説明

冷凍サイクル装置

【課題】冷却継続時間の延長を図ることが可能な冷凍サイクル装置を提供すること。
【解決手段】圧縮機10、凝縮器20、膨張器30、蒸発器40が冷媒流路50により順次環状に接続された冷凍サイクル装置であって、蒸発器40の下流側に設けられ、冷媒を貯留可能であるとともに蒸発器40へ供給可能な液溜器70と、液溜器70に貯留された液状冷媒量を検出する液冷媒センサ102と、膨張器30と蒸発器40との間で冷媒流路50を開閉する冷媒流路開閉弁60と、圧縮機10の駆動時に、冷媒流路開閉弁60を開弁させ、圧縮機10の停止時に、液冷媒センサ102の検出に基づいて冷媒流路開閉弁60を閉弁させる空調制御回路100と、を備えた冷凍サイクル装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置に用いられる冷凍サイクル装置に関し、特に、車両用の空調装置に用いるのに好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置に用いる冷凍サイクル装置として、アイドリングストップ時のようにエンジン停止に伴って圧縮機の作動が停止しても冷房を続行可能とした冷凍サイクル装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来の冷凍サイクル装置は、冷凍サイクルの蒸発器と圧縮機との間に、蓄冷材を内部に備えた蓄冷熱交換器を備えている。そして、圧縮機が停止された際には、蒸発器で吸熱して蒸発された冷媒が、蓄冷熱交換器の蓄冷材からの放冷によって凝縮液化されて冷媒体積を縮小させ、蒸発器側の圧力を低圧に維持するため、蓄冷材の蓄冷熱が保持されている間は凝縮器と蒸発器との間の残圧により、冷媒は継続して蒸発器に流入可能となり、蒸発器による空調空気の冷却を継続できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−1485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術では、圧縮機の停止時には、蒸発器において高圧側から冷媒を流し込まないと冷却できない構造であるが、冷凍サイクルにおけるこのような高圧側から低圧側への冷媒の移動は、短時間になされる。そして、このような冷媒の移動により蒸発器の圧力が上昇すると、蒸発器内の冷媒が蒸発できなくなるために、蒸発器の温度の上昇が早くなり、冷却を十分に継続することが難しいという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述の従来の問題に着目して成されたもので、冷却継続時間の延長を図ることが可能な冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために請求項1に係る発明は、
圧縮機、凝縮器、膨張器、蒸発器が冷媒流路により順次環状に接続され、前記圧縮機から吐出されて前記凝縮器および前記膨張器を経た冷媒が前記蒸発器で吸熱するようにした冷凍サイクル装置であって、
前記蒸発器の下流側に設けられ、前記冷媒を貯留可能であるとともに前記蒸発器へ供給可能な液溜器と、
この液溜器に貯留された液状冷媒量を検出する液冷媒検出手段と、
前記膨張器と前記蒸発器との間で前記冷媒流路を開閉する冷媒流路開閉弁と、
前記圧縮機の駆動時に、前記冷媒流路開閉弁を開弁させ、前記圧縮機の停止時に、前記液冷媒検出手段の検出に基づいて前記冷媒流路開閉弁を閉弁させる開閉制御手段と、
を備えていることを特徴とする冷凍サイクル装置とした。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、
前記液溜器は、前記冷媒により蓄冷可能な蓄冷材を備えていることを特徴とする冷凍サイクル装置とした。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の冷凍サイクル装置において、
