説明

再帰性反射シート

【目的】基板に貼り付けた後に経時的に発生するシートの外観異常を防止することが可能な再帰性反射シートを提供する。
【構成】下半球に金属反射膜(3)が設けられた複数のガラス球(2)と、これを保持する樹脂製支持シート(4)と、その表面側に配置される透明なカバーフィルム(1)を備え、樹脂製支持シート(4)とカバーフィルム(1)は、裏面側からの加熱加圧エンボス成形により接合されて再帰性反射シート原反が形成され、裏面側には粘着剤層(11)と、これを覆う樹脂製剥離フィルム(13)とを含む。加熱加圧エンボス成形によるエンボス溝(10)は粘着剤層(11)の一部によって充填されており、粘着剤層の残留率が10%以上50%以下、粘着剤層の落下時間が10時間以上150時間以下の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路標識、案内標識、安全誘導標識表示板、またはその他安全表示等に用いられる再帰性反射シートに関する。
【背景技術】
【0002】
再帰性反射シートは交通標識、案内標識、警戒標識、規制標識等として、主に交通安全用途に幅広く使用されている。この再帰性反射シートは、複数の再帰性反射要素と、樹脂製支持シートと、前記樹脂製支持シートの表面側に配置される透明のカバーフィルムと、前記樹脂製支持シートの裏面側に粘着剤層とを含み、前記再帰性反射要素が、前記樹脂製支持シートおよび前記カバーフィルムの少なくとも一方に保持され、前記樹脂製支持シートと前記カバーフィルムは、前記樹脂製支持シートの裏面側からの加熱加圧エンボス成形により接合されて接合部が形成され、樹脂製支持シートの裏面側に前記接合部の溝が形成されている。前記再帰性反射シートには、更に剥離フィルムが積層されている。前記剥離フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリラミ紙、ポリプロピレン、ポリエチレン等の剥離材料に、シリコーン化合物、フッ素化合物等の剥離剤を塗布したものが使用されている。また、粘着剤層を形成するための粘着剤には、溶剤型粘着剤、エマルジョン型粘着剤、電子線や紫外線によって硬化させる粘着剤等を用いることができる。このような再帰性反射シートは、基板、例えば、アルミニウム、鉄板、塗装鉄板、ステンレス板等の金属基板や、繊維強化プラスチック(FRP)、硬質塩ビ等のプラスチック基板、ポリエチレン等を挟み込んだアルミニウム板等の複合基板などに、スキージ、ハンドロール、マングルロール等の貼り付け器具もしくは貼り付け機械によって貼り付けられ、標識、看板等として利用されている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
しかし、前記再帰性反射シートを前記基板に貼り付ける時、前記基板と再帰性反射シートの間に閉じ込められた空気を押し出して貼り付けないと、前記基板と再帰性反射シートの間に空気が封入された状態となる。その場合、太陽光線等によって前記基板の温度が上昇した時、封入されている空気が膨張して、前記再帰性反射シートにフクレ、バブル、シワ、剥がれ等が発生するトラブルが生じる。これを防ぐためには、前記再帰性反射シートを前記基板に貼り付ける時、ある程度の圧力を掛けて、前記基板と再帰性反射シートの間にトラップされた空気を押し出して貼り付ける必要がある。また、前記再帰性反射シートを前記基板に貼り付ける時、前記再帰性反射シートが歪んだ状態で貼り付けられた場合、前記再帰性反射シート内部に残留した応力によって、経時的に前記再帰性反射シートにシワ、フクレ、バブル、剥がれ等が発生するという問題があった。
【特許文献1】特許第3278299号公報
【特許文献2】特開平2000−329918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この問題に対して効果のある対処がなされていないのが現状である。例えば前記特許文献1によれば、再帰性反射シートのフクレ防止対策として、粘着剤層を形成する粘着剤が、重量平均分子量50万以上の樹脂を架橋反応により架橋させた樹脂であって、100℃における保持力が10mm/1000min以下で、且つ、ポリカーボネート樹脂板に対するヌレが貼り付け30分後に50%以上であるガス発生被着体用再帰反射シートが提案されている。しかし、実際にはこの条件を満たす粘着剤を、前記再帰性反射シートのフクレ等の防止対策として使用しても、前記問題を充分に解決するには至らなかった。
【0005】
また、前記特許文献2によれば、加熱加圧エンボス成形時に形成された前記樹脂製支持シートの前記溝を空気の排出路として利用することが提案されている。しかし、屋外で標識として使用した場合に、前記溝に水、埃、塵等の異物が侵入し、該粘着性能を低下させ、シートに脱落、剥がれ等のトラブルが発生する。このトラブルを防止するには、前記再帰性反射シートの貼り付け時に前記溝中の空気を押し出して、そこに粘着剤層を埋め込むことが必要となる。そのためには粘着剤の凝集力を低くくし、前記粘着剤層が溝に入り易くすることが必要である。一方で前記再帰性反射シートが貼り付け時に歪んだ場合、前記再帰性反射シートに残留した応力によってシートには経時的にフクレ、バブル、シワ、剥がれ等を発生させようとする応力が働く。しかし、前記粘着剤の凝集力を低くしたために、前記再帰性反射シートはこの応力に耐え切れずに前記粘着剤の凝集破壊を起こす。その結果、前記再帰性反射シートは残留応力の働きによる動きを止めることが出来ずに、再帰性反射シートにフクレ、バブル、シワ、剥がれ等が発生する。このような実情から、市場では、基板へ貼り付けた後のシワ、フクレ、バブル、剥がれ等を発生させない、新規な再帰性反射シートの開発が強く望まれていた。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、基板貼り付け後に経時的に発生する、フクレ、バブル、シワ、剥がれ等のシートの外観異常を防止することが可能な再帰性反射シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の再帰性反射シートは、
複数の再帰性反射要素と、樹脂製支持シートと、前記樹脂製支持シートの表面側に配置される透明のカバーフィルムと、前記樹脂製支持シートの裏面側に形成された粘着剤層とを含み、前記再帰性反射要素が、前記樹脂製支持シートおよび前記カバーフィルムの少なくとも一方に保持され、前記樹脂製支持シートと前記カバーフィルムは、前記樹脂製支持シートの裏面側からの加熱加圧エンボス成形により接合されて接合部が形成され、前記樹脂製支持シートの裏面側に前記接合部の溝が形成されている再帰性反射シートであって、前記溝が、前記粘着剤層の一部で充填されており、前記粘着剤層の残留率が、10%以上50%以下の範囲であり、かつ前記粘着剤層の落下時間が、10時間以上150時間以下の範囲である再帰性反射シートである。
前記残留率(%)=(残留変位÷初期変位)×100
前記初期変位は、山本式凝集力測定装置を使用して、5mm幅のJIS G 4305に規定するSUS304鋼板で鏡面仕上げの平板上に、10mm×5mmの前記再帰性反射シートを、JIS Z 0237に規定される圧着装置を用いて圧着させ、圧着直後に前記再帰性反射シートの両端に糸を介して17gの荷重をかけ、その後、一方の荷重に測定用の荷重200gを加えて、5分後に生じる前記平板と前記再帰性反射シートのズレ(mm)を意味し、
前記残留変位は、前記荷重200gを除去した10分後に生じる前記平板と前記再帰性反射シートのずれを意味する。
前記落下時間は、JISZ0237の保持力試験に準じる、40℃における保持力試験において、9.8N荷重をかけたときの、前記再帰性反射シートの落下時間を意味する。
【0008】
次に耐熱性を有する剥離材料と、本発明の再帰性反射シートとの積層体の製造方法は、複数の再帰性反射要素と、樹脂製支持シートと、前記樹脂製支持シートの表面側に配置される透明のカバーフィルムとを含み、前記再帰性反射要素が、前記樹脂製支持シートおよび前記カバーフィルムの少なくとも一方に保持され、前記樹脂製支持シートと前記カバーフィルムは、前記樹脂製支持シートの裏面側からの加熱加圧エンボス成形により接合されて接合部が形成され、前記樹脂製支持シートの裏面側に前記接合部の溝が形成されている再帰性反射シート原反を準備する工程、
前記耐熱性を有する剥離材料上に、粘着剤層を形成する工程、
前記再帰性反射シート原反の裏面側に、前記粘着剤層が形成された前記耐熱性を有する剥離材料を配置し、前記耐熱性を有する剥離材料側から、50℃以上90℃以下のロール表面温度で、100N/cm以上800N/cm以下のロール間線圧力で貼り合わせて、前記樹脂製支持シートの前記溝中に前記粘着剤層の一部を充填させる工程とを含む、耐熱性を有する剥離材料と、本発明の再帰性反射シートとの積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の再帰性反射シートは、基板へ貼り付けた後に経時的に発生する再帰性反射シートの外観異常を防止することが可能な、再帰性反射シートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者らは、再帰性反射シートの貼り付け時に前記再帰性反射シートと基板の間に残存する空気を減らすことにより、前記基板への貼り付け後に経時的に発生する再帰性反射シートの外観異常を防止可能であることを見出した。たとえ再帰性反射シートが歪んだ状態で貼り付けられても、前記再帰性反射シートに残留した応力を前記樹脂製支持シートの裏面側に設けられた粘着剤層により緩和することにより、同様に前記再帰性反射シートの外観異常が発生するのを防止することが可能であることを見出した。
【0011】
