説明

再生可能資源由来の官能基化ドーパント/導電性ポリアミン材料、混合物及びそれらの製造方法

再生可能資源由来の官能基化ドーパント/導電性ポリアミン材料、混合物及びそれらの製造方法
再生可能資源材料をベースとする導電性ポリマーは、石油をベースとする製品と比較したその入手容易さと低いコストの為に非常に魅力的である。ここで我々はカシューナット油(CNSL)の主成分である、再生可能資源カルダノール由来の導電性ポリアニリンの為の新規ドーパントを開発した。新規ドーパント2-ω-不飽和-4-ヒドロキシ-4'-スルフィン酸アゾベンゼン又は別にカルダノールアゾスルホン酸 (1)として知られているものは、塩基性条件下でスルファニル酸 (4-アミノフェニルスルホン酸)をカルダノールでジアゾ化する反応により合成される。新規カルダノールアゾスルホン酸 (1)は2箇所に長アルキル鎖を有しており、そのことにより多くの適用のための一般的な溶媒においてポリアニリンドープ材料と同様ドーパントの溶解性が増加する。本発明は本質的に3つの工程を含む;すなわち(a)カルダノールアゾスルホン酸ドーパント1のカルダノールからの合成 (b)ともにポリアニリンエメラルジン塩基をドープしながら1をドーパントとして溶液及び溶解物中で使用し、1の存在下、多様な有機及び水性の組み合わせの中、界面、乳剤及び分散経路でアニリンをin-situで重合する導電性ポリアニリンの合成工程(c)ポリアニリン/ドーパント1/熱可塑性物質混合物の溶液中における調製及び溶解工程及び良好な形態を維持しながら、粒径を制御する工程である。ポリアニリンエメラルジン塩およびその熱可塑性混合物を含むドーパント(1)は光電子産業における多様な適用の為の有望な材料である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は再生可能資源由来の官能基化ドーパント/導電性ポリアニリン材料に関する。本発明はさらにポリアニリン導電性材料、導電性混合物及び導電性フィルム及びバーのような前記官能基化ドーパント由来の複合体の製造方法に関する。
【0002】
(発明の背景技術)
ポリアニリンは環境/化学安定性及び低い製造コストと関連したその独特の電気的電気化学、光学特性により非常に重要な導電性ポリマーである(Handbook of Conducting Polymers, Eds. Skotheim, Terje A.; Elsenbaumer, Ronald L.; Reynolds, John R.; Marcel Dekker Inc., (1998))。ポリアニリンの特性は酸/塩基の単純な プロトン化/脱プロトン化によって可逆的に調製することができ、光電子及び生物学的な適応において潜在的に魅力あるものにする(Shimano, James Y et al. Synth. Met. 2001, 123, 251-62)。ポリアニリンの主な欠点はそのバックボーンの硬さによる加工の難しさである (Kosonen, Harri et al. Macromolecules, 2000, 33, 8671-75 and Stockton, W. B. et al. Macromolecules, 1997, 30, 2717-25)。加工可能性を改善する為に芳香環又は窒素原子におけるアルキル鎖の置換の導入(Moon, H. S. et al. Macromolecules 31 (1998) 6461. and Hua, M. Y. et al. Polymer 41 (2000) 813.)アニリンと可溶性の長鎖アルキル又はアルコキシを含むモノマーの共重合化(Chan, H. S. O. et al. J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 8517)、市販の熱可塑性物質/熱硬化性物質との混合物又は複合体(Reference from Anand, J. et al. Prog. Polym. Sci. 1998, 23, 993)による多くの研究がなされてきた。カンファースルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルスルホン酸のような機能性芳香族/脂肪族スルホン酸もまたポリアニリンのドーパントとして採用され、結果物のドープした材料は可溶性で加工可能である(MacDiarmid, A. G. Conducting Polymers and Related Materials, Salaneek WR, Lundstorn J, Ramby R. (Eds), Oxford Science Publications, London, 1993.)。導電性ポリアニリンの為の有用な新規ドーパントを見つける為にかなりの努力がなされているが、溶解性及び加工可能性を向上させる新規ドーパントは引き続き必要とされる。また、天然資源から利用可能な安価な材料から準備できる新しい電気導電性ポリマーの継続的な必要性がある。