前記開閉制御手段は、前記圧縮機の停止時に、前記液冷媒検出手段の検出に基づき、前記液溜器の液状冷媒量があらかじめ設定された設定量以上の場合に、前記冷媒流路開閉弁を閉弁させることを特徴とする冷凍サイクル装置とした。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の冷凍サイクル装置において、
前記開閉制御手段は、前記圧縮機の停止時に、前記液溜器の液状冷媒量が前記設定量未満の場合は、前記冷媒流路開閉弁を開弁状態に維持し、前記設定量以上または前記圧縮機の停止からの経過時間があらかじめ設定した設定時間を超えた場合に、前記冷媒流路開閉弁を閉弁させることを特徴とする冷凍サイクル装置とした。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置において、
前記液溜器の前記液状冷媒を前記蒸発器の入口に送る冷媒ポンプを備え、
前記開閉制御手段は、前記(圧縮機の停止時に)冷媒流路開閉弁を閉じたときに前記冷媒ポンプを作動させることを特徴とする冷凍サイクル装置とした。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置において、
前記冷媒流路において、前記液溜器と前記圧縮機との間に、前記冷媒が流れる方向を前記液溜器から前記圧縮機の方向のみに制限する逆止弁を設けたことを特徴とする冷凍サイクル装置とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷凍サイクル装置では、蒸発器の下流側に液溜器を設け、膨張器と蒸発器との間に冷媒流路開閉弁を設け、液溜器に液冷媒検出手段を設け、冷媒流路開閉弁を開閉させる開閉制御手段は、圧縮機の駆動時に、冷媒流路開閉弁を開弁させ、圧縮機の停止時に、液冷媒検出手段の検出に基づいて冷媒流路開閉弁を閉弁させるようにした。
【0014】
したがって、圧縮機が停止した際には、冷媒流路開閉弁を閉弁して蒸発器側を低圧に保ち、かつ、液溜器に貯留した冷媒を蒸発器に供給し、冷却を継続することができる。
【0015】
このように、冷媒流路開閉弁を閉弁するため、冷媒流路開閉弁により閉弁しない場合と比較して、蒸発器を長時間低圧に保つことができ、冷却継続時間の延長が可能となる。
【0016】
さらに、請求項2に係る発明は、液溜器が、蓄冷材を備えているため、圧縮機が停止して蒸発器が冷却を継続した際に、液溜器では、蓄冷材が蒸発器からの冷媒の吸熱を行って、低圧冷媒の圧力上昇を抑えることができる。
【0017】
よって、蒸発器における冷却を、より長く維持することができる。あるいは、蓄冷材による冷却作用の分だけ、冷却維持に必要な冷媒量を抑えて、液溜器の小型化、ひいては冷凍サイクル装置の小型化を図ることができる。
【0018】
また、請求項3に係る発明は、開閉制御手段は、圧縮機の停止時に、液冷媒検出手段の検出に基づいて液溜器の液状冷媒量があらかじめ設定された設定量以上の場合に冷媒流路開閉弁を閉弁させるようにした。
【0019】
このため、冷媒流路開閉弁を閉じた際に、蒸発器および液溜器側に貯留される冷媒量を確保して、圧縮機の停止時における冷却継続時間を確実に確保することができる。
【0020】
また、請求項4に係る発明は、開閉制御手段は、圧縮機の停止時に、液溜器の貯留量が設定量未満の場合は、冷媒流路開閉弁を開弁状態に維持し、設定量以上となるか、または圧縮機の作動停止からの経過時間が設定時間を超えた場合に、冷媒流路開閉弁を閉弁させるようにした。
【0021】
このため、液溜器における液冷媒貯留量が設定量未満の場合には、冷媒流路開閉弁の閉弁タイミングを遅らせることで、圧力差に基づいて、凝縮器側の冷媒が蒸発器側に流れ込み、圧縮機停止時の冷却維持に必要な冷媒量を確保して、冷房維持時間を、より確実に確保できる。
【0022】
しかも、液溜器における液冷媒貯留量が設定量未満であっても、圧縮機の作動停止からの経過時間が設定時間を越えると、冷媒流路開閉弁を閉じるようにした。このため、上述のように冷媒流路開閉弁の閉弁タイミングを遅らせることで冷媒流路開閉弁の下流に冷却に十分な液冷媒量が既に確保できる時間経過後は、冷媒流路開閉弁を閉じることで、冷媒流路開閉弁の下流の液圧上昇を抑えて、冷却維持をより確実に行うことができる。
