説明

再灌流傷害および再灌流障害の処置のための置換2−チオ−3,5−ジシアノ−4−フェニル−6−アミノピリジンの使用

本発明は、式(I)の置換2−チオ−3,5−ジシアノ−4−フェニル−6−アミノピリジンおよび再灌流傷害および障害の予防および/または処置用の医薬におけるそれらの使用に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再灌流傷害および再灌流障害の予防および/または処置用の医薬を製造するための、式(I)の置換2−チオ−3,5−ジシアノ−4−フェニル−6−アミノピリジンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
再灌流傷害は、一般的に、長く継続する虚血期間の終了後に、例えば血流の再開後の蓄積した毒性代謝物による侵襲および/または興奮性細胞における大量のカルシウムイオンの放出の結果として生じる。これらの障害は、補償する側副血行路がなければ、血管の閉塞後、特に急性動脈閉塞後に頻繁に生じる(いわゆる梗塞)。最も良く知られている形態は、心臓の梗塞および脳梗塞(卒中)である。血栓溶解による、または一過性虚血後の血流の早期回復は、細胞死(梗塞サイズ)を防止できるか、またはその程度を緩和できるが、再灌流は依然としてある程度の心機能不全または細胞死をもたらし得る。従って、再灌流中および様々な形態の心臓手術中に正常な心臓の機能を保存する手段を見出すことには、多大な臨床的価値がある。
【0003】
虚血−再灌流傷害および細胞の障害は、心筋梗塞、冠動脈バイパス移植、血管形成手術、特に開胸手術、狭心症、末梢血管疾患、卒中、組織および器官移植(例えば、心臓、肝臓、腎臓、肺)、一般的な手術、急性腎不全および器官低灌流(例えば、肺、心臓、肝臓、腸、膵臓、腎臓、肢または脳)で起こることが知られているが、これらに限定されない。
【0004】
アデノシン自体、およびNECA(5'−N−エチルカルボキサミドアデノシン)などのアデノシン類似体は、これらの化合物による処置が虚血期間の前または途中で始まれば、一般に再灌流傷害の低減を導くことが周知である。虚血期間前の適用は、一般的に予防および/またはプレコンディショニング(preconditioning)として知られており、細胞の保護、特に興奮性細胞(例えば、神経および筋肉細胞)の保護を含む。
【0005】
アデノシンは、4種の異なる受容体サブタイプ、A1、A2a、A2bおよびA3の活性化を介して、その生理的効果を媒介する。A1および/またはA3受容体サブタイプの活性化は、A1および/またはA3受容体サブタイプが虚血期間の前に活性化されるならば、十分に説明された再灌流障害に対する保護を導く。A2受容体サブタイプの活性化は、その血管拡張効果のために、血流の増加を導く。アデノシン自体を用いて、臨床試験AMISTAD IおよびIIにおいて、梗塞サイズの低減が示された。混合A1/A2アゴニストAMP579も、虚血期間が終了する少し前に処置が開始されれば、ウサギの心臓において、梗塞サイズの限定を示した(Xu Z. et al., J Mol Cell Cardiol 32, 2000)。殆どの他の実験は、再灌流の開始時または開始後に投与されると、梗塞サイズまたは再灌流障害の低減を示し得なかった。心保護的処置としてのポストコンディショニング(postconditioning)は、最近報告された(Zhao Z.Q. et al., Am J Physiol 285, 2003)。これらの処置選択肢の根底にある分子変換経路は、Downey および Cohen により説明されている(Circulation 111, 2005)。
【発明の開示】
【0006】
驚くべきことに、この度、特異的および非特異的な非アデノシン類似性のアデノシンアゴニストは、哺乳動物、特にヒトにおける、再灌流傷害の予防および/または処置並びに再灌流障害の限定のための医薬の製造に適することが見出された。
【0007】
これは、特に、式(I)の化合物に適用され、特に血管疾患の処置用のための、その医薬としての製造および使用は、WO01/25210およびWO03/008384に記載されている。
【0008】
式(I)の化合物は、A2b−特異的効果(他のアデノシン受容体サブタイプ、A1、A2aおよびA3に対するアゴニスト効果と比較して、10倍より高いアデノシンA2bアゴニスト効果)並びにA2b非特異的効果(A2bアゴニスト効果との差異が10倍に満たない、他のアデノシン受容体サブタイプ、A1、A2aまたはA3の1種に対する少なくとも1種のさらなるアゴニスト効果)を示す。
【0009】
従って、本発明の主題は、再灌流傷害および再灌流障害の予防および/または処置用の医薬を製造するための、式(I)
【化1】

