説明

冷凍寿司包装体の製造方法

【課題】長期間の冷凍保存後に解凍した場合も、生食材の色調の変化、味の劣化及びドリップ等が発生せず、品質及び鮮度の低下を十分に防止することができる冷凍寿司包装体を提供する。
【解決手段】シャリ塊とシャリ塊上に配置された生食材とを含む寿司を調理し、一方向性で略均等な磁力線を含む静磁場内において磁力線の方向に対して略垂直な方向に伝播する電波を供給しながら寿司を冷凍して冷凍寿司を得、上面に開口を有する容器内に冷凍寿司を配置し、減圧雰囲気下、加熱した熱可塑性フィルムで容器の上面を覆い、熱可塑性フィルムに冷凍寿司の形状と略同一の形状の凹部を形成しかつ冷凍寿司を凹部に収容して上面に保持することにより、冷凍寿司包装体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解凍後に解凍前の鮮度を損なうことのない寿司の提供を可能とする冷凍寿司包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生魚(鮮魚)や生魚を含む寿司等について、その鮮度を長期にわたって維持しつつ保存する方法として冷凍保存が行われているが、解凍後に、生魚の色調の変化、味の劣化及びドリップ(解凍時における生魚内からの液体の流出)等が発生し、品質及び鮮度の低下を防止することができないのが実情である。特に、多くの日本人が好む寿司のネタであるマグロは、たとえ−20℃で冷凍したとしても、長期間保存すると、このような問題が生じる。
【0003】
また、寿司のシャリ塊を構成する白米は、例えば家庭内において多量に炊いて余った場合に冷凍保存されることが多いが、一般的に10℃以下(特に8℃)の温度下で長期間保存すると白老化してしまい、冷凍して長期間保存した場合も、1〜2ヶ月が経過すると解凍後に白老化してしまうという問題がある。
【0004】
特に冷凍食品に関する物流業界においては、製造地から販売地まで製品が届くためには、長期間かかり、特に製造地の国と販売地の国とが異なる場合には半年は必ず必要になるものと考えられるが、上記のような問題があることから、マグロの寿司を好む日本人は世界中に居住するもののマグロの寿司を冷凍して輸出することは困難であった。
【0005】
ここで、生魚やシャリ塊等の被冷凍物は、当該被冷凍物を構成する蛋白質などの分子に拘束された結合水、及び上記分子に拘束されずに被冷凍物内を自由に移動し得る自由水等、多量の水分を有している。冷凍時、上記自由水が凍結して氷の結晶が生成及び成長して粗大化し、生魚やシャリ塊に含まれる細胞などの構造が破壊されてしまうため、被冷凍物の解凍時には上記破壊された構造に起因してドリップが発生したりして、被冷凍物を冷凍前の新鮮な状態に復元することが困難となる。
【0006】
一般的に、上記のような氷の結晶の粗大化は、冷凍時に氷結晶生成温度域を通過する時間が長い場合に起こる。この点に鑑みて、解凍後に解凍前の鮮度を損なうことのないような冷凍装置及び冷凍方法が種々提案されている。例えば、被冷凍物を液体冷媒に浸漬したり、又は被冷凍物に液体冷媒を散布したりして、かかる氷結晶生成温度域を速やかに通過させるべく急速冷却し、氷の結晶の粗大化を抑制する方法が考えられる。
【0007】
ところが、被冷凍物を液体冷媒に浸漬したり被冷凍物に液体冷媒を散布したりする方法では、被冷凍物の表層を急速に冷却することが可能であるものの、表層のみに凍結層が形成される傾向にある。そして、被冷凍物の内部の冷却は、表面からの熱伝達により律速されるが、表層の凍結層の存在により熱伝達が阻害されるために遅れ、被冷凍物の内部では氷の結晶の粗大化を有効に防止できないという問題がある。
【0008】
このような問題に対し、例えば特許文献1には、脱酸素材を供給する工程、前記脱酸素材とともに被冷凍物を含む真空パックを製造する工程、前記真空パックを加熱する工程、前記真空パックに含まれた前記被冷凍物を、前記真空パックに対して略鉛直方向に静磁場を供給するとともに略水平方向に電波を供給しながら冷凍する工程を含む冷凍方法が開示されている。
