説明

再生セルロース繊維

本発明は、繊維が、乾燥状態で、崩壊した中空の横断面構造を有し、繊維が、湿潤状態で、空洞を持った横断面構造を有し、繊維が、分割壁の結果として長手方向にセグメントを有し、繊維が、吸収性ポリマー、特にはカルボキシメチルセルロースを組み込んでいる特性の組み合わせによって特徴付けられる再生セルロース繊維に関する。繊維は、ビスコース紡糸組成が、炭酸塩および吸収性ポリマー、特にカルボキシメチルセルロースとともに混合される工程によって得られる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ビスコース処理により得られる再生セルロース繊維に関する。
【0002】
特に、本発明は、崩壊した中空の横断面構造を有する再生セルロース繊維に関する。
【0003】
繊維は例えばタンポンや一般の吸収コアなどの衛生用途で望ましいものであり、特に、生理用品の潜在的な高い吸収能力をこのように可能にするために高い保水能力を有している。
【0004】
従来の超吸収材料は、通常、水と接触するとすぐにゲルを生成して吸収コアの完全性を崩してしまい、さらに、吸収コアを通じたさらなる液体搬送を遮断してしまうという欠点がある。ここで、吸収コアの完全性は、これらの応用で重要である。これは、この材料によって、吸収材料の排出が防がれ、それによって例えば創傷の汚染を遮断するからである。
【0005】
創傷の包帯には、吸収材料が、創傷を接合させないようにして、痛み無く創傷から包帯をはがせるようにできることが望ましい。
【0006】
この分野の応用で繊維材料にさらに求められる点は、フリース製品の従来の製造技術で傷の無いものを作れる可能性である。
【0007】
高い割合のカルボキシメチルセルロース(CMC)を有するビスコース繊維が知られている。これは、ビスコースドープ(viscose dope)中へカルボキシメチルセルロースを紡糸(spinning in)することによって得られる混合繊維である。このような繊維は、市販されている(米国特許4,199,367A、4,289,824A)。
【0008】
ビスコースドープ中へ炭酸ナトリウムを紡糸することによって中空の横断面構造(「中空の繊維」)を有するビスコース繊維を製造することが1920年代からすでに知られている。このタイプの繊維は、以前は様々な製造者によって市販的に製造されていた。高い保水能力を持った「超膨張」タイプの中空の繊維が、特に衛生応用のために製造されている(英国特許1,333,047A、1,393,778A)。
【0009】
中空のビスコース繊維の発展と歴史の広範囲の調査には、C.R. Woodings, A. J. Bartholomewの「The manufacture properties and uses of inflated viscose rayon fibres"; TAPPI Nonwovens Symposium; 1985; pp. 155-165.」がある。
【0010】
ビスコース−CMC混合繊維は、湿潤状態での高い吸収性と繊維同士で強く付着する性質(繊維表面のゲル効果)ゆえに、その製造過程で、セルロースに基づいて約15%CMCの一体化からの従来のビスコース処理における繊維が、次の処理での槽で沈みがちで、従来のビスコース繊維のように浮かないようになりがちであるという欠点を有する。このことは、一般的な商業的処理におけるこれらの繊維の製造を実質的に妨害する。
【0011】
これらの繊維の望ましい効果は、湿潤状態での、ゲルのような表面の一貫性である。しかしながら、この効果はただちに、従来のビスコース繊維のように、これらの繊維が、極度に溝の付いた表面構造を有するという事実によって、部分的に引き下げられる。
【0012】
50%より多いCMCの紡糸中に処理ステップにおいて大きな問題が発生するので、このような繊維の保水能力の最大限の増加は制限される。
【0013】
中空のビスコース繊維でも、保水能力の増加には制限がある。繊維のさらに強い膨張により、あるレベルからは、より高い保水能力が得られず、低い保水能力を有する平坦な横断面の帯状の繊維が幾分生成され、安定な繊維方法におけるその後処理では、その大きく滑らかな表面とそれに関する高い繊維間結合能力とにより幾分問題を有している。
【0014】
別のカルボキシメチル化された繊維が知られている。すなわち、後に続くビスコース繊維のカルボキシメチル化により製造される繊維である(Convatec社の繊維「Aquacell」、米国特許6,548,730B1、豪州特許757461B、国際特許公開WO 00/01425A1、欧州特許公開1 091 770 A1)。この繊維は、大量の水を吸収できるが、水と接触するとゲルを生成し、同時に完全に繊維構造を失い、すべての可能性のある応用にとって望ましくない。
