説明

再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法

【課題】再生樹脂のゲル分率を適度に制御することにより、耐環境応力亀裂特性を向上させ、電線・ケーブル用被覆材料への適用が可能となる再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法を提供する。
【解決手段】シラン架橋樹脂の架橋部分をアルコールまたは炭酸エステルにより分解して得られた再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法において、前記再生樹脂を用いて導線に押出した直後の被覆材のゲル分率が1.0%以上20.5%以下となるように押出成形するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン架橋樹脂から得られる再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境問題への取り組みがグローバルに進められている現代社会において、資源の有効活用・リサイクルが重要であることは言うまでもない。樹脂材料についても例外ではなく、様々な方法によって多くの材料がリサイクルされている。
【0003】
汎用樹脂材料であるポリエチレンは、電気絶縁性に優れた材料であり、電線・ケーブルの被覆材料として広く使用されている。ポリエチレン分子同士を三次元的に架橋することで耐熱性を付与した架橋ポリエチレンについても、電線・ケーブル被覆材料として大量に使用されている。
【0004】
通常ポリエチレンは、熱可塑性であることから再度成形が可能であり、広くマテリアルリサイクルされているが、架橋ポリエチレンは熱可塑性を持たないためにマテリアルリサイクルがあまり進められておらず、ほとんどが埋立・焼却処分される。
【0005】
近年、このような架橋ポリエチレンについても、マテリアルリサイクルを実施しようとする動きが高まり、これを可能とする技術も現れつつある。例えば、押出機中でスクリュのせん断力を利用して架橋ポリエチレンの分子鎖を切断することにより熱可塑化する技術(特許文献1)や架橋ポリエチレンを反応器内で超臨界水と接触、反応させることにより、油状燃料を得る方法(特許文献2)、超臨界或いは亜臨界の高温のアルコールや炭酸エステルと接触させることによりシラン架橋ポリマーの架橋結合であるシロキサン結合を選択的に切断して熱可塑化する方法が特許文献3、4に示されている。
【0006】
特に、高温のアルコールや炭酸エステルを用いた熱可塑化方法ではポリエチレン分子量の低下が少ないため、良好な機械特性を有する再生ポリエチレンが得られる。このため、機械特性を補填するためのバージン材料のブレンドなどは特に必要なく、再生ポリエチレン単独で様々な用途にマテリアルリサイクルが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3026270号公報
【特許文献2】特開平6−279762号公報
【特許文献3】特開2002−187976号公報
【特許文献4】特開2010−001385号公報
【特許文献5】特許第4102260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような再生ポリエチレン(再生樹脂)は、バージン材料と比べて分子量が小さくなり耐環境応力亀裂特性が低下してしまうため、電線・ケーブル用の被覆材料としてそのまま使用することが困難である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、このような再生樹脂のゲル分率を適度に制御することにより、耐環境応力亀裂特性を向上させ、電線・ケーブル用被覆材料への適用が可能となる再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、シラン架橋樹脂の架橋部分をアルコールまたは炭酸エステルにより分解して得られた再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法において、前記再生樹脂を導体もしくは電線コア上への押出した直後の被覆材料のゲル分率が1.0%以上20.5%以下となるように押出形成することを特徴とする再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法である。
【0011】
請求項2の発明は、前記再生樹脂のゲル分率が0%であり、前記再生樹脂を導体もしくは電線コア上への押出した直後の被覆材のゲル分率が1.0%以上20.5%以下となるように押出形成時の押出温度を調節することを特徴とする請求項1記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法である。
【0012】
請求項3の発明は、前記押出し形成時に再生樹脂に架橋剤および架橋触媒を添加して、押出機内押出温度を調節し、前記再生樹脂を導体もしくは電線コア上への押出した直後の被覆材のゲル分率が1.0%以上20.5%以下とすることを特徴とする請求項1または2記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法である。
