説明

再生された担持水素化触媒を用いた水素化方法

再生された担持金属触媒を用いた、水素化脱硫および水素化脱窒素を含む炭化水素原料の水素化方法が提供されている。第VIII族金属、第VIB族金属からなる担持金属触媒は、これらの金属、有機錯化剤そして任意には有機添加剤を使用するプロセスによって再生される。再生には、使用済みまたは部分的に使用済みの触媒のストリッピングおよび再生成とそれに続くおよび少なくとも1種の有機化合物での含浸が含まれる。含浸済み再生成触媒は、乾燥、焼成そして硫化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素供給原料(feed)の水素化脱硫(HDS)および水素化脱窒素(HDN)を含む、再生(rejuvenated)された担持第VIB族および第VIII族触媒を用いた水素化に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素原料(feedstock)の水素処理の間、触媒活性は、触媒表面上にコークスが蓄積するにつれて運転時間(time on stream)に伴って低下する。最終的には、活性を回復するために空気中でコークスを焼き払うことにより触媒を再生成させなくてはならない。残念なことに、大部分の場合において、再生成された水素処理触媒は、もとの新鮮な触媒より活性が低く、その後は負担の少ない価値の低い業務に使用せざるを得ない。
【0003】
増々厳しくなる環境規制により、輸送燃料の硫黄含有量を著しく削減することが求められるようになっている。例えば2010年代の終りまでには、留出燃料の最大硫黄レベルは、欧州および日本で10wppmに、そして北米では15wppmに制限される。これらの超低硫黄要件を、留出物の終留点の低下無く、または既存の精油所に対する高価な修正無く満たすためには、活性を更に高めた触媒が必要になる。このようなより活性の高い水素処理触媒は、典型的に金属負荷がより高いためにコストが更に高い。これらの高コストに起因して、これらの使用済み触媒を再生成し、再利用することが望ましいと考えられる。しかしながら、以上で指摘した通り、再生成手順によって多くの場合、触媒の活性は削減される結果となる。
【0004】
必要なのは、より価値の低い負担の少ない業務での使用に甘んじることを余儀なくされることなく再生済み触媒の再利用を可能にする高活性水素化触媒の再生方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態においては、再生された触媒を用いた炭化水素原料の水素化方法が提供されている。この方法は、規定のプロセスに従って再生された触媒の存在下での有効な水素化条件において炭化水素原料を水素化する工程を含んでいる。このプロセスは、少なくとも1つの第VIB族金属、少なくとも1つの第VIII族金属および有機錯化剤を含む溶液、スラリー、またはその他の混合物を調製する工程を含む。この溶液は、含浸溶液として使用される。このプロセスは同様に、支持体、少なくとも1つの第VIB族金属および少なくとも1つの第VIII族金属を含む担持水素処理触媒のストリッピング工程をも含んでいる。好ましくは、担持水素処理触媒は、使用済みまたは部分的に使用済みの触媒である。好ましくは、担持水素処理触媒は、約350℃以下の温度で流動気体流を用いてストリッピングされる。ストリッピングされた触媒はこのとき約500℃以下の温度で酸素含有ガスの存在下で再生成される。次に再生成された触媒に溶液、スラリーまたは混合物が含浸される。含浸の後、含浸済み再生成触媒を、200〜450℃の温度で乾燥させて、部分焼成された含浸済み再生成触媒の重量に基づいて少なくとも5重量%の炭素含有量を有する部分焼成された含浸済み再生成触媒を生成し、このとき有機溶媒は部分焼成された含浸済み支持体上に存在していない。部分焼成された含浸済み再生成触媒は次に硫化される。
【0006】
別の実施形態においては、再生された触媒を用いた炭化水素原料の水素化方法が提供されている。この方法は、規定のプロセスに従って再生された触媒の存在下での有効な水素化条件において炭化水素原料を水素化する工程を含んでいる。このプロセスは、少なくとも1つの第VIB族金属、少なくとも1つの第VIII族金属および有機錯化剤を含む溶液、スラリー、またはその混合物を調製する工程が含まれる。再生成された触媒に溶液、スラリーまたは混合物が含浸され、この再生成された触媒には、支持体、少なくとも1つの第VIB族金属および少なくとも1つの第VIII族金属が含まれる。含浸済み再生成触媒を、200〜450℃の温度で乾燥させて、部分焼成された含浸済み再生成触媒の重量に基づいて少なくとも5重量%の炭素含有量を有する部分焼成された含浸済み再生成触媒を生成し、このとき有機溶媒は部分焼成された含浸済み支持体上に存在していない。部分焼成された含浸済み再生成触媒は次に硫化される。
【0007】
好ましくは、上述の方法によって再生された担持触媒は、以下のプロセスに従って作られる新鮮な担持触媒に対応する。少なくとも1つの第VIB族金属、少なくとも1つの第VIII族金属および有機錯化剤を含有する溶液、スラリーまたはその他の混合物を調製する。支持体には、溶液、スラリーまたは混合物が含浸されている。含浸済み支持体を、200〜450℃の温度で乾燥させて、部分焼成された含浸済み支持体の重量に基づいて少なくとも5重量%の炭素含有量を有する部分焼成された含浸済み支持体を生成し、このとき有機溶媒は部分焼成された含浸済み支持体上に存在していない。炭素含有量の少なくとも一部を含む部分焼成された含浸済み支持体は、次に硫化される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
さまざまな実施形態において、触媒は、再生された担持触媒である。再生された担持触媒は、当初炭化水素原料の水素処理のために使用される担持触媒が基となっている。初期水素処理によって、担持触媒は、使用済みまたは部分的に使用済みの触媒となるが、その原因の少なくとも一部は使用済みまたは部分的に使用済みの触媒上にコークスが存在することにある。
【0009】
一実施形態において、再生プロセスは、使用済みまたは部分的に使用済みの触媒中に蓄積された供給原料および/または製品炭化水素を除去することによって開始される。供給原料および/または製品炭化水素は、約350℃より低い温度で流動気体流を用いたストリッピングにより除去される。ストリッピングされた触媒は次に、約500℃未満の温度で酸素含有ガスとストリッピング済み触媒とを接触させることにより再生成される。再生成された水素処理触媒には次に1つ以上の有機化合物を含む溶液が含浸される。好ましくは、溶液は同様に、付加的な第VIB族金属および/または第VIII族金属も含む。乾燥の後、触媒は窒素、空気または窒素と空気の混合物中で最高450℃の温度で焼成されて、有機化合物を実質的に分解させるが、触媒表面になお幾分かの残留炭素を保持する。残留炭素含有量は5〜10重量%であることが好ましい。
