説明

再構成ヒストンメチルトランスフェラーゼ複合体及びそのモジュレーターの識別方法

本発明は、EEDと、EZH2と、SUZ12とを包含する再構成複合体を提供し、ここで再構成複合体はヒストンH3のリジン27(H3−K27)に対してヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性を有する。再構成複合体は、RbAp48、AEBP2、あるいはそれらの両方をさらに含むことができる。再構成複合体の製造方法、再構成複合体のHTMase活性を阻害する化合物を識別する方法、及び、癌を治療するための候補化合物を識別する方法も開示する。再構成複合体を包含する試薬及びキットも更に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の情報]
本出願は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする2004年6月1日出願の米国仮出願60/575,880からの優先権を主張する。
【0002】
[政府の利益]
本発明は部分的に米国国立衛生研究所からの認可番号GM68804及び5−R01−GM63067−01の下の政府支援により実施した。合衆国政府は本発明において特定の権利を有する。
【0003】
[発明の分野]
本発明は再構成ヒストンメチルトランスフェラーゼ複合体及びそのモジュレーターの識別方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリコーム群(PcG)及びトリソラックス群(trxG)のタンパク質は細胞記憶系の部分であることがわかっている(Francis and Kingston(2001)Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2:409−421;Simon and Tamkun(2002)Curr.Opin.Genet.Dev.12:210−218)。両群のタンパク質は一過性に発現されるセグメント化遺伝子による胚性発生の早期に樹立されるホメオボックス(Hox)遺伝子発現の空間的パターンの維持に関与している。一般的にPcGタンパク質は「オフ状態」を維持する転写リプレッサーであり、そしてtrxGタンパク質は「オン状態」」を維持する転写活性化因子である。PcG及びtrxGタンパク質のメンバーは内因性のヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性を含有するため、PcG及びtrxGタンパク質はコアヒストンのメチル化を通じて細胞記憶に関与していると考えられる(Beisel,et al.(2002)Nature 419:857−862;Cao,et.al.(2002)Science 298:1039−1043;Czermin,et al.(2002)Cell 111:185−196;Kuzmichev,et al.(2002)Genes Dev.16:2893−2905;Milne et al.(2002)Mol.Cell 10:1107−1117;Muller,et al.(2002)Cell 111:197−208;Nakamura,et al.(2002)Mol.Cell 10:1119−1128)。
【0005】
生化学及び遺伝子の研究により、ショウジョウバエのPcGタンパク質は、複合体の組成は動的であるものの、少なくとも2つの異なるタンパク質複合体、ポリコーム抑制複合体1(PRC1)及びESC−E(Z)複合体において機能しているという証拠が得られている(Otte and Kwaks(2003)Curr.Opin.Genet.Dev.13:448−454)。ショウジョウバエ(Czermin,et al.(2002)Cell 111:185−196;Muller,et al.(2002)Cell 111:197−208)及び哺乳類細胞(Cao,et al.(2002)Science 298:1039−1043;Kuzmichev,et al.(2002)Genes Dev.16:2893−2905)における試験はESC−E(Z)/EED−EZH2複合体が内因性ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を有することを示している。種々のグループにより単離された複合体の組成は若干異なるが、それらは一般的にEED、EZH2、SUZ12及びRbAp48又はそのショウジョウバエホモログを含有する。
【0006】
Hox遺伝子サイレンシングに加えて、EED−EZH2媒介ヒストンH3−K27メチル化がX不活性化に関与していることがわかっている(Plath,et al.(2003)Science 300:131−135;Silva,et al.(2003)Dev.Cell 4:481−495)。XiへのEED−EZH2複合体のリクルートメント及びその後のヒストンH3−K27上のトリメチル化はX不活性化の開始段階の間に起こり、そしてXistRNAに依存している。更に又、EZH2及びその関連ヒストンH3−K27のメチルトランスフェラーゼ活性は多能性の原外胚葉細胞及び分化した栄養外胚葉を示差的にマークすることがわかっている(Erhardt,et al.,(2003)Development 130:4235−4248)。多能性の原外胚葉細胞の後成的な修飾パターンを維持することにおけるEZH2の役割と一貫して、EZH2のCre媒介の欠失はこれらの細胞におけるヒストンH3−K27の消失をもたらす(Erhardt,et al.(2003)Development 130:4235−4248)。更に又、前立腺癌及び乳癌の細胞系統及び組織における研究はEZH2及びSUZ12の量とこれらの癌の侵襲性との間の強い相関を明らかにしており(Bracken,et al.(2003)EMBO J.22:5323−5335;Kirmizis,et al.(2003)Mol.Cancer Ther.2:113−121;Kleer,et al.(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:11608−11611;Varambally,et al.(2002)Nature 419:624−9)、EED−EZH2複合体の機能障害が癌の一因となることを示している。
【0007】
EED−EZH2複合体媒介ヒストンH3−K27メチル化が種々の重要な課程に関与しているとすれば、この複合体の活性を調節する物質及びそれを識別するための方法が当分野で必要とされている。
【発明の開示】
【0008】
本発明はRbAp48及び/又はAEBP2の存在下又は非存在下におけるEZH2、EED及びSUZ12を含む再構成複合体の内因性ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性を明らかにしており、ここで、再構成複合体はホメオボックス(Hox)遺伝子サイレンシングを促進し、X不活性化に関与し、生殖細胞系統の発生において役割を果たし、及び/又は幹細胞の多能性において役割を果たしている。天然の複合体は癌にも関連している。従って、本発明の方法は癌を治療するための化合物及び/又はHox遺伝子サイレンシング、X不活性化、ゲノムインプリンティング、幹細胞多能性及び/又は生殖細胞系統の発生を調節する化合物を識別するために実施することができる。
【0009】
転写調節にヒストンメチル化が関与する機序はHMTase SUV39H1及びその機能的パートナーHP1により最も良好に説明される。SUV39H1及びそのS.pombeホモログClr4がヒストンH3のリジン9をメチル化し、これにより、そのクロモドメインを介したHP1の後のリクルートメントのための結合部位を形成するモデルが示唆されている(Bannister,et al.(2001)Nature 410:120−124;Lachner,et al.(2001) Nature 410:116−120;Lachner,et al.(2001)Nature 410:116−120;Nakayama,et al.(2001) Science 292:110−113;Rea,et al.(2000)Nature 406:593−599)。同様に、本発明者らはESC−E(Z)/EED−EZH2複合体のヒストンH3−K27メチル化は、ポリコーム(Pc)タンパク質(Cao and Zhang(2004)Curr.Opin.Genet.Dev.14:155−164)、PRC1複合体のコア成分のクロモドメインによるヒストンH3のメチル化リジン27の特異的認識を介してPRC1複合体のリクルートメントを支援することを提案している(Francis,et al.(2001)Mol.Cell 8:545−556)。4系統の証拠がこの示唆と合致している。第1にインビトロ試験によればPcクロモドメインは非メチル化の対応物質と比較した場合にリジン27メチル化ヒストンペプチドに対して高値の親和性を有していることが示されている(Cao et al.(2002)Science 298:1039−1043;Czermin,et al.(2002)Cell 111:185−196;Kuzmichev,et al.(2002)Genes Dev.16:2893−29)。第2に、RNAi実験と組み合わせたクロマチン免疫沈降(ChlP)によれば、Ubx遺伝子のポリコーム応答性エレメント(PRE)上のESC−E(Z)結合の消失はヒストンH3−K27メチル化及び同時に起こるPc結合の消失と相関することが示されている(Cao et al.(2002)Science 298:1039−1043)。第3に、構造試験によれば、リジン27の前のヒストンH3のアミノ酸がPcクロモドメインによるメチル化リジン27の特異的認識に寄与していることがわかっている(Fischle,et al.(2003)Genes Dev.17:1870−1881;Min,et al.(2003)Genes Dev.17:1823−1828)。更に又、E(Z)HMTase活性を根絶させるアミノ酸置換もまたwing imaginal discにおけるUbx遺伝子のPcGサイレンシングに寄与するその能力を排除する(Muller,et al.(2002)Cell 111:197−20)。総合すれば、これらのデータはE(Z)のHMTase活性はPRC1複合体のリクルートメント並びにHox遺伝子のサイレンシングにおいて重要な役割を果たしていることを示している。
【0010】
本発明の実施形態はEEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体であって、再構成複合体がヒストンH3のリジン27(H3−K27)に対してヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性を有する再構成複合体を提供する。代表的な実施形態において、再構成複合体は更にRbAp48、AEBP2又は両方を含む。更に別の実施形態において、再構成複合体はEEDと、EZH2と、SUZ12とから実質的になるものであり、再構成複合体がヒストンH3のリジン27(H3−K27)に対してヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性を有する。
【0011】
本発明は更に、(a)EEDタンパク質をコードする異種核酸配列と、(b)EZH2タンパク質をコードする異種核酸配列と、(c)SUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列とを含む宿主細胞を準備するステップと、タンパク質の発現及び再構成複合体の生産に十分な条件下で宿主細胞を培養するステップとを含む再構成複合体の製造方法を提供する。
【0012】
1つの実施形態において、本発明は(a)EEDタンパク質をコードする異種核酸配列と、(b)EZH2タンパク質をコードする異種核酸配列と、(c)SUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列とを含む宿主細胞を提供する。代表的な実施形態においては、宿主細胞は昆虫細胞である。更に別の実施形態においては、昆虫細胞はSf9細胞である。
【0013】
本発明は更に、EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体のヒストンH3のリジン(lysine)27(H3−K27)に対するヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性をモジュレートする化合物を識別する方法を提供する。ここでこの方法は、被験化合物の存在下にヒストン基質に再構成複合体を接触させるステップと、H3−K27メチル化をもたらすために十分な条件下でH3−K27メチル化のレベルを検出するステップとを含み、被験化合物非存在下におけるH3−K27メチル化のレベルと比較した場合のH3−K27メチル化の変化は、被験化合物が再構成複合体のH3−K27HTMase活性のモジュレーターであることを示す。一部の実施形態においては、識別された化合物はHTMase活性の阻害剤である。別の実施形態においては、識別された化合物はHTMase活性の活性化剤である。
【0014】
更に別の実施形態において、本発明は、被験化合物の存在下にヒストン基質にEEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体を接触させるステップと、H3−K27メチル化をもたらすために十分な条件下でヒストンH3のリジン27(H3−K27)のヒストンメチル化のレベルを検出するステップとを含む癌の治療のための候補化合物を識別する方法を提供し、ここで、被験化合物非存在下におけるH3−K27メチル化のレベルと比較した場合のH3−K27メチル化の低下は、被験化合物が癌の治療のための候補化合物であることを示す。
【0015】
本発明は更に、EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体のH3−K27ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性の阻害剤に細胞を接触させることを含むヒストンH3のリジン27(H3−K27)のメチル化を抑制する方法を提供する。代表的な実施形態においては、細胞は培養された細胞である。別の代表的実施形態においては、細胞は対象中のインビボの細胞である。
【0016】
本発明の実施形態は更に、EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体を、任意選択的に懸濁培地と中に含む、ヒストンH3のリジン27(H3−K27)のメチル化の検出の感度を上昇させるための試薬を提供する。
【0017】
本発明は更に、被験化合物の存在下にヒストン基質にEEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体を接触させること、及び、H3−K27メチル化をもたらすために十分な条件下でヒストンH3のリジン27(H3−K27)のヒストンメチル化のレベルを検出することを含む、Hox遺伝子(例えばHoxA9)の発現を抑制する化合物を識別する方法を提供する。ここで、被験化合物非存在下におけるH3−K27メチル化のレベルと比較した場合のH3−K27メチル化の低下は、被験化合物がHox遺伝子抑制のための候補化合物であることを示す。
【0018】
本発明のこれら及び他の態様は以下の詳細な説明においてより詳細に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を、本発明の実施形態を示す添付の図面を参照しながらより詳細に記載する。しかしながら、本発明は種々の形態で実施してよく、そして、本明細書に記載する実施形態に限定されない。むしろ、これらの実施形態は開示が十分で完全なものとなるように、そして、当業者に本発明の範囲を十分伝達するために呈示する。
【0020】
特段の記載が無い限り、本明細書において使用する全ての技術的及び学術的な用語は本発明が属する分野の通常の当業者により共通して理解されるものと同様の意味を有する。本明細書に記載した本発明の説明において使用する用語は特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、本発明を限定するものではない。本明細書において言及した全ての出版物、特許出願、特許及び他の参考文献は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0021】
本発明の説明及び添付する請求の範囲において使用する場合、特段に明示しない限り単数と複数を区別しない。更に又、本明細書においては、「及び/又は」とは関連する列挙されたアイテムの1つ以上の何れか及び全ての可能な組み合わせ並びに代替(「又は」)において解釈される場合は組み合わせの欠如を包含するものとする。「約」という用語は、本明細書においては、タンパク質の量、用量、時間、温度、酵素活性又は他の生物学的活性等のような測定可能な値を指す場合は、特定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%更には0.1%の変動を包含する意味を有する。
【0022】
特段の記載がない限り、当業者に既知の標準的な方法を遺伝子のクローニング、核酸の増幅及び検出等のために使用してよい。このような手法は当業者に既知である。例えばSambrook et al.,Molecular Cloning「A Laboratory Manual 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,NY,1989);F.M.Ausubel et al.Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkを参照)。
【0023】
クロマチン構造は遺伝子の調節及び後成的な遺伝において役割を果たしている。ヒストンの翻訳後の修飾は、より高次のクロマチン構造の樹立及び維持に関与している。更に又特定のコアヒストンのテール部をアセチル化、メチル化、リン酸化、リボシル化及びユビキチン化により修飾することができることも報告されている。本発明はメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性を示すタンパク質複合体の再構成に部分的に基づいている。
