説明

冠動脈疾患の治療

本発明は、ヒト患者における冠動脈疾患の治療方法であって、医薬として許容できる担体、及びプロモーターと機能可能に連結した血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクター、を含む医薬組成物の投与量を、心筋の異なる位置への複数回注射により虚血性心筋に直接注射することを含む方法であり、それによって冠動脈疾患が治療される方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ヒト患者おける冠動脈疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
冠動脈疾患(CAD)は大きな健康問題である。実際、米国だけで、1200万人を超える人々が冠動脈疾患を有すると推定される(American Heart Association, 2002 Heart and Stroke Statistical Update: Dallas, Tex: American Heart Association(2001)、及びCriqui, M.H., Vasc. Med., 6(3 Suppl.), 3-7(2001))。この驚くべき数に加えて、閉塞性動脈疾患の罹患率は、高齢者の数の増加を考慮すれば、米国や他の国で増加しているようである。閉塞性動脈疾患に罹患した患者の治療は、手術及び経皮的血管再成技術の両方の進歩にもかかわらず、依然として重要な臨床的問題である。動脈閉塞の解剖学的な範囲と分布に起因して、多くの患者は、これらの治療の恩恵を得ることができない。このような患者では、心臓発作を避けるために新たな治療ストラテジーが考えられている。これらの新たな治療ストラテジーの幾つかは、血管増殖を刺激するために病気の患者に増殖因子を送達する遺伝子治療の使用に集中してきた。
【0003】
血管形成(既存の血管からの新たな血管の成長)は、血管基底膜の破壊、内皮細胞の移動及び増殖、並びに、引き続いての血管形成及び成熟を伴う複雑なプロセスである。幾つかのメディエーター(例えば、血管形成刺激因子)は、血管形成応答を誘導することが知られており、そして、これらのメディエーターの投与は、虚血性心筋の血管再形成を促進する。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、内皮細胞に対して殆ど独占的なそのレセプターの局在に起因して、公知の血管形成メディエーターの中で最も具体的なものの1つである。VEGFに対するレセプターは、虚血条件下でアップレギュレートされ、そして組換えVEGFの投与は、側副血管の発達を増強し、心筋の虚血組織の機能を改善する。
【0004】
新しい血管の形成を刺激するための血管形成メディエーターの使用は十分に確立されている。例えば、非虚血性の後腹膜脂肪組織と非虚血性の皮下組織において、VEGFをコードするアデノウイルスベクターを用いてインビボで新血管形成を誘導できることが、研究により原理的に示されている(例えば, Magovernら、Hum. Gene Ther., 8(2), 215-27(1997)、及びLubiatowskiら、Plast. Reconstr. Surg., 110(1), 149-59(2002)参照)。冠動脈疾患において全身投与された組換え蛋白質を用いる薬理学的な血管形成について詳細に行われた大規模治験からのデータが現在利用できる(例えば, Henry, Circulation, 100, A2509(1999), Simonsら、Circulation, 105, 788-793(2002), 及び Ledermanら、American College of Cardiology Scientific Sessions, Orlando, FL(2001)参照)が、臨床的効果に関する問題に取り組む、局所的な遺伝子治療ストラテジー(特に、心筋内注射ストラテジー)を利用する同規模の治験からのデータは報告されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、冠動脈疾患に罹患したヒト患者の有効な治療の必要性が依然として存在する。本発明は、このような治療方法及び該治療方法で有用な医薬組成物を提供する。本発明のこれら及び他の利点、並びに本発明の更なる特徴は、本明細書中で提供される発明の説明から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明は、ヒト患者における冠動脈疾患(CAD)の治療方法を提供する。この方法は、(a)医薬として許容できる担体、及び(b)血管形成ペプチドをコードし、そしてプロモーターと機能可能に連結した核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターを含む、医薬組成物の一投与量を、心筋の異なる位置への複数回注射により、虚血性心筋に直接注射することを含み(ここで、該投与量は、約1x10〜約4x1011の粒子単位(pu)の複製欠損アデノウイルスベクターを含む)、それによって冠動脈疾患が治療される。本発明の方法の結果として、血管形成ペプチドの濃度は、注射の少なくとも24時間後に、注射部位において、全蛋白質の1mg当り少なくとも約100pgの血管形成ペプチドである。本発明はまた、(a)医薬として許容できる担体、及び(b)プロモーターと機能可能に連結した、血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターを含む、医薬組成物(ここで、複製欠損アデノウイルスベクターの濃度は、医薬組成物の1μl当り約1x10〜約5x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターである)を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明の方法は、冠動脈疾患(CAD)の予防的又は治療的処置のために、ヒトにおいて血管形成ペプチドを産生するための効率的かつ安全な治療計画を提供する。用語「冠動脈疾患」とは、心(即ち、心臓)筋、又はその任意の部分への、十分な供給量の血液の送達を妨害する冠動脈の何らかの異常な状態をいう。典型的には、CADは、特に、心臓のために働く大きな及び中間のサイズの動脈における、動脈壁上へのプラークの蓄積(即ち、アテローム性動脈硬化症)によって引き起こされる。虚血の症状であるアンギナは、例えば、通常、突発性(即ち、未知の原因)であるか、又は、コカイン使用などの薬物使用の結果である冠動脈攣縮によって引き起こされ得る。心筋組織の一部に対する十分な血液の欠如によって、その組織が十分な酸素を有さなくなる。換言すれば、心臓組織の一部が虚血になり、それにより、機能不全又は組織細胞死に至り得る。従って、心臓組織は適切に機能せず、恐らく生存しないであろう。虚血性心筋又は心筋の虚血性部分が、虚血性が低くなるように、多量の酸素(例えば、生存及び/又はより適切に機能するために十分な量の酸素)を受け取るように、血管増殖の刺激が本発明の方法によって起こり、それによってCADが治療される。
【0008】
本発明の方法は、例えば、虚血性心筋への血液の灌流のレベルを増大させることによって、CADの治療を提供することに関する。用語「虚血性(虚血)」とは、典型的には、動脈血の供給の妨害又は不十分な血流の結果として、低酸素になった(即ち、十分な血液を欠く)組織をいう。この方法は、(a)医薬として許容できる担体、及び(b)血管形成ペプチドをコードし、そしてプロモーターと機能可能に連結された核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターを含む、医薬組成物の一投与量を、虚血性心筋の異なる位置に直接注射することを含む。この方法は、例えば、カテーテルの使用により、虚血性心筋に医薬組成物を直接注入することを含む。最適な投与ストラテジー、医薬組成物の投与量、及び治療効果が確認された様式を、以下に詳細に記載する。
【0009】
(虚血性心筋)
本発明の方法は、虚血性心筋への血管形成ペプチドをコードする核酸配列の送達を含む。心筋は、3層の筋組織からなる:心外膜(外層)、心筋層(中央層)、及び心内膜(内層)。心筋は、心筋細胞などの細胞を含み、この細胞は、血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターによって感染され得、そしてこの細胞は、血管形成ペプチドを産生するために、この核酸配列を発現させる。好ましくは、虚血性心筋は、血管形成ペプチドが組織に対するその生物活性を発揮できるようなレセプターを含む。さらに、虚血は、組織に栄養を送る脈管構造の閉塞により発生し得る。他方で、虚血は、組織への他の浸襲から発生し得る。例えば、うっ血性心不全は、しばしば、冠動脈疾患の結果であるばかりでなく、閉塞がない場合は、心内膜下の虚血の発生と関連し得る。虚血性心筋の検出は、当該分野で公知の任意の適切な方法を用いて行われ得る。心虚血の診断試験は周知であり、そして、これらとしては、安静時、運動時、又は歩行時の心電図、シンチグラフィ研究(心臓の放射線スキャン)、心エコー検査法、冠血管造影法、及びポジトロン・エミッション・トモグラフィ(PET)が挙げられる。
【0010】
(投与技術)
本発明は、虚血性心筋に対する、血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターを含む医薬組成物の局所的様式による投与を含む。医薬組成物は、心筋の任意の領域(好ましくは、心腔の1つ以上を形成する心組織(即ち、左心房、右心房、左心室、及び右心室))に投与される。医薬組成物が心腔を形成する心組織に投与されるとき、医薬組成物は、好ましくは、心腔の外(即ち、「自由」)壁及び/又は中隔の全体又は一部に投与される。さらに、医薬組成物は、心臓の中隔の全体又は一部に投与される。中隔は、左と右の心室を分離する筋肉壁である。医薬組成物は、左と右の心室の乳頭筋(例えば、前乳頭筋又は後乳頭筋)を含む心臓内の心筋の他の領域に投与され得る。左心室を形成する心組織は、虚血を最も発生しやすい心筋の部分であるという理由で、医薬組成物は、好ましくは、左心室を形成する心組織に投与される。
【0011】
医薬組成物の投与は、心筋の一領域の心組織のみに限定されない。実際、ヒト患者において冠動脈疾患を治療するために患部へ医薬組成物を有効に送達するために、冠動脈疾患の治療には、心筋の2つ以上の領域への医薬組成物の一投与量(あるいは、2以上の投薬量)の投与を必要とし得る。例えば、医薬組成物は、心室と心房、両心房、両心室、心房と中隔、及び/又は心室と中隔(好ましくは、左心室と中隔)を形成する心筋に投与され得る。
【0012】
心筋への医薬組成物の投与の任意の適切な手段が、本発明の状況下で使用できるが、好ましくは、心筋への局所投与が、心筋へ医薬組成物を直接注射することによって達成される。用語「注射(注入)」は、医薬組成物が心筋に強制的に導入されることを意味する。任意の適切な注射デバイスが、本発明の状況下で使用できる。例えば、心筋へ医薬組成物を直接注射するために、一般的な医療シリンジが使用できる。心筋に接近するために、心筋は、外科的手段(例えば、低侵襲手術)の間、このような注射ができるように露出され得る。低侵襲送達デバイスは、より侵襲的な医療手段(開心術など)を避けつつ、心筋への医薬組成物の投与を可能とする。このようなデバイスは、直接接近できない心筋に皮膚を通じて(例えば、5インチ未満の小さな切開を介して)接近できる。低侵襲注射デバイスは、器官(例えば、心臓)の湾曲した外表面への小さな切開を介して接近できるように、可撓性でかつ操縦可能なインジェクターチップを備え得る。非侵襲注射の代替手段としては、Bioject, Inc.から入手できるBiojector 2000 Needle-Free Injection Management System(登録商標)投与デバイスなどの無針注射デバイスの使用が挙げられる。医薬組成物は、カテーテル又はカテーテルを備えるシステム(例えば、Biosense, Inc.から入手できるBiosense(登録商標)心筋内注入デバイスなどの、医薬組成物のカテーテルベースの心筋内注入のためのナビゲーションシステム)を用いて心筋に投与され得る。内視鏡法はカテーテル法と類似しているが、医薬組成物を投与する間の心筋の可視化を可能とする。特定のジオメトリーでの複数回注射を可能とするために、米国特許第5,997,509号及び同第6,322,536号に記載されているようなマーキングシステムが採用され得、その結果、前の注射の部位がはっきりと描画され得る。医薬組成物が、異なるジオメトリーパターンでの複数の適用を介して心筋に投与される場合、強調された心筋及び注射の可視化が特に是認される。
【0013】
医薬組成物の単一投与量が、心筋の異なる位置に対して、医薬組成物の複数回注射により投与される。心筋に医薬組成物を投与するために、任意の適当数の注射が利用され得る。複数回注射は、代表的には、心筋のサイズ、心筋内の虚血組織の位置や範囲、及び疾患の重症度に依存して、約2回の注射から約50回(2から50の間の全ての整数を含む)の適用またはそれ以上の回数に達する。例えば、医薬組成物の単一投与量は、2、3、4、5、6、7、8、9、10回以上の注射(例えば、15、20、25、30、35、40、又は45回の注射)で投与され得る。医薬組成物の投与量は、好ましくは、約15〜約50回の注射(例えば、約10〜約50回の注射)、より好ましくは、約10〜約40回の注射(例えば、約20〜約40回の注射)、及び最も好ましくは、約20〜約30回の注射(例えば、約20〜約25回、又は約30回の注射)で投与される。複数回注射は、心筋内の虚血組織の位置によって規定される特定のジオメトリーに適合するように操作できるという点で、単回注射よりも有利である。医薬組成物の単一投与量の投与は、複数回注射を用いてより良く制御され、そして、任意の一定の投与量が投与される効果が最大となり得る。このようにしてまた、アデノウイルスベクター、及び、最終的には、血管形成ペプチド産生が、心筋又はその特定の領域(心筋の虚血性心組織など)に対して標的化され得る。
【0014】
複数回注射の特定のジオメトリーは、二次元又は三次元のいずれかの空間における、医薬組成物の各注射が投与される心筋上又は心筋内の位置によって規定される。心筋中の虚血組織、及び、望ましくは、少なくとも直に隣接する心組織(虚血性心組織を含む心筋の領域など(例えば、左心室を形成する心組織))において、複製欠損アデノウイルスベクター、及び、最終的には、産生された血管形成ペプチドの十分に広範な分布を生じるような注射パターンが選択される。複数回注射は、好ましくは、注射の位置が約4cmまで(例えば、約0.5〜4cm)、より好ましくは約3cmまで(例えば、約1〜3cm)、そして、最も好ましくは約2cmまで(例えば、約1〜2cm))離れるように、間隔を空けられる。二次元空間における複数回注射の特定のジオメトリーに関して、この特定のジオメトリーは、平面(即ち、心筋の断面)によって規定され、その平面内に複数回注射が位置する。複数回注射によって規定される平面は、心筋の表面から一定の距離(即ち、心筋の表面とほぼ平行)に位置し得るか、又は、この平面は、心筋の表面に対してある角度で位置し得る。好ましくは、一回の注射は、平面の約0.5〜15cm毎、より好ましくは、平面の約1〜12cm毎、そして最も好ましくは、平面の約1.5〜7cm毎に投与される。平面の深さは、注射の経路(例えば心筋内注射)にかかわらず、好ましくは、約1〜10mm、より好ましくは約2〜7mm、最も好ましくは約3〜5mmである。医薬組成物は、好ましくは、例えば、心筋の左心室の自由壁の全体又は一部(好ましくは自由壁の全体)に医薬組成物が投与されるとき、左心室の自由壁の幅の中間の深さ(これは、典型的には、約10mmの厚さである)に注射される。従って、この点に関し、医薬組成物は、好ましくは、左心室の自由壁に関して、(例えば、外部表面又は内部表面から)約5mmの深さに注射される。三次元空間では、一回の注射は、好ましくは、心筋の約50cmまで(例えば、約0.5〜50cm)、より好ましくは心筋の約35cmまで(例えば、約1〜35cm)、そして最も好ましくは心筋の約15cmまで(例えば約3〜15cm)に対して投与される。さらに、複数回注射は、任意の適切なパターン又は特定のジオメトリーを規定し得る。従って、例えば、二次元空間において、複数回注射は正方形を規定し得、他方、三次元空間において、複数回注射は立方体を規定し得る。医薬組成物の一貫性のあるパターン化された適用を補助するために、グリッド又はテンプレートの上張りが注射を誘導する助けとなり、マーキングデバイスは前の注射の位置を記録でき、そして画像化技術が心筋を可視化するために用いられ得る。
【0015】
複数回注射は、各注射の間に任意の適切な時間差を有する任意の適切な時間枠で投与されうるが、複数回注射は、好ましくは、互いが、約30分以内(例えば、約15、20、又は25分以内)、より好ましくは、約10分以内(例えば、約0.5〜10分以内)、より一層好ましくは、約8分以内(例えば、約1〜8分以内)、そして、より一層好ましくは約6分以内(例えば、約3〜6分以内)に投与される。最も好ましくは、医薬組成物の単一投与量の複数回注射の全てが、上記時間枠内で心筋に投与される。所望ならば、複数回注射は、中断されずに(即ち、比較的速く)連続して、又は同時に(例えば、米国特許第5,846,225号に記載されるようなマルチシリンジデバイスの使用を通して)投与され得る。
【0016】
心筋に医薬組成物を投与するとき、投与は、血管形成が心筋中の虚血組織中で及び/又はこの組織に向かって起こるようなものであるのが望ましい。医薬組成物は、例えば、複製欠損アデノウイルスベクターが、血管の閉塞部分及びその間の領域に適度に隣接し、それによって損傷した血管を迂回するような領域と接触するように投与される。得られた側副血管は、血管閉塞に対するバイパスとして機能し、それによって、虚血性心筋、又は、心筋内の少なくとも虚血組織への血流を少なくとも一部回復させる。複製欠損アデノウイルスベクターを側副血管形成の起点及び終点の正確な部位に実際に接触させることが必要であるとは考えられない。しかし、医薬組成物の複数回注射の状況において、複数回注射の特定のジオメトリーは、複製欠損アデノウイルスベクターが、側副血管形成のための起点、終点、及びその間の領域を含む領域に接触又は到達できるように、好ましくは、側副血管形成のための起点及び終点の正確な部位、並びに、心筋中の非虚血組織から虚血組織へのブリッジ、及び/又は、損傷した血管の周りのブリッジを形成するための起点と終点の間の領域に接触できるように規定されるのが望ましい。