[式中、
Aは、−O−Rまたは−NH−C(=O)−Rを表し、
は、CH−C(=O)−NH、ピリジルまたはチアゾリルを表し、
は、水素または(C−C)−シクロアルキルメチルを表し、
そして、
は、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノを表す]
の化合物並びにそれらの塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物の使用である。
【0010】
本発明によると、好ましいのは、式中、
Aが−O−Rまたは−NH−C(=O)−Rを表し、
が、CH−C(=O)−NH、ピリジルまたはチアゾリルを表し、
が、水素またはシクロプロピルメチルを表し、
そして、
が、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルまたはtert.ブチルを表す、
式(I)の化合物並びにそれらの塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物の使用である。
【0011】
特に好ましいのは、WO01/25210の実施例A1に相当する、下式(I−A)
【化2】

の化合物並びにその塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物である。
【0012】
特に好ましいのは、同様に、下式(I−B)
【化3】

の化合物並びにその塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物である。
【0013】
生理的に許容し得る塩が、本発明に関して好ましい。
本発明によると、生理的に許容し得る塩は、化合物(I)と、この目的で常套に使用される無機もしくは有機塩基または酸との反応により一般に取得可能な非毒性の塩である。化合物(I)の医薬的に許容され得る塩の非限定的な例には、アルカリ金属塩、例えばリチウム、カリウムおよびナトリウム塩、マグネシウムおよびカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、例えばトリエチルアンモニウム塩、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ジカルボン酸塩、二硫酸塩、二酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、吉草酸塩、および医薬目的で使用される他の塩が含まれる。
【0014】
本発明の化合物の水和物またはそれらの塩は、化合物の水との化学量論的組成物、例えば、半(hemi)、一または二水和物である。
本発明の化合物の溶媒和物またはそれらの塩は、化合物の溶媒との化学量論的組成物である。
【0015】
本発明には、本発明による化合物およびそれらの各々の塩の個々のエナンチオマーまたはジアステレオマーおよび対応するラセミ体またはジアステレオマーの混合物の両方が含まれる。加えて、上記の化合物の全ての可能な互変異性体は、本発明に含まれる。ジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィー法により個々の異性体に分離できる。ラセミ体は、キラル相のクロマトグラフィー法または分割により各々のエナンチオマーに分解できる。
【0016】
本発明に関して、置換基は、断りのない限り、一般に以下の意味を有する:
アルキルは、一般に、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素ラジカルを表す。非限定的な例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec.−ブチルおよびtert.−ブチルが含まれる。同じことが、アルコキシおよびアルキルアミノなどのラジカルに適用される。
【0017】
アルコキシは、例示的に、そして好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシおよびtert.−ブトキシを表す。
【0018】
シクロアルキルは、一般に、3個ないし6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素ラジカルを表す。非限定的な例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれる。
【0019】
アルキルアミノは、1個または2個の(独立して選択される)アルキル置換基を有するアルキルアミノラジカルを表し、例示的に、そして好ましくは、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、tert.−ブチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチル−N−メチルアミノ、N−メチル−N−n−プロピルアミノ、N−イソプロピル−N−n−プロピルアミノおよびN−tert.−ブチル−N−メチルアミノを表す。
【0020】
本発明のさらなる実施態様は、式(I−C)
【化4】

[式中、
Aは、−O−Rを表し、
は、CH−C(=O)−NH、ピリジルまたはチアゾリルを表し、
そして、
は、(C−C)−シクロアルキルメチルを表す]
の化合物並びにそれらの塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物である。
【0021】
本発明によると、好ましいのは、式中、
Aが、−O−Rを表し、
が、CH−C(=O)−NH、ピリジルまたはチアゾリルを表し、
そして、
が、シクロプロピルメチルを表す、
式(I−C)の化合物およびそれらの塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物である。
【0022】
特に好ましいのは、下式(I−B)
【化5】