【0003】
技術分野において、広く入手可能であること及び商業的関心から、ポリアニリンの為の、再生可能資源をベースとするドーパント材料を調製するいくつかの努力がなされてきた。例えばリグノスルホン酸 (米国特許第5968417、6299800、6764617及び6059999号)はポリアニリンの為のドーパント分子としてうまく使用されてきた。それにより強磁性酸化鉄粒子を含む導電性強磁性体とリグノスルホン酸でドープされたポリアニリンを含む導電性ポリマーを供給する。さらに、米国特許第6552107号には3ペンタデシルフェノール及びその誘導体の官能基化したスルホン酸ドーパントの開発について記載している。3-ペンタデシルフェノールはカルダノールから高価な高圧の触媒水素化反応によって得た。さらに、3-ペンタデシルフェノールはその芳香族スルホン酸に変換され、ポリアニリンのドーパントとして採用された。しかしながら、カルダノールから直接官能基化されたドーパントは、出発物質を天然資源として広く入手可能であることからより魅力的であり、また、水素化などの高価な過程を避けることによるコスト削減によって、より経済的である。我々が知っている限り、ポリアニリン及び他の導電性ポリマーの為のドーパントとしての、カルダノールをベースとする分子の利用に関する報告は全くない。硫酸又は塩化硫酸を用いたカルダノールの芳香環のスルホン化は、芳香環のスルホン化の代わりに厚くて粘性の樹脂が形成することからありえない。芳香族スルホン化より前の、アルキル鎖に存在する不飽和二重結合のオレフィン重合化による樹脂の形成が期待される。
【0004】
(発明の目的)
本発明の主目的は再生可能資源由来の官能基化ドーパント/導電性ポリアミン材料、それらの混合物及びそれらの製造方法を提供することである。
【0005】
本発明の他の目的は、ポリアニリンの為の官能基化カルダノールアゾスルホン酸ドーパントを、カシューナットシェル油(CNSL)の主成分であるカルダノールから直接製造する方法を提供することである。
【0006】
本発明のさらに他の目的は新規ドーパント1を市販の導電性ポリアニリンエメラルジン塩基にドープすることによる高導電性ポリアニリンの合成方法を提供することである。
【0007】
本発明のさらに別の目的は高導電性ポリアニリンを調製するためにアニリンとカルダノールアゾスルホン酸のin-situ重合化合成方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、ドープ工程中にドーパント分子1の比及びポリアニリンエメラルジン塩基の比を最適化することにより高導電性ポリアニリンの合成方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的はカルダノールアゾスルホン酸ドープポリアニリン材料をベースとするポリアニリン/熱可塑性物質混合物を調製することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は電子産業における選択的適用の為の高度に巨視的に整列したポリアニリン/カルダノールアゾスルホン酸及びポリアニリン/カルダノールアゾスルホン酸/熱可塑性物質混合物を調製することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は電子産業における選択的適用の為の非常に均一な粒子サイズ及び優れた形態を有するポリアニリン/カルダノールアゾスルホン酸及びポリアニリン/カルダノールアゾスルホン酸/熱可塑性物質混合物を調製することである。
【0012】
(発明の概要)
上記の見地から応募者が新規ドーパント、2-ω-不飽和-4-ヒドロキシ-4'-スルホン酸アゾベンゼン又は他にカルダノールアゾスルホン酸として知られる以下に示す式(1)を提案する。それは安価な天然由来材料カルダノール(カシューナットシェル油の主成分)

から直接調製される。
【0013】