【0013】
請求項4の発明は、シラン架橋樹脂の架橋部分をアルコールにより分解して得られた再生樹脂を押出機内温度を160℃以上205℃以下で、且つ押出機内部で一番高温となるダイス部分の温度を180℃以上205℃以下に制御して押出形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法である。
【0014】
請求項5の発明は、シラン架橋樹脂の架橋部分を炭酸エステルにより分解して得られた再生樹脂を押出機内温度を160℃以上210℃以下で、且つ押出機内部で一番高温となるダイス部分の温度を180℃以上210℃以下に制御して押出形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法である。
【0015】
請求項6の発明は、前記押出し形成時に再生樹脂に架橋剤および架橋触媒を添加せず、押出機内押出温度を調節し、前記再生樹脂を導体もしくは電線コア上への押出した直後の被覆材のゲル分率が1.0%以上20.5%以下とすることを特徴とする請求項1または2記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法である。
【0016】
請求項7の発明は、シラン架橋樹脂の架橋部分をアルコールにより分解して得られた再生樹脂を押出機内温度を180℃以上205℃以下で、且つ押出機内部で一番高温となるダイス部分の温度を190℃以上205℃以下に制御して押出形成することを特徴とする請求項1、2、6のいずれかに記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法である。
【0017】
請求項8の発明は、シラン架橋樹脂の架橋部分を炭酸エステルにより分解して得られた再生樹脂を押出機内温度を180℃以上210℃以下で、且つ押出機内部で一番高温となるダイス部分の温度を190℃以上210℃以下に制御して押出形成することを特徴とする請求項1、2、6のいずれかに記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、シラン架橋樹脂を原料としてアルコールまたは炭酸エステルで分解処理して得られる再生樹脂を用いて電線・ケーブルを製造する際に、導体への押出直後の被覆材料のゲル分率が1.0%以上20.5%以下となるように押出成形することで、耐環境応力亀裂特性を向上させた電線・ケーブルを得ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例及び比較例にて再生ポリエチレンを用いて電線・ケーブルの作製に使用した装置の模式図を示すものである。
【図2】図1における押出機のシリンダ温度の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な一実施の形態を詳述する。
【0021】
先ず、発明者らは、特許文献3や特許文献4に示されるような超臨界または亜臨界状態の溶媒と反応させることによりシラン架橋樹脂から熱可塑性を有する再生樹脂、特に溶媒としてアルコールまたは炭酸エステルを使用することにより得られた再生樹脂を用いて電線・ケーブルを製造する際に、電線・ケーブルの導体上に、該再生樹脂を押出被覆する時の押出温度を制御することで押出被覆直後の再生樹脂のゲル分率を増加させることにより、バージン材料を混合しなくても、再生樹脂からなる被覆材料の耐環境応力亀裂特性を向上させ得ることを見出したものである。
【0022】
このためには、押出被覆直後の再生樹脂からなる被覆材のゲル分率を1.0%以上20.5%以下にコントロールすることで、電線・ケーブル被覆材の耐環境応力亀裂特性を向上させ且つヤケ(局部的な架橋物)の発生を抑制することができることを見出し、発明に至った。
【0023】
すなわち、シラン架橋樹脂を分解溶媒としてアルコールまたは炭酸エステルで分解処理した再生樹脂からなる被覆材料を電線またはケーブルの被覆材として押出成形する際に、例えば押出機内の温度を調節するなどして、押出被覆直後のゲル分率を1.0%以上20.5%以下にコントロールした被覆材を導体または電線コア上の被覆材として用いることで、耐環境応力亀裂特性に優れた電線・ケーブルを得ることができるものである。
【0024】
ここで、本発明に用いるシラン架橋樹脂を分解して得られる再生樹脂について説明する。
【0025】
シラン架橋樹脂:
シラン架橋樹脂とは、シラン化合物をラジカル発生剤を用いてポリマーにグラフトした後、シラノール縮合触媒の作用により、ポリマーの主鎖同士をシロキサン結合で架橋させたものである。
【0026】
ここで、シラン架橋樹脂の原料となる架橋前の樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、あるいはエチレン−オクテン共重合体等より選択されるオレフィン系樹脂やこれらを用いた共重合体などの単独または2種以上をブレンドしたものとすることができる。