すなわち、(1)加熱加圧エンボス成形時に形成された溝を粘着剤層によって予め充填すること、(2)山本式凝集力測定装置を使用して、残留変位と初期変位より求められる粘着剤層の残留率を特定範囲に規定すること、および(3)前記粘着剤層の落下時間を特定範囲に規定することによって、再帰性反射シートの貼り付け時に残存する空気を減らすこと、かつ貼り付け後の再帰性反射シートに残存した応力を緩和できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
以下、本発明の再帰性反射シートについてさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明の再帰性反射シートは、樹脂製支持シート裏面側の溝が形成されていない部分の前記粘着剤層の厚みが、20μm以上110μm以下の範囲であるのが好ましく、さらに好ましくは30〜100μm、とくに好ましくは40〜90μmの範囲である。前記厚みが20μm以上であれば、前記樹脂製支持シートの溝を前記粘着剤層の一部で充填することができ、かつ前記粘着剤層全体を均一な厚さにするのに充分な厚みであり、さらに充分な接着力も得られるからである。前記厚みが110μm以下であれば、粘着剤のはみ出しや、シートを定尺にスリッターする時に同じくエッジからの粘着剤のはみ出しや、スリッター歯へ粘着剤の付着等が発生せず、さらには粘着剤の凝集破壊が発生しにくくなるからである。
【0014】
本発明の再帰性反射シートは、前記粘着剤層による前記溝の充填率が、50%以上であるのが好ましい。
充填率(%)=[(A−B)÷A]×100
前記Aは、前記再帰性反射シートの単位面積あたりの、前記溝の面積を意味し、
前記Bは、前記再帰性反射シートの単位面積あたりの、前記溝と前記粘着剤層の界面に形成された空隙の面積を意味する。
【0015】
ここで言う充填とは、前記溝が粘着剤層の一部で充填されている状態を言う。前記充填率は、さらに好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。前記充填率が50%以上であると、前記再帰性反射シートを基板に貼り付ける時、再帰性反射シートと基板間の空気を充分に抜くことができるからである。
【0016】
本発明の再帰性反射シートは、前記残留率が、10%以上50%以下の範囲であり、好ましくは15%以上45%以下の範囲、より好ましくは20%以上40%以下の範囲である。前記残留率は、粘着剤層の応力緩和性を示す。前記残留率が10%以上50%以下の範囲であれば、本発明の再帰性反射シートの貼り付け時に、再帰性反射シートに残留した内部応力が前記粘着剤層で緩和され、経時的に発生するシワ、フクレ、バブル、剥がれ等の外観異常を防止できるからである。
【0017】
本発明の再帰性反射シートは、前記落下時間が、10時間以上150時間以下の範囲であり、好ましくは20時間以上140時間以下の範囲、より好ましくは40時間以上130時間以下の範囲である。前記落下時間は、粘着剤層の凝集力を示す。前記落下時間が、10時間以上であれば、前記粘着剤の凝集力が充分大きいので、前記再帰性反射シートの収縮応力に負けず、その結果、前記再帰性反射シートは収縮しないからである。また前記落下時間が150時間以下であれば、前記粘着剤の凝集力が高くなり過ぎないので、基板に貼り付けられた再帰性反射シートが実用に供されるまでに、再帰性反射シートに残留した内部応力が粘着剤層で緩和され、その結果、前記再帰性反射シートが実用に供された後、前記再帰性反射シート本体にシワ、フクレ、バブル、剥がれ等が発生しないからである。
【0018】
本発明の再帰性反射シートは、前記粘着剤層の残留率および落下時間が、再帰性反射性シートを実用に供するときに測定された残留率および落下時間、または、前記樹脂製支持シートの裏面側に前記粘着層を形成後、温度23±2℃および相対湿度65±5%の環境下で7日間、エージング処理した後に測定された残留率および落下時間であるのが好ましい。
【0019】
また、本発明の再帰性反射シートは、前記粘着剤層の残留率および落下時間が、前記樹脂製支持シートの裏面側に前記粘着剤層を形成後、温度50℃および相対湿度65±5%の環境下で10日間、前記エージング処理の後さらにエージング処理した後に測定された残留率および落下時間であるのが好ましい。
【0020】
本発明の粘着剤層は、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂等の樹脂から形成されるのが好ましい。とりわけアクリル系樹脂としては、アクリル酸エステル共重合体およびアクリル系プレポリマーの少なくとも1種を主成分として含有する高分子系のアクリル系樹脂または前記アクリル系樹脂中にさらに粘着付与剤および凝集力を付与するモノマーを添加した変性アクリル系樹脂が好適である。
【0021】
前記ゴム系樹脂としては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、ブチルゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリビニルイソブチルエーテル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等の合成ゴム等が挙げられる。
【0022】
これらのゴム系樹脂には、ロジン等の天然樹脂、変性ロジン、ロジンおよび変性ロジンの誘導体、テルペンフェノール樹脂、ポリテルペン系樹脂、テルペン変性体、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキルフェノール−アセチレン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体等の粘着付与剤、各種可塑剤、老化防止剤、安定剤、オイル等の軟化剤、充填剤、安定剤、顔料、着色剤等を必要に応じて添加してもよい。これらは、必要に応じて2種類以上を併用して使用することもできる。
【0023】
前記アクリル系樹脂としては、例えば、アルキル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アルコキシ基、フェノキシ基、オキシエチレン基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ハロゲン原子、リン酸基、スルホン酸基、ウレタン基、フェニル基、ベンジル基、テトラヒドロフルフリル基等を有するアクリル系ビニルモノマーの重合体または共重合体、アクリル系ビニルモノマーと、その他の共重合可能なモノマー類との共重合体が挙げられる。
【0024】
アルキル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
ヒドロキシル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
エポキシ基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
アルコキシ基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
フェノキシ基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
オキシエチレン基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
アミノ基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
アミド基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0032】
カルボキシル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0033】
ハロゲン原子を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
リン酸基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、2−メタクリロイルオキシエチルジフェニルホスフェート(メタ)アクリレート、トリメタクリロイルオキシエチルホスフェート(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスフェート(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
スルホン酸基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0036】
ウレタン基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
フェニル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、フェニル(メタ)アクリレート、p−tert−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
ベンジル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
テトラヒドロフルフリル基を有するアクリル系ビニルモノマーとしては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
その他の共重合可能なモノマーとしては、シラン基を有するビニルモノマー類、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、Veova10(シェル化学社製、ビニルアルキレート化合物)、アクリロニトリル、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0041】