【0024】
[I.再構成タンパク質複合体]
ある実施形態によれば、本発明は再構成複合体がヒストンH3のリジン残基に対してヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性を有するEEDと、EZH2と、SUZ12とを含むか、これらから実質的になるか、又はこれらからなる、再構成複合体を提供する。特定の実施形態においては、再構成複合体はヒストンH3のリジン27(H3−K27)に対してHMTase活性を有する。一部の実施形態においては、EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体は、RbAp48、AEBP2あるいはこれらの両方を更に含む。従って、再構成複合体はRbAp48及び/又はAEBP2の存在下又は非存在下で、EEDと、EZH2と、SUZ12とを含むことができる。特定の実施形態においては、複合体はRbAp48を含まない。
【0025】
代表的な実施形態においては、再構成複合体はH3−K27に対して特異的なHMTase活性を有している。このことは、観察されるHMTase活性の実質的に全て(例えば少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、98%以上)がH3−K27に指向されていることを意味する。本発明の一部の実施形態においては、H3−K27以外の部位では検出可能なメチル化は皆無、又は実質的に皆無である。更に別の実施形態においては、一部のメチル化(例えば5%又は10%未満)が他の部位、例えばH3−K9において検出される。
【0026】
本明細書においては、「再構成」という用語は個別の単離された成分から製剤された組み換え複合体を指す。本明細書においては、「組み換え体」とは、組み換え技術により形成された、即ち当分野で周知の遺伝子工学の手法を利用して作成された産物を指す。
【0027】
本明細書においては、「単離された」とはある成分が関連している天然に存在する複合体の他の成分又は関連要素の少なくとも一部から分離された、又は実質的にこれらを含有しないその成分を指す。
【0028】
「EED」、「EZH2」、「SUZ12」、「RbAp48」及び/又は「AEBP2」は本明細書に記載する場合は、種々の生物由来のホモログ類を包含する。特定の実施形態においては、EED、EZH2、SUZ12、RbAp48及び/又はAEBP2は哺乳類(例えばヒト、サル、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ等)のタンパク質、ショウジョウバエタンパク質(例えばESC、E(Z)、Su(Z)12及びp55)、線虫タンパク質(例えばMES−2、MES−3及びMES−4)、植物タンパク質又はその組み合わせであってよい。上記したタンパク質の「その組み合わせ」とは、少なくとも1つのタンパク質がある生物から誘導され得、そして少なくとも1つのタンパク質が異なる生物から誘導され得ることを指す。例えば、EEDは哺乳類タンパク質であってよく、そしてEZH2は植物タンパク質であってよい。
【0029】
EED、EZH2、SUZ12、RbAp48及び/又はAEBP2という用語は当業者の理解する通り、機能的又は生物学的に活性なその変異体、アイソフォーム、誘導体、フラグメント等を包含することができる。本明細書においては、「変異体」とはアミノ酸1つ以上により改変されるアミノ酸配列を指す。変異体は「保存的な」変化を有してよく、その場合置換されたアミノ酸は同様の構造的又は化学的特性を有する。特に、このような変化は、アミノ酸を本質的に同様の機能的特性を有する他のアミノ酸と置換できるようにする電荷密度、疎水性/親水性、大きさ及び配置のような物理的特徴におけるアミノ酸間の既知の同様性を指針とするものである。例えば、AlaはVal又はSerで置き換えてよく;ValはAla、Leu、Met又はIle、好ましくはAla又はLeuで置き換えてよく;LeuはAla、Val又はIle、好ましくはVal又はIleで置き換えてよく;GlyはPro、又はCys、好ましくはProで置き換えてよく;ProはGly、Cys、Ser又はMet、好ましくはGly、Cys又はSerで置き換えてよく;CysはGly、Pro、Ser又はMet、好ましくはPro又はMetで置き換えてよく;MetはPro又はCys、好ましくはCysで置き換えてよく;HisはPhe又はGln、好ましくはPheで置き換えてよく;PheはHis、Tyr又はTrp、好ましくはHis又はTryで置き換えてよく;TyrはHis、Phe又はTrp、好ましくはPhe又はTrpで置き換えてよく;TrpはPhe又はTyr、好ましくはTyrで置き換えてよく;AsnはGln又はSer、好ましくはGlnで置き換えてよく;GlnはHis、Lys、Glu、Asn又はSer、好ましくはAsn又はSerで置き換えてよく;SerはGln、Thr、Pro、Cys又はAlaで置き換えてよく;ThrはGln又はSer、好ましくはSerで置き換えてよく;LysはGln又はArgで置き換えてよく;ArgはLys、Asp又はGlu、好ましくはLys又はAspで置き換えてよく;AspはLys、Arg又はGlu、好ましくはArg又はGluで置き換えてよく;そしてGluはArg又はAsp、好ましくはAspで置き換えてよい。変化があった場合は、その後にそれを日常的にスクリーニングすることにより機能に対するその作用を調べることができる。
【0030】
或いは、変異体は「非保存的」変化(例えばグリシンとトリプトファンの置換)を有していてもよい。類似の僅かな変異はまたアミノ酸の欠失又は挿入、あるいはこれらの両方を包含してよい。生物学的活性を根絶させること無く置換、挿入又は欠失させることができるアミノ酸残基を調べる場合の指針は、例えば、LASERGENE(商標)ソフトウエアのような当分野で周知のコンピュータープログラムを使用して得ることができる。特定の実施形態においては、「機能的変異体」は目的の化合物に通常備わっている生物学的活性の少なくとも1つ(例えばH3−K27HMTase活性)を保持している。特定の実施形態においては、「機能的変異体」は天然の成分に通常は伴っている生物学的活性(例えばK27特異的HMTase活性)の少なくとも約40%、50%、60%、75%、85%、90%、95%以上を保持している。
【0031】
本明細書においては、「誘導体」とは化学修飾に付されている成分を指す。タンパク質成分の誘導体化はアセチル基、アシル基、アルキル基、アミノ基、ホルミル基又はモルホリノ基による水素の置換を包含してよい。誘導体分子は天然に存在する分子の生物学的活性を保持することができるが、より存続期間が長いこと、又は活性が増強されていることのような利点を与えることができる。
【0032】
特定の実施形態においては、再構成複合体のタンパク質成分の何れかの生物学的活性な変異体又は誘導体は天然に存在するタンパク質のアミノ酸配列と、少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%以上のアミノ酸配列の類似性(similarity)又は一致性(identity)を有する。
【0033】
本明細書においては、「フラグメント」とは、ある成分に通常備わっている生物学的活性の少なくとも1つ(例えばH3−K27HMTase活性)を保持しているその成分の部分を指し、完全長のタンパク質と比較して少なくとも約50%、70%、80%、90%以上の生物学的活性を有することができるか、或いは、さらなる生物学的活性を有する。例えば、特定の実施形態においては、EZH2のフラグメントは触媒ドメイン、SAM結合部位及び/又はSETドメインを含む。一般的に、フラグメントは複合体形成に関与する能力を保持している。代表的な実施形態においては、フラグメントは完全長タンパク質の少なくとも約50、100、150、200、250又は500連続アミノ酸を含む。
【0034】
再構成複合体の成分のアイソフォームは当分野で周知である。例えば、Kuzmichev,et al.Mol.Cell 14(2):183−93(2004)及びPasini et al.Cell Cycle 3:22−26(2004)はEEDアイソフォームを記載している。更に、例えば、GenBankアクセッション番号NM_004456及びNP_004447(EZH2、ヒトアイソフォームa);GenBankアクセッション番号NM_152998及びNP_694543(EZH2、ヒトアイソフォームb);GenBankアクセッション番号NM_003797及びNP_003788(EED、ヒトアイソフォームa);GenBankアクセッション番号NM_152991及びNP_694536(EED、ヒトアイソフォームb);GenBankアクセッション番号NM_143802及びNP_652059(SU(Z)12、キイロショウジョウバエ由来のアイソフォームa):及びGenBankアクセッション番号NM_168826及びNP_730465(SU(Z)12、キイロショウジョウバエ由来のアイソフォームb)も参照できる。
【0035】
別の実施形態においては、本発明の再構成複合体はネイティブの複合体の酵素活性に匹敵する(comparable)酵素活性を有する(例えば少なくとも70%、80%、90%、95%以上)。他の実施形態においては、再構成複合体はネイティブ複合体の基質特異性に匹敵する基質特異性を有する(例えばヌクレオソーム型においてH3に対する選択性(preference)、そしてモノヌクレオソーム型と比較した場合にジヌクレオソーム又はオリゴヌクレオソームに対して更に選択性を有する)。特定の実施形態においては、ヒストン基質はコアヒストン又はヒストン複合体である(即ちDNAを含まない、又はDNAを実質的に含まない)。一部の実施形態においては、ヒストン基質はヌクレオソーム中で存在する(即ち再構成複合体はヒストン基質を含むヌクレオソームと接触する)。更に詳細には、ヒストン基質はコアヒストン、ヒストンオクタマー又はヌクレオソーム、モノヌクレオソーム、ジヌクレオソーム又はオリゴヌクレオソームであり得るが、これらに限定されない。特定の実施形態においては、ヒストン基質はジヌクレオソームである。
【0036】
本発明は、本発明の再構成複合体の製造方法を更に提供する。この方法は、再構成複合体のタンパク質をコードする異種核酸配列を含む宿主細胞を準備するステップと、タンパク質の発現及び再構成複合体の生産のために十分な条件下で宿主細胞を培養するステップとを含むか、これらから実質的になるか、又はこれからなるものである。特定の実施形態においては、再構成複合体の製造方法においては、宿主細胞は(a)EEDタンパク質をコードする異種核酸配列と、(b)EZH2タンパク質をコードする異種核酸配列と、(c)SUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列とを含み、そしてタンパク質の発現及び再構成複合体の生産に十分な条件下で宿主細胞を培養する。一部の実施形態においては、宿主細胞は更に(d)RbAp48タンパク質をコードする核酸配列、(e)AEBP2タンパク質をコードする核酸配列、又は(f)それらの両方を含む。
【0037】
本明細書においては、「核酸」とはRNA及びDNAの両方、例えばcDNA、ゲノムDNA、合成(例えば化学合成)DNA及びRNA及びDNAのキメラを包含する。核酸は2本鎖又は1本鎖であってよい。1本鎖の場合は、核酸はセンス鎖又はアンチセンス鎖であってよい。核酸はオリゴヌクレオチドの類似体又は誘導体(例えばイノシン又はホスホロチオエートヌクレオチド)を用いて合成してよい。このようなオリゴヌクレオチドは例えば、改変された塩基対形成能力又は増大したヌクレアーゼ耐性を有する核酸を調製するために使用できる。
【0038】
「異種核酸」という用語は当分野で周知であり、それが導入されている宿主細胞内には通常は存在しない核酸であることは、業者が容易に理解するものであり、及び/又は宿主細胞内に通常は存在しない調節エレメントの制御下に発現される核酸である。本発明の異種核酸はまた、核酸が導入されている細胞内に存在する量とは通常異なる量において存在するか、そのような量において発現される核酸であることができる。異種核酸は典型的には宿主細胞内に天然に存在しない配列のものである。或いは、再構成複合体の成分をコードする異種核酸は適切な発現制御配列、例えば転写/翻訳制御シグナル及びポリアデニル化シグナルを伴うことができる。
【0039】
所望の量及び組織特異的な発現に応じて、種々のプロモーター/エンハンサーのエレメントを使用できることが理解される。プロモーターは所望の発現のパターンに応じて構成性又は誘導性(例えば、メタロチオネインプロモーターまたはホルモン誘導プロモーター)であることができる。プロモーターはネイティブ又は外来性であることができ、そして天然又は合成の配列であることができる。外来性とは、プロモーターが導入される野生型の宿主内にプロモーターが検出されないことを意図している。プロモーターは、それが目的の標的細胞内で機能するように選択する。更に又、挿入されたタンパク質コーディング配列の効率的な翻訳のためには特定の開始シグナルが一般的に必要である。ATG開始コドン及び隣接する配列を含むことができるこれらの翻訳制御配列は種々の起源、天然及び合成の両方であることができる。再構成複合体の成分をコードする異種核酸が転写すべき別の配列を含む本発明の実施形態において、転写単位は別個のプロモーターと、又は単一の上流のプロモーター及び1つ以上の下流の内部リボソーム進入部位(IRES)配列(例えばピコルナウイルスEMC IRES配列)と作動可能に結合することができる。
【0040】
適当な宿主細胞は当分野で周知である。例えば、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)を参照できる。例えば、宿主細胞は原核生物又は真核生物の細胞であることができる。更に、ポリペプチド及び/又はタンパク質は大腸菌のような細菌細胞、昆虫細胞(例えばバキュロウイルス発現系)、酵母細胞、植物細胞又は哺乳類細胞(例えばヒト、ラット、マウス、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、サル等)中で発現することができる。宿主細胞は培養細胞、例えば初代細胞系統又は不死化細胞系統の細胞であることができる。宿主細胞はバイオリアクターとして実質的に使用される微生物、動物又は植物における細胞であることができる。本発明の特定の実施形態においては、宿主細胞は周知の発現ベクターの複製を可能にする何れかの昆虫細胞である。例えば、宿主細胞はSpodoptera frugiperda由来、例えばSf9又はSf21細胞系統、ショウジョウバエ細胞系統又はカの細胞系統、例えばヒトスジシマカ誘導細胞系統であることができる。異種タンパク質の発現のための昆虫細胞の使用は、核酸、例えばベクター、例えば昆虫細胞適合ベクターをそのような細胞に導入する方法及び培養物としてそのような細胞を維持する方法のように、多く報告されている。例えばMethods in Molecular Biology,ed.Richard,Humana Press,NJ(1995);O’Reilly et al.,Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,Oxford,Univ.Press(1994);Samulski et al.,J.Vir.63:3822−B(1989);Kajigaya et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4646−50(1991);Ruffing et al.,J.Vir.66:6922−30(1992);Kimbauer et al.,Vir.219:37−44(1996);Zhao et al.,Vir.272:382−93(2000);及びSamulski et al.,の米国特許第6,204,059号を参照できる。本発明の特定の実施形態においては、昆虫細胞はSf9細胞である。
【0041】
一部の実施形態においては、再構成複合体の製造方法は培養宿主細胞又は培養宿主細胞由来の培地から発現された再構成複合体を単離することを含む。単離された再構成複合体は所望の量のタンパク質及び純度レベルを得るための操作法の組み合わせ及びその反復を包含することができる周知のタンパク質の単離及び精製手法に従って単離及び精製することができる。
【0042】