【特許文献1】実用新案登録第3126049号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術によっても、解凍後に、生魚の色調の変化、味の劣化及びドリップ等が発生し、品質及び鮮度の低下を十分に防止することができないのが実情であった。
【0010】
また、従来の冷凍食品は、アルミ蒸着パックに被冷凍物複数個を包装したり、真空パック等に個々の被冷凍物を包装したりすることによって市場に流通して販売されているが、上記アルミ蒸着パックでは搬送時にシャリ塊から生食材が外れたり、上記真空パックでは開封時にシャリ塊から生食材が外れたり、食事の際に多くの個数の寿司を食べようとすると開封の作業が面倒であるという問題もある。
【0011】
そこで、本発明は、長期間の冷凍保存後に自然解凍した場合も、生食材の色調の変化、味の劣化及びドリップ等が発生せず、品質及び鮮度の低下を十分に防止することができる冷凍寿司包装体、特に、搬送時及び開封時に変形することのない冷凍寿司包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような課題を解決すべく、本発明は、
(1)シャリ塊と、前記シャリ塊上に配置された生食材と、を含む寿司を調理する工程;
(2)一方向性で略均等な磁力線を含む静磁場内において、前記磁力線の方向に対して略垂直な方向に伝播する電波を供給しながら、前記寿司を冷凍して冷凍寿司を得る工程;
(3)上面に開口を有する容器内に前記冷凍寿司を配置する工程;並びに
(4)減圧雰囲気下、加熱した熱可塑性フィルムで前記容器の上面を覆い、前記熱可塑性フィルムに前記冷凍寿司の形状と略同一の形状の凹部を形成しかつ前記冷凍寿司を前記凹部に収容して前記上面に保持する工程;
を含むこと、を特徴とする冷凍寿司包装体の製造方法を提供する。
【0013】
このような構成によれば、長期間の冷凍保存後に自然解凍した場合も、生魚からなる生食材の色調の変化、味の劣化及びドリップ等が発生せず、品質及び鮮度の低下を十分に防止することができる冷凍寿司、特に、搬送時及び開封時に変形することのない冷凍寿司を確実に提供することができる。
【0014】
ここで、「シャリ塊」とは、寿司用ご飯(寿司飯)の塊のことであり、通常は、米飯に酢を混ぜ合わせて得られる。本発明においては、前記米飯、前記酢およびこれらにより得られる前記寿司飯の種類に特に限定はなく、寿司に一般に用いられるものを用いることができる。
【0015】
シャリ塊上に配置された「生食材」とは、主としていわゆる寿司のネタとして用いられる生魚(部分的に焼いたもの等を含む。)のことであり、その他生肉(部分的に焼いたもの等を含む。)及び生野菜(部分的に焼いたもの等を含む。)も含む。
【0016】
また、「一方向性で略均等な磁力線を含む静磁場」とは、詳細は後述するが、当該静磁場内において、磁力線の磁束密度がほぼ一定であるとともに、かつ前記磁力線がほぼ一方向にほぼ直線状に走っていることを意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、長期間の冷凍保存後に自然解凍した場合も、生食材の色調の変化、味の劣化及びドリップ等が発生せず、品質及び鮮度の低下を十分に防止することができる冷凍寿司包装体、特に、搬送時及び開封時に変形することのない冷凍寿司包装体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明する。ただし、下記の実施の形態は代表的なものであるに過ぎず、本発明はこれらのみに限定されるものではない。図1は本発明に係る冷凍寿司包装体の製造方法のうちの工程(2)において用いられる冷凍装置の構成を示す一部を透明にした斜視図である。
【0019】
工程(1)
まず、工程(1)において、シャリ塊と、前記シャリ塊上に配置された生食材と、を含む寿司を調理する。この工程は、従来公知の方法で行なえばよい。なお、生食材としては、上述したものが挙げられるが、特にマグロ、ブリ、ハマチ、カンパチ及びカツオ等の生魚の場合に本発明の顕著な効果が得られる。
【0020】
工程(2)
次に、工程(2)として、一方向性で略均等な磁力線を含む静磁場内において、前記磁力線の方向に対して略垂直な方向に伝播する電波を供給しながら、前記寿司を冷凍して冷凍寿司を得る。
