説明

再利用反応ガスを燃料電池に供給するための装置

燃料電池(2)に再利用反応ガス(3)を供給するための装置(1)であって、加湿すべき反応ガス(3)用の第1の入口(5)及び水分キャリア(7)用の第2の入口(6)を有する加湿器(4)を備え、第1の入口(5)及び/又は第2の入口(6)にフィルター装置(8)が予め接続されている、装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再利用反応ガスを燃料電池に供給するための装置に関し、それは、加湿すべき燃料ガス用の第1の入口及び水分キャリア用の第2の入口を有する加湿器を備える。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は一般に知られている。例えば、高分子電解質膜燃料電池(PEM燃料電池)などの特定の種類の燃料電池の場合には、最大効率を達成するためには燃料電池膜を絶えず加湿することが必要である。加湿は、燃料電池に供給されるガスの水分濃度を加湿器を用いて高めることによって行われる。加湿器の効率を最高レベルにし且つ水分の移動を制御可能なものとするためには、均一な供給流れが必要とされる。この目的のために、多くの場合、加湿器の前にガス搬送設備が接続される。しかしながら、サージ中で運転されるガス搬送設備は、加湿器への供給流を均質にすることができない。さらに、圧力サージは、時期尚早な劣化や破損をもたらし得る。多くの場合、加湿器のためには限られた構造空間のみが利用可能であり、それによって、好ましくない供給流、例えば、歪曲したり非対称である供給流がもたらされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、加湿器への供給流が改善された装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決すべく、第1の入口及び/又は第2の入口にフィルター装置を接続する。フィルター装置は、粒子フィルター(例えば、不織材料)の形態を有し、均一な流れをもたらす圧力イコライザーを形成する。可搬式燃料電池は動的に運転され、この結果、圧力変動が生じるため、この構成は可搬式用途の場合に特に有利である。コンパクトな定置式設備についても同様である。接続されたガス搬送設備の圧力サージは、フィルター装置にて弱められる。加湿器への均一化された供給流によって、水分の移動は改善され、それによって小さい構造空間という要件が達成され得る。フィルター装置は、金網、織布、穿孔ラティス(perforated lattice)又はダイアフラムを有することができる。これらの設備は、フィルター装置のための支持効果を有するのに加え、さらに改善された流れをもたらす。好ましくは、フィルター装置は、粒子フィルターの形態を有する。これを用いることで、加湿器の時期尚早な劣化や破損又は効率低下を引き起こす可能性のある粒子をろ過することができる。この場合、一方では、燃料電池のカソード側に反応ガスとして供給される周囲空気が精製され、他方では、水分キャリアを形成するカソードオフガスも精製され得る。カソードオフガスは、燃料電池からの汚染物質(contaminant)を含有し得、それは精製されたカソードオフガスが加湿器へと供給されるようにフィルター装置にて保持される。
【0005】
フィルター装置は、化学フィルターを含むことができる。化学フィルターは、例えば酸性及び/又は塩基性ガスをろ過して、腐食性ガスの作用による加湿器及び燃料電池の時期尚早な劣化や破損を防止する。
【0006】
フィルター装置は、活性炭から成る層を含むことができる。こうしてフィルター装置は、1つのフィルターユニットを形成するよう組み合わせ得る粒子フィルターと活性炭フィルターとを含む。他のフィルター装置は、活性炭層を含むことができる。この場合、活性炭は、装置に応じて、吸着フィルター及び/又は吸収フィルターを形成する。活性炭は、広範な化学成分及び粒子をろ過するのに適している。他のフィルター装置では、活性炭に代えてあるいはそれに加えて、他のソーベントも設けられる。これらは、物理収着及び/又は化学収着によっても機能し得る。例えば、含浸炭素(impregnated carbon)、二酸化ケイ素、アルミノシリケート、酸化アルミニウム又はイオン交換剤が考えられる。
【0007】
フィルター装置は、微細フィルターを含むことができる。微細フィルターを用いることによって、精製すべき媒体から微細粒子や液体成分をろ過することができる。活性炭層を下流の微細フィルターに接続することができ、活性炭粒子を保持することもできる。
【0008】
フィルター装置は、静電フィルター層を含むことができる。微細粒子は、低圧損の静電フィルター材料によってろ過し得る。静電的相互作用の結果、非帯電フィルター材料の場合よりも、同じろ過性能を達成するために、細孔をより大きく形成することができる。ろ過材は、簡便な方法によってガス気流中に配置することができ、且つ容易に交換することができる。
【0009】