【0023】
請求項5に係る発明は、開閉制御手段は、冷媒流路開閉弁を閉じた際には、冷媒ポンプを作動させて液溜器に貯留した液冷媒を蒸発器に供給するようにした。このため、低圧液状の冷媒をより長期に亘って蒸発器に供給し、圧縮機停止時の冷却継続時間をより長く確保することが可能となる。
【0024】
請求項6に係る発明は、液溜器と圧縮機との間に逆止弁を設けたため、圧縮機の停止時に圧縮機から高圧の冷媒が液溜器側へ逆流するのを防止して、蒸発器側を、より確実に低圧に維持して、圧縮機停止時の冷却継続をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は実施例1の冷凍サイクル装置Aを示す回路図である。
【図2】図2は実施例1の冷凍サイクル装置Aに用いた液溜器70を示す断面である。
【図3】図3は実施例1の冷凍サイクル装置Aにおける冷却継続制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図4は冷却継続制御の他の処理の流れを示すフローチャート図である。
【図5】図5は冷却継続制御の他の処理の流れを示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
本発明の実施の形態の冷凍サイクル装置は、圧縮機(10)、凝縮器(20)、膨張器(30)、蒸発器(40)が冷媒流路(50)により順次環状に接続され、前記圧縮機(10)から吐出されて前記凝縮器(20)および前記膨張器(30)を経た冷媒が前記蒸発器(40)で吸熱するようにした冷凍サイクル装置であって、
前記蒸発器(40)の下流側に設けられ、前記冷媒を貯留可能であるとともに前記蒸発器(40)へ供給可能な液溜器(70)と、
この液溜器(70)に貯留された液状冷媒量を検出する液冷媒検出手段(102)と、
前記膨張器(30)と前記蒸発器(40)との間で前記冷媒流路(50)を開閉する冷媒流路開閉弁(60)と、
前記圧縮機(10)の駆動時に、前記冷媒流路開閉弁(60)を開弁させ、前記圧縮機(10)の停止時に、前記液冷媒検出手段(102)の検出に基づいて前記冷媒流路開閉弁(60)を閉弁させる開閉制御手段(100)と、
を備えていることを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【実施例1】
【0028】
以下に、図1〜図3に基づいて、実施例1の冷凍サイクル装置Aについて説明する。
(構成)
まず、実施例1の冷凍サイクル装置Aの構成について説明する。
【0029】
図1に示す実施例1の冷凍サイクル装置Aは、車両の空調装置に用いられており、圧縮機10、凝縮器20、膨張器30、蒸発器40が冷媒流路50により順次環状に接続されている。
【0030】
なお、冷媒流路50は、圧縮機10の出口と凝縮器20の入口とを接続する第1流路51と、凝縮器20の出口と膨張器30の入口とを接続する第2流路52と、膨張器30の出口と蒸発器40の入口とを接続する第3流路53と、蒸発器40の出口と圧縮機10の入口とを接続する第4流路54とを備えている。
【0031】
圧縮機10は、エンジンルーム(図示省略)に配置されてエンジンEngにより駆動され、冷凍サイクル装置A内の冷媒を高温高圧に圧縮して吐出する。
【0032】
凝縮器20は、エンジンルーム(図示省略)に配置されて、圧縮機10により高温高圧に圧縮された冷媒を、外気との熱交換により冷却して液化する。
【0033】
膨張器30は、高圧の液状冷媒を、膨張弁やオリフィスをくぐらすことにより、減圧と流量制御を行い、低温・低圧の液状冷媒にする。
【0034】
蒸発器40は、車室内に配置された空調ユニット(図示省略)内に配置され、空調ユニット内を流れる車室内の空気と熱交換を行うことで、低温・低圧の液状冷媒を蒸発させて、低温・低圧のガス冷媒とするものであり、これにより車室空気を冷却して車室の冷房を行う。
【0035】
