説明

再生骨材の製造方法

【課題】JISA5021 コンクリート用再生骨材Hに定められる品質規定のうち、最も重要な絶乾密度及び吸収率の基準を満たす再生骨材を少ない動力で、かつ、確実に製造できる方法を提供すること。
【解決手段】コンクリート廃材を粒径40mm以下に予備破砕し、この予備破砕したコンクリート廃材を振動式破砕機1にて破砕することによってコンクリート廃材から再生骨材を製造する再生骨材の製造方法において、振動式破砕機1の破砕室1aに充填する破砕媒体2を、ロッド径50〜30mmのロッド状の大径破砕媒体とロッド径30未満〜19mmのロッド状の小径破砕媒体の少なくとも2種類とし、大径破砕媒体と小径破砕媒体を体積比で6:4〜4:6の割合で充填し、かつ、破砕媒体2を破砕室1aの体積に対して50〜20体積%の充填率で充填した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート廃材から骨材を再生製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の解体や改良・改築に伴い多量に発生する建築廃棄物のうち、コンクリート廃材は約40%を占める。このコンクリート廃材の約50%は道路舗装用路盤材や、埋め戻し材として再利用されているが、残りの50%は廃棄されているのが実状である。
【0003】
一方、コンクリートには大量の骨材が使用されるが、砂利、河川砂等の良質な天然骨材は採取が困難となってきており、骨材資源の枯渇問題解消とコンクリート廃材の有効利用の両面から、コンクリート廃材から、骨材を再生・回収し、粗骨材・細骨材として再利用することが検討されている。
【0004】
コンクリート廃材から骨材を再生・回収するためには、コーンクラッシャー、ジョークラッシャー、ボールミル等の破砕機によってコンクリート廃材を破砕するという方法が従来より試みられている。しかし、この方法では、破砕機内に30分以上滞留させ、摩擦粉砕を行わないと、JISA5021 コンクリート用再生骨材Hに定められる品質規定のうち、最も重要な絶乾密度及び吸水率の基準(絶乾密度2.5kg/L以上、粗骨材吸水率3.0%以下)を満たすのが困難であった。
【0005】
また、細骨材の再生・回収に対しては、特許文献1において、遠心式風力分級機を使用し、遠心力で、分級機内の衝突板や分散板に衝突させてセメントペーストを剥ぎ取る方法が提案されている。しかし、この方法では設備が複雑になり、骨材の硬度が高く、しかも高速回転で遠心力を与えるため、分級機の摩耗が激しく、修理・保守が頻繁に必要となり、結果として再生コストが大きくなるという欠点がある。
【0006】
最近では、加熱・すりもみ方式(特許文献2、3参照)やウオータジェットを利用した再生方法が提案され実施が試みられているが、これらの方法では、骨材の再生に多くのエネルギーを消費し(例えばウオータジェットの場合500kg/hの処理能力を得るのに90kW/hの動力が必要)、再生コストが高くなるため小規模コンクリート廃材処理でこれらの方法を採用するには、コスト上の問題がある。また、ウオータジェットを利用した再生方法では、水処理の問題も発生する。
【特許文献1】特開平11−12003号公報
【特許文献2】特開平8−91893号公報
【特許文献3】特開平8−109052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、JISA5021 コンクリート用再生骨材Hに定められる品質規定のうち、最も重要な絶乾密度及び吸収率の基準を満たす再生骨材を少ない動力で、かつ、確実に製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コンクリート廃材を粒径40mm以下に予備破砕し、この予備破砕したコンクリート廃材を振動式破砕機にて破砕することによってコンクリート廃材から再生骨材を製造する再生骨材の製造方法であって、振動式破砕機の破砕室に充填する破砕媒体を、ロッド径50〜30mmのロッド状の大径破砕媒体とロッド径30未満〜19mmのロッド状の小径破砕媒体の少なくとも2種類とし、大径破砕媒体と小径破砕媒体を体積比で6:4〜4:6の割合で充填し、かつ、破砕媒体を破砕室の体積に対して50〜20体積%の充填率で充填することを特徴とする。