新規ドーパントは、水、メタノール、テトラヒドロフラン及びジメチルスルホキシド等のような多くの溶媒に可溶性であり、それゆえに、ポリアニリン導電性材料は、ポリアニリンエメラルジン塩基をさまざまな溶媒中で式1のドーパントでドープすることによっても、式1の化合物の存在下アニリンをin-situで重合化することによっても調製することができる。分子1は結晶性固体であり、多くの標準的な融解加工技術を介してポリアニリンドープ導電性材料の調製を促進する。本発明の方法で調製されるドーパントの構造上の重要な特徴の一つは、可撓性の n-アルキル(C15H27)置換基を有することであり、これによりドープポリアニリンを融解加工可能にし、高い透明性及び導電性を有するフィルム及びコーティングを調製することを可能にする。
【0014】
新規ドーパントカルダノールアゾスルホン酸(1)はいかなる適用に対しても、より特定的に導電性ポリアニリンのドーパント分子としてはこれまで報告されていなかった。本発明は新規カルダノールアゾスルホン酸誘導体をジアゾ化反応を通して製造するためにカルダノールを直接利用することを強調する。ジアゾ化したスルファニル酸(4-アミノフェニルスルホン酸)を塩基性条件下でカルダノールと結合し、ドーパントを産生した。これらの塩基性反応条件下では、カルダノール内の側鎖二重結合は、不活性であり、樹脂の固まりの形成を起こさない。本発明の方法は、高純度の試料の産生において非常に効率的であって、容易に大規模合成に適応出来る。新規カルダノールアゾスルホン酸 (1)は2箇所に長アルキル鎖を有しており、そのことにより塗料及びフィルム産業における多くの適用に一般的な溶媒においてポリアニリンドープ材料と同様ドーパントの溶解性が増加する。加えて、長アルキル鎖はドープポリアニリン材料の為の可塑剤として働き、ホットプレス、圧縮成形、押出法による材料の加工可能性を促進する。ドーパントは、長鎖中にフェノール-OH及び不飽和二重結合のような、さらなる化学的変換又は他のポリマーマトリックスにグラフトして適合ポリアニリン複合体を得る為のフリーの反応部位を有する。
【0015】
従って、本発明は、式で表される再生可能資源由来の官能基化ドーパントを使用した導電性物質、導電性混合物及び複合体の形成方法を提供し、前記方法は、(a) 式(1)を有する新規官能基化ドーパントを、カルダノールをベースとする再生可能資源から直接調製する工程 (b)前記ドーパントを、溶液又は融解物中で置換及び非置換導電性ポリマーにドープする工程 (c)熱可塑性物質及び熱硬化性物質とドープ導電性ポリマーを溶液及び融解物中で混合し、良好な形態の、1μmから5nmの均一な粒子サイズ及び0.01〜100 S/cmの範囲の導電率を有する結晶を得る工程を含む。

【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明の好ましい実施態様は、以下の付随する図を参照してこれから説明する。しかしながら開示された実施態様は単に発明の例示に過ぎず、発明の範囲及び思想から離れること無しに、さまざまな修飾及び変形が可能であるということを理解すべきである。以下の記載及び図は発明の限定と解釈されるべきでなく、多くの特定の詳細が請求項を基礎として及び発明を製造し及び/又は使用する分野の当業者の教示を基礎として本発明の理解のために記載される。しかしながら、特定の例において、公知又は従来法の詳細は本発明を詳細において不必要に不明瞭にしないために記載しない。
【0017】
本発明は本質的にカルダノールからのカルダノールアゾスルホン酸ドーパント1の合成及び、さまざまな有機及び水系の組み合わせ中において、ドーパント1存在下、界面、乳剤及び分散ルートによる、溶液、融解物及びin-situにおけるアニリンの重合化中におけるポリアニリン エメラルジン塩基のドーパントとしての1の使用を含む。さらに、カルダノールアゾスルホン酸ドーパント1はまた、ドーパントの1つとして、カンファースルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルスルホン酸及びカンファースルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、全てのタイプの芳香族及び脂肪族スルホン酸のような他のスルホン酸と共に使用することができた。ドーパント1ドープポリアニリンエメラルジン塩は単独で又は他の熱可塑性物質と溶液及び融解工程で加工される。温度、濃度や、時間や溶剤の極性などの重合化条件を変えることによって、結果として得られる材料の粒径及び形態を制御することが可能である。ドープ材料は、様々な形式の薄いフィルムやバーなどの物に加工できる。