従って、一部の実施形態においては、再構成複合体の製造方法は、発現した再構成複合体を固体支持体に結合することを含む。固体支持体は粒子、ビーズ、ゲル又はプレートのような当分野で知られた何れかの適当な形態の、砂、シリカ、ケイ酸塩、シリカゲル、ガラス、ガラスビーズ、ガラス繊維、アルミナ、ジルコニア、チタン、ニッケル及び適当な重合体物質(アガロース、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリスチレンにグラフト重合又は共有結合したポリエチレングリコール(PEGポリスチレンとも称する)を含むがこれらに限定されない)を含む無機及び/又は有機の粒状支持体物質であることができる。固体支持体は発現された再構成複合体に結合するために使用することができる当分野で知られたような部分、例えば発現された再構成複合体に向けられたニッケル、抗体または酵素基質(例えばグルタチオン)を含むことができる。検出は市販の検出可能な物質を含む適切な検出可能な物質に、所望のタンパク質又はタンパク質に向けられた抗体をカップリング又はタギング(即ち物理的に連結)することにより促進することができる。検出可能な物質の例は、種々の抗体、酵素、ペプチド及び/又はタンパク質タグ、補欠分子族、蛍光物質、ルミネセント物質、バイオルミネセント物質及び放射性物質を含むがこれらに限定されない。適当な抗体、例えばEZH2及びSUZ12に対する抗体はCao,et.al.Science 298:1039−1043(2002)、Peters et al.Mol.Cell 12:1577−1589(2002);及びPlath et.al.Science 300:131−135(2003)に記載されている。適当な酵素の例は、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、セイヨウワサビパーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼを含むがこれらに限定されない。ペプチド及び/又はタンパク質タグの例は、ポリヒスチジンペプチドタグ、FLAGペプチドタグ、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)及びカルモジュリン結合ペプチドを含むがこれらに限定されない。適当な補欠分子族の例は、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含むがこれらに限定されない。適当な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリスリンを含むがこれらに限定されない。ルミネセント物質の例はルミナールを含む。発光性物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを含むがこれらに限定されない。適当な放射性物質の例は、125I、131I、35I及び3Hを含むがこれらに限定されない。特定の実施形態においては、発現された再構成複合体は精製タグを含む(例えば成分の何れかの1つ以上をタグ付けすることができる)。一部の実施形態においては、本発明の再構成複合体は少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%以上(w/w)の純度レベルを有する。
【0043】
本発明の別の実施形態においては、宿主細胞は上記したタンパク質をコードする異種核酸配列で安定に形質転換することができる。「安定な形質転換」とは本明細書においては、一般的に、宿主細胞に導入された異種核酸配列が宿主細胞のゲノム内に組み込まれない「一過性の形質転換」とは対照的な、宿主細胞のゲノム内への異種核酸配列の組み込みを指す。「安定な形質転換」という用語は更にエピソーム(例えばエプスタイン・バーウイルス(EBV))の安定な発現も指すことができる。
【0044】
特定の実施形態においては、宿主細胞は、EEDタンパク質、EZH2タンパク質及びSUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列で安定に形質転換される。任意選択的に、宿主細胞は、RbAp48タンパク質及び/又はAEBP2タンパク質、あるいはこれらの両方をコードする異種核酸配列で安定に形質転換される。
【0045】
一部の実施形態においては、宿主細胞は上記したタンパク質、特にEEDタンパク質、EZH2タンパク質及びSUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列を含む組み換えベクター1つ以上を含む。本明細書においては、「組み換えベクター」とはヌクレオチド配列(即ちトランスジーン)1つ以上、例えば2、3、4、5以上の異種ヌクレオチド配列を含むウイルス性又は非ウイルス性のベクターを指す。特定の実施形態においては、一以上のベクターは、(i)EEDタンパク質をコードする異種核酸配列を含むベクターと、(ii)EZH2タンパク質をコードする異種核酸配列を含む別個のベクターと、(iii)SUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列を含む更に別個のベクターとを含む。他の実施形態においては、再構成複合体の製造方法は更に1つ以上のベクターで宿主細胞を形質転換することを含む。再構成複合体の成分は、各々別個のベクターから発現されうる。或いは、単一のベクターが再構成複合体の1以上の成分をコードすることができる。
【0046】
適当なベクターは、ウイルスベクター(例えばバキュロウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス又は単純疱疹ウイルス)、脂質ベクター、ポリリジンベクター、核酸分子とともに使用される合成ポリアミノ重合体ベクター、例えばプラスミド等を含む。送達ベクター類はセクションIVにおいてより詳細に記載する。
【0047】
別の実施形態においては、本発明は再構成複合体のタンパク質の各々をコードする異種核酸配列を含むか、これから実質的になるか、又はこれからなる、宿主細胞を提供する。特定の実施形態においては、宿主細胞は、(a)EEDタンパク質をコードする異種核酸配列と、(b)EZH2タンパク質をコードする異種核酸配列と、(c)SUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列とを含むか、これから実質的になるか、又はこれからなる。さらに、任意選択的に、宿主細胞は、(d)RbAp48タンパク質をコードする異種核酸配列、(e)AEBP2タンパク質をコードする核酸配列、又は(f)それらの両方を含むか、これらから実質的になるか、又はこれらからなる。適当な宿主細胞は上記の通りである。一部の実施形態においては、宿主細胞は昆虫細胞である。特定の実施形態においては、昆虫細胞はSf9細胞である。
【0048】
さらに、宿主細胞は、再構成複合体のタンパク質をコードする異種核酸配列、例えばEEDタンパク質をコードする異種核酸配列、EZH2タンパク質をコードする異種核酸配列、SUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列により安定に形質転換できる。さらに、任意選択的に、宿主細胞は、RbAp48タンパク質をコードする異種核酸配列、AEBP2タンパク質をコードする核酸配列、又はそれらの両方により安定に形質転換できる。一部の実施形態においては、宿主細胞は上記した異種核酸配列を含む組み換えベクター1つ以上を含む。更に別の実施形態においては、1つ以上のベクターは(i)EEDタンパク質をコードする異種核酸配列を含むベクターと、(ii)EZH2タンパク質をコードする異種核酸配列を含む別個のベクターと、(iii)SUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列を含む更に別個のベクターとを含む。適当なベクターは本明細書に記載する通りである。本発明の実施態様によれば、ベクターはバキュロウイルスベクターであることができる。
【0049】
EZH2、EED、SUZ12、AEBP2及びRbAp48の核酸及びアミノ酸配列は当分野で知られており、例えばChen et al.,(1996)Genomics 15;38(1):30−7(EZH2);Schumacher et al.,(1998)Genomics 15;54(1):79−88(EED);Kuzmichev et al.,(2004)Mol.Cell 14(2):183−93(EED);Pasini et al.(2004)Cell Cycle 3:22−26(EED);Birve et al.,(2001)Development 128:3371−3379(SUZ12);Qian et al.,(1993)Nature 264:648−652(RbAp48);Cao et al.(2004)Mol.Cell 15:57−67 and Zang et al.(1999)Genes Dev 13:1924−1935(バキュロウイルス発現哺乳類RbAp48);He et al.,(1999)J.Biol.Chem.21:274(21):14678−84(AEBP2);GenBankアクセッション番号NM_004456及びNP_004447(EZH2、ヒトアイソフォームa);GenBankアクセッション番号NM_152998及びNP_694543(EZH2、ヒトアイソフォームb);GenBankアクセッション番号NM_079297及びNP_524021(E(Z)、キイロショウジョウバエ);GenBankアクセッション番号NM_003797及びNP_003788(EED、ヒトアイソフォームa);GenBankアクセッション番号NM_152991及びNP_694536(EED、ヒトアイソフォームb);GenBankアクセッション番号NM_058083及びNP_477431(ESC、キイロショウジョウバエ);GenBankアクセッション番号NM_015355及びNP_056170(SUZ12、ヒト);GenBankアクセッション番号NM_143802及びNP_652059(SU(Z)12、キイロショウジョウバエ由来のアイソフォームa):及びGenBankアクセッション番号NM_168826及びNP_730465(SU(Z)12、キイロショウジョウバエ由来のアイソフォームb);GenBankアクセッション番号NM_005610及びNP_005601(RbAp48、ヒト);及びGenBankアクセッション番号NM_153207及びNP_694939(AEBP2、ヒト)を参照することができる。
【0050】
[II.スクリーニング法]
本発明は更に本明細書に記載した再構成複合体のヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性をモジュレートする化合物、又は、ヒストンH3及び/又はヌクレオソームへの再構成複合体の結合をモジュレートする化合物を識別する方法を提供する。本明細書においては、「モジュレートする」又は「モジュレーション」とは特定の活性における増強(例えば増大)又は抑制(例えば低減)を指す。「増強」、「増強する」又は「増強すること」という用語は特定のパラメーターの増大(例えば少なくとも約1.1倍、1.25倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、12倍、又は15倍以上の増大)を指す。「抑制する」又は「低減する」という用語又はその文法上の変化形は、本明細書においては、少なくとも約10%、25%、35%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、95%以上の特異的活性の低減又は減衰を指す。特定の実施形態においては、抑制又は低減は僅かであるか、又は実質的に皆無である検出可能な活性をもたらす(最大でも有意でない量、例えば約10%、更には5%未満)。
【0051】
一部の実施形態においては、本発明はEEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体のヒストンH3のリジン27(H3−K27)に対するHMTase活性をモジュレートする化合物を識別する方法を提供し、本方法は、被験化合物の存在下にヒストン基質に再構成複合体を接触させること、及び、H3−K27メチル化をもたらすために十分な条件下でH3−K27メチル化のレベルを検出することを含むか、これから実質的になるか、又はこれからなるものであり、ここで、被験化合物非存在下のH3−K27メチル化のレベルと比較してH3−K27メチル化が変化していることは、被験化合物が再構成複合体のH3−K27HTMase活性のモジュレーターであることを示している。一部の実施形態においては、再構成複合体は、RbAp48、AEBP2あるいはこれらの両方をさらに含む。ここで、RbAp48及び/又はAEBP2は、哺乳類タンパク質、ショウジョウバエタンパク質、線虫タンパク質、植物タンパク質あるいはこれらの組み合わせである。特定の実施形態においては、被験化合物非存在下のH3−K27メチル化のレベルと比較してH3−K27メチル化が低減していることは被験化合物が再構成複合体のH3−K27HMTase活性の阻害剤であることを示している。「阻害剤」とは、本明細書においては、被験化合物の非存在下の活性の量と比較して特定の活性を被験化合物が低減する能力を指す。一部の実施形態においては、被験化合物は被験化合物の非存在下のHTMase活性の量と比較して、少なくとも約10%、25%、35%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、95%以上HTMase活性を低減又は減衰させる。特定の実施形態においては、僅かであるか、又は実質的に皆無である検出可能な活性となる(最大でも有意でない量、例えば約10%、更には5%未満)。別の実施形態においては、被験化合物非存在下のH3−K27メチル化のレベルと比較してH3−K27メチル化が増大していることは化合物が再構成複合体のH3−K27HMTase活性の活性化剤であることを示している。「活性化剤」とは、本明細書においては、被験化合物の非存在下の活性の量と比較して特定の活性を被験化合物が増大させる又は低減を防ぐ能力を指す。一部の実施形態においては、約1.1倍、1.25倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、12倍、又は15倍以上の増大)のHTMase活性の増大となる。
【0052】
再構成複合体のHMTase活性のモジュレーションは、当分野で知られた何れかの方法により、例えば放射標識メチルドナー、例えばS−アデノシル−L−メチオニン(SAM)を反応混合物に添加することにより、又は、Wang et al.Science 293:853−857(2001)に記載の通り、ヒストンH3リジン27のメチル化形態を特異的に認識する標識抗体(例えば蛍光標識抗体)を用いたELISAによりヒストンH3リジン27メチル化をモニタリングすることにより、測定することができる。スクリーニングの第1ラウンドにおいて識別された阻害剤又は活性化剤を、本明細書に開示したHMTase試験を用いてIC50及び特異性を調べるための試験において、個別に分析することができる。低値のIC50を有し、EED−EZH2酵素に対する特異性を示す化合物は更に、組織培養において分析することにより、H3−K27メチル化、細胞生育(例えばトリプシン処理及びトリパンブルー染色)及び/又は毒性に対するそのインビボの作用を調べることができる。
【0053】
本明細書に記載した方法によってスクリーニングされる被験化合物は、多くの化学クラスを包含し、合成または半合成の化学物質、精製された天然産物、タンパク質、抗体、ペプチド、ペプチドアプタマー、核酸、オリゴヌクレオチド、炭水化物、脂質又は他の小型又は大型の有機又は無機の分子を含むがこれらに限定されない。小分子は、そのような分子が経口吸収後により容易に吸収され、そして潜在的な抗原決定基が少ないことから、望ましい。非ペプチド物質又は小分子のライブラリは一般的に合成方法により調製されるが、酵素を使用した生合成方法における近年の進歩により、他の方法では化学合成が困難であった化学ライブラリを調製できるようになった。小分子ライブラリはまた種々の市販品、例えばSPECS及びBioSPEC B.V.(Rijswijk、Netherlands)、Chembridge Corporation(San Diego,CA)、Comgenex USA Inc.,(Princeton,NJ)、Maybridge Chemical Ltd.(Cornwall,UK)及びAsinex(Moscow,Russia)から得ることもできる。
【0054】
特定の実施形態においては、記載した再構成複合体のHTMase活性をモジュレートする化合物を識別する方法は細胞系の方法(cell-based method)、又は、無細胞系の方法(cell-free method)である。他の実施形態においては、方法は再構成複合体のモジュレーターを識別するための高スループットのスクリーニング能力を与える。例えば、本明細書に記載した方法に従って使用するための細胞系の高スループットスクリーニング試験はStockwell et al.,((1999)Chem.Bio.6:71−83)により開示されており、そこでは、DNA合成及び翻訳後のプロセシングのような生合成過程が小型化された細胞系の試験によりモニタリングされる。例えば、内因性HMTase活性の阻害剤を識別するための細胞形の試験は、HMTaseによりターゲティングされることがわかっているHox遺伝子のような標的遺伝子の上流領域に作動可能に連結したルシフェラーゼのようなレポーター遺伝子の使用を包含する。レポーター構築物を発現する細胞を被験化合物に曝露し、レポーター遺伝子の発現をモニタリングすることができる。阻害剤が再構成複合体を特異的にターゲティングすることを確認するためには、再構成複合体を使用した二次的なインビトロスクリーニングを用いる。或いは、再構成複合体の成分を、内因性複合体を欠失した細胞において発現させ、そしてモジュレーターを得るためのスクリーニングのために直接使用することができる。
【0055】
候補タンパク質結合分子の小分子ライブラリをスクリーニングするための高スループット無細胞系の方法は当分野で周知であり、そして再構成複合体の成分少なくとも1つに結合し、そしてHMTaseの活性又はヒストンへの結合をモジュレートする分子を識別するために使用できる。例えば、HeLa細胞から精製したヌクレオソームヒストン基質(例えばジヌクレオソームヒストン)をマルチウエルプレート又は他の適当な表面にコーティングし、そして再構成酵素複合体を含有する反応混合物を基質に添加する。再構成複合体の添加の前、同時又は後に、被験化合物を、基質を含有するウェル又は表面に添加することができる。生理学的状態を実質的に反映した溶液で反応混合物を洗浄することにより未結合又は弱く結合した被験化合物を除去することができる。或いは、被験化合物を固定化し、そして再構成複合体の溶液をカラム、フィルター又は他の表面に接触させることができる。再構成複合体のヒストンへの結合をモジュレートする被験化合物の能力を標識(例えば放射標識又はケミルミネセンス)又は競合ELISA試験により測定することができる。
【0056】
ライブラリスクリーニングは多重の反応の迅速な調製及び処理を可能にする何れかのフォーマットにおいて実施できる。被験物質並びに試験成分の保存溶液を手作業により調製し、その後の全てのピペッティング、希釈、混合、洗浄、インキュベート、試料の読み取り及びデータ収集は試験により生じたシグナル、即ち、市販のロボット式のピペッティング装置、自動化ワークステーション及びヒストンH3リジン27のメチル化を検出するための分析機器を用いて行う。
【0057】