【0009】
また、本発明では、振動式破砕機によるコンクリート廃材の破砕物のうち、粒径5mm未満の粒子割合が、質量%で(100−コンクリート廃材中の粗骨材含有率)〜{(100−コンクリート廃材中の粗骨材含有率)+10}の範囲内で選択された設定値となるまで破砕する。
【0010】
さらに、本発明では、振動式破砕機において少なくとも粒径0.15mm以下の破砕物を空気分級して除去しながら破砕する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、再生骨材の製造に使用する振動式破砕機の破砕媒体の充填率及び組合せを適正にしたことにより、絶乾密度及び吸収率の基準を満たす再生骨材を少ない動力で、かつ、確実に製造でき、コンクリート廃材の有効利用を促進できる。
【0012】
また、振動式破砕機による破砕処理は乾式処理のため、水処理などの厄介な問題が生じることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では、まず、コンクリート廃材を粒径40mm以下に予備破砕する。予備破砕に使用する破砕装置はその種類を問わないが、後で水処理の問題を発生させないためには、水を使用しない乾式の破砕機を使用することが好ましい。
【0014】
コンクリート廃材と言ってもその大きさは様々である。したがって、後工程の振動式破砕機における破砕・すりもみを適正に実施することができるように、予備破砕によって粒径を所定の範囲とすることが重要である。すなわち、振動式破砕機における破砕・すりもみ作用が多すぎると微粉の発生が多くなり、製品の回収率が低下するのみならず、エネルギーコストが掛かりすぎる。逆に、破砕・すりもみ作用が少なすぎると品質規格を満足できない結果となる。したがって、最適な破砕・すりもみ作用でエネルギーコストを最小とするために、種類を問わない破砕機により40mm以下、好ましくは25mm以下に予備破砕したコンクリート廃材を出発材とする。なお、この予備破砕段階では粒径5mm以下の粒子の割合は3.5質量%程度である。
【0015】
予備破砕後、乾式の振動式破砕機によりさらに破砕し、コンクリート廃材から骨材を再生する。コンクリートは、骨材をセメントペーストで結合して強度を発現しており、このコンクリートから、骨材を再生するには、含有する骨材自体を破壊しないように、コンクリートを破砕し、かつその表面に付着するセメントペーストを除去する必要がある。このため、コンクリートを破砕し、表面に付着するセメントペーストを自生粉砕などで剥離することが必要であり、破砕・すりもみ作用を持つ再生処理機が必要である。
【0016】
本発明では、従来から破砕機として使用されてきた振動式破砕機(粉砕媒体としてロッドを使用した振動式破砕機)を使用する。振動式破砕機は、衝撃力による破砕作用と破砕媒体が破砕機内を公転する攪拌分散作用、及び、破砕媒体と砕料、砕料と砕料の摩擦粉砕作用によって破砕能力を発現している。しかし、従来の振動式破砕機をそのまま使用すると、衝撃力が大きく粉砕されすぎ、微粉発生が多く骨材の歩留まりを低下させるのみならず、粗骨材として25mmから5mmの粒子を篩い分けで回収しても、粉砕時に骨材に発生するマイクロクラックのため、吸水率が大幅に増大する。
【0017】
そこで、本発明では、振動式破砕機の公転作用は維持しつつ(具体的には振動振幅と振動数を維持する)、衝撃作用のみを低下させるために、以下の手段を講じた。
【0018】
a)破砕媒体の充填量(率)を、一般的な振動式破砕機の場合の80〜30%程度に減じる。すなわち、破砕室の体積に対して50〜20体積%の充填率で破砕媒体を充填する。
【0019】
b)一般的な振動式破砕機では、破砕媒体であるロッドのロッド径はすべて同一径であるが、衝撃作用を減少させるために、充填される破砕媒体の40〜60%を、一般的な振動式破砕機に使用される破砕媒体のロッド径の85〜60%程度の小さい破砕媒体に変更する。すなわち、大径破砕媒体(ロッド径:50〜30mm)と小径破砕媒体(ロッド径30未満〜19mm)を体積比で6:4〜4:6の割合で充填する。
【0020】