【0027】
架橋剤としては、シラン化合物やシラン化合物を樹脂にグラフトするためのラジカル発生剤が用いられる。シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランのようなビニル基を有する有機シランが用いられ、シラン化合物をポリオレフィンにグラフトするためのラジカル発生剤は、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼンのようなジアルキルパーオキサイド、m−(t−ブチルペルオキシイソプロピル)−イソプロピルベンゼン、p−(t−ブチルペルオキシイソプロピル)−イソプロピルベンゼン、ジクミル等のラジカル発生剤を単独あるいは、2種以上組み合わせたものが用いられる。
【0028】
架橋触媒としては、マグネシウムやカルシウムなどのII族、コバルト、鉄などのVIII族、もしくは錫、亜鉛、チタン等の元素や金属化合物、オクチル酸またはアジピン酸の金属塩、アミン系化合物、酸などが挙げられる。より具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、酢酸第一錫、カブリル酸第一錫、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン、硫酸、塩酸などの無機酸、トルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などの有機酸が使用される。
【0029】
これらの架橋剤及び架橋触媒は分解処理する前の樹脂をシラン架橋する際と、このシラン架橋樹脂を再生処理し、さらに再架橋する際のどちらもこれらの架橋剤及び架橋触媒は使用可能である。
【0030】
シラン架橋樹脂の分解処理方法:
シラン架橋樹脂の分解処理方法は、例えば、特許文献5のように、架橋樹脂をホッパから押出機に投入し、分解溶媒を注入し、それにより架橋樹脂を分解するというものである。特許文献5では分解溶媒として、超臨界または亜臨界のアルコールや水、二酸化炭素、窒素などを用いるが、本発明の電線等の被覆材に用いる再生樹脂は、シラン架橋樹脂を超臨界または亜臨界のアルコールまたは炭酸エステルにより分解処理したものを用いる。
【0031】
シラン架橋樹脂を分解する溶媒としては、アルコールまたは炭酸エステルであることが好ましく、アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、i−ペンチルアルコールより選択される1種あるいは2種以上のアルコールなどであり、炭酸エステルとしては、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル、炭酸メチルエチルなどがあげられる。
【0032】
再生樹脂:
本発明の被覆材に用いる再生樹脂の原料として、シラン架橋樹脂を用いるのは、シラン架橋樹脂を、分解溶媒としてアルコールまたは炭酸エステルを用いて分解することで、シラン架橋樹脂のポリマーの主鎖同士を架橋形成するシロキサン結合の部分のみ(分子がH型に結合している部分)を選択的に分解できるため、架橋点は分解しつつも、架橋結合以外の部分(ポリマーの主鎖等)は切断しないため、分子量低下が抑えられ、ポリマー本来の物性を維持した再生樹脂を得ることができるからである。
【0033】
シラン架橋樹脂をメタノールや炭酸ジメチルで表2に示す条件で分解した再生樹脂の特性値を表3に示す。表3に示すように、シラン架橋樹脂を超臨界または亜臨界の炭酸エステルで分解した再生樹脂は、分子量が15000〜38000、伸び率は350〜580%であり、超臨界または亜臨界のアルコールで分解した再生樹脂は、分子量が15000〜44000、伸び率は350〜650%である。アルコールで分解した再生樹脂のほうが、分解後の分子量が多少高いが、いずれも再生樹脂でありながら、高分子量で、伸び率も高く、分解処理しても、樹脂の特性は保持されていることがわかる。
【0034】
これに対して、例えば、架橋樹脂をせん断処理などで分解した際は架橋樹脂の架橋点のみではなく、ポリマーの主鎖も切断されるため、ゲル分率は低くなるが、分子量も低下した再生樹脂となる。せん断して分解した再生樹脂の分子量は1000程度もしくはそれ以下であり、伸び率も100%程度となる。このような再生樹脂を被覆材として成形するためには、再生樹脂にバージン材料を混合する必要がある。
【0035】
本発明に用いるシラン架橋樹脂を分解処理した再生樹脂は、架橋点が分解されているため、ゲル分率は0%となるが、アルコールまたは炭酸エステルを分解溶媒として用いて分解することで、架橋点が選択的に分解され、ポリマーの主鎖は残っているため、分子量の低下を抑えた再生樹脂とすることができる。
【0036】
そのため、本発明では、シラン架橋樹脂をアルコールまたは炭酸エステルにより分解処理したことにより高分子量の再生樹脂を得ることができるため、バージン材料を用いなくとも、電線等の被覆材を形成することができる。
【0037】