【0018】
本発明において、導電性ポリアニリン/熱可塑性物質混合物はホットプレス、押出、圧縮成形及び研磨形成技術による溶解成型(solution cast)及び融解加工によって調製される。ポリアニリンをこれらのドーパントでドープする際は、可塑化(plastification)も同時に行われる。従って、これらのドーパントはプロトン化剤兼可塑化剤として働く。導電性複合体は、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリ(塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ尿酸、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド及びエチレン酢酸ビニル等のような可塑性樹脂を含む。カルダノールアゾスルホン酸ドープポリアニリン/ポリエチレン複合体は、混合物の全ての組成範囲に対し、通常帯電防止材料に必要とされる、約0.1〜 2 S/cmの導電率を示す。
【0019】
本発明の好ましい実施態様において、ドーパントであるカルダノールアゾスルホン酸はカシューナット加工産業の産業廃棄物であるカシューナットシェル油の主成分である再生可能資源であるカルダノールから合成される。
【0020】
本発明の他の実施態様において、ドーパントであるカルダノールアゾスルホン酸は、高純度及び高収量の製品生成を示す、周囲温度でのそれほど高価でない処理においてスルファニル酸、亜硝酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム等のような市販の安価な材料を使用したジアゾカップリングを介して合成される。
【0021】
本発明のさらに他の実施態様において、アニリンの重合化はカルダノールアゾスルホン酸の存在下、水性、有機、有機/水性媒体中で界面、分散及び乳剤重合経路を介して周囲条件下で行われる。メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N, N-ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン炭化水素及びN-メチルピロリジノン等を含む有機溶媒及び過硫酸アンモニウムは全てのタイプの重合化のための酸化体として使用される。
【0022】
本発明の特徴によれば、ポリアニリン-ドープ材料は溶解成形及び融解加工技術により、薄層フィルム及びバーに加工される。融解加工にはホットプレス、押出、圧縮成形及び研磨形成技術が含まれる。本発明において、ポリアニリン - カルダノールアゾスルホン酸 ドープ導電性材料は0〜100モルまたは質量%の変化する量のドーパントにより導電率を10-3〜102 S/cmの範囲に微調整し、調製した。フリースタンディングフレキシブルフィルム(Free standing flexible films)は、溶媒であるクロロホルム及びm-クレゾールを使用して融解/溶液 加工のどちらによっても調製する事ができる。
【0023】
発明の重要な知見は、新規ジアゾ化合成の戦略を採用することにより、樹脂生成副反応がカルダノールのスルホン化の間うまく阻止されたということである。本発明のカルダノールアゾスルホン酸ドーパント分子の製造方法は、環境に優しいアプローチに市販の安価な試薬を使用することで低コストのジアゾ化反応を含む。本発明の合成アプローチはまた、容易に大規模の製造に適用することが出来る。式1で表されるドーパントは安定な固体であり、1 S/cmを超える導電率を有する高導電性ポリアニリンの製造の為の取り扱いが容易である。ドーパント分子は250℃までの温度で安定であり、光電子装置産業における高温での適用の可能性がある。
【0024】
新規ドーパント分子は水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N、N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリジノン等のような多くの溶媒に自由に溶解し、従って、ポリアニリンエメラルジン塩基のドープは適用に依存した広範囲の溶媒中で行うことが出来る。ドーパントは250℃までの熱安定性を有し、従って、ポリアニリンエメラルジン塩基と共に高温で加工することも可能である。
【0025】