【0021】
図1に示す冷凍装置1は、寿司2を冷凍する冷凍庫4、冷凍庫4内において寿司2に対して略鉛直方向(すなわち、図1において矢印Xで示される方向)に走る磁力線からなる静磁場(一方向性で略均等な磁力線を含む静磁場)を発生させる静磁場発生装置6、及び冷凍庫4内において寿司2に対して略水平方向(前記磁力線の方向に対して略垂直な方向、すなわち、図1において矢印Yで示される方向)に伝播する電波を供給する電波供給装置8、を少なくとも含む。
【0022】
冷凍装置1に含まれる冷凍庫4は、本実施の形態においては、冷凍装置1の内部空間を構成するとともに、冷凍機能を有する。なお、図1における冷凍庫4はラック型バッチ式であるが、その他トンネル型又はスパイラル型等のいずれであってもよく、それぞれの場合に本発明に用いることができる。
【0023】
冷凍庫4は冷凍手段を含み、上記冷凍手段としては、図示しないが、例えば圧縮機、凝縮器、膨張弁及び冷却パイプ(蒸発器)等を具備し、冷媒を循環させる通常公知の急速冷凍サイクル装置などを用いることができる。なお、膨張弁および冷却パイプ(蒸発器)は冷凍庫4の内部空間に設置され、冷気の発生に寄与する。
【0024】
そして、冷凍庫4内において一方向性で略均等な磁力線を含む静磁場に寿司2を配置させることができる静磁場発生装置6は、略水平方向に並行に対向して設置された板状の上部磁気部材6a及び下部磁気部材6b、並びに上部磁気部材6a及び下部磁気部材6bを支持する支持体6cを含む。
【0025】
より具体的には、上部磁気部材6a及び下部磁気部材6bにはそれぞれ板状の永久磁石が含まれており、静磁場発生手段6が上記のような構造を有することにより、上部磁気部材6aと下部磁気部材6bとの間に寿司2が配置されることにより、支持体6cによって両者の間に一定の空間を介して、略鉛直方向に一方向性でかつ略均等な磁力線からなる静磁場が形成される。
【0026】
また、上記永久磁石としては、例えばフェライト磁石を用いるのが好ましく、上部磁気部材6aと下部磁気部材6bとの間には、例えば10〜2000ガウス、好ましくは50〜1000ガウス、さらに好ましくは100〜150ガウスの静磁場を発生させれば本発明の効果をより確実に得ることができる。平均磁束密度は、110〜130ガウス、特に約120ガウスであるのが好ましい。
【0027】
上部磁気部材6aと下部磁気部材6bとの間隔、上部磁気部材6a及び下部磁気部材6bに含まれる永久磁石のスペック、枚数および間隔、永久磁石を保持するために用いる保持具の構成などは、所望する静磁場の強度や均一性等を考慮し、略鉛直方向(すなわち、図1において矢印Xで示される方向)に静磁場を発生させることを条件として、当業者であれば適宜選択することができる。
【0028】
そして、冷凍庫4内において寿司2に対して略水平方向(すなわち、図1において矢印Yで示される方向)に電波を供給する電波供給装置8は、電波発信機8a、8bと増幅器(図示せず)とで構成されており、例えば300kHz〜2MHz、300kHz〜600kHz、特に好ましくは約500kHzの周波数を有するラジオ波の領域に含まれる電波を供給する。
【0029】
このような波長の長い電波を寿司2に供給することにより、寿司2のシャリ塊及び生食材に含まれる水分子(プロトン)の位置を大きく変えることなく揺り動かすことができ、上記静磁場と相俟って冷凍時における水分子の配列をより確実に実現することができる。上記のような電波発信器8a、8b及び増幅器としては、従来公知のものを用いることができる。例えば電波発信器8a、8bとしては、例えばコイルアンテナを用いることができる。
【0030】
この工程(2)においては、冷凍庫4内の温度(寿司2の雰囲気温度)を−35℃〜−45℃(特に−40℃)に設定することが好ましい。この温度範囲であれば、よりシャリ塊や生食材にダメージを与えることなく、数分間〜数十分間、好ましくは15分間〜30分間で急速に寿司2を冷凍(凍結)することができる。
【0031】