種々の他の試薬は本発明のスクリーニング試験において包含させることができる。これらには最適なタンパク質−タンパク質結合及び/又はHMTase活性を促進するため、及び/又は、非特異的又はバックグラウンドの相互作用を低減するために使用することができる塩類、天然のタンパク質、例えばアルブミン、洗剤等のような試薬が包含される。更に又、試験の効率を向上させる試薬、例えばプロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗微生物剤等を使用してよい。成分の混合物は必要な結合及び/又はHMTase活性をもたらす何れかの順序で添加することができる。
【0058】
本発明はまた、EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体を被験化合物の存在下にヒストン基質と接触させること、及び、H3−K27メチル化をもたらすために十分な条件下でヒストンH3のリジン27(H3−K27)のヒストンメチル化のレベルを検出することを含むか、これから実質的になるか、又はこれからなる、増殖亢進性の障害、例えば腫瘍、癌及び新生物障害、並びに、前悪性及び非新生物性又は非悪性の増殖亢進性の障害を治療するための候補化合物を識別する方法を提供し、ここで、被験化合物非存在下におけるH3−K27メチル化のレベルと比較した場合のH3−K27メチル化の低下は、被験化合物が増殖亢進性の障害、例えば腫瘍、癌及び新生物障害、並びに、前悪性及び非新生物性又は非悪性の増殖亢進性の障害の治療のための候補化合物であることを示す。
【0059】
特定の実施形態においては、本発明は、癌を治療するための候補化合物を識別する方法を提供する。例示される癌は悪性障害、例えば乳癌;骨肉種;血管肉腫;腺維肉腫及び他の肉腫;白血病;リンパ腫;洞腫瘍;卵巣、子宮、膀胱、前立腺及び他の泌尿器の癌;結腸、食堂及び胃の癌及び他の胃腸の癌;肺癌;黒色腫;膵臓癌;肝癌;腎臓癌;内分泌癌;皮膚癌;及び脳又は中枢及び末梢の神経(CNS)系の腫瘍、悪性又は良性のもの(神経膠腫及び神経芽細胞腫を含む)を包含する。「癌を治療すること」又は「癌の治療」という用語では、癌の重症度を低下させるか、癌を少なくとも部分的に消失させることを意図する。
【0060】
一部の実施形態においては、被験化合物として機能する化合物は、SET7阻害剤を含むがこれらに限定されない、SETドメイン含有タンパク質を得るためのスクリーンから誘導することができる。SETドメインは、タンパク質メチルトランスフェラーゼ中に存在するシグネチャーモチーフであってよい保存された配列モチーフである。タンパク質メチルトランスフェラーゼでは、ヒストンメチル化を包含するメチルトランスフェラーゼ活性を幾つかのタンパク質が保有している。Zhang et al.Transcription regulation by histone methylation: interplay between different covalent modificaiton of the core histone tails,Genes & Development 15:2343−2360(2001)を参照できる。
【0061】
[III.別の用途及び対象]
上記スクリーニング法の他に、例えばヒストン機能の試験のためのHTMase活性をモジュレートするための化合物を識別するための研究用試薬として本発明の再構成複合体を使用することができる。例えば、H3−K27HMTase活性を増大させる化合物の識別は、H3−K27HMTase活性の調節物質としての修飾の機能を試験するために使用できる。
【0062】
他の実施形態によれば、本発明は、ヒストンメチル化を抑制する方法をさらに提供する。特に、EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体のH3−K27ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性の阻害剤に細胞を接触させるステップを含むか、これから実質的になるか、又はこれからなる、ヒストンH3のリジン27(H3−K27)のメチル化の抑制方法である。再構成複合体は、RbAp48、AEBP2、あるいはこれらの両方をさらに含むことができる。一部の実施形態においては、細胞は培養細胞である。別の実施形態においては、細胞は対象におけるインビボの細胞である。
【0063】
本発明を実施する対象は、適切には、トリ及び哺乳類を包含するがこれらに限定されない。哺乳類が好ましい。「トリ」という用語は、本明細書においては、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ及びキジを包含するがこれらに限定されない。一部の実施形態においては、ヒト対象が好ましい。ヒト対象は雌雄及び発達のいずれかの段階(即ち、新生児、小児、幼児、青年、成人)にある対象を包含する。本発明の一部の実施形態は主にヒト対象に関する実施に関わるものであるが、本発明は動物対象、特に哺乳類対象、例えば非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、ラット、マウス等に対して実施してよい。本発明は獣医科医療目的のため、薬剤スクリーニング及び薬剤開発の目的のために動物に対して実施される。
【0064】
別の実施形態においては、本発明は上記の再構成複合体の阻害剤及び製薬上許容し得る担体を含む医薬品製剤を提供する。本発明は更に医薬の調製のための上記の再構成複合体の阻害剤又は本発明に記載したスクリーニング試験の使用を提供する。
【0065】
本発明の実施形態は更に、EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体を含むか、これから実質的になるか、又はこれからなる、ヒストンメチル化、特にヒストンH3のリジン27(H3−K27)のメチル化の検出の感度を上昇させるための試薬を提供する。試薬は更に懸濁培地を含むことができる。再構成複合体は、RbAp48、AEBP2あるいはこれらの両方をさらに含むことができる。一部の実施形態においては、試薬を凍結乾燥する。特定の実施形態においては、試薬は癌の診断薬である。
【0066】
更に別の実施形態においては、本発明はヒストンメチル化の阻害を測定するためのキットを提供する。キットは、(a)EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体と、(b)再構成複合体のヒストンメチルトランスフェラーゼ(HTMase)活性の阻害を測定することを含むヒストンメチル化の抑制を測定するための方法に関する取扱説明書、及び、任意選択的に、HTMase活性の阻害を測定するための方法を実施するための別の試薬又は装置を含むか、これから実質的になるか、又はこれからなる。再構成複合体は更にRbAp48、AEBP2、あるいはこれらの両方を含むことができる。特定の実施形態においては、方法は(a)EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体と、(b)再構成複合体のH3−K27メチルトランスフェラーゼ(HTMase)活性の阻害を測定することを含むH3−K27メチル化の抑制を測定するための方法に関する取扱説明書と、任意選択的に、HTMase活性の阻害を測定するための方法を実施するための別の試薬又は装置を含むか、これから実質的になるか、又はこれからなる、ヒストンH3のリジン27(H3−K27)のヒストンメチル化の阻害を検出することに関する。一部の実施形態においては、再構成複合体は更にRbAp48、AEBP2、あるいはこれらの両方を含むことができる。
【0067】
[IV.送達ベクター]
当分野で知られている何れかのウイルスベクターを本発明において使用することができる。このようなウイルスベクターの例は、アデノウイルス科;バキュロウイルス科;ビルナウイルス科;ブンヤウイルス科;カリシウイルス科、カピロウイルス群;カリアウイルス群;カルモウイルス群;カウルモウイルス群;クロステロウイルス群;コメリナ黄斑ウイルス群;コモウイルス群;コロナウイルス科;PM2ファージ群;コルシコウイルス科;クリプティックウイルス群;クリプトウイルス群;ククモウイルス群のファミリー;[PHgr]6ファージ群;サイシオウイルス科;カーネーション輪状斑点群;ジアントウイルス群;ブロードビーン立ち枯れ病群;ファバウイルス群;フィロウイルス科;フラビウイルス科;フロウイルス群;ジャミニウイルス群;ジアルダウイルス群;ヘパドナウイルス科;ヘルペスウイルス科;ホルデイウイルス群;イラルウイルス群;イノウイルス科;イリドウイルス科;レビウイルス科;リポスリキシウイルス科;ルテオウイルス群;マラフィウイルス群;トウモロコシ萎化矮小化ウイルス群;イクロウイルス科;ミオウイルス科;ネクロウイルス科;ネポウイルス群;ノダウイルス科;オルトミクソウイルス科;パポヴァウイルス科;パラミクソウイルス科;パースニップ黄斑ウイルス群;パルティティウイルス科;パルボウイルス科;エンドウマメエネーションモザイクウイルス群;フィコドナウイルス科;ピコマウイルス科;プラズマウイルス科;プロドウイルス科;ポリドナウイルス科;ポテキスウイルス群;ポタイウイルス;ポキシウイルス科;レオウイルス科;レトロウイルス科;ラブドウイルス科;リジジオウイルス群;シホウイルス科;ソベモウイルス群;SSV1型ファージ;テクチウイルス科;テヌイウイルス科;テトラウイルス科;トバモウイルス群;トブラウイルス群;トガウイルス科;トンブシウイルス群;トロウイルス群;トチウイルス科;タイモウイルス群;及び植物ウイルス関連由来のベクターを含むがこれらに限定されない。
【0068】
組み換えウイルスベクターを製造するため、及び核酸送達のためにウイルスベクターを使用するためのプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel,F.M.et al.(eds.)Greene Publishing Associates,(1989)及び他の標準的な実験室マニュアル)(例えばVectors for Gene Therapy.Current Protocols in Human Genetics.,John Wiley and Sons,Inc.,1997)に見出される。
【0069】
本発明の特定の実施形態においては、送達ベクターは、バキュロウイルスベクターである。
【0070】
「バキュロウイルス」という用語は、本明細書においては、全てのバキュロウイルスを包含することを意図している。バキュロウイルスは、非包埋バキュロウイルス(non-occluded baculoviruses:NOV)、顆粒病ウイルス(GV)及び核多角体病ウイルス(NPV)を包含する3つのサブファミリーに分割される。特定のGV及びNOVは慎重に検討されているが、NPVはバキュロウイルスサブファミリーで最も十分にキャラクタリゼーションされている。NPVの例はオートグラファ・カリフォルニカNPV、スポドプテラ・エキシグアNPV、ヘリオシス・アルミゲラNPV、ヘリコベルパ・ジーNPV、スポドプテラ・フルグルペルダNPV、トリコプルシア・ニーNPV、マメストラ・ブラシカNPV、リマントリア・ジスパーNPV、スポドプテラ・リツラリスNPV、シングラファ・ファクルフェラNPV、クロリストネウラ・フムルフェラナNPV、アンチカルシア・ゲマタルスNPV及びヘリオシス・ビレセンスNPVを包含する。
【0071】
種々の外来遺伝子エレメントを有する操作されたバキュロウイルスを得るための標準的操作法は当分野で周知である。組み換えバキュロウイルスを昆虫又はその細胞に導入するための操作法も当分野で周知である。例えばPfeifer et al.,1997,Gene 188:183−190;及びClem et al.,1994,J.Virol.68:6759−6762を参照できる。バキュロウイルス発現哺乳類RbAp48はCao et al.Mol.Cell 15:57−67(2004)及びZhang et al.Genes Dev 13:1924−1935(1999)に記載されている。
【0072】
「アデノウイルス」という用語は、本明細書においては、マスタデノウイルス(Mastadenovirus)及びアビアデノウイルス(Aviadenovirus)の属を含む全てのアデノウイルスを包含することを意図している。今日まで少なくとも47のヒト血清型のアデノウイルスが識別されている(例えばFIELDS et al.,VIROLOGY,volume 2,chapter 67(3d ed.,Lippincott−Raven Publishers)を参照)。好ましくは、アデノウイルスは血清群Cのアデノウイルスであり、より好ましくは、アデノウイルスは血清型2(Ad2)又は血清型5(Ad5)である。
【0073】
アデノウイルスゲノムの種々の領域がマッピングされており、そして当業者により理解されている(例えばFIELDS et al.,VIROLOGY,volume 2,chapters 67 and 68(3d ed.,Lippincott−Raven Publishers)を参照)。種々のAd血清型のゲノム配列並びにAdゲノムの特定のコーディング領域のヌクレオチド配列は当分野で知られており、例えばGenBank及びNCBIから入手することができる(例えばGenBankアクセッション番号J0917、M73260、X73487、AF108105、L19443、NC003266及びNCBIアクセッション番号NC001405、NC001460、NC00206、NC00454を参照)。
【0074】
当業者の知る通り、本発明のアデノウイルスベクターはDouglas et al.,(1996)Nature Biotechnology 14:1574;Roy et al.,への米国特許第5,922,315号;Wickham et al.,への米国特許第5,770,442号;及び/又はWickham et al.,への米国特許第5,712,136号に記載の通り修飾又は「ターゲティング」することができる。
【0075】
アデノウイルスベクターゲノム又はrAdベクターゲノムは典型的にはAd末端リピート配列及びパッケージングシグナルを含む。「アデノウイルス粒子」又は「組み換えアデノウイルス粒子」は、アデノウイルスカプシド内にパッケージされたアデノウイルスベクターゲノム又は組み換えアデノウイルスベクターゲノムをそれぞれ含む。一般的にアデノウイルスベクターゲノムは約28kb〜38kb(天然ゲノムサイズの約75%〜105%)のサイズにおいて最も安定となる。より大きい欠失及び比較的小さい目的の異種核酸を含有するアデノウイルスベクターの場合は、「スタッファーDNA」を使用することにより当分野で知られた方法により所望の範囲内にベクターの全体サイズを維持することができる。
【0076】
通常は、アデノウイルスはウイルス表面の線維タンパク質のノブドメインを介して感受性細胞の細胞表面受容体(CAR)に結合する。線維ノブ受容体はグリコシル化及びホスホリル化の両方のための潜在的部位を有する45kDaの細胞表面タンパク質である(Bergeison et al.,(1997),Science 275;:1320−1323)。アデノウイルスの進入のための二次的方法は細胞表面に存在するインテグリンを介する。アデノウイルスペントン塩基タンパク質のアラニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)配列は細胞表面のインテグリンに結合する。
【0077】
アデノウイルスゲノムは、目的の核酸をコードして発現するが、正常な溶解性のウイルスの生命周期において複製するその能力については不活性化されるように操作することができる。例えばBerkner et al.(1988)BioTechniques 6:616;Rosenfeld et al.(1991)Science 252:431−434;及びRosenfeld et al.(1992)Cell 68:143−155を参照できる。アデノウイルス株Ad型5d1324又は他の株のアデノウイルス(例えばAd2、Ad3、Ad7等)から誘導された代表的なアデノウイルスベクターは当分野で知られている。
【0078】
組み換えアデノウイルスは、それらが非分裂細胞を感染させることができない点において特定の状況下に好都合であることができ、そして上皮細胞を含む広範な種類の細胞型を感染させるために使用できる。更に又、ウイルス粒子は比較的安定であり、精製及び濃縮に適しており、そして、感染性のスペクトルに影響するように修飾することができる。更に又導入されたアデノウイルスDNA(及びそこに含有される外来性DNA)は宿主細胞のゲノム内に組み込まれないが、エピソームとして残存し、これにより、導入されたDNAが宿主ゲノムに組み込まれる状況において挿入突然変異の結果として生じる(例えばレトロウイルスDNAを用いた場合に生じる)可能性がある潜在的な問題を回避することができる。更に又、外来性DNAに対してアデノウイルスゲノムの担持能力は他の送達ベクターと相対比較すれば大きい(Haj−Ahmand and Graham(1986)J.Virol.57:267)。
【0079】
特定の実施形態においては、アデノウイルスゲノムは、アデノウイルスゲノムの領域の少なくとも1つが機能的タンパク質をコードしないように、その内部に欠失を含有する。例えば第1世代のアデノウイルスベクターは典型的にはE1遺伝子について欠失があり、そしてE1タンパク質を発現する細胞(例えば293細胞)を用いてパッケージされる。E3領域もまた、その欠失を補う必要が無いことから、頻繁に欠失される。更に又、E4、E2a、タンパク質IX及び線維タンパク質領域における欠失も例えばArmentano et al,(1997)J.Virology 71:2408,Gao et al.,(1996)J.Virology 70:8934,Dedieu et al.,(1997)J.Virology 71:4626,Wang et al.,(1997)Gene Therapy 4:393,Gregory et al.,への米国特許第5,882,877号により記載されている(これらの開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする)。好ましくは、欠失はパッケージング細胞に対する毒性を回避するように選択する。Wang et al.,(1997)Gene Therapy 4:393はパッケージング細胞系統によるE4及びE1遺伝子の構成的同時発現に由来する毒性を記載している。毒性は構成プロモーターではなく誘導プロモーターによりE1及び/又はE4遺伝子産物の発現を調節することにより回避することができる。宿主細胞に対する毒性又は他の有害作用を回避する欠失の組み合わせは当業者が通常通り選択することができる。