シラン基を有するビニルモノマー類としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエチル)シラン、ビニルトリアセチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0042】
また、その他の共重合可能なモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N'−メチレンビスアクリルアミド、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等を用いることができる。このモノマーは、塗工適性を低下させない程度に用いることができる。
【0043】
更に、アクリル系樹脂には、各種添加剤として、例えばロジン等の天然樹脂、変性ロジン、ロジンおよび変性ロジンの誘導体、ポリテルペン系樹脂、テルペン変性体、テルペンフェノール樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキルフェノール−アセチレン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体等の粘着付与剤、各種可塑剤、老化防止剤、安定剤、オイル等の軟化剤、充填剤、着色剤、顔料等を必要に応じて添加することができる。これらは、必要に応じて2種類以上を併用して使用することもできる。
【0044】
上記アクリル系樹脂は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の従来公知の方法のうち、任意の方法で重合して製造される。
【0045】
なお、重合時のモノマー濃度は、通常30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%程度である。
【0046】
また、粘着剤層を構成する樹脂には増粘剤、濡れ剤、レベリング剤、消泡剤等を適宜添加してもよい。前記アクリル系樹脂として官能基を有する架橋型アクリル共重合体を用いる場合には、前記官能基と反応する反応性官能基を有した硬化剤を添加するのが好ましい。また前記アクリル系樹脂として、架橋型でないアクリル共重合体を用いる場合には、適宜硬化剤を添加してもよい。硬化剤を添加する場合には、再帰性反射シートの前記溝に粘着剤層を形成した後、その残留率及び落下速度が本発明の範囲に入るものを選択するのが好ましい。例えば、本発明の再帰性反射シートは、前記粘着剤層が、架橋型アクリル系共重合体及び硬化剤を含む粘着剤組成物から形成される再帰性反射シートが好ましい。
【0047】
また、官能基を有する架橋型アクリル共重合体に硬化剤を添加する場合には、アクリル系樹脂中の官能基及び置換基の種類、硬化剤との組み合わせから配合割合を変化させて粘着剤層を形成し、さらに23±2℃、相対湿度65±5%の環境下で7日間エージング処理した後、その残留率及び落下速度が本発明の範囲に入る配合割合のものを選択するのが好ましい。
【0048】
なお、本発明の再帰性反射シートにおいては、前記粘着剤層は、例えば、前記樹脂の溶液を耐熱性を有する剥離材料上に塗布後、70℃で1分間及び100℃で2分間加熱乾燥して形成されてもよい。
【0049】
前記硬化剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエーテル等のエポキシ系硬化剤、トルイレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートダイマー、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(p−イソシアネートフェニル)チオホスファイト、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマー等のイソシアネート系硬化剤、メラミン、尿素、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ステログアナミンまたはスピログアナミン等の各種のアミノ基含有化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはグリオキザール等の各種のアルデヒド系化合物とを、常法により反応させて得られる縮合物等のアミノプラスト系硬化剤、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Al3+などを含むイオン性硬化剤(例えば酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等)などが挙げられる。
【0050】
なお、本発明の再帰性反射シートの粘着剤層の残留率と落下時間は、例えば、粘着剤層の材料である樹脂および硬化剤の種類、配合割合等を適宜設定して形成することによって、調整することができる。
【0051】
本発明の再帰性反射シート積層体は、本発明の再帰性反射シートと、樹脂製剥離フィルムとを含み、前記樹脂製剥離フィルムが、前記粘着剤層上に積層されている前記再帰性反射シート積層体である。
【0052】
本発明の再帰性反射シート積層体においては、前記樹脂製剥離フィルムが、ヤング率50MPa以上2000MPa以下の範囲の可とう性樹脂フィルムであるのが好ましい。前記ヤング率は、より好ましくは100MPa以上1500MPa以下の範囲、さらに好ましくは150MPa以上1000MPa以下の範囲である。
【0053】
本発明の再帰性反射シート積層体においては、前記可とう性樹脂フィルムは、未延伸ポリプロピレン(PP)フィルムまたは低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムであるのが好ましい。
【0054】
本発明の再帰性反射シート積層体においては、前記未延伸ポリプロピレンフィルムの厚みが、20μm以上150μm以下の範囲であるのが好ましい。前記厚みは、30μm以上130μm以下の範囲であるのがより好ましく、40μm以上100μm以下の範囲であるのが更に好ましい。
【0055】
本発明の再帰性反射シート積層体においては、前記低密度ポリエチレンフィルムの厚みが、20μm以上200μm以下の範囲であるのが好ましい。前記厚みは、40μm以上150μm以下の範囲であるのがより好ましく、60μm以上100μm以下の範囲であるのが更に好ましい。
【0056】
耐熱性を有する剥離材料と、本発明の再帰性反射シートとの積層体の製造方法は、前述のように、複数の再帰性反射要素と、樹脂製支持シートと、前記樹脂製支持シートの表面側に配置される透明のカバーフィルムとを含み、前記再帰性反射要素が、前記樹脂製支持シートおよび前記カバーフィルムの少なくとも一方に保持され、前記樹脂製支持シートと前記カバーフィルムは、前記樹脂製支持シートの裏面側からの加熱加圧エンボス成形により接合されて接合部が形成され、前記樹脂製支持シートの裏面側に前記接合部の溝が形成されている再帰性反射シート原反を準備する工程、前記耐熱性を有する剥離材料上に、前記粘着剤層を形成する工程、前記再帰性反射シート原反の裏面側に、前記粘着剤層が形成された前記耐熱性を有する剥離材料を配置し、前記耐熱性を有する剥離材料側から、50℃以上90℃以下のロール表面温度で、100N/cm以上800N/cm以下のロール間線圧力で貼り合わせて、前記樹脂製支持シートの前記溝中に前記粘着剤層の一部を充填させる工程とを含む製造方法である。
【0057】
前記製造方法は、前記粘着剤層に、23±2℃、相対湿度65±5%の環境下で7日間エージング処理する工程を更に含むのが好ましい。
【0058】
前記製造方法においては、前記耐熱性を有する剥離材料が、紙、合成樹脂ラミネート紙、ポリプロピレンフィルムまたはポリエステルフィルムであるのが好ましい。この場合、前記紙の厚みが、20μm以上200μm以下の範囲であるのが好ましい。前記厚みは、40μm以上170μm以下の範囲であるのがより好ましく、60μm以上150μm以下の範囲であるのが更に好ましい。この場合、前記合成樹脂ラミネート紙の厚みが、30μm以上220μm以下の範囲であるのが好ましい。前記厚みは、50μm以上200μm以下の範囲であるのがより好ましく、70μm以上180μm以下の範囲であるのが更に好ましい。この場合、前記ポリプロピレンフィルムの厚みが、15μm以上250μm以下の範囲であるのが好ましい。前記厚みは、30μm以上230μm以下の範囲であるのがより好ましく、50μm以上200μm以下の範囲であるのが更に好ましい。この場合、前記ポリエステルフィルムの厚みが、15μm以上250μm以下の範囲であるのが好ましい。前記厚みは、30μm以上220μm以下の範囲であるのがより好ましく、50μm以上190μm以下の範囲であるのが更に好ましい。
【0059】
製品出荷形態の一例としての本発明の再帰性反射シート積層体は、例えば、前記製造方法により製造された、本発明の再帰性反射シートと耐熱性を有する剥離材料との積層体から前記耐熱性を有する剥離材料を剥離した後、前記再帰性反射シートの前記粘着剤層の面上に、樹脂製剥離フィルムを貼り付けることにより製造できる。この場合において、例えば、前記粘着剤層を形成した後、前記耐熱性を有する剥離材料を剥離し、前記樹脂製剥離フィルムに貼り替えた後で、23±2℃、相対湿度65±5%の環境下で7日間エージング処理を行っても良い。または、前記粘着剤層を形成し、7日間前記エージング処理を行った後で耐熱性を有する剥離材料を剥離し、前記樹脂製剥離フィルムに貼り替えることもできる。或いは、前記樹脂製剥離フィルムに貼り替える前後に7日間のエージング処理を分けて行っても良い。とりわけ、前記樹脂製剥離フィルムに貼り替えた後、23±2℃、相対湿度65±5%の環境下で7日間エージング処理を行うのが好ましい。