【0015】
米国特許3,318,990は、平坦なビスコース繊維の製造方法を開示している。そこでは、、水中でふくらむ高分子物質、例えばCMCが、一方の側ではビスコースに混合され、他方の側では炭酸ナトリウムに混合される。
【0016】
得られる繊維は、完全に平坦であると記載されている。崩壊した横断面構造は、湿潤状態においてもその形態を保持している。米国特許3,318,990に沿えば、繊維は、紙の製造に適しているとされる。
【0017】
本発明は、潜在的な高い保水能力と、加圧下での潜在的な高い吸収と、さらなる表面ゲル効果とを有するビスコース繊維を提供するという目的を有する。繊維は、従来のビスコース繊維の製造方法で製造され、従来のフリースの製造方法(例えば、カーディング、穿刺による凝固、水の絡み、熱凝固、カランドレーション)によって処理される。
【0018】
この課題は、請求項1に記載の再生セルロース繊維によって解決される。請求項11に記載の処理が本発明に係るセルロース繊維の製造方法を提供する。好ましい実施形態は従属請求項に記載されている。
【0019】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明に係る乾燥したセルロース繊維の長手方向の断面を示す。
【0020】
図2は、本発明に係る乾燥したセルロース繊維の長手方向の大きく拡大した断面を示す。
【0021】
図3は、本発明に係る乾燥したセルロース繊維の横断面を示す。
【0022】
図4は、水と接触したときの、本発明に係るセルロース繊維の管状の横断面を示す。
【0023】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、崩壊した中空の横断面構造を有する再生セルロース繊維を提供する。このセルロース繊維は、以下の特徴の組み合わせによって特徴付けられる:
繊維が、乾燥状態で、崩壊(collapsed)した中空の(hollow)横断面構造を有し、
繊維が、湿潤状態で、空洞(cavities)を持った横断面構造を有し、
繊維が、分割壁によって長手方向にセグメント化され、
繊維中へ吸収性ポリマーが組み込まれている。
【0024】
吸収性ポリマーは、好ましくはカルボキシメチルセルロース(CMC)である。他の適切な吸収性ポリマーは、ビスコース処理と両立するポリマーのグループから選択できる。例えば、ビスコースカーバメイト、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、アクリル酸のホモまたはコポリマー(例えば米国特許4,399,255)である。
【0025】
本発明によれば、まさに初めて、好ましい実施形態で、再度湿潤させると再び空洞を有する管状構造をとる中空のビスコース繊維と、CMCとのビスコース混合繊維が提供される。
【0026】
当業者は、崩壊した中空の横断面構造を有する再生セルロース繊維がビスコース繊維であることを理解するであろう。この横断面は、非常に強く膨張するので、横断面構造自体が崩壊する。このような繊維の(炭酸ナトリウムの混合による)製造は、英国特許1,333,047A、英国特許1,393,778Aに記載されている。
【0027】
本発明による繊維は、乾燥状態で、好ましくは、不規則な多円弧の横断面や、不規則な溝付き横断面を有する。このような繊維はまた、(超膨張としての)「SI」繊維と表される。米国特許3,318,990Aに記載の繊維と比較して、横断面は、繊維の湿潤によって再び開き、管状の形態を取り戻し、空洞が形成される。
【0028】
本発明による繊維は、米国特許3,318,990Aに記載の繊維とは、特に、分割壁の結果として長手方向にセグメンテーションが存在する点で異なる。
【0029】
それゆえ、分割壁間距離は、繊維長さにわたる平均の繊維幅の0.3倍ないし3倍、好ましくは0.5倍ないし2倍である。これらの分割壁の存在は、部分的には、繊維の湿潤時に、空洞を有する管状構造を再形成するという事実の原因となっている。
【0030】
管状構造は、おそらく、再湿潤時でも平坦なままである平坦米国特許3,318,990の繊維と比べて優秀な吸収性を有する本発明の繊維の原因である。
【0031】
繊維の中へ吸収性ポリマー、特にCMCを組み込というやり方によって、当業者は、吸収性ポリマー、例えばCMCが、(繊維の再生時に)基本的なセルロースのマトリクスで円筒形されるということを理解する。これは、すでに組み立てられた繊維上へCMCを適用させるのとは対照的に、特に、ビスコースドープへCMCを紡糸することによって可能である。
【0032】
