説明

再吸収可能なコラーゲン膜物質のシートの使用方法

【課題】再吸収可能なコラーゲン膜物質のシートの使用方法を提供する。
【解決手段】脊椎手術中またはその後に使用する手術器具の準備中における再吸収可能なコラーゲン膜物質のシートの使用方法であって、シートは、単一層膜であるか、または、二重層膜のいずれかであり、手術器具は、椎骨及び脊髄の少なくとも一部の周りに位置づけされることにより、脊椎手術中またはその後に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、術中または術後患者の脊椎領域の防御の分野に関し、特に、再吸収可能なコラーゲン膜物質のシートの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円板の損傷を治療し、椎骨を修復、除去または融合するための、あるいはそれらの組合せのために、毎年多数の脊椎手術が実施されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような手術中は、脊髄および脊髄周囲の硬膜鞘を損傷から防御するのが望ましい。脊椎手術はしばしば、損傷椎骨を修復または置換するための骨移植片物質の挿入も包含する。その後の治癒工程中は、適正な治癒を妨害する恐れのある結合組織および望ましくない細胞の内方増殖から脊椎領域を防御することが望ましい。
【0004】
術中および術後患者の脊椎領域を防御する新規の方法が、当業界では依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、脊椎手術中またはその後に使用する手術器具の準備中における再吸収可能なコラーゲン膜物質のシートの使用方法であって、シートは、
(i)主にコラーゲンI、コラーゲンIIまたはそれらの混合物であるグルコサミノグリカンで含浸されたバリア層を備え、コラーゲン膜物質の上での細胞付着を阻止すると共に細胞の通過を防止するためのバリアとして作用するように1つの平滑面を有し、平滑面の反対側の繊維面を有すると共に繊維面がその上での細胞増殖を可能にする単一層膜であるか、または、
(ii)バリア層の繊維面に隣接するコラーゲンIIのグリコサミノグリカンで含浸されたマトリックス層を備えた(i)のバリア層からなる二重層膜
のいずれかであり、
手術器具は、椎骨及び脊髄の少なくとも一部の周りに位置づけされることにより、脊椎手術中またはその後に使用される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コラーゲン膜物質のシートは、隣接骨物質の外側からの結合組織およびその他の細胞の内方増殖に対してインプラント物質を防御できる。また、コラーゲン膜物質のシートは、手術中の物理的損傷から脊髄硬膜を防御し、さらに、患者の身体中に漸次再吸収されていくので治癒後に外科的に膜を除去しなければならないという必要性もない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施態様に従いコラーゲン膜物質のシートにより取り囲まれた脊髄を示す横断図である。
【図2】コラーゲン膜物質の第一のシートが患者の脊髄に直接隣接し、コラーゲン膜物質の第二のシートが患者の椎骨、椎間円板および挿入椎骨インプラント物質の外側に配置される本発明の第二の実施態様を示す部分断面に関する平面図である。
【図3】本発明に用いるための単一層膜を示す側面図である。
【図4】本発明に用いるための二重層膜を示す側面図である。
【図5】本発明に用いるための三重層膜を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、脊椎手術中および脊椎手術後に脊髄および脊柱の領域を防御する方法を提供する。
【0009】
一実施態様によれば、脊髄を取り囲む硬膜鞘が露呈される脊椎手術中、コラーゲン膜物質10のシートは、硬膜鞘12を防御するよう患者の脊髄14を取り囲む硬膜鞘12に隣接して配置される(図1および2参照)。
【0010】
一実施態様によれば、コラーゲン膜物質は、その上での細胞付着を阻止し、細胞の通過を防止するためのバリアとして働くように少なくとも1つの平滑面を有する少なくとも1つのバリア層から成る(図3参照)。この実施態様によれば、バリア層はさらに、平滑面16の反対側の繊維面18を有し、繊維面はその上での細胞増殖を可能にする。好ましい実施態様では、バリア層は、主にコラーゲンI、コラーゲンIIIまたはそれらの混合物である。適切な一物質は、本発明の譲受人であるEd. Geistlich Sohne AG fur Chemische Industrieからのビオジド(Biogide)(商品名)である。ビオジド(商品名)物質は、米国特許第5,837,278号明細書(この記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)に記載されている。
【0011】
図4は、本発明に用いられる膜の第二の型を示す。この膜は、図3に示すようなバリア層15を含み、さらに目の粗いスポンジ状のテクスチャーを有する主にコラーゲンIIのマトリックス層20を含む。図4に示すようなコラーゲン膜は、米国を指定し、英国特許出願第9721585.9号明細書(1997年10月10日出願)からの優先権を主張するPCT出願PCT/GB98/02976(1998年10月5日出願)に記載されている(これらの記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)。
【0012】
好ましい一実施態様では、図4に示したような、バリア層15,マトリックス層20またはその両方がグリコサミノグリカンで含浸されるコラーゲン膜物質が利用される。適切なグリコサミノグリカンの例としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン6−サルフェート、ケラチンサルフェートまたはデルマタンサルフェートが挙げられる。
【0013】
図5は、本発明に用いるのに適した膜のさらに別の型を示す。図5の膜は、その間に再吸収可能なポリマー層が挟まれる2つのバリア層15を含む。好ましい実施態様では、ポリマーはポリ乳酸ポリマーである。図5に示したような膜の例は、英国特許出願第9906711.8号明細書(1999年3月23日出願)に記載されている。