さらに、膨張器30と蒸発器40との間の第3流路53には、この第3流路53を開閉する冷媒流路開閉弁60が設けられている。この冷媒流路開閉弁60の開閉は、後述する空調制御回路(開閉制御手段)100により制御される。
【0036】
また、蒸発器40と圧縮機10とを接続する第4流路54の途中には、冷媒を貯留可能な液溜器70が設けられている。
【0037】
この液溜器70は、図2に示すように、冷媒を貯留可能な筒状のタンク本体71と、このタンク本体71の外周に設けられ、タンク本体71に貯留された冷媒と熱交換可能な蓄冷材72とを備えている。なお、蓄冷材72としては、水と高吸水性樹脂(ポリアクリ酸ナトリウム)を含むものや、パラフィンなど周知のものを用いる。
【0038】
また、図示のように、第4流路54の上流側の管54aは、タンク本体71の上部に開口されており、一方、第4流路54の下流側の管54bは、タンク本体71の上部の開口端54cから下方に延在され、タンク本体71の下部の湾曲部54dで上方に湾曲されてタンク本体71の上部から外部に導出されている。さらに、湾曲部54dには、液状の冷媒を吸い込むための吸入孔54eが穿設されている。
【0039】
タンク本体71の底部には、冷媒ポンプ80が設けられている。この冷媒ポンプ80に接続された吐出路81は、図1に示すように、蒸発器40の上流の第3流路53の途中に接続されており、冷媒ポンプ80により吸引した液溜器70に貯留された液状の冷媒は、第3流路53に吐出される。
【0040】
また、吐出路81の途中には、冷媒の流れる方向を冷媒ポンプ80から第3流路53の方向のみに制限する逆止弁82が設けられている。さらに、第4流路54の下流側の管54bの途中にも、冷媒の流れる方向を液溜器70から圧縮機10の方向のみに制限する逆止弁55が設けられている。
【0041】
前述した冷媒ポンプ80および冷媒流路開閉弁60の作動は、空調制御回路(開閉制御手段)100により制御される。
【0042】
この空調制御回路100は、図外の空調装置の制御を行うもので、車室温度、車外温度などを検出するセンサ群101に接続され、その検出に基づいて、空調装置(図示省略)の作動を制御する。
【0043】
さらに、空調制御回路100は、上述の空調装置(図示省略)の制御において、いわゆるアイドリングストップ制御に伴って圧縮機10が停止した際に、蒸発器40による冷却作動を継続させるための冷却継続制御を行う。なお、アイドリングストップ制御は、走行中の一時的な停車を検出した際に、エンジンEngの駆動を停止させ、発進操作を検出した際にはエンジンEngを始動させる制御である。空調制御回路100では、アイドリングストップ制御時に、エンジンEngの駆動などを制御する総合コントローラ(図示省略)から空調制御回路100にアイドリングストップ信号sstが入力され、信号sstが入力されている間、冷却継続制御を行う。
【0044】
そして、空調制御回路100は、この冷却継続制御にあっては、上述したセンサ群101に含まれる液冷媒センサ(液冷媒検出手段)102からの入力および図示しないタイマのカウント値に基づいて、冷媒流路開閉弁60および冷媒ポンプ80の作動を制御する。
【0045】
なお、液冷媒センサ102は、液溜器70内に設置され、タンク本体71内に、液状冷媒があらかじめ設定された設定量ser以上存在するか否かを検出するもので、例えば、冷媒に浮くフロートを備えたものや、高さ方向のある程度の範囲に亘って液の有無を電気的に検出するセンサなどを用いて、液状冷媒の液面の高さを検出するものを用いることができる。
【0046】
以下に、図3のフローチャートに基づいて、空調制御回路100による冷却継続制御における処理の流れを説明する。なお、冷却継続制御の非実行時である初期状態では、冷媒流路開閉弁60は開弁状態、冷媒ポンプ80は停止状態、タイマのカウント値tcは0となっている。
【0047】
まず、ステップS1では、アイドリングストップ信号sstの入力の有無を判定し、このアイドリングストップ信号sstの入力があった場合に、ステップS2以降の冷却継続制御のための処理を実行し、その入力がない場合は、冷却継続制御を実行することなく、処理を終える。
