説明

再熱型蒸気タービンプラント

【課題】 再熱型蒸気タービンプラントを効率的に暖機し、タービンの起動時間を短縮する。
【解決手段】 本発明の再熱型蒸気タービンプラントの運転装置は、高圧タービン12と復水器14との間に設けられたベンチレータ弁36の開度を調節し、高圧タービンの排気圧力P2を調節し、高圧タービン12の蒸気入口部のメタル温度T1を上げる。
そのため、高圧タービン12の蒸気入口部に温度計T1,圧力計P1を設置し、蒸気出口部に温度計T2,圧力計P2を設置し、蒸気タービンのヒートソーク運転時には、検出された温度,圧力に基づいて制御機器50でベンチレータ弁36の開度を演算し、ベンチレータ弁36を中間開度で運転し、高圧タービンの排気圧力を調節し、高圧タービンのメタル温度を上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再熱型蒸気タービンプラントに係り、特に、再熱型蒸気タービンプラントを効率的に暖機する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラで発生した蒸気により駆動される高圧蒸気タービンと、高圧蒸気タービン駆動後の蒸気を加熱する再熱系統と、再熱系統を介さずに、ボイラで発生した蒸気を復水器に直接排出するタービンバイパス系統とを有する再熱型蒸気タービンプラントが知られている。
【0003】
より具体的には、ボイラで発生した蒸気は、高圧主蒸気管,主蒸気止め弁,蒸気加減弁を通り、高圧タービンに供給される。高圧タービンから出た蒸気は、低温再熱蒸気管を通って再熱器で再熱される。再熱された蒸気は、高温再熱蒸気管,インターセプト弁,再熱蒸気止め弁を通り、中圧タービンに供給される。中圧タービンから出た蒸気は、低圧タービンに供給される。
【0004】
再熱型蒸気タービンプラントにおいては、高圧主蒸気管と低温再熱蒸気管との間に、主蒸気止め弁,蒸気加減弁と、高圧タービンをバイパスする高圧タービンバイパス管とが設けられ、高圧タービンバイパス管には、高圧タービンバイパス弁が設けられている。
【0005】
また、高圧タービンバイパス管と高圧タービンとの間には、逆止弁が設けられており、高圧タービンと復水器との間には、ベンチレータ弁が設けられている。
【0006】
高圧および低圧タービンバイパス系統が設置された再熱型蒸気タービンプラントでは、タービン起動時に、まずインターセプト弁を介して中圧タービンに蒸気を供給する。
【0007】
その際、インターセプト弁を制御しタービンの昇速および速度制御を実行し、インターセプト弁が全開状態となった後、インターセプト弁から蒸気加減弁に制御を切換える。
【0008】
このインターセプト弁から蒸気加減弁に制御を切換える場合は、主蒸気が高圧タービンに急激に流入するので、高いロータ熱応力が発生する。また、高圧タービンの車室の上下伸び差に起因する振動も発生しやすい状態となる。
【0009】
特に、冷機状態のタービン起動時には、高圧タービンの熱応力および昇速・速度保持中の振動が厳しくなるので、この制御切換えの前に、高圧タービンの暖機を目的としたヒートソーク運転を実行する(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
その際、蒸気加減弁は、中間開度となり、高圧タービンに蒸気を供給する。このときベンチレータ弁は、全開状態を維持し、高圧タービンを真空に保持し、タービンの昇速および速度制御において、高圧タービンの風損による温度上昇を抑制できる。
【0011】
【特許文献1】特開昭10−238311号公報(第3〜4頁 図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
タービンバイパス系統が設置された蒸気タービンプラントにおける従来の蒸気タービン起動方式では、高圧タービンのタービンロータの熱応力を緩和し振動を抑制するために、非常に長時間のヒートソーク運転が必要となる。したがって、高圧タービンを効果的に暖機し、タービンの起動時間が短縮されることが望まれる。
【0013】
ベンチレータ弁は、ヒートソーク運転時の他に次の場合にも用いられる。発電機に接続された電力系統などで事故が発生し、蒸気タービンの負荷が遮断された場合には、蒸気加減弁およびインターセプト弁が全閉状態に制御される。このとき、蒸気加減弁の下流からインターセプト弁までの間に閉じ込められた蒸気によって高圧タービンの回転速度が上昇し風損が生じる。
【0014】
この風損よってタービン翼が加熱されるのを抑制するため、高圧タービンの下流にベンチレータ弁を設け、蒸気加減弁の全閉時にベンチレータ弁を開くことで、高圧タービン内の蒸気を復水器に排出し、タービン翼が加熱され高圧排気温度が上昇するのを抑制する役割を果たす。ベンチレータ弁は、その高圧排気温度の上昇を抑制可能な程度に大きなサイズに設計する必要がある。