本発明に係るセルロース繊維は高い保水能力を有するが、繊維特性は湿潤状態において同じままである。さらに、本発明に係る繊維は、従来のビスコース−CMC混合繊維と比べて、良好に製造され、特に、従来のビスコース処理で良好に処理される。
【0033】
本発明に係る繊維中の吸収性ポリマー、特にCMCの割合は、基本的なセルロースに基づいて、5重量%ないし50重量%、好ましくは15重量%ないし40重量%、特に好ましくは20重量%ないし30重量%である。
【0034】
本発明に係るセルロース繊維は、好ましくは、繊維が、安定な繊維の形態で利用可能であり、すべての一般的な力価領域で製造可能である。好ましくは、繊維力価は、0.5dtexないし8dtex、好ましくは1.3dtexないし6dtexである。
【0035】
本発明に係る繊維の繊維長さは、2mmないし80mmとすることができ、特に適用分野に依存する。繊維長さは、湿潤させて載置する処理には、特に、2ないし20mmが適切であり、カーディング処理には、20ないし80mmが適切である。
【0036】
本発明に係る繊維の頑強さ(tenacity)は、典型的には10cN/texであり、引き裂き時の延び(tear elongation)は15%を超える。
【0037】
本発明に係るセルロース繊維は、好ましくは、DIN53814に沿った測定で、少なくとも300%の保水能力を有する。
【0038】
例えば、35重量%のCMC割合を有する本発明に係る繊維で、最高400%WRCまでの保水能力が計測された。
【0039】
「EDANA / INDA Standard Test Methods for the Nonwovens and Related Industries ERT 350.0 or WSP 350.1」に沿った各測定において、質量2.72g、長さ44mm、径13mmの本発明に係る繊維から得られる円筒形タンポンは、好ましくは、少なくとも5.2g/gのSyngina値を有する。
【0040】
このように、繊維は、現行の商業的に最も重要な吸収ビスコース繊維である、商標「Galaxy」(欧州特許公開0 301 874A1)の名前で販売されている、規則的な3円弧横断面を有するビスコース繊維よりも高いSyngina値を有する。
【0041】
本発明に係る再生セルロース繊維の製造においては、
ビスコースドープを供給するステップと、
ビスコースドープに、ビスコースと両立する炭酸塩を混合するステップと、
ビスコースドープに、吸収性ポリマーを混合するステップと、
ビスコースドープを紡糸槽で紡糸することによって繊維を形成するステップとを有する処理が用いられ、
紡糸前のビスコースドープの熟成度が15°ホッテンロート(Hottenroth)より少なく、好ましくは10°ホッテンロートないし14°ホッテンロートであり、
紡糸槽中のHSOの含有量が8%ないし10%であり、
紡糸槽中のZnSOの含有量が0.3%ないし0.5%であり、
紡糸槽中のNaSOの含有量が25%ないし30%である。
【0042】
ここで、本発明に係る方法は、中空の横断面を生成するための、炭酸塩、特に炭酸ナトリウムを紡糸する公知の処理を、吸収性ポリマーを紡糸する処理と組み合わせる。
【0043】
米国特許3,318,990に記載の方法と比べて、本発明に係る処理では、(ホッテンロートで表したときに)より低い熟成度のビスコースがされ、紡糸槽は、より小さい割合のHSOおよびZnSOを有する。これらの処理の違いによって、特に、横断面構造の点および他の特性の点でも、本発明に係る繊維と米国特許3,318,990に記載の繊維との上述の違いが生まれると思われる。
【0044】
吸収性ポリマーは、好ましくはカルボキシメチルセルロースである。以下の実施形態は、この好ましい実施形態に関する。しかしながら、これらは、必要な変更を加えて、ビスコース処理と両立する他の吸収性ポリマーにも適用可能である。
【0045】
炭酸塩として、任意の炭酸塩が適する。特に、ビスコース処理の条件と両立する、アルカリ金属の炭酸塩が適する。炭酸ナトリウムが特に好ましい。他の適した炭酸塩は、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、また、酸の影響下で二酸化炭素を放出するすべての一般の炭酸塩も同様である。
【0046】
例えば紡糸槽の適切な条件や、温度や、もちろん炭酸塩の添加量の選択を選択することによって、中空の横断面構造が発達するようなやり方で、繊維(膨張と崩壊)の横断面形態に影響を与えることは、特に上記特許公開文献から当業者には公知である。
【0047】
好ましくは、炭酸塩は、ビスコースドープ中のセルロースに基づいて、((CO2−として計算して)11重量%ないし23重量%の量で混合される。特に、炭酸ナトリウムの場合には、好ましい量は、セルロースに基づいて20重量%ないし40重量%である。