【0060】
以下、図面を用いて本発明の再帰性反射シートの製造方法の一例を具体的に説明する。 図1〜 図7は本発明の再帰性反射シートの製造方法の一例の工程を示すものである。
【0061】
再帰性反射要素として、半球部分に反射鏡を有する透明球、キューブコーナー型再帰性反射要素等を用いることができる。ここでは、半球部分に反射鏡を有する透明球を用いた場合について例示する。また、前記再帰性反射要素は、前述のように、樹脂製支持シートおよびカバーフィルムの少なくとも一方に保持されるが、ここでは、前記透明球が、前記反射鏡で覆われた半球面側が、前記樹脂製支持シート内に埋まるように保持されている場合のカプセルレンズ型再帰性反射シートについて、例示する。但し、キューブコーナー型再帰性反射要素の場合は、カバーフィルムに保持されている。
【0062】
まず、前記透明球の半球部分に、反射鏡を形成する。 図1に示す通り、第1のフィルムとしてのポリエステルフィルム8上に積層された、ポリエチレン製ガラス球仮固着層7の表面上に、前記透明球としての透明のガラス球2を複数、埋め込む。埋め込むためには、ガラス球仮固着層7およびポリエステルフィルム8の積層体を加熱してポリエチレンを軟化させ、上記ガラス球2を前記ガラス球仮固着層7中に沈める。このガラス球2は、前述のように、前記透明球の一例である。前記透明球としては、ガラス球、透明樹脂ビーズ等が挙げられ、中でもガラス球が好ましい。前記透明球の粒子径としては、例えば約5μm〜300μmであり、好ましくは約20μm〜90μmであり、より好ましくは40μm〜80μmである。前記透明球の屈折率としては、例えば約1.8〜2.1であり、好ましくは約1.9〜1.95であり、より好ましくは1.92〜1.93である。
【0063】
次に上記ガラス球仮固着層7の表面から露出している前記ガラス球2の半球面に、金属反射膜3を蒸着法により形成する。この蒸着は、ガラス球仮固着層7の表面全面に行うので、前記ガラス球2のみならず、前記ガラス球固着層7の表面上にも、金属反射膜3が形成される。上記金属反射膜3の材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、クロム、錫またはこれらの金属を含む合金或いは酸化チタン、窒化チタン等の光の反射率に優れるものが挙げられ、中でもアルミニウムが好ましい。
【0064】
本発明の再帰性反射シートとしては、下記する2種類の構造を有する再帰性反射シートがある。
(A)樹脂製支持シート4の裏面にプライマー層5があるタイプ(図2参照)。
(B)樹脂製支持シート4の裏面にプライマー層5がないタイプ。
【0065】
上記(A)の場合はプライマー層5の裏面に、(B)の場合は樹脂製支持シート4の裏面に粘着剤層が積層される。ガラス球仮固着層7のガラス球2を、樹脂製支持シート4へ転写させるため、樹脂製支持シート4に高分子または低分子可塑剤等を使用する場合がある。それら可塑剤等は、経時的に粘着剤層と樹脂製支持シート4との界面または粘着剤層に移行して、前記粘着剤層の粘着性能を低下させる。すなわち、粘着剤層と樹脂製支持シート4の界面接着力の低下、粘着剤層の基板への接着性能の低下等が起こる。プライマー層5は、この問題点を解消するため、すなわち樹脂製支持シート4から粘着剤層への可塑剤等の移行を防止するために、用いることができる。
【0066】
樹脂製支持シート4を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を使用することができる。前記熱硬化性樹脂としては、官能基を有する樹脂、例えば、官能基を1つ又は2つ以上有する自己架橋型樹脂又は官能基を1つ以上有する樹脂と、これらの官能基と反応しうる官能基を有する硬化剤との組合せが好適である。なお、ガラス球の展着性及び固着性向上のために、シランカップリング剤、極性基を有した比較的低分子の樹脂等を、前記熱硬化性樹脂に添加してもよい。樹脂製支持シート4を構成する樹脂中、前記官能基を有する樹脂と前記硬化剤との総重量は、前記樹脂製支持シート4を構成する樹脂の重量部の50%、好ましくは70%より多いのが好適である。
【0067】
前記官能基を有する樹脂としては、アクリル樹脂、フッ素樹脂、スチレン共重合体のようなビニル系共重合体、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂のような重縮合系共重合体等が挙げられる。前記官能基とは、硬化剤成分との反応に与る反応性官能基または自己架橋性の官能基を指称するものである。前記硬化剤成分との反応に与る反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、酸アミド基または不飽和二重結合等が挙げられる。前記自己架橋性の官能基としては、加水分解性シリル基、N−メチロールアクリルアミド基、アルキルエーテル化N−メチロールアクリルアミド基または不飽和二重結合などが挙げられる。
【0068】
前記硬化剤としては、前記反応性官能基が水酸基、カルボキシル基、アミノ基または酸アミド基などのように、いわゆる活性水素原子を有する基の場合には、イソシアネート系硬化剤、アミノプラスト系硬化剤、ポリエポキシ化合物または酸無水物などが挙げられる。また、前記硬化剤としては、前記反応性官能基がエポキシ基などの場合には、ポリアミン類や多塩基酸類などが挙げられる。また、前記硬化剤としては、前記反応性官能基がイソシアネート基の場合には、グリコール類などのような各種のポリヒドロキシ化合物などが挙げられる。
【0069】
また、前記反応性官能基が加水分解性シリル基のような、いわゆる自己架橋性の官能基の場合には、架橋促進剤を更に用いてもよい。この架橋促進剤は、この加水分解性シリル基の加水分解用ないしは縮合用触媒である。この架橋促進剤としては、例えば、硫酸、塩酸または燐酸等の各種の酸性化合物、モノメチルアミンまたはトリエチルアミン等の各種のアミン化合物、ジ−n−ブチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジアセテートまたはジ−n−ブチル錫ジオクテート等の各種の有機錫化合物等を使用できる。
【0070】
前記プライマー層5を形成する樹脂としては、前記樹脂製支持シート4を形成する、前記官能基を有する樹脂、またはそれらの樹脂およびそれらの樹脂の官能基と反応する官能基を持った前記硬化剤の中から選択される樹脂および硬化剤を用いることができる。この前記プライマー層5に用いる樹脂は、樹脂製支持シート4との層間接着性に優れるようなものが好ましい。
【0071】
前記プライマー層5は、例えば、別途準備した第2のフィルムとしてのポリエステルフィルム6上に、前記プライマー層を形成する樹脂の溶液を塗布し、例えば、熱風乾燥機を使用して乾燥させて、得ることができる。前記第2のフィルムは、本発明の好ましい製造方法における、支持体の例示である。乾燥後の前記プライマー層5の厚みは、例えば3μm〜100μm、好ましくは6μm〜50μmである。前記厚みが3μm以上であると、前記可塑剤等の移行防止の効果が高くなるので好ましい。前記厚みが100μm以下であると、再帰性反射シートの貼り付け等の作業性が向上するので好ましい。
【0072】
次に、前記プライマー層5の面上に、樹脂製支持シート4を形成する(図2)。前記樹脂製支持シート4を形成する樹脂としては、前記官能基を有する樹脂または官能基を有しない樹脂等いずれも用いることができるが、前記官能基を有する樹脂が好適である。
【0073】
前記樹脂製支持シート4は、例えば、前記プライマー層5上に、前記樹脂製支持シートを形成する樹脂の溶液を塗布し、例えば、熱風乾燥機を使用して乾燥させて、得ることができる(図2参照)。乾燥後の前記樹脂製支持シート4の厚みは、例えば10μm〜300μm、好ましくは約30μm〜100μmである。
【0074】
前記(B)のプライマー層5を有さないタイプの再帰性反射シートは、上記再帰性反射シートの製造方法において、プライマー層作製の工程を省略して得ることができる。
【0075】
次に 図3に示す通り、前記ポリエステルフィルム6、前記プライマー層5および樹脂製支持シート4の積層体を、前記ガラス球仮固着層7の表面に沿わせる。前記樹脂製支持シート4が、前記ガラス球仮固着層7の金属反射膜3が蒸着されたガラス球2の表面と接するようにする。
【0076】
そして 図4に示すように、前記積層体を前記ガラス球仮固着層7の表面へ押圧する。この押圧は、前記ガラス球2の金属反射膜3を蒸着した前記半球面側が、前記樹脂製支持シート4内に埋まるように行なう。この時、樹脂製支持シート4のガラス球2への固着力を向上させる為に、樹脂製支持シート4へさらにカップリング剤等を添加することができる。
【0077】
そして 図5に示すように、樹脂製支持シート4の表面から、ポリエステルフィルム8と共にガラス球仮固着層7を剥がす。このとき 図5に示す通り、ガラス球2は樹脂製支持シート4中に残り、樹脂製支持シート4によって金属反射膜3を蒸着した前記半球面側が埋没された状態に保持される。また、ガラス球仮固着層7の表面から露出するガラス球2の半球以外の部分へ設けられた金属反射膜3は、そのままガラス球仮固着層7の表面に残る。
【0078】
その後、前記プライマー層5および/または前記樹脂製支持シート4に、室温で硬化する硬化剤(例えば、イソシアネート硬化剤等)を含む場合には、30〜40℃の温度環境でエージング処理を行い、前記プライマー層5および/または前記樹脂製支持シート4を硬化させておくのが好ましい。その後、加熱加圧エンボス成形加工する際に形成される接合部の性能のバラツキをなくしたり、その後の自立形態の安定化を計るためである。また、ガラス球2と樹脂製支持シート4の固着性を向上させるために、120〜150℃での熱処理工程を行ってもよい。