【0048】
ステップS2では、冷媒ポンプ80の駆動を開始させるとともに、タイマのカウントアップを開始した後、ステップS3に進む。
【0049】
ステップS3では、液冷媒センサ102の出力に基づいて、液溜器70内の液状冷媒量が設定量ser以上であるか否か判定し、設定量ser以上の場合はステップS3に進み、設定量ser未満の場合はステップS7に進む。この設定量serは、車種に応じ実験により決定するもので、この設定量serは、想定されるアイドリングストップを実行する時間だけ冷房を継続できる量であって、車室容積や、空調装置の種別や、蓄冷材72の蓄冷能力などに応じ、車種ごとに決定される。
【0050】
ステップS4では、冷媒流路開閉弁60を閉弁させ、その後、ステップS5に進む。
【0051】
ステップS5では、アイドリングストップ信号sstの入力が停止したか否か判定し、停止した場合はステップS6に進み、停止しない場合は、ステップS4の冷媒流路開閉弁の閉弁状態を維持する。
【0052】
アイドリングストップ信号sstの入力が停止した場合に進むステップS6では、冷媒ポンプ80の駆動を停止し、冷媒流路開閉弁60を初期の開弁状態に戻し、タイマのカウントアップを停止する。
【0053】
一方、ステップS3において液状冷媒量が設定量ser未満である場合に進むステップS7では、ステップS2においてカウントアップを開始したタイマのカウント値tcが、あらかじめ設定された設定値tsを越えたか否か判定し、設定値tsを越えた場合はステップS4に進み、設定値tsを越えない場合は、ステップS7の判定を繰り返す。
【0054】
ここで、設定値tsは、あらかじめ実験に基づいて設定した時間であり、この時間は、アイドリングストップ時に冷房を設定時間継続させるのに必要な量の冷媒が、凝縮器20側の高圧と蒸発器40側の低圧との圧力差に基づいて、液溜器70に移動するのに必要な時間であって、車両や空調装置により異なるが、1,2秒に満たない程度の短時間である。
(作用)
次に、実施例1の作用を説明する。
【0055】
<走行時(非アイドリングストップ時)>
エンジンEngを駆動させている走行時には、圧縮機10が駆動しており、圧縮機10は、冷媒を高温高圧に圧縮して吐出する。この高温高圧の冷媒は、凝縮器20において外気と熱交換(冷却)されて液化して、膨張器30に送られる。膨張器30では、冷媒が減圧されて低温・低圧の液状となり、さらに、冷媒は、蒸発器40において、車室内の空気と熱交換され、車室内空気を冷却するとともに、蒸発して低温・低圧のガス冷媒となり、液溜器70を通って圧縮機10に吸引される。
【0056】
また、液溜器70では、冷媒が蓄冷材72から吸熱し、蓄冷材72が冷却される。そして、車室内の空調が安定してくると、蒸発器40の負荷が下がるため、冷媒は液溜器70のタンク本体71内に液化して蓄えられる。
【0057】
すなわち、液溜器70にあっては、第4流路54の上流側の管54aからタンク本体71に流入した冷媒は、液化した冷媒がタンク本体71の下部に溜まり、気化した冷媒はタンク本体71の上部に溜まる。そして、上部の気化した冷媒は、下流側の管54bの開口端54cから吸入され、湾曲部54dの吸入孔54eにおいてタンク本体71の下部の液状冷媒を僅かに吸い込んで混合されながら圧縮機10に吸入される。なお、冷媒には潤滑油が含まれており、この潤滑油成分を圧縮機10に供給するために吸入孔54eから液状冷媒を吸い込むようにしている。
【0058】
<アイドリングストップ時>
車両の停車時に、図示を省略した総合コントローラの制御に基づいて、アイドリングストップ制御が実行された際には、エンジンEngの駆動を停止するのに伴い圧縮機10の駆動が停止され、圧縮機10からの高圧冷媒の吐出が停止される。
【0059】
このとき、空調制御回路100は、アイドリングストップ信号sstの入力を受けて、冷媒ポンプ80の駆動を開始するとともに、タイマのカウントアップを開始する(ステップS1からS2の処理)。