水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N, N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリジノン等のような多くの溶媒中における式1の高い溶解性は式1のドーパント存在下、界面、乳化、有機/水性溶媒の組み合わせの分散及び混合のような多くのin-situ経路を介して、アニリンの重合を起こす。
【0026】
ドーパント1及びポリアニリン エメラルジン塩基の組成はドープ工程の間に1〜99モル又は質量%の範囲で変化する。熱可塑性物質はポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリ(塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ尿酸、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリイミド等を含む。ポリマー混合物の加工技術には、射出成形、2軸混合、圧縮成形、研磨形成及びホットプレス等が含まれる。混合物の組成は組成全体の1〜99 %の範囲で変化する。
【0027】
新規カルダノールアゾスルホン酸 (1)はジアゾ化反応により再生可能資源材料であるカルダノールから直接調製される。本発明の方法は、研究室の周囲条件における大規模合成において、非常に効率的であり、費用対効果に優れている。ドーパント(1)内の長アルキル鎖は、塗料及びフィルム産業におけるポリアニリン導電コーティング技術に非常に有用な水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン及びジメチルスルホキシドのような多くの一般的な溶媒におけるドーパントの溶解性を増加させる。長アルキル鎖は可塑剤としても働き、ホットプレス、圧縮成形及び押出法による材料の加工可能性を向上させる。
【0028】
再生可能資源をベースとする新規ドーパントは、石油をベースとするドーパントと比較して、入手容易であり、低コスト及び産業適用のためのスケールアップの容易さから非常に魅力的である。新規ドーパント(1)ドープポリアニリン導電性材料には、帯電防止ESDコーティングから、レーダーの周波数の吸収、腐食防止、EMI/RFIシールド、電気化学の作動装置、リソグラフィーレジスト、落雷防護、マイクロエレクトロニクス、高分子電解質、光発電、二次電池、太陽電池、バイオセンサ、発光ダイオード等にわたる産業適用が広く約束されている。従って、この発明を適用できる産業はエレクトロニクス産業、プラスチック産業、医療産業等である。
【0029】
本発明は以下の実施例で例示の為にさらに詳細に記載され、従って本発明の範囲の制限と解釈すべきではない。
【0030】
実施例 1 カルダノールアゾスルホン酸 (ドーパント 1)の合成: スルファニル酸 (31.5 g, 0.18 mol)及び炭酸ナトリウム (7.95 g, 0.08 mol)を300 mlの水に加え、固体が完全に溶解するように60〜70℃まで熱した。それをさらに5℃まで冷却し、亜硝酸ナトリウム(11.1 g, 0.16 mol)の水溶液(32 ml)の冷却溶液を加えた。得られた黄色の溶液を濃HCl (31.5 ml)を含んだ氷(200 g)に加えメカニカルスターラー(mechanical stirrer)を用いて5℃で30分攪拌した。それを水酸化ナトリウム (18 g, 0.45 mol)、蒸留カルダノール (45 ml, 0.15 mol)、メタノール (75 ml)および水 (150 mL)を含んだフラスコに添加した。カップリング反応は氷冷条件下メカニカルスターラーを用いて3時間攪拌しながら継続した。反応混合物は濃HCl (150 ml)を砕氷(300 g)中で添加することで中和した。赤色沈殿はブフナーろうとを用いてろ過し、水で洗浄した。乾燥生成物重量64.18 g (88 %収率)。融点: 205-207 ℃。1H-NMR (d6-N,N-ジメチルスルホキシド中)δ: 7.75 ppm (b, 4H, Ar-H); 7.57 ppm (d, 1H, Ar-H); 7.75 ppm (s, 1H, Ar-H); 7.70 ppm (d, 1H, Ar-H); 5.24 ppm (b, 2H, CH=CH); 3.1 0.6 ppm (m, 23H, 脂肪族-H). FT-IR (KBr): 3006.7, 2923.6, 2852.9, 1600.1, 1533.7, 1498.7, 1369.3, 13338.7, 1236.9, 1174.7, 1116.5, 1033.2, 1007.6, 820.1, 706.4及び559.3 cm-1. UV-Vis (CH3OH中): λmax = 336 nm。質量64.18 g (88% 収率)。