なかでも、寿司2の中心温度(すなわち、寿司2のシャリ塊の内部に温度計を挿入して当該シャリ塊の略中心部分で測定される温度)が約−20℃あり、かつ、寿司2の周辺温度(すなわち、寿司2のシャリ塊と生食材との間に温度計を挿入して測定される温度)が約−22℃であることが好ましい。
【0032】
なお、冷凍装置1には、冷凍庫4及び静磁場発生装置6以外に、冷凍庫4の内部空間に収容されている寿司2を冷却する冷風(冷気)を循環させる冷風循環装置10を設けてもよい。このような構成によれば、冷気が冷凍庫4内に偏在することを防止することができ、冷凍庫4内に配列された寿司2をより確実に均一に冷凍することが可能になる。
【0033】
工程(3)
次に、工程(3)において、上面に開口を有する容器内に前記冷凍寿司を配置する。ここで用いることのできる容器としては、上面に寿司を配置して熱可塑性フィルムで包装できるものであれば種々のものを用いることができ、その材質及び形状も特に限定されるものではない。
【0034】
ただし、後述する工程(4)において用いる熱可塑性フィルムとの優れた密着性という観点から、ポリプロピレン又はポリスチレンで構成されている容器を用いるのが好ましい。ここで、図2は、本発明に係る冷凍寿司包装体の製造方法に好適に用いることのできる容器12の概略斜視図である。図2に示すように、熱可塑性フィルムをより確実に熱融着させることのできるスペース12aを有する容器12を用いるのが好ましい。
【0035】
また、配置する冷凍寿司の数も特に限定されることはないが、後述するように、本発明において用いる熱可塑性樹脂フィルムには、個々の冷凍寿司の形状と略同一の形状の凹部を形成しかつ前記冷凍寿司を前記凹部に収容するものであり、冷凍寿司を複数個配置する場合に特に好ましい。
【0036】
工程(4)
そして、工程(4)において、減圧雰囲気下、加熱した熱可塑性フィルムで前記容器の上面を覆い、前記熱可塑性フィルムに前記冷凍寿司の形状と略同一の形状の凹部を形成しかつ前記冷凍寿司を前記凹部に収容して前記上面に保持(包装)する。
【0037】
ここで用いる熱可塑性フィルムは、加熱によって軟化して冷凍寿司の形状と略同一の形状の凹部を形成することができ、減圧雰囲気下(すなわち真空下)で、冷凍寿司及び上記容器の上面を包装(すなわち、真空包装又は真空密着包装)することができるものであればよい。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体及びポリメチルペンテンなどのオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0038】
なかでも、包装後もある程度の柔軟性を有しており、得られた冷凍寿司包装体を開封する際に、寿司に損傷を与えないものであるのが好ましい。また、真空包装又は真空密着包装に適しており、得られた冷凍寿司包装体において寿司に外気による悪影響を極力与えないという観点からは、ガス不透過性の熱可塑性フィルムを用いるのが好ましい。
【0039】
特に好ましい熱可塑性フィルムは、エチレンビニルアルコールフィルムと、アイオノマーフィルムと、エチレンビニルアセテートフィルムと、を含む三層構造を有する熱可塑性フィルムである。かかる熱可塑性フィルムは、加熱により軟化し、真空包装又は真空密着包装した場合に冷凍寿司の形状と略同一の形状の凹部を形成し、上記容器により確実に密着して冷凍寿司を保持し、包装後もある程度の柔軟性を有することから開封時に寿司に損傷を与えない。
【0040】
ここで、この工程(4)における減圧雰囲気(すなわち、真空包装又は真空密着包装に用いる真空チャンバー内の真空度)は、容器の寸法及び形状、冷凍寿司の個数及び形状、容器及び冷凍寿司の温度等の種々の要因によって異なるが、本発明者らが鋭意検討した結果、−0.05MPa〜−0.20MPa、−0.05MPa〜−0.10MPaであるのが好ましいことを見出した。
【0041】
また、真空包装又は真空密着包装に用いる熱可塑性フィルムの加熱温度については、当該熱可塑性フィルムの材質や包装時の真空度によって異なるが、上記三層構造の熱可塑性フィルムの場合には、約100〜150℃(好ましくは130℃)であればよい。
