説明

冷え性改善機能を有する食品組成物

【課題】 本発明の課題は、冷え性改善と、安全性を兼ね備えた食品組成物を提供することである。
【解決手段】 血流改善作用のあるウメの果実エキス、アムラの果実もしくは種子のエキス、酵素処理ヘスペリジンから選ばれる1種又は2種以上とヘスペリジンを併用することにより、優れた冷え性改善効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血流改善作用のある天然素材の抽出物とL−シトルリンを配合した冷え性改善機能を持つ食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
女性では、2人に1人は冷え症に悩んでいると言われる。冷え症の原因としては幾つかの理由が考えられているが、特に、近年の急速な生活環境の変化に伴い冷え症を訴える人の数は急増しているといわれている。例えば、冷え症の主な原因の1つには、皮膚に存在する温度を感じる神経の機能が低下し、当該温度に関する情報が有効に脳に伝達されないことがあげられている。特に、近年の冷暖房完備の生活条件下では、1年中を通して居住室内の温度が一定となった反面、季節によっては室内外の温度差が著しい。そのために、身体の季節適応力も低下し、またこのような急激な温度差のある生活を続けることで、気温変化に順応するための神経伝達系の機能も低下してきているといわれる。
【0003】
このような冷え症をケアする方法としては、体を温める入浴や体操、ジョギングなどの適度な運動や根菜類などを中心とした食事が効果的であるといわれているが、冷え症を改善することを目的として、提供されている冷え症改善剤や健康食品が市場ではみられない。
【0004】
通常の食生活において上記のような冷え症を改善するためには、鉄分やマグネシウム、ビタミンCやビタミンEおよびその誘導体のような栄養素や食品成分を摂取することが推奨されている。
【0005】
その他、代謝を向上させるものとしてトウガラシやニンニクに代表される各種の香辛料が有効とされ、これらは血管拡張や体脂肪の燃焼促進効果により体温を上昇させる。
【0006】
上記の通常の食生活上の注意による方法以外にも、様々な冷え症の改善方法が提案されている。
【0007】
熟地黄のエタノール抽出エキスを有効成分として含有することを特徴とする血流改善剤が開示され、赤血球変形能を高め、造血作用を有し、虚弱体質、疲労、冷え症、肩こり等の末梢循環不全による疾患の改善、治療に有効であるとされる。(特許文献1参照)
【0008】
サンザシ、ケイヒ、ウイキョウ、ウコン、エビスグサ、イチョウ、クコ、トウガラシ、ゴマ、ショウガ、クワ、の内の少なくとも六種類以上の組み合わせからなる薬膳調味栄養食品が開示されている。当該栄養食品は、成人病対策としての高血圧・高コレステロール、糖尿病等の防止、又は女性の冷え症・生理痛・便秘・肥満等をその処方の目的としている。(特許文献2参照)
【0009】
ガラナ、マカエキス、プラセンタ、プエラリアおよびカバエキスを主有効成分とする栄養剤が開示されている。当該栄養剤は、従来にくらべて、滋養強壮、疲労回復、神経痛の改善、冷え症の改善、血行不全の改善、などが著しく向上するとされる。(特許文献3参照)
【0010】
サフラン又はサフランの組織培養物より溶媒抽出される末梢血流改善用エキス、該エキスを含有する末梢血流改善剤が開示されている。当該血流改善剤により、血流が改善され、末梢循環不全に関連する各種の疾患、例えば冷え症、手足のしびれ等の予防および治療に有用であるとされる。(特許文献4参照)
【0011】
コショウ科コショウ属植物のヒハツの抽出物を有効成分として含有する冷え性改善剤でイチョウ葉、紅花、生姜、唐辛子、冬中夏草、梅肉、高麗ニンジン、ニンニク、マムシ、卵黄油、ドクダミ、ヨモギ、田七ニンジン、エゾウコギ、ウコギ、トウキ、センキュウ、シナモン、ニッケ、クズ、ニラ、ネギ、タマネギ、レンコン、ニンジン、ゴマ、海苔、ワカメ、カボチャ、ゴボウ、大根、キャベツ、小豆、ぶどう、ミカン、卵、鶏肉、牛肉、チーズ、さんま、えび、ビタミンB1、ビタミンE、ユビキノン及び鉄からなる群より選ばれる1種又は2種以上の素材との併用による冷え性改善用組成物が開示されている。(特許文献5参照)
【0012】
カカオ豆加工物を含むことを特徴とする冷え症改善用組成物が開示されている。カカオ豆由来の成分による血流障害改善効果、例えば血管拡張作用や、それによる利尿作用等も同時に期待され、更には、冷え症の中〜長期的な改善に有効とされる栄養素である鉄分やマグネシウムが豊富に含まれており、加えてリラックス効果による精神状態の安定によりストレスの軽減も期待されるので、カカオ豆加工物は、個々の各成分によるのみだけでなく、全体としても理想的な冷え症改善効果を発揮するとされる。(特許文献6参照)
【0013】
しかしながら、安全性及び生産性に優れ、かつ安価でありながら、高い冷え症改善効果を有する冷え症改善剤に対する消費者の要望は極めて強く、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平6−305976号公報