【0014】
図2に戻って参照すると、本発明の別の実施態様によれば、コラーゲン膜物質のシート10’は、脊髄14を取り囲む椎骨22aおよび22bの少なくとも一部を取り囲むように配置される。ある種の手術においては、再吸収可能な骨無機物のような椎骨インプラント物質24が、椎骨22aおよび22bの融合を促すよう、2つの椎骨22aおよび22b間に配置され得る。この局面によれば、本発明は、椎骨インプラント物質24の少なくとも一部を取り囲むためのコラーゲン物質10’のシートを包含する。適切な一椎骨インプラント物質は、本発明の譲受人であるEd. Geistlich Sohne AG fur Chemische Industrieからのビオ−オス(Bio-Oss)(商品名)である。ビオ−オス(Bio-Oss) (商品名)は、米国特許第5,167,961号明細書および米国特許第第5,417,975号明細書(これらの記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)に記載されている。別の適切な椎骨インプラント物質は、コラーゲンマトリックス中の再吸収可能な骨無機物であるEd. Geistlich Sohne AG fur Chemische Industrieからのビオ−オスコラーゲン(Bio-Oss Collagen)(商品名)である。ビオ−オスコラーゲン(Bio-Oss Collagen) (商品名)は、米国特許第5,573,771号明細書(この記載内容は、参照により本明細書中に含まれる)に記載されている。本発明は、他の骨移植片法、例えば骨移植片物質を封入するチタンの網が椎骨間に挿入される「ケージ技法(cage technique)」にも適用可能である。これらの実施態様によれば、コラーゲン膜物質のシートは、隣接骨物質の外側からの結合組織およびその他の細胞の内方増殖(最大強度および治癒のための脊柱中への脊椎インプラント物質の十分な組み入れから骨細胞およびその他の骨再生細胞を妨げ得る)に対してインプラント物質を防御する。
【0015】
本発明の方法は、図2に示したように脊髄14を取り囲む椎間円板26の少なくとも一部を取り囲むよう、コラーゲン膜物質のシートを配置することも包含する。図2に示した実施態様では、硬膜12は本発明のコラーゲン膜10により取り囲まれていて、そこにさらに、第二のコラーゲン膜10’が椎骨22aおよび22b、円板26並びに椎骨インプラント物質24の周囲に巻き付けられ、それらの保護をする。したがって、本発明は、手術中の物理的損傷から脊髄硬膜を防御し得るし、そして膜10’のバリア層は、膜10’が図2に示したような脊柱周囲に巻き付けられた場合に、治癒工程中に望ましくない細胞の内方増殖から手術部位を防御する。コラーゲン膜物質10、10’は患者の身体中に漸次再吸収されて、治癒後に外科的に膜を除去しなければならないという必要性を全くなくする。
【0016】
本発明を詳細に説明してきたが、しかし説明および添付の図面は本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0017】
10,10’ コラーゲン膜物質
12 硬膜鞘
14 脊髄
15 バリア層
16 平滑面
18 繊維面
20 マトリックス層
22a,22b 椎骨
24 椎骨インプラント物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎手術中またはその後に使用する手術器具の準備中における再吸収可能なコラーゲン膜物質のシートの使用方法であって、
前記シートは、
(i)主にコラーゲンI、コラーゲンIIまたはそれらの混合物であるグルコサミノグリカンで含浸されたバリア層を備え、前記コラーゲン膜物質の上での細胞付着を阻止すると共に細胞の通過を防止するためのバリアとして作用するように1つの平滑面を有し、前記平滑面の反対側の繊維面を有すると共に前記繊維面がその上での細胞増殖を可能にする単一層膜であるか、または、
(ii)前記バリア層の前記繊維面に隣接するコラーゲンIIのグリコサミノグリカンで含浸されたマトリックス層を備えた前記(i)のバリア層からなる二重層膜
のいずれかであり、
前記手術器具は、椎骨及び脊髄の少なくとも一部の周りに位置づけされることにより、脊椎手術中またはその後に使用されるシートの使用方法。
【請求項2】
前記グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸、コンドロイチン−6−サルフェート、ケラチンサルフェートまたはデルマタンサルフェートである請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記脊椎手術は、椎骨の融合及び椎骨インプラント物質の挿入の少なくとも一方を含む、請求項1または2に記載の使用方法。
【請求項4】
前記シートは、硬膜鞘を防御するように前記脊髄の前記硬膜鞘に隣接して配置される請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項5】
前記シートは、前記脊髄を取り囲む椎間円板の少なくとも一部を取り囲むように配置される請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−172997(P2011−172997A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123380(P2011−123380)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【分割の表示】特願2000−276303(P2000−276303)の分割
【原出願日】平成12年9月12日(2000.9.12)
【出願人】(500140219)エド・ガイストリッヒ・ゼーネ・アクチェンゲゼルシャフト・フュール・ヒェミッシェ・インドゥストリー (10)
【氏名又は名称原語表記】Ed. Geistlich Soehne AG fuer chemische Industrie
【住所又は居所原語表記】Bahnhofstrasse 40, P.O. Box 157, 6110 Wolhusen, Switzerland
【Fターム(参考)】