【0010】
本発明により調製される再生された水素処理済み触媒は、もとの新鮮な水素処理触媒よりも著しく高い脱硫活性を有する可能性がある。同様に、本発明により調製された触媒は、使用済み水素処理触媒に対し新鮮な担体を用いて調製した類似の触媒よりも著しくコストが低い。更に、使用済み水素処理触媒を再生成し再生するための実行可能な方法は、超低硫黄輸送燃料を生成するために高活性触媒を使用することの経済性を著しく改善する。
【0011】
使用済みまたは部分的に使用済みの担持触媒は、あらゆる水素処理プロセスで使用されてきた担体上に担持された第VIB族および第VIII族金属で構成された従来のまたは添加剤ベースの触媒であり得る。担持触媒の支持体部分は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、またはその混合物などの従来の金属酸化物のいずれかで構成され得る。触媒の支持体部分は、球体、ペレットまたは押出物形状といった任意の適切な形状を有することができる。
【0012】
好ましくは、再生前の使用済みまたは部分的に使用済みの触媒は、約15重量%未満または約20重量%未満などの中等度のコークスレベルしか有していない。本発明に係る再生の後、担持触媒は好ましくは、対応する新鮮な触媒の少なくとも約70%の表面積および圧潰強度を有し得る。本発明に係る再生の後、担持触媒は好ましくは、対応する新鮮な触媒の少なくとも約100重量%または少なくとも約105%または少なくとも約110%または少なくとも約115%の第VIB族および第VIII族金属含有量を有する可能性がある。担持触媒は、再生成後に、対応する新鮮な触媒の第VIB族および第VIII族金属のわずか90重量%の金属含有量しか有していない可能性があるが、好ましくは、含浸工程により、金属含有量を少なくとも約100%まで増大させるのに充分な金属が添加されることになる。金属含有量についての上述の重量が、その酸化物形態での金属を意味するという点に留意されたい。更に本発明に係る再生の後、再生された触媒は好ましくは,以下の表に従って削除された微量汚染物質レベルを有する。一部の触媒支持体には酸化ケイ素が含まれるという点に留意されたい。従って、再生された触媒中の酸化ケイ素の好ましい量は、対応する新鮮な触媒中に存在する酸化ケイ素の量に基づく相対値である。
【0013】
【表1】

【0014】
一実施形態において、再生された触媒粒子は、第VIB族金属好ましくはMoまたはW、最も好ましくはMoと第VIII族金属、好ましくは第VIII族非貴金属、より好ましくはCoまたはNi、最も好ましくはCoそして担持触媒に基づいて少なくとも約5重量%の残留有機炭素含有量で構成され、残りの部分は担体(carrier)または支持体(support)であり、ここでこの担体は、担体体積あたり0.35、より好ましくは0.40の最小細孔容積を有する。好ましくは、再生された触媒は、金属酸化物として計算された場合少なくとも約35重量%の合計金属含有量を含む。族の呼称は、サージェント−ウェルチ周期表、1968年の版権に基づくものである。上述の通り、触媒は有機残渣、好ましくは炭素残渣を含む。有機残渣は、水素処理のための触媒の活性増加を導く因子である。
【0015】
別の実施形態において、再生された触媒は、その触媒が金属酸化物として計算した場合約20〜60重量%、好ましくは少なくとも約20重量%、より好ましくは少なくとも約30重量%そして更に一層好ましくは少なくとも約35重量%の合計金属含有量、並びに担持触媒に基づいて約1〜50重量%の間、好ましくは約5〜20重量%の間の残留有機炭素含有量を有し、残りが担体または支持体であることを条件として、担持触媒粒子が第VIB族金属、好ましくはMoまたはW、最も好ましくはMoと第VIII族金属、好ましくは第VIII族非貴金属、より好ましくはCoまたはNi、最も好ましくはCoで構成されている担持触媒である。担持触媒内の第VIII族非貴金属対第VIB族金属のモル比は、一般に約10対1から約1対10の範囲内である。好ましくは、第VIII族非貴金属対第VIB族金属の比は約3対1未満、より好ましくは約2対1未満である。好ましくは、第VIII族非貴金属対第VIB族金属の比は、約1対3超、より好ましくは約1対2超である。金属は、好ましくは有機錯体(またはその有機残基の錯体)および/または対応する金属の酸化物として、または担持触媒前駆体が硫化された触媒組成物を形成した場合には対応する金属の硫化化合物として存在する。一実施形態においては、有機錯体または有機残基錯体は、有機酸例えばカルボン酸に基づくものであり得る。
【0016】
更に別の実施形態においては、再生中に添加される金属のうちの1つ以上は使用済みまたは部分的に使用済みの担持触媒上に存在する金属とは異なるものであり得る。
【0017】
好ましい実施形態においては使用済みまたは部分的に使用済みの担持触媒は、再生について記述された含浸手順を用いて当初形成された担持触媒である。
【0018】
適切な担体(支持体)としては、触媒支持体、例えば耐火物、例えば炭化ケイ素および金属酸化物例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、マグネシア、ジルコニア、ボリア、イットリア、チタニアなどが含まれる可能性がある。特に好ましいのは、アルミナおよびシリカである。好ましいアルミナは、多孔質アルミナ例えばガンマ、シータ、デルタ、カッパ、エータ、またはアルファとシータなどの結晶相の混合物である。金属酸化物支持体の酸性度および/またはその他の特性は、プロモータおよび/またはドーパントを添加することによってかまたは金属酸化物支持体の性質を制御すること、例えばシリカ−アルミナ支持体内に取込まれるシリカの量を制御することにより、制御可能である。プロモータおよび/またはドーパントの実施例としては、ハロゲン、特にフッ素、リン、ホウ素、イットリア、希土類酸化物およびマグネシアが含まれる。ハロゲンなどのプロモータは一般に、金属酸化物支持体の酸性度を増大させるが、一方イットリアまたはマグネシアなどの弱塩基性のドーパントはこのような支持体の酸性度を減少させる傾向にある。
【0019】
一実施形態においては、支持体または担体は好ましくは、支持体体積あたりの大きな細孔容積を有し得る。大きい細孔容積とは、支持体が支持体1ccあたり少なくとも0.35ccの細孔容積、好ましくは少なくとも0.40cc/ccの細孔容積を有するはずであることを意味する。大きい細孔容積を有する支持体の選択は、個々の含浸工程あたりの含浸溶液の充填を最大限にすることに関係する。
【0020】