【特許文献2】特開平11−243913号公報
【特許文献3】特開2001−348334号公報
【特許文献4】特開平10−287576号公報
【特許文献5】特開2003−40788号公報
【特許文献6】特開2004−018512号公報
【非特許文献1】European journalof pharmacology. 431(1):61-9, 2001
【非特許文献2】第58回日本栄養・食糧学会 講演要旨集3F-14p,2004
【非特許文献3】European Journalof Pharmacology. 431(1):61-9, 2001
【非特許文献4】European Journalof Pharmacology. 455(2-3):149-60, 2002
【非特許文献5】Archives ofNeurology. 39(4):247-9, 1982
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、新規の冷え症改善剤およびそれを含有する機能性食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで本発明者は、血流改善作用のある天然素材の抽出物の冷え性改善効果を向上させることを鋭意検討した結果、血流改善作用のある天然素材の抽出物とL−シトルリンを併用して経口摂取することにより、相乗的に冷え性改善効果を促進させることを突き止め、本発明による食品組成物を完成させるに至った。
【0016】
すなわち本発明における食品組成物は、血流改善作用のある天然素材の抽出物とL−シトルリンを有する食品添加物を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、血流改善作用のある天然素材の抽出物とL−シトルリンを併用する食品組成物は、冷え性改善食品として有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の冷え性改善用組成物に用いるウメ果実エキスは、バラ科サクラ属ウメ(Prunus mume Sieb.et Zucc)の果実より得られる。その製法は一般的なエキスの製法により得られるが、一例を示すと、ウメの果実を搾りゆっくり加熱し、水分量が20%を下回ると、梅肉エキスが得られる。本発明の冷え性改善用組成物ではこの梅肉エキスに含まれる効果成分を活性炭で抽出したエキスを使用した。
【0019】
本発明の冷え性改善用組成物に用いるアムラ抽出エキスは、トウダイグサ科コミカンソウ属アムラ(Emblica officinale又はPhyllanthus embilica)より得られるエキスである。そして、アムラは、インドからマレーシア地域及び中国南部にかけて分布しており、インドが原産地と考えられている。日本では「アマラ」と呼ばれている。
【0020】
本発明のアムラ抽出エキスは、アムラの果実又は種子を水、メタノールやエタノールのような低級アルコール、含水低級アルコールあるいは1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンまたは含水多価アルコール、ブタノール、アセトンなどの低極性溶媒等とともに抽出し、濾過して得られる。
【0021】
また、上記植物抽出物の抽出法は、有効成分が抽出可能であれば特に限定はされず、抽出溶媒も極性及び非極性溶媒が使用可能で、水であれば、約60℃で数時間抽出し得ることができる。エタノール抽出であれば、ソックスレー抽出を行うことによって得ることができる
【0022】
本発明の冷え性改善用組成物に用いる酵素処理ヘスペリジンは、成熟する前の温州みかんの皮からヘスペリジンを抽出し、酵素処理したものである。酵素処理したヘスペリジンは溶解度が高くなり、体内への吸収が良くなる。酵素処理ヘスペリジンには毛細血管を強化する効果がある。(非特許文献2参照)
【0023】
本発明における食品組成物は、血流改善作用のある天然素材の抽出物を有効成分とL−シトルリンを有効成分として含有することを特徴とする。本発明においては、血流改善作用のある天然素材の抽出物を単独で摂取する場合とは想定できないほど際立った冷え性改善作用が見出された。
【0024】
本発明に用いることができるL−シトルリンは、下記式(式I)で表わされるものであれば特に制限はない。また、L−シトルリンは、タンパク質中には含まれていないが、体内や食品に含まれているアミノ酸である。特に、西瓜(スイカ)に多く含まれていることで有名で、アフリカのカラハリ砂漠に生える乾燥耐性野生スイカの葉には、細胞中に420mg/100g(湿重量)ものL−シトルリンを含有しているとの報告があり、過酷な乾燥状態で生きられるのはシトルリンが影響しているからであると考えられている。また体内では肝臓のオルニチン回路の成分でもあり、アルギニンから生成されるが、その際、一酸化窒素(NO)が発生し、このNOによって血管を拡張させる作用がある。(非特許文献3参照)その他、神経伝達、免疫賦活に関わることが知られている。(非特許文献4及び5参照)なお、L−シトルリンは、協和発酵工業(株)等より市販されている。
【0025】
【化1】

【0026】