の化合物およびその塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物である。
【0023】
本発明のさらなる実施態様は、式(I)の化合物を使用する再灌流傷害および再灌流障害の予防および/または処置方法に関する。
【0024】
本発明のさらなる実施態様は、少なくとも1種の式I−Cおよび/またはI−Bに従う化合物および常套の補助剤および添加物を含む医薬組成物である。
【0025】
本発明のさらなる実施態様は、少なくとも1種の式I−Cおよび/またはI−Bに従う化合物を含む医薬の製造方法である。その方法では、活性化合物を、常套の補助剤および添加物を使用して適する投与形に変換する。
【0026】
臨床上のセッティングおよび薬理学的処置において、虚血開始後の投与は、特に血管の閉塞を排除するという目標を有する再灌流治療との組合せにおいて、好ましい方法である。これは、血管閉塞が外科的/機械的および/または医薬的方法のいずれにより排除されるかということとは無関係である。
【0027】
本発明のさらなる実施態様は、上記のいずれかの治療効果のために、医薬的に許容し得る担体と共に式(I)の化合物を含有する医薬組成物である。組成物は、単独で、または、安定化化合物などの少なくとも1種の他の物質と組み合わせて投与し得る。組成物は、単独で、または他の成分、薬剤またはホルモンと組み合わせて、患者に投与し得る。
【0028】
本発明の医薬組成物は、その意図する投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経腸、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜および直腸投与が含まれる。非経腸、皮内または皮下投与用の液剤または懸濁剤には、以下の成分が含まれ得る:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸などのキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、および、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度(tonicity)を調節するための物質。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節できる。非経腸用製剤は、ガラスもしくはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または多回用量バイアルに封入できる。
【0029】
注射できる使用法に適する医薬組成物には、滅菌水性液剤(水溶性である場合)または分散剤、および、滅菌注射可能液剤または分散剤の即時調製用の滅菌粉末剤が含まれる。静脈内投与用に、適する担体には、生理塩水、静菌水、Cremophor EM(商標)(BASF, Parsippany, N.J.) またはリン酸緩衝塩水(PBS)が含まれる。全ての場合で、組成物は、無菌であらねばならず、そして、容易な注入可能性(syringability)が存在する程度に流動性であるべきである。それは、製造および貯蔵の条件下で安定であらねばならず、そして、細菌および真菌などの微生物による汚染に対して保護されねばならない。担体は、例えば、水、エタノール、例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなどの医薬的に許容し得るポリオール、およびこれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、レチシンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合では必要とされる粒子サイズの保持によって、そして界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤および抗真菌剤によって達成され得る。多くの場合、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、塩化ナトリウムなどの等張剤を、組成物中に含むのが好ましい。注射可能な組成物の吸収の延長は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる物質を組成物中に含めることによってもたらされ得る。滅菌注射可能液剤は、活性化合物(例えば、ポリペプチドまたは抗体)を、必要な量で、適切な溶媒中に、必要に応じて上記で列挙した成分の1種または組合せと共に導入し、続いて濾過滅菌することにより製造できる。一般的に、分散剤は、基本分散媒および上記で列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌媒体に活性化合物を導入することにより製造する。滅菌注射可能液剤の調製用の滅菌粉末剤の場合、好ましい製造方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、その方法では、有効成分プラス任意のさらなる所望の成分の粉末を、以前に滅菌濾過されたその溶液から得る。
【0030】
経口組成物は、一般に、不活性な希釈剤または食用の担体を含む。それらは、ゼラチンカプセル中に含まれ得るか、または錠剤に打錠され得る。経口的治療用投与の目的で、活性化合物は、補助剤とともに組み込まれ得、そして錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で使用され得る。経口用組成物は、マウスウオッシュとして使用するための流動性担体を使用して製造することもでき、流動性担体中の化合物を経口投与し、ゆすぎ(swished)、吐き出すかまたは飲み込む。
【0031】
医薬的に適合する結合剤、および/または補助物質は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分、または類似の性質の化合物のいずれかを含有できる;微晶質セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel またはコーンスターチなどのなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロート(sterote)などの滑沢剤;コロイド状二酸化シリコンなどの滑剤(glidant);スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤;あるいは、ペパーミント、メチルサリチレートまたはオレンジ香味剤などの香味剤。
【0032】
吸入による投与のために、化合物は、適切な噴射剤(例えば、二酸化炭素のような気体)を含有する加圧容器またはディスペンサー、または噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0033】