再生樹脂を導体または電線コア上に被覆する際に、押出直後の被覆材のゲル分率を1.0%以上20.5%以下となるようにコントロールすることで、耐環境応力亀裂特性に優れた電線・ケーブルを提供することができる。
【0038】
また本発明の再生樹脂に、耐環境応力亀裂特性に優れる樹脂を適宜ブレンドして使用しても何ら問題ない。しかし、これは被覆材料中の再生樹脂比率を下げることとなり、環境的に意義の低い方法となってしまう。
【0039】
次に再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法を説明する。
【0040】
シラン架橋樹脂をアルコールまたは炭酸エステルにより分解した再生樹脂を、電線・ケーブルの被覆材として、導体もしくは電線コア上に押出機を用いて押出成形する際の押出機内温度としては、アルコールで分解した再生樹脂を用いる場合は、160℃以上205℃以下に制御し、炭酸エステルで分解した再生樹脂を用いる場合は、160℃以上210℃以下に制御するのが好ましい。より好ましくは、一番高温となるダイス部分を、アルコールで分解した再生樹脂を用いる場合は180℃以上205℃以下に制御し、炭酸エステルで分解した再生樹脂を用いる場合は180℃以上210℃以下に制御すると良い。
【0041】
特にラジカル発生剤として半減期(10時間)温度が120℃程度であるジクミルパーオキサイドが用いられたシラン架橋樹脂の場合などでは、分解し、その再生樹脂を押出成形する際に、押出機内の温度が160℃より低いと再生樹脂中にラジカルが発生しにくく、再架橋反応が起こりにくくなり、ゲル分率のコントロールが困難となるためである。160℃よりも低い温度での押出成形を行いたいときには、半減期(10時間)温度が低いラジカル発生剤であるほどラジカルの発生については効率が良くなることは言うまでも無いが、樹脂の融点や軟化点に近づき、粘度の上昇や溶融が不十分となることから、押出成形自体が困難となる。また、205℃以上もしくは210℃より高くなると、架橋反応が過度に進行してしまい、押出成形した被覆材にヤケが生じてしまうためである。
【0042】
シラン架橋樹脂由来の再生樹脂を電線・ケーブルの被覆材として、導体もしくは電線コア上に押出成形する際に、架橋剤及び架橋触媒を添加しないのは、再生樹脂中にシラン化合物がグラフトされているため、再生樹脂中に潜在するシラン化合物中のアルコキシシランやシラノール基が主に被覆材を形成する際の押出機の熱により縮合反応することで、ポリマーの分子鎖(主鎖)間にシロキサン結合(架橋結合)を形成し、再架橋するため、架橋剤及び架橋触媒を用いなくとも再生樹脂の再架橋が可能となる。
【0043】
架橋剤及び架橋触媒を添加する工程を省くことで、作業効率を上げることができる。
【0044】
シラン架橋樹脂を超臨界または亜臨界のアルコールや炭酸エステルにより分解した再生樹脂は、架橋点が分解され、ポリマーの主鎖部分は残っているため、例えば上述のように被覆時の押出機温度を調節するなどして再架橋させるのみで、高分子量の被覆材を作製することができる。
【0045】
再生樹脂からなる被覆材の押出し温度が低い場合は、潜在するシラン化合物が反応しにくく、再架橋しにくいため、導体もしくは電線コア上に押出し被覆する際の押出機内温度は、アルコールで分解した再生樹脂を用いる場合は、180℃以上205℃以下に制御し、炭酸エステルで分解した再生樹脂を用いる場合は、180℃以上210℃以下に制御するのが好ましい。より好ましくは、一番高温となるダイス部分を、アルコールで分解した再生樹脂を用いる場合は190℃以上205℃以下に制御し、炭酸エステルで分解した再生樹脂を用いる場合は190℃以上210℃以下に制御すると良い。
【0046】
押出機内温度を160℃以上とすることは可能であるが、その際、押出機内が180℃未満、特にダイス部分が190℃未満であると再生樹脂内に潜在するシラン化合物中のアルコキシシランやシラノール基が再架橋反応しにくく、成形後の被覆材のゲル分率が低くなってしまうため、押出成形の際に、再度架橋剤及び架橋触媒を添加する必要がある。
【0047】
さらに押出機内の温度の上限については、シラン架橋樹脂をアルコールで分解した再生樹脂を用いる場合と、炭酸エステルで分解した再生樹脂を用いる場合とで再生樹脂の特性に多少の違いがあり、再架橋の反応性も異なるため、押出機内温度の上限を用いる再生樹脂によって調節することが好ましい。シラン架橋樹脂をアルコールで分解した再生樹脂を用いる場合には、205℃以下とすることが好ましい。炭酸エステルで分解した再生樹脂の場合は、アルコールで分解した再生樹脂よりも多少分子量が小さいため、再架橋の際に、架橋が再形成されにくい(ゲル分率が上がりにくい)ため、多少ダイス部分の温度を高めにし、210℃以下とすることが好ましい。
【0048】
本発明においては、押出条件によっては、押出成形時に再生樹脂に架橋剤や架橋触媒を添加しても問題はなく、押出成形直後のゲル分率を1.0%以上20.5%以下に制御できると推測されるが、新たな工程を必要とするので工業的には添加しない方が有利である。
【0049】