本発明における冷え性改善効果は、血流改善作用のある天然素材の抽出物とL−シトルリンが体内吸収され、代謝レベルの作用により相乗的に作用しあって引き起こされるものであるから、其々の有効成分が有効量配合されていることが重要であり、配合割合はさほど重要ではなく、任意の割合で配合されていれば良い。血流改善作用のある天然素材の抽出物とL−シトルリンが共存していることが本発明の冷え性改善効果には重要なのである。配合目安の一例を示すと、1日摂取量当たりの血流改善作用のある天然素材の抽出物の摂取量は10mg〜2000mgが好ましく、特に50〜500mgが好ましい。また、1日摂取量当たりのL−シトルリンの摂取量は、1mg〜2000mgが好ましく、特に10mg〜500mgが好ましい。そして、前記の摂取量となるように本発明の冷え性改善食品の組成物に配合すればよい。
【0027】
また、本発明には、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性ビタミン、脂溶性ビタミン、各種ミネラルなどを任意の割合で配合するができる。更に、本発明による食品組成物は、一般的な食品加工原料と組み合わせて任意の食品へ加工することも可能である。例えば、錠剤、カプセル又は飲料、菓子といった任意の食品への加工が可能である。
【実施例】
【0028】
以下に血流改善作用のある天然素材の抽出物と、L−シトルリンを用いた場合の効果を実施例として記載する。ただし、本発明はこれらの実施例になんら制約されるものではない。
【0029】
実施例では以下の表のように組成物を調整した。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例1〜7及び比較例1の組成物をモニター(8人)に、毎日1回1ヶ月間摂取させ、サーモグラフィーによる皮膚表面温度の回復率を調べた。方法は、クロスオーバー・ダブルブラインドで確認した。各試料について、実施例1〜7は各有効成分をハードカプセルに封入し、比較例1は食品用デキストリンをハードカプセルに封入し、作成した。試験者、被験者ともにどれを摂取しているか判らないようにした。そして、表2に示す基準で評価し、その結果を表3に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
表3より、実施例1〜7は比較例1と比較して明らかに冷え性改善効果は高いことが認められた。また、本実施例のモニターには、従来の健康食品に指摘されるようなアレルギー症状、その副作用は認められなかった。
【0035】
以下に、処方例を示すが、本発明がこれに限定されることはない。
【0036】
〔処方例1〕 錠剤
ウウメエキス 50g、L−シトルリン
10g、デキストリン 40g、 粉糖 90g、グリセリン脂肪酸エステル10gを混合・撹拌して均一に調整し、打錠し、1錠200mgである錠剤としての冷え症を改善する錠剤を得た。
【0037】
〔処方例2〕 飲料用顆粒
ウメエキス50g、L−シトルリン 50g、オリゴ糖
40g、砂糖 50g デキストリン
310gを混合・攪拌して均一に調整し、流動層造粒機による顆粒を行い、一包5gである顆粒としての冷え症を改善する飲料用顆粒を得た。
【0038】
〔処方例3〕 ドリンク剤
ウメエキス 2000mg、L−シトルリン
2000mg、ソルビトール 3000mg、オリゴ糖4500mg、サイクロデキストリン500mg、アスコルビン酸 100mg及び適量の精製水を混合、溶解させて50mLとし、冷え症を改善するドリンク剤を得た。
【0039】
〔処方例4〕 カプセル用粉末
ウメエキス 2.5g、L−シトルリン 0.25g、オリゴ糖 40g、デキストリン 200gを混合・攪拌して均一に調整し、1カプセル当たり1gである冷え症を改善するカプセル用粉末を得た。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、血流改善作用のある天然素材の抽出物とL−シトルリンを併用する食品組成物は、冷え性改善食品として有効であるため、広く健康食品等に応用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血流改善作用のある天然素材の抽出物とL−シトルリンを含有することを特徴とする食品組成物。
【請求項2】
血流改善作用のある天然素材の抽出物が、ウメの果実エキス、アムラの果実もしくは種子のエキス、酵素処理ヘスペリジンから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の食品組成物。
【請求項3】
請求項1記載及び請求項2記載の食品組成物を含有することを特徴とする冷え性改善食品。

【公開番号】特開2008−253148(P2008−253148A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95348(P2007−95348)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591230619)株式会社ナリス化粧品 (200)
【Fターム(参考)】