触媒組成物が同様に、例えばリンまたはホウ素化合物などの酸性構成要素、付加的な遷移金属、希土類金属、主族金属例えばSiまたはAlまたはそれらの混合物などの、従来水素化触媒中に存在する任意の付加的な構成要素を含んでいることは、本発明の範囲内に入る。適切な付加的遷移金属の例としては、レニウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、クロム、バナジウム、鉄、白金、パラジウム、コバルト、ニッケル、モリブデン、亜鉛、ニオブまたはタングステンが含まれる。これらの金属化合物は全て、触媒組成物が硫化された場合一般に硫化形態で存在する。硫化に先立ち、これらの金属の1つ以上のものの少なくとも一部が触媒前駆体内の有機化合物ベースの材料により錯化され得る。硫化の後、硫化金属の少なくとも一部は、なおも何らかの形で直接または間接的に触媒中の有機化合物ベースの材料または有機残渣に結合されていると考えられている。
【0021】
本発明の触媒による処理に適した原料には、硫黄含有量の低い留出燃料の生産向けの原料が含まれる。適切な原料には、鉱物または合成源から誘導され、ASTM D86またはASTM2887により測定された場合好ましくは25〜475℃の範囲内で沸とうするナフサから真空ガスオイルまでの範囲内の沸点を有する留出物が含まれる。好ましい原料は、170〜350℃の沸点を有し、留出燃料特にディーゼル燃料を生成するのに適した原料である。供給原料は、窒素汚染物質および硫黄汚染物質を高含有量で有しているかもしれない。供給原料に基づき最高0.2重量%の窒素そして最高3.0重量%の硫黄を含有する供給原料は、本プロセスにおける処理が可能である。硫黄および窒素含有量は、それぞれ標準的ASTM方法D5453およびD4629により測定されてよい。
【0022】
再生条件
さまざまな実施形態において、本発明に係る再生された触媒は、使用済みまたは部分的に使用済みの担持触媒を提供する工程、触媒をストリッピングし再生成する工程そして次に含浸溶液を触媒に含浸させる工程により調製される。
【0023】
使用済みまたは部分的に使用済みの担持触媒のストリッピングは、任意の適切な要領で実施可能である。ストリッピング方法の一例は溶液ストリッピングであり、その場合再生成前に触媒上に存在する炭化水素および/またはコークスの少なくとも一部を除去する目的で、使用済みまたは部分的に使用済みの触媒が溶剤に曝露される。適当な溶剤の例としては、芳香族溶剤、極性有機溶剤および非極性有機溶剤が含まれる。溶剤ストリッピングには同様に、さまざまなタイプの炭化水素をより効果的に除去するための溶剤シーケンスが関与する可能性もある。例えば溶剤ストリッピングシーケンスは、使用済みまたは部分的に使用済みの触媒を最初に芳香族溶剤例えばキシレンに、次に非極性溶剤例えばシクロヘキサンに、そして最終的に極性溶剤例えばアセトンに曝露する工程が含まれ得ると考えられる。その他のあらゆる適切な溶剤ストリッピングシーケンスも使用してよい。
【0024】
好ましくは、使用済みまたは部分的に使用済みの担持触媒のストリッピングは、担持触媒を流動ガス流に曝露することによって実施される。ストリッピング温度は、約350℃未満の任意の適切な温度であり得る。好ましくは、ストリッピング温度は少なくとも50℃、または少なくとも100℃である。一実施形態において、流動気体流には、窒素、水、二酸化炭素または希ガスなどの、使用済みまたは部分的に使用済みの触媒上に存在する材料に対し不活性な気体が含まれる。或いは、酸素含有ガス(例えば空気)を使用してもよい。しかしながら、酸素含有ガスの存在は、触媒からのコークスの除去を幾分か可能にする確率が高く、そのため、ストリッピング工程の間過度の加熱を回避するようにストリッピング条件を適切に選択しなければならない。
【0025】
ストリッピング済み触媒の再生成は、任意の適切な要領で実施可能である。再生成中、ストリッピング済み触媒は高温で酸素含有ガスと接触させられる。さまざまな実施形態において、再生成中の温度は少なくとも約300℃または少なくとも約350℃、そして約500℃未満または約450℃未満である。
【0026】
再生成触媒に含浸させるための含浸溶液には、第VIB族/第VIII族化合物、好ましくは第VIB族/非貴金属第VIII族化合物、より好ましくはコバルト化合物、モリブデン化合物、有機錯化剤そして任意にはその他の有機添加剤、例えばアルコールまたはポリオール(例えばエチレングリコール)、アルデヒド(例えばグリオキサル)、ケトンまたはアミンまたはジアミンが含まれる。金属化合物には、可溶性塩、および或る種の条件下で可溶性となる不溶性化合物が含まれる。適切なCo前駆体の非限定的例としては、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、水酸化物、ヒドロキシカルボン酸塩、酢酸アセチル、アセトン酸アセチル、金属Co(0)、酸化Co、カルボン酸Co(特にグリオキシル酸Co)、クエン酸Co、グルコン酸Co、酒石酸Co、グリシンCo(Co glycin)、乳酸Co、ナフテン酸Co、シュウ酸Co、蟻酸Co、リンゴ酸Co、ピルビン酸Co、グリコール酸Co、およびその混合物が含まれる。好ましいモリブデンおよびタングステン前駆体化合物としては、アルカリ金属またはモリブデン酸アンモニウム(同様にペルオキソ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ヘプタ−、オクタ−またはテトラデカモリブデン酸塩)、モリブデン酸、ホスホモリブデン酸、リンタングステン酸、Mo-Pヘテロポリアニオン化合物、W−Siヘテロポリアニオン化合物、Co−Mo−Wヘテロポリアニオン化合物、アルカリ金属またはタングステン酸アンモニウム(同じく、メタ−、パラ−、ヘキサ−またはポリタングステン酸塩)、アセトン酸アセチル、Mo(0)金属、Mo酸化物、Moペルオキソ錯体およびそれらの混合物が含まれる。
【0027】
更にその他の実施形態においては、第VIII族金属または第VIB族金属溶液を調製するために、任意の適切な第VIII族金属または第VIB族金属試薬を使用することができる。更には、溶液はその他の遷移金属を更に含むことができる。適切な付加的遷移金属の例としては、レニウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、クロム、バナジウム、鉄、白金、パラジウム、コバルト、ニッケル、モリブデン、亜鉛、ニオブまたはタングステンが含まれる。好ましくは、この付加的遷移金属は、Co、Mo、Ni、W、Zn、Fe、CuまたはMnのうちの1つ以上である。
【0028】