上記のように形成されたシラン架橋樹脂をアルコールまたは炭酸エステルにより分解した再生樹脂を導体または電線コア上に被覆した際の、押出直後のゲル分率を1.0%以上20.5%以下とする。
【0050】
ゲル分率を1.0%以上とするのは、被覆材の割れを防ぎ、環境応力亀裂に十分耐えられるものとするためである。ここでは特に温度によりゲル分率をコントロールするが、例えば押出機内の滞留時間や水分の調整などもゲル分率のコントロールには有効であると考えられる。
【0051】
押出し直後のゲル分率を20.5%よりも高くしすぎると、押出成形性が悪くなったり、被覆材にヤケが生じてしまう。
【0052】
本発明のシラン架橋樹脂の再生樹脂からなる被覆材は、導体上に被覆し、絶縁材料として用いることや、電線コア上に被覆し、シースとして用いることができる。
【0053】
いずれにしても、再生樹脂を導体または電線コア上に押出被覆する際に、押出し直後の被覆材のゲル分率を、1.0%以上20.5%以下に調節する。
【0054】
再生樹脂を導体上に被覆し、絶縁材料として用いる場合には、耐熱性が求められるため、さらに架橋度を上げ最終的にはゲル分率が40%〜60%ほどまで架橋させることが好ましい。この場合、再生樹脂を導体上に押出直後のゲル分率を1.0%以上20.5%以下となるように再架橋させ押出被覆した電線を数日間放置するなどしてさらに架橋を進めるとよい。
【0055】
再生樹脂を電線コア上に被覆し、シースとして用いる場合には、押出直後のゲル分率を1.0%以上20.5%以下となるように再架橋させた後にさらに架橋度を上げる必要はなく、そのまま用いることができる。シースにはケーブルの使用環境などによる劣化を防ぐことが求められ、本発明の再生樹脂からなる被覆材は特に環境応力亀裂に対して優れた効果を発揮する。
【0056】
本発明のシラン架橋樹脂の再生樹脂からなる被覆材料には、その他にも本発明の特性を超えない範囲で適宜添加剤等を使用可能である。
【実施例】
【0057】
次に本発明の実施例と比較例を説明する。
【0058】
先ず、シラン架橋ポリエチレンを製造し、これをアルコールまたは炭酸エステルにより分解して再生樹脂とし、この再生樹脂を用いて電線・ケーブルを製造した。
【0059】
シラン架橋ポリエチレンの製造:
まず、本実施例と比較例に用いるシラン架橋樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンを表1に示した架橋剤、酸化防止剤、安定剤、架橋触媒を配合し、シロキサン結合で架橋したものである。ここでは架橋後のシラン架橋ポリエチレンのゲル分率を55%とした。
【0060】
【表1】

【0061】
シラン架橋ポリエチレンの分解:
このシラン架橋ポリエチレン樹脂を特許文献5に示されるような超臨界処理装置を用いて、表2の条件で超臨界状態のメタノールまたは炭酸ジメチルにより分解した。
【0062】
【表2】

【0063】
再生樹脂:
シラン架橋ポリエチレンの分解で得られた再生樹脂の特性値を表3に示す。
【0064】
【表3】

【0065】
電線・ケーブルの製造:
上記の再生樹脂を用い、図1、図2に示す直径130mmの単軸押出機1を用いて製造した。
【0066】
図1、図2において、押出機1のホッパ2よりペレット状の再生ポリエチレンを投入し、押出機1内での滞留時間は4分50秒程度とし、押出機1のシリンダの温度を180℃〜215℃に設定し、押出機1の吐出口に設けたブレーカプレート10からネック11を介してクロスヘッド3に押し出すと共に、送り出し機4から、銅導体(導体公称断面積38mm2)8をクロスヘッド3を通し、銅導体8上に1.5mm厚となるようにダイス12から引き抜き、冷却水槽5で冷却し、引き取り機6を介して巻き取り機7にて電線・ケーブル9を巻き取って製造した。
【0067】
この電線・ケーブルの製造の際に、図2に示すように押出機1を押出吐出方向にシリンダを4分割し、シリンダ1〜4の温度とネック11とクロスヘッド3とダイス12の温度を個々に制御した。
【0068】
また再生樹脂は、メタノールを用いて分解したもの(表4)と、炭酸ジメチルを用いて分解したもの(表5)と分けて実験を行った。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
表4、表5において、架橋剤および架橋触媒を添加した実施例1、実施例5の場合は以下のとおりとした。
【0072】
まず、再生ポリエチレン95質量部に対して架橋剤を0.94質量部含浸させた。架橋剤としてはシラン化合物のビニルトリメトキシシランを0.9質量部、ラジカル発生剤のジクミルパーオキサイドを0.04質量部添加した。
【0073】
次に、再生ポリエチレン100質量部に対して架橋触媒としてジブチル錫ジラウレート1質量部をロール機により練り込んだマスタバッチを作製した。このマスタバッチを前述の架橋剤が含浸された再生ポリエチレン95質量部に対して5質量部混合したものを再生樹脂とした。
【0074】
また、表4、5において、温度制御は、シリンダ1の温度は180℃とし、シリンダ2〜シリンダ4までの温度を5℃〜10℃刻みで上げ、ネック、クロスヘッド、ダイスの温度は、シリンダ4の温度と同じか、シリンダ4の温度より高くした。
