明光源11から照射される照明光Lが、ビームスプリッター13によって反射されて円筒体表面に同軸落射され、その円筒体表面で反射された反射光Lrがビームスプリッター13を透過して、表面状態認識手段2によって認識されるようにした円筒体の表面検査装置を対象とする。本装置は、照明光源11から照明光Lが、円筒体Wの軸心方向Xの一端側から軸心方向Xと平行に他端側に向けて照射されるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒体の表面状態を検査するようにした円筒体の表面検査装置およびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
感光ドラム用基体等の円筒体では、高い表面精度が要求されるため、表面検査を行って、キズ、凹凸、異物付着、汚れ等の表面欠陥部がある円筒体を排除するようにしている。
【0003】
例えば下記特許文献1に開示される円筒体の表面検査装置は図8に示すように、円筒体Wに対し側方上部に配置された光源101から円筒体Wに向けて照明光Lを照射する一方、その正反射光(反射光画像)Lrをカメラ102で撮像して、その撮像データに基づいて、円筒体1の表面欠陥を検出するようにしている。
【0004】
ところで近年において、検査対象の円筒体Wを構成する感光ドラム用基体として、押出加工によって得られる押出管を引抜加工して製作されるものが多く採用されている。図9に示すように引抜加工によって得られる円筒体Wにおいて、表面に形成される凹凸部等の欠陥となり得る部分は、多くの場合、軸心方向(長さ方向)Xに平行に延びるように筋状に形成される。このような筋状凹部Dや凸部のうち、比較的浅い筋状凹部Daは、欠陥とはならないのに対し、比較的深かったり、周縁にエッジが立ったりしている筋状凹部Dbは、欠陥となり、このような欠陥となる筋状凹部Dbが形成されている場合には、不良品として取り扱うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−140079号
【特許文献2】特開2002−71576号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示す従来の円筒体検査装置においては、以下に説明するように欠陥とならない未欠陥筋状凹部Daと、欠陥となる欠陥筋状凹部Dbを正確に区別できず、例えば円筒体表面に形成される筋状凹部D等の筋状凹凸部を全て検出してしまい、検査精度が低下してしまうという課題があった。
【0007】
すなわち図10に示すように、上記従来の円筒体検査装置においては、円筒体表面における凹部D等の凹凸のない領域では、光源101から照射される照明光Lが円筒体表面で反射されて、その正反射光Lrがカメラ102に取り込まれる一方、凹部D等がある領域では、照明光Lが凹部Dの内周側面に乱反射され、乱反射光Ldはカメラ102によって受光されなくなってしまう。このように正反射光Lrの光量差によって、凹部Dを検出するようにしているため、凹部Dの深さや形状が多少異なっていても、凹部Dであれば全て検出してしまい、未欠陥凹部Daおよび欠陥凹部Dbを正確に区別できす、検査精度が低下してしまうという課題があった。
【0008】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、筋状凹凸部のうち欠陥となるものだけを正確に検出できて、高い検査精度を有する円筒体の表面検査装置およびその関連技術を提供することを目的とする。
【0009】
ところで、反射光によって検査対象物の表面検査を行うものとして、上記特許文献2に示すように同軸落射照明を用いた表面検査方法が周知である。この表面検査方法は、照明光を検査対象物表面に対し同軸落射させて、その反射光画像をカメラで認識して表面欠陥部を検出するものである。この表面検査方法は、検査面に対し垂直に反射された正反射光画像によって表面状態を検出するものであるため、表面状態を精度良く検査することが可能である。
【0010】
そこで本件出願人は、この同軸落射照明を用いて円筒体の表面検査を行う方法を発案した。すなわち図5,6に示すように、円筒体Wの側方上部に光源101を配置するとともに、円筒体Wの上方にハーフミラー103を配置し、さらにハーフミラー103の上方にカメラ102を配置する。そして光源101から照射される照明光Lをハーフミラー103によって反射させて、その反射された照明光Lを円筒体Wに対し垂直上方から同軸落射させる。さらにその照明光Lを円筒体表面で垂直上方に反射させ、その反射光Lrをハーフミラー103に透過させて、カメラ102に取り込むものである。
【0011】