【0042】
このようにして、図3に示すような本発明に係る冷凍寿司包装体20を得ることができる。図3は、本発明に係る冷凍寿司包装体の製造方法によって得られる冷凍寿司包装体20の一実施の形態を示す概略縦断面図である。
【0043】
図3に示す冷凍寿司包装体20は、シャリ塊22a及び生食材22bを含む冷凍寿司22を3個含み、冷凍寿司22の形状と略同一の形状を有する凹部に冷凍寿司22を収容する熱可塑性樹脂フィルム24によって、当該冷凍寿司22及び容器26の上面が包装されている。
【0044】
本発明に係る冷凍寿司包装体の製造方法によって得られる冷凍寿司包装体は、まず、熱可塑性樹脂フィルムの周辺部分を開封して、冷凍寿司22の下部分からゆっくりと外気を取り入れて解凍することができる。
【0045】
このようにすれば、シャリ塊22aから次第に解凍させて、外気からの結露水を生食材に付着させることを極力抑制して生食材22bを解凍させることができるため、解凍時における生食材の色調の変化、味の劣化及びドリップ等が発生せず、品質及び鮮度の低下を十分に防止することができる。
【0046】
加えて、複数個の冷凍寿司を含む場合に、熱可塑性樹脂フィルムが柔軟性を有し、個々の冷凍寿司の形状と略同一の形状の凹部を複数個有しかつ個々の冷凍寿司を個々の凹部に収容するため、搬送時及び開封時にシャリ塊や生食材が崩れず、冷凍寿司又は寿司の変形を効果的に抑制することができる。
【0047】
以上、本発明の代表的な実施の形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。例えば、冷凍寿司包装体には冷凍寿司が1個でも複数個でも含まれていてよい。また、冷凍寿司包装体において、冷凍寿司は並列に配置されていても、直列に配列されていても、並列及び直列を組み合わせた形で配置されていてもよい。
【実施例】
【0048】
《実施例》
まず、炊いた米に酢を混合して得られた寿司飯でシャリ塊を作成し、その上に生マグロの切り身を乗せて、マグロ寿司を複数個調理した(工程(1))。ついで、このマグロ寿司複数個を(株)菱豊フリーズ製のBU−150型ユースフルフリーザー内に配置し、約30分間で急速冷凍した(工程(2))。
【0049】
このとき、ユースフルフリーザー内では、マグロ寿司を配置した空間に100〜150ガウスの静磁場雰囲気を形成し、約300kHz〜約600kKHzの周波数を有するラジオ波を伝播させ、温度を−40℃に設定した。また、寿司のシャリ塊の内部に温度計を挿入して当該シャリ塊の略中心部分で測定される温度は約−20℃あり、寿司のシャリ塊と生食材との間に温度計を挿入して測定される温度は約−22℃であった。
【0050】
上記冷凍寿司3個を、図2に示す形状を有するポリプロピレン製トレイ上に配置し(工程(3))、(株)ハイパック製の真空密着包装機HI−750で、ハイパックEフィルム(エチレンビニルアルコールフィルム、アイオノマーフィルム及びエチレンビニルアセテートフィルムの三層構造フィルム)を約130℃に加熱して軟化させ、−0.09MPaの真空度で上記容器の上面を冷凍寿司とともに真空密着包装し、冷凍寿司包装体Aを得た(工程(4))。
【0051】
《比較例》
市販の冷凍庫にて寿司を冷凍した以外は、上記実施例と同様にして冷凍寿司包装体Bを得た。
【0052】
[評価]
上記実施例で得られた冷凍寿司包装体A及び上記比較例で得られた冷凍寿司包装体Bを市販の冷凍庫に保管した後、外気が内部に入るように熱可塑性樹脂フィルムの一部を切断し、約30℃の室内に放置した。3時間経過後、冷凍寿司包装体A及び冷凍寿司包装体Bに含まれるマグロ寿司はいずれも解凍したが、冷凍寿司包装体Aのマグロ寿司はマグロの色調の変化及びドリップが発生しておらず味も美味しかったものの、冷凍寿司包装体Bのマグロ寿司は色調の変化及びドリップが発生しており味も劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、長期間の冷凍保存後に解凍した場合も、生食材の色調の変化、味の劣化及びドリップ等が発生せず、品質及び鮮度の低下を十分に防止することができる冷凍寿司包装体、特に、搬送時及び開封時に変形することのない冷凍寿司包装体を提供することができる。したがって、本発明において得られる冷凍寿司包装体は、海外等の遠方への輸出に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る冷凍寿司包装体の製造方法のうちの工程(2)において用いられる冷凍装置の構成を示す一部を透明にした斜視図である。