全身性投与はまた、経粘膜または経皮手段によることができる。経粘膜投与または経皮投与のために、浸透されるバリアに対して適切な浸透剤が、製剤中で使用される。このような浸透剤は、当分野で一般的に知られており、例えば、経粘膜投与用に、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻用スプレーまたは坐剤の使用を介して達成できる。経皮投与のために、活性化合物は、当分野で一般的に知られている通り、軟膏、膏薬、ゲルまたはクリーム中に製剤化される。
【0034】
本化合物はまた、坐剤(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドなどの常套の坐剤基材とともに)または直腸送達のための保持浣腸の形態でも製造できる。
【0035】
ある実施態様では、活性化合物は、インプラントおよび微小カプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、身体からの迅速な排除に対して化合物を保護する担体を用いて製造する。エチレンビニル酢酸、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生物分解可能な生物適合性のポリマーを使用できる。かかる製剤の製造方法は、当業者には明らかであろう。それらの物質は、Alza Corporation および Nova Pharmaceuticals, Inc. から購入することもできる。リポソーム懸濁剤(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体により感染細胞に標的化されるリポソームを含む)は、医薬的に許容し得る担体としても使用できる。これらは、例えばU.S.4,522,811に記載の通り、当業者に知られている方法に準じて製造できる。
【0036】
投与の容易さおよび投与量の均一さのために、経口または非経腸用組成物を単位投与形で製剤化することが特に有利である。単位投与形は、本明細書で使用されるとき、単位用量として処置すべき対象に合わせた物理的に分離した単位を表す;各単位は、所望の治療効果を奏するように算出した予め定めた量の活性化合物を、必要な医薬担体と共に含有する。本発明の単位投与形の詳細は、活性化合物の独特の特徴および達成すべき特定の治療効果、および、そのような活性化合物を個体の処置用に合成する分野に固有の制限により定められ、それらに直接的に依存する。
医薬組成物は、投与の指示書と共に、容器、包装またはディスペンサーに含まれ得る。
【0037】
一般に、所望の結果を達成するために、必要に応じて、単回投与または複数回の個別投与の形態で、総量で24時間につき約0.01ないし約5000mg、好ましくは24時間につき約0.5ないし約1000mgの式(I)の活性化合物を投与するのが有利であると見出された。
【0038】
しかしながら、必要に応じて、処置される患者の性質および体重、医薬に対する個体の応答、障害の性質および重篤度、製剤および投与の性質、および投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが有利であり得る。
【0039】
上述の組成物では、式(I)の活性化合物は、錠剤およびカプセル剤中に0.1ないし99重量%、好ましくは25−95重量%、そして流体製剤中に全混合物の1−50重量%の濃度で存在すべきである。
【0040】
本発明のさらなる実施態様は、1種またはそれ以上の式(I)の化合物と、1種またはそれ以上の他の物質との組合せの使用である。適する併用物質は、例えば、梗塞および再灌流障害の予防および/または処置に使用されている他の物質である。例示的に、かつ好ましくは、この文脈で血栓溶解剤が言及される。
【0041】
実験の部:
1.再灌流時のアデノシンA2bアゴニストの投与による、単離されたウサギ心臓における梗塞サイズ、再灌流傷害および他の再灌流障害の限定:
梗塞サイズの定量および実験設定は、Zhang et al., J Cardiovasc Pharmacol 42, 2003 により記載されたプロトコールに従った。
【0042】
麻酔されたウサギから心臓を迅速に取り出し、Krebs バッファーで灌流した。図1は、30分間の虚血およびそれに続く2時間の再灌流に曝露された、単離されたバッファー灌流されたウサギ心臓において、式(I−A)のA2b−選択的受容体アゴニスト(化合物A)が、約50%の梗塞サイズの低減を引き起こしたことを示す。リスク領域を蛍光ミクロスフェアで染色し、次いで、心臓を2mmの切片に切り、テトラゾリウム染色により梗塞サイズを可視化した。薬物を灌流液と50μg/Lで混合した。それは、再灌流の5分前に開始し、55分まで継続した。アゴニストは、5分間の虚血および10分間の再灌流の虚血プレコンディショニング(IPC)ほど保護的ではなかった。虚血プレコンディショニングは、最も強力な既知の心保護的処置であるが、臨床的には実用的価値はない。
【0043】
図1:梗塞サイズを、単離されたウサギ心臓におけるリスク領域の%で示す。非処置ウサギ心臓における梗塞サイズは、化合物A50μg/Lで処置した心臓と比較して、有意に大きかった(p=0.032)。
【0044】
再灌流時のアデノシンA2bアゴニストの投与による、ウサギ心臓(インビボ)における、梗塞サイズ、再灌流傷害および他の再灌流障害の限定:
A2b受容体アゴニストが虚血心臓を保護できるという概念をさらに試験するために、静脈内に与えられたときに良好に耐容される式(I−B)のA2bアゴニスト(化合物B)を調べた。図2は、30分間の領域性虚血および3時間の再灌流を受ける開胸ウサギに与えられた化合物Bの結果を示す。ウサギ(体重1.6ないし3.0kgの両性のニュージーランドホワイトラビット(New Zealand White rabbit))を、ペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)で麻酔し、必要に応じてその後も補った。100%酸素による陽圧換気を設置した。左開胸を介して心臓を露出し、冠状動脈枝下に結紮糸を通して虚血を起こさせた。薬物を、10μg/kgの用量で静脈内に、再灌流の5分前に開始して1分間、そして再灌流後に再度15分間与えた。3時間の再灌流の後、心臓を取り出した。リスク領域を蛍光ミクロスフェアで染色し、次いで心臓を2mmの切片に切り、梗塞サイズをテトラゾリウム染色により測定した。
【0045】
有害な血行動態的効果はこの物質で見られなかった。50%より良好な梗塞サイズの低減が見られ、これは、ポストコンディショニングを受けた第3の群のものに匹敵した。ポストコンディショニングは、確立された心保護的処置であり、虚血発作の終了時に、閉塞した動脈を4回の30秒のサイクルで間欠的に開閉する。A2bアゴニスト化合物Bは、その強度において、ポストコンディショニングと同等である。
【0046】
図2:梗塞サイズを、インビボのウサギ心臓におけるリスク領域の%で示す。再灌流の5分前および15分後の化合物B10μg/kgi.v.によるウサギの処置は、ポストコンディショニングと同程度に有効であることも示す。
【0047】
結論として、A2b受容体アゴニストを再灌流時に対象に効果的に与えて、心筋梗塞のサイズを限定することができる。
【実施例】
【0048】
実施例:
略号:
【表1】