【0015】
現状では、ベンチレータ弁を全閉または全開し運用している。したがって、高圧タービンの排気温度条件の厳しくないヒートソーク運転時にもベンチレータ弁が全開されていることから、排気圧力が低くなる。
【0016】
その結果、高圧段での蒸気の膨張すなわち仕事量が増え、ヒートソーク運転時の高圧タービン内の蒸気流量が低下する。この蒸気流量の低下により、高圧タービンの熱伝達率が下がり、暖機効率が悪くなる。
【0017】
このように、現状の方法によれば、ヒートソーク運転時には、高圧タービンの排気温度が必要以上に下がってしまい、高圧タービンの迅速な暖機ができなかった。
【0018】
本発明の課題は、効率的に暖機し、タービンの起動時間を短縮できる再熱型蒸気タービンプラントおよび運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の再熱型蒸気タービンプラントの運転装置は、高圧タービンと復水器との間に設けられたベンチレータ弁の開度を調節し、高圧タービンの排気圧力を調節し、高圧タービンの蒸気入口部のメタル温度を上げる。
【0020】
そのため、高圧タービンの蒸気入口部に温度計,圧力計を設置し、蒸気出口部に温度計,圧力計を設置し、蒸気タービンのヒートソーク運転時には、検出された温度,圧力に基づいて制御機器でベンチレータ弁の開度を演算し、ベンチレータ弁を中間開度で運転する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の再熱型蒸気タービンプラントの運転方法によれば、効率的に暖機し、タービンの起動時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、図面を参照して、本発明による再熱型蒸気タービンプラントの実施例を説明する。
【0023】
図1は、本発明による再熱型蒸気タービンプラントの実施例の系統構成を示す図である。
【0024】
本実施例の再熱型蒸気タービンプラントは、ボイラ10と、再熱器11と、高圧タービン12と、中圧タービン13と、復水器14と、高圧主蒸気管20と、高圧タービンバイパス管21と、低温再熱蒸気管22と、高温再熱蒸気管23と、高圧タービンバイパス弁30と、逆止弁31と、主蒸気止め弁32と、蒸気加減弁33と、インターセプト弁34と、再熱蒸気止め弁35と、ベンチレータ弁36と、制御装置50とからなる。
【0025】
ボイラ10で発生した蒸気は、高圧主蒸気管20,主蒸気止め弁32,蒸気加減弁33を通り、高圧タービン12に供給される。高圧タービン12から出た蒸気は、低温再熱蒸気管22を通って再熱器11で再熱される。
【0026】
再熱された蒸気は、高温再熱蒸気管23,インターセプト弁34,再熱蒸気止め弁35を通り、中圧タービン13に供給される。中圧タービン13から出た蒸気は、図示しない低圧タービンに供給される。
【0027】
再熱型蒸気タービンプラントにおいては、高圧主蒸気管20と低温再熱蒸気管22との間に、主蒸気止め弁32,蒸気加減弁33および高圧タービン12をバイパスする高圧タービンバイパス管21が設けられ、高圧タービンバイパス管21には、高圧タービンバイパス弁30が設けられている。
【0028】
高圧タービンバイパス管21と高圧タービン12の間には、逆止弁31が設けられており、高圧タービン12と復水器14の間には、ベンチレータ弁36が設けられている。
【0029】
この高圧および低圧タービンバイパス系統が設置された再熱型蒸気タービンプラントでは、タービン起動時に、まずインターセプト弁34を介して中圧タービン13に蒸気を供給する。
【0030】
その際、インターセプト弁34を制御し、タービンの昇速および速度制御を実行し、インターセプト弁34が全開状態となった後、インターセプト弁34から蒸気加減弁33に制御を切換える。
【0031】
インターセプト弁34から蒸気加減弁33に制御を切換える場合は、急激に主蒸気が高圧タービン12に流入するので、従来は、高いロータ熱応力が発生していた。また、高圧タービン12の車室の上下伸び差に起因する振動も発生しやすい状態となる。特に、冷機状態のタービン起動時には、高圧タービン12の熱応力および昇速・速度保持中の振動が厳しくなるので、この制御切換えの前に、高圧タービン12の暖機を目的としたヒートソーク運転を実行する。
【0032】
これに対して、本実施例では、高圧タービン12のメタル温度を上げる際に、ベンチレータ弁36の開度を制御し、高圧タービン12の排気圧力を調節する。すなわち、高圧タービン12と復水器14との間に設けられたベンチレータ弁36の開度を調節し、高圧タービンの排気圧力P2を調節し、高圧タービン12の蒸気入口部のメタル温度T1を上げる。
【0033】