【0048】
さらに好ましくは、吸収性ポリマー、特にカルボキシメチルセルロースは、ビスコースドープ中のセルロースに基づいて、5重量%ないし50重量%、好ましくは15重量%ないし40重量%、特に好ましくは20重量%ないし30重量%の量で混合される。
【0049】
炭酸塩および/またはカルボキシメチルセルロースは、好ましくは、溶液の形態で混合されてもよい。
【0050】
特に、カルボキシメチルセルロースは、2重量%ないし9重量%、好ましくは3重量%ないし5重量%のNaOHと、5重量%ないし15重量%、好ましくは8重量%ないし12重量%のカルボキシメチルセルロースとを含有するアルカリ溶液の形態で混合されてもよい。
【0051】
炭酸塩とカルボキシメチルセルロースとは、一緒に、また特に共同の溶液(joint solution)の形態で混合されてもよい。
【0052】
本発明に係るセルロース繊維の製造には、従来のビスコースドープも用いることができる。
【0053】
本発明に係る処理の典型的な実施形態は、以下の測定を含む。
【0054】
従来の方法(セルロース含有量=9ないし10%、NaOH含有量5ないし6%、粘度30ないし50落下ボール秒(falling ball seconds)、熟成度10ないし15°ホッテンロート)に係るビスコースドープに対し、20%のNaCO溶液の形態で、ビスコースドープ中のセルロースに基づいて、25ないし35重量%のNaCO(繊維力価によって変わる)を加える。ビスコースドープ中のセルロースに基づいて、5重量%ないし45重量%、好ましくは20重量%ないし30重量%のドープに、アルカリ溶液の形態のカルボキシメチルセルロース(2ないし9重量%のNaOH、好ましくは3ないし5重量%)をさらに加える。溶液濃度は、5重量%ないし15重量%、好ましくは8ないし12重量%である。カルボキシメチルセルロースは、代用度(degree of substitution)DSが0.6ないし1.2で、好ましくは0.65ないし0.85で、粘度(2%溶液、25℃)が30ないし800mPas、好ましくは50ないし100mPasの、商業的に利用可能な製品である。
【0055】
添加する溶液(炭酸塩およびCMC)は、好ましくは、すでに紡糸可能なビスコースドープに、特に紡糸の直前に注入される。その後、好ましくはダイナミックミキサーを介して、ビスコースが均一化される。
【0056】
ビスコースは、紡糸され、織物繊維に共通なパラメータで後処理に付される。
【0057】
〔実施例〕
以下に示す再生セルロース繊維の製造では、従来のビスコースドープが用いられる。
【0058】
実験例A:添加剤無しでビスコースドープの紡糸
実験例B:セルロースに基づいて30%のNaCOを添加し、ビスコースドープの紡糸
実験例C(本発明):ビスコースドープ中に存在するセルロースに基づいて、それぞれ、30%のNaCOと20%のCMC(DS=0.81、2%粘度=53mPas、タイプBlanose 7M1F、製造者:Aqualon France社(Hercules))を添加し、ビスコースドープの紡糸。
【0059】
ドープは、同一の紡糸パラメータを用いて、4.4dtexの力価の繊維中へ紡糸された。
【0060】
実験例D:添加剤無しでビスコースドープの紡糸
実験例E:セルロースに基づいて20%のCMC(実験例Cとして記載)を添加し、ビスコースドープの紡糸
実験例F:セルロースに基づいて30%のCMC(実験例Cとして記載)を添加し、ビスコースドープの紡糸。
【0061】
ドープは、同一の紡糸パラメータを用いて、3dtexの力価の繊維中へ紡糸された。
【0062】
〔製造された繊維の形態学〕
顕微鏡で見ると、繊維BおよびCは、SIタイプ(超膨張、セグメント化)の中空の繊維である。繊維A、D、E、Fは、ビスコースドープに典型的な、溝があって丸い横断面を持った繊維である。
【0063】
本発明に係る乾燥された繊維Cの長手方向の断面と横断面とを、図1,図2,図3に示す。
【0064】
図1および図2では、長手方向のセグメンテーションが明瞭に見える。これは本発明に係る繊維に典型的である。セグメンテーションは、分割壁の結果であり、拡大した図2で認められるように、硬い膜状の副分割を生む。
【0065】
図3では、崩壊中空の横断面構造が見られる。これは、「SI」繊維に典型的であり、複数の面または不規則な溝付き横断面の形成を伴っている。
【0066】
図4は、乾燥した繊維を湿潤させたときの本発明に係る繊維の管状横断面を示す。
【0067】
〔紡糸性能〕
すべての繊維は、従来のパラメータで紡糸されてもよい。繊維EおよびFは、繊維の後処理の槽に沈殿する傾向があるが、この効果は、本発明に係る繊維Cでは見られない。