【0017】
複数回注射を介する医薬組成物の投与に関する更なる特徴は、国際特許出願公開WO93/32859及びWO01/34179、米国公開特許出願公開2001/0041679 A1、及び米国特許第6,329,348号に記載されている。
【0018】
(投与量)
医薬組成物の投与量、特に、血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターの量は、虚血性心筋のサイズ、心筋での虚血組織の位置及び範囲、任意の副作用の程度などを含む、多数の因子に依存する。投与量は、任意の負の副作用が、望ましくは、最小化されるような量であるか、又は、少なくとも、所望の治療効果との釣り合いがとれる量であるべきである。望ましくは、医薬組成物の単一投与量は、アデノウイルスベクターの少なくとも約1x10粒子単位(粒子又はpuとも言われる)を含む。この投与量は、アデノウイルスベクターの、少なくとも約1x10粒子単位(例えば、約4x10〜約4x1012粒子単位)、少なくとも約1x10粒子単位、少なくとも約1x10粒子単位(例えば、約4x10〜4x1011粒子単位)、少なくとも約1x10粒子単位、又は少なくとも約1x1010粒子単位(例えば、約4x10〜4x1010粒子単位)である。医薬組成物の投与量は、約1x1014粒子単位以下、約1x1013粒子単位以下、約1x1012粒子単位以下、約1x1011粒子単位以下、又は、約1x1010粒子単位以下(例えば、約1x10粒子単位以下)であり得る。換言すれば、医薬組成物の単一投与量は、アデノウイルスベクターの、約1x10粒子単位(pu)、4x10pu、1x10pu、4x10pu、1x10pu、4x10pu、1x10pu、4x10pu、1x1010pu、4x1010pu、1x1011pu、4x1011pu、1x1011pu、4x1011pu、1x1012pu、又は4x1012puを含み得る。医薬組成物の単一投与量は、アデノウイルスベクターの、好ましくは、約1x10〜約4x1011粒子単位、より好ましくは約1x1010〜約9x1010粒子単位、最も好ましくは約2x1010〜約8x1010粒子単位を含む。医薬組成物の単一投与量は、必要に応じて、アデノウイルスベクターの約3x1010〜約5x1010粒子単位(例えば、4x1010粒子単位)を含む。
【0019】
ヒト患者への単一投与量の投与のための複数回注射プロトコルの各適用は、個々の注射の集合が上記の単一投与量に等しいように、医薬組成物の全投与量の概算の分割量を含む。従って、医薬組成物の一投与量を投与するために5回の注射があるならば、各注射における複製欠損アデノウイルスベクターの量は、望ましくは、上記の単一投与量の1/5である。好ましくは、各注射は、血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターの約1x10〜約5x10粒子単位を含む。最も好ましくは、各注射は、アデノウイルスベクターの約1x10〜約2x10粒子単位を含む。本発明の特に好適な実施態様では、アデノウイルスベクターの4x1010puの単一投与量が、医薬組成物の30回の注射を介して投与されるとき、各注射は、アデノウイルスベクターの約1.3x10puを含む。あるいは、アデノウイルスベクターの4x1010puの単一投与量が、医薬組成物の25回の注射を介して投与されるとき、各注射は、アデノウイルスベクターの約1.6x10pu含む。アデノウイルスベクターの4x1010puの単一投与量が、医薬組成物の20回の注射を介して投与されるとき、各注射は、複製欠損アデノウイルスベクターの約2x10puを含む。
【0020】
医薬組成物の単一投与量は、任意の適切な体積を有し得る。医薬組成物の投与量の体積は、望ましくは、約100μl〜約20ml、好ましくは約250μl〜約10ml、より好ましくは500μl(即ち、0.5ml)〜約5ml、そして最も好ましくは約1ml〜約5ml(例えば、約1ml、約2ml、約3ml、約4ml、又は約5ml)である。理想的には、医薬組成物の体積は、約2ml〜約5ml、又は、さらに、約2ml〜約3ml(例えば、約2、2.5、又は3ml)である。医薬組成物の投与量を投与するのに使用される複数回注射の各注射は、任意の適切な体積であり得る。典型的には、各注射は、医薬組成物の約50μl〜約500μlの体積を有する。好ましくは、各注射は、医薬組成物の約50μl〜約150μlの体積を有する。より好ましくは、各注射は、医薬組成物の約75μl〜約125μl(例えば、約100μl)の体積を有する。医薬組成物の単一投与量を投与するのに使用される複数回注射の各注射は、典型的には、個々の注射の集合が、上記の単一投与量の体積に等しいように、投与量の全体積の概算の分割量を含む。
【0021】
医薬組成物の各注射におけるアデノウイルスベクターの濃度は、医薬組成物の投与量(特に、その中のアデノウイルスベクターの濃度)、及びヒト患者へ投与される各注射の体積に依存する。各注射は、好ましくは、医薬組成物の1μl当り約1x10粒子単位〜約5x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む。より好ましくは、各注射は、医薬組成物の1μl当り約1x10粒子単位〜約2x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む。
【0022】
従って、例えば、複製欠損アデノウイルスベクターの4x1010粒子単位の全投与量が、1回の注射当り100μlの体積の30回の注射を介して投与されるとき、1回の注射当りのアデノウイルスベクターの濃度が、医薬組成物の1μl当り約1.3x10puの複製欠損アデノウイルスベクターである。あるいは、同投与量が、1回の注射当り100μlの体積の25回の注射を介して投与されるとき、1回の注射当りのアデノウイルスベクターの濃度は、医薬組成物の1μl当り約1.6x10puの複製欠損アデノウイルスベクターである。1回の注射当り100μl体積の20回の投与を介する、同投与量の投与は、医薬組成物の1μl当り約2x10puの複製欠損アデノウイルスベクターのアデノウイルスベクター濃度となる。
【0023】
従って、例えば、ヒトVEGF121をコードする核酸配列を含むE1A/E1B/E3−欠損アデノウイルスベクター(以下でさらに詳細に記載する)を含む医薬組成物の単一投与量では、約1x10〜約4x1011アデノウイルス粒子(即ち、アデノウイルスベクターの粒子単位)が虚血性心筋に投与される。これらの条件下で、VEGF121蛋白質の全身性投与と関連した負の副作用を生じることなく、かなりのレベルのVEGF121産生が虚血性心筋で達成される。
【0024】
冠動脈疾患の性質が、血管閉塞の完全な防止を妨げる。実際、大部分の慢性疾患に関し、医薬組成物の複数投与量を含む長期治療は、栄養血管(feeding vasculature)の進行性の閉塞によって損傷した虚血性心筋における灌流を再確立することを必要とするかもしれない。従って、本発明の方法は、冠動脈疾患の症状及び/又は影響を少なくとも部分的に逆転させ、そして、患者の生活の質を改善するために、ある期間にわたって医薬組成物の複数投与量の送達をすることが含まれ得る。
【0025】
本発明の方法は、患者における所望の生物的又は治療的な効果を達成するために、他の治療方法と組み合わせて行われ得る。例えば、本発明の方法は、患者における冠動脈疾患を治療するための従来の手術(例えば、患者における血管の外科的修復によって)と併せて(例えば、手術の前、手術の間、又は手術の後)、ヒト患者に対して実施され得る。
【0026】
(治療効果の評価)
冠動脈疾患の治療における本発明の方法の有効性は、閉塞性動脈疾患を追跡するためにクリニックで現在使用されているパラメーターのような、任意の適切なパラメーターを用いて確認され得る。適当なパラメーターとしては、運動負荷心電図(ECG)、運動負荷試験(ETT)、99mTc−sestamibi シングルフォトンエミッションコンピューテッドトモグラフィ(SPECT)、及び生活の質アンケートが挙げられる。これらのパラメーターのいずれは(単独または任意の組合せ)は、本発明に従う冠状動脈疾患の治療の効果を評価するために用いられ得る。上記パラメーター、並びに本発明の治療効果の評価に適した他のパラメーターは、例えば、Braunwaldら、Heart Disease: A Textbook of Cardiovascular Medicine, W.B. Saunders Company, Philadelphia, PA(6th ed. 2001)、及びGibbonsら、J. Am. Coll. Cardiol., 30(1), 260-311(1997)に記載されている。
【0027】
心電図(ECG)は、収縮の間の心臓の電気活動を検出及び記録する。標準的な臨床用ECGは、3つの双極四肢リード、6つの単極前胸部リード、及び3つの改変型単極四肢リードを含む12個のリードからの記録を伴う。ECGベースのデータの評価では、ST−セグメントは、QRS群に直に続いてそしてT波に変わる心電図トレーシングの一部である。心筋虚血の患者において、虚血応答の悪化が重症になるにつれて、ST−セグメントトレーシングは典型的にはより平らである(即ち、正常時よりも水平になる)。連続的な運動によって、ST−セグメントは、ベースラインから逸脱し(即ち、ベースラインから低下する)、そして患者はアンギナを発症し得る。従って、ST−セグメントの低下は、1次パラメーター、及び、必要に応じて、2次パラメーターとして特に興味深い。ECGは、典型的には、冠動脈疾患に関する治療応答を評価するために、本発明の状況下で使用される。
【0028】
運動負荷試験(ETT)によって測定されるパラメーターとしては、本発明の方法による治療の26週間後の、全運動持続時間、レベル2アンギナの発生又はレベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間、peak rate pressure product(心拍数×収縮期血圧)、及び、少なくとも1mm ST−セグメント低下の発生又は少なくとも1mm ST−セグメント低下なしでのETTの終了までの時間が挙げられる。ETT試験に関するアンギナスケールは、4つのレベルのアンギナからなる。レベル1アンギナは、アンギナの発生は緩徐であるが、被検体になじみのある通常の「労作狭心症」の疼痛又は不快感として認識される場合、レベル1アンギナが指定される。レベル2アンギナでは、被験体はレベル1と同じ疼痛を経験する;しかし、この疼痛は中程度の重症度であり、確実に不快であるが、未だ耐えられる。被験体が運動を止めたいと希望するレベルの、重症のアンギナ性疼痛を経験する場合、レベル3アンギナが指定される。レベル4アンギナでは、被験体は、耐えられない胸の痛み(被験体が感じた最も重症な疼痛である)を経験する。
【0029】
99mTc−sestamibi SPECTは、多数の治療評価の評価の中で価値がある。例えば、99mTc−sestamibi SPECTを用いて、合計負荷スコア(summed stress score)を決定でき、このスコアは、負荷後イメージ(post-stress image)によって得られる20のセグメントの低灌流の重症度スコアを合計することによって得られる灌流の半定量的な測度である。重症度スコアは、以下のように定義される:0=正常、1=緩徐に低下又は疑わしい、2=中程度に低下、3=激しく低下、及び4=取り込み無し。99mTc−sestamibi SPECTを用いてまた、合計安静時スコア(summed rest score)(SRS)、又は左心室駆出率(left ventricular ejection fraction)(LVEF)(即ち、1回心拍出量と拡張終期容積の間の割合)を確立できる。99mTc−sestamibi SPECTを用いて、左心室拡張終期容積測定、低灌流の程度、及び可逆的又は不可逆的欠陥を有する心筋のパーセントもまた評価され得る。負荷後イメージ及び安静時イメージにおける20のセグメントの壁運動異常の重症度スコアの平均である全壁運動スコア(global wall motion score)(GWMS)、及び、負荷後イメージ及び安静時イメージにおける20のセグメントの各々の間での低灌流の重症度スコアにおける差異の合計である合計可逆性差スコア(summed reversibility difference score)(SDS)もまた、この技術を用いて可能である。
【0030】
患者に特定のクラスのアンギナを割り当てるために、Canadian Cardiovascular Society(CCS)のアンギナ分類が用いられる。歩行や階段を登るなどの通常の肉体活動がアンギナを引き起こさない場合、患者は、クラスIアンギナを経験している。クラスIアンギナ患者において、アンギナは、作業の際の激しい運動、急速な運度、又は長時間の運動によってのみ起こる。クラスIIアンギナは、「通常活動のわずかな制限」を伴う。クラスIIアンギナ患者では、アンギナは、急速な歩行又は階段の登り、乗越え歩行、食事後、又は、寒い中、風の中、又は感情的ストレス下での、歩行又は階段の登りで生じる。通常のペースかつ通常の条件下で、2ブロックを超える歩行、及び普通の階段の1段を超える登りもまた、クラスIIアンギナの特徴である。患者が「通常の身体活動の顕著な制限」を経験するならば、クラスIIIアンギナが指定される。クラスIIIアンギナ患者では、通常の条件下かつ通常のペースでの、1又は2ブロックの歩行又は1段の階段の登りで生じる。最終的に、患者が「不快感無しに任意の身体活動うことができず、そしてアンギナ症候群が安静時に存在し得る状態」を経験するならば、クラスIVアンギナを有すると言われる。
【0031】
生活の質アンケートは、ETT測定を補足するために開発され、患者報告型のアンギナ評価を提供する。Seattle Angina Questionnaire(SAQ)は、アンギナに関する生活の質についての患者の見解を評価するために使用される、自己管理アンケートである。SAQは5つのスケールからなる:肉体的限界、アンギナ安定性、アンギナ頻度、治療満足度、及び疾患認知/生活の質、それらの各々は変換され、報告されたスコアは0〜100の範囲で分類される。各々のスケールのスコアは個々に報告され、そしてスコアが高くなるほど、健康に関する生活の質がより良いことを示す(例えば、Spertusら、JACC, 25(2), 333-341(1995)参照)。この中で確認されるアンケートの全ては、患者の治療効果に対する、2次的な患者の機能的状態の変化を決定するときの、2次的な効果パラメーターとして使用するのに特に適切である。
【0032】
本発明の方法から得られる治療効果は、任意の適切な様式で確認でき、そして、望ましくは、上記パラメーターの任意の1つ以上に関する追跡値をベースライン値と比較することによって確認される。「ベースライン値」は、本発明の治療前に記録されるベースライン研究で行われた各パラメーターに関して決定された値を意味する。「追跡値」は、本発明の治療後の適当な時間(例えば、治療の、1週間後、6週間後、12週間後、26週間後、36週間後、48週間後、又は52週間後)に記録される、ベースライン研究と同じパラメーターに関して決定される値を意味する。典型的には、複数の追跡研究が行われ、そして、同じパラメーターに関して複数の追跡値が、治療後の異なる時期(例えば、治療の、1週間後、6週間後、12週間後、26週間後、36週間後、48週間後、及び52週間後の2つ以上)で確かめられる。適切な時期は、臨床医によって決定され得る。
【0033】
望ましくは、本発明の方法に従って、ヒト患者における冠動脈疾患の治療は、以下の結果の1つ以上によって証明される:(a)治療前の運動負荷心電図(ECG)での少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間と比べて、治療後12週間の、ECGでの少なくとも1mmのSTセグメント低下の発生までの時間、又は少なくとも1mmのSTセグメント低下なしでの運動負荷試験(ETT)の終了までの時間の、少なくとも5%の増大、好ましくは少なくとも10%の増大(例えば、少なくとも15%の増大);(b)治療前のECGでの少なくとも1mmのSTセグメント低下の発生までの時間と比べて、治療26週間後の、ECGでの少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間、又は少なくとも1mmの付加的STセグメント低下なしでのETTの終了までの時間の、少なくとも20%の増大、好ましくは少なくとも25%の増大(例えば、少なくとも28%の増大);(c)治療前のECGでの少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間と比べて、治療12週間後の、ECGでの少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間、又は少なくとも1mmの付加的STセグメント低下なしでのETTの終了までの時間の、少なくとも20秒の増加、好ましくは少なくとも30秒の増加、そして、より好ましくは少なくとも45秒の増加(例えば、少なくとも1分);(d)治療前のECGでの少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間と比べて、治療26週間後の、ECGでの少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間、又は少なくとも1mmの付加的STセグメント低下なしでのETTの終了までの時間の、少なくとも20秒の増加、好ましくは少なくとも30秒の増加、そして、より好ましくは少なくとも45秒の増加(例えば、少なくとも1分);(e)治療前の発生までの時間と比べて、治療12週間後の、レベル2アンギナの発生までの時間、又はレベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間の、少なくとも10%の増大、好ましくは少なくとも20%の増大(例えば、少なくとも22%の増大);(f)治療前の発生までの時間と比べて、治療26週間後の、レベル2アンギナの発生までの時間、又はレベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間の、少なくとも20%の増大、好ましくは少なくとも30%の増大(例えば少なくとも37%の増大);(g)治療前の発生までの時間と比べて、治療12週間後の、レベル2アンギナの発生までの時間、又はレベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間の、少なくとも30秒の増加、好ましくは少なくとも45秒の増加、そして、より好ましくは少なくとも1分の増加(例えば、少なくとも1.5分の増加);(h)治療前の発生までの時間と比べて、治療26週間後の、レベル2アンギナの発生までの時間、又はレベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間の、少なくとも30秒の増加、好ましくは少なくとも45秒の増加、そしてより好ましくは少なくとも1分の増加(例えば少なくとも1.5分の増加);(i)治療前のETTの間の全運動負荷持続時間と比べて、治療12週間後のETTの間の全運動負荷持続時間の、少なくとも5%の増大、好ましくは少なくとも7%の増大;並びに(j)治療前のETTの間の全運動負荷持続時間と比べて、治療26週間後のETTの間の全運動負荷持続時間の、少なくとも10%の増大、好ましくは少なくとも15%の増大(例えば、少なくとも16%の増大);(k)治療前のETTの間の全運動負荷持続時間と比べて、治療12週間後のETTの間の全運動負荷持続時間の、少なくとも20秒の増大、好ましくは少なくとも30秒の増大、そしてより好ましくは少なくとも45秒の増大(例えば、少なくとも1分の増大);並びに(l)治療前のETTの間の全運動負荷持続時間と比べて、治療26週間後のETTの間の全運動負荷持続時間の、少なくとも20秒の増大、好ましくは少なくとも30秒の増大、そしてより好ましくは少なくとも45秒の増大(例えば、少なくとも1分の増大)。