【0079】
次に、 図6に示した状態の、ガラス球2が保持されている前記樹脂製支持シート4の表面を、透明なカバーフィルム1で覆う。このカバーフィルム1としては、未延伸のアクリルフィルム、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂等の透明性の良いフィルムを用いることができる。中でも、未延伸アクリルフィルムが好ましい。
【0080】
前記カバーフィルム1としては、キャスティング法で製造されたフィルム以外、すなわち押し出し法、カレンダー法などのよく知られた技術で製造されたフィルムも、用いることができる。そのようなフィルムは、その製法上必然的に製造時のフィルムの流れ方向には少なくとも10〜20%の延伸がなされるが、極力未延伸の状態のものが好ましい。
【0081】
前記カバーフィルム1として熱可塑性樹脂を用いると、前記樹脂製支持シート4と前記カバーフィルム1との熱融着が良好に行なうことができ、好ましい。
【0082】
前記カバーフィルム1として、熱融着適性の低い樹脂、例えば一部の熱硬化性樹脂やフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等を用いる場合、熱融着適性の優れた樹脂と前記樹脂との積層体をカバーフィルム1として用いることができる。
【0083】
前記カバーフィルム1を形成する際に、紫外線吸収剤や酸化防止剤を併用して形成してもよい。
【0084】
表面にカバーフィルム1が配置された樹脂製支持シート4のポリエステルフィルム6側より、柄付きエンボスロール9で加熱圧着加工を行なう( 図7参照)。この加熱圧着は、加熱ロールを通過させるのが好適である。前記ロールの表面温度は、例えば150〜240℃であり、好ましくは170〜220℃である。前記表面温度が150℃以上であれば、加熱圧着が可能で、樹脂製支持シート4とカバーフィルム1とが接着でき、前記樹脂製支持シート4は、長期間にわたり自立形態を保持できるので、好ましい。また、前記表面温度が240℃以下であれば、第2のフィルムであるポリエステルフィルム6が溶解することもなく、加熱圧着の作業性が向上するので好ましい。
【0085】
加熱圧着エンボス加工の後、ポリエステルフィルム6を剥がし、再帰性反射シート原反を得る。前記加熱圧着加工により、樹脂製支持シート4の裏面側にはエンボス溝10が形成される。前記溝は、例えば幅200〜800μm、深さ100〜150μmの寸法を有する。
【0086】
本発明の再帰性反射シートを構成する再帰性反射シート原反としては、前記カプセルレンズ型再帰性反射シート原反の他に、各種公知の方法により製造された再帰性反射シート原反を用いることができる。
【0087】
例えば、図10に示されるように加熱成形されたカプセルキューブコーナー型再帰性反射シートを、再帰性反射シート原反として、用いることができる。すなわちカバーフィルム1と、前記カバーフィルム1の裏面に配置されたキューブコーナー型再帰性反射要素14と、樹脂製支持シート4と、加熱成形により接合された接合部を備えたカプセルキューブコーナー型再帰性反射シートも用いることができる。
【0088】
次に、別途用意した耐熱性を有する剥離材料上に、粘着剤層を形成する。前記粘着剤としては、前述のとおりである。前記剥離材料としては、公知、慣用の硬質剥離紙が使用可能である。例えば厚さ30〜100μmのグラシン紙、クレーコート紙、クラフト紙、上質紙等の原紙に目止め層を設けた基材、厚さ50〜200μmのポリラミ紙(クラフト紙または上質紙等にポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂をラミネートして製造)、または厚さ15〜250μmのポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム等に、エマルション型、溶剤型あるいは無溶剤型のシリコーン系樹脂やフッ素樹脂等を塗布後、熱硬化や電子線あるいは紫外線硬化等によって剥離剤層を形成したものを適宜用いることができる。前記剥離剤のなかでも、とりわけシリコン系樹脂が好ましい。前記剥離剤層の形成方法としては、公知慣用の方法、例えばコンマドクター、バーコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター等が適宜使用される。
【0089】
前記耐熱性を有する剥離材料上に、粘着剤層11を形成するのは、以下のようにして行うことができる。例えば、前記剥離材料の一例としての剥離紙12の剥離剤層面上に、粘着剤溶液を塗布し、必要により乾燥させて粘着剤層11を得ることができる。
【0090】
なお、粘着剤塗布用装置としては、例えばリバースロールコーター、ナイフコーター、バーコーター、スロットダイコーター、エアーナイフコーター、リバースグラビアコーター、バリオグラビアコーター等が挙げられる。粘着剤溶液の塗工量は、乾燥後に得られる粘着剤層の厚みが、例えば20μm〜110μmの範囲になるように調節される。
【0091】
前記粘着剤溶液は、前記粘着剤と、必要に応じて前記添加剤とを含む。前記粘着剤溶液の溶媒としては、通常の有機溶媒、例えば、トルエン、ベンゼン、酢酸ブチル、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、各種アルコール類等を用いることができる。
【0092】
次に、前記剥離材料と粘着剤層11の積層体を、前記再帰性反射フィルム原反と貼り合せる。この貼り合わせ方法としては、通常知られる方法、例えば、貼り合せロールを用いて、この積層体の粘着剤層11と、再帰性反射シート原反のプライマー層5(プライマー層5を省略した場合は、樹脂製支持シート4)とが向かい合うようにして貼合わせる((図8参照))。
【0093】
この時、剥離紙側の貼り合わせロールのロール温度を、例えば50℃〜90℃、好ましくは55℃〜85℃、さらに好ましくは60℃〜80℃に設定すれば、前記エンボス溝10を、粘着剤層の一部によって充分に充填することが可能である。前記ロール温度が90℃以下であれば、再帰性反射シート原反のカバーフィルム1は収縮等のダメージを受けにくいので好ましい。また、前記ロール温度が50℃以上であれば、加熱が効果的に行われるので、好ましい。なお、この時の貼り合わせ圧力は、例えば100N/cm〜800N/cm、好ましくは150N/cm〜750N/cm、さらに好ましくは200N/cm〜700N/cmである。この貼り合せ圧力が100N/cm以上では、充分に前記溝を粘着剤で充填することができ、また800N/cm以下では、再帰性反射シート原反にプレス圧等のダメージを与えることがないので、好ましい。
【0094】
次いで、前記剥離紙12を剥がす。前記剥離紙12などの耐熱性を有する剥離材料は、一般に、可とう性に劣るものが多い。その場合、前記耐熱性を有する剥離材料を剥がして、前記粘着剤層上に、樹脂製剥離フィルム13を貼り付けて、本発明の再帰性反射フィルム積層体を得るのが好ましい(図9参照)。前記樹脂製剥離フィルムが可とう性に優れており、前記再帰性反射フィルム積層体を長尺に巻いた後に、巻きを戻しても、前記再帰性反射フィルム積層体に巻き癖が付きにくいからである。従って、前記再帰性反射フィルム積層体に印刷等の作業をするとき、前記再帰性反射フィルムと前記樹脂製剥離フィルムとの間に、トンネルのように部分的に膨れてはがれる現象(トンネル現象)の発生を抑制でき、好ましい。前記可とう性に優れた樹脂製剥離フィルムは、前述のとおりである。
【0095】
または、前記再帰性反射シート原反のプライマー層5上に、直接粘着剤層11を形成し、その粘着剤層11上に樹脂製剥離フィルム13を配置することもできる。例えば、再帰性反射シート原反のプライマー層5(プライマー層5を省略した場合は、樹脂製支持シート4)上に粘着剤溶液または溶液で希釈していない粘着剤を塗布し、必要により乾燥させて粘着剤層11を得る。この場合に用いる粘着剤は、前記再帰性反射シート原反の耐熱性が劣るため、加熱乾燥を必要としない電子線や紫外線等で硬化するタイプの粘着剤が好ましい。この場合、前記電子線や紫外線を前記粘着剤溶液または溶液で希釈していない粘着剤の塗布層に照射して前記粘着剤を硬化させた後に、前記粘着剤層11に樹脂製剥離フィルム13を貼り合わせれば良い。
【0096】
以下実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。下記において「部」は「重量部」を示す。また「%」は「重量%」を示す。
【0097】
まず、再帰性反射シートを作製するのに必要な樹脂の調整例を挙げる。
【0098】
官能基を有する樹脂および官能基を有しない樹脂の調製例
1.水酸基含有アクリル樹脂の溶液(A−1)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーおよび窒素ガス導入口を備えた反応器に、トルエンの700部およびn−ブタノールの300部を仕込んで、窒素雰囲気下に、80℃まで昇温させた。そこへ、メチルメタクリレートの500部、エチルメタクリレートの400部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの100部、アゾビスイソブチロニトリルの8部およびtert−ブチルパーオキシオクトエート(TBPO)の5部からなる混合物を、4時間に亘って滴下した。同温度で10時間のあいだ維持した後、水酸基含有アクリル樹脂の溶液(A−1)[不揮発分=50%;重量平均分子量=32,000;水酸基価=43mgKOH/g固形分;水酸基価から計算した官能基当量=1,300(固形分)]を得た。