【0068】
〔保水能力〕
すべての繊維について、DIN53814に沿って保水能力を測定した。
【0069】
繊維A:80%
繊維B:220%
繊維C:335%
繊維D:93%
繊維E:149%
繊維F:193%
であった。
【0070】
結果が示すように、絶対的な条件での保水能力は、セルロースに基づいて20%のCMCを紡糸することによっておよそ50%、また、30%のCMCを紡糸することによって100%、増加している(繊維D→E→Fの比較)。
【0071】
セルロースに基づいて30%のNaCOを紡糸することによって、保水能力は、140%増加している(濃度の比較、繊維A→B)。
【0072】
しかしながら、(本発明に係る)セルロースに基づいて20%のCMCと30%のNaCOとを紡糸することによって、保水能力は、255%増加している。これは、この2つの添加剤の効果が、相加的ではなく相乗的に増加したことを示している。
【0073】
CMC単独またはNaCO単独の添加の効果は、合計、それぞれ、
A→B=+140%
D→E=+56%
になる。ここで、繊維Cの予想値は、80+140+56=276%である。
【0074】
合計335%の繊維の測定された保水能力は1.2倍高いので、2つの添加成分は、ここで、驚くべきことに、相乗的に作用している。
【0075】
〔ゲル効果〕
表面ゲル効果(ぬるぬるして石鹸のような手触り)は、比較サンプルE(CMCをいくらか含有している)よりも、本発明に係る繊維Cのほうが、どういうわけか強い。このゲル効果は、湿潤状態でのみ展開された。
【0076】
〔繊維値〕
本発明に係る繊維Cは、4.4dtexの力価のときに、22.9%の伸張で、13.1cN/texの頑強さ(tenacity)を得る。これは、フリース処理の分野での使用に容認できる。
【0077】
〔圧力下での吸収〕
繊維A,B,Cから、タンポンのプラグが押圧され、それぞれ、合計2.72gであり、WSP351.0に沿ってSynginaの測定を行った。さらなる参考として、市販の3円弧ビスコース繊維(登録商標「Galaxy」)100%からなる同一に製造したプラグを製造した。
【0078】
結果は、
繊維A: 4.56g/g
繊維B: 4.75g/g
繊維C: 5.73g/g
100%Galaxy: 5.05g/g
であった。
【0079】
この結果は、本発明に係る繊維では、市販の3円弧繊維と比べてさえ、著しく高いSyngina吸収が得られていることを示している。
【0080】
ここで、本発明に係る再生セルロース繊維は、特に、吸収製品、生理用品、特にタンポン、失禁用衛生用品、生理ナプキンおよびパンティーライナー、食料品の包装、特に肉製品の包装、紙、特に濾紙、(例えば、湿度管理のための衣類織物と他の繊維との組み合わせや、多層構造としての)衣類、創傷包帯における使用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る乾燥したセルロース繊維の長手方向の断面を示す図である。
【図2】本発明に係る乾燥したセルロース繊維の長手方向の大きく拡大した断面を示す図である。
【図3】本発明に係る乾燥したセルロース繊維の横断面を示す図である。
【図4】水と接触したときの、本発明に係るセルロース繊維の管状の横断面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維が、乾燥状態で、崩壊した中空の横断面構造を有し、
繊維が、湿潤状態で、空洞を持った横断面構造を有し、
繊維が、分割壁によって長手方向にセグメント化され、
繊維中へ吸収性ポリマーが組み込まれていることを特徴とする再生セルロース繊維。
【請求項2】
乾燥状態での繊維の横断面が、多円弧および/または不規則な溝付きであることを特徴とする請求項1に記載のセルロース繊維。
【請求項3】
分割壁間の距離が、繊維長さにわたる平均の繊維幅の0.3倍ないし3倍、好ましくは0.5倍ないし2倍であることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロース繊維。
【請求項4】
繊維中の吸収性ポリマーの割合は、基本的なセルロースに基づいて、5重量%ないし50重量%、好ましくは15重量%ないし40重量%、特に好ましくは20重量%ないし30重量%であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセルロース繊維。
【請求項5】
上記吸収性ポリマーがカルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のセルロース繊維。
【請求項6】