この検査方法によれば図4Aに示すように、浅い筋状凹部D、つまり未欠陥筋状凹部Daの領域では、カメラ102の光軸を逸脱する乱反射光Ldが少ないのに対し、図4Bに示すように深い筋状凹部D、つまり欠陥筋状凹部Dbの領域では、カメラ102の光軸を逸脱する乱反射光Ldが多くなる。従ってカメラ102に取り込まれる受光量の違いによって、未欠陥筋状凹部Daおよび欠陥筋状凹部Dbを区別でき、筋状凹部Dのうち、欠陥のあるものをだけを正確に検出することができる。
【0012】
ところが、本件出願人が綿密な実験および研究を継続していくうちに、この発案技術をもってしても、高い検査精度を確実に得ることが困難であることが判明した。
【0013】
すなわち図7に示すように上記発案技術の円筒体の表面検査装置においては、光源101から照明光Lを円筒体Wに対し側方から、つまり平面視において円筒体Wの軸心方向Xに対し直交する方向から水平に照射するようにしているため、光源101から照射される照明光Lのうち、直接、円筒体Wに到達する直接照明光L1は、欠陥筋状凹部Dbに対し直交する方向から投射される。このためこの直接照明光L1が、欠陥筋状凹部Dbの内周側面によって乱反射され、その乱反射光L1dの一部がカメラ102に取り込まれてしまう。このように欠陥筋状凹部Dbの領域であるにもかかわらず、余計な乱反射光L1dがカメラ102によって認識されてしまい、場合によっては、その欠陥筋状凹部Dbが正常領域であると謝って検出されてしまい、検査精度が低下してしまうという課題を確実に解決することは困難であることが判明した。
【0014】
以上の説明は、筋状凹部を例に挙げて説明したが、筋状凸部の場合でも上記と同様に、余計な乱反射光が不用意にカメラ102に認識されて、検査精度の低下を来してしまうことになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0016】
[1]円筒体の上方に配置される照明光源と、円筒体の上方に前記照明光源に対応して配置されるビームスプリッターと、前記ビームスプリッターの上方に配置される表面状態認識手段と、を備え、前記照明光源から照射される照明光が、前記ビームスプリッターによって反射されて円筒体表面に同軸落射され、その円筒体表面で反射された反射光が前記ビームスプリッターを透過して、前記表面状態認識手段によって認識されるようにした円筒体の表面検査装置であって、
前記照明光源から照明光が、円筒体の軸心方向の一端側から軸心方向と平行に他端側に向けて照射されるようにしたことを特徴とする円筒体の表面検査装置。
【0017】
[2]前記ビームスプリッターが、円筒体の軸心方向の少なくとも一部に配置され、
前記ビームスプリッターで反射される照明光が、円筒体の軸心方向の一部に落射されるようになっている前項1に記載円筒体のの表面検査装置。
【0018】
[3]前記ビームスプリッターが、ハーフミラーによって構成されている前項1または2に記載の円筒体の表面検査装置。
【0019】
[4]円筒体として、引抜加工によって得られたアルミニウムまたはその合金製の引抜管が用いられる前項1〜3のいずれか1項に記載の円筒体の表面検査装置。
【0020】
[5]円筒体として、感光ドラム用基体が用いられる前項1〜4のいずれか1項に記載の円筒体の表面検査装置。
【0021】
[6]照明光源から照射される照明光を、ビームスプリッターによって反射させて円筒体表面に同軸落射させ、その表面で反射させた反射光を前記ビームスプリッターに透過させて、表面状態認識手段によって認識させるようにした円筒体の表面検査方法であって、
前記照明光源から照明光を、円筒体の軸心方向の一端側から軸心方向と平行に他端側に向けて照射するようにしたことを特徴とする円筒体の表面検査方法。
【0022】
[7]円筒体の表面で反射された反射光に基づいて、円筒体の表面状態を検査するようにした円筒体の表面検査装置に用いられる同軸落射照明装置であって、
円筒体の上方に配置される照明光源と、
円筒体の上方に前記照明光源に対応して配置され、前記照明光源から照射される照明光を反射して円筒体表面に同軸落射させ、その円筒体表面で反射された反射光を透過させるビームスプリッターと、を備え、
前記照明光源から照明光が、円筒体の軸心方向の一端側から軸心方向と平行に他端側に向けて照射されるようにしたことを特徴とする同軸落射照明装置。
【0023】
なお本件の[特許請求の範囲]および[課題を解決するための手段]の欄において、「上方」という場合、円筒体の軸心方向に対し直交する方向、または径方向外側という意味で用いられ、重力方向を基準するものではない。
【0024】