【0099】
2.官能基を有しないアクリル樹脂の溶液(A’−1)の調製
前記アクリル樹脂溶液(A−1)の調製例中、「メチルメタクリレートを500部、エチルメタクリレート400部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート100部」を「メチルメタクリレート700部およびエチルアクリレート300部」に変更し、かつアゾビスイソブチロニトリルの「8部」を5部に変更し、かつt−ブチルパーオキシオクトエート(TBPO)の「5部」を2部に変更した以外は、前記アクリル樹脂溶液(A−1)の調製例と同様にして、官能基を含有しないアクリル樹脂溶液(A´−1)[不揮発分=50%;重量平均分子量=81,000]を得た。
【0100】
3.水酸基含有アクリル樹脂の溶液(A−2)の調製例
上記(A−1)の調製例と同様の装置に、水:1,000部、スチレン:200部、n−ブチルアクリレート:200部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート:100部、およびポリビニルアルコール(平均重合度100)1%水溶液:20部、アゾビスイソブチロニトリル:2部を仕込んだ。その混合物を攪拌して系を懸濁状態に保ち、次いで系の温度を80℃に昇温させ、同温度で4時間反応させた。
【0101】
次いで、反応後の懸濁液を水洗、水切りして乾燥した後に、ビーズ状の樹脂を得た。さらに、この樹脂400部をトルエンの1,600部に溶解させ、水酸基含有アクリル樹脂の溶液(A−2)[不揮発分=20%;重量平均分子量=250,000;水酸基価=86mgKOH/g固形分;水酸基価から計算した官能基当量=652(固形分)]を得た。
【0102】
4.水酸基含有フッ素樹脂溶液(A−3)の調製例
内容積が5,000mlであるステンレス製のオートクレーブに、1,000部のキシレン、10部のビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニル)セバケート、tert−ブチルパーオキシピバレート、200部のシクロヘキシルビニルエーテル、230部のエチルビニルエーテルおよび70部の4−ヒドロキシブチルビニルエーテルを仕込み、窒素ガスを吹き込んで、オートクレーブ内の空気を置換した。
【0103】
さらに、前記オートクレーブ中に液化採取したヘキサフルオロプロピレンの500部を仕込んだ。前記オートクレーブを密封してから、このオートクレーブを60℃で保温し、15時間のあいだ反応を行って、フッ素樹脂溶液(A−3)[不揮発分=50%;重量平均分子量=42,500;水酸基価=67mgKOH/g固形分;水酸基価から計算した官能基当量=840(固形分)]を得た。
【0104】
5.水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A−4)の調製例
攪拌機、温度計、精留塔および窒素ガス導入口を備えた反応器に、エチレングリコールの130部、ネオペンチルグリコールの114部、1、6−ヘキサンジオールの100部、トリメチロールプロパンの48部、イソフタル酸の720部、およびジブチル錫オキサイドの0.5部を仕込んだ。前記反応器の系の温度を220℃まで昇温させ、同温度で3時間保持し、さらに、240℃まで昇温し、同温度で6時間の間、脱水縮合反応させた。次いで、系の温度を130℃まで下げて、反応器中へキシレンの1,000部を加え、ポリエステル樹脂溶液(A−4)[不揮発分=50%;重量平均分子量=47,000;水酸基価=10mgKOH/g固形分;水酸基価から計算した官能基当量=5,650(固形分)]を得た。
【0105】
本発明の実施例において、以下の各種測定方法を用いた。
(1)山本式凝集力試験
図12に示す山本式凝集力測定装置を用いた。この装置は、横520mm、高さ345mm、奥行き140mmの大きさで、再帰性反射シート26の粘着層の面を下向きにして、この粘着面を被着体21に貼り付け、再帰性反射シート26に糸を介して、荷重プーリ24とサイドプーリ25に掛け、両端に荷重22、23を付けた。被着体21と再帰性反射シート26の上に電気マイクロメータ31のコア30を付けた治具32をのせた。27は締め付けネジ、28はマイクロメータ、29はコイル、34は表示器、35はコアホールディングブロックである。図13は図12の測定装置の再帰性反射シート26と糸の接続方法を参考にするための概略斜視図である。36は押圧ローラー、37は糸である。
【0106】
山本式凝集力測定装置を用い、10mm幅に切断した再帰性反射シート26の試験片を5mm幅のJISG4305に規定するSUS304鋼板で鏡面仕上げの平板に10mm×5mmの試験片が接するように貼り付けた。この時の貼り付け条件はJISZ0237の10.2.4に規定する自動式のものを使用し、2kgの質量のローラー36で圧着速度5mm/秒で3往復させた。圧着後すぐに試験片の両端に糸を介して荷重17g(荷重22、23)をかけ、その後、荷重22に測定用の荷重200gをかけて5分後のズレ(初期変位)を測定した。測定用の荷重をかけ5分経過後に前記荷重200gを除去し、その時点から10分後に残留しているズレ(残留変位)を測定し、(残留変位÷初期変位)×100=残留率(%)として残留率を求めた。なお、測定条件は温度23±2℃、相対湿度65±5%である。
【0107】
(2)剪断保持力試験
保持力試験はJIS Z0237の保持力試験に準拠して行った。具体的には、被着体としてSUS304ステンレス鋼板を用い、次のように行った。温度23±2℃、相対湿度65±5%の雰囲気下で、2kgのゴムローラを3往復させて、再帰性反射シートをステンレス鋼板に圧着させた。貼り付け面積は、25mm×25mmである。25分間放置後、再帰性反射シートが貼り付いたステンレス鋼板を、40℃に設定した保持力試験機の中に鉛直に吊り下げ、1時間放置した。1時間経過した後、再帰性反射シートに9.8Nの荷重をかけた(吊り下げた)。従って、負荷は1.568N/cm2であった。そして、重りを掛けてから、再帰性反射シートがステンレス鋼板から落下するまでの時間(落下時間)を測定した。落下時間が24時間以上の場合には、24時間後のズレ長さも測定した。
【実施例1】
【0108】
ポリエステルフィルム(第1のフィルム)上に積層された厚さ25μmのポリエチレン製ガラス球仮固着層の表面に、複数のガラス球[粒径=45〜80μm、屈折率=1.92〜1.93](再帰性反射要素)を、その粒径の約25〜35%が前記ガラス球仮固着層中に沈む程度に埋め込んだ。すなわち、ガラス球仮固着層およびポリエステルフィルムを加熱して軟化させ、上記のガラス球を埋め込んだ。次に上記ガラス球仮固着層の表面から露出するガラス球の半球面に、アルミニウムを蒸着させて反射鏡を形成した。
【0109】
次に別途準備したポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)フィルム(厚さ50μm)(第2のフィルム)上に、メチルメタアクリレート(MMA)、エチルアクリレート(EA)、ブチルアクリレート(BA)、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(2−HEMA)からなるアクリル共重合物のトルエンおよび酢酸ブチル溶液(固形分:50%)83重量部と、メチルエーテル化メチロールメラミン(固形物60%)17重量部との配合溶液を塗布し、熱風乾燥機で乾燥して、厚さ約20μmのプライマー層を形成した。次いで、このプライマー層上に前述の水酸基含有アクリル樹脂溶液(A−1)を主体とする配合溶液を塗布し、熱風乾燥機で乾燥して、厚さ約60μmの樹脂製支持シートを形成した。前記配合溶液の配合組成を次に示す。
(1)水酸基含有アクリル樹脂溶液(A−1)(固形分:50%) 100部
(2)メチルエーテル化メチロールメラミン(固形分:60%) 11部
(3)ルチル型二酸化チタン 25部
(4)顔料分散用アクリル系樹脂(固形分:50%) 13部
(5)シランカップリング剤 1部
次に前記ガラス球仮固着層の金属蒸着面側に、前記ポリエステルフィルム(第2のフィルム)、前記プライマー層および前記樹脂製支持シートの積層物を、前記樹脂製支持シートが前記ガラス球仮固着層のガラス球表面と接するように、沿わせた。そして前記積層物を、ガラス球仮固着層の表面へ押圧した。この押圧は、ガラス球の反射鏡が樹脂製支持シート内に埋設されるよう行なった。この押圧の手段として、前記樹脂製支持シートを沿わせた前記積層物に、ロール表面温度170℃の加熱ロールを通過させた。
【0110】
次に前記樹脂製支持シート表面から、ポリエステルフィルム(第1のフィルム)と共にガラス球仮固着層を剥がして、積層物を得た。続いてガラス球と樹脂製支持シートとの接着性を向上させるために、得られた積層物に140℃で熱処理をした。そしてガラス球の半球が埋設された樹脂製支持シートのガラス球側を、一軸延伸(延伸倍率1.3倍の実質的には未延伸)された透明アクリルフィルム〔鐘淵化学工業(株)製〕(カバーフィルム)で覆って積層物を得た。次にポリエステルフィルム(第2のフィルム)側より、ロール表面温度210℃の柄付きエンボスロールで、得られた積層物に加熱成形した。そしてこの加熱加圧エンボス成形加工後に、ポリエステルフィルム(第2のフィルム)を剥がし、再帰性反射シート原反を得た。
【0111】
粘着剤用樹脂として固形分47重量%の高軟化点粘着付与剤を添加したアミド基を有するアクリル系樹脂「アロセット8964」(商品名)〔(株)日本触媒製〕100重量部と硬化剤として変性ポリイソシアネート樹脂「コロネートL−55E」(商品名)〔日本ポリウレタン工業(株)製〕0.2重量部を攪拌混合して、粘着剤溶液を調製した。前記粘着剤溶液を、硬質剥離紙「EKR−780」(商品名)(リンテック(株)製)上に塗布し、70℃で1分間及び100℃で2