【0034】
さらに、ヒト患者における冠動脈疾患の治療は、ETTの間のアンギナの発生までの時間の改善によって証明される。このことに関して、ETTの間のアンギナの発生までの時間の、少なくとも1分の増加、好ましくは少なくとも3分の増加(例えば、少なくとも4分の増加、又は少なくとも5分の増加)は、本発明の治療の治療的利益を証明し得る。治療的利益はまた、Canadian Cardiovascular Society(CCS)のアンギナ分類によって評価され得る。このことに関して、さらに、ヒト患者における冠動脈疾患の治療は、治療前のアンギナクラスと比較して、治療の12週間後の、CCSアンギナ分類によって割り当てられる少なくとも1つのアンギナクラスの減少、及び/又は、治療26週間後の、少なくとも2つのアンギナクラスの減少によって証明される。
【0035】
Seattle Angina Questionnaire(SAQ)などの生活の質アンケートに関し、本発明の治療の治療的利益は、アンギナ安定性スコア(angina stability score)、アンギナ頻度スコア(angina frequency score)、及び/又は疾患認知スコア(disease perception score)によって証明され得る。従って、さらに、ヒト患者における冠動脈疾患の治療は、以下により証明される:(a)治療前のヒト患者によって報告されたアンギナ安定性スコアと比べて、治療6週間後のヒト患者によって報告されたSAQアンギナ安定性スコアの、少なくとも50%の増大、好ましくは少なくとも60%の増大、そして、より好ましくは70%の増大(例えば、少なくとも74%の増大);(b)治療前のヒト患者によって報告されたアンギナ安定性スコアと比べて、治療12週間後のヒト患者によって報告されたSAQアンギナ安定性スコアの、少なくとも50%の増大、好ましくは少なくとも70%の増大、そしてより好ましくは80%の増大(例えば、少なくとも87%の増大);(c)治療前のヒト患者によって報告されたアンギナ安定性スコアと比べて、治療26週間後のヒト患者によって報告されたSAQアンギナ安定性スコアの、少なくとも50%の増大、好ましくは少なくとも60%の増大、そしてより好ましくは70%の増大(例えば、少なくとも76%の増大);(d)治療前のヒト患者によって報告されたアンギナ安定性スコアと比べて、治療6週間後のヒト患者によって報告されたSAQアンギナ安定性スコアの、少なくとも10ポイントの増加、好ましくは少なくとも20ポイントの増加、そしてより好ましくは25ポイントの増加(例えば、少なくとも30ポイントの増加);(e)治療前のヒト患者によって報告されたアンギナ安定性スコアと比べて、治療12週間後のヒト患者によって報告されたSAQアンギナ安定性スコアの、少なくとも10ポイントの増加、好ましくは少なくとも20ポイントの増加、そしてより好ましくは25ポイントの増加(例えば、少なくとも30ポイントの増加);並びに/あるいは、(f)治療前のヒト患者によって報告されたアンギナ安定性スコアと比べて、治療26週間後のヒト患者によって報告されたSAQアンギナ安定性スコアの、少なくとも10ポイントの増加、好ましくは少なくとも20ポイントの増加、そしてより好ましくは25ポイントの増加(例えば、少なくとも30ポイントの増加)。さらに、ヒト患者における冠動脈疾患の治療は、以下により証明される:(a)治療前のヒト患者によって報告されたアンギナ頻度スコアと比べて、治療6週間後のヒト患者によって報告されたSAQアンギナ頻度スコアの、少なくとも50%の増大、好ましくは少なくとも70%の増大、そしてより好ましくは少なくとも80%の増大(例えば、少なくとも87%の増大);(b)治療前のヒト患者によって報告されたアンギナ頻度スコアと比べて、治療12週間後のヒト患者によって報告されたSAQアンギナ頻度スコアの、少なくとも50%の増大、好ましくは少なくとも60%の増大、そしてより好ましくは少なくとも70%の増大(例えば、少なくとも72%の増大);(c)治療前のヒト患者によって報告されたアンギナ頻度スコアと比べて、治療26週間後のヒト患者によって報告されたSAQアンギナ頻度スコアの、少なくとも50%の増大、好ましくは少なくとも60%の増大、そしてより好ましくは少なくとも70%の増大(例えば、少なくとも73%の増大);(d)治療前のヒト患者によって報告されたアンギナ頻度スコアと比べて、治療6週間後のヒト患者によって報告されたSAQアンギナ頻度スコアの、少なくとも10ポイントの増加、好ましくは少なくとも15ポイントの増加、そしてより好ましくは少なくとも20ポイントの増加(例えば、少なくとも25ポイントの増加);(e)治療前のヒト患者によって報告されたアンギナ頻度スコアと比べて、治療12週間後のヒト患者によって報告されたSAQアンギナ頻度スコアの、少なくとも10ポイントの増加、好ましくは少なくとも15ポイントの増加、そしてより好ましくは少なくとも20ポイントの増加(例えば、少なくとも25ポイントの増加);並びに/あるいは、(f)療前のヒト患者によって報告されたアンギナ頻度スコアと比べて、治療26週間後のヒト患者によって報告されたSAQアンギナ頻度スコアの、少なくとも10ポイントの増加、好ましくは少なくとも15ポイントの増加、そしてより好ましくは少なくとも20ポイントの増加(例えば、少なくとも25ポイントの増加)。同様に、さらに、ヒト患者における冠動脈疾患の治療は、以下により証明される:(a)治療前のヒト患者によって報告された疾患認知スコアと比べて、治療6週間後のヒト患者によって報告されたSAQ疾患認知スコアの、少なくとも25%の増大、好ましくは少なくとも30%の増大、そしてより好ましくは少なくとも40%の増大(例えば、少なくとも45%の増大);(b)治療前のヒト患者によって報告された疾患認知スコアと比べて、治療12週間後のヒト患者によって報告されたSAQ疾患認知スコアの、少なくとも50%の増大、好ましくは少なくとも60%の増大、そしてより好ましくは少なくとも70%の増大(例えば、少なくとも72%の増大);(c)治療前のヒト患者によって報告された疾患認知スコアと比べて、治療26週間後のヒト患者によって報告されたSAQ疾患認知スコアの、少なくとも50%の増大、好ましくは少なくとも60%の増大、そしてより好ましくは少なくとも70%の増大(例えば、少なくとも80%の増大);(d)治療前のヒト患者によって報告された疾患認知スコアと比べて、治療6週間後のヒト患者によって報告されたSAQ疾患認知スコアの、少なくとも5ポイントの増加、好ましくは少なくとも10ポイントの増加、そしてより好ましくは少なくとも15ポイントの増加(例えば、少なくとも17ポイントの増加);(e)治療前のヒト患者によって報告された疾患認知スコアと比べて、治療12週間後のヒト患者によって報告されたSAQ疾患認知スコアの、少なくとも10ポイントの増加、好ましくは少なくとも15ポイントの増加、そしてより好ましくは少なくとも20ポイントの増加(例えば、少なくとも25ポイントの増加);及び/又は、(f)治療前のヒト患者によって報告された疾患認知スコアと比べて、治療26週間後のヒト患者によって報告されたSAQ疾患認知スコアの、少なくとも10ポイントの増加、好ましくは少なくとも15ポイントの増加、そしてより好ましくは少なくとも20ポイントの増加(例えば、少なくとも25ポイントの増加)。
【0036】
ヒト患者における冠動脈疾患の治療は、望ましくは、上記結果の1つ以上(任意の組合せ)によって証明されるが、参考試験及び/又は他の試験の、代替又は追加の結果も、治療効果を証明できる。
【0037】
(アデノウイルスベクター)
任意の起源に由来するアデノウイルス、任意のサブタイプ、サブタイプの混合物、又は任意のキメラアデノウイルスは、複製欠損アデノウイルスベクターのウイルスゲノムの供給源として使用できる。複製欠損アデノウイルスベクターのウイルスゲノムの供給源として、ヒトアデノウイルスが好適に使用される。アデノウイルスは、任意の亜群又は血清型であり得る。例えば、アデノウイルスは、A亜群(例えば、血清型12、18、及び31)、B亜群(例えば、血清型3、7、11、14、16、21、34、35、及び50)、C亜群(例えば、血清型1、2、5、及び6)、D亜群(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22〜30、32、33、36〜39、及び42〜48)、E亜群(例えば、血清型4)、F亜群(例えば、血清型40及び41)、非分類血清型(例えば、血清型49及び51)、又は任意の他のアデノウイルス血清型であり得る。アデノウイルス血清型1〜51は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手できる。好ましくは、アデノウイルスベクターは、C亜群、特に血清型2、又は一層望ましくは血清型5である。
【0038】
「複製欠損」は、アデノウイルスベクターが、少なくとも1つの複製に必須の遺伝子機能を欠く(即ち、その結果、アデノウイルスベクターは、典型的な宿主細胞(特に、本発明の治療の過程でアデノウイルスベクターによって感染され得るヒト患者の細胞)で複製しない)アデノウイルスゲノムを含むことを意味する。本明細書中で使用される場合、遺伝子、遺伝子機能、又は遺伝子もしくはゲノム領域の欠損とは、遺伝子の機能を損なうか又は消滅させるために、ウイルスゲノムの十分な遺伝物質の欠失(その核酸配列が全て又は部分的に欠失している)と定義される。ある遺伝子領域全体の欠失は、しばしば、複製に必須の遺伝子機能の破壊には必要ではない。しかし、1つ以上の導入遺伝子のために、アデノウイルスゲノム内に十分なスペースを提供する目的で、遺伝子領域の大部分の除去が好適であり得る。複製に必須の遺伝子機能は、複製(例えば、増殖)に必要な遺伝子機能であり、そして、例えば、アデノウイルス初期領域(adenoviral early regions)(例えば、E1、E2、及びE4領域)、後期領域(late regions)(例えば、L1−L5領域)、ウイルスパッケージングに関与する遺伝子(例えば、IVa2遺伝子)、及びウイルス関連RNA(例えば、VA−RNA−1及び/又はVA−RNA−2)によってコードされる。より好ましくは、複製欠損アデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムの1つ以上の領域の少なくとも1つの複製に必須の遺伝子機能を欠損したアデノウイルスゲノムを含む。好ましくは、アデノウイルスベクターは、ウイルス複製に必要なアデノウイルスゲノムのE1領域の少なくとも1つの遺伝子機能が欠損している(E1欠損アデノウイルスベクターと示される)。E1領域でのこのような欠損に加えて、組換えアデノウイルスはまた、国際特許出願公開WO00/00628に記載のように、主要後期プロモーター(major late promoter)(MLP)の変異を有し得る。最も好ましくは、アデノウイルスベクターは、E1領域の少なくとも1つの複製に必須の遺伝子機能(望ましくは、全ての、複製に必須の遺伝子機能)の欠損、及び、非必須E3領域の少なくとも一部の欠損(例えば、E3領域のXbaI欠失)である(E1/E3欠損アデノウイルスベクターと表される)。E1領域に関し、アデノウイルスベクターは、E1A領域の一部もしくは全部、及びE1B領域の一部もしくは全部、例えば、E1A領域及びE1B領域の各々の少なくとも1つの複製に必須の遺伝子機能の欠損であり得る。アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムの1つの領域において、少なくとも1つの複製に必須の遺伝子機能を欠損しているとき(例えば、E1−又はE1/E3−欠損アデノウイルスベクター)、アデノウイルスベクターは、「単一複製欠損」といわれる。特に好適な単一複製欠損アデノウイルスベクターは、本明細書の実施例で記載されるものである;しかし、本発明の状況下で使用するための、別の好適な単一複製欠損アデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムのE1領域全体、及びE3領域の一部(即ち、ヌクレオチド355〜3,511及び28,593〜30,470)の欠失を含む。本発明の状況下で使用するために、特に好適なアデノウイルスベクターは、約ヌクレオチド56〜3,329及び28,594〜30,469(アデノウイルス血清型5ゲノムに基く)が欠失している。あるいは、アデノウイルスベクターゲノムは、好ましくは、約ヌクレオチド356〜3,510及び28,593〜30,470(アデノウイルス血清型5のゲノムに基く)が欠失している。欠失したヌクレオチド部分を規定する終点は、正確に決定するのが難しく、典型的には、アデノウイルスベクターの性質に対して有意な影響を与えない(即ち、上記ヌクレオチド数の各々は、+/−1、2、3、4、5、又はさらに、10もしくは20ヌクレオチドであってもよい)。例えば、アデノウイルスベクターは、配列番号1のヌクレオチド配列を含む。
【0039】
アデノウイルスベクターは、「多重複製欠損」であり得、これは、アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムの2つ以上の領域の各々で、1つ以上の複製に必須の遺伝子機能を欠損していることを意味する。例えば、上記E1欠損又はE1/E3欠損アデノウイルスベクターはさらに、以下の少なくとも1つの複製に必須の遺伝子機能を欠損していてもよい:E4領域(E1/E4−又はE1/E3/E4−欠損アデノウイルスベクターと示される)、及び/又はE2領域(E1/E2−又はE1/E2/E3−欠損アデノウイルスベクターと示される)、好ましくはE2A領域(E1/E2A−又はE1/E2A/E3−欠損アデノウイルスベクターと示される)。E4欠損の場合、アデノウイルスベクターゲノムは、例えば、必要に応じて、E1領域(例えば、ヌクレオチド356〜3,329又はヌクレオチド356〜3,510)の欠失及び/又はE3領域(例えば、ヌクレオチド28,594〜30,469又はヌクレオチド28,593〜30,470)の欠失に加えて、ヌクレオチド32,826〜35,561(アデノウイルス血清型5のゲノムに基く)の欠失を含む。アデノウイルスベクターは、(特に、E1及びE4の複製に必須の遺伝子機能において)多重複製欠損である場合、好ましくは、単一複製欠損アデノウイルスベクター(特にE1欠損アデノウイルスベクター)によって達成されるものと類似した、相補細胞株(complementing cell line)におけるウイルス増殖を提供するためのスペーサー要素を含む。アデノウイルスベクターでのスペーサーの使用は、例えば、米国特許第5,851,806号及び国際特許出願公開WO97/21826に記載されている。
【0040】
望ましくは、アデノウイルスベクターは、多くとも、複製(即ち、増殖)のために、アデノウイルスゲノムのE1、E2A、及び/又はE4領域の複製に必須の遺伝子機能の補完を必要とする。しかし、アデノウイルスが欠損し、かつ、例えば、相補細胞及び/又は破壊された複製に必須の遺伝子機能をコードする外来DNA(例えば、ヘルパーアデノウイルス)を用いて増殖され得る限り、アデノウイルスゲノムは、実務家によって所望されるような、1つ以上の複製に必須の遺伝子機能を破壊するように改変され得る。このことに関して、アデノウイルスベクターは、アデノウイルスゲノムの初期領域のみ、アデノウイルスゲノムの後期領域のみ、及びアデノウイルスゲノムの初期と後期領域の両方、の複製に必須の遺伝子機能を欠いている。アデノウイルスベクターはまた、本質的にアデノウイルスゲノム全体を除去されてもよく、その場合、少なくとも、ウイルス逆末端リピート(ITR)及び1つ以上のプロモーターか、またはウイルスITR及びパッケージングシグナルのいずれかが、インタクトなまま(即ち、アデノウイルスアンプリコン)であるのが好ましい。多重複製欠損アデノウイルスベクターを含む、適切な複製欠損アデノウイルスベクターは、米国特許第5,837,511号、同第5,851,806号、同第5,994,106号、及び同第6,579,522号、米国特許出願公開2001/0043922 A1、同2002/0004040 A1、同2002/0031831 A1、及び同2002/0110545 A1、並びに、国際特許出願公開WO95/34671、WO97/12986、及びWO97/21826に開示されている。理想的には、医薬組成物は、複製コンピテントなアデノウイルス(RCA)夾雑物を実質的に含まない(例えば、医薬組成物は、約1%未満のRCA夾雑物を含む)。最も望ましくは、医薬組成物は、RCAを含まない。RCAを含まないアデノウイルスベクター組成物及びストックは、米国特許第5,944,106号、及び同第6,482,616号、米国特許出願公開2002/0110545 A1、並びに国際特許出願公開WO95/34671に記載されている。理想的には、国際特許出願公開WO03/040314にさらに記載されているように、アデノウイルスベクターが、アデノウイルスゲノムの別の領域の他の複製に必須の遺伝子機能の欠損と組合せたE1欠損である場合、医薬組成物はまた、E1−復帰突然変異体を含まない。