有機酸は、有機錯化剤の好ましい一部類である。本明細書中の用途に適した有機錯化剤の非限定的例としては、ピルビン酸、レブリン酸、2−ケトグロン酸、ケト−グルコン酸、チオグリコール酸、4−アセチル酪酸、1,3−アセトンジカルボン酸、3−オキソプロパン酸、4−オキソブタン酸、2,3−ジホルミルコハク酸、5−オキソペンタン酸、4−オキソペンタン酸、グリオキシル酸エチル、グリコール酸、グルコース、グリシン、オキサミド酸、グリオキシル酸2−オキシム、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、N−メチルアミノニ酢酸、イミノニ酢酸、ジグリコール酸、リンゴ酸、グルコン酸、アセチルアセトン、クエン酸、酒石酸、アコニット酸、スベリン酸、トリカルバリル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、粘液酸およびグリコール酸が含まれる。酸のアンモニウム塩も同様に適切であるという点に留意されたい。好ましい有機酸は、グリオキシル酸、オキサル酢酸、2−ケトグロン酸、アルファ−ケトグルタル酸、2−ケト酪酸、ピルビン酸、ケト−グルコン酸、チオグリコール酸およびグリコール酸である。最も好ましいのは、クエン酸、グリオキシル酸、ピルビン酸およびオキサル酢酸である。
【0029】
本発明の実践において使用するのに適した有機酸としては、カルボン酸−COOH、ヒドロキサム酸−NOH−C=O、ヒドロキソ−OH、ケト−C=O、アミン:−NH2、アミド:−CO−NH2、イミン:CNOH、チオール:SH、エポキシ:=COC=、およびその組合せからなる群から選択される官能基を含有するものが含まれる。これらの基は、従来金属結合基またはキレート剤として分類され、水溶液中で金属リガンド錯体を形成する。いずれかの特定の理論により束縛されることなく、触媒形成工程中の有機基の錯化が、重要な役割を果たすものと考えられている。
【0030】
別の実施形態においては、再生成触媒に、第VIB族金属、第VIII族金属および有機錯化剤または添加剤で構成された溶液、スラリーまたは混合物を含浸させることができ、ここでこの有機添加剤は溶剤として役立つ。このような実施形態において、水は溶剤として用いられない。その代り、有機錯化剤が有機溶剤として使用される。第VIB族金属および第VIII族金属は塩として提供され得る。好ましい実施形態においては、第VIB族金属塩および第VIII族金属塩のうち少なくとも1つが、溶剤の共役塩基であるアニオンを用いて形成される。例えば、溶剤として2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトン)が使用される場合、モリブデンなどの第VIB族金属のアセトン酸アセチル塩またはコバルトなどの第VIII族金属のアセトン酸アセチル塩のいずれかまたは両方を用いて溶液、スラリーまたは混合物を形成できると考えられる。好ましい実施形態において、このタイプの溶液での触媒の含浸は、触媒の細孔容積と同程度の量の溶液を用いて実施される。例えば、触媒の体積あたりの使用される溶液の体積は、触媒の細孔容積の約0.9倍〜1.05倍であり得る。好ましくは、このタイプの溶液を用いた単一回の含浸により支持体内に充分なレベルの金属を含浸させることができる。
【0031】
さまざまなその他の実施形態において、含浸溶液は水溶液であってよく、可溶性の第VIII族金属構成要素、可溶性第VIB族金属構成要素、少なくとも1つの有機錯化剤そして任意には有機添加剤を含む。有機錯化剤以外の溶剤が使用される一実施形態では、有機錯化剤(例えばカルボン酸)対第VIII族金属構成要素と第VIB族金属構成要素の和のモル比は、約1〜10、好ましくは少なくとも約2、そして好ましくは、約6未満である。有機酸が多数の官能基(例えば多数の−COOH基)を含む一変形形態において、有機官能基対第VIII族金属構成要素と第VIB族金属構成要素の和の比は約1〜10、好ましくは少なくとも2、そして好ましくは6未満であり得る。溶解度の低い金属化合物が有機酸構成要素と反応して可溶性金属構成要素を形成することを条件として、第VIB族/第VIII族金属構成要素を溶解度の低い金属化合物(例えば、CoCO)として添加してよい。金属構成要素の混合順序は、重要ではなく、混合工程中の混合プロセス条件としてのプロセス条件も一般に重要ではない。−実施形態においては、その他の金属構成要素を添加する前に低い溶解度の金属構成要素を可溶化させることが好ましい。例えば、(懸濁液または溶液が適用される場合)全ての構成要素を周囲温度でそれらの自然のpHで添加することが可能であるが、この場合もまた、その他の金属構成要素に対し添加する前に低い溶解度の金属構成要素を可溶化させることが好ましい。
【0032】
含浸溶液に対し有機添加剤(有機錯化剤以外)を添加してもよい。有機添加剤が触媒前駆体の一部として所望される場合、担体に含浸させるのに使用される溶液にそれを添加してもよい。有機添加剤は、第VIB族または第VIB族金属と共に添加されてもよいし、第3の金属塩と共に添加されてもよいし、或いは含浸用溶液に別途添加されてもよい。有機添加剤の量は、第VIB族金属と第VIII族金属の和1モルあたり添加剤0.01〜5モルのモル比の範囲内であってよい。
【0033】
一実施形態において、有機添加剤は、2〜10個の炭素原子を有し少なくとも2個の酸素原子を含む化合物であり得、ポリオール、グリコールおよびそのエーテルおよびアルデヒドまたはケトンを含む。このような添加剤の例としては、グリオキサル、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが含まれる。少なくとも2つの酸素原子を有する有機添加剤としては、600未満の分子量を有するポリエチレングリコールが含まれる。
【0034】
更にその他の添加剤としては、少なくとも2つの窒素原子を有し、2〜10個の炭素原子を有する化合物である。例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−ジアミノブタンおよび1,3−ペンタンジアミンが含まれる。その他の添加剤としては、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンなどの、少なくとも1つの酸素原子および1つの窒素原子を有する化合物が含まれる。更に別の実施形態においては、有機添加剤は、2つ以上の適切な有機添加剤化合物で構成され得る。
【0035】
含浸溶液の調製および混合中、一般に、構成要素の取扱いを容易にするため、例えば水などの溶剤の温度を、その沸点より低く保つことが好ましい。しかしながら、所望の場合には、溶剤の沸点より高い温度または異なるpH値を使用することもできる。混合工程中の反応が高温度で実施される場合には、混合工程中に添加される懸濁液および溶液は好ましくは、実質的に反応温度に等しいものであり得る高温に予熱される。
