説明

冷凍果実の解凍方法

【課題】冷凍果実を速やかに解凍でき、解凍後の日持ちを向上できる、冷凍果実の解凍方法を提供すること。
【解決手段】冷凍果実を高温の有機酸溶液に浸漬し、解凍する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍果実の解凍後の日持ちを向上でき、速やかに解凍可能な、冷凍果実の解凍方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンゴー、ストロベリー等の冷凍果実の解凍方法として、室温に放置して自然解凍する方法、冷蔵庫内で解凍する方法、温水、熱水に浸漬して解凍する方法等があるが、解凍中もしくは解凍後に微生物の増殖が認められたり、褐変等の品質劣化が生じる為、果実の外観が重要視される加工食品(例えば、果肉入りゼリー)への利用は難しいとされていた。冷凍果実の解凍後の品質劣化を抑制する方法として、加熱、加圧、加糖、脱気等の処理があるが、これらの方法では、果肉組織の軟化劣化、甘味の付与、処理作業が煩雑等の問題がある為、実際には、これらの処理は行なわれず、冷凍果実は解凍後速やかに使い切ることを強いられている。
【0003】
冷凍果実の解凍方法、処理方法、果実の褐変防止方法等関連するその他の先行技術として、特許文献1には、果汁/果実ピューレ、低メトキシペクチン、酸味料としてのクエン酸を含有するゾル状混合物を、解凍中にカルシウム溶液に浸漬して、果肉類似製品を製造する方法が開示されている。特許文献2、3には、冷凍梅を食酢/酢酸含有食塩水に浸漬し、解凍と調味付けを同時に行なう梅干の製造方法が開示されている。特許文献4には、有機酸含有糖水溶液に果実を浸漬し冷凍することにより、生の果実の食感を保持した冷凍果実製品の製造方法が開示されている。特許文献5には、リン酸カルシウムを用いたリンゴ果肉褐変を防止する方法が開示されている。しかしながら、これらの先行技術はいずれも、本発明とは、構成、目的が異なるものである。
【特許文献1】特開昭60−9456号公報
【特許文献2】特開昭57−68753号公報
【特許文献3】特開昭57−68754号公報
【特許文献4】特開平6−245692号公報
【特許文献5】特開昭55−115149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、冷凍果実の解凍後の日持ちを向上でき、速やかに解凍可能な、冷凍果実の解凍方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決する為、鋭意検討を重ねた結果、冷凍果実を高温の有機酸溶液に浸漬し、解凍することにより、冷凍果実の解凍後の日持ちを向上でき、また速やかに解凍できることを見出した。即ち、本発明は以下の通りである。
【0006】
(1)酢酸を除く有機酸溶液に、大きさが5mm以上の冷凍果実を浸漬し、解凍することを特徴とする冷凍果実の解凍方法。
(2)有機酸溶液の温度が50〜100℃である(1)記載の方法。
(3)有機酸溶液がクエン酸溶液である(1)又は(2)記載の方法。
(4)クエン酸溶液のクエン酸濃度が0.1〜0.9%である(3)記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、冷凍果実を速やかに解凍でき、解凍後の日持ちを向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の冷凍果実の種類としては、特に制限はなく、任意の果実よく、例えばマンゴー、ストロベリー、リンゴ、ブドウ、ナシ、洋ナシ、ピーチ等が挙げられる。冷凍果実の大きさは、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましい。大きさが5mm以上の冷凍果実とは、未凍結あるいは解凍状態の時に、目開き5mm×5mmの網を通過しない果実の冷凍品を意味し、具体的には、果実そのものを冷凍したもの、皮や種を除去した果肉を冷凍したもの、果実や果肉を5mm以上の大きさにカットした後冷凍したものを意味する。果実や果肉を磨砕処理して得られる果汁、果実ピューレ、果実ペーストは含まれない。
【0009】
本発明に用いられる有機酸は食品に使用できるものであれば特に制限はなく、アジピン酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸等が挙げられる。尚、酢酸は果実に好ましくない酢酸臭を付与するので、本発明の有機酸には含まれない。有機酸の中でも、果実の風味との相性のよいクエン酸が好ましい。有機酸溶液にクエン酸を用いる場合、クエン酸の濃度は0.1〜0.9%が好ましく、0.2〜0.6%がより好ましい。クエン酸の濃度が0.1%未満であると、冷凍果実の解凍後の日持ちを向上させる効果は十分ではなく、0.9%を超えると果実に過度の酸味が付与される。
【0010】
本発明に用いられる有機酸の溶液の温度は、冷凍果実が投入される前の状態で、50〜100℃、好ましくは70〜100℃、より好ましくは90〜100℃である。いうまでも無く、温度が低い場合、解凍時間がより長くなり、製造面での効率が悪くなる。
【0011】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、この実施例により何ら限定されない。
【実施例1】
【0012】
冷凍マンゴー(IQFマンゴチャンク、ICMOSA社製、原産国メキシコ、約30mm×30mmカット品)500gを袋から取り出し、92℃の0.3%クエン酸溶液1kgに浸漬したところ、速やかに(10分以内)解凍した(本発明品)。解凍したマンゴーをポリエチレンの袋に密封し、10℃で72時間保存した後、定法により微生物分析を行なった。併せて、解凍したマンゴーを磨砕し、磨砕物のpHを測定した。褐変に寄与する酵素の活性を吸光度にて測定し、酵素活性残存率を調べた。さらに、目視により外観の変化を確認した。有機酸溶液に浸漬せず、10℃で72時間保存し解凍したものを対照とし、同様に微生物、pH、酵素活性を測定し、外観変化を見た。これらの結果を表1に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
表1に示したように、対照は、褐変が確認され、一般生菌、大腸菌群が増殖していたのに対し、クエン酸溶液に浸漬して解凍した試料は、褐変は認められず、菌の増殖も無く、解凍マンゴーの日持ち向上効果が確認された。
【0015】
尚、冷凍マンゴー500gを72℃の0.3%クエン酸溶液に浸漬し、解凍した試料(解凍時間は約17分)においても、同様に、褐変は認められず、菌の増殖も無く、日持ち向上効果が確認された。一方、冷凍マンゴーを92℃の市水に浸漬し、解凍した試料においては、菌の増殖が認められ、日持ちを向上させる効果は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明によれば、冷凍果実を速やかに解凍でき、解凍後の日持ちを向上できるので、本発明は食品分野において極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸を除く有機酸溶液に、大きさが5mm以上の冷凍果実を浸漬し、解凍することを特徴とする冷凍果実の解凍方法。
【請求項2】
有機酸溶液の温度が50〜100℃である請求項1記載の方法。
【請求項3】
有機酸溶液がクエン酸溶液である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
クエン酸溶液のクエン酸濃度が0.1〜0.9%である請求項3記載の方法。

【公開番号】特開2006−296360(P2006−296360A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126066(P2005−126066)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】