【0041】
複製に必須の遺伝子機能をコードするアデノウイルス配列の改変(例えば、欠失、変異、又は置換)に加えて、アデノウイルスゲノムは、良性又は非致死性の改変(即ち、このような改変が、その他では複製に必須の遺伝子機能を含むアデノウイルスゲノムの領域にあっても、アデノウイルスを複製欠損にしないか、又は、望ましくは、ウイルス機能及び/又はウイルス蛋白質の産生に有害な影響を与えない改変)を含み得る。このような改変は通常、DNA操作から生じるか、又は、発現ベクター構築を容易にするのに役立つ。例えば、アデノウイルスゲノム内で制限酵素部位の除去又は導入を行うことは利点であり得る。このような良性の変異は、しばしば、ウイルス機能に対する検出可能な有害な効果を有していない。例えば、アデノウイルスベクターは、ヌクレオチド10,594及び10,595(アデノウイルス血清型5ゲノムに基く)(これらは、VA−RNA−1転写に関連するが、その欠失は、VA−RNA−1産生を妨げない)の欠失を含みる。
【0042】
さらに、アデノウイルスベクターのコート蛋白質は、野生型コート蛋白質に対する中和抗体によって認識されるアデノウイルスベクターの能力又は無能力を減少するように改変できる。同様に、アデノウイルスベクターのコート蛋白質は、潜在性な宿主細胞上のウイルスレセプターへのアデノウイルスベクターの結合特異性又は認識を変えるように操作され得る。このような操作としては、ファイバー、ペントン、ヘキソン、pIIIa、pVI、及び/又はpIXの領域の欠失もしくは置換、コート蛋白質の一部への種々の天然又は非天然のリガンドの挿入などが挙げられる。コート蛋白質の操作は、アデノウイルスベクターが感染する細胞の範囲を拡大し得るか、又は特定の細胞型に対するアデノウイルスベクターのターゲティングを可能にし得る。アデノウイルスベクターの潜在的な宿主細胞を認識する能力は、コート蛋白質の遺伝子操作無しに、即ち、二重特異性分子の使用を通じて調節され得る。例えば、ペントンベース−もしくはファイバー−結合ドメイン、及び特定の細胞表面結合部位に選択的に結合するドメインを含む、二重特異性分子とのアデノウイルスの複合体形成は、特定の細胞型に対するアデノウイルスベクターのターゲティングを可能とする。
【0043】
アデノウイルスベクターへの適当な改変は、米国特許第5,543,328号、同第5,559,099号、同第5,712,136号、同第5,731,190号、同第5,756,086号、同第5,770,442号、同第5,846,782号、同第5,871,727号、同第5,885,808号、同第5,922,315号、同第5,962,311号、同第5,965,541号、同第6,057,155号、同第6,127,525号、同第6,153,435号、同第6,329,190号、同第6,455,314号、及び同第6,465,253号、米国出願公開2001/0047081 A1、同2002/0099024 A1、及び同2002/0151027 A1、並びに、国際特許出願公開WO95/02697、WO95/16772、WO95/34671、WO96/07734、WO96/22378、WO96/26281、WO97/20051、WO98/07865、WO98/07877、WO98/40509、WO98/54346、WO00/15823、WO01/58940、及びWO01/92549に記載されている。アデノウイルスベクターの構築及び増殖は当該分野で十分に理解されている。アデノウイルスベクターは、例えば、米国特許第5,965,358号、同第5,994,128号、同第6,033,908号、同第6,168,941号、同第6,329,200号、同第6,383,795号、同第6,440,728号、同第6,447,995号、及び同第6,475,757号、米国出願公開2002/0034735 A1、並びに、国際特許出願公開WO98/53087、WO98/56937、WO99/15686、WO99/54441、WO00/12765、WO01/77304、及びWO02/29388、並びに本明細書中に記載の他の参考文献に示される材料及び方法を用いて、構築、増殖(例えば、293細胞株、Per.C6細胞株、又は293−ORF6細胞株などの相補細胞株を用いる)、及び/又は精製され得る。さらに、多数のアデノウイルスベクターが市販されている。
【0044】
核酸配列は、望ましくは、発現カセット、即ち、核酸配列(例えば、1つ以上の制限部位)のサブクローニング及び回収、又は、核酸配列(例えば、ポリアデニル化又はスプライス部位)の発現を容易にする機能を有する特定のヌクレオチド配列の一部として存在する。核酸配列は、好ましくは、アデノウイルスゲノムのE1領域に位置する(例えば、E1領域の全部又は一部を置換する)。例えば、E1領域は、血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含むプロモーター変動発現カセット(promoter variable expression cassette)によって置換され得る。発現カセットは、好ましくは、3’−5’配向で挿入され、例えば、発現カセットの転写の方向は、周りの隣接するアデノウイルスゲノムの方向とは反対となるように方向付けられる。血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む発現カセットに加えて、アデノウイルスベクターは、他の産物をコードする核酸配列を含む他の発現カセットを含み得る。該カセットは、アデノウイルスゲノムの任意の欠失領域と交換され得る。アデノウイルスゲノムへの(例えば、ゲノムのE1領域への)発現カセットの挿入は、公知の方法によって(例えば、アデノウイルスゲノムの所定位置での固有の制限部位の導入によって)容易にすることができる。上記のように、好ましくは、アデノウイルスベクターのE3領域の全部又は一部もまた欠失される。
【0045】
好ましくは、血管形成ペプチドをコードする核酸配列は、血管形成ペプチドコード配列の3’に(このコード配列の転写の方向に)位置するポリアデニル化配列などの転写終結領域をさらに含む。最適化された合成配列、並びに、BGH(ウシ成長ホルモン)、ポリオーマウイルス、TK(チミジンキナーゼ)、EBV(エプスタインバーウイルス)、ヒト肉腫ウイルス40、及びパピローマウイルス(ヒトパピローマウイルス及びBPV(ウシパピローマウイルス)を含む)のポリアデニル化配列を含む、任意の適切なポリアデニル化配列を使用できる。好適なポリアデニル化配列は、SV40(シミアンウイルス40)ポリアデニル化配列である。
【0046】
好ましくは、血管形成ペプチドをコードする核酸配列は、例えば、プロモーター変動発現カセットの一部として、1つ以上のプロモーター及び/又はエンハンサー要素と機能可能に連結される(即ち、その転写制御下にある)。配列を機能可能に連結する技術は、当該分野で周知である。任意の適切なプロモーター配列又はエンハンサー配列が、本発明の状況下で使用され得る。適切なウイルスプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(例えば、CMV極初期プロモーター(例えば、米国特許第5,168,062号及び同第5,385,839号に記載される))、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来のプロモーター(例えば、HIV長末端反復プロモーター)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター(例えば、RSV長末端反復)、マウス乳腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HSVプロモーター(例えば、Lap2プロモーター又はヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、Proc. Natl. Acad. Sci., 78, 144-145(1981))、SV40又はエプスタインバーウイルス由来のプロモーター、アデノ随伴ウイルスプロモーター(例えば、p5プロモーター)などが挙げられる。好ましくは、プロモーターはCMV極初期プロモーターである。好適なCMVエンハンサー/プロモーター転写制御配列は、CMVウイルスエンハンサー、CAATボックス、TATAボックス、転写開始部位、及び5’スプライス部位配列を含む。CMV配列には、(発現カセットの転写の方向に)144塩基対の人工の非翻訳領域(UTR)及び3’スプライス部位配列が続く。血管形成因子をコードする核酸のオープンリーディングフレームは、3’スプライス部位配列及びSV40初期ポリアデニル化シグナル(これらは、転写を終結するために、オープン・リーディング・フレームの3’に位置付けられ得る)に続き得る。
【0047】
アデノウイルスベクターは、血管形成ペプチドをコードするもの以外の異種核酸配列を含み得る。更なる核酸配列(即ち、導入遺伝子)が予防的又は治療的利益を与えるならば、この核酸配列は、RNA又は蛋白質のレベルで効果をその発揮し得る。更なる核酸配列は、好ましくは、国際特許出願公開WO02/22176に記載のように、血管形成の異なるモデュレーターである。あるいは、更なる核酸配列は、アンチセンス分子、リボザイム、スプライシング又は3’プロセシング(例えば、ポリアデニル化)に影響を与える蛋白質、あるいは、例えば、mRNAの蓄積もしくは輸送の速度の変更、又は転写後の制御における変更を媒介することにより、細胞内での別の遺伝子の発現レベルに影響を与える蛋白質(即ち、遺伝子発現が、転写の開始からプロセスされた蛋白質の産生までの全工程を含むと広く考えられる)をコードし得る。更なる核酸配列は、併用治療のためのキメラ蛋白質をコードし得る。更なる核酸配列はまた、血管形成ペプチドとは異なる標的に作用する因子をコードし得、それによって多因性の虚血治療を提供する。あるいは、更なる核酸配列は、血管形成ペプチドの効果を増大する因子をコードし得る。
【0048】
(血管形成核酸配列)
複製欠損アデノウイルスベクターは、血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含み、ヒト患者において(特に本発明に従って治療されるヒト患者の心筋において)、血管形成ペプチドを産生するように発現される。好ましくは、血管形成ペプチドは、ヒト血管形成ペプチドである。血管形成ペプチドは、ヒト患者における血管形成効果を有する。血管形成は、幾つかの制御された血管形成過程に依存する複雑な生物学的現象である。新しい血管の刺激に関与する任意の生物学的プロセス(例えば、基底膜破壊、細胞増殖、細胞移動、血管壁成熟、腔形成、血管拡張、メディエーターの産生、血管の枝分かれなど)は、血管形成ペプチドによって達成又は調節できる「血管形成効果」である。好ましくは、血管形成ペプチドは、標的分子に作用することによって血管形成プロセスを調節する。標的分子は、例えば、レセプター(例えば、増殖因子レセプター)、細胞内シグナル伝達分子、遺伝子、遺伝子産物(mRNAと蛋白質など)、及び化学メディエーターを指す。
【0049】
さらに、血管形成ペプチドは、好ましくは、標的分子に作用するので、血管形成ペプチドは、望ましくは、細胞シグナル伝達経路に作用する。異なる血管形成プロセスは、異なるエフェクター分子及び調節のためのシグナル伝達経路に依存する。例えば、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、及び血小板由来増殖因子(PDGF)などの増殖因子は、チロシンキナーゼファミリーレセプター系を介し作用し、シグナルを細胞核に伝達する。増殖因子、増殖因子レセプター、及びそれらの対応するシグナル伝達経路は、Handbook of Experimental Pharmacology, Spawn & Roberts, Eds., V95, Springer-Verlag(1990)に記載されている。低酸素誘導因子−1α(HIF−1α)とPR39などの転写因子は、チロシンキナーゼレセプターを介して作用せず、代わりに、DNAに直接作用して、血管形成のポジティブ制御因子の産生を促進する。ヘパリン結合神経栄養因子(HBNF)は、ウロキナーゼの産生をアップレギュレートすることによって作用し、それによって血管形成を促進する。
【0050】
典型的には、血管形成ペプチドは、血管形成を刺激できる、即ち、新しい血管の形成及び/又は質を助けるペプチドである。「血管形成を刺激する」とは、血管形成が開始されるか、又は増大されるかのいずれかを意味する。従って、例えば、血管形成が起こっていない場合、血管形成が開始され得る。しかし、血管形成が既に起こっている場合、血管形成は、増大または増強され得る。血管形成の刺激因子は、米国特許第5,194,596号、同第5,219,739号、同第5,338,840号、同第5,532,343号、同第5,169,764号、同第5,650,490号、同第5,643,755号、同第5,879,672号、同第5,851,797号、同第5,843,775号、及び同第5,821,124号;国際特許出願公開WO95/24473及びWO98/44953;欧州特許公報第476 983号,同第506 477号、及び同第550 296号;日本特許公報第1038100号、同第2117698号、同第2279698、及び同第3178996号;J. Folkmanら、Nature, 329, 671(1987); Fernandezら、Circulation Research, 87, 207-213(2000)、及びMoldovanら、Circulation Research, 87, 378-384(2000);に多様に記載されている。
【0051】
好ましくは、血管形成ペプチドは、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、又はVEGF−DなどのVEGF(特にヒトVEGF)である。VEGF−Bは、2つのイソ型(即ち、VEGF167及びVEGF185)として産生され、これはまた、VEGF−Aに加えて、Flt−1/VEGFR−1と結合するようである。これは、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクティベーターとプラスミノーゲンアクティベーターインヒビター1の発現と活性の調節により、細胞外マトリックスの分解、細胞接着、及び移動の制御において役割を果たすかもしれない(例えば、Pepperら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(20), 11709-11714(1998)参照)。VEGF−Cは、VEGFR−3/Flt−4のリガンドとして元々クローン化され、それは主に、リンパ内皮細胞によって発現される。その十分にプロセスされた形態では、VEGF−Cはまた、KDR/VEGFR−2と結合し、そしてインビトロで内皮細胞の増殖と遊走を刺激し、そしてインビボモデルで血管形成を刺激する(例えば、Lymboussakiら、Am. J. Pathol., 153(2), 395-403(1998)、及びWitzenbichlerら、Am. J. Pathol., 153(2), 381-394(1998)参照)。VEGF−Cの過剰発現は、リンパ管のみの増殖と拡大を引き起こし、血管は影響されない。VEGF−Dは、VEGF−Cと構造的に非常に類似している。VEGF−Dは、少なくとも2つのVEGFR、即ち、VEGFR−3/Flt−4及びKDR/VEGFR−2に結合し、活性化することが報告されている。それは元々、線維芽細胞用のc−fos誘導性マイトジェンとしてクローン化され、そして肺と皮膚の間葉細胞で非常に顕著に発現する(例えば、Achenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(2), 548-553(1998)参照)。VEGF−C及びVEGF−Dはまた、皮膚組織に注入されたとき、Milesアッセイにおいてインビボで血管透過性の増加を誘導することが主張されている(例えば、国際特許出願公開WO98/07832及びWitzenbichlerら、上記、参照)。
【0052】
好ましくは、ヒトVEGFは、VEGF−Aである(時折、「VEGF−1」ということもある)。VEGF−A遺伝子は、8個のエキソンと7個のイントロンを含み、これは、選択的スプライシングによって、該蛋白質の少なくとも6個のイソ型を形成し得、それらのいずれも、本発明での使用に適している。最長の蛋白質イソ型は、VEGF206であり、そのmRNAは、232個のアミノ酸のプレ蛋白質をコードする8個全てのエキソンの全体を含み、それは、206個の成熟形態へとプロセスされる。異なるイソ型を生じる選択的スプライシングは、エキソン6、7、8の周りに集中している(例えば、Robinsonら、J. Cell Sci., 114, 853-865(2001)参照)。VEGF121イソ型は、エキソン5の末端のスプライスドナーを、エキソン8のスプライスアクセプターに直接結合することによって生じ、それによって完全にエキソン6と7を除去する。VEGF165イソ型は、エキソン5の末端のスプライスドナーを、エキソン7のスプライスアクセプターに直接結合することによって生じ、それによって完全にエキソン6を除去する。エキソン6は特に複雑であり、エキソン7に連結されて、VEGF206、VEGF189、及びVEGFl83イソ型を生じ得るか、又はエキソン8に連結されて、VEGF145イソ型を生じうる、3つの異なる潜在的スプライスドナーを有する。最も好ましくは、VEGFはVEGF121である。VEGFの他のイソ型は、当業者に明らかであろう。従って、本明細書中で特定されるヒトVEGFイソ型は、決して限定的なものではない。
【0053】