【0036】
含浸溶液は次に、ストリッピングされ再生成された触媒(この触媒は好ましくは上記の細孔容積を有する)に対して、インシピエントウェットネス(incipient wetness)法を用いて好ましくは20〜80℃の温度で添加される。含浸溶液の体積は、支持体上の金属酸化物の量を増大させるように、再生成触媒の水細孔容積よりも大きいもの、例えば水細孔容積の1.2倍であってよい。好ましくは、再生成触媒全体にわたり金属化合物を確実に等分布させるために、含浸溶液が添加されるにつれて穏やかな撹拌などによりこの再生成触媒を混合すべきである。インシピエントウェットネス含浸法またはその変形形態においては、支持体の水細孔容積が最初に決定される。全ての溶液が支持体内に入るように支持体に対し同じ体積の含浸溶液が添加される。一変形形態においては、より多くの金属を支持体上に得るために、わずかに大きめの体積を使用してよい。例えば、支持体の水細孔容積が支持体1gあたり1.22ccである場合、支持体1グラムについて1.5cc(23%増)の含浸溶液を使用することができる。これは、以下の実施例1の中で示されている。
【0037】
その後、含浸済み支持体は乾燥される。支持体上に触媒前駆体を形成させる工程が関与する実施形態においては、任意の第1の乾燥工程が用いられてよく、この場合、乾燥温度は、含浸済み支持体から水を除去するのに充分なものであり、空気中または窒素などの不活性雰囲気中で約60〜120℃の範囲内であってよい。任意の乾燥工程の後、含浸済み支持体は更に、約100〜450℃、好ましくは200〜450℃、より好ましくは少なくとも300℃そしてより好ましくは400℃未満の乾燥温度に曝露されて、部分焼成された触媒前駆体を生成する。所望の乾燥工程は、有機構成要素の性質に応じて変動してよいという点に留意されたい。この更なる加熱は、残留有機炭素の観点から見て特徴づけすることのできる有機残渣まで任意の有機添加剤および有機酸を含む有機構成要素を部分的に分解させるのに有効な時間、続行される。一実施形態においては、触媒前駆体上に有機残渣の少なくとも一部が残っており、こうして、残留有機炭素が、触媒前駆体(支持体、金属錯体および有機残留炭素を含む)の重量の約5〜20重量%、好ましくは少なくとも10重量%、そして好ましくは15重量%以下を構成するようになっている。乾燥後に触媒前駆体の中に残る有機残渣はもはや、支持体上に含浸された1つまたは複数の原初の有機添加剤または1つまたは複数の有機錯化剤の形をしていないという点に留意されたい。有機残渣が部分焼成された支持体上に維持されている一方で、原初の有機添加剤は、化学的に分解されるかまたは異なる形に反応されてしまっている。
【0038】
任意には、含浸済み再生成触媒は少なくとも1つの付加的な含浸サイクルに付されてよい。含浸および混合条件は、最初の含浸サイクルに後続する含浸サイクルについて以上で記されているものと同じであってよい。
【0039】
いかなる理論によっても束縛されるつもりはないものの、有機残渣は金属の分散に影響を及ぼすかもしれず、望ましくない結晶相を回避する一助となるかもしれない。触媒前駆体または触媒の残留有機炭素含有量は、LECO Corporation製のLECO炭素分析装置などのあらゆる従来の炭素分析機器により分析されてよい。分解のための有効時間は、所望の残留有機炭素含有量に達するのに必要とされる時間であり、一般に約1秒から約24時間の範囲内にある。別の好ましい実施形態においては、炉は室温から1時間で約325℃まで上昇させられる。乾燥/部分焼成/分解は、流動酸素含有気体(空気)、流動窒素または静止空気または不活性ガス(気体供給無し)の存在下で実施可能である。窒素などの不活性ガスの存在下で焼成を実施することが好ましい。
【0040】
単一の連続的工程として、乾燥/部分焼成/分解工程を先行する任意の乾燥工程と組合わせることができる。調製条件は、混合された溶液が乾燥/部分焼成シーケンス全体にわたり、強烈な蒸発、流出または中断を受けないような形で、制御され設計される。
【0041】
最後に、水素化プロセスに先立ってまたはその途中に少なくとも部分焼成された触媒前駆体を硫化することが好ましい。触媒前駆体の硫化は、触媒組成物を生成する。硫化プロセスは、実験施設内でまたは現場内で、および気相中または液相中で行なわれてよい。実験施設内プロセスでは、触媒前駆体を、この触媒前駆体を硫化するのに充分な時間にわたり、高温で、硫化水素および水素など(例えば、10%HS/H)の硫化剤と接触させる。現場内プロセスでは、触媒前駆体を、水素処理反応装置内に充填し、炭化水素供給原料の存在下または不在下で硫化水素などの硫化剤を含む水素と接触させる。硫化水素は同様に、直接水素処理ガスにまたは原料に添加される添加剤(スパイク剤)の分解によって直接提供されてもよい。硫化水素前駆体として用いてよいスパイク剤には、二硫化炭素、チオフェン、メルカプタン、有機硫化物、ジアルキルジスルフィド、ジアリールジスルフィドおよび有機ポリスルフィド好ましくはジメチルスルフィドまたはジメチルジスルフィドの少なくとも1つが含まれる。或いは、触媒前駆体に、触媒前駆体を硫化するのに充分な時間高温で水素下で処理された場合にHSへと分解する硫黄化合物を充填することができると考えられる。
【0042】
水素化プロセス
「水素化」という用語は、炭化水素供給原料を有効な温度および圧力で水素と反応させる全てのプロセスを包含し、水素添加、水素処理、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族化、水素化異性化、水素化脱ロウおよび選択的水素化分解を含む水素化分解が含まれる。好ましい水素化プロセスとしては、水素処理が含まれる。好ましい水素処理としては、水素化脱硫および水素化脱窒素が含まれる。
【0043】
水素処理条件には、740〜20786kPa(100〜3000psig)、好ましくは1480〜13891kPa(200〜2000psig)の範囲内の圧力で150℃〜400℃、好ましくは200℃〜400℃の範囲内の温度、0.1〜10LHSV、好ましくは0.5〜5LHSVの空間速度、および89〜1780m/m(500〜10000scf/B)、好ましくは178〜890m/m(1000〜5000scf/B)の水素処理ガス比が関与する。
【0044】
水素処理は典型的には、原料中の窒素および硫黄汚染物質をそれぞれアンモニアおよび硫化水素に転化することによって削減する。これらの気体汚染物質は、ストリッパー、ノックアウトドラムなどの従来の技術を用いて水素処理済み原料から分離されてよい。
【0045】