【0075】
表4、5に示した実施例及び比較例の条件で作製した電線・ケーブルの被覆材の作業効率性、押出直後の被覆材のゲル分率、電線・ケーブルの外観(コア外観)、環境応力亀裂特性を以下のように評価した。
【0076】
作業効率性:
上記のように架橋剤および架橋触媒を添加した実施例1、実施例5は、製造における作業性を△とし、架橋剤および架橋触媒を添加していないものを○とした。
【0077】
押出直後のゲル分率:
ゲル分率とは樹脂の架橋度を表す指標であり、被覆材を約1gを金網の中に入れて110℃の熱キシレン中で24時間抽出した後の金網内に残存している部分(ゲル)の質量と抽出前の初期の質量の百分率で表すものとする。
ゲル分率(%)=(乾燥後のゲルの質量(g)/初期の質量(g))×100
【0078】
このゲル分率は1.0%以上20.5%以下のものを合格とした。
【0079】
ケーブル外観(コア外観):
電線・ケーブルの外観を目視で観察し、平滑であるものを良好とし、ヤケが発生したものを不良とした。
【0080】
環境応力亀裂特性:
環境応力亀裂特性は、基本的にJIS K6760(定ひずみ環境応力亀裂試験)に準拠した。
【0081】
被覆材は、幅13mm、長さ38mmの打ち抜き刃にて試験片の長軸(38mm)とケーブル長手方向が平行になるように打ち抜いて試験片(n=10)を作製し、その中央部に長さ19.1mm、深さ0.25mmのノッチを入れた(ただし、JIS K6760では試験片の厚みは3mmと規定されているが、1.5mmである被覆材をそのまま試験片として使用したため、ノッチ深さは任意に設定した)。試験温度は50℃、試験液はイゲパール10%水溶液を用いてF50(50%のサンプルに亀裂が発生した時間)を測定した。
【0082】
この環境応力亀裂特性の判定は、表1に示した再生前のベースポリエチレン(F50>2000時間)と同等であれば合格、2000時間未満であれば不合格とした。
【0083】
これらの評価項目を総合的に判断して○、△、×の判定を行い、○および△を合格とした。
【0084】
実施例1:
表4より、実施例1では、ケーブルの外観は十分に平滑であることを確認した。また、押出直後の被覆材(再生ポリエチレン)のゲル分率は10.2%であった。環境応力亀裂試験では2000時間を経過しても割れは見られなかった(n=10全て割れはなし)。しかしながら、本条件では押出機内の温度を低めにしたため、再架橋を十分にするため、架橋剤及び架橋触媒を添加した。ケーブル押出前に架橋剤の含浸工程と架橋触媒の練り工程、これらを混合する工程が必要となることから、実施例2〜4と比べると作業効率がやや悪くなってしまう。
【0085】
以上より、ケーブルの特性に関しては全く問題ないが、実施例2〜4と比較した場合に製造方法としてはやや工業的に劣るために判定は△とした。
【0086】
実施例2:
表4より、実施例2ではケーブルの外観は十分に平滑であることを確認した。また、押出直後の被覆材(再生ポリエチレン)のゲル分率は1.2%であった。環境応力亀裂試験では2000時間を経過しても割れは見られなかった(n=10全て割れはなし)。本条件では、特に押出作業や押出の前作業として新たな工程を必要としない。以上より、電線・ケーブルの特性および製造方法において全く問題ないことから判定は○とした。
【0087】
実施例3:
表4より、実施例3ではケーブルの外観は十分に平滑であることを確認した。また、押出直後の被覆材(再生ポリエチレン)のゲル分率は4.8%であった。環境応力亀裂試験では2000時間を経過しても割れは見られなかった(n=10全て割れはなし)。本条件では、特に押出作業や押出の前作業として新たな工程を必要としない。
【0088】
以上より、電線・ケーブルの特性および製造方法において全く問題ないことから判定は○とした。
【0089】
実施例4:
表4より、実施例4ではケーブルの外観は十分に平滑であることを確認した。また、押出直後の被覆材(再生ポリエチレン)のゲル分率は20.1%であった。環境応力亀裂試験では2000時間を経過しても割れは見られなかった(n=10全て割れはなし)。本条件では、特に押出作業や押出の前作業として新たな工程を必要としない。
【0090】
以上より、ケーブルの特性および製造方法において全く問題ないことから判定は○とした。
【0091】
実施例5:
表5より、実施例5ではケーブルの外観は十分に平滑であることを確認した。また、押出直後の被覆材(再生ポリエチレン)のゲル分率は7.2%であった。環境応力亀裂試験では2000時間を経過しても割れは見られなかった(n=10全て割れはなし)。しかしながら、実施例1と同様に押出機内の温度を低めにしたため、再架橋を十分にするため、架橋剤及び架橋触媒を添加した。本条件ではケーブル押出前に架橋剤の含浸工程と架橋触媒の練り工程、これらを混合する工程が必要となることから、実施例6〜8と比べると作業効率がやや悪くなってしまう。
【0092】