【0080】
更に別の例として、特定の実施形態においては、アデノウイルスはポリメラーゼ(pol)、前末端タンパク質(pTP)、IVa2及び/又は100K領域において欠失している(例えば米国特許第6,328,958号;PCT公開WO00/12740;及びPCT公開WO02/098466;Ding et al.,(2002)Mol.Ther.5:436;Hodges et al.,J.Virol.75:5913;Ding et al.,(2001)Hum Gene Ther 12:955を参照でき;これらの開示は遺伝子送達のための欠失アデノウイルスベクターの作成及び使用方法の記述に関して、引用することにより本明細書の一部をなすものとする)。
【0081】
「欠失(deleted)」アデノウイルスという用語は、本明細書においては、アデノウイルスゲノムの指定された領域から少なくとも1つのヌクレオチドが省かれていることを指す。欠失は、約1、2、3、5、10、20、50、100、200又更には500ヌクレオチド超であることができる。アデノウイルスゲノムの種々の領域における欠失は指定された領域の少なくとも約1%、5%、10%、25%、50%、75%、90%、95%、99%以上であることができる。或いは、アデノウイルスゲノムの全領域が欠失している。好ましくは、欠失は領域からの機能的タンパク質の発現を防止又は本質的に防止することになる。一般的に、より大きい欠失は、それらが目的の異種ヌクレオチド配列に対する欠失アデノウイルスの担持能力を増大させることになるという別の好都合な点を有していることから、好ましいものである。アデノウイルスゲノムの種々の領域がマッピングされており、当業者に理解される(例えばFIELDS et al.,VIROLOGY,volume 2,chapter 67、68(3d ed.,Lippincott−Raven Publishers)を参照)。
【0082】
当業者の知るとおり、典型的には、E3遺伝子を除き、何れの欠失も別のウイルスを増殖(複製及びパッケージ)するためには、例えばパッケージング細胞の相互補償によるなどの補償を必要とする。
【0083】
本発明は本質的に全てのアデノウイルスゲノム配列が欠失している「gutted」アデノウイルスベクター(その用語は当分野で知られており、例えばLieber et al.,(1996)J.Virol.70:8944−60を参照)を用いて実施することもできる。
【0084】
アデノ関連ウイルス(AAV)もまた核酸送達ベクターとして使用されている。論文としてはMuzyczka et al.Curr.Topics in Micro.and Immunol.(1992)158:97−129を参照できる。AAVはパルボウイルスであり、直径18〜26ナノメートル小型の正二十面体のビリオンを有し、そして4〜5キロ塩基の大きさの1本鎖ゲノムDNA分子を含有する。ウイルスはDNA分子のセンス又はアンチセンスの鎖の何れかを含有し、そして何れかの鎖がビリオンに取り込まれる。2つのオープンリーディングフレームが一連のRep及びCapポリペプチドをコードしている。Repポリペプチド(Rep50、Rep52、Rep68及びRep78)は、全4Repポリペプチドの非存在下において有意な活性が観察されているものの、AAVゲノムの複製、レスキュー及び組み込みに関与している。Capタンパク質(VP1、VP2、VP3)はビリオンカプシドを形成する。ゲノムの5’及び3’末端においてrep及びcapのオープンリーディングフレームにフランキングしているものは145塩基対のインバーテッド末端リピート(ITR)であり、その最初の125塩基対はY又はT型の二重らせん構造を形成することができる。ITRはAAVゲノムの複製、レスキュー、パッケージング及び組み込みに必要な最小のシス配列を呈することがわかっている。典型的には、組み換えAAVベクター(rAAV)においては、全rep及びcapコーディング領域を切り出し、目的の異種核酸と置き換える。
【0085】
AAVはそのDNAを非分裂細胞内に組み込むことができる数少ないウイルスに属しており、そして高い頻度のヒト染色体19内への安定な組み込みを示す(例えばFlotte et al.(1992)Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.7:349−356;Samuiski et al.,(1989)J Virol.63:3822−3828;及びMcLaughlin et al.,(1989)J.Virol.62:1963−1973参照)。種々の核酸がAAVベクターを用いて異なる細胞型に導入されている(例えばHermonat et al.,(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:6466−6470;Tratschin et al.,(1985)Mol.Cell,Biol.4:2072−2081;Wondisford et al.,(1988)Mol.Endocrinol.2:32−39;Tratschin et al.,(1984)J.Virol.51:611−619;及びFlotte et al.,(1993)J.Biol.Chem.268:3761−3790を参照)。
【0086】
rAAVベクターゲノムは典型的にはAAV末端リピート配列及びパッケージングシグナルを含んでいる。「AAV粒子」又は「rAAV粒子」は、AAVカプシド内にパッケージされたAAVベクターゲノム又はrAAVベクターゲノムをそれぞれ含んでいる。rAAVベクターそのものはカプシド及びRepタンパク質をコードするAAV遺伝子を含有する必要はない。本発明の特定の実施形態においては、rep及び/又はcap遺伝子はAAVゲノムから欠失している。代表的な実施形態においては、rAAVベクターは組み込み、切り出し、複製に必要な末端AVV配列(ITR)のみを保持している。
【0087】
AAVカプシド遺伝子の原料は血清型AAV−1、AAV−2、AAV−3(3a及び3bを含む)、AAV−4、AAV−5、AAV−6、AAV−7、AAV−8並びにウシAAV及びトリAAV、及び、International Committee on Taxonomy of Viruses(ICTV)によりAAVと分類される何れかの他のウイルスを包含することができる(例えば、BERNARD N.FIELDS et al.,VIROLOGY,volume 2,chapter 69(4th ed.,Lippincott−Raven Publishersを参照)。
【0088】
パッケージングの限界のため、rAAVゲノムの総サイズは好ましくは約5.2kb、4.8kb、4.6kb、4.5kb又は4.3kb未満の大きさである。
【0089】
当分野で既知の何れかの適当な方法を用いて本発明の複合体の成分をコードする核酸を発現するAAVベクターを作成することができる(方法の説明は、例えば米国特許第5,139,941号;米国特許第5,858,775号;米国特許第6,146,874号を参照)。1つの特定の方法においては、ヘルパーアデノウイルスを感染させたヒト細胞へのAAVパッケージング機能をコードするrep/capベクター及びAAV vDNAをコードする鋳型の同時トランスフェクションによりAAV保存株を製造することができる(Samulski et al.,(1989)J.Virology 63:3822)。
【0090】
他の特定の実施形態においては、アデノウイルスヘルパーウイルスはAAVのRep及び/又はカプシドタンパク質をコードするハイブリッドヘルパーウイルスである。AAVのrep及び/又はcap遺伝子を発現するハイブリッドヘルパーAd/AAVベクター及びこれらの試薬を用いてAAV株を製造する方法は当分野で知られている(例えば米国特許第5,589,377号;及び米国特許第5,871,982号、米国特許第6,251,677号;及び米国特許第6,387,368号を参照)。好ましくは本発明のハイブリッドAdは、AAVカプシドタンパク質(即ちVP1、VP2及びVP3)を発現する。これに代わって、又はこれに加えて、ハイブリッドアデノウイルスはAAV Repタンパク質(即ちRep40、Rep52、Rep68及び/又はRep78)の1つ以上を発現することができる。AAV配列は組織特異的又は誘導プロモーターと作動可能に連結することができる。
【0091】
或いは、AAV rep及び/又はcap遺伝子は遺伝子を安定に発現する細胞をパッケージングすることにより提供することもできる(例えばGao et al.,(1998)Human Gene Therapy 9:2353;Inoue et al.,(1998)J.Virol.72:7024;米国特許第5,837,484号;WO98/27207;米国特許第5,658,785号;WO96/17947を参照)。
【0092】
本発明において使用するための別のベクターは、単純疱疹ウイルス(HSV)を含む。単純疱疹ビリオンは全体の直径150〜200nm及び長さ120〜200キロ塩基の2本鎖DNA分子1個からなるゲノムを有している。糖タンパク質D(gD)は、宿主細胞へのウイルスの進入を媒介するHSVエンベロープの構造的成分である。細胞表面ヘパリンスルフェートプロテオグリカンとのHSVの初期の相互作用は別の糖タンパク質、糖タンパク質C(gC)及び/又は糖タンパク質B(gB)により媒介される。その後、細胞受容体を有するウイルス糖タンパク質の1つ以上との相互作用が起こる。HSVの糖タンパク質Dは宿主細胞のヘルペスウイルス進入媒介物質(HVEM)に直接結合することが解っている。HVEMは腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーである(Whitbeck et al.,(1997)J.Virol.71:6083−6093)。最後に、gD、gB及びgHとgLの複合体は個別に、又は共同して、宿主細胞原形質膜へのウイルスエンベロープのpH非依存性の融合を誘発する。ウイルスそのものは直接的な接触により伝達され、そしてHSVが特に向性を示す神経系の細胞を感染するよりも前に皮膚又は粘膜内で複製する。溶解性及び潜伏性の機能の両方を示す。溶解性のサイクルはウイルスの複製及び細胞死をもたらす。潜伏性の機能は極めて長時間に渡り宿主内にウイルスを維持させる。
【0093】
HSVは長期遺伝子維持のための潜伏性機能のみを示すベクターを製造することにより細胞への核酸の送達のために修飾することができる。HSVベクターは、20キロ塩基以下の、又は20キロ塩基超の大型DNAの挿入を可能にし、極めて高い力価で製造することができ、そして溶解性サイクルが起こらない限り中枢神経系において長期間核酸を発現することがわかっていることから、核酸送達のために有用である。
【0094】
本発明の他の特定の実施形態においては、目的とされる送達ベクターはレトロウイルスである。レトロウイルスは、通常はウイルス特異的な細胞表面受容体、例えばCD4(HIVの場合);CAT(MLV−E;エコトロピックネズミ白血病ウイルスEの場合)RAM1/GLVR2(ネズミ白血病ウイルス−A;MLV−Aの場合)GLVR1(テナガザル白血病ウイルス(GALV)及びネコ白血病ウイルスB(FeLV−B)の場合)に結合する。単に複製欠損レトロウイルスを与える特殊化された細胞系統(「パッケージングされた細胞」と称する)の開発は遺伝子療法のためのレトロウイルスの利用性を増大させ、そして欠損レトロウイルスは遺伝子療法目的のための遺伝子転移において使用するためにキャラクタライズされている(概説について、Miller,(1990)Blood 76:271参照)。複製欠損レトロウイルスは標準的手法によりヘルパーウイルスの使用を介して標的細胞を感染させるために使用することができるビリオン内にパッケージすることができる。
【0095】
更に別の適当なベクターはポックスウイルスベクターである。これらのウイルスは極めて複雑なものであり、ウイルスの詳細な構造は現時点では不明であるが、100タンパク質超を含有する。ウイルスの細胞外の形態は2つの膜を有するが、細胞内の粒子は内膜のみを有する。ウイルスの外表面は両凹のコアを包囲する脂質及びタンパク質より構成される。ポックスウイルスは抗原的には複雑であり、感染後には特異性及び交差反応性の抗体の両方を含んでいる。ポックスウイルス受容体は現時点では知られていないが、広範な細胞に対するポックスウイルスの向性を鑑みれば1つより多くが存在する可能性がある。ポックスウイルスの遺伝子発現は、核酸の発現のためのベクターとしてワクシニアウイルスを使用することに関心があることから十分に研究されている。
【0096】
上記したもののようなウイルス転移法の他に、非ウイルス法も使用できる。核酸転移のための多くの非ウイルス法は巨大分子の取り込み及び細胞内輸送のために哺乳類細胞により使用されている通常の機序に依存している。特定の実施形態においては、非ウイルス核酸送達系は標的細胞による核酸分子の取り込みのための細胞内経路に依存している。この型の例示される核酸送達系はリポソーム誘導系、ポリリジンコンジュゲート及び人工ウイルスエンベロープを包含する。
【0097】
本発明の実施においては、プラスミドベクターを使用できる。ネイキッドプラスミドを組織へ注射することにより筋肉細胞内に導入することができる。発現は陽性細胞の数が典型的には低値となるが、数ヶ月に渡って持続される(Wolff et al.,(1989)Science 247:247)。カチオン性の脂質は培養中の一部の細胞内への核酸の導入を示すことがわかっている(Felgner and Ringold,(1989)Nature 337:387)。マウスの循環系へのカチオン性脂質プラスミドDNA複合体の注入は肺におけるDNAの発現をもたらすことがわかっている(Brigham et al.,(1989)Am.J.Med.Sci.298:278)。プラスミドDNAの1つの利点は非複製細胞内へそれが導入できる点である。
【0098】
[V.再構成複合体のための発現系]
上記の通り、再構成複合体の成分は、種々の目的(例えばHTMase活性又は癌をモジュレートするための化合物を識別するためのスクリーニング試験、癌の検出、大規模タンパク質製造及び/又は研究目的)のために複合体のタンパク質をコードする異種核酸1つ以上を発現する培養された細胞又は生物中で生産、そして場合によりそれより精製することができる。
【0099】
一般的に、単離された核酸は発現ベクター(上記の通りウイルス性又は非ウイルス性)内に取り込まれる。種々の宿主細胞に適合する発現ベクターは当分野で周知であり、核酸の転写及び翻訳のための適当なエレメントを含有している。典型的には、発現ベクターは「発現カセット」を含有し、これは、5’から3’の方向に、プロモーター、プロモーターに作動可能に連結したEED、EZH2、SUZ12、RbAp48及び/又はAEBP2サブユニットをコードするコーディング配列、及び、任意選択的に、RNAポリメラーゼに対する停止シグナル及びポリアデニラーゼに対するポリアデニル化シグナルを含む終止配列を含む。
【0100】
発現ベクターは原核生物又は真核生物の細胞におけるポリペプチドの発現のために設計することができる。例えばポリペプチドは大腸菌のような細菌細胞、昆虫細胞(例えばバキュロウイルス発現系における)、酵母細胞又は哺乳類細胞において発現することができる。一部の安定な宿主細胞はGoeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)において更に考察されている。酵母S・セレビシアエにおける発現のためのベクターの例は、pYepSeci(Baldari et al.,(1987)EMBO J.6:229−234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz,(1982)Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultz et al.,(1987)Gene 54:113−123)及びpYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,Calif.)を包含する。培養昆虫細胞(例えばSf9細胞)においてタンパク質を製造するための核酸の発現のために使用できるバキュロウイルスベクターは上記の通りであり、そしてpAcシリーズ(Smith et al.,(1983)Mol.Cell.Biol.3:2156−2165)及びpVLシリーズ(Lucklow,V.A.,and Summers,M.d.(1989)Virology170:31−39)を包含する。
【0101】
哺乳類発現ベクターの例は、pCDM8(Seed,(1987)Nature 329:840)及びpMT2PC(Kaufman et al.(1987),EMBO J.6:187−195)を包含する。哺乳類細胞内で使用する場合は、発現ベクターの制御機能はウイルスの調節エレメントにより与えられる場合が多い。例えば、一般的に使用されているプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス及びシミアンウイルス40から誘導される。
【0102】
ベクターは従来の形質転換又はトランスフェクションの手法を介して原核生物又は真核生物の細胞内に導入できる。本明細書においては、「形質転換」及び「トランスフェクション」という用語は宿主細胞内に外来性核酸(例えばDNA)を導入するための種々の当分野で知られた手法を指し、リン酸カルシウム又は塩化カルシウム同時沈殿、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、DNAをロードしたリポソーム、リポフェクタミン−DNA複合体、細胞超音波処理、高速マイクロプロジェクタイルを使用する遺伝子ボンバードメント、及びウイルス媒介トランスフェクションが挙げられる。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするための適当な方法はSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press(1989))及び他の実験室マニュアルに見出される。