分間加熱乾燥して厚さ約80μmの粘着剤層を形成した。次いで、前記再帰性反射シート原反のプライマー層の面と、前記剥離紙と粘着剤層の積層物の粘着剤層の面とを、貼り付け圧力450N/cm、ロール表面温度70℃で貼り合わせ、加熱加圧エンボス成形加工により前記プライマー層に形成された溝を、粘着剤層の一部で充填させた。その後、前記剥離紙を剥がし、可とう性のポリプロピレン(PP)離型フィルム「フィルムバイナPP−S−80」(商品名)〔藤森工業(株)製、厚み80μm、ヤング率800MPa〕(樹脂製剥離フィルム)と貼り替え、再帰性反射シート積層体を得た。得られた再帰性反射シート積層体に23±2℃、相対湿度65±5%の条件で7日間エージングを実施した。
【実施例2】
【0112】
樹脂製支持シート用の配合溶液の配合組成を下記に変更し、ガラス球を樹脂製支持シートに埋め込んだ後の熱処理を省略した以外は、実施例1と同様にして再帰性反射シートの原反を作製した。
(1)水酸基含有アクリル樹脂溶液(A−2)(固形分:20%)100部
(2)メチルエーテル化メチロールメラミン(固形分:60%)6.0部
(3)ルチル型二酸化チタン10部
(4)顔料分散用アクリル系樹脂(固形分:50%)5部
(5)ポリエステル可塑剤2部
次に、粘着剤用樹脂として固形分58重量%のアクリル酸エステル共重合体系樹脂「SKダイン1576」(商品名)〔綜研化学(株)製〕100重量部とエポキシ系硬化剤「E−05C」(商品名)〔綜研化学(株)製〕5.1重量部とを用いた以外は実施例1と同様にして、粘着剤層を形成し、再帰性反射シート積層体を得た。その後実施例1と同様の条件でエージングを実施した。
【実施例3】
【0113】
プライマー層の作成を省略し、樹脂製支持シート用の配合溶液の配合組成を下記に変更し、樹脂製支持シートの厚みを60μmから80μmに変更し、ガラス球を樹脂製支持シートに埋め込んだ後の140℃での熱処理の後に、新たに30℃での1カ月のエージング工程を追加した以外は、実施例1と同様にして再帰性反射シート原反を得た。
(1)ポリエステル樹脂(A−4)(固形分:50%) 100部
(2)HMDI系イソシアヌレート(固形分:75%,NCO:15%)2.5部
(3)ルチル型二酸化チタン 25部
(4)顔料分散用アクリル系樹脂 (固形分:50%) 12部
次に、硬化剤として「コロネートL−55E」(商品名)〔日本ポリウレタン工業(株)製〕0.25部を用いる以外は、実施例1と同様にして粘着剤層を形成し、再帰性反射シート積層体を得た。その後実施例1と同様の条件でエージングを実施した。
【実施例4】
【0114】
(樹脂製支持シートとして未硬化の樹脂シートを用いる例)
プライマー層の作成を省略し、樹脂製支持シート用の配合溶液の配合組成を下記に変更し、樹脂製支持シートの厚みを60μmから80μmに変更した以外は、実施例1と同様にして再帰性反射シート原反を得た。
(1)アクリル樹脂溶液(A´−1)(固形分:50%) 100部
(2)ルチル型二酸化チタン 25部
(3)顔料分散用アクリル系樹脂 (固形分:50%) 13部
(4)ポリエステル可塑剤 5部
次に、硬化剤として「E−05C」(商品名)〔綜研化学(株)製〕5.5部を用いる以外は実施例2と同様にして、粘着剤層を形成し、再帰性反射シート積層体を得た。その後実施例1と同様の条件でエージングを実施した。
【0115】
(比較例1)
実施例1と同様にして再帰性反射シート原反を得、下記の方法にて粘着剤層を作成した。粘着剤用樹脂として固形分39重量%のInterpenetrating Polymer Network構造を持つアクリル酸アルキルエステル共重合体系樹脂「アロセットHI−81D」(商品名)〔(株)日本触媒製〕100重量部と硬化剤「コロネートL−55E」(商品名)〔日本ポリウレタン工業(株)製〕1.2重量部を攪拌混合して、粘着剤溶液を調製した。前記粘着剤溶液を、硬質剥離紙上に塗布し、乾燥して厚さ約80μmの粘着剤層を形成した。次いで、前記再帰性反射シート原反のプライマー層の面と、前記剥離紙と粘着剤層の積層物の粘着剤層の面とを、貼り付け圧力450N/cm、ロール表面温度70℃で貼り合わせ、加熱加圧エンボス成形により前記プライマー層に形成された溝を、粘着剤層の一部で満たした。その後、前記剥離紙を剥がし、可とう性のポリプロピレン(PP)離型フィルム「フィルムバイナPP−S−80」(商品名)〔藤森工業(株)製、厚み80μm、ヤング率800MPa〕(樹脂製剥離フィルム)と貼り替え、再帰性反射シート積層体を得た。その後実施例1と同様の条件でエージングを実施した。
【0116】
(比較例2)
実施例1と同様にして再帰性反射シート原反を得た。その後、粘着剤樹脂として固形分40重量%の官能基としてカルボン酸を有し、かつ、塩素化PP,PEをグラフト化したアクリル系樹脂「アロセットHI−91D−3」(商品名)〔(株)日本触媒製〕100重量部と硬化剤「コロネートL−55E」(商品名)〔日本ポリウレタン工業(株)製〕0.3重量部を攪拌混合して、粘着剤溶液を調製した。前記粘着剤溶液を、硬質剥離紙上に塗布し、乾燥して厚さ約40μmの粘着剤層を形成した以外は、比較例1と同様にして再帰性反射シート積層体を得た。その後実施例1と同様の条件でエージングを実施した。
【0117】
(比較例3)
実施例1と同様にして再帰性反射シート原反を得た。その後、粘着剤用樹脂として固形分43重量%のアクリル・酢酸ビニル共重合体系樹脂「サイビノールAT−208」(商品名)〔サイデン化学(株)製〕100重量部と硬化剤としてN,N,N´,N´‐テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンの2.2%溶液(トルエン91.9%、IPA5.9%)「A−9」(商品名)〔サイデン化学(株)製〕1重量部を用いた以外は、比較例2と同様にして再帰性反射シート積層体を得た。その後実施例1と同様の条件でエージングを実施した。
【0118】
得られた再帰性反射シート積層体の物性値を、表1および2に示す。なお、表1中、「前記粘着剤層の厚み」は、「樹脂製支持シートの裏面側の溝が形成されていない部分の粘着剤層の厚み」を意味する。
【0119】
【表1】



【0120】
【表2】



【0121】
(備考)
(1)保持力:24時間後のずれ長さ/落下時間
(2)粘着剤層の充填状態:再帰性反射シート積層体の可とう性のポリプロピレン(PP)離型フィルムを剥離し、加熱加圧エンボスによりプライマー層または樹脂製支持シートに形成された溝への粘着剤層の充填状態を目視にて確認した。
評価基準
○:粘着剤層の充填率が70〜100%である。
△:粘着剤層の充填率が50〜70%未満である。
×:粘着剤層の充填率が50%未満である。
【0122】
(3)外観評価基準
○:再帰性反射シート表面にシワ・フクレ・バブル、剥がれ等の異常が認められない。
×:再帰性反射シート表面にシワ・フクレ・バブル、剥がれ等の異常が認められる。
(外観試験方法)
〈方法―1〉
ニップロールの硬度60(硬度計 JIS K 6301 A型にて測定)、ゴムの厚さ10mm、直径110mm、ゴム面長1270mmのKIWALITE Hand Squeeze Roll Applicator HSA2-130を用い650mm×1000mmのアルミニウム板(厚さ1mm)に再帰性反射シートを貼り合わせて試験体を作製し、貼り合わせ直後の試験体および60℃雰囲気中24時間放置後の試験体の再帰性反射シート表面の外観を観察した。
尚、上記のHand Squeeze Roll Applicator HSA2-130を用いた時の貼り付け圧力は、KIWALITE Pressure Scaling Filmにて測定した結果、0.4Mpaであった。
【0123】
〈方法−2〉
ニップロールの硬度25(硬度計 JIS K 6301 A型にて測定)、ゴムの厚さ10mm、直径110mm、ゴム面長1270mmのKIWALITE Hand Squeeze Roll Applicator HSA2-130を用い650mm×1000mmのアルミニウム板(厚さ1mm)に再帰性反射シートを貼り合わせ試験体を作製し、貼り合わせ直後の試験体および60℃雰囲気中24時間放置後の試験体の再帰性反射シート表面の外観を観察した。
尚、上記のHand Squeeze Roll Applicator HSA2-130を用いた時の貼り付け圧力は、KIWALITE Pressure Scaling Filmにて測定した結果、0.1Mpa以下であった。
【0124】
〈方法―3〉
図11に示すように600mm×800mmのアルミニウム板(厚さ1mm)上に68mm×148mmのアルミニウム板(厚さ1mm)を3枚および330mm×330mmのアルミニウム板(厚さ1mm)を1枚配置し、再帰性反射シート貼り合わせ時にシートに強制的に歪みが入るようにした基板を準備した。次いで、ニップロールの硬度60(硬度計 JIS K 6301 A型にて測定)、ゴムの厚さ10mm、直径110mm、ゴム面長1270mmのKIWALITE Hand Squeeze Roll Applicator HSA2-130を用い、340mm×660mmの再帰性反射シートを上記基板のA部より100mmの位置より貼り合わせた。その後、330mm×330mmのアルミニウム板(厚さ1mm)に沿って再帰性反射シートを切断して試験体を作製し、貼り合わせ直後の試験体および60℃雰囲気中24時間放置後の試験体シート表面の外観を観察した。
【0125】
尚、上記のHand Squeeze Roll Applicator HSA2-130を用いた時の貼り付け圧力は、KIWALITE Pressure Scaling Filmにて測定した結果、0.4Mpaであった。