ただし後述の[発明を実施するための形態]の欄では、重力方向を基準に方向を説明しており、「上方」と言う場合、垂直方向の上側の意味で用いられている。
【発明の効果】
【0025】
発明[1]の円筒体の表面検査装置によれば、同軸落射照明光の反射光画像によって円筒体表面の状態を認識するものであるため、表面状態を正確に把握でき、検出精度を向上させることができる。さらに照明光を円筒体の一端側から軸心方向に沿って照射するものであるため、軸心方向に沿った筋状凹凸部が存在しようとも、円筒体表面に直接照射される直接照明光の反射光が、不用意に表面状態認識手段に取り込まれるのを防止でき、高い検出精度を確実に維持することができる。
【0026】
発明[2]の円筒体の表面検査装置によれば、照明光源やビームスプリッターのサイズを小さくでき、小型コンパクト化を図ることができる。
【0027】
発明[3]の円筒体の表面検査装置によれば、検査精度をより確実に向上させることができる。
【0028】
発明[4][5]の円筒体の表面検査装置によれば、検査対象物として、当該検査装置に適切なものを用いているため、上記の効果をより一層確実に得ることができる。
【0029】
発明[6]の円筒体の表面検査方法によれば、上記と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
発明[7]の円筒体の表面検査装置に用いられる同軸落射照明装置によれば、上記と同様に、同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1はこの発明の実施形態である円筒体の表面検査装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】図2は実施形態の表面検査装置を概略的に示す側面図である。
【図3】図3は実施形態の表面検査装置における欠陥筋状凹部周辺での直接照明光の反射状況を説明するための斜視図である。
【図4A】図4Aは未欠陥筋状凹部周辺での同軸落射照明光の反射状況を説明するための正面図である。
【図4B】図4Bは欠陥筋状凹部周辺での同軸落射照明光の反射状況を説明するための正面図である。
【図5】図5は発案技術としての円筒体の表面検査装置を概略的に示す斜視図である。
【図6】図6は発案技術の表面検査装置を概略的に示す正面図である。
【図7】図7は発案技術の表面検査装置における欠陥筋状凹部周辺での直接照明光の反射状況を説明するための斜視図である。
【図8】図8は従来の円筒体の表面検査装置を概略的に示す正面図である。
【図9】図9は円筒体をその表面に発生する筋状凹部を誇張して示す斜視図である。
【図10】図10は従来の表面検査装置における筋状凹部周辺での照明光の反射状況を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1,2はこの発明の実施形態である円筒体の表面検査装置を示す図である。両図に示すように、この表面検査装置は、検査対象物(ワーク)としての円筒体Wの表面を検査できるようになっている。
【0033】
円筒体Wは、例えば、電子写真システムを構成する複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機において、感光ドラム、転写ローラ、現像ローラ、その他各部に利用されるものである。
【0034】
このような部材を構成可能な円筒体Wのうち、実施形態では特に、電子写真システムを採用した複写機やプリンタ等における感光ドラム用の素管や基体として用いられる円筒体Wを好適な例として挙げることができる。なお、感光ドラム用基体とは、切削加工や引抜加工等が行われた後の管体であって、感光層の形成前の簡単を言う。また、感光ドラム用基体に感光層を形成した後の管体も、本発明の検査対象たる円筒体Wとして構成することができる。
【0035】
円筒体Wの製造方法としては、押出成形および引抜成形の組み合わせを挙げることができる。なお言うまでもなく本発明においては、円筒体Wの製造方法はこれだけに限定されるものではなく、押出成形、引抜成形、鋳造、鍛造、射出成形、切削加工またはこれらの組み合わせ等、管体を製造できる方法であれば、どのような方法も採用することができる。
【0036】
また円筒体Wの材質は特に限定されるものではなく、各種の金属材料の他、合成樹脂等も適用することができ、例えばアルミニウムおよびアルミニウム合金(1000〜7000系)、銅および銅合金、鋼材、マグネシウムおよびマグネシウム合金を挙げることができる。中でも特にアルミニウム合金製の円筒体Wは、本発明の検査対象として好適である。
【0037】
本実施形態の表面検査装置は、円筒体Wの上方に配置される同軸落射照明装置1と、同軸落射照明装置1の上方に配置されるカメラ2とを基本的な構成要素として備えている。