【0103】
安定に形質転換される細胞を製造するためには、一部のみの細胞(特に哺乳類細胞)がそのゲノム内に外来性DNAを組み込む場合が多い。これらの組み込み体を識別するためには、選択可能なマーカー(例えば抗生物質への耐性)をコードする核酸を目的の核酸と共に宿主細胞内に導入することができる。好ましい選択マーカーはG418、ハイグロマイシン及びメトトレキセートのような薬剤への耐性を付与するものを包含する。選択可能なマーカーをコードする核酸は、目的の核酸を含むものと同じベクター上で宿主細胞に導入することができ、或いは、別個のベクター上で導入することもできる。導入された核酸で安定にトランスフェクトされた細胞は薬剤選択により識別することができる(例えば選択マーカー遺伝子を取り込んだ細胞は生存でき、そうでないものは死滅する)。
【0104】
組み換えタンパク質はまたタンパク質をコードする単離された核酸が核又はプラスチドのゲノムに挿入されているトランスジェニック植物内で生産することもできる。植物の形質転換は当分野で知られている。一般的にMethods in Enzymology Vol.153(「Recombinant DNA Part D」1987,Wu and Grossman Eds.,Academic Press及び欧州特許出願EP693554を参照。
【0105】
外来性の核酸は数種の方法により植物細胞又はプロトプラストに導入できる。例えば核酸はマイクロピペットの使用による植物細胞内への直接マイクロインジェクションにより機械的に転移させることができる。外来性核酸はまた細胞により取り込まれる遺伝子物質と沈殿複合体を形成するポリエチレングリコールを用いることにより植物細胞内に転移させることができる(Paszkowski et al.,(1984)EMBO J.3:2721−22)。外来性核酸はエレクトロポレーションにより植物細胞に導入できる(Fromm et al.(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:5824)。この手法においては、植物のプロトプラストを、該当遺伝子構築物を含有するプラスミド又は核酸の存在下にエレクロトポレーションに付す。高電場強度の電気インパルスが生体膜を可逆的に透過性とし、プラスミドの導入を可能とする。エレクトロポレーションに付された植物プロトプラストは細胞壁を再形成し、分裂し、植物カルスを形成する。外来性核酸を含む形質転換された植物細胞の選択は表現型マーカーを用いて行うことができる。
【0106】
カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)を植物細胞に外来性核酸を導入するためのベクターとして使用できる(Hohn et al.(1982)「Molecular Biology of Plant Tumors」,Academic Press,New York,pp.549−560;Howell,米国特許第4,407,956号)。細菌内で増殖できる組み換えDNA分子を形成する親細菌プラスミド内にCaMVのウイルスDNAゲノムを挿入する。組み換えプラスミドは所望のDNA配列の導入により更に修飾できる。次に組み換えプラスミドの修飾されたウイルス部分を親細菌プラスミドから切り出して植物細胞又は植物に接種するために使用する。
【0107】
小粒子による高速弾道貫通(high velocity ballistic penetration)を用いて植物細胞内に外来性核酸を導入することができる。核酸は小型のビーズ又は粒子のマトリックスの内部又は表面に配置させる(Klein et al.(1987)Nature 327:70−73)。典型的には新しい核酸セグメントの単回導入のみが必要となるが、この方法は多重導入も可能とする。
【0108】
核酸は、該核酸で形質転換されたアグロバクテリウム・ツメファシエンスによる植物細胞、外植片、分裂組織または種子の感染により植物細胞内に導入することができる。適切な条件下、形質転換された植物細胞を成育させて新芽、根を形成させ、更に発育させて植物とする。核酸は例えばアグロバクテリウム・ツメファシエンスのTiプラスミドを用いることにより植物細胞内に導入できる。Tiプラスミドはアグロバクテリウム・ツメファシエンスによる感染により植物細胞に伝達され、植物ゲノム内に安定に組み込まれる(Horsch e al.(1984)「Inheritance of Functional Foreign Genes in Plants」,Science 233:496498;Fraley et al.(1983)Proc.Natl.Aca.Sci.USA 80:4803)。
【0109】
本発明は以下の非限定的な実施例において更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0110】
[材料及び方法]
[組み換えEED−EZH2複合体及びサブ複合体の精製]
Ezh2 cDNAを、FLAG(登録商標)を有しないpFASTBAC(商標)(INVITROGENTM,Carlsbad,CA)のBamHI及びXhoI部位にクローニングした。EED cDNAはN末端FLAG(登録商標)タグベクターpFASTBAC(商標)のEcoRI及びXhoI部位にクローニングした。SUZ12及びAEBP2のcDNAは同じベクターのEcoRI及びNotI部位に挿入した。RbAp48用のバキュロウイルスは当分野で確立されている(Zhang,et al.(1999)Genes Dev.13:1924−1935)。異なる成分を発現する各バキュロウイルスを作成し、製造元のプロトコルに従って増幅させた。組み換えEED−EZH2複合体を精製するために、種々のバキュロウイルスを用いてSF9細胞を同時感染した。感染2日の後、細胞を収集し、プロテイナーゼ阻害剤を含有するF溶解緩衝液(20mM Tris、pH7.9、500mM NaCl、4mM MgCl2、0.4mM EDTA、2mM DTT、20%グリセロール、0.1% NP−40)中に再懸濁した。細胞を30分間乳鉢で3回ホモゲナイズ(各10ストローク)した。10分間11,000rpmで遠心分離することにより上澄みを回収した。希釈緩衝液(20mM Tris、pH7.9、10%グリセロール)を添加することにより上澄みを300mM NaClに調節した。次に、4℃で4時間、F溶解緩衝液で平衡化したM2α−FLAG(登録商標)アガロース(Sigma,St.Louis,MO)と共にインキュベートした。F洗浄緩衝液(20mM Tris、pH7.9、150mM NaCl、2mM MgCl2、0.2mM EDTA、1mM DTT、15%グリセロール、0.01%NP−40)で未結合のタンパク質を全て除去した後、結合タンパク質を室温で20分間FLAG(登録商標)ペプチド(0.2mg/ml)で溶出し、次に、溶出した複合体を更にゲル濾過S200又はSUPEROSE(登録商標)6カラムを通して精製した。このプロトコルを用いながら、再構成複合体のミリグラム量を作成した。更に又、同時発現は活性な再構成EED−EZH2複合体をもたらすが、各成分の個別の発現(即ち個々の細胞)とその後の混合は活性な複合体を生成しないことがわかった。
【0111】
[HMTase試験、基質調製及び抗体]
ヒストンメチル化試験は十分確立された方法に従って実施した(Wang,et al.(2001)Science 293:853−857)。HMTase試験用の基質、例えば、オリゴヌクレオソーム、モノヌクレオソーム及びコアヒストンは確立されたプロトコルを用いてニワトリ血液から精製した(Fang,et al.(2003)Methods Enzymol.377:213−226)。野生型及び突然変異体の組み換えヒストンH3は既知の方法に従って発現させて精製した(Cao et al.(2002)Science 298:1039−1043)。EZH2、SUZ12、2mK27、3mK27、3mK9及び1mK27に対する抗体は知られている(Cao et al.(2002)Science 298:1039−1043;Peters,et al.(2003)Mol.Cell 12:1577−1589;Plath,et al.(2003)Science 300:131−135)。
【0112】
[プラスミド及びGSTプルダウン試験]
完全長AEBP2 cDNAをHeLa cDNAライブラリからPCR増幅によりクローニングし、配列をDNA配列分析により確認した。Ezh2、EED、SUZ12、RbAp48、AEBP2に関する完全長cDNA及びその欠失物を製造元(PROMEGA(登録商標),Madison,WI)の説明書に従ってウサギ網状赤血球溶解物キットを用いてインビトロ翻訳用のpCITE(登録商標)ベクター内に挿入した。SUZ12、EED、RbAp48及びAEBP2に関する完全長cDNAはまた、GST融合タンパク質の製造のためのpGEX−KGベクター内にクローニングした。約3μgのGST又はGST融合タンパク質をグルタチオン固定化アガロースビーズ(Sigma,St.Louis,MO)10μLに結合し、150mMのKCl及び0.05%NP−40を含有する緩衝液A(50mM Tris−HCl、pH7.9、0.5mM EDTA、1mMジチオスレイトール、0.2mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、10%グリセロール)500μL中でインビトロ翻訳産物と共にインキュベートした。4℃で2時間インキュベートした後、ビーズを300mMのKCl及び0.05%NP−40を含有する緩衝液Aで3回、次に、50mMのKClを含有する緩衝液Aで1回洗浄し、その後SDS−PAGE及びオートラジオグラフ分析に付した。
【0113】
[SUZ12 ノックダウン細胞系統及び生育分析]
HeLa細胞を10%ウシ胎児血清(FBS)含有ダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)中で培養した。SUZ12をターゲティングする所望の64bpのオリゴヌクレオチドをpHTPsiRNAベクター内にクローニングした(Wang,et al.(2003)Mol.Cell 12:475−487)。SUZ12をターゲティングするステム−ループRNAを形成する際に使用した2つのオリゴヌクレオチドは5’−GAT CCC CGT CGC AAC GGA CCA GTT AAT TCA AGA GAT TAA CTG GTC CGT TGC GAC TTT TTG GAA A−3’(配列番号1)及び5’−TCG ATT TCC AAA AAG TCG CAA CGG ACC AGT TAA TCT CTT GAA TTA ACT GGT CCG TTG CGA CGG G−3’(配列番号2)であり、ここでステム構造は下線を付した。SUZ12siRNAベクターはEFFECTENE(登録商標)(INVITROGEN(商標)、Carlsbad,CA)によりHeLa細胞内にトランスフェクトした。安定なトランスフェクション体は2μg/mlのピューロマイシンの存在下に選択した。これらのトランスフェクション体から誘導した細胞をウエスタンブロット分析及びリアルタイムRT−PCR分析のために使用した。細胞の成育分析のためには、4×104個の細胞を12穴プレートに播種した。培養24、48及び96時間の後、細胞をトリプシン処理し、3連で採集し、トリパンブルー染色により計数した。
【0114】
[リアルタイムPCR及びチップ分析]
リアルタイムPCRはSYBR(登録商標)グリーンPCRマスターミックス及びABIプリズム7900配列検出システムを用いながら3連で実施した。定量的PCR反応を各プライマーにつき標準化された条件下に実施した。標準曲線は標準プラスミドの10倍希釈物を用いて作成した。種々の試料中の標的の相対量を比較するために、全数値を適切に定量されたGAPDH対照に対して規格化した。定量的PCRのために使用したプライマーは、SUZ12cDNAプライマー5’−AAA CGA AAT CGT GAG GAT GG−3’(配列番号3)及び5’−CCA TTT CCT GCA TGG CTA CT−3’(配列番号4);HoxC6cDNAプライマー5’−CCA GGA CCA GAA AGC CAG TA−3’(配列番号5)及び5’−GGT CTG GTA CCG CGA GTA GA−3’(配列番号6);HoxC8cDNAプライマー5’−CTC AGG CTA CCA GCA GAA CC−3’(配列番号7)及び5’−GAG CCC CAT AAA GGG ACT GT−3’(配列番号8);及びHoxA9cDNAプライマー5’−TGC AGC TTC CAG TCC AAG G−3’(配列番号9)及び5’−GTA GGG GTG GTG GTG ATG GT−3’(配列番号10)であった。
【0115】
チップ分析用には、150mmディッシュ中、約2×106個のHeLa細胞を10分間1%のホルムアルデヒド含有DMEMで処理した。クロスリンクは10分間、0.125Mのグリシンを添加することにより停止した。リン酸塩緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄した後、細胞を細胞溶解緩衝液(10mMHEPES,pH7.9、0.5%NP−40、1。5mM MgCl2、10mM KCl、0.5mM DTT)300μLに再懸濁し、10分間氷上に保持した。その後、細胞を5分間4000rpmで遠心分離し、プロテアーゼ阻害剤を含有する核溶解緩衝液(20mM HEPES、pH7.9、25%グリセロール、0.5%NP−40、0.42M NaCl、1.5mM MgCl2、0.2mM EDTA)に再懸濁し、20分間、4℃でインキュベートすることにより核タンパク質を抽出した。抽出されたクロマチンを超音波処理して、平均の長さ0.5〜3kbのフラグメントとした。13,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄みを等容量の1%TRITON(登録商標)X−100,2mM EDTA、20mM Tris−HCl、pH7.9、50mM NaCl及びプロテアーゼ阻害剤を含有する希釈緩衝液中に希釈した。次にチップ試験を指定の抗体を用いて実施した。チップDNAはHoxA9における4種の異なる領域に対する以下のプライマー対、即ち、A、5’−TCC ACC TTT CTC TCG ACA GCA C−3’(配列番号11)及び5’−GTG GGA GGC TCA GGA TGG AAG−3’(配列番号12);B、5’−TCG CCA ACC AAA CAC AAC AGT C−3’(配列番号13)及び5’−AAA GGG ATC GTG CCG CTC TAC−3’(配列番号14);C、5’−CTC ACC GAG AGG CAG GTC AAG−3’(配列番号15)及び5’−AGC CTA CCA TCA ACA GTT GTG C−3’(配列番号16);D、5’−GAA CGG CCA CAA CTT CGG AGG−3’(配列番号17)及び5’−CCG GGG AGT CTG CGT GGA G−3’(配列番号18)を用いた標準的なPCRを用いて検出した。
【実施例2】
【0116】
[再構成EED−EZH2複合体の酵素活性及び基質特異性]
HeLa細胞及びショウジョウバエ胚から精製した多重サブユニットEED−EZH2/ESC−E(Z)複合体は、リジン27においてヌクレオソームヒストンH3をメチル化することがわかっている(Cao,et.al.(2002)Science 298:1039−1043;Czermin,et al.(2002)Cell 111:185−196;Kuzmichev,et al.(2002)Genes Dev.16:2893−2905;Muller,et al.(2002)Cell 111:197−208)。EED−EZH2複合体はEZH2、SUZ12、EED、RbAp48及びAEBP2より構成されることがわかっている(Cao,et.al.(2002)Science 298:1039−1043)。個々のサブユニットの機能を分析する(dissect)ため、及び、詳細な機能分析のための大量の精製酵素複合体を得るために、組み換えタンパク質を用いて酵素活性を再構成できるかどうか調べた。この目的のために、Sf9細胞を、FLAG(登録商標)−EED、EZH2、SUZ12、RbAp48及びAEBP2を発現するバキュロウイルスで同時感染させた。FLAG(登録商標)−EED及び関連タンパク質はアフィニティークロマトグラフィー、次いで遊離のFLAG(登録商標)−EED及び部分的複合体が5成分の複合体から分離されるゲル濾過により精製した(図1A)。ヒストンメチルトランスフェラーゼ試験及びカラム画分を含有するSDS−ポリアクリルアミドゲルの銀染色によれば、5成分は約400kDaのタンパク質複合体として酵素活性と共に同時精製されることがわかった(図1B)。ネイティブのEED−EZH2複合体と相対比較した場合の再構成複合体のHMTase活性を試験するために、50と53の間の画分をプールし、種々の量のプールした組み換え複合体を固定量のネイティブEED−EZH2複合体と比較した。図1Cに示す結果によれば、再構成複合体及びネイティブの複合体は等量の酵素を比較した場合に同等のHMTase活性を有していた(レーン1とレーン3及び4)。再構成複合体を更にキャラクタリゼーションするために、異なる形態のヒストンH3をメチル化した。ネイティブ複合体の場合(Cao,et.al.(2002)Science 298:1039−1043)と同様、再構成酵素複合体のための好ましい基質はオリゴヌクレオソーム形態のヒストンH3であった(図1D)。更に又、他のイソフォームのEEDを含有する再構成複合体(Kuzmichev,et al.(2004)Mol.Cell 14(2):183−93)もHMTase活性を示している。従って、再構成EED−EZH2複合体及びネイティブの複合体は同様の酵素活性及び基質特異性を有している。