【図2】本発明に係る冷凍寿司包装体の製造方法に好適に用いることのできる容器12の概略斜視図である。
【図3】本発明に係る冷凍寿司包装体の製造方法によって得られる冷凍寿司包装体20の一実施の形態を示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・冷凍装置、
2・・・寿司、
4・・・冷凍庫、
6・・・静磁場発生装置、
8・・・脱酸素材供給装置、
10・・・冷風循環装置、
12、26・・・容器、
12a・・スペース、
20・・・冷凍寿司包装体、
22・・・冷凍寿司、
22a・・・シャリ塊、
22b・・・生食材(ネタ)、
24・・・熱可塑性樹脂フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)シャリ塊と、前記シャリ塊上に配置された生食材と、を含む寿司を調理する工程;
(2)一方向性で略均等な磁力線を含む静磁場内において、前記磁力線の方向に対して略垂直な方向に伝播する電波を供給しながら、前記寿司を冷凍して冷凍寿司を得る工程;
(3)上面に開口を有する容器内に前記冷凍寿司を配置する工程;並びに
(4)減圧雰囲気下、加熱した熱可塑性フィルムで前記容器の上面を覆い、前記熱可塑性フィルムに前記冷凍寿司の形状と略同一の形状の凹部を形成しかつ前記冷凍寿司を前記凹部に収容して前記上面に保持する工程;
を含むこと、を特徴とする冷凍寿司包装体の製造方法。
【請求項2】
前記工程(2)における前記静磁場の磁束密度が100〜150ガウスであること、
を特徴とする、請求項1に記載の冷凍寿司包装体の製造方法。
【請求項3】
前記工程(2)における前記静磁場の平均磁束密度が約120ガウスであること、
を特徴とする、請求項1又は2に記載の冷凍寿司包装体の製造方法。
【請求項4】
前記工程(2)における前記電波の周波数が約500MHzであること、
を特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載の冷凍寿司包装体の製造方法。
【請求項5】
前記工程(2)における冷凍時の前記寿司の中心温度が約−20℃あり雰囲気温度が約−40℃であること、
を特徴とする請求項1〜4のうちのいずれかに記載の冷凍寿司包装体の製造方法。
【請求項6】
前記工程(3)における前記容器がポリプロピレン又はポリスチレンで構成されていること、
を特徴とする請求項1〜5のうちのいずれかに記載の冷凍寿司包装体の製造方法。
【請求項7】
前記工程(4)における前記熱可塑性フィルムがガス不透過性であること、
を特徴とする請求項1〜6のうちのいずれかに記載の冷凍寿司包装体の製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性フィルムがエチレンビニルアルコールと、アイオノマーと、エチレンビニルアセテートと、を含む三層構造を有すること、
を特徴とする請求項1〜7のうちのいずれかに記載の冷凍寿司包装体の製造方法。
【請求項9】
前記工程(4)における雰囲気を−0.05MPa〜−0.20MPaに減圧すること、を特徴とする請求項1〜8のうちのいずれかに記載の冷凍寿司包装体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−45023(P2009−45023A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215422(P2007−215422)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(506366851)株式会社奈良コープ産業 (1)
【Fターム(参考)】