【0060】
そして、このとき液溜器70における液状冷媒量があらかじめ設定された設定量ser以上の場合、冷媒流路開閉弁60が閉じられる(ステップS3からS4の処理)。
【0061】
したがって、液溜器70に貯留された低圧の液状冷媒が冷媒ポンプ80に吸入されて吐出路81から第3流路53を介して蒸発器40に供給される。これにより、蒸発器40では、液状冷媒の蒸発が継続され、蒸発器40による冷却を維持することができる。
【0062】
また、このとき、冷媒流路開閉弁60が閉弁されており、かつ、圧縮機10の上流の第4流路54に逆止弁55が設けられているため、圧縮機10および凝縮器20側の高圧の冷媒と、蒸発器40および液溜器70側の低圧の冷媒とは、圧力差による冷媒の移動が規制され、蒸発器40側では低圧に維持される。
【0063】
加えて、液溜器70では、蒸発器40で気化した冷媒が流入するが、蓄冷材72により吸熱を行うため、低圧冷媒の圧力上昇を抑えることができ、これによっても、蒸発器40における冷却力を、より長く維持することができる。
【0064】
一方、アイドリングストップの開始時に、液溜器70の液状冷媒量が設定量ser未満である場合、この貯留量が設定量ser以上となるか、タイマのカウント値tcが設定値ts以上となるかするまで冷媒流路開閉弁60の閉弁を待った後、冷媒流路開閉弁60を閉弁させる。すなわち、図3のフローチャートでは、ステップS3およびS7においてYESと判定されるまで、両判定を繰り返し、いずれかのYES判定でステップS4へ進む流れとなる。
【0065】
このため、液溜器70における液状冷媒量が不足している場合、この液状冷媒量が設定量serを超えるまでは、冷媒流路開閉弁60の開弁状態が維持されることから、凝縮器20側と蒸発器40側との圧力差により、凝縮器20側の冷媒が蒸発器40へ流入する。
【0066】
そして、このような圧力差による冷媒の移動は、液溜器70の液状冷媒量が設定値以上となるか、アイドリングストップ時における設定時間の冷房維持を行なうのに必要な量の冷媒が移動するのに要する時間が経過した時点(タイマのカウント値tcが設定値tsとなった時点)で、冷媒流路開閉弁60が閉じることで停止される。
【0067】
よって、アイドリングストップ時に、冷媒流路開閉弁60の下流側において冷媒流路開閉弁60と逆止弁55との間における冷媒量が不足することがなく、設定時間内の冷却継続を行うことができる。
【0068】
(実施例1の効果)
以上説明した実施例1の冷凍サイクル装置Aは、以下に列挙する効果を奏する。
【0069】
a)蒸発器40の下流側に液溜器70を設け、膨張器30と蒸発器40との間に冷媒流路開閉弁60を設け、液溜器70に液冷媒センサ102を設け、冷媒流路開閉弁60を開閉させる空調制御回路100は、圧縮機10の駆動時には、冷媒流路開閉弁60を開弁させ、圧縮機10の停止時には、液冷媒センサ102の検出に基づいて冷媒流路開閉弁60を閉弁させるようにした。
【0070】
したがって、アイドリングストップ制御によりエンジンEngの駆動停止に伴って圧縮機10が停止した際には、冷媒流路開閉弁60を閉弁して蒸発器40側を低圧に保ち、冷房を継続することができる。
【0071】
b)液溜器70は、蓄冷材72を備えているため、圧縮機10の作動時には、蒸発器40で蒸発して低温・低圧のガス状となった冷媒により蓄冷材72を冷却できる。
【0072】
したがって、アイドリングストップにより圧縮機10が停止した際には、液溜器70では、蓄冷材72が蒸発器40からの冷媒の吸熱を行って、低圧冷媒の圧力上昇を抑えることができる。
【0073】
よって、タンク本体71の容量が同じであれば、蒸発器40における冷却力を、より長く維持することができる。あるいは、蓄冷材72による冷却作用の分だけ、アイドリングストップ時に必要な冷媒量を抑えて、タンク本体71の必要容量を抑え、液溜器70の小型化、ひいては冷凍サイクル装置Aの小型化を図ることができる。
【0074】