繊維が、安定な繊維の形態で存在することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のセルロース繊維。
【請求項7】
繊維の力価が0.5dtexないし8dtex、好ましくは1.3dtexないし6dtexであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のセルロース繊維。
【請求項8】
繊維長さが2mmないし80mmであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のセルロース繊維。
【請求項9】
保水能力が少なくとも300%であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のセルロース繊維。
【請求項10】
質量2.72g、長さ44mm、径13mmの繊維から得られる円筒形タンポンが、少なくとも5.2g/gのSyngina値を有することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のセルロース繊維。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の再生セルロース繊維の製造方法であって、
ビスコースドープを供給するステップと、
ビスコースドープに、ビスコースと両立する炭酸塩を混合するステップと、
ビスコースドープに、吸収性ポリマーを混合するステップと、
ビスコースドープを紡糸槽で紡糸することによって繊維を形成するステップとを有し、
紡糸前のビスコースドープの熟成度が15°ホッテンロートより少なく、好ましくは10°ホッテンロートないし14°ホッテンロートであり、
紡糸槽中のHSOの含有量が8%ないし10%であり、
紡糸槽中のZnSOの含有量が0.3%ないし0.5%であり、
紡糸槽中のNaSOの含有量が25%ないし30%であることを特徴とする再生セルロース繊維の製造方法。
【請求項12】
炭酸塩は、ビスコースドープ中のセルロースに基づいて、((CO2−として計算して)11重量%ないし23重量%の量で混合されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
吸収性ポリマーは、ビスコースドープ中のセルロースに基づいて、5重量%ないし50重量%、好ましくは15重量%ないし40重量%、特に好ましくは20重量%ないし30重量%の量で混合されることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
炭酸塩および/または吸収性ポリマーは、溶液の形態で混合されることを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
吸収性ポリマーは、カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項11ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
カルボキシメチルセルロースは、
2重量%ないし9重量%、好ましくは3重量%ないし5重量%のNaOHと、5重量%ないし15重量%、好ましくは8重量%ないし12重量%のカルボキシメチルセルロースとを含有するアルカリ溶液の形態で混合されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
炭酸塩とカルボキシメチルセルロースとは、一緒に、また特に共同の溶液の形態で混合されることを特徴とする請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の再生セルロース繊維の、吸収製品、生理用品、特にタンポン、失禁用衛生用品、生理ナプキンおよびパンティーライナー、食料品の包装、特に肉製品の包装、紙、特に濾紙、衣類、創傷包帯における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−501151(P2013−501151A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522074(P2012−522074)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059870
【国際公開番号】WO2011/012424
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(504455609)ケルハイム フィブレス ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】