水素処理反応段は、各々水素化触媒の1つ以上の触媒床を含み得る1つ以上の固定床反応装置または反応ゾーンで構成され得る。その他のタイプの触媒床も使用可能であるが、固定床が好ましい。このようなその他のタイプの触媒床としては、流動床、沸とう床、スラリー床および移動床が含まれる。脱硫反応は一般に発熱性であることから、反応装置または反応ゾーン間または同一の反応装置または反応ゾーン内の触媒床間の段間冷却または加熱を利用することができる。水素処理中に発生した熱の一部を回収することができる。この熱回収というオプションが利用できない場合、従来の冷却を、冷却ユーティリティ例えば冷却水または空気を通してかまたは水素急冷ストリームを使用することで実施してもよい。この要領で、最適な反応温度をより容易に維持することができる。同様に、多数の触媒床の場合にはその他の触媒を使用することも同様に本発明の範囲内に入る。このようなその他の触媒は、従来の水素化触媒を含んでいてよい。
【0046】
以下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、それを限定するものではない。
【実施例】
【0047】
実施例1
この実施例は、触媒の調製に向けられている。水素処理プロセスにおいて、最初に担持水素処理触媒が使用される。充分な長さの時間の後、担持水素処理触媒は少なくとも部分的に使用済みの状態となる可能性がある。この少なくとも部分的に使用済みの触媒をストリッピングして、触媒上に存在するあらゆる原料および/または生成物を除去することができる。次にストリッピングされた触媒を再生成させることができる。
【0048】
上述の再生成触媒に溶液を含浸させるために、以下の手順を使用することができる。クエン酸対Coのモル比を1.2として炭酸コバルトをクエン酸と混合することができ、炭酸コバルトが溶解するまで、50℃で水性混合物を加熱することができる。その後2:1のMo/Co比で、結果として得た溶液に対してヘプタモリブデン酸アンモニウムを加え、ヘプタモリブデン酸アンモニウムが溶解するまで更なる加熱なく撹拌することができる。結果として得た溶液に対して付加的なクエン酸を加え、クエン酸対コバルトのモル比を1.8に調整することができる。クエン酸が3−COOH官能基を含むという点に留意されたい。従って、−COOH官能基対コバルトのモルは比5.4であり、−COOH官能基対(Mo+Co)のモル比は1.8である。次に、エチレンジアミン対Coの比が1.8となるまで撹拌しながら溶液にゆっくりとエチレンジアミンを加えて、含浸溶液を形成させることができる。
【0049】
記述された再生成触媒に、支持体1グラムあたり1.5mlの割合で含浸溶液を含浸させることができる。含浸済み支持体を窒素流下において110℃で4時間および375℃で4時間加熱することができる。任意には、冷却した支持体に更に、支持体1グラムあたり1.34mlの割合で同じ含浸溶液を第2サイクル内で含浸させることができる。任意の更なる含浸が用いられる場合、支持体を再び窒素流下において110℃で4時間、375℃で4時間加熱することができる。
【0050】
実施例2
この実施例は、再生のために用いられる方法に類似の含浸方法を用いた新鮮な触媒の調製に向けられている。新鮮な触媒を、以下の特性をもつ市販のアルミナ支持体を用いて調製した:
(A)1.2〜2.4mmの範囲内の粒径、BETSA:150m/g、Hg細孔容積:1.16cc/g、Hgによる中央孔径:299Å、密度:0.45g/cc、水細孔容積:1.14cc/g、支持体1ccあたりの水細孔容積:0.51cc/ccを有する大細孔アルミナビーズ。
(B)2.4〜4.8mmの範囲内の粒径、BETSA:244m/g、Hg細孔容積:1.23cc/g、Hgによる中央孔径:162Å、密度:0.43g/cc、水細孔容積:1.22cc/g、支持体1ccあたりの水細孔容積:0.52cc/ccを有する大細孔アルミナビーズ。
【0051】
上述のアルミナ支持体に溶液を含浸させるために、以下の手順を使用した。クエン酸対Coのモル比を1.2として炭酸コバルトをクエン酸と混合し、炭酸コバルトが溶解するまで、50℃で水性混合物を加熱した。2:1のMo/Co比で、結果として得た溶液に対してヘプタモリブデン酸アンモニウムを加え、ヘプタモリブデン酸アンモニウムが溶解するまで更なる加熱なく撹拌した。結果として得た溶液に対して付加的なクエン酸を加え、クエン酸対コバルトのモル比を1.8に調整した。クエン酸が3−COOH官能基を含むという点に留意されたい。従って、−COOH官能基対コバルトのモル比は5.4であり、−COOH官能基対(Mo+Co)のモル比は1.8であった。次に、エチレンジアミン対Coの比が1.8となるまで撹拌しながら溶液にゆっくりとエチレンジアミンを加えて、含浸溶液を形成させた。
【0052】
アルミナ支持体(B)に、支持体1グラムあたり1.5mlの比率で含浸溶液を含浸させた。含浸済み支持体を窒素流下において110℃で4時間および375℃で4時間加熱した。冷却した支持体に更に、支持体1グラムあたり1.34mlの比率で同じ含浸溶液を第2サイクル内で含浸させた。任意の更なる含浸が用いられる場合、支持体をその後窒素流下において110℃で4時間、375℃で4時間で加熱した。
【0053】
上述の新鮮な触媒は、実施例1の方法に従って水素処理および後続する再生において使用するのに適すると考えられる。このような再生プロセスにおいては、使用済みまたは部分的に使用済みの触媒はストリッピングされ再生成されると考えられる。再生成触媒は次に上述の方法に従って含浸されると考えられる。再生成触媒上の金属の存在に起因して、好ましくは1回の含浸工程しか使用できないと考えられる、という点に留意されたい。
【0054】
実施例3
この実施例は、触媒試験プロトコルに向けられる。Co、Mo、クエン酸(クエン酸:Coモル比1.8)およびエチレングリコール(エチレングリコール:クエン酸モル比1.8)を含有する溶液を用いた実施例2の支持体(A)への2重含浸により、新鮮な触媒を調製した。含浸済み支持体は、窒素下にて375℃で焼成した後1mlの支持体あたり442mgのMoOおよび115.1mgのCoOを含んでいた。焼成済み支持体を現場で500psi(3448kPa)および700Scf/B(125m/m)の処理ガス比で硫化し、1.0ccの触媒が充填された反応装置内でHDS活性について試験した。比較のため、同一条件下で平行な反応装置内で市販のKetjenfine(登録商標)757(KF−757)を評価した。現場内硫化工程の後、触媒を625°Fの温度、合計圧力500psig、そして700SCF/Bの水素ガス処理速度で一次留出物供給原料(表2中の供給原料#1)に付した。供給原料上を144時間通過させた後、触媒のHDS活性(容積)は、1.5次反応速度論に基づいて、同一条件で通過させた市販の触媒(KF−757)の225%であった。
【0055】