加湿器は、膜加湿器の形態を有し得る。膜加湿器では、水分を含むガス気流と、これから加湿されるガス気流とは、水透過性の膜によって隔てられている。原則として、水分の輸送は、毛管作用あるいは拡散作用によって起こり得る。両メカニズムは、汚染物質(contaminant)に敏感である。膜を介する輸送には、膜の界面現象は非常に重要である。これらは、表面の汚染物質の影響を受ける(例えば、膜の親水性挙動並びに濡れ挙動は汚染物質によって変化する)。細孔は、粒子によって閉塞され得る。官能基(functional group)は、汚染物質あるいは有害物質によって妨害され得る。膜加湿器の場合、カソード側の水を含有する使用済み空気は、加湿のために有利に用いることができ、それによって、水を別個に供給することを省くことができる。また、流れの設計並びに加湿器を包囲する膜を用いることで、フィルター装置との組み合わせで、改善されたノイズ低減効果が得られる。他の実施形態では、加湿器は、スプレー加湿器の形態を有し得る。スプレー加湿器は、アノードガスの加湿を行う場合に有利である。アノードガスは酸素(例えば、大気中の酸素)と反応するからである。スプレー加湿器の場合、加湿は、液体の水を例えばノズルを通してスプレーすることによって行う。水には、カソードオフガスからの凝縮水を用いることができる。液体の水、特にカソードオフガスから得た水を用いる場合は、予備精製が必要である。汚染物質によってノズルが閉塞してしまう場合があるからである。周囲空気から成るカソードガスの加湿に関しても、精製は必要である。周囲空気からの汚染物質がノズル上に付着して加湿器の運転障害につながるからである。
【0010】
加湿器は、中空繊維を含むことができる。中空繊維は非常に大きな表面を有しており、それによって少数の中空繊維によって高い加湿性能を達成することができ、小さなスペースしか必要としない。中空繊維の場合、例えば、水分を含むガス気流は繊維の周囲を流れ、他方のガス(例えば、加湿すべきガス)は繊維の内側に沿って流れる。中空繊維加湿器の場合、予備精製はさらに重要である。中空繊維の断面は小さく、粒子が内側に侵入すると閉塞あるいは破損するからである。
【0011】
装置は、予め構成し得るユニットを形成し得る。燃料電池に搭載する前にフィルター装置と加湿器とがユニットとして組み合わせられるモジュール型構造においては、搭載するのに必要となる部品が少なく、燃料電池への搭載が容易になる。
【0012】
装置は、ハウジング内に配置することができる。フィルター装置と加湿器から成るユニットは、その搭載がさらに簡易化される結果、ハウジング内に特にコンパクトな態様にて搭載される。フィルター装置と加湿器とを接続する連結部(例えば、チューブやホース)は省くことができる。
【0013】
装置の前に、ガス搬送設備を接続することができる。ガス搬送設備を用いることによって、ガス気流の圧力並びに搬送が増大する。ガス搬送設備の装置に応じて、圧力サージが生じ、それは、加湿器の前に接続されたフィルター装置内で弱められる。ガス搬送設備としては、多くの場合、メンブレンポンプが用いられる。この態様では、搬送すべき媒体が完全に密閉されるからである。しかしながら、メンブレンポンプの場合には圧力の脈動が起こる。それは、フィルター装置内で弱められ、それによって、加湿器に供給される流れは均質となり、最適な効率がもたらされ、十分に制御可能となる。
【0014】
空気搬送設備の前にプレフィルターを接続することができる。プレフィルターは、ガス搬送設備並びに当該装置内への粒子の侵入、時期尚早な劣化や破損を防止する。
【0015】
空気搬送設備の前に吸音材を接続することができる。特にガス搬送設備によって起こる騒音は、この吸音材によって防止される。
【0016】
反応ガスは、燃料電池のカソードガスとなり得る。酸素含有媒体(例えば、PEM燃料電池における周囲空気)は、カソードに供給される。カソード側への水の供給は、アノード側への供給の実施を示すものではないが、カソード使用済み空気は加湿のために差し支えなく利用し得るため、技術的に簡単である。
【0017】
反応ガスは、燃料電池のアノードガスを形成し得る。燃料、通常は水素、は、アノードへと流される。PEM燃料電池の場合、アノード側を加湿することが必要である。乾燥すると膜の抵抗が増し、その結果、性能の低下につながるからである。しかしながら、この場合、反応ガス中に酸素が入らないようにすることが必要である。酸素は水素−酸素反応という制御し難い態様にて水素と反応し、燃料電池の破壊をもたらすからである。
【0018】
フィルター装置は、センサー設備を含むことができる。センサー設備を用いることによって、フィルター装置の状態をモニタし、測定したパラメータを加湿器又は燃料電池を制御するための評価ユニットとして利用することができる。このプロセスにおいて、通過する流体の特に温度、水分、及び流速をセンサー設備において測定することができる。これらのパラメータを用いることで、フィルター装置のろ過性能の低下、従ってフィルター装置の交換の必要性を伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明による装置の実際の例を、図面を用いて以下にさらに詳細に説明することとする。
【0020】
図1は、燃料電池2に再利用反応ガス3を供給するための装置1を示している。反応ガス3は、燃料電池2のカソード側に供給されるこの設計の場合には周囲空気である。装置1は、第1の入口5及び第2の入口6を有する膜加湿器として形成された加湿器4を有する。第1の入口5において加湿器4に反応ガスが導入され、第2の入口6において加湿器4に水分キャリア7が導入される。水分キャリア7は、水を含有するカソード使用済み空気から成る。この態様では、第1の入口5の前にフィルター装置8が接続されている。当該フィルター装置8は、粒子フィルターとして形成されており、平坦な面として形成された不織材料から成る。フィルター装置8は、不織材料の層に加えて、活性炭層10から成る化学フィルター9を有する。さらに、フィルター装置は、静電フィルター材料12から成る微細フィルター11を有する。当該装置1の前には、メンブレンポンプとして形成されたガス搬送設備15が接続されている。
【0021】
図2記載の装置1は図1記載の装置1に対応する。この態様では、第2の入口6の前に別のフィルター装置8が接続されている。水分キャリア7を形成するカソードオフガスは、その別のフィルター装置によって精製される。
【0022】