【0031】
実施例 2 有機溶媒中でのドーパント1によるポリアニリン エメラルジン塩基のドープ : アニリン(10 mL, 0.11 mol)を HCl (1M, 200 mL)に溶解し、1000 mLの三口フラスコに入れ、氷を用いて0 ℃まで冷却した。ここに、あらかじめ冷却した過硫酸アンモニウム(31.4 g, 0.138 mol)のHCl (1M, 100 mL)溶液を非常に注意深く(発熱反応)5回に分けて5分間の間を空けて加えた。すぐにピンク色が現れるのが観察され、さらに深い青に変わった。5分後、緑色のポリアニリン-HClエメラルジン塩基が溶液から沈殿した。30 ℃で24時間攪拌することとでさらに重合化を進めた。沈殿物をろ過し、1M HClで3回洗浄し、1 M アンモニア水溶液 (450 mL, 25 %水溶液)が入った1000 mL のフラスコに添加した。青色の沈殿を3時間室温で攪拌し脱ドープの完了を確実にした。結果として得られた青色のエメラルジン塩基をろ過し、水、メタノール及びアセトンで連続的に洗浄して、未反応の出発物質及びオリゴマーを除去した。青色の物質は50℃の真空オーブンで8時間乾燥させた。乾燥したポリマーは8.1 g (89 % 収率)だった。4.55 g のポリアニリン エメラルジン塩基及び12.1 gのドーパント1を50 mlのメタノール中に入れ、加熱し3時間還流させた。緑色の固体をWhatmannろ紙を使用してろ過し、固体をメタノールで色がなくなるまで洗浄した。緑色のドープされた物質は50℃の真空オーブン内(1 mm Hg)で8時間乾燥した。ドープされたポリマーの重量は12.34 g (74.11%)であった。カルダノールアゾスルホン酸 (式1)及びポリアニリン エメラルジン塩基の組成は1〜99 モル又は質量%の範囲で変化させ、さまざまな量のドーパント1を含むポリアニリンドープ導電性材料を調製した。
【0032】
実施例 3 ドーパント1存在下のアニリンの乳化重合: カルダノールアゾスルホン酸 (24.2 g, 0.05 mol)及びアニリン(4.8 ml, 0.05 mol)を水 (50 mL)に入れ、10分間激しく攪拌した。トルエン(50 mL)および水 (50 mL)を加え2時間攪拌した。得られた溶液を氷を使用して0℃まで冷却した。過硫酸アンモニウム(14.28 g, 0.063 mol)を水 (25 mL)に溶解し冷却した。それを反応混合物に常に攪拌しながら添加した。15分後、フラスコの側面に緑の色調が表れた。30℃で24時間激しく攪拌することにより重合化を継続した。緑色の沈殿をろ過し水、メタノール及びアセトンで連続的に洗浄した。緑色のドープ材料を50℃の真空オーブン中で(1 mm Hg)8時間乾燥させた。カルダノールアゾスルホン酸 (式1)及びアニリンの組成は1〜99モル又は質量%の範囲で変化させ、ポリアニリンドープ導電性材料を調製した。乳化重合は水/テトラヒドロフラン、水/クロロホルム及び他の水/有機溶媒混合物においてもさまざまな組成で行った。
【0033】
実施例 4 ドーパント1存在下のアニリンの界面重合: カルダノールアゾスルホン酸 (24.2 g, 0.05 mol)及び過硫酸アンモニウム (14.28 g, 0.063 mol)を水 (75 mL)に溶解した。アニリン (4.8 mL, 0.05 mol)のトルエン(75 mL)溶液を非常に注意深く上記溶液に移した。5分後、重合化の開始を示す、薄い、垂直方向の、緑色の層が現れた。重合化はいかなる妨害もなしに48時間続けたままにした。沈殿は連続的に水、メタノール、アセトンで洗浄し、50℃の真空オーブン中で8時間乾燥させた。カルダノールアゾスルホン酸 (式1)及びアニリンの組成は1〜99 モル又は質量%の範囲で変化させ、ポリアニリンドープ伝導性材料を調製した。界面重合化は水/テトラヒドロフラン、水/クロロホルム及び他の水/有機溶媒混合物においてもさまざまな組成で行った。
【0034】