被験供給原料を次に別の留出物供給原料(表1中の供給原料#2)に変更し、試験条件をこれらの低圧力条件、即ち合計圧力220psig、625°F、および700SCF/Bの水素ガス処理速度に変更した。触媒活性は、同じ条件下でのKF−757に比べて135%であった。
【0056】
【表2】

【0057】
実施例4
Co、Mo、クエン酸(クエン酸:Coモル比1.8)およびエチレンジアミン(エチレンジアミン:Coモル比1.8)を含有する溶液を用いた実施例2の支持体(B)への2重含浸により、新鮮な触媒を調製した。含浸済み支持体は、窒素下にて375℃で焼成した後1mlの支持体あたり475mgのMoOおよび123.6mgのCoOを含んでいた。焼成済み支持体を現場で500psi(3448kPa)および700Scf/B(125m/m)の処理ガス比で硫化し、1.0ccの触媒が充填された反応装置内でHDS活性について試験した。比較のため、同一条件下で平行な反応装置内で市販のKF−757を評価した。現場内硫化工程の後、触媒を625°Fの温度、合計圧力500psig、そして700SCF/Bの水素ガス処理速度で一次留出物供給原料(表1中の供給原料#1)に付した。供給原料上を144時間通過させた後、触媒のHDS活性は、同一条件で通過させたKF−757の300%であった。
【0058】
上述の含浸、焼成および硫化工程を使用して、再生済み触媒を形成することもできる。このような再生プロセスにおいては、使用済みまたは部分的に使用済みの触媒をストリッピングし再生成することができる。再生成触媒を次に以上の方法に従って含浸させることができる。再生成触媒上の金属の存在に起因して、好ましくは1回の含浸工程しか使用できないと考えられる、という点に留意されたい。
【0059】
実施例5
新鮮な触媒を実施例2の手順を用いて調製したが、ここでアルミナ支持体(SA6578、BET表面積=150m/g)に、Co、Mo、ピルビン酸(ピルビン酸:Coのモル比3.55)を含む溶液を2重含浸させた。窒素下にて375℃で支持体を焼成した。金属酸化物の観点から見たその金属含有量は、44重量%であった。炭素含有量は、14.2重量%であった。焼成済み支持体を現場で500psi(3448kPa)および700Scf/B(125m/m)の処理ガス比で硫化し、1.0ccの触媒が充填された反応装置内でHDS活性について試験した。比較のため、同一条件下で平行な反応装置内で市販のKF−757を評価した。現場内硫化工程の後、触媒を640°Fの温度、合計圧力500psig、そして700SCF/Bの水素ガス処理速度で一次留出物供給原料(表1中の供給原料#1)に付した。供給原料上を336時間通過させた後、触媒のHDS活性は、1.5次反応速度論に基づいて、同一条件で通過させたKF−757の160%であった。
【0060】
上述の含浸、焼成および硫化工程を使用して、再生済み触媒を形成することもできる。このような再生プロセスにおいては、使用済みまたは部分的に使用済みの触媒をストリッピングし再生成することができる。再生成触媒を次に以上の方法に従って含浸させることができる。再生成触媒上の金属の存在に起因して、好ましくは1回の含浸工程しか使用できないと考えられる、という点に留意されたい。
【0061】
実施例6
新鮮な触媒を作るためにアルミナ支持体に含浸を行なうためかまたは再生プロセスの一部として再生成触媒の含浸を行なうためのいずれかを目的として、以下の手順を使用することができる。8.66gのピルビン酸を6.88gの酢酸コバルト四水和物と混合させて、均質なスラリーを作った。9.76gのヘプタモリブデン酸アンモニウム(AHM)四水和物を、40℃で10.25gのDI(脱イオン)水中に溶解させた。AHM溶液を、撹拌下で加熱することなくスラリーに添加した。全ての酢酸コバルトが溶解するまで撹拌を続行した。結果として得た溶液(Co/Mo/ピルビン酸)は、以下の濃度を有していた:1.1MのCo;2.2MのMo;ピルビン酸/Coのモル比=3.55。
【0062】
含浸溶液の調製後、溶液を用いて新鮮な触媒を形成することができる。新鮮な触媒を形成するために、1.2gのSC−159アルミナ(90〜300μmにサイズ決定されたもの)に1.62gのCo/Mo/ピルビン酸溶液を含浸させ、以下の炉条件に従って流動するN下で加熱した:即ち1℃/分の割合で20℃から55℃まで;10分間55℃に保持;0.3℃/分の割合で55℃から120℃まで;4時間120℃に保持;1.2℃/分で120℃から330℃まで、4時間330℃に保持。結果として得た材料に同じ溶液1.54gを2回目に含浸させ、1回目の含浸と同じ要領で加熱した。最終的材料を90〜300μmにサイズ変更し、水素化脱硫および水素化脱窒素について試験した。
【0063】
代替的な新鮮な触媒も形成させた。上述の通り2.21gのCo/Mo/ピルビン酸溶液を1.1gのSA−1675(Saint−Gobain NorPro)(90〜300μmにサイズ決定されたもの)に含浸させ、上述の触媒と同じ要領で加熱した。結果として得た材料に1.99gの同じ溶液で2回目の含浸を行い、同じ要領で再び加熱した。最終的材料を90〜300μmにサイズ変更し、水素化脱硫および水素化脱窒素について試験した。
【0064】
焼成済み支持体を現場で500psi(3448kPa)および700Scf/B(125m/m)の処理ガス比で硫化し、1.0ccの触媒が充填された反応装置内でHDS活性について試験した。比較のため、同一条件下で平行な反応装置内で市販のKF−757を評価した。現場内硫化工程の後、触媒を625°Fの温度、合計圧力500psig、そして700SCF/Bの水素ガス処理速度で一次留出物供給原料(表1中の供給原料#1)に付した。供給原料上を160時間通過させた後、温度を640°Fに調整した。約380時間供給原料上を通過させた後、第1の触媒は、1.5次反応速度論に基づいて同一条件で通過させたKF−757の150%のHDS活性を示し、一方第2の触媒はKF−757の225%のHDS活性を示した。
【0065】
上述の含浸、焼成および硫化工程を使用して、再生済み触媒を形成することもできる。このような再生プロセスにおいては、使用済みまたは部分的に使用済みの触媒をストリッピングし再生成することができる。再生成触媒を次に以上の方法に従って含浸させることができる。再生成触媒上の金属の存在に起因して、好ましくは1回の含浸工程しか使用できないと考えられる、という点に留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生された担持水素化触媒を用いて炭化水素原料を水素化する方法であって、炭化水素原料を、再生された担持水素化触媒に有効な水素化条件下で曝露する工程を含み、
前記再生された担持水素化触媒が、
a)少なくとも1種の第VIB族金属、少なくとも1種の第VIII族金属および第1の有機錯化剤を含む溶液、スラリーまたはその他の混合物を調製する工程;