振動式破砕機により、どの程度まで破砕・すりもみを行うかは、品質規定を満足し、かつ歩留まり良く骨材を回収するための大切なポイントである。コンクリート中の粗骨材(粒径5mm以上)の含有率:X(質量%)はコンクリートにより異なるが、一般的には表1に示すように、X=約50質量%である。
【表1】

【0021】
したがって、粗骨材からセメントペーストの剥離が理想的に行われれば、5mm未満の粒子含有率D(質量%)は、D=100−X=約50となり、原骨材の吸水率と絶乾密度に復帰する。しかしながら、理想的なセメントペーストの剥離は困難であり、かつ、セメントペーストの剥離の短時間での計測は困難である。
【0022】
そこで、本発明では、振動式破砕機によるコンクリート廃材の破砕の程度を、その破砕物のうちの粒径5mm未満のものの含有率で評価するようにした。具体的には、粒径5mm未満の粒子割合が、D〜(D+10)質量%の範囲内で選択された設定値となるまで破砕するようにした。
【0023】
振動式破砕機による粉砕終了後、5mmの振動スクリーン(篩)で篩い分けることで、スクリーン上のものを再生粗骨材として回収し、再利用できる。
【0024】
5mmの振動スクリーンのスクリーン下材から細骨材を回収できるが、このままでは、細骨材の品質規定(絶乾密度2.5kg/L以上、吸水率3.0%以下)を満足することは困難である。すなわち、振動式破砕機で破砕・すりもみ作用を受けた破砕物を5mmの振動スクリーンで篩い分けたスクリーン下材中には表1に示したとおり約13〜22質量%のセメントペーストが含まれるので、このセメントペーストを分離する必要がある。
【0025】
セメントペーストを分離するためには、上述の振動式破砕機に空気分級機構を設け、少なくとも粒径0.15mm以下、好ましくは粒径0.6mmの破砕物(セメントペーストが多量に含まれる)を空気分級して除去しながら破砕する。このようにすると、攪拌・分散状態でセメントペーストの分級が行われるため、セメントペーストを効率的に分級することが可能となる。
【0026】
以上説明した本発明の再生骨材の製造方法によれば、90kW/h程度の動力で10ton/h(再生粗骨材の生産量:4ton/h)の処理能力を得ることができ、低エネルギーコストで再生骨材を生産することができる。また、骨材回収率は約80%以上を確保できる。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の再生骨材の製造方法を実施する骨材再生装置の実施例を示す構成図である。
【0028】
同図に示す骨材再生装置は、振動式破砕機1を備え、そのドラム状の破砕室1a内にはロッド状の破砕媒体2が充填されている。この破砕媒体2は、図面では明確に表れていないが、ロッド径32mmの大径破砕媒体とロッド径25mmの小径破砕媒体の2種類からなり、大径破砕媒体と小径破砕媒体を体積比で5:5の割合で充填しており、かつ、その合計の体積が破砕室1aの体積の40%程度となるように充填している。
【0029】
破砕室1aは、図示しない加振機により振動させられるようになっており、その一端上部にはコンクリート廃材の投入口1bが設けられ、他端下部には破砕物のうちの粗粒を排出する粗粒排出口1cが設けられている。また、粗粒排出口1cからは分級用空気が導入され、排気口1dから排出される。排気口1dからは分級用空気と共に破砕物のうちの微粒が排出される。微粒はバクフィルター3で回収され、微粒排出口3aからダストとして排出される。実施例では、粒径30mm以下に予備破砕したコンクリート廃材を投入口1bから投入し、セメントペーストが大部分を占める粒径0.5mm以下の微粒を分級用空気で分級して除去しながら破砕するようにした。
【0030】
微粒が除去された残余である粗粒は、粗粒排出口1cから排出され、25mmのスクリーン4にかけられ、その後、5mmのスクリーン5にかけられ、5mmのスクリーン5上のものが再生粗骨材として、5mmのスクリーン5下のものが再生細骨材として回収される。25mmのスクリーン4上の粗粒は、投入口1bに戻され、再度破砕される。
【0031】
図2及び図3は、図1の振動式破砕機によって得られた再生粗骨材(粒径25〜5mm)の特性評価結果を示す。
【0032】