血管形成ペプチドをコードする核酸配列は野生型である、即ち、野生型蛋白質をコードするのが好適であるが、核酸配列の多くの改変及びバリエーションが、本発明の状況下で可能であり、そして適当である。例えば、遺伝子コードの縮重は、コードされるポリペプチドを変えることなく、ポリペプチドコード領域の至る所、及び翻訳終結シグナルにおけるヌクレオチドの置換を可能とする。このような置換可能な配列は、血管形成ペプチドの公知のアミノ酸配列、又はこの血管形成ペプチドをコードする核酸配列から推論され、そして、従来の合成方法又は部位特異的変異誘発方法によって構築できる。合成DNA方法は、Itakuraら、Science, 198, 1056-1063(1977)、及びCreaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 5765-5769(1978)の方法に実質的に準じて行うことができる。部位特異的変異誘発方法は、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY(1989)に記載されている。
【0054】
さらに、血管形成ペプチドの相同体、即ち、アミノ酸レベルで、蛋白質と約70%を超えて同一(好ましくは約80%を超えて同一、より好ましくは約90%を超えて同一、そして最も好ましくは約95%を超えて同一)であり、血管形成活性(望ましくは、VEGF121と同じ、又はこれよりも高い血管形成活性)を示す、任意の蛋白質をコードする核酸配列を、複製欠損アデノウイルスベクターに組み込むことができる。アミノ酸同一性の程度は、BLAST配列データベースなどの、当該分野で公知の任意の方法を用いて決定できる。さらに、この蛋白質の相同体は、少なくとも中程度、好ましくは高いストリンジェンシー条件下で該蛋白質にハイブリダイズし、かつ血管形成活性を保持する、任意のペプチド、ポリペプチド、又はその部分であり得る。代表的な中程度のストリンジェンシー条件としては、20%ホルムアミド、5xSSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xDenhardt溶液、10%硫酸デキストラン、及び20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で37℃にて一晩インキュベーションし、次いで、約37〜50℃で1xSSC中でフィルターを洗浄することを含むか、又は、実質的に同様の条件、例えば、Sambrookら(上記)に記載の中程度のストリンジェント条件を含む。高ストリンジェンシー条件は、例えば、(1)50℃で、0.015 M塩化ナトリウム/0.0015 Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの、洗浄に関して低イオン強度と高温を使用する条件、(2)42℃でのハイブリダイゼーション中に変性剤(ホルムアミドなど、例えば、50%(v/v)ホルムアミド(0.1% ウシ血清アルブミン(BSA)/0.1% Ficoll/0.1% ポリビニルピロリドン(PVP)/50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)、及び750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含有))を使用する条件、又は(3)42℃で、50%ホルムアミド、5xSSC(0.75M NaCl、0.075M クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5xDenhardt溶液、音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1% SDS、及び10%デキストラン硫酸を使用し、(i)42℃、0.2xSSC中、(ii)55℃、50%ホルムアミド中、及び(iii)55℃、0.1xSSC中(好ましくは、EDTAと併用)で洗浄する条件である。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの更なる詳細及び説明は、例えば、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and John Wiley & Sons, New York, NY(1994)で提供される。
【0055】
核酸配列は、血管形成ペプチドの機能性部分(即ち、測定可能なレベルで、天然の(完全長の)蛋白質の生物活性を保持する蛋白質の任意の部分)をコードし得る。複製欠損アデノウイルスベクターの核酸配列の発現によって産生される機能性血管形成ペプチドフラグメントは、蛋白質フラグメントをコードする核酸配列で一過性にトランスフェクトしたヒト細胞でフラグメントの生物活性をアッセイするなどの、標準的分子生物学と細胞培養技術を用いて同定され得る。
【0056】
あるいは、血管形成ペプチドをコードする核酸配列は、血管形成ペプチドの活性を変更(好ましくは増大)するように操作され得る。核酸配列を操作して、血管形成ペプチドの分泌を増大し得るか、又は核酸配列を操作して、細胞表面に結合する血管形成ペプチドをコードし得る。核酸配列を操作して、血管形成ペプチドの安定性を増大し得る(例えば、有害な条件下で適切な三次元コンフォメーションを保持する)か、又は、血管形成ペプチドに特異的なレセプターの活性化のための血管形成ペプチドの力価を増大し得る。従って、本発明は、野生型核酸配列に限定されず、核酸配列の改変も本明細書中で意図される。
【0057】
プロモーターに機能可能に連結した血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターは、望ましくは、冠動脈疾患に対する治療効果を発揮するように、心筋への医薬組成物の投与後に、適当な時間で、心筋において血管形成ペプチドが十分なレベルで産生されるような量で、心筋に投与される。本発明の使用の結果として達成される血管形成ペプチドの濃度は、典型的には、注射後、少なくとも24時間(例えば、少なくとも2日、少なくとも3日、又は少なくとも4日)で、注射部位において、全蛋白質の1mg当り、少なくとも約100pgの血管形成ペプチド(例えば、少なくとも約200pg、少なくとも約300pg、少なくとも約400pg、又は少なくとも約500pgの血管形成ペプチド)である。血管形成ペプチドの濃度は、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約100〜約1400pgの血管形成ペプチドであり得るか、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約100〜約700pgの血管形成ペプチドであり得るか、又は注射部位において、全蛋白質の1mg当り約100〜約300pgの血管形成ペプチドでさえあり得る。あるいは、血管形成ペプチドの濃度は、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約800pg〜約1400pgの血管形成ペプチドであり得るか、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約800〜約1000pg(即ち、1ng)の血管形成ペプチドであり得るか、又は注射部位において、全蛋白質の1mg当り約2〜約4ng(例えば、約2〜約4ng、又は約4〜約6ng)の血管形成ペプチドでさえあり得る。血管形成ペプチドのこのような濃度は、望ましくは、少なくとも12時間、例えば、少なくとも24時間、少なくとも約2日、又は少なくとも約3日の間、心筋で維持される。血管形成ペプチドの濃度は、例えば、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、BCAアッセイ(Smithら、Anal. Biochem., 150, 76-85(1985))、ローリー蛋白質アッセイ(Lowryら、J. Biol. Chem., 193, 265-275(1951)に記載される)(これは、蛋白質−銅複合体に基く比色アッセイである)、ブラッドフォード蛋白質アッセイ(Bradfordら、Anal. Biochem., 72, 248(1976)に記載される)(これは、蛋白質結合の際のCoomassie Blue G−250の吸光度の変化に依存する)などの、蛋白質レベルの測定のための、当該分野で公知の任意の適切な方法を用いて測定できる。血管形成ペプチドがVEGF121であるとき、VEGF121レベルは、R&D Systems, Inc., Minneapolis, MNによって提供されるVEGF ELISAキットを用いて定量できる。本発明の状況下で、「注射部位における」蛋白質レベルは、代表的には、注射部位の周りの組織(約1cmの中央部分)に関連する。同様に、注射部位から約1cm(例えば、注射部位に隣接する部位(例えば、注射部位の左又は右へ1cmの部位)の心筋の1 cmの部分)の血管形成ペプチドの濃度(それは、心筋内の血管形成蛋白質の分布又は「拡散」を証明する)は、典型的には、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約5pg〜約150pgの血管形成ペプチドである。
【0058】
(医薬組成物)
本発明の方法は、医薬として許容できる担体及び血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターを含む医薬組成物の、虚血性心筋に局所的な様式での投与を含む。任意の適切な医薬として許容できる担体が、本発明の状況下で使用でき、そしてこのような担体は当該分野で周知である。担体の選択は、部分的には、医薬組成物を投与する特定の部位、及び医薬組成物を投与するのに使用される特定の方法によって決定される。
【0059】
適切な製剤は、水性及び非水性溶液、等張滅菌溶液(それらは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び、製剤をヒト患者の血液又は他の体液と等張にする溶質を含み得る)、並びに、水性及び非水性滅菌懸濁液(それらは、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、保存剤を含有し得る)を含む。好ましくは、医薬として許容できる担体は、緩衝液と塩を含有する液体である。製剤は、アンプルやバイアルなどの、単位投与量又は多投与量の密封容器で提供でき、そして、使用直前に、滅菌液体担体(例えば、水)の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存できる。製剤がバイアル中で提供されるとき、このバイアルは、医薬組成物を収容するのに適した任意の材料から構築できる。バイアルは、望ましくは、ガラス又はプラスチックから構築される。バイアルは、好ましくは、ガラスバイアルである。ガラスバイアルは、典型的には、透明ガラス、又は、その中に含まれる光感受性の医薬組成物を分解から保護するために、薄い色付きガラス(例えば、緑、青、又は琥珀色)である。好ましくは、医薬として許容できる担体は、緩衝化生理食塩水溶液である。
【0060】
医薬組成物は、例えば、バイアル又はアンプルというよりむしろ、カテーテル内で、維持、処方、パッケージ化、及び/又は提供され得る。あるいは、医薬組成物は、薬剤送達カセット内で維持され得る。理想的には、医薬組成物が薬剤送達カセット内で維持される場合、この薬剤送達カセットはカテーテル内に置かれ得、カテーテル内で医薬組成物の放出と分散を可能とする。
【0061】
医薬組成物は、好ましくは、アデノウイルスベクターを投与前のダメージから保護するために製剤化される。特定の製剤は、望ましくは、アデノウイルスベクターの光感受性及び/又は温度感受性を減少させる。事実、医薬組成物は、種々の期間維持され、従って、投与時に、安定性及び最大の活性を保証するように製剤化されるべきである。医薬組成物は、凍結製剤(即ち、温度0℃未満)として維持できる。医薬組成物は、望ましくは、0℃よりも高い温度、及び/又は、液体の場合、好ましくは、4℃以上(例えば、4〜10℃)で維持される。医薬組成物を、10℃以上(例えば、10〜20℃)、20℃以上(例えば、20〜25℃)、又はさらに30℃以上(例えば、30〜40℃)の温度で維持することが好適であり得る。医薬組成物は、上記温度で、少なくとも1日(例えば、7日(1週間)以上)維持され得るが、典型的には、患者への投与前の期間は、より長く(例えば、少なくとも3、4、5、もしくは6週間)、又はさらに長く(例えば、少なくとも10、11、もしくは12週間)なる。その期間の間、アデノウイルス遺伝子導入ベクターは、好ましくは、活性を失わないか又は実質的に失わないが、比較的高い保存温度及び/又は比較的長い保存時間の場合は、特別に、活性のいくらかの損失を許容できる。アデノウイルスベクター組成物の活性は、望ましくは、上記期間のいずれかの後、約50%以下、好ましくは、約20%以下、より好ましくは、約10%以下、そして最も好ましくは約5%以下減少する。
【0062】
この目的のために、医薬組成物は、好ましくは、例えば、上記のような、医薬として許容できる液体担体、並びに、ポリソルベート80、L−アルギニン、ポリビニルピロリドン、a−D−グルコピラノシルa−D−グルコピラノシド二水和物(通常、トレハロースとして知られる)、及びそれらの組合せからなる群から選択される安定化剤を含有する。より好ましくは、安定化剤は、トレハロース、又はポリソルベート80と組合せたトレハロースである。安定化剤は、医薬組成物中で任意の適切な濃度で存在し得る。安定化剤がトレハロースであるとき、トレハロースは、望ましくは、医薬組成物の約1〜25%(重量/体積)、好ましくは、約2〜10%(重量/体積)、そしてより好ましくは約4〜6%(重量/体積)の濃度で存在する。トレハロースとポリソルベート80が医薬組成物中に存在するとき、トレハロースは、好ましくは、約4〜6%(重量/体積)、そして、より好ましくは、約5%(重量/体積)の濃度で存在するが、ポリソルベート80は、望ましくは、約0.001〜0.01%(重量/体積)、好ましくは、約0.001〜0.01%(重量/体積)、そしてより好ましくは約0.0025%(重量/体積)の濃度で存在する。安定化剤(例えば、トレハロース)が医薬組成物に含まれるとき、医薬として許容できる液体担体は、好ましくは、トレハロース以外の糖質を含む。医薬組成物は、医薬組成物をさらに安定化するために、約0.05〜3mM(例えば、約0.05〜2mM、約0.05〜1.8mM、約0.05〜1.5mM、約0.5〜1.5mM、又は約0.05〜1mM)、好ましくは約1mM又は約2mMの2価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーをさらに含み得る。望ましくは、2価金属塩はMgClである。さらに、医薬組成物は、適当量のNaCl(例えば、約50〜150mM,好ましくは約75mM NaCl)をさらに含み得る。液体担体は、典型的には、水、好ましくは、注射に適した水(WFI)である。医薬組成物の適切な製剤は、米国特許第6,225,289号、米国特許第6,514,943号、米国特許出願公開第2002/0019041 A1、米国特許出願公開第2003/0153065 A1、国際特許出願公開WO00/34444、及び国際特許出願公開WO03/59292にさらに記載される。アデノウイルスベクターは、最も好ましくは、5.5%(wt./vol.)のトレハロース、0.0025%(wt./vol.)のポリソルベート80、2mM MgCl、75mM NaCl、及び10mM Tris HCl(pH7.6±0.02)を含む、水性製剤緩衝液に分散される。
【0063】
医薬組成物は、ガラス器具、注射器、又は針などの、発現ベクターを調製、保存、又は投与するのに使用されるデバイスにおけるアデノウイルスベクターの吸着損失を減少させるために、さらに製剤化される。このような医薬組成物の使用は、医薬組成物の保存寿命を延長し、投与を容易にし、そして本発明の方法の効果を増加させ得る。この点に関し、医薬組成物はまた、虚血性心筋を通じるアデノウイルスベクターの拡散を増大させるため、及び/又は形質導入効率を増大させるために製剤化され得る。この目的のために、医薬組成物はまた、アデノウイルスベクターの取り込みを増大させることが示されているヒアルロニダーゼを含み得る。複製欠損アデノウイルスベクターが虚血性心筋で保持され、そして周りの正常組織に漏出しないように、即ち、虚血性心筋中の医薬組成物の保持を増加させるように、組成物を製剤化するのが望ましい。従って、刺激感受性ポリマーなどの医薬組成物の粘度を増加する薬剤が、医薬組成物に含まれ得る。あるいは、又はさらに、医薬組成物のアデノウイルスベクターは、サイズに起因して虚血性心筋に留まる粒状担体(例えば、ビーズ、ウエハーなど)などの生体適合性固体担体(例えば、ステント)に結合され得るか、又はゲル又は泡状物などのマトリックスに組み込まれ得る。
【0064】
さらに、医薬組成物は、更なる治療剤又は生物活性剤を含み得る。例えば、特定の徴候の治療に有用な治療因子が存在し得る。イブプロフェンやステロイドなどの炎症を制御する因子は、医薬組成物の一部となり、アデノウイルスベクターのインビボ投与に関連した膨潤や炎症、及び生理学的疲労(physiological distress)を軽減し得る。免疫系抑制因子を医薬組成物と共に投与して、アデノウイルス自体に対する又は疾患に関連した任意の免疫応答を軽減できる。あるいは、免疫増大因子を、医薬組成物に含ませて、疾患に対する身体の天然の防衛をアップレギュレートできる。ビタミン及びミネラル、抗酸化剤、並びに微量元素を医薬組成物と同時投与できる。抗生物質(即ち、殺微生物剤及び殺真菌剤)を存在させて、遺伝子移入手順に関連した感染、及び他の疾患のリスクを減少させることができる。
【実施例】
【0065】
(実施例)
以下の実施例でさらに本発明を説明するが、勿論、その範囲を限定するものと決して解釈されるべきではない。これらの実施例は、冠動脈疾患の治療における本発明の医薬組成物の投与を伴う臨床研究に関する。各研究は3つのフェーズから構成される:スクリーニングフェーズ、ベースラインフェーズ、及び追跡フェーズ。各例で使用した医薬組成物は、(a)医薬として許容できる担体、及び(b)VEGF121をコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターを含んでいた。投与量及び投与プロトコルは、各場合で変化させた。
【0066】
各研究でのアデノウイルスベクターは、血清型5のヒトアデノウイルスであり、このベクターは、アデノウイルスゲノムのE1領域の一部、VA−1領域の一部、及びE3領域の一部(即ち、約ヌクレオチド356〜3,329、10,594〜10,595、及び28,594〜30,469)が欠失し(即ち、VA−1領域の欠失を含む、E1A/E1B/E3−欠損ヒトアデノウイルス血清型5ウイルスの骨格)、そしてE1領域に位置しかつCMVプロモーターと機能可能に連結したヒトVEGF121のコード配列を含んでいた(AdVEGF121)。アデノウイルスベクターを、3%(重量/体積)スクロース、10mM MgCl、150mM NaCl、及び10mM Tris(pH7.8)を含む、水性製剤緩衝液(Chesapeake Biological Laboratories, Inc., Baltimore, MD)に分散させた。医薬組成物は、Parke-Davis Pharmaceutical ResearchのClinical Pharmaceutical Operationsによりその都度調製した。追跡研究は、対応するベースライン研究とほぼ同日時(即ち、約2時間以内)に行った。