b)支持体、少なくとも1種の第VIB族金属および少なくとも1種の第VIII族金属を含む担持水素処理触媒をストリッピングする工程;
c)酸素含有ガスの存在下、500℃以下の温度でストリッピングした前記触媒を再生成する工程;
d)前記溶液、スラリーまたはその他の混合物を、再生成した前記触媒に含浸させる工程;
e)含浸済みの前記再生成触媒を200〜450℃の温度で乾燥させて、部分焼成された含浸済み再生成触媒を生成する工程であって、
前記部分焼成された含浸済み再生成触媒は、その重量に基づいて少なくとも5重量%の炭素含有量を有し、部分焼成された含浸済み支持体上に有機溶媒が存在していない工程;および
f)前記部分焼成された含浸済み再生成触媒を硫化する工程
を含むプロセスによって調製されることを特徴とする方法。
【請求項2】
再生された担持水素化触媒を用いて炭化水素原料を水素化する方法であって、炭化水素原料を、再生された担持水素化触媒に有効な水素化条件下で曝露する工程を含み、
前記再生された担持水素化触媒が、
a)少なくとも1種の第VIB族金属、少なくとも1種の第VIII族金属および第1の有機錯化剤を含む溶液、スラリーまたはその他の混合物を調製する工程;
を含むプロセスによって調製されることを特徴とする方法。
b)支持体、少なくとも1種の第VIB族金属および少なくとも1種の第VIII族金属を含む再生成触媒に、前記溶液、スラリーまたはその他の混合物を含浸させる工程;
c)含浸済みの前記再生成触媒を200〜450℃の温度で乾燥させて、部分焼成された含浸済み再生成触媒を生成する工程であって、
前記部分焼成された含浸済み再生成触媒は、その重量に基づいて少なくとも5重量%の炭素含有量を有し、部分焼成された含浸済み支持体上に有機溶媒が存在していない工程;および
d)炭素含有量の少なくとも一部を含む前記部分焼成された含浸済み再生成触媒を硫化する工程
を含むプロセスによって調製されることを特徴とする方法。
【請求項3】
前記担持水素処理触媒が、
i)少なくとも1種の第VIB族金属、少なくとも1種の第VIII族金属および第2の有機錯化剤を含む溶液、スラリーまたはその他の混合物を調製する工程;
ii)前記溶液、スラリーまたは混合物を、支持体に含浸させる工程;
iii)含浸済みの前記支持体を200〜450℃の温度で乾燥させて、部分焼成された含浸済み支持体を生成する工程であって、
前記部分焼成された含浸済み支持体は、その重量に基づいて少なくとも5重量%の炭素含有量を有し、前記部分焼成された含浸済み支持体上に有機溶媒が存在していない工程;および
iv)炭素含有量の少なくとも一部を含む前記部分焼成された含浸済み支持体を硫化する工程
によって形成され、かつ/または
前記再生成触媒が、上記工程により形成された新鮮な触媒に対応する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第VIB族金属および第VIII族金属の合計含有量が少なくとも35重量%の含浸済み再生成支持体が生成されるまで、乾燥させた含浸済みの前記触媒を、前記工程(c)および(d)の少なくとも一回の更なるサイクルに付すことを特徴とする請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の有機錯化剤が、
−C(=O)OH官能基、および、
カルボン酸−C(=O)OH、ヒドロキサム酸−C(=O)N(H)OH、ヒドロキシ−OH、ケト>C=O、アミノ−NH、アミド−C(=O)−NH、イミノ>C=NH、エポキシ−COCおよびチオ−SHから選択される少なくとも1種の付加的な官能基
を含む有機酸であり、
好ましくは、前記第1の有機錯化剤がグリオキシル酸、ピルビン酸またはクエン酸である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記含浸済みの再生成触媒を、200〜450℃、例えば300〜400℃の温度で部分焼成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記担持水素処理触媒をストリッピングする前記工程が、350℃以下の温度で、流動気体流、好ましくは不活性ガス流で前記担持水素処理触媒をストリッピングする工程を含むことを特徴とする請求項1および3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記担持水素処理触媒を、溶剤ストリッピングシーケンスを用いてストリッピングすることを特徴とする請求項1および3〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記担持水素処理触媒が、20重量%以下のコークスを有する使用済または部分的に使用済の触媒であることを特徴とする請求項1および3〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
第VIB族金属および第VIII族金属の少なくとも1種が金属塩として提供され、前記金属塩のアニオンが溶剤の共役塩基であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記溶液、スラリーまたは混合物が、少なくとも1種の追加の遷移金属を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の追加の遷移金属が、Co、Mo、Ni、W、Zn、Fe、CuまたはMnを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液、スラリーまたは混合物を前記再生成触媒に含浸させる工程が、支持体体積あたりの支持体の細孔容積の0.9〜1.05倍である支持体体積あたりの体積の前記溶液を、前記再生成触媒に含浸させる工程からなることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記溶液、スラリーまたは混合物を前記再生成触媒に含浸させる工程が、触媒体積あたりの支持体の細孔容積の0.9〜1.05倍である支持体体積あたりの体積の前記溶液を、前記再生成触媒に含浸させる工程からなることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2011−516686(P2011−516686A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504012(P2011−504012)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/002265
【国際公開番号】WO2009/126319
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】