【0049】
実施例1
2−{[6−アミノ−3,5−ジシアノ−4−(4−ヒドロキシフェニル)ピリジン−2−イル]チオ}アセトアミド(化合物A)
【化6】

実施例1の製造は、WO01/25210に記載されている(実施例A1参照)。
【0050】
実施例2
2−({6−アミノ−3,5−ジシアノ−4−[4−(シクロプロピルメトキシ)フェニル]ピリジン−2−イル}チオ)アセトアミド(化合物B)
【化7】

【0051】
工程1:
4−(シクロプロピルメトキシ)ベンズアルデヒド
【化8】

4−ヒドロキシベンズアルデヒド12.2g(99.9mmol)、(ブロモメチル)シクロプロパン13.5g(100mmol)および炭酸カリウム13.8g(99.8mmol)を、アセトン200ml中で24時間還流する。さらに3.9g(28.9mmol)の(ブロモメチル)シクロプロパンを添加した後、反応混合物をさらに24時間還流する。濾過および真空中での蒸発後、残渣をエタノール50mlに取り、再度真空で蒸発する。
収量:17.6g(理論値の100%)
【0052】
工程2:
4−メチルモルホリン−4−イウム6−アミノ−3,5−ジシアノ−4−[4−(シクロプロピルメトキシ)フェニル]ピリジン−2−チオレート
【化9】