c)空調制御回路100は、アイドリングストップにより圧縮機10を停止させた時に、液冷媒センサ102の検出に基づいて液溜器70の液状冷媒量があらかじめ設定された設定量serよりも多い場合に冷媒流路開閉弁60を閉弁させるようにした。
【0075】
このため、冷媒流路開閉弁60を閉じた際に、蒸発器40および液溜器70側に貯留される冷媒量を確保して、アイドリングストップ時における冷房維持時間を確実に確保することができる。
【0076】
d)空調制御回路100は、アイドリングストップにより圧縮機10が停止した時に、液溜器70における液状冷媒量が、設定量ser未満の場合は冷媒流路開閉弁60を開弁状態に維持し、設定量ser以上となるかまたは圧縮機10の作動停止から設定値tsの時間が経過した場合は、冷媒流路開閉弁60を閉弁させるようにした。
【0077】
このため、液溜器70における液状冷媒量が設定量ser未満の場合には、冷媒流路開閉弁60の閉弁タイミングを遅らせることで、圧力差に基づいて、凝縮器20側の冷媒が蒸発器40側に流れ込み、アイドリングストップ時の冷房維持に必要な冷媒量を確保して、冷房維持時間を、より確実に確保できる。
【0078】
しかも、液溜器70における液状冷媒量が設定量ser未満であっても、圧縮機10の作動停止からの経過時間が設定値tsを越えると、冷媒流路開閉弁60を閉じるようにした。このため、上述のように冷媒流路開閉弁60の閉弁タイミングを遅らせることで冷媒流路開閉弁60の下流にはアイドリングストップ時の冷房に十分な冷媒量が確保された時点で、冷媒流路開閉弁60を閉じることで、冷媒流路開閉弁60の下流の液圧上昇を抑えて、冷房維持をより確実に行うことができる。
【0079】
e)液溜器70には、貯留した液状冷媒を蒸発器40の入口に送る冷媒ポンプ80を備え、空調制御回路100は、圧縮機10の停止時に冷媒ポンプ80を作動させるようにした。このため、低圧液状の冷媒をより長期に亘って蒸発器40に供給し、アイドリングストップ時の冷房維持時間をより長く確保することが可能となる。
【0080】
f)液溜器70と圧縮機10とを接続する第4流路54の途中に逆止弁55を設けたため、アイドリングストップ時に、高圧の冷媒が圧縮機10から液溜器70側へ逆流するのを防止して、蒸発器40側を、より確実に低圧に維持して、アイドリングストップ時の冷房維持をより確実に行うことができる。
【0081】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1について詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0082】
例えば、実施例1では、本発明の冷媒サイクル装置を車両の空調装置に適用した例を示したが、その適用範囲は、車両に限定されるものではなく、家庭用、産業用の空調装置など、他の冷却が必要な機器にも適用できる。すなわち、圧縮機が停止した状態でも蒸発器による冷却を持続させたいものであれば適用可能である。
【0083】
また、圧縮機の動力源も、エンジンに限らず、電動機などの他の動力源を用いてもよい。例えば、電動車両などにおいても、モータを停止させて圧縮機を停止させた状態で冷房を行なうことができる。
【0084】
また、実施例1では、液溜器70において、蓄冷材72をタンク本体71の外側に設けた例を示したが、蓄冷材72は、タンク本体71の内部に設けてもよい。さらには、液溜器70に、蓄冷材72を設けなくてもよい。この場合でも、液溜器70に、アイドリングストップを行なっている間、冷房を行うことができる冷媒量を確保することで、冷房を維持できる。
【0085】
また、冷媒流路開閉弁の開閉制御の処理の流れについては、実施例1で示したものに限定されず、圧縮機の停止時に液冷媒検出手段の検出に基づいて冷媒流路開閉弁を閉弁させるものであれば、他の処理の流れとしてもよい。具体的には、液冷媒検出手段が、液溜器の冷媒量を比例的に検出可能である場合、その量に応じて、量が少ないほど閉弁のタイミングを遅らせるようにしてもよい。
【0086】