実施例 5 ドーパント1存在下のアニリンの分散重合:カルダノールアゾスルホン酸 (24.2 g, 0.05 mol)及びアニリン(4.8 mL, 0.05 mol)を水 (75 mL) に溶解し、2時間激しく攪拌した。得られた分散系を氷を使用して0℃まで冷却した。過硫酸アンモニウム (15.7 g, 0.069 mol)を水 (50 mL)に溶解し冷却した。それを前記分散系に常に攪拌しながら10分間かけて滴下した。3分後、淡青色が表れるのが認められ、続いて緑色の粒子が溶液から沈殿した。重合化は激しく攪拌しながら30℃で8時間続けた。緑色の沈殿は連続的に水、メタノール、アセトンで洗浄し、50℃の真空オーブン中で8時間乾燥させた。カルダノールアゾスルホン酸 (式1)及びアニリンの組成は1〜99 モル又は質量%の範囲で変化させ、ポリアニリンドープ伝導性材料を調製した。
【0035】
実施例 6 ドーパント-1ドープポリアニリン導電性材料の溶液加工: ドーパント-1ドープ ポリアニリン導電性材料又は等モルドーパント1及びポリアニリンエメラルジン塩基をトルエン、キシレン、1,2-ジクロロベンゼン、m-クレゾール等のような高沸点有機溶媒に入れ、48時間超音波浴中で還流/処置した。少数の不溶性の固体はデカントで除去した。上記調製した溶液を溶解成型法によりフリースタンディングフレキシブルフィルムを調製することができた。カルダノールアゾスルホン酸 (1)及びポリアニリン エメラルジン塩基の組成は1〜99 モル又は質量%の範囲で変化させ、ポリアニリンドープ導電性材料を調製した。
【0036】
実施例 7 ドーパント-1ドープポリアニリン導電性材料の融解加工:ドーパント-1ドープポリアニリン導電性材料又は等モルドーパント1及びポリアニリンエメラルジン塩基を100〜250℃の異なる温度で融解加工装置を用いて混合した。融解混合生成物を射出成形、圧縮成形及び研磨形成等のような標準的加工技術を用いてフィルム又はバーに加工した。カルダノールアゾスルホン酸(式1)及びポリアニリンエメラルジン塩基の組成は1〜99モル又は質量%の範囲で変化させ、ポリアニリンドープ導電性材料を調製した。
【0037】
実施例 8 ドーパント-1ドープポリアニリン/熱可塑性物質混合物の溶液加工:ドーパント-1ドープポリアニリン導電性材料又は等モルドーパント1及びポリアニリンエメラルジン塩基及びポリエチレンのような熱可塑性物質をトルエン、キシレン、1,2-ジクロロベンゼン、m-クレゾール等のような高沸点有機溶媒に入れ、48時間超音波浴中で還流/処置し、続いて遠心した。少数の不溶性の固体はデカントで除去した。上記調製した溶液を溶解成型法によりフリースタンディングフレキシブルフィルムを調製することができた。カルダノールアゾスルホン酸 (式1)/ポリアニリン エメラルジン塩基/ポリエチレンの組成は1〜99 モル又は質量%の範囲で変化させ、ポリアニリンドープ伝導性混合物を調製した。カルダノールアゾスルホン酸 (式1)ドープポリアニリンエメラルジン塩/ポリエチレンの組成も1〜99モル又は質量%の範囲で変化させ、ポリアニリンドープ伝導性混合物を調製した。
【0038】
実施例 9 ドーパント-1ドープポリアニリン導電性材料の融解加工:ドーパント-1ドープポリアニリン導電性材料又は等モルドーパント1及びポリアニリン エメラルジン塩基及びポリエチレンのような熱可塑性物資を 100〜250℃の異なる温度で融解加工装置を用いて混合した。融解混合生成物を射出成形、圧縮成形及び研磨形成等のような標準的加工技術を用いてフィルム又はバーに加工した。カルダノールアゾスルホン酸 (式1)/ポリアニリン エメラルジン塩基/ポリエチレンの組成は1〜99モル又は質量%の範囲で変化させ、ポリアニリンドープ導電性材料を調製した。カルダノールアゾスルホン酸 (式1)ドープポリアニリンエメラルジン塩/ポリエチレンの組成も1〜99 モル又は質量%の範囲で変化させ、ポリアニリンドープ伝導性混合物を調製した。
【0039】
本発明は特定の実施態様を参照して記載されているがこの記載は制限の意味で解釈されるべきではない。本発明の代わりの実施態様と同様、開示された実施態様のさまざまな改変は、本発明の記載に基づいて当業者にとって明らかである。従って、改変は付随する請求項に定義された本発明の思想及び範囲から離れること無しに行うことができることが予想される。
本発明の他の目的、特徴及び利点は明細書の記載及び付随する図によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1はカルダノールアゾスルホン酸 (1)のジメチルスルホキシド-d6における1H-NMRスペクトルを表す。