4−(シクロプロピルメトキシ)ベンズアルデヒド17.6g(100mmol)、2−シアノエタンチオアミド20.3g(200mmol)および4−メチルモルホリン20.3g(200mmol)を、エタノール100ml中で3時間還流する。真空で蒸発後、残渣を酢酸エチル20mlに取り、終夜冷蔵庫で維持する。濾過により結晶を単離し、少量の冷たい酢酸エチルに再懸濁し、濾過により再度単離する。
収量:11.2g(理論値の26.4%)
MS(DCI/NH):m/z=323(M+H)
1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 7.55 (幅広い s, 2H), 7.4 (d, 2H), 7.05 (d, 2H), 3.9 (d, 2H), 3.7 (m, 2H), 3.35 (幅広い s, 4H), 2.75 (s, 2H), 2.50 (s, 3H), 1.3 (m, 1H), 0.6 (m, 2H), 0.35 (m, 2H).
【0053】
工程3:
2−({6−アミノ−3,5−ジシアノ−4−[4−(シクロプロピルメトキシ)フェニル]ピリジン−2−イル}チオ)アセトアミド
【化10】

4−メチルモルホリン−4−イウム6−アミノ−3,5−ジシアノ−4−[4−(シクロプロピルメトキシ)フェニル]ピリジン−2−チオレート5.7g(13.5mmol)、2−ブロモアセトアミド2.79g(20.2mmol)および炭酸水素ナトリウム4.53g(54mmol)を、共にDMF45ml中、2時間室温で撹拌する。次いで、メタノール22mlを添加する。水55mlを滴下して添加した後、結晶を濾過により単離し、水に再懸濁し、再度濾過により単離する。
収量:5.3g(理論値の100%)
1H-NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ = 8 (幅広い s, 2H), 7.5 (幅広い s, 1H), 7.45 (d, 2H), 7.25 (幅広い s, 1H), 7.1 (d, 2H), 3.9 (m, 4H), 1.3 (m, 1H), 0.6 (m, 2H), 0.35 (m, 2H).
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、梗塞サイズを、単離されたウサギ心臓におけるリスク領域の%で示す。
【図2】図2は、梗塞サイズを、インビボのウサギ心臓におけるリスク領域の%で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再灌流傷害および再灌流障害の予防および/または処置方法であって、式(I)
【化1】

[式中、
Aは、−O−Rまたは−NH−C(=O)−Rを表し、
は、CH−C(=O)−NH、ピリジルまたはチアゾリルを表し、
は、水素または(C−C)−シクロアルキルメチルを表し、
そして、
は、(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、モノ−またはジ−(C−C)−アルキルアミノを表す]
の化合物並びにそれらの塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物の有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
式中、
Aが−O−Rまたは−NH−C(=O)−Rを表し、
が、CH−C(=O)−NH、ピリジルまたはチアゾリルを表し、
が、水素またはシクロプロピルメチルを表し、
そして、
が、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルまたはtert.−ブチルを表す、
式(I)の化合物並びにそれらの塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物の有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(I−A)
【化2】

の化合物並びにその塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物の有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(I−B)
【化3】

の化合物並びにその塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物の有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(I−C)
【化4】

[式中、
Aは、−O−Rを表し、
は、CH−C(=O)−NH、ピリジルまたはチアゾリルを表し、
そして、
は、(C−C)−シクロアルキルメチルを表す]
の化合物並びにそれらの塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物の有効量を、それを必要としている対象に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式中、
Aが、−O−Rを表し、
が、CH−C(=O)−NH、ピリジルまたはチアゾリルを表し、
そして、
が、シクロプロピルメチルを表す、
請求項5に記載の式(I−C)の化合物およびそれらの塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物。
【請求項7】
式(I−B)
【化5】

の、請求項5および請求項6のいずれかに記載の化合物およびその塩、水和物、塩の水和物および溶媒和物。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の少なくとも1種の化合物並びに常套の補助剤および添加物を含む、医薬組成物。
【請求項9】
請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の少なくとも1種の化合物を含む医薬の製造方法であって、常套の補助剤および添加物を使用して、活性化合物を適する投与形に変換する、方法。
【請求項10】
医薬が経口使用のためのものである、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
医薬が予防的使用のためのものである、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の、一般式(I)の化合物による再灌流傷害および/または再灌流障害の予防および/または処置方法。
【請求項13】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の一般式(I)の化合物を含有する、再灌流傷害および再灌流障害の処置用の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−534453(P2008−534453A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502282(P2008−502282)
【出願日】平成18年3月11日(2006.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002263
【国際公開番号】WO2006/099958
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】