図3は、ガス搬送設備15の前に、吸音材17と組み合わせられたプレフィルター16が接続されている、図2記載の装置1を示している。小さいスペースという要件の結果、この構成は、特に可搬式用途に適している。
【0023】
図4は、燃料電池2に再利用反応ガス3を供給するための装置1を示している。この態様では、反応ガス3は、燃料電池2のアノード側に供給される水素である。装置1は、第1の入口5及び第2の入口6を有する膜加湿器として形成された加湿器4を備える。加湿すべき反応ガス3は第1の入口5へと導入され、水分キャリア7は第2の入口6にて加湿器4へと導入される。水分キャリア7は、水を含有するカソード使用済み空気から成る。この態様では、第2の入口6の前にフィルター装置8が接続されている。
【0024】
図5は、予め構成可能なユニットとして形成された装置1を示している。フィルター装置8と加湿器4がハウジング14内に配置されている。フィルター装置8は、プレフィルター15と、プリーツ加工されたフィルターとして形成された粒子フィルター16とを含む。活性炭層から成る化学フィルター9が、粒子フィルター16の下流に接続されている。微細フィルター11を形成する静電フィルター層12が、化学フィルター9の下流に接続されている。フィルター装置8の下流に、センサー設備18が配置される。加湿器4は膜加湿器の形態を有し、当該加湿器4内には多数の水透過性中空繊維が存在する。この装置1はまた、吸音材としても機能する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による、カソードガスを加湿するための装置
【図2】カソードオフガスを精製するための追加のフィルター装置を有する装置
【図3】プレフィルターと吸音材とが接続された装置
【図4】カソードガスを加湿するための装置
【図5】ハウジング内にて予め構成可能なユニットしての装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再利用反応ガス(3)を燃料電池(2)に供給するための装置(1)であって、加湿すべき前記反応ガス(3)用の第1の入口(5)及び水分キャリア(7)用の第2の入口(6)を有する加湿器(4)を備えており、前記第1の入口(5)及び/又は前記第2の入口(6)の前にフィルター装置(8)が接続されている、装置。
【請求項2】
前記フィルター装置(8)が、粒子フィルターを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィルター装置(8)が、化学フィルター(9)を含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記フィルター装置(8)が、活性炭層(10)を含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記フィルター装置(8)が、微細フィルター(11)を含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記フィルター装置(8)が、静電フィルター層(12)を含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記加湿器(4)が、膜加湿器の形態を有する、請求項1〜6の何れか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記加湿器(4)が、中空繊維(13)を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置(1)が、事前構成可能なユニットを形成する、請求項1〜8の何れか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置(1)が、ハウジング(14)内に配置されている、請求項1〜9の何れか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置(1)の前にガス搬送設備(15)が接続されている、請求項1〜10の何れか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記ガス搬送設備(15)の前にプレフィルター(16)が接続されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ガス搬送設備(15)の前に吸音材(17)が接続されている、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記反応ガス(3)が、燃料電池(2)のカソードガスとなる、請求項1〜13の何れか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記反応ガス(3)が、燃料電池(2)のアノードガスとなる、請求項1〜13の何れか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記フィルタ装置(8)が、センサー設備(18)を含む、請求項1〜15の何れか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−507350(P2009−507350A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529525(P2008−529525)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008640
【国際公開番号】WO2007/028572
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(501479868)カール・フロイデンベルク・カーゲー (73)
【Fターム(参考)】