以上より、ケーブルの特性に関しては全く問題ないが、実施例6〜8と比較した場合に製造方法としてはやや工業的に劣るために判定は△とした。
【0093】
実施例6:
表5より、実施例6ではケーブルの外観は十分に平滑であることを確認した。また、押出直後の被覆材(再生ポリエチレン)のゲル分率は1.1%であった。環境応力亀裂試験では2000時間を経過しても割れは見られなかった(n=10全て割れはなし)。本条件では、特に押出作業や押出の前作業として新たな工程を必要としない。
【0094】
以上より、ケーブルの特性および製造方法において全く問題ないことから判定は○とした。
【0095】
実施例7:
表5より、実施例7ではケーブルの外観は十分に平滑であることを確認した。また、押出直後の被覆材(再生ポリエチレン)のゲル分率は15.1%であった。環境応力亀裂試験では2000時間を経過しても割れは見られなかった(n=10全て割れはなし)。本条件では、特に押出作業や押出の前作業として新たな工程を必要としない。
【0096】
以上より、ケーブルの特性および製造方法において全く問題ないことから判定は○とした。
【0097】
実施例8:
表5より、実施例8ではケーブルの外観は十分に平滑であることを確認した。また、押出直後の被覆材(再生ポリエチレン)のゲル分率は20.0%であった。環境応力亀裂試験では2000時間を経過しても割れは見られなかった(n=10全て割れはなし)。本条件では、特に押出作業や押出の前作業として新たな工程を必要としない。
【0098】
以上より、ケーブルの特性および製造方法において全く問題ないことから判定は○とした。
【0099】
これらの実施例1〜8の結果より、押出温度をパラメータとし、シリンダ1の温度180℃からダイス12までの温度を高くすることでゲル分率が上昇することが分かった。この場合、メタノールで分解処理した再生ポリエチレンのゲル分率は1.2〜20.1%、炭酸ジメチルで分解処理した再生ポリエチレンのゲル分率は1.1〜20.0%とすれば、ケーブル外観が平滑であって耐環境応力亀裂特性に優れた電線・ケーブル被覆材が得られることが分かった。
【0100】
架橋結合であるシロキサン結合を形成する化学反応はアルコキシシランやシラノール基の縮合反応であり、熱や水分の調整により制御できる。本実施例では、押出温度のみでゲル分率を制御したが、押出機内での滞留時間を調整して再生ポリエチレンに与える熱量を変化させたり、押出機内の水分量を調整することでも同様の制御が可能であると考える。
【0101】
このような方法は実施例1および実施例5のように再生ポリエチレンに対して架橋剤および架橋触媒を添加しても問題ないが、新たに架橋剤の含浸工程、架橋触媒の練り工程、これらを混合する工程が必要となってしまう。架橋剤および架橋触媒を添加してケーブルを製造することは全く問題ないと考えるが、これらを添加しない方法である実施例2〜4および実施例6〜8の方がより工業的な製造方法であると言える。
【0102】
比較例1:
表4より、比較例1では押出成形温度を低めにしたにもかかわらず、実施例1のように架橋剤及び架橋触媒を添加しなかったため、再架橋されず、押出直後のゲル分率は0%であった。ケーブルの外観は十分に平滑であった。また、本条件では特に押出作業や押出の前作業として新たな工程を必要としない。
【0103】
しかしながら、環境応力亀裂特性F50が100時間となり、再生前のベースポリエチレンと比べて著しく特性が低下することが分かった。
【0104】
比較例2:
表4より、比較例2では押出直後のゲル分率は22.0%であり環境応力亀裂試験では2000時間を経過しても割れは見られなかった(n=10全て割れはなし)が、ケーブル表面にヤケが発生した。これは、シリンダ4からダイスまでの押出温度の上昇(200℃→210℃)によりゲル分率が増加して環境応力亀裂特性は良好であったが、押出機内で過度に架橋反応が進行したために、ヤケが発生したものと考える。
【0105】
比較例3:
表5より、比較例3では押出成形温度を低めにしたにもかかわらず、実施例5のように架橋剤及び架橋触媒を添加しなかったため、再架橋されず、押出直後のゲル分率は0%であり、ケーブルの外観は十分に平滑であった。また、本条件では特に押出作業や押出の前作業として新たな工程を必要としない。しかしながら、環境応力亀裂特性F50が90時間となり、再生前のベースポリエチレンと比べて著しく特性が低下することが分かった。
【0106】
比較例4:
表5より、比較例4では押出直後のゲル分率は20.9%であり環境応力亀裂試験では2000時間を経過しても割れは見られなかった(n=10全て割れはなし)が、ケーブル表面にヤケが発生した。これは、シリンダ4からダイスまでの押出温度の上昇(200℃→215℃)によりゲル分率が増加して環境応力亀裂特性は良好であったが、押出機内で過度に架橋反応が進行したために、ヤケが発生したものと考える。
【0107】
以上より、(1)押出直後のゲル分率が0%であると環境応力亀裂特性が再生前のベースポリエチレンと比べて著しく特性が低下すること、(2)押出温度を上げて押出直後のゲル分率を過度に増加させようとすると押出機内で架橋反応が進行しヤケが発生してしまうことが分かった。