【実施例3】
【0117】
[EED−EZH2複合体の成分間の物理的関係]
複合体中に存在する5成分のうち、EZH2は、それがSETドメイン含有タンパク質であることから触媒性サブユニットであると考えられている。EZH2とEEDは直接相互作用することが既知である(Sewalt,et al.(1998)Mol.Cell Biol.18:3586−3595;van Lohuizen,et al.(1998)Mol.Cell Biol.18:3572−3579)。従って、複合体及びサブ複合体の成分間の厳密な空間的関係を調べた。この目的のために、大腸菌中で発現できないEZH2を除き、個々の成分をGST融合タンパク質として発現させ、GSTプルダウン試験において使用した。以前の報告(Sewalt,et al.(1998)Mol.Cell Biol.18:3586−3595;van Lohuizen,et al.(1998)Mol.Cell Biol.18:3572−3579)と一致して、EZH2はEEDと強力に相互作用するが、これらの試験条件下では他のサブユニットの何れとも直接接触しないと考えられた(図2A、パネル2)。EZH2に加えて、EEDもまた、SUZ12及びAEBP2と相互作用した(図2A、レーン3)。RbAp48はSUZ12(図2A、最終パネル、レーン2)とは強力に、そしてAEBP2及びEED(図2A、パネル4及び5、レーン4)とは弱く相互作用するように観察された。意外にも、AEBP2は自己会合可能であり(図2A、パネル5、レーン5)、そしてこの能力は、固定化GST−RbAp48がAEBP2をプルダウンできた(図2A、パネル4、レーン4)が、自己会合しない固定化GST−AEBP2はRbAp48をプルダウンできなかった(図2A、最終パネル、レーン5)ことから、そのRbAp48との相互作用のために重要であると考えられた。GST単独を用いたパラレルなプルダウン試験では、相互作用は検出されなかった(図2A、レーン6)ことから、上記相互作用は全て特異的であった。これらの相互作用試験によれば、EZH2が他の成分と会合する場合にはEEDを介し、これが次に相互作用する相手がSUZ12及びAEBP2であり、これらはともにRbAp48と相互作用することができる(図2B)。
【0118】
AEBP2は転写リプレッサーとして当初識別された亜鉛フィンガータンパク質である(He,et al.(1999)J.Biol.Chem.274:14678−14684)。これは精製されたEED−EZH2複合体の不可欠な構成要素として識別されたが(Cao,et.al.(2002)Science 298:1039−1043)、同様に精製された複合体には存在していなかった(Kuzmichev,et al.(2002)Genes Dev.16:2893−2905)。複合体内に取り込まれ(図1B)、そして複合体の多重サブユニットと相互作用(図2A、パネル5)する能力があるとして、AEBP2とSUZ12及びRbAp48の相互作用を更にキャラクタリゼーションした。AEBP2のインビトロ転写/翻訳の完全長及び欠失突然変異体を用いたGSTプルダウン試験によれば、AEBP2のN末端領域(残基1〜87)がRbAp48の相互作用に関与(図2C、中央2パネルを比較)していたのに対し、C末端領域(残基144〜198)はSUZ12の相互作用に関与していた(図2C、最初の2パネルを比較)。これらの試験は、本明細書に開示した機能試験と組み合わせれば、AEBP2がEED−EZH2複合体の不可欠な構成要素であることを示している。
【実施例4】
【0119】
[AEBP2はHMTase活性を刺激し、そしてSUZ12はHMTase活性のために必要である]
5成分の間の空間的関係を定義した後、酵素活性に必要な最低の成分を調べた。Ezh2及びEedが共にインビボのヒストンH3−K27メチル化のために必要(Erhardt,et al.(2003)Development 130:4235−4248;Su,et al.(2003)Nature Immunology4(2):124−3)であると仮定し、そして図2に定義した物理的相互作用に基づいて、AEBP2、RbAp48及びSUZ12を個々に除くことにより、又は組み合わせてサブ複合体を再構成した。図1Aに示したものと同様の2工程の精製手法を用いて、4つ(AEBP2を除く)、3つ(AEBP2及びRbAp48を除く)及び2つ(AEBP2、RbAp48及びSUZ12を除く)の成分を有するEED−EZH2サブ複合体を再構成した。銀染色によれば、これらの再構成サブ複合体は、ほぼ均質(homogeneity)であった(図3A)。これらの精製された複合体の相対的HMTase活性を評価するために、EZH2のウエスタンブロット分析(図3B、最上パネル)に示される通り等モル量の複合体を用いて、等量のヌクレオソーム基質をメチル化した(図3B、第2パネル)。図3Bに示す結果(最下2パネル)によれば、EEDと、EZH2と、SUZ12とを含有する最低限の3成分がHMTase活性に必要であることがわかった(レーン3と4を比較)。3成分の複合体にRbAp48を加えたところ、SUZ12の取り込みが増大し(図3A、レーン2と3を比較)、特に高い酵素濃度において酵素活性の増大がもたらされた(図3C)。4成分複合体にAEBP2を加えたところ、HMTase活性は有意に増大した(図3B、レーン1と2を比較)。EED、EZH2及びRbAp48の同時感染では安定な複合体を形成することができず(データ示さず)、複合体へのRbAp48の取り込みが、そのSUZ12との相互作用に依存していることが示された(図2A)。更に又、SUZ12が欠落すると4成分複合体を形成することはできない。
【0120】
再構成複合体のHMTase活性を広範な酵素濃度を用いて評価した(図3)。5成分の複合体を使用した場合は、顕著なHMTase活性が5nMの酵素濃度で検出されたが、2成分の複合体を使用した場合は160nMの酵素濃度のレベルでも活性は検出されなかった。5成分と4成分の複合体を比較すると酵素活性の有意差が観察された。即ち、EEDと、EZH2と、SUZ12とはHMTase活性に必要な最低成分であり、AEBP2は4成分EED−EZH2複合体のHMTase活性を刺激する。
【実施例5】
【0121】
[再構成EED−EZH2複合体はリジン27においてヌクレオソームヒストンH3をメチル化する]
EED−EZH2/ESC−E(Z)HMTase複合体の独立した精製及びキャラクタリゼーションが行われている(Cao,et.al.(2002)Science 298:1039−1043;Czermin,et al.(2002)Cell 111:185−196;Kuzmichev,et al.(2002)Genes Dev.16:2893−2905;Muller,et al.(2002)Cell 111:197−208)。しかしながら、これらの精製された酵素複合体の特性は幾分相違点を有していると考えられる。例えば、1つの精製されたEED−EZH2複合体はオクタマー基質よりもオリゴヌクレオソームに対する明らかな選択性を有しているが(Cao,et.al.(2002)Science 298:1039−1043)、AEBP2を有さない同様のHeLa複合体は相反する選択性を有していることが解っている(Kuzmichev,et al.(2002)Genes Dev.16:2893−2905)。複合体内のAEBP2の存在が基質の選択性を改変するかどうか調べるために、AEBP2を有さない再構成EED−EZH2複合体を用いて基質選択性を分析した。図4Aに示す結果によれば、AEBP2含有複合体(図1D)と同様、4成分EED−EZH2複合体もまたオクタマーよりもオリゴヌクレオソームに対して明確な選択性を示している。同様の基質選択性が、3成分EED−EZH2複合体の場合も観察されている(データ示さず)。従って、AEBP2及びRbAp48の何れも基質特異性の決定に関与していないが、EZH2又はそれと会合しているEED及びSUZ12はこの過程に関与していると考えられる。
【0122】
基質選択性のほかに、酵素複合体がメチル化するリジン残基に関しても一部の矛盾点がある。ヒトEED−EZH2複合体及びショウジョウバエのESC−E(Z)相当部分はヒストンH3−K27のみをメチル化すると報告されている(Cao,et.al.(2002)Science 298:1039−1043;Muller,et al.(2002)Cell 111:197−208)が、ヒストンH3−K9 HMTase活性もまた同じ複合体について報告されている(Czermin,et al.(2002)Cell 111:185−196;Kuzmichev,et al.(2002)Genes Dev.16:2893−2905)。この矛盾は、複合体の組成の僅かな相違、例えばAEBP2の有無の結果であるか、又は、僅かなヒストンH3−K9 HMTaseの活性が汚染によるものであった可能性がある。これらの2つの可能性を区別するために、どのリジン残基が種々の再構成複合体によりメチル化されるかを調べた。この目的のために、3段階の組み換え野生型又は突然変異体のヒストンH3を5成分、4成分又は3成分を含有する酵素複合体を用いたヒストンメチルトランスフェラーゼ試験に付した。ネイティブ複合体の場合(Cao,et.al.(2002)Science 298:1039−1043)と同様、K27における突然変異は、5成分複合体に対して検出不可能なHMTase活性をもたらした(図4B、左コラム)。4成分又は3成分の複合体を用いた場合も同様の結果が得られた(図4B、中央2パネル)。従って、AEBP2はヒストンH3−K9をメチル化する4成分EED−EZH2複合体の能力を制限しないが;ヒストンH3−K9上の突然変異は再構成EED−EZH2複合体に対する基質として作用するヒストンH3の能力の僅かな低下を確かにもたらしているように観察された。
【実施例6】
【0123】
[SUZ12はインビボのヒストンH3−リジン27のトリメチル化に寄与する]
インビトロにおけるヒストンH3−K27メチル化におけるSUZ12の役割が明確化されたため、インビボの機能を分析した。安定なSUZ12ノックダウン細胞系統はベクター系のsiRNA法を用いて形成した(例えばWang,et al.(2003)Mol.Cell 12:475−487参照)。細胞系統のキャラクタリゼーションによれば、約75%のノックダウンがタンパク質レベルで達成された(図5A、レーン3と5を比較)。定量的RT−PCRによれば約65%のノックダウンがmRNAレベルで達成された(図5A、右パネル)。EED−EZH2複合体のEZH2及びEED成分に関するsiRNAトランスフェクション(Bracken,et al.(2003)EMBO J.22:5323−5335;Varambally,et al.(2002)Nature 419:624−9)と同様、ベクター系のSUZ12ノックダウンは細胞の形態及び成育において変化をもたらした(図5B)。インビボのヒストンH3−K27メチル化に対するSUZ12ノックダウンの作用を評価するために、SUZ12ノックダウン細胞及びパラレルな空のベクタートランスフェクションで得られた細胞から単離した、等しい量のヒストンをヒストンH3のメチル化されたリジン9又はリジン27に対して特異的な抗体を用いたウエスタンブロット分析に付した。図5Cに示す結果によれば、SUZ12ノックダウンはトリメチルK−27の量の顕著な低下をもたらしたが、トリメチル−K9の量には殆ど影響しなかった(図5C、第3及び第4パネル)。意外にも、モノメチル−K27の増大及びジメチル−K27の中等度の減少もまた観察されている(図5C、最上2パネル)。SUZ12ノックダウンがEZH12の量に影響しなかったという事実(図5A)は、インビトロのヒストンH3−K27メチルトランスフェラーゼのためのSUZ12の必要性(図3B)と組み合わせると、SUZ12はヒストンH3−K27メチル化に直接寄与していることを示している。
【実施例7】
【0124】
[EED−EZH2複合体のSUZ12媒介サイレンシング]
ショウジョウバエにおける研究によりHox遺伝子サイレンシングにおけるヒストンH3−K27のメチル化のための役割が明らかにされた(Cao,et.al.(2002)Science 298:1039−1043;Muller,et al.(2002)Cell 111:197−208)。本明細書に記載するデータは、SUZ12がインビトロ及びインビボのヒストンH3−K27メチル化のために重要であることを示している。ヒストンH3−K27メチル化がショウジョウバエの場合と同様に哺乳類細胞においてもHox遺伝子のサイレンシングに関与しているかどうかを調べるために、SUZ12ノックダウン細胞におけるEED−EZH2標的遺伝子の発現を評価した。ノックダウン細胞及びパラレルな対照細胞における数種のHox遺伝子、HoxC6、HoxC8及びHoxA9を含む発現の量を、リアルタイムRT−PCRで調べた。図6Aに示す結果によればSUZ12ノックダウンはHoxC8及びHoxA9に対しては抑制解除をもたらしたが、HoxC6に対して殆ど作用を示さなかった。
【0125】
SUZ12ノックダウンはHoxA9に対して劇的な作用を有していたため、SUZ12ノックダウン、ヒストンH3−K27メチル化及びHoxA9抑制解除の間の関係を調べた。従って、ヒトHoxA9遺伝子の種々の位置におけるSUZ12結合及びヒストンH3−K27メチル化をSUZ12及びトリメチル−K27に対する抗体を用いたクロマチン免疫沈降(ChlP)により分析した。Chlp試験用及び抗体特異性用の対照としては、等量のIgG及び抗ヒストンH3−ジメチル−K4抗体を含んだ。プロモーター(B)、イントロン(C)及び遺伝子の下流(D)を包含する代表的な領域を分析した。更に又、ヒトとマウスの遺伝子の間で高い配列相同性を示す転写開始部位の約4kb上流の領域(A)も分析した。図6Bに示す結果によれば、SUZ12及び3mk27は、モックノックダウン細胞(mock knock-down cells, 最上パネル)における領域C(レーン14及び15)及びD(レーン19及び20)の存在と比較した場合に、領域A(レーン4及び5)及びB(レーン9及び10)に選択的に存在することがわかる。ヒストンH3−K27メチル化におけるSUZ12の役割と合致して、ノックダウンSUZ12は、領域A及び領域B、特に領域AにおけるヒストンH3−3mK27の消失と同時にSUZ12結合の有意な減少をもたらした(図6B、レーン4及び5、最上及び最下のパネルを比較)。3つのYY1結合部位が領域Aにおいて識別されているため、この領域はショウジョウバエのポリコーム応答エレメント(PRE)と同様の機能を有していると考えられる。従って、直接のSUZ12の結合の消失はヒストンH3−K27メチル化の消失及びHoxA9の抑制解除に相関している。遺伝子活性化のマーカーと考えられているヒストンH3−K27メチル化には殆ど変化が無いことが観察された。総括すれば、データはSUZ12がEED−EZH2複合体の酵素活性及びサイレンシング機能にとって不可欠であることを示している。
【実施例8】
【0126】
[再構成EED−EZH2複合体の阻害剤]
ヒストン基質を96穴プレートにコーティングし、再構成EED−EZH2複合体及び被験化合物を含有する反応混合物をウェルに添加した(図7)。ウェルを洗浄し、H3−mK抗体を添加し、そして、被験化合物が再構成複合体のHMTase活性を阻害するかどうか調べるためにELISAを行った。この一次スクリーニングにおいては、スクリーニングした20,000化合物中22化合物が阻害活性を示した。22化合物は更に、他のHMTaseと比較した場合の再構成EED−EZH2複合体に対する特異性に関しても試験した。
【0127】
上記は本発明を説明するものであり、本発明を限定するものであると解釈すべきものではない。本発明は添付する請求の範囲及びそれに包含される請求項の均等物により定義される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】再構成EED−EZH2複合体がネイティブの複合体と同様の酵素活性及び基質特異性を有していることを示している。図1AはEED−EZH2再構成に関与する工程の略図である。図1Bは銀染色ポリアクリルアミドSDSゲル(最上パネル)、及びSUPEROSE(登録商標)6ゲル濾過カラムから誘導した画分のHMTase活性試験(第2パネル)を示す。組み換えEED−EZH2複合体の5成分を「*」で示す。矢印はウエスタンブロット分析により確認されたEZH2の分解産物を示す(第3パネル)。タンパク質マーカーの溶離特性は最上部に示す。タンパク質サイズマーカーの位置は左側に示す。ウエスタンブロット分析により確認した組み換えAEBP2(35kDa)の遊走(第4パネル)はネイティブの複合体(65kDa)中に存在する場合とは異なっている。図1Cは等しい量のヌクレオソームヒストンを使用した場合(第3パネル)の種々の量の再構成複合体(レーン3〜5)(上2パネル)とのネイティブ複合体(レーン1)のHMTase活性(最下パネル)の比較を示す。使用した複合体の量は記載したとおりEZH2及びSUZ12のウエスタンブロット分析により定量した。図1Dは組み換えEED−EZH2複合体の基質特異性の特性である。等量の組み換え酵素複合体を使用して等量のヒストンH3単独、又は、オクタマー、モノ及びオリゴヌクレオソームの形態のものをメチル化した(最下パネル)。最上パネルは最下パネルのオートラジオグラフである。最上パネルの定量は2つの独立した実験から得たエラーバーと共に中央のパネルに示す。
【図2】EED−EZH2複合体の成分間のタンパク質−タンパク質相互作用を示す。図2Aは等量のGST融合タンパク質(最上パネル)及び右側に示したインビトロ翻訳されたS35−標識タンパク質(最下パネル)を用いたGSTプルダウン試験を示す。「In」は総投入量の10%を示す。図2Bは図2Aに示した相互作用の略図である。図2CはSUZ12及びRbAp48の相互作用に関与するAEBP2上の領域のマッピングを示す。異なる欠失構築物(最上パネル)をインビトロ転写/翻訳した後にGSTプルダウン試験において使用した(最下パネル)。AEBP2上の3つの亜鉛フィンガーを示す。相互作用の強度は最上パネルの右側にまとめる。「++」、「+」及び「−」はそれぞれ強、弱及び相互作用非存在を示す。