そのため、高圧タービン12の蒸気入口部に温度計T1,圧力計P1を設置し、蒸気出口部に温度計T2,圧力計P2を設置し、蒸気タービンのヒートソーク運転時には、検出された温度,圧力に基づいて制御機器50でベンチレータ弁36の開度を演算し、ベンチレータ弁36を中間開度で運転し、高圧タービンの排気圧力を調節し、高圧タービンのメタル温度を上げる。
【0034】
ベンチレータ弁36の開度を狭くして高圧タービン12の排気圧力を上げると、蒸気流量が増え、高圧タービン12への熱伝達率が上昇し、暖機の効率が上がる。また、高圧翼列の風損が増すので、排気部の温度が上昇し、高圧タービンロータおよび高圧車室をより均一に暖機できる。高圧タービン12の暖機が進み、所定温度に近づくに連れて、ベンチレータ弁36の開度を次第に全開方向に近づけていく。
【0035】
ベンチレータ弁36の弁開度は、次のように制御する。ヒートソーク運転開始時に、高圧タービンの蒸気入口部のメタル温度T1を測定し、定格回転速度まで昇速した場合に予想される蒸気入口のメタル温度T1を規定し、蒸気タービンの回転速度の上昇率から、高圧タービン12の蒸気入口のメタル温度T1が所定温度に暖機されるまでの時間を求める。この時間に基づいて、ヒートソーク運転開始時に回転速度の変化に対応するベンチレータ弁36の開度を決定できる。その際、風損により高圧排気温度が上昇しないように、蒸気出口温度T2を随時測定し、ベンチレータ弁36の開度を調整する。
【0036】
上記制御方法に代えて、蒸気入口部圧力P1を測定し、蒸気タービンが所定回転速度になる最適な蒸気出口部圧力P2を求め、その蒸気出口部圧力P2になるように、ベンチレータ弁36の開度を回転速度の変化に基づいて制御する。この際にも、風損により高圧排気温度が上昇しないように、蒸気出口温度T2を随時測定し、ベンチレータ弁36の開度を調整する。
【0037】
本実施例によれば、効率的に暖機し、タービンの起動時間を短縮できる。また、ベンチレータ弁36を中間開度で運用し、復水器へのバイパス量を減らせるので、起動時のエネルギー損失を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明による再熱型蒸気タービンプラントの実施例の系統構成を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ボイラ
11 再熱器
12 高圧タービン
13 中圧タービン
14 復水器
20 高圧主蒸気管
21 高圧タービンバイパス管
22 低温再熱蒸気管
23 高温再熱蒸気管
30 高圧タービンバイパス弁
31 逆止弁
32 主蒸気止め弁
33 蒸気加減弁
34 インターセプト弁
35 再熱蒸気止め弁
36 ベンチレータ弁
50 制御装置
T1 蒸気入口部温度計
P1 蒸気入口部圧力計
T2 蒸気出口部温度計
P2 蒸気出口部圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラと、前記ボイラに高圧主蒸気管で接続された高圧タービンと、前記高圧タービンに低温再熱蒸気管で接続された再熱器と、前記高圧主蒸気管と前記低温再熱蒸気管との間に接続され前記高圧タービンをバイパスする高圧タービンバイパス管と、ベンチレータ弁を介して前記高圧タービンに接続された復水器と、再熱された蒸気を高温再熱蒸気管で供給される中圧タービンと、中圧タービンから出た蒸気を供給される低圧タービンとからなる再熱型蒸気タービンプラントにおいて、
高圧タービンの蒸気入口部および蒸気出口部にそれぞれ温度計および圧力計を設置し、
蒸気タービンのヒートソーク運転時に、検出された温度,圧力に基づいて前記ベンチレータ弁の開度を演算し、ベンチレータ弁を中間開度で運転し、前記高圧タービンの排気圧力を調節し、前記高圧タービンのメタル温度を上げる制御装置を設けたことを特徴とする再熱型蒸気タービンプラント。
【請求項2】
請求項1に記載の再熱型蒸気タービンプラントの運転方法において、
ヒートソーク運転開始時に、高圧タービンの蒸気入口部のメタル温度T1を測定し、定格回転速度まで昇速した場合に予想される蒸気入口のメタル温度T1を規定し、蒸気タービンの回転速度の上昇率から高圧タービンの蒸気入口のメタル温度が所定温度に暖機されるまでの時間を求め、この時間に基づいてヒートソーク運転開始時に回転速度の変化に対応するベンチレータ弁の開度を決定し、蒸気出口温度T2が所定値を越えないようにベンチレータ弁の開度を調整することを特徴とする再熱型蒸気タービンプラントの運転方法。
【請求項3】
請求項1に記載の再熱型蒸気タービンプラントの運転方法において、
ヒートソーク運転開始時に、蒸気入口部圧力P1を測定し、蒸気タービンが所定回転速度になる最適な蒸気出口部圧力P2を求め、その蒸気出口部圧力P2になるようにベンチレータ弁の開度を回転速度の変化に基づいて制御し、蒸気出口温度T2が所定値を越えないようにベンチレータ弁の開度を調整することを特徴とする再熱型蒸気タービンプラントの運転方法。

【図1】
image rotate