【0038】
同軸落射照明装置1は、円筒体Wの一端側における軸心方向Xの外側の上方に配置される照明光源11と、照明光源11に対応して円筒体Wの上方に配置され、かつビームスプリッターを構成するハーフミラー13とを備えている。
【0039】
照明光源11は、その発光面12を他端側に向けた状態に配置されており、その発光面12から照射される照明光Lは、円筒体Wの一端側の上部から、ハーフミラー13に向かって円筒体Wの軸心方向Xに対し平行に他端側に向けて投射されるようになっている。
【0040】
ハーフミラー13は、円筒体Wの上方において円筒体Wの軸心方向全域に沿って配置され、かつ一端側が高位で他端側が低位となるように、45°の傾斜姿勢に配置されている。
【0041】
そして照明光源11から照射されてハーフミラー13に向かう照明光Lは、ハーフミラー13により反射されて、円筒体表面に垂直上方から落射されるとともに、円筒体表面に落射された照明光Lは、円筒体表面で垂直上方に反射され、その反射光Lrがハーフミラー13を透過するようになっている。
【0042】
本実施形態において、同軸落射照明装置1の照明光源11は、例えばライン上ないし平面上に配列された複数のLEDや、蛍光灯等、高輝度が得られる発光手段によって構成されている。
【0043】
カメラ2は、ハーフミラー13の垂直上方位置に下向きの姿勢で配置されている。そして円筒体表面で反射してハーフミラー13を透過した反射光Lrがカメラ2に取り込まれるようになっている。
【0044】
本実施形態においてカメラ2は、例えば多数の光量検出要素が円筒体Wの軸心方向Xに沿って一次元的に配列されるラインセンサ等によって構成されている。
【0045】
ここで本実施形態において、ハーフミラー13によって反射されて円筒体Wに落射される照明光Lは、その光軸が反射光Lrの光軸(カメラ2の光軸)に対し一致する、いわゆる同軸落射照明となっている。
【0046】
本実施形態においては、カメラ2が表面状態認識手段を構成するものである。なお表面状態認識手段としては、光量を測定する光量測定手段等も採用することができる。
【0047】
一方図1に示すように、本実施形態の表面検査装置は、カメラ2によって撮像された反射光画像を処理する画像処理部4と、処理された画像やその画像に基づいて判定された検査結果を表示する液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等の検査結果表示部5とを備えている。
【0048】
さらに本実施形態の表面検査装置には、セットされた円筒体Wを軸心回りに回転駆動する図示しない回転駆動手段等が設けられている。
【0049】
また本実施形態においては、所定のプログラムに従って、表面検査装置の動作を制御するコントローラを備えている。このコントローラは、例えばマイクロコンピュータによって構成されており、カメラ2によって取得された画像データを処理する画像処理用プログラムが設定されている。本実施形態においては、その画像処理用プログラムが上記画像処理部4として機能する。
【0050】
またコントローラは、画像処理部4によって処理された画像に基づいて、円筒体Wの表面状態を検査して欠陥部Dbの有無を検出し、その検出結果や、画像処理された欠陥部画像等の円筒体表面の画像を、上記検査結果表示部5に出力表示するようになっている。
【0051】
以上のように構成された本実施形態の表面検査装置において、円筒体Wの表面状態を検査する場合には、円筒体Wを所定位置にセットした状態で、上記コントローラに検査開始指令を与える。これにより円筒体Wが軸心回りに回転駆動するとともに、照明光源11が点灯される。
【0052】
そして照明光源11から照射される照明光Lは、円筒体Wの一端側から軸心方向Xに対し平行に投射されてハーフミラー13で垂直下方に向けて反射される。ハーフミラー13で反射された照明光Lは、円筒体Wの上側部表面に直角に同軸落射されて、その表面で垂直上方に向けて反射される。さらにその反射光Lrがハーフミラー13を透過してカメラ2に取り込まれる。
【0053】
こうしてカメラ2に撮像された撮像円筒体表面の反射光画像が、画像処理部4で処理されて、その処理画像に基づいて、欠陥部の有無が検査される。この欠陥部の有無の判断は、カメラ2によって取得される反射光Lrの光量に基づいて行われる。
【0054】
すなわち円筒体表面のうち、凹部等がなく平坦な領域では、照明光Lの正反射光Lrが多くなり、反射光画像の光量が多くなる。これに対して、凹部等が存在する領域では、照明光Lrの乱反射が多くなって正反射光が少なくなり、反射光画像の光量が少なくなる。従ってこの光量差に基づいて、凹部等の欠陥部を検出するものである。