【0067】
(実施例1)
本実施例は、本発明の治療の前及び後の少なくとも1mmのST−セグメント低下の発生までの時間を比較することによって測定した場合の、進行性冠動脈疾患に罹患した患者の治療における、最大限治療に対する、低侵襲手術によって送達される本発明の医薬組成物の安全性及び効果を実証する。
【0068】
研究を無作為化する資格の初期評価ができるように患者をスクリーニングした(即ち、安定かつ重症のアンギナを有する患者)。運動負荷心電図(ECG)(即ち、少なくとも1mmST−セグメント低下の発生までの時間)、運動負荷試験(ETT)、99mTc−sestamibi SPECT(即ち、合計負荷スコア(summed stress score)、合計可逆性スコア(summed reversibility score)、及び全壁運動スコア(global wall motion score))、Canadian Cardiovascular Society(CCS)のアンギナクラス、及びSeattle Angina Questionnaire(SAQ)の返答に関して、資格のある患者の各々についてベースライン値を確立した。
【0069】
安定及び重症のアンギナ(安静時に長期かつ不安定なアンギナを除く、CCSアンギナクラスII−IV)を有する67人の患者(即ち、A群で32人、及びB群で35人)は、北米での異なる地理区域にある、約15〜25の研究センターでのスクリーニング及びベースライン処置の後、登録された。これらの患者は、本研究の前の少なくとも2ヶ月間、最大限治療を受けたが、疾患を完全に制御することができず、その結果、許容できないライフスタイルの制限が生じた。最大限治療は、(血流力学的パラメーター又は不寛容がそれらの使用の禁忌を示さない限り)以下の医薬を含んだ:ニトログリセリン、抗アンギナ医薬(例えば、長時間作用性のナイトレート、カルシウムチャネルブロッカー、及びβ−ブロッカー)、及び血小板凝集阻害剤(例えば、アスピリン、チクロピジン、又はクロピドグレル)。これらの患者は、Parke−Davis Biometrics Departmentによって用意された、無作為化コードに従って、2つの群(即ち、A群とB群)に無作為化された。A群の患者は、低侵襲手術により心筋の左心室にわたって、1.5〜2cm間隔で、合計で4x1010puのアデノウイルスベクターとなる医薬組成物の、30回の心外膜注射(100μl各注射)を受けた。彼(彼女)らは、手術処置から回復するまで、現在の診療基準(current standard of care)に従って、入院し、毎日モニターされ、そして管理された。B群の患者は、医薬組成物も低侵襲手術も受けず、そして入院もしなかった。
【0070】
注射処置の前及びその完了後の15分以内に、血漿中のベクターレベルの評価を選択した部位で行った。血漿VEGFレベルの評価もまた、選択された部位での治療後の、3日目、1週間目(5〜9日目)、2週間目(12〜16日目)、6週間目(32〜46日目)、26週間目(170〜190日目)に行った。アデノウイルス培養は、選択された部位での治療の2週間後に行った。追跡評価は、投与(A群)及び無作為化(B群)の6週間後、12週間後、及び26週間後に行った。全ての患者が、治療を中止するか、又は26週間目の通院を含む処置を完了したとき、研究はデータ解析について完了した。全ての患者を、一般的な安全性評価(身体検査、非侵襲性癌スクリーン、及び体重)、並びに心臓事象の発生(心筋梗塞(MI)又は不安定アンギナのための入院)について1年後(52週間目)に追跡した。
【0071】
各治療群の約35人の患者の初期予想サンプルサイズは、5%レベルの有意性の両側t−検定に基く。少なくとも1mmのST−セグメント低下の発生までの時間のベースラインからの平均変化に関して、治療群の間での2分間の差異を検出するのに、85%の検出力を提供することが期待された。少なくとも1mmの付加的ST−セグメント低下の発生までの時間のベースラインからの変化の標準偏差は、2.5分であると見積もられた。脱落による14%の損失を想定した。
【0072】
12週間目で、少なくとも1mmの付加的ST−セグメント低下の発生までの時間、又は少なくとも1mmの付加的ST−セグメント低下なしでのETTの終了までの時間のベースラインからの変化に対する、医薬組成物の効果と最大限治療の効果とを比較するために、共分散の解析を行った。1次モデルは、共変量としてベースライン値を有する、治療、センター、及び以前の冠動脈バイパス移植(CABG)の数(2未満及び2以上)に起因する主効果を含んでいた。治療効果の比較のためのp値、及び治療効果の差異について95%の信頼区間を定めた。センターによる処理、以前のCABGによる処理、及び共分散相互作用(covariate interaction)による処理の存在が調査された。1次解析は、ベースライン評価及び12週間目の評価を受けた全ての無作為化患者からの解析が含まれていた。全ての統計的検定は両側であり、そして5%レベルの有意性で行った。2次及び他のパラメーターを、1次効果パラメーターと同じ様式で解析した。
【0073】
ベースライン、追跡、及びベースライン測定値からの変化に関する要約統計値(平均、標準誤差、メジアン、最小、及び最大)を、全ての効果パラメーターについて定めた。要約統計をまた、各治療群に関する人口学パラメーターについて計算した。
【0074】
運動ECGにおける、少なくとも1mmの付加的ST−セグメント低下の発生までの時間、又は、少なくとも1mmの付加的ST−セグメント低下(「1mmの付加的ST−セグメント低下までの時間」)なしでのETTの終了までの時間の、最大限治療と比較した12週間目及び/又は26週間目のベースラインからの変化を測定することによって治療効果を評価した。これらの効果測定の結果を図1に記載する。1mmの付加的ST−セグメント低下までのベースライン時間は、A群及びB群における1mmの付加的ST−セグメント低下までの時間の平均として測定され、それはそれぞれ、3.9分と4.2分であった。A群は27人の患者を含み、そしてB群は29人の患者を含んだが、価値あるデータは、全ての時点で全ての患者について入手することができなかった。治療前のECGにおける少なくとも1mmの付加的ST−セグメント低下の発生までの時間と較べて、治療12週間後の時点で、ECGにおける少なくとも1mmの付加的ST−セグメント低下の発生までの時間、又は少なくとも1mmの付加的ST−セグメント低下なしでのETTの終了までの時間の約10%の増加がA群で観察された。治療26週間後の時点で、1mmの付加的ST−セグメント低下までの時間は、治療前の1mmの付加的ST−セグメント低下までの時間と較べて、A群で約28%増加した。これは、対照のB群と比較して有意な変化を示す(p=0.026)。
【0075】
治療効果をまた、以下のベースラインからの変化を測定することによって、12週間目と26週間目で評価した:付加的ETTパラメーター(即ち、全運動負荷持続時間、レベル2アンギナの発生までの時間、又はレベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間)、Canadian Cardiovascular Society(CCS)のアンギナクラス;及びSeattle Angina Questionnaire(SAQ)。種々の2次パラメーター評価の結果を、実施例2〜6に示す。
【0076】
(実施例2)
本実施例は、本発明の治療の前及び後で、レベル2アンギナの発生までの時間、又はレベル2アンギナなしでの運動負荷試験(ETT)の終了までの時間を比較することによって測定した場合の、進行性冠動脈疾患に罹患した患者の治療における、最大限治療に対する低侵襲手術により送達される本発明の医薬組成物の安全性と効果を実証する。
【0077】
患者のスクリーニング、登録、治療、返答、並びに統計的検査は、実施例1に記載のように行った。全ての報告されたp値は、治療群の間で結果を比較する。A群は27人の患者、そしてB群は29人の患者を含んだが、価値のあるデータは、全ての時点で全ての患者について入手可能ではなかった。治療の効果を評価するのに使用したパラメーターは、治療前のレベル2アンギナの発生までの時間(即ち、ベースライン)と比較して、治療の12週間後及び26週間後の時点での、レベル2アンギナの発生までの時間、又はレベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間の変化であった。治療前のレベル2アンギナの発生までの時間の平均は、A群で4.1分、そしてB群で4.2分であった。この効果測定の結果を、図2に示す。治療前のレベル2アンギナ発生までの時間と較べて、治療の12週間後の時点での、レベル2アンギナまでの時間の約22%増がA群で観察され、それは、対照のB群と較べて有意な変化であった(p=0.006)。治療前のレベル2アンギナの発生までの時間と較べて、治療26週間後の時点での、レベル2アンギナの発生までの時間の約37%増加がA群で観察され、それは、対照のB群と較べて有意な変化であった(p=0.003)。
【0078】
(実施例3)
本実施例は、本発明の治療の前及び後で、運動負荷試験(ETT)の間の全運動負荷持続時間を比較することによって測定した場合の、進行性冠動脈疾患に罹患した患者の治療における、最大限治療に対する低侵襲手術により送達された本発明の医薬組成物の安全性と効果を実証する。
【0079】
患者のスクリーニング、登録、治療、及び返答、並びに、統計検査は、実施例1に記載のように行った。全ての報告されたp値を、治療群の間で結果を比較する。治療の効果を評価するのに使用した別のパラメーターは、治療前のETTの間の全運動負荷持続時間(即ち、ベースライン)と比較して、治療の12週間後及び26週間後の時点での、ETTの間の全運動負荷持続時間の変化であった。治療前のETTの間の全運動負荷持続時間の平均は、A群で5.6分及びB群で5.4分であった。この効果測定の結果を図3に示す。ベースラインと較べて、治療の12週間後の時点で、全運動負荷持続時間の約7%増加がA群で観察され、それは、対照のB群と較べて有意な変化であった(p=0.008)。ベースラインと較べて、治療の26週間後の時点で、全運動負荷持続時間の約16%増加がA群で観察され、それは、対照のB群と較べて有意な変化であった(p=0.015)。
【0080】
(実施例4)
Canadian Cardiovascular Society(CCS)のアンギナ分類に従って割り当てたアンギナクラスにおける改善により測定される、進行性冠動脈疾患に罹患した患者の治療における、最大限治療に対する、本発明の治療方法に従う低侵襲手術により送達された本発明の医薬組成物の安全性と効果を本実施例は実証する。
【0081】
患者のスクリーニング、登録、治療、及び応答、並びに統計検査は、実施例1に記載のように行った。全ての報告されたp値は、治療群の間で結果を比較する。CSSアンギナクラスは、治療前(すなわち、ベースライン)のA群とB群の患者について確立した。CCSアンギナクラスは、ベースラインから少なくとも1のアンギナクラスを改善(少なくとも1クラスの減少)した者(応答者)と、アンギナクラスの悪化を有するか、アンギナクラスの変化がないか、又はCCSデータがないの者(非応答者)との2つに分けられた。応答者/非応答者の割合を、治療の6週間後、12週間後、26週間後の治療群でまとめた。6週間の時点で、A群の応答者率は約48%であり、一方、B群の応答者率は約10%であった(p=0.003)。12週間の時点で、B群で約14%の応答者率と比較して、A群は約82%の応答者率を示した(p<0.001)。26週間の時点で、A群の応答者率は約85%であり、一方、B群の応答者率は約24%であった(p<0.001)。各治療群でのCCSアンギナクラスの平均を、治療の6週間後、12週間後、26週間後に計算し、そして図4にプロットする。
【0082】
(実施例5)
本実施例は、運動負荷試験(ETT)の間のアンギナ発生までの時間の改善により測定した場合の、進行性冠動脈疾患に罹患した患者の治療における、最大限治療に対する本発明の治療方法に従う低侵襲手術により送達された本発明の医薬組成物の安全性と効果を実証する。
【0083】
患者のスクリーニング、登録、治療、及び応答、並びに統計検査は、実施例1に記載のように行った。治療前(即ち、ベースライン)及び治療後の、A群とB群の患者について、ETTの間のアンギナの発生までの時間を確立した。アンギナまでの時間の改善の程度は、ETTの間のアンギナまでの時間の少なくとも1分の増加か、又は少なくとも3分の増加のいずれかとして測定された(即ち、応答者)。応答者の割合を、治療の12週間後及び26週間後の治療群でまとめた。12週間後の時点で、アンギナの発生の時間は、約48%の群Aの患者、及び約14%の群Bの患者について少なくとも1分まで改善された。同じ時点で、アンギナの発生の時間は、約19%の群Aの患者、及び約4%の群Bの患者について少なくとも3分まで改善された。26週間の時点で、アンギナの発生の時間は、約52%の群Aの患者、及び約29%の群Bの患者について少なくとも1分まで改善された。同じ時点で、アンギナの発生の時間は、約30%の群Aの患者、及び約7%の群Bの患者について少なくとも3分まで改善された。
【0084】
(実施例6)
本実施例は、Seattle Angina Questionnaire(SAQ)で報告されるスコアの改善により測定した場合の、進行性冠動脈疾患に罹患した患者の治療における、最大限治療に対する本発明の治療方法に従う低侵襲手術により送達された本発明の医薬組成物の安全性と効果を実証する。
【0085】
患者のスクリーニング、登録、治療、及び応答、並びに統計的試験は、実施例1に記載のように行った。治療後の特定の生活の質パラメーターを評価するために、両治療群において患者にSAQを行った。特に、ベースラインからのスコアの平均変化を、3つのSAQスケールについて、6週間目、12週間目、26週間目に測定した:アンギナ安定性、アンギナ頻度、及び疾患認知。アンギナ安定性スコアは、治療の6週間後の時点で、A群の患者において、ベースラインから約74%まで増加した。12週間の時点で、アンギナ安定性スコアは、A群においてベースラインから約87%まで増加した。26週間の時点で、アンギナ安定性スコアは、A群においてベースラインから約76%まで増加した。6週間の時点で、アンギナ頻度スコアにおいてベースラインから87%の増加がA群で報告された。12週間の時点で、アンギナ頻度スコアでベースラインから約72%の増加がA群で報告され、そして、26週間の時点で、同スコアでベースラインから約73%の増加が報告された。疾患認知スコアは、A群において、6週間の時点で、ベースラインから約45%、及び12週間の時点でベースラインから約72%まで増加した。26週間の時点で、疾患認知スコアは、A群で、ベースラインから約80%まで増加した。全ての場合、A群についてのベースラインからの変化は、対照のB群と較べて有意な変化であった(p≦0.001)。
【0086】
(実施例7)
本実施例は、本発明の治療方法に従う、進行性冠動脈疾患に罹患した患者を処置するためのナビゲーションインジェクションデバイス(navigational injection device)を介する本発明の医薬組成物の投与の耐用性及び実現可能性を示す。
【0087】
研究を無作為化する資格があり得る者(即ち、進行性冠疾患を有する者)の初期評価ができるように患者をスクリーニングした。次いで、資格のある患者の各々について、ETT、CCS、SAQに関するベースライン値を確立した。
【0088】
北米での異なる地理区域の約3〜4の研究センターでのスクリーニング及びベースライン処置後、進行性CAD及び重症の狭心症(安静時に長時間の不安定なアンギナを除く、CCSアンギナクラスIII−IV)を有する10人の患者を登録した。これらの患者は、本研究前に少なくとも2ヶ月間、最大限療法で処置されたが、疾患を完全には抑制できず、その結果、許容できないライフスタイルの制限が生じた。最大限治療は、(血流力学的パラメーター又は不寛容がそれらの使用の禁忌を示さない限り)以下の医薬を含んだ:ニトログリセリン、血小板凝集阻害剤(例えば、アスピリン、チクロピジン、又はクロピドグレル)、及び以下の2つに由来する医薬:長時間作用性のナイトレート、カルシウムチャネルブロッカー、及びβ−ブロッカー。上記に加えて、患者は、冠動脈バイパス移植、経皮経管冠動脈形成拡張術、又は血管内ステント術の候補ではなかった。また、無作為化後の12週間以内に、他の血管再形成方法及び/又は心臓移植が計画されていなかった。次いで、これらの患者は、1:2(プラセボ:治療)様式で無作為化された。プラセボ(15回の注射、各100μlの希釈液)(A群)、又は単一投与量の医薬組成物(15回の心内膜注射、各100μlの医薬組成物、合計4x1010puのアデノウイルスベクター)(B群)を、二重盲検式で、カテーテル注入(Biosense, Inc.から入手できるBiosense(登録商標)心筋内注入デバイス)を介して、心筋の左心室を横切って均一に投与した(約1.5〜2cmの間隔を空けて注入、注入の間隔は2cmを超えない)。患者は、最低24時間入院した。バイタルサイン及び虚血の心電図サインを毎日モニターし、そしてカテーテル処置から回復するまで、研究部位での使用における現在の診療基準に従って管理した。
【0089】
注入処置の前、及び該処置の完了後15分以内に、血漿中のベクターレベルの評価を選択した部位で行った。血漿VEGFの評価もまた、選択された部位において、ベースライン、治療の1日後、3日後、1週間後、4週間後、24週間後に行った。アデノウイルス培養を、選択した部位における処置の24時間後に行った。追跡評価を、投与の12週間後に行ったが、評価は、安全上の理由からいかなる時点でも行った。全ての患者が治療を中止するか、または12週目の通院を含む処置が完了したとき、研究はデータ解析について完了した。全ての患者は、一般的な安全性評価(身体検査、非侵襲性癌スクリーン、及び体重)、及び心臓事象の発生(MI又は不安定アンギナのための入院)に関して1年後(52週間目)に追跡した。