【0126】
以上の実施例および比較例の結果から、加熱加圧エンボス成形により形成された樹脂製支持シート裏面側の溝が粘着剤層の一部で充填されており、前記粘着剤層の残留率と落下時間が特定の範囲であると、再帰性反射シート表面にシワ、フクレ、バブル、剥がれ等の異常が認められず、従来製品の問題を改良できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の再帰性反射シートは、基板へ貼り付け後に経時的に発生するシワ、フクレ等の外観異常を防止する再帰性反射シートであり、道路標識、案内標識、安全誘導標識表示板、またはその他安全表示等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の製造方法の一例におけるガラス球に反射膜を形成する工程を示す断面図。
【図2】本発明の製造方法の一例における、樹脂製支持シートを形成する工程を示す断面図。
【図3】本発明の製造方法の一例における、ガラス球を転写する工程を示す断面図。
【図4】本発明の製造方法の一例における、ガラス球を樹脂製支持シートに埋め込んだ工程を示す断面図。
【図5】本発明の製造方法の一例における、ガラス球の非反射面を露出させる工程を示す断面図。
【図6】本発明の製造方法の一例における、樹脂製支持シートの裏面側から加熱加圧エンボス成形する工程を示す断面図。
【図7】本発明の製造方法の一例における、加熱加圧エンボス成形を示す断面図。
【図8】本発明の製造方法の一例における、粘着剤層を形成した耐熱性を有する剥離材料でエンボス成形面側を覆った工程を示す断面図。
【図9】本発明の製造方法の一例における、耐熱性を有する剥離材料を樹脂製剥離フィルムに貼り替えた工程を示す断面図。
【図10】本発明の製造方法の一例における、加熱加圧エンボス成形後のカプセルキューブコーナー型再帰性反射シートを示す断面図。
【図11】本発明の実施例で使用する外観測定方法を説明する図。
【図12】本発明の実施例で使用する山本式凝集力測定装置を用いた測定方法を示す説明図。
【図13】本発明の実施例で使用する山本式凝集力測定装置の概略斜視参考図。
【符号の説明】
【0129】
1 カバーフィルム
2 ガラス球
3 金属反射膜
4 樹脂製支持シート
5 プライマー層
6,8 ポリエステルフィルム
7 ガラス球仮固着層
9 エンボスロール
10 エンボス溝
11 粘着剤層
12 剥離紙
13 樹脂製剥離フィルム
14 キューブコーナー型再帰性反射要素
21 被着体
22 荷重
23 荷重
24 荷重プーリ
25 サイドプーリ
26 再帰性反射シート
27 締付ネジ
28 マイクロメータ
29 コイル
30 コア
31 電気マイクロメータ
32 治具
34 表示器
35 コアホールディングブロック
36 押圧ローラー
37 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の再帰性反射要素と、
樹脂製支持シートと、
前記樹脂製支持シートの表面側に配置される透明のカバーフィルムと、
前記樹脂製支持シートの裏面側に形成された粘着剤層とを含み、
前記再帰性反射要素が、前記樹脂製支持シートおよび前記カバーフィルムの少なくとも一方に保持され、
前記樹脂製支持シートと前記カバーフィルムは、前記樹脂製支持シートの裏面側からの加熱加圧エンボス成形により接合されて接合部が形成され、
前記樹脂製支持シートの裏面側に前記接合部の溝が形成されている再帰性反射シートであって、
前記溝が、前記粘着剤層の一部で充填されており、
前記粘着剤層の残留率が、10%以上50%以下の範囲であり、かつ
前記粘着剤層の落下時間が、10時間以上150時間以下の範囲である再帰性反射シート。
残留率(%)=(残留変位÷初期変位)×100
前記初期変位は、山本式凝集力測定装置を使用して、5mm幅のJIS G 4305に規定するSUS304鋼板で鏡面仕上げの平板上に、10mm×5mmの前記再帰性反射シートを、JIS Z 0237に規定される圧着装置を用いて圧着させ、圧着直後に前記再帰性反射シートの両端に糸を介して17gの荷重をかけ、その後、一方の荷重に測定用の荷重200gを更に加えて、5分後に生じる前記平板と前記再帰性反射シートのズレ(mm)を意味し、
前記残留変位は、前記荷重200gを除去した10分後に生じる前記平板と前記再帰性反射シートのずれを意味する。
前記落下時間は、JISZ0237の保持力試験に準じる、40℃における保持力試験において、9.8N荷重をかけたときの、前記再帰性反射シートの落下時間を意味する。
【請求項2】
前記粘着剤層による前記溝の充填率が、50%以上である請求項1に記載の再帰性反射シート。
充填率(%)=[(A−B)÷A]×100
前記Aは、前記再帰性反射シートの単位面積あたりの、前記溝の面積を意味し、
前記Bは、前記再帰性反射シートの単位面積あたりの、前記溝と前記粘着剤層の界面に形成された空隙の面積を意味する。
【請求項3】
前記残留率が、15%以上45%以下の範囲である請求項1または2に記載の再帰性反射シート。
【請求項4】
前記落下時間が、20時間以上140時間以下の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の再帰性反射シート。
【請求項5】
前記樹脂製支持シート裏面側の前記溝が形成されていない部分の前記粘着剤層の厚みが、20μm以上110μm以下の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の再帰性反射シート。
【請求項6】
前記粘着剤層が、ゴム系樹脂またはアクリル系樹脂から形成される請求項1〜5のいずれかに記載の再帰性反射シート。
【請求項7】
再帰性反射要素が、その半球が反射鏡で覆われた透明球であり、
前記透明球の前記反射鏡で覆われた半球面側が、前記樹脂製支持シート内に埋まるように保持されている請求項1〜6のいずれかに記載の再帰性反射シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の再帰性反射シートと、樹脂製剥離フィルムとを含む再帰性反射シート積層体であって、
前記樹脂製剥離フィルムが、前記粘着剤層上に積層されている前記再帰性反射シート積層体。
【請求項9】
前記樹脂製剥離フィルムが、ヤング率50MPa以上2000MPa以下の範囲の可とう性樹脂フィルムである請求項8に記載の再帰性反射シート積層体。
【請求項10】
前記可とう性樹脂フィルムが、未延伸ポリプロピレンフィルムまたは低密度ポリエチレンフィルムである請求項9に記載の再帰性反射シート積層体。
【請求項11】
耐熱性を有する剥離材料と、請求項1〜7のいずれかに記載の再帰性反射シートとの積層体の製造方法であって、
複数の再帰性反射要素と、
樹脂製支持シートと、
前記樹脂製支持シートの表面側に配置される透明のカバーフィルムとを含み、
前記再帰性反射要素が、前記樹脂製支持シートおよび前記カバーフィルムの少なくとも一方に保持され、
前記樹脂製支持シートと前記カバーフィルムは、前記樹脂製支持シートの裏面側からの加熱加圧エンボス成形により接合されて接合部が形成され、
前記樹脂製支持シートの裏面側に前記接合部の溝が形成されている再帰性反射シート原反を準備する工程、
前記耐熱性を有する剥離材料上に、粘着剤層を形成する工程、
前記再帰性反射シート原反の裏面側に、前記粘着剤層が形成された前記耐熱性を有する剥離材料を配置し、前記耐熱性を有する剥離材料側から、50℃以上90℃以下のロール表面温度で、100N/cm以上800N/cm以下のロール間線圧力で貼り合わせて、前記樹脂製支持シートの前記溝中に前記粘着剤層の一部を充填させる工程とを含む
耐熱性を有する剥離材料と、請求項1に記載の再帰性反射シートとの積層体の製造方法。
【請求項12】
前記耐熱性を有する剥離材料が、厚さ20μm以上200μm以下の紙、厚さ30μm以上220μm以下の合成樹脂ラミネート紙、または厚さ15μm以上250μm以下のポリプロピレンフィルムもしくはポリエステルフィルムである請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記粘着剤層に、23±2℃、相対湿度65±5%の環境下で7日間エージング処理する工程を更に含む請求項11または12に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項11または12に記載の製造方法により製造された、耐熱性を有する剥離材料と、請求項1に記載の再帰性反射シートとの積層体から、前記耐熱性を有する剥離材料を剥離し、樹脂製剥離フィルムに貼り替える工程を含む請求項8に記載の再帰性反射シート積層体の製造方法。
【請求項15】
前記粘着剤層に、23±2℃、相対湿度65±5%の環境下で7日間エージング処理する工程を更に含む請求項14に記載の再帰性反射シート積層体の製造方法。
【請求項16】
請求項13に記載の製造方法により製造された、耐熱性を有する剥離材料と、請求項1に記載の再帰性反射シートとの積層体から、前記耐熱性を有する剥離材料を剥離し、樹脂製剥離フィルムに貼り替える工程を含む請求項8に記載の再帰性反射シート積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2004−191940(P2004−191940A)
【公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−379030(P2003−379030)
【出願日】平成15年11月7日(2003.11.7)
【出願人】(000158817)紀和化学工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】