【図3】EED−EZH2複合体及びサブ複合体の特性を示す。図3Aは精製された組み換え複合体及びサブ複合体を含有する銀染色ポリアクリルアミドSDSゲルである。(EED−EZH2)5は全5成分を含有する。(EED−EZH2)4はAEBP2を含有しない。(EED−EZH2)3はAEBP2及びRbAp48を含有しない。(EED−EZH2)2はEED及びEZH2のみを有している。FLAG(登録商標)−EEDはウエスタンブロット分析により確認した。図3Bは5成分、4成分、3成分及び2成分の種々の組み換え複合体の酵素活性の比較を示す。使用した複合体は、各反応が等量のEZH2及びニワトリオリゴヌクレオソームを含有するように規格化した(上2パネル)。反応は、酵素/基質比1:20で実施した。酵素活性(第3パネル)及び定量(最下パネル)を2つの独立した実験から得られたエラーバーと共に示す。図3Cはパネル最上部に示した酵素濃度の広範な範囲による種々の組み換え複合体の酵素活性の比較を示す。各反応において使用したオリゴヌクレオソーム基質は約200nMであった。最上パネル上のデータの定量は最下パネルに示す。
【図4】再構成EED−EZH2酵素複合体の基質選択性及び部位特異性を示す。図4AはAEBP2存在下又は非存在下のEED−EZH2複合体が同じ基質選択性を有することを示している。等量の4成分組み換え酵素複合体を用いて等量のヒストンH3単独、又は、オクタマー、モノ及びオリゴヌクレオソームの形態のものをメチル化した(最下パネル)。最上パネルは最下パネルのオートラジオグラフである。最上パネルの定量は2つの独立した実験から得たエラーバーと共に中央のパネルに示す。図4BはヒストンH3−K27が5成分、4成分及び3成分を有する組み換え酵素複合体に対する標的部位であることを示している。野生型又は突然変異体のヒストンH3の3段階の量(パネル最上に示す)を酵素/基質比1:20で種々の再構成複合体によりメチル化した。活性はオートラジオグラフで示した(最初の3列)。
【図5】SUZ12が細胞生育及びインビボのヒストンH3−K27メチル化のために重要であることを示している。図5AはSUZ12の安定なノックダウン細胞系統及びパラレルなモックノックダウン細胞系統のウエスタンブロット(左パネル)及び定量的RT−PCR(右パネル)分析を示す。チューブリンは、ウエスタンブロット分析のローディング対照として機能している。GAPDHは定量的RT−PCRの規格化のための対照として使用した。図5BはSUZ12ノックダウン細胞における形態学的変化及び細胞生育の抑制を示す。最上パネルは2週間の選択の後の対照及びノックダウンのHeLa細胞の形態学的変化を示す。最下パネルは対照及びノックダウンのHeLa細胞の生育曲線を示す。生存細胞は4×104個の初期播種の後の種々の時間においてトリパンブルー染色により計数した。図5Cはモノ、ジ又はトリメチル化K27及びトリメチル化K9に特異的な抗体を用いて対照及びノックダウンのHeLa細胞から抽出したヒストンのウエスタンブロット分析を示す。ヒストンH3の等量ローディングを平行ゲルのCOOMASSIE(登録商標)染色により確認した。
【図6】SUZ12ノックダウンがHox遺伝子発現の抑制解除及びHoxA9遺伝子上のH3−K27メチル化の低下した量をもたらすことを示している。図6AはSUZ12ノックダウン及びモックノックダウン細胞におけるHoxC6、HoxC8及びHoxA9の発現の定量的RT−PCR分析を示す。GAPDHを規格化のための対照として使用した。定量はエラーバーを伴った2つの独立した実験の平均である。図6BはHoxA9遺伝子に及ぶ選択された領域のクロマチン免疫沈降(ChlP)分析を示す。最上パネルは2つのエクソンを2つの箱で示したHoxA9遺伝子のダイアグラムである。転写開始部位に相対的な分析領域(A〜D)の位置を示す。各領域は約500bpに及ぶ。SUZ12又はモックノックダウン細胞を用いたChlP試験においては3抗体(抗2mK4、−3mK27及び−SUZ12)及びIgG対照を使用した。ChlPの結果はPCR増幅されたChlPのDNAを含有するアガロースゲルの臭化エチジウム染色により明らかにされた。
【図7】高スループットのスクリーニング試験における阻害剤を識別するための再構成EED−EZH2酵素複合体の使用を示す。特に図7はEED−EZH2複合体阻害剤に関する高スループット試験に包含される工程の略図である。
【図1A−1B】

【図1C−1D】

【図2A−2B】

【図2C】

【図3A−3B】

【図3C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体であって、該再構成複合体がヒストンH3のリジン27(H3−K27)に対してヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性を有する再構成複合体。
【請求項2】
EEDと、EZH2と、SUZ12とが哺乳類タンパク質、ショウジョウバエタンパク質、線虫タンパク質、植物タンパク質又はこれらの組み合わせである請求項1に記載の再構成複合体。
【請求項3】
RbAp48、またはAEBP2、あるいはこれらの両方をさらに含み、RbAp48及び/又はAEBP2が、哺乳類タンパク質、ショウジョウバエタンパク質、線虫タンパク質、植物タンパク質又はこれらの組み合わせである請求項1に記載の再構成複合体。
【請求項4】
前記再構成複合体が、ネイティブの複合体の酵素活性に匹敵する酵素活性を有する請求項1に記載の再構成複合体。
【請求項5】
前記再構成複合体が、ネイティブの複合体の基質特異性に匹敵する基質特異性を有する請求項1に記載の再構成複合体。
【請求項6】
前記再構成複合体が、少なくとも60%(w/w)の純度レベルを有する請求項1に記載の再構成複合体。
【請求項7】
EEDと、EZH2と、SUZ12とから実質的になる再構成複合体であって、該再構成複合体がヒストンH3のリジン27(H3−K27)に対して特異的なヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性を有する再構成複合体。
【請求項8】
(a)EEDタンパク質をコードする異種核酸配列と、
(b)EZH2タンパク質をコードする異種核酸配列と、
(c)SUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列と
を含む宿主細胞を準備するステップと、
タンパク質の発現及び再構成複合体の生産に十分な条件下で該宿主細胞を培養するステップと
を含む請求項1に記載の再構成複合体の製造方法。
【請求項9】
前記培養された宿主細胞又は前記培養された宿主細胞由来の培地から発現された前記再構成複合体を単離するステップをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記発現された再構成複合体を単離するステップが、前記発現された再構成複合体を固体支持体に結合させるステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記固体支持体が、ニッケル、グルタチオン又は前記発現された再構成複合体に対する抗体を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記固体支持体から前記発現された再構成複合体を溶出させるステップをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記発現された再構成複合体が、精製タグを含む請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記宿主細胞が、(a)RbAp48タンパク質をコードする核酸配列、または(b)AEBP2タンパク質をコードする核酸配列、あるいは(c)これらの両方をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記宿主細胞が昆虫細胞である請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記昆虫細胞がSf9細胞である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記宿主細胞が、前記(a)〜(c)の異種核酸配列により安定に形質転換される請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記宿主細胞が、前記(a)〜(c)の異種核酸配列を含む1つ以上の組み換えベクターを含む請求項8に記載の方法。
【請求項19】
前記ベクターがバキュロウイルスベクターである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上のベクターが、前記EEDタンパク質をコードする異種核酸配列を含むベクターと、前記EZH2タンパク質をコードする異種核酸配列を含む別個のベクターと、及び、SUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列を含むさらに別個のベクターとを含む請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上のベクターにより、前記宿主細胞を形質転換するステップをさらに含む請求項18に記載の方法。
【請求項22】
(a)EEDタンパク質をコードする異種核酸配列と、
(b)EZH2タンパク質をコードする異種核酸配列と、
(c)SUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列と
を含む宿主細胞。
【請求項23】
前記宿主細胞が昆虫細胞である請求項22に記載の宿主細胞。
【請求項24】
前記昆虫細胞がSf9細胞である請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
前記宿主細胞が、前記(a)〜(c)の異種核酸配列により安定に形質転換される請求項22に記載の宿主細胞。
【請求項26】
前記宿主細胞が、前記(a)〜(c)の異種核酸配列を含む1つ以上の組み換えベクターを含む請求項22に記載の宿主細胞。
【請求項27】
前記ベクターがバキュロウイルスベクターである請求項26に記載の宿主細胞。
【請求項28】
前記1つ以上のベクターが、前記EEDタンパク質をコードする異種核酸配列を含むベクターと、前記EZH2タンパク質をコードする異種核酸配列を含む別個のベクターと、前記SUZ12タンパク質をコードする異種核酸配列を含むさらに別個のベクターとを含む請求項26に記載の宿主細胞。
【請求項29】
EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体のヒストンH3のリジン27(H3−K27)に対するヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性をモジュレートする化合物を識別する方法であって、
被験化合物の存在下で、該再構成複合体をヒストン基質に接触させるステップと、
H3−K27メチル化するために十分な条件下で、H3−K27メチル化のレベルを検出するステップと
を含み、該被験化合物非存在下におけるH3−K27メチル化のレベルと比較した場合のH3−K27メチル化の変化が、該被験化合物が該再構成複合体のH3−K27HTMase活性のモジュレーターであることを示す方法。
【請求項30】
EEDと、EZH2と、SUZ12とが、哺乳類タンパク質、ショウジョウバエタンパク質、線虫タンパク質、植物タンパク質又はこれらの組み合わせである請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記再構成複合体が、RbAp48、またはAEBP2、あるいはそれらの両方をさらに含み、RbAp48及び/又はAEBP2が、哺乳類タンパク質、ショウジョウバエタンパク質、線虫タンパク質、植物タンパク質又はこれらの組み合わせである請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記被験化合物の非存在下におけるH3−K27メチル化のレベルと比較した場合のH3−K27メチル化の低下は、前記被験化合物が、前記再構成複合体のH3−K27 HMTase活性の阻害剤であることを示す請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記被験化合物の非存在下におけるH3−K27メチル化のレベルと比較した場合のH3−K27メチル化の上昇は、前記被験化合物が、前記再構成複合体のH3−K27 HMTase活性の活性化剤であることを示す請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒストン基質が、コアヒストン、ヒストンオクタマー、モノヌクレオソーム、ジヌクレオソーム又はオリゴヌクレオソームである請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒストン基質が、ジヌクレオソームである請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記方法が細胞系の方法である請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が無細胞系の方法である請求項29に記載の方法。
【請求項38】
被験化合物の存在下で、EEDと、EZH2と、UZ12とを含む再構成複合体をヒストン基質に接触させるステップと、
H3−K27をメチル化するために十分な条件下で、ヒストンH3のリジン27(H3−K27)のヒストンメチル化のレベルを検出するステップと
を含む癌の治療のための候補化合物を識別する方法であって、該被験化合物の非存在下におけるH3−K27メチル化のレベルと比較した場合のH3−K27メチル化の低下は、該被験化合物が癌の治療のための候補化合物であることを示す、候補化合物を識別する方法。
【請求項39】
前記EEDと、EZH2と、SUZ12とが、哺乳類タンパク質、ショウジョウバエタンパク質、線虫タンパク質、植物タンパク質又はこれらの組み合わせである請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記再構成複合体が、RbAp48、またはAEBP2、あるいはそれらの両方をさらに含み、RbAp48及び/又はAEBP2が、哺乳類タンパク質、ショウジョウバエタンパク質、線虫タンパク質、植物タンパク質又はこれらの組み合わせである請求項38に記載の方法。
【請求項41】
EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体のH3−K27ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)活性の阻害剤に細胞を接触させるステップを含むヒストンH3のリジン27(H3−K27)のメチル化を抑制する方法。
【請求項42】
前記細胞が、培養細胞である請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記細胞が、対象中のインビボの細胞である請求項41に記載の方法。
【請求項44】
EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体と、
任意選択的に、懸濁培地と
を含む、ヒストンH3のリジン27(H3−K27)のメチル化の検出の感度を上昇させるための試薬。
【請求項45】
前記EEDと、EZH2と、SUZ12とが、哺乳類タンパク質、ショウジョウバエタンパク質、線虫タンパク質、植物タンパク質、又はこれらの組み合わせである請求項44に記載の試薬。
【請求項46】
前記再構成複合体が、RbAp48、またはAEBP2、あるいはそれらの両方をさらに含み、RbAp48及び/又はAEBP2が、哺乳類タンパク質、ショウジョウバエタンパク質、線虫タンパク質、植物タンパク質、又はこれらの組み合わせである請求項44に記載の試薬。
【請求項47】
ヒストンH3のリジン27(H3−K27)のヒストンメチル化の阻害を検出するためのキットであって、該キットが、
(a)EEDと、EZH2と、SUZ12とを含む再構成複合体と、
(b)該再構成複合体のH3−K27メチルトランスフェラーゼ(HTMase)活性の阻害を測定するステップを含むH3−K27メチル化の抑制を測定するための方法に関する取扱説明書と、
任意選択的に、HTMase活性の阻害を測定するための方法を実施するための別の試薬又は装置と
を含むキット。
【請求項48】
前記EEDと、EZH2と、SUZ12とが、哺乳類タンパク質、ショウジョウバエタンパク質、線虫タンパク質、植物タンパク質又はこれらの組み合わせである請求項47に記載のキット。
【請求項49】
前記再構成複合体が、RbAp48、またはAEBP2、あるいはそれらの両方をさらに含み、RbAp48及び/又はAEBP2が、哺乳類タンパク質、ショウジョウバエタンパク質、線虫タンパク質、植物タンパク質又はこれらの組み合わせである請求項47に記載のキット。

【図4】
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【図5A−B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−506367(P2008−506367A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515421(P2007−515421)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/018840
【国際公開番号】WO2005/118796
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(500093834)ザ・ユニヴァーシティ・オヴ・ノース・キャロライナ・アト・チャペル・ヒル (14)
【Fターム(参考)】