【0090】
効果を試験する1次パラメーターは、インターベンショナルの心臓専門医(interventional cardiologist)によって達成されるカテーテル注入を介する(特に、Biosense, Inc.から入手できるBiosense(登録商標)心筋内注入デバイスを介する)、医薬組成物の投与の実現可能性を評価するための調査であった。医薬組成物の安全性と耐用性も評価した。実現可能性は、薬剤投与の日にインターベンショナルの心臓専門医によって完成される症例報告書(Case Report Form)に基づいて決定した。以下のパラメーターが評価された:カテーテル操作の開始(皮膚切開時)とカテーテル操作の終了(皮膚閉鎖の開始又はシースの除去後の外部圧迫処置の開始)の間の所要時間(平均5.7時間、メジアン3.3時間)、カテーテル操作の開始(処置の開始)と最後の注入カテーテルの除去の間の所要時間(平均2.4時間、メジアン2.5時間)、シースへの最初の注入カテーテルの挿入とシースからの最後の注入カテーテルの除去の間の所要時間(平均51.4分、メジアン44分)、最初の注入と最後の注入との間の所要時間(平均38.3分、メジアン33.5分)、並びに全螢光透視時間(平均29.9分、メジアン17.1分)。
【0091】
医薬組成物の心筋内投与の安全性と耐用性を評価した。5人の患者は、この処置に潜在的に関連する合併症を発症したが、それらの全部が数日以内に解消した。合併症は、嗜眠状態、暗色便、末梢浮腫、散在性水疱音、胸水、心室性頻脈、心室性期外収縮(PVC)、背痛、鼠径部斑状出血(groin eccymosis)、嘔吐、徐脈、咳、及びURIを含んだ。1人の患者は、有害事象(熱)を発症し、それは、治療に関連すると考えられた。尿と咽頭スワブからの全てのアデノウイルス培養物は陰性であった。
【0092】
2次パラメーターは12週間目に評価され、以下のベースラインからの変化を含んでいた:ETTパラメーター(即ち、少なくとも1mmの付加的ST−セグメント低下の発生までの時間、又は少なくとも1mmの付加的ST−セグメント低下なしでのETTの終了までの時間;全運動負荷持続時間;レベル2アンギナの発生までの時間、又はレベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間;peak rate pressure product(心拍数×収縮期圧);ST−セグメント低下の最大深さ;レベル2アンギナの開始時の速度圧力積、又はレベル2アンギナなしでのpeak rate pressure product;及び、少なくとも1mmの付加的ST−セグメント低下の開始時の速度圧力積、又は少なくとも1mmの付加的ST−セグメント低下なしでのpeak rate pressure product);CCSアンギナクラス;並びにSAQ。
【0093】
医薬組成物の投与の日にインターベンショナルの心臓専門医によって完成される症例報告書は、最初の体験情報を提供した。定量性の問題に関して、要約統計値を定め、実現可能性の主観的決定を補助した。実現可能性を、盲検データに基いて評価した。研究の最後に、実現可能性データを治療群でまとめた。2次パラメーターを各治療群内でまとめた。さらに、95%の信頼区間をベースライン測定からの変化について定めた。CCSアンギナクラスは、ベースラインからアンギナクラスを改善した者(応答者)、及びアンギナクラスの悪化を有する、アンギナクラスの変化なし、又はCCSのデータなしの者(非応答者)の2つに分けた。応答者/非応答者の割合は、12週間目に治療群でまとめた。
【0094】
結果は、本発明の方法及び医薬組成物がヒト患者によって十分に耐えられたことを実証した。小さなサンプルサイズに起因して、2次効果の結果の統計的解析を行わなかった。
【0095】
本明細書中で引用した刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が引用により含まれるように個々に及び具体的に示され、本明細書中にその全体が記載されているかのような程度まで、引用により本明細書中に含まれるものである。
【0096】
本発明を説明する文脈において(特に、添付の特許請求の範囲の文脈において)、用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の指示語の使用は、本明細書中で別にしめされるか、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含するように解釈されるべきである。本明細書中で値の範囲の記載は、本明細書中で別に示されない限り、その範囲内の各々の別個の値を個々に言及することの略記方法となることが単に意図され、各々の別個の値は、それが本明細書中に個々に記載されているかのように本明細書中に含まれるものである。本明細書中で記載される方法の全ては、本明細書中で別に示されるか、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書中で提供される任意及び全ての例、又は例示的言葉(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良く明瞭にすることが単に意図され、そして別に主張されない限り、本発明の範囲に対する制限をもたらさない。本明細書の言葉は、本発明の実施に必須な、主張されていない要素を示していると解釈されるべきではない。
【0097】
本発明の好適な実施態様が本明細書中に記載され、これは、本発明を実施するために本発明者らに公知の最良の形態を含む。勿論、上記説明を読むと、それらの好適な実施態様のバリエーションが当業者に明白となろう。本発明者らは、当業者が適宜このようなバリエーションを用いることを予想し、そして本発明者らは、本発明が、本明細書中に具体的に記載されたものとは別のやり方で実施されることを意図する。従って、本発明は、適用法によって許されるように、本明細書中に添付の特許請求の範囲に列挙される主題の全ての改変物及び均等物を含む。さらに、本明細書中で別に示されないか、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、その全ての可能なバリエーション中の上記要素の任意の組合わせが本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明に従う治療の12週間後及び26週間後のベースラインからの、運動負荷心電図(ECG)における少なくとも1mmのST−セグメント低下までの時間の変化を示す棒グラフである。
【図2】図2は、本発明に従う治療の12週間後及び26週間後のベースラインからの、レベル2アンギナの発生までの時間、又はレベル2アンギナなしでの運動負荷試験(ETT)の終了までの時間の変化を示す棒グラフである。
【図3】図3は、本発明に従う治療の12週間後及び26週間後のベースラインから、運動負荷試験(ETT)の間の全運動負荷持続時間の変化を示す棒グラフである。
【図4】図4は、本発明に従う、ベースライン及び治療の6週間後、12週間後、及び26週間後の、各治療群に関する、Canadian Cardiovascular Society(CCS)アンギナ分類の平均を示すプロットグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者における冠動脈疾患の治療方法であって、
(a)医薬として許容できる担体、及び(b)プロモーターと機能可能に連結した、血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターを含む、医薬組成物の一投与量を、心筋の異なる位置への複数回注射により、虚血性心筋に直接注射することを含み、それによって、冠動脈疾患が治療される方法であり、ここで、該投与量は、約1x10〜約4x1011粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、方法。
【請求項2】
ヒト患者における冠動脈疾患の治療方法であって、
(a)医薬として許容できる担体、及び(b)プロモーターと機能可能に連結した、血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターを含む、医薬組成物の一投与量を、心筋の異なる位置への複数回注射により、虚血性心筋に直接注射することを含み、それによって、冠動脈疾患が治療される方法であり、ここで、該投与量は、注射部位において、全蛋白質の1mg当り少なくとも約100pgの血管形成ペプチドの、血管形成ペプチド濃度を達成する量で、複製欠損アデノウイルスベクターを含む、方法。
【請求項3】
血管形成ペプチドが、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
血管形成ペプチドが、VEGF145及びVEGF189からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
血管形成ペプチドが、VEGF121である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
血管形成ペプチドが、VEGF165である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約100pg〜約1400pgの血管形成ペプチドである、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約100pg〜約700pgの血管形成ペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約100pg〜約300pgの血管形成ペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約800pg〜約1400pgの血管形成ペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約800pg〜約1000pgの血管形成ペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約2ng〜約6ngの血管形成ペプチドである、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約2ng〜約4ngの血管形成ペプチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約4ng〜約6ngの血管形成ペプチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
注射部位から1cmの血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約5pg〜約150pgの血管形成ペプチドである、請求項2〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
複数回注射が、約5〜約50回の注射を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
複数回注射が、約10〜約40回の注射を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
複数回注射が、約20〜約30回の注射を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
各注射の体積が、約50ml〜約200mlである、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
各注射の体積が、約75ml〜約125mlである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
医薬組成物の投与量の体積が、約1〜約5mlである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
医薬組成物の投与量の体積が、約2〜約3mlである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
複数回注射が、約1〜約2.5cmの間隔を空けられる、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
複数回注射が、約1.5〜約2cmの間隔を空けられる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
投与量が、約1x1010〜約9x1010粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
投与量が、約2x1010〜約8x1010粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
投与量が、約3x1010〜約5x1010粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
各注射が、約1x10〜約5x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
各注射が、約1x10〜約2x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
各注射の体積が、約50〜約150μlである、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
各注射が、医薬組成物の1μl当り約1x10pu〜約5x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
各注射が、医薬組成物の1μl当り約1x10〜約2x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
複数回注射が、低侵襲手術により、心筋の左心室に投与される、請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
冠動脈疾患の治療が、治療前の運動負荷心電図(ECG)における少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間と比較して、治療12週間後の、ECGにおける少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間、又は、少なくとも1mmの付加的STセグメント低下なしでのETTの終了までの時間の少なくとも5%の増大によって証明される、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
冠動脈疾患の治療が、治療前の運動負荷心電図(ECG)における少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間と比較して、治療26週間後の、ECGにおける少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間、又は、少なくとも1mmの付加的STセグメント低下なしでのETTの終了までの時間の少なくとも20%の増大によって証明される、請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
冠動脈疾患の治療が、治療前の発生の時間と比較して、治療12週間後の、レベル2アンギナの発生までの時間、又は、レベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間の少なくとも10%の増大により証明される、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
冠動脈疾患の治療が、治療前の発生の時間と比較して、治療26週間後の、レベル2アンギナの発生までの時間、又は、レベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間の少なくとも20%の増大により証明される、請求項1〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
冠動脈疾患の治療が、治療前のETTの間の全運動負荷持続時間と比較して、治療12週間後のETTの間の全運動負荷持続時間の少なくとも5%の増大によって証明される、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
冠動脈疾患の治療が、治療前のETTの間の全運動負荷持続時間と比較して、治療26週間後のETTの間の全運動負荷持続時間の少なくとも10%の増大によって証明される、請求項1〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
冠動脈疾患の治療が、治療前のCanadian Cardiovascular Societyのアンギナクラスと比較して、治療12週間後の、アンギナ分類により割り当てられる、少なくとも1つのアンギナクラスの減少によって証明される、請求項1〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
冠動脈疾患の治療が、治療前のCanadian Cardiovascular Societyのアンギナクラスと比較して、治療26週間後の、アンギナ分類により割り当てられる、少なくとも2つのアンギナクラスの減少によって証明される、請求項1〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireのアンギナ安定性スコアと比較して、治療6週間後の、ヒト患者により報告されるアンギナ安定性スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireのアンギナ安定性スコアと比較して、治療12週間後の、ヒト患者により報告されるアンギナ安定性スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireのアンギナ安定性スコアと比較して、治療26週間後の、ヒト患者により報告されるアンギナ安定性スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireのアンギナ頻度スコアと比較して、治療6週間後の、ヒト患者により報告されるアンギナ頻度スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireのアンギナ頻度スコアと比較して、治療後12週間後の、ヒト患者により報告されるアンギナ頻度スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireのアンギナ頻度スコアと比較して、治療後26週間後の、ヒト患者により報告されるアンギナ頻度スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireの疾患認知スコアと比較して、治療6週間後の、ヒト患者により報告される疾患認知スコアの少なくとも30%の増加によって証明される、請求項1〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireの疾患認知スコアと比較して、治療12週間後の、ヒト患者により報告される疾患認知スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireの疾患認知スコアと比較して、治療26週間後の、ヒト患者により報告される疾患認知スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