【0055】
ここで本実施形態においては、筋状凹部Dのうち、欠陥部とならない比較的浅い未欠陥筋状凹部Daと、欠陥部となる比較的深い欠陥筋状凹部Dbとを明確に区別でき、欠陥筋状凹部Dbのみを確実に検出することができる。すなわち図4Aに示すように浅い未欠陥筋状凹部Daの領域では、同軸落射される照明光Lの乱反射光Ldが少なくて正反射光Lrが多くなるのに対し、図4Bに示すように深い欠陥筋状凹部Dbの領域では、照明光L1の乱反射光Ldが多くて正反射光Lrが少なくなる。従って、カメラ2によって取得される筋状凹部Dの反射光画像において、光量が所定値よりも少ない場合には未欠陥筋状凹部Daと判断され、光量が多い場合には欠陥筋状凹部Dbと判断される。これにより欠陥筋状凹部Dbのみを欠陥部として正確に検出することができ、検出精度を向上させることができる。
【0056】
しかも本実施形態の表面検査装置は、上記図5〜7に示す発案技術の表面検査装置のように、直接照明光L1の反射光L1dが、不用意にカメラ2に取り込まれるのを防止できる。
【0057】
すなわち上記図5〜7の発案技術においては既述したように、照明光源101からの直接照明光L1が、円筒体表面上の欠陥筋状凹部Dbに照射された際に、直接照明光L1が欠陥筋状凹部Dbの内周側面で乱反射され、乱反射光L1dが一部がカメラ102に取り込まれてしまい、検出精度を低下させてしまう。
【0058】
これに対し本実施形態の表面検査装置においては、照明光Lを円筒体Wの軸心方向Xの一端側から軸心方向Xに沿って照射するようにしているため、照明光Lが筋状凹部Dの長さ方向に沿って照射される。このため図1,3に示すように、円筒体表面に直接照射される直接照明光L1が欠陥筋状凹部Db等の筋状凹部Dの領域に投射された際に、正反射光L1rおよび乱反射光L1dは共に、円筒体Wの他端側に向かって斜め上方に反射され、反射光L1r,L1dが垂直上方に向かうことがない。従って直接照明光L1の反射光L1r,L1dがカメラ2に取り込まれるのが防止され、カメラ2の実際の受光量が、同軸落射照明光Lの反射光Lrによる受光量と正確に一致し、例えば欠陥筋状凹部Dbを欠陥部として正確に認識でき、検出精度をより一層向上させることができる。
【0059】
なお以上の説明においては、筋状凹部Dに対して欠陥部であるか正常部であるかを判断するようにしているが、言うまでもなく、本実施形態の表面検査装置においては、カメラ2によって撮像される反射光画像に基づいて、筋状凹部以外の欠陥部、例えば筋状以外の凹凸部、キズ、異物付着、汚れ等を検出するようにしている。
【0060】
以上のように、本実施形態の表面検査装置によれば、同軸落射照明光の反射光画像によって円筒体表面の状態を認識するものであるため、表面状態を正確に把握でき、検出精度を向上させることができる。
【0061】
さらに本実施形態においては、照明光源11からの照明光Lを円筒体Wの一端側から軸心方向Xに沿って照射するものであるため、照明光源11から円筒体表面に直接照射される直接照明光L1の反射光が、不用意にもカメラ2に取り込まれることがなく、高い検出精度を維持することができる。
【0062】
また本実施形態の表面検査装置においては、同軸落射照明光L1を検査対象の円筒体Wにおける長さ方向の全域に一度に照射するように構成しているため、円筒体Wの長さ方向全域を一度に検査することができ、検査効率を向上させることができる。
【0063】
また本実施形態の表面検査装置によれば、欠陥部の長さ方向に平行に、照明光を照射するものであるため、照明光源11から直接円筒体表面に直接照明光L1が照射されても、乱反射光が生じ難くなる。従って、多くの乱反射光がカメラ2に入り込むのことがなく、その入り込みを防止するための絞り(アパチャー)や平行光照明等の光学的手段を、別途設ける必要がなく、その分、構造の簡素化およびコストの削減を図ることができる。
【0064】
なお上記実施形態においては、欠陥部として筋状凹部を例に挙げて説明したが、筋状凸部に対しても、上記と同様にして、欠陥のある高い凸部と、欠陥のない低い凸部とを確実に区別でき、欠陥のある筋状凸部を正確に検出することができる。
【0065】
また上記実施形態においては、ハーフミラーとして、円筒体の一端側から他端側にかけて長さ方向全域にわたって配置されるものを用いて、円筒体の長さ方向全域に照明光を照射させるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、ハーフミラーとして、円筒体の長さ方向の一部のみに配置されるものを用いて、円筒体の長さ方向の一部のみに照明光を照射させるようにしても用いても良い。この場合、同軸落射照明装置自体の小型コンパクト化を図ることができ、ひいては、表面検査装置全体の小型コンパクト化を図ることができる。