あるいは、実施例1では、圧縮機の停止時の検出液状冷媒量が設定量serに満たない場合は、設定量serが検出されるか、設定値tsの時間が経過するまで開弁状態に維持したが、検出冷媒量が設定量serに満たない場合は、これらのいずれか一方のみの場合に閉弁させるようにしてもよい。すなわち、図4のフローチャートに示すように、ステップS202では、冷媒ポンプ80の駆動を開始のみ行い、次のステップS203において、冷媒量が設定量ser未満の場合はステップS203の判断を繰り返すようにしてもよい。また、図5のフローチャートに示すように、ステップS307においてカウント値tcが設定値tsに満たない場合は、ステップS307の判断を繰り返すようにしてもよい。
【0087】
また、実施例1では、冷媒ポンプは、圧縮機を停止させると直ちに駆動させる例を示したが、少なくとも、冷媒流路開閉弁を閉じた際に駆動させればよく、冷媒流路開閉弁の閉弁に連動して駆動を開始させてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 圧縮機
20 凝縮器
30 膨張器
40 蒸発器
50 冷媒流路
60 冷媒流路開閉弁
70 液溜器
72 蓄冷材
80 冷媒ポンプ
100 空調制御回路(開閉制御手段)
102 液冷媒センサ(液冷媒検出手段)
A 冷凍サイクル装置
Eng エンジン
ser 設定量
ts 設定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張器、蒸発器が冷媒流路により順次環状に接続され、前記圧縮機から吐出されて前記凝縮器および前記膨張器を経た冷媒が前記蒸発器で吸熱するようにした冷凍サイクル装置であって、
前記蒸発器の下流側に設けられ、前記冷媒を貯留可能であるとともに前記蒸発器へ供給可能な液溜器と、
この液溜器に貯留された液状冷媒量を検出する液冷媒検出手段と、
前記膨張器と前記蒸発器との間で前記冷媒流路を開閉する冷媒流路開閉弁と、
前記圧縮機の駆動時に、前記冷媒流路開閉弁を開弁させ、前記圧縮機の停止時に、前記液冷媒検出手段の検出に基づいて前記冷媒流路開閉弁を閉弁させる開閉制御手段と、
を備えていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記液溜器は、前記冷媒により蓄冷可能な蓄冷材を備えていることを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記開閉制御手段は、前記圧縮機の停止時に、前記液冷媒検出手段の検出に基づき、前記液溜器の液状冷媒量があらかじめ設定された設定量以上の場合に、前記冷媒流路開閉弁を閉弁させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記開閉制御手段は、前記圧縮機の停止時に、前記液溜器の液状冷媒量が前記設定量未満の場合は、前記冷媒流路開閉弁を開弁状態に維持し、前記設定量以上または前記圧縮機の停止からの経過時間があらかじめ設定した設定時間を超えた場合に、前記冷媒流路開閉弁を閉弁させることを特徴とする請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記液溜器の前記液状冷媒を前記蒸発器の入口に送る冷媒ポンプを備え、
前記開閉制御手段は、前記(圧縮機の停止時に)冷媒流路開閉弁を閉じたときに前記冷媒ポンプを作動させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記冷媒流路において、前記液溜器と前記圧縮機との間に、前記冷媒が流れる方向を前記液溜器から前記圧縮機の方向のみに制限する逆止弁を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162125(P2012−162125A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22470(P2011−22470)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】