【図2】図2は融解加工カルダノールアゾスルホン酸ドープポリアニリン薄層フィルム(a)及びカルダノールアゾスルホン酸ドープポリアニリン/ポリエチレン混合薄層フィルム(b)の走査電子顕微鏡写真を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のようにして得られる、式1のカルダノールアゾスルホン酸。

【請求項2】
下記の式1で表される官能基化ドーパントを用いた導電性材料、導電性混合物及び複合体の製造方法であって、

以下の工程、
(a)カルダノールをベースとする再生可能資源から直接的に、式(1)の官能基化ドーパントを調製する工程、
(b)溶液中に融解した形態で、置換している又は置換していない導電性ポリマーに式1のドーパントをドープする工程、
(c)熱可塑性及び熱硬化性物質を前記ドープした導電性ポリマーを溶液中で融解した形態で混合し、及び1マイクロから5nmの均一な粒子サイズを有し0.01〜100 S/cmの範囲の導電率を有する結晶を得る工程
を含む前記方法。
【請求項3】
導電性ポリマーがポリアニリンである請求項2記載の方法。
【請求項4】
カルダノールをベースとする再生可能資源がカシューナットシェル油である請求項2記載の方法。
【請求項5】
ポリアニリンのドープがポリアニリンエメラルジン塩基と式(1)のドーパントの機械的混合によって行われ、全体の構成範囲においてポリアニリンエメラルジン塩基/式1を1〜99%のモル又は質量比の量で変化させる請求項2記載の方法。
【請求項6】
ポリアニリンのドープが、ポリアニリン エメラルジン塩基と式(1)のドーパントを第1ドーパントとして、カンファースルホン酸、芳香族スルホン酸、脂肪族スルホン酸及び無機鉱酸からなる群から選択される第2ドーパントと共に、機械的に混合することにより行われ、前記第1及び第2ドーパントの量を1〜99%のモル又は質量比で変化させる、請求項2記載の方法。
【請求項7】
熱可塑性及び熱硬化性物質中のドープポリアニリンエメラルジン塩の量が1〜99 %(モル又は質量比)の範囲である請求項2記載の方法。
【請求項8】
ドープポリアニリンエメラルジン塩及びドープポリアニリン/熱可塑性物質混合物が、1μm〜1cmのサイズの厚さの高導電性フリースタンディングフレキシブルフィルム及び バーに熱的に加工され又は溶解成型される、請求項2記載の方法。
【請求項9】
熱可塑性物質がポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリ(塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ尿酸、ポリウレタン、ポリスルホン及びポリイミドからなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項10】
ポリアニリン-ドーパントエメラルジン塩が有機溶媒及び有機-水性溶媒混合物中において、1〜99%のモル比で変化する量のアニリン及び式1のドーパントにより調製される、請求項2記載の方法。
【請求項11】
有機溶媒がハロゲン含有溶媒、アセトン、テトラヒドロフラン、2〜36個の炭素を有する芳香族及び脂肪族炭化水素溶媒からなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ドープポリアニリンエメラルジン塩が、多様な水性-有機溶媒の組み合わせ中において、界面重合、乳化重合及び分散重合により調製される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
式1の化合物が250℃までの熱安定性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ポリアニリンエメラルジン塩及びその熱可塑性混合物が溶液中で調製され、1μm〜5 nmの粒子サイズに融解される、請求項1記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−522250(P2009−522250A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548081(P2008−548081)
【出願日】平成17年12月30日(2005.12.30)
【国際出願番号】PCT/IN2005/000461
【国際公開番号】WO2007/077569
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(508176500)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (27)
【Fターム(参考)】