【0066】
さらに円筒体の一部のみを照明する小型の同軸落射照明装置を用いる場合には、同軸落射照明装置を円筒体Wの長さ方向に移動できるように構成しておき、その移動によって、円筒体Wの長さ方向全域を検査できるようにしても良いし、複数の同軸落射照明装置を円筒体Wの長さ方向に沿って配列して、各同軸落射照明装置によって、円筒体Wの長さ方向全域を一度に検査できるようにしても良い。
【0067】
また上記実施形態においては、照明光源、ハーフミラーおよびカメラ等の光学系部品を、水平に配置される円筒体に対して、上方に配置する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、光学系部品を、円筒体の軸心方向に直交する径方向外側、つまり円筒体の側方であれば、いずれの位置に配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0068】
この発明の表面検査装置は、円筒体の表面状態を検査する際の検査装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1:同軸落射照明装置
11:照明光源
13:ハーフミラー(ビームスプリッター)
2:カメラ(表面状態認識手段)
L:照明光
Lr:正反射光
W:円筒体
X:軸心方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体の上方に配置される照明光源と、円筒体の上方に前記照明光源に対応して配置されるビームスプリッターと、前記ビームスプリッターの上方に配置される表面状態認識手段と、を備え、前記照明光源から照射される照明光が、前記ビームスプリッターによって反射されて円筒体表面に同軸落射され、その円筒体表面で反射された反射光が前記ビームスプリッターを透過して、前記表面状態認識手段によって認識されるようにした円筒体の表面検査装置であって、
前記照明光源から照明光が、円筒体の軸心方向の一端側から軸心方向と平行に他端側に向けて照射されるようにしたことを特徴とする円筒体の表面検査装置。
【請求項2】
前記ビームスプリッターが、円筒体の軸心方向の少なくとも一部に配置され、
前記ビームスプリッターで反射される照明光が、円筒体の軸心方向の一部に落射されるようになっている請求項1に記載円筒体のの表面検査装置。
【請求項3】
前記ビームスプリッターが、ハーフミラーによって構成されている請求項1または2に記載の円筒体の表面検査装置。
【請求項4】
円筒体として、引抜加工によって得られたアルミニウムまたはその合金製の引抜管が用いられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の円筒体の表面検査装置。
【請求項5】
円筒体として、感光ドラム用基体が用いられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の円筒体の表面検査装置。
【請求項6】
照明光源から照射される照明光を、ビームスプリッターによって反射させて円筒体表面に同軸落射させ、その表面で反射させた反射光を前記ビームスプリッターに透過させて、表面状態認識手段によって認識させるようにした円筒体の表面検査方法であって、
前記照明光源から照明光を、円筒体の軸心方向の一端側から軸心方向と平行に他端側に向けて照射するようにしたことを特徴とする円筒体の表面検査方法。
【請求項7】
円筒体の表面で反射された反射光に基づいて、円筒体の表面状態を検査するようにした円筒体の表面検査装置に用いられる同軸落射照明装置であって、
円筒体の上方に配置される照明光源と、
円筒体の上方に前記照明光源に対応して配置され、前記照明光源から照射される照明光を反射して円筒体表面に同軸落射させ、その円筒体表面で反射された反射光を透過させるビームスプリッターと、を備え、
前記照明光源から照明光が、円筒体の軸心方向の一端側から軸心方向と平行に他端側に向けて照射されるようにしたことを特徴とする同軸落射照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−7498(P2011−7498A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148191(P2009−148191)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】