医薬組成物が、カテーテルを用いて心筋に直接注射される、請求項1〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
(a)医薬として許容できる担体、及び(b)プロモーターと機能可能に連結した、血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクター、を含む医薬組成物であって、該複製欠損アデノウイルスベクターの濃度が、医薬組成物の1μl当り約1x10〜約5x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターである、医薬組成物。
【請求項53】
複製欠損アデノウイルスベクターの濃度が、医薬組成物の1μl当り約1x10〜約2x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターである、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項54】
医薬組成物が、ポリソルベート80、L−アルギニン、ポリビニルピロリドン、トレハロース、及びそれらの組合せからなる群より選択される安定化剤を更に含む、請求項52又は53に記載の医薬組成物。
【請求項55】
安定化剤が、トレハロースである、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
トレハロースの濃度が、約1〜約25%(重量/体積)である、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
医薬として許容できる担体が、緩衝剤及び塩を含む、請求項52〜56のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
0℃を超える温度で少なくとも7日間、医薬組成物の活性の約20%以下の低下で、液体として維持できる、請求項52〜57のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項59】
2価金属イオンを含む、請求項52〜58のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項60】
約0.05〜約3mMのMgClを含む、請求項59に記載の医薬組成物。
【請求項61】
約48時間の間、液体として維持できる医薬組成物であって、ここで、該組成物中の複製欠損アデノウイルスベクター粒子の少なくとも約50%が、該時間の終了時に活性である、請求項52〜60のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項62】
請求項52〜61のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む、バイアル。
【請求項63】
ガラスである、請求項62に記載のバイアル。
【請求項64】
医薬組成物が、約1〜約5mlの体積である、請求項62又は63に記載のバイアル。
【請求項65】
医薬組成物が、約2〜約3mlの体積である、請求項64に記載のバイアル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者における冠動脈疾患の治療方法であって、
(a)医薬として許容できる担体、及び(b)プロモーターと機能可能に連結した、血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターを含む、医薬組成物の一投与量を、ナビゲーションシステムを備えるカテーテルを用いる心筋の異なる位置への複数回注射により、虚血性心筋に直接注射することを含み、それによって、冠動脈疾患が、以下:
(i) 治療前の運動負荷心電図(ECG)における、少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間と比較して、治療の12週間後の、ECGにおける少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間、又は少なくとも1mmの付加的STセグメント低下なしでの運動負荷試験(ETT)の終了までの時間の、少なくとも5%の増大;
(ii) 治療前の発生までの時間と比較して、治療の12週間後の、レベル2アンギナの発生までの時間、又はレベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間の、少なくとも10%の増大;
(iii) 治療前のETTの間の全運動負荷持続時間と比較して、治療の12週間後のETTの間の全運動負荷持続時間の少なくとも5%の増大;
(iv) 治療前のアンギナクラスと比較して、治療の12週間後の、Canadian Cardiovascular Societyのアンギナ分類によって割り当てられる少なくとも1つのアンギナクラスの減少;
(v) 治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireのアンギナ安定性スコア及びアンギナ頻度スコアと比較して、治療の6週間後のヒト患者により報告されるアンギナ安定性スコア又はアンギナ頻度スコアの少なくとも50%の増大;又は
(vi)治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireの疾患知覚スコアと比較して、治療の6週間後のヒト患者により報告される疾患知覚スコアの少なくとも30%の増大、
の1つ以上により証明されるように治療される方法であり、ここで、該投与量は、約1x10〜約4x1011粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、方法。
【請求項2】
ヒト患者における冠動脈疾患の治療方法であって、
(a)医薬として許容できる担体、及び(b)プロモーターと機能可能に連結した、血管形成ペプチドをコードする核酸配列を含む複製欠損アデノウイルスベクターを含む、医薬組成物の一投与量を、ナビゲーションシステムを備えるカテーテルを用いる心筋の異なる位置への複数回注射により、虚血性心筋に直接注射することを含み、それによって、冠動脈疾患が、以下:
(i) 治療前の運動負荷心電図(ECG)における、少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間と比較して、治療の12週間後の、ECGにおける少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間、又は少なくとも1mmの付加的STセグメント低下なしでのETTの終了までの時間の、少なくとも5%の増大;
(ii) 治療前の発生までの時間と比較して、治療の12週間後の、レベル2アンギナの発生までの時間、又はレベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間の、少なくとも10%の増大;
(iii) 治療前のETTの間の全運動負荷持続時間と比較して、治療の12週間後のETTの間の全運動負荷持続時間の少なくとも5%の増大;
(iv) 治療前のアンギナクラスと比較して、治療の12週間後の、Canadian Cardiovascular Societyのアンギナ分類によって割り当てられる少なくとも1つのアンギナクラスの減少;
(v) 治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireのアンギナ安定性スコア及びアンギナ頻度スコアと比較して、治療の6週間後のヒト患者により報告されるアンギナ安定性スコア又はアンギナ頻度スコアの少なくとも50%の増大;又は
(vi)治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireの疾患知覚スコアと比較して、治療の6週間後のヒト患者により報告される疾患知覚スコアの少なくとも30%の増大、
の1つ以上により証明されるように治療される方法であり、ここで、該投与量は、注射部位において、全蛋白質の1mg当り少なくとも約100pgの血管形成ペプチドの、血管形成ペプチド濃度を達成する量で、複製欠損アデノウイルスベクターを含む、方法。
【請求項3】
血管形成ペプチドが、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
血管形成ペプチドが、VEGF145及びVEGF189からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
血管形成ペプチドが、VEGF121である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
血管形成ペプチドが、VEGF165である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約100pg〜約1400pgの血管形成ペプチドである、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約100pg〜約700pgの血管形成ペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約100pg〜約300pgの血管形成ペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約800pg〜約1400pgの血管形成ペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約800pg〜約1000pgの血管形成ペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約2ng〜約6ngの血管形成ペプチドである、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約2ng〜約4ngの血管形成ペプチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約4ng〜約6ngの血管形成ペプチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
注射部位から1cmの血管形成ペプチド濃度が、注射部位において、全蛋白質の1mg当り約5pg〜約150pgの血管形成ペプチドである、請求項2〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
複数回注射が、約5〜約50回の注射を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
複数回注射が、約10〜約40回の注射を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
複数回注射が、約10〜約20回の注射を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
各注射の体積が、約50ml〜約500mlである、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
各注射の体積が、約75ml〜約125mlである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
医薬組成物の投与量の体積が、約1〜約5mlである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
医薬組成物の投与量の体積が、約2〜約3mlである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
複数回注射が、約1〜約2.5cmの間隔を空けられる、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
複数回注射が、約1.5〜約2cmの間隔を空けられる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
投与量が、約1x1010〜約9x1010粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
投与量が、約2x1010〜約8x1010粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
投与量が、約3x1010〜約5x1010粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
各注射が、約1x10〜約5x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
各注射が、約1x10〜約2x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
各注射の体積が、約50〜約150μlである、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
各注射が、医薬組成物の1μl当り約1x10pu〜約5x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
各注射が、医薬組成物の1μl当り約1x10〜約2x10粒子単位の複製欠損アデノウイルスベクターを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
冠動脈疾患の治療が、治療前の運動負荷心電図(ECG)における少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間と比較して、治療26週間後の、ECGにおける少なくとも1mmの付加的STセグメント低下の発生までの時間、又は、少なくとも1mmの付加的STセグメント低下なしでのETTの終了までの時間の少なくとも20%の増大によって証明される、請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
冠動脈疾患の治療が、治療前の発生の時間と比較して、治療26週間後の、レベル2アンギナの発生までの時間、又は、レベル2アンギナなしでのETTの終了までの時間の少なくとも20%の増大により証明される、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
冠動脈疾患の治療が、治療前のETTの間の全運動負荷持続時間と比較して、治療26週間後のETTの間の全運動負荷持続時間の少なくとも10%の増大によって証明される、請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
冠動脈疾患の治療が、治療前のCanadian Cardiovascular Societyのアンギナクラスと比較して、治療26週間後の、アンギナ分類により割り当てられる、少なくとも2つのアンギナクラスの減少によって証明される、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireのアンギナ安定性スコアと比較して、治療12週間後の、ヒト患者により報告されるアンギナ安定性スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireのアンギナ安定性スコアと比較して、治療26週間後の、ヒト患者により報告されるアンギナ安定性スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireのアンギナ頻度スコアと比較して、治療後12週間後の、ヒト患者により報告されるアンギナ頻度スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireのアンギナ頻度スコアと比較して、治療後26週間後の、ヒト患者により報告されるアンギナ頻度スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireの疾患認知スコアと比較して、治療12週間後の、ヒト患者により報告される疾患認知スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
冠動脈疾患の治療が、治療前のヒト患者により報告されるSeattle Angina Questionnaireの疾患認知スコアと比較して、治療26週間後の、ヒト患者により報告される疾患認知スコアの少なくとも50%の増加によって証明される、請求項1〜41のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−514929(P2006−514929A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553607(P2004−553607)
【出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/036187
【国際公開番号】WO2004/045513
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(500129085)ジェンベク、インコーポレイティッド (13)
【出願人】(505140340)ワーナー−ランバート カンパニー (1)
【Fターム(参考)】