【0108】
よって、押出温度は、投入時は180℃で、アルコールで分解した再生樹脂は一番高温となるダイス部分を190℃以上、205℃以下まで温度上昇させれば、ゲル分率を1.2〜20.1%にコントロール、また炭酸エステルで分解した再生樹脂は190℃以上、210℃以下まで温度上昇させれば、ゲル分率を1.1〜20.0%にコントロールでき、押出し直後のゲル分率を1.0以上、20.5%以下とすることができ、耐環境応力亀裂に優れた被覆材とすることができる。
【0109】
以上本発明を用いれば、シラン架橋樹脂を原料としてアルコールまたは炭酸エステルで分解処理して得られる再生樹脂を、電線・ケーブルの最外層に形成することで、耐環境応力亀裂特性に優れ且つ外観の良好な電線・ケーブル用被覆材料として適用することが可能となる。この再生樹脂は、シラングラフトされていることから、架橋剤や架橋触媒を添加しなくとも押出条件のコントロールだけで適度なゲル分率を調節することが可能であり、新たな添加剤コストの増加は発生しない。当然ながら経済性のメリットのみならず、再生材料をそのまま電線・ケーブル被覆材料へ適用できるので環境的な効果も大きいと言える。
【符号の説明】
【0110】
1 単軸押出機
2 ホッパ
3 クロスヘッド
8 導線
9 電線・ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン架橋樹脂の架橋部分をアルコールまたは炭酸エステルにより分解して得られた再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法において、前記再生樹脂を導体もしくは電線コア上への押出した直後の被覆材料のゲル分率が1.0%以上20.5%以下となるように押出形成することを特徴とする再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記再生樹脂のゲル分率が0%であり、前記再生樹脂を導体もしくは電線コア上への押出した直後の被覆材のゲル分率が1.0%以上20.5%以下となるように押出形成時の押出温度を調節することを特徴とする請求項1記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法。
【請求項3】
前記押出し形成時に再生樹脂に架橋剤および架橋触媒を添加して、押出機内押出温度を調節し、前記再生樹脂を導体もしくは電線コア上への押出した直後の被覆材のゲル分率が1.0%以上20.5%以下とすることを特徴とする請求項1または2記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法。
【請求項4】
シラン架橋樹脂の架橋部分をアルコールにより分解して得られた再生樹脂を押出機内温度を160℃以上205℃以下で、且つ押出機内部で一番高温となるダイス部分の温度を180℃以上205℃以下に制御して押出形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法。
【請求項5】
シラン架橋樹脂の架橋部分を炭酸エステルにより分解して得られた再生樹脂を押出機内温度を160℃以上210℃以下で、且つ押出機内部で一番高温となるダイス部分の温度を180℃以上210℃以下に制御して押出形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法。
【請求項6】
前記押出し形成時に再生樹脂に架橋剤および架橋触媒を添加せず、押出機内押出温度を調節し、前記再生樹脂を導体もしくは電線コア上への押出した直後の被覆材のゲル分率が1.0%以上20.5%以下とすることを特徴とする請求項1または2記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法。
【請求項7】
シラン架橋樹脂の架橋部分をアルコールにより分解して得られた再生樹脂を押出機内温度を180℃以上205℃以下で、且つ押出機内部で一番高温となるダイス部分の温度を190℃以上205℃以下に制御して押出形成することを特徴とする請求項1、2、6のいずれかに記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法。
【請求項8】
シラン架橋樹脂の架橋部分を炭酸エステルにより分解して得られた再生樹脂を押出機内温度を180℃以上210℃以下で、且つ押出機内部で一番高温となるダイス部分の温度を190℃以上210℃以下に制御して押出形成することを特徴とする請求項1、2、6のいずれかに記載の再生樹脂を用いた電線・ケーブルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−221679(P2012−221679A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85316(P2011−85316)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】