図2は、振動式破砕機における破砕物中の粒径5mm未満の粒子割合(質量%)と吸水率との関係を示し、図3は破砕物中の粒径5mm未満の粒子割合(質量%)と絶乾密度との関係を示す。
【0033】
図2及び図3に示す試料1は一般のコンクリート廃材であり、試料2は上質の骨材を使用したコンクリート廃材である。
【0034】
吸水率については、粒径5mm未満の粒子割合を、試料1では56質量%以上、試料2では40質量%以上とすることにより、基準(3.0%以下)を満たした。
【0035】
絶乾密度については、粒径5mm未満の粒子割合を、試料1では56質量%以上、試料1では40質量%以上とすることにより、基準(2.5kg/L以上)を満たした。
【0036】
以上のとおり、破砕物中の粒径5mm未満の粒子割合(質量%)を指標として破砕の程度を管理することにより、骨材の吸水率と絶乾密度の両方の基準を満たす良質の再生骨材が製造できる。具体的には、粒径5mm未満の粒子割合が、質量%で(100−コンクリート廃材中の粗骨材含有率)〜{(100−コンクリート廃材中の粗骨材含有率)+10}の範囲内で選択された設定値となるまで破砕することにより、骨材の吸水率と絶乾密度の両方の基準を満たすことができる。
【0037】
なお、代替策として破砕物の吸水率と絶乾密度を直接の指標として破砕の程度を管理することも考えられる。この場合、吸水率と絶乾密度との間には図4に示すような比例関係があるので、比較的計測時間が短い絶乾密度を指標として破砕の程度を管理する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、コンクリート廃材から粗骨材あるいは細骨材を再生製造する設備に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の再生骨材の製造方法を実施する骨材再生装置の実施例を示す。
【図2】破砕物中の粒径5mm未満の粒子割合と吸水率との関係を示す。
【図3】破砕物中の粒径5mm未満の粒子割合と絶乾密度との関係を示す。
【図4】骨材の吸水率と絶乾密度との関係を示す。
【符号の説明】
【0040】
1 振動式破砕機
1a 破砕室
1b 投入口
1c 粗粒排出口
1d 排気口
2 破砕媒体
3 バクフィルター
3a 細粒排出口
4 25mmのスクリーン(篩)
5 5mmのスクリーン(篩)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート廃材を粒径40mm以下に予備破砕し、この予備破砕したコンクリート廃材を振動式破砕機にて破砕することによってコンクリート廃材から再生骨材を製造する再生骨材の製造方法であって、
振動式破砕機の破砕室に充填する破砕媒体を、ロッド径50〜30mmのロッド状の大径破砕媒体とロッド径30未満〜19mmのロッド状の小径破砕媒体の少なくとも2種類とし、大径破砕媒体と小径破砕媒体を体積比で6:4〜4:6の割合で充填し、かつ、破砕媒体を破砕室の体積に対して50〜20体積%の充填率で充填することを特徴とする再生骨材の製造方法。
【請求項2】
振動式破砕機によるコンクリート廃材の破砕物のうち、粒径5mm未満の粒子割合が、質量%で(100−コンクリート廃材中の粗骨材含有率)〜{(100−コンクリート廃材中の粗骨材含有率)+10}の範囲内で選択された設定値となるまで破砕する請求項1に記載の再生骨材の製造方法。
【請求項3】
振動式破砕機において少なくとも粒径0.15mm以下の破砕物を空気分級して除去しながら破砕する請求項1又は2に記載の再生骨材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−111523(P2006−111523A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265041(P2005−265041)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(504350821)篠崎建材合資会社 (3)
【出願人】(500153552)ユーラステクノ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】