説明

冷凍機油組成物

【課題】冷媒として、ハイドロフルオロカーボン、炭化水素、二酸化炭素、アンモニアなどの自然冷媒、フッ化ヨウ化メチルとプロペンとの混合冷媒、さらには不飽和フッ化炭化水素、フッ化エーテル、フッ化アルコール、フッ化ケトンおよびこれらの混合物を使用する圧縮型冷凍機に好ましく用いられ、摩擦係数が低く、省エネルギー性に優れる冷凍機油組成物を提供する。
【解決手段】基油と、ポリアルキレングリコール(PAG)ブロック共重合体とを含む冷凍機油組成物であって、前記PAGブロック共重合体が、下記式(1)で示されることを特徴とする
[(OR(OE)OR (1)
(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素残基、Rは炭素数3〜6のアルケニル基、Eはエチレン基、Rは水素または炭素数1〜10のアルキル基を示す。mおよびnは正の整数を示し、その比率はm/n=99/1〜50/50である。lは1〜100の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種冷凍分野における圧縮型冷凍機に使用される冷凍機油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、圧縮型冷凍機は圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器から構成され、冷媒と潤滑油との混合液体がこの密閉された系内を循環する構造となっている。このような圧縮型冷凍機においては、冷媒として、従来ジクロロジフルオロメタン(R12)やクロロジフルオロメタン(R22)などが多く用いられ、また潤滑油として種々の鉱油や合成油が用いられてきた。
【0003】
しかしながら、上記R12やR22などのクロロフルオロカーボンは、成層圏に存在するオゾン層を破壊するなど環境汚染をもたらすおそれがあることから、最近、世界的にその使用に対する規制が厳しくなりつつある。そのため、新しい冷媒としてハイドロフルオロカーボンやハイドロクロロフルオロカーボンなどの水素含有フロン化合物が注目されるようになってきた。この水素含有フロン化合物、特にR134aで代表されるハイドロフルオロカーボンは、オゾン層を破壊するおそれがない上、従来の冷凍機の構造をほとんど変更することなく、R12などと代替が可能であるなど、圧縮型冷凍機用冷媒として好ましいものである(例えば、特許文献1)。
【0004】
一方、ハイドロフルオロカーボンも地球温暖化の面で影響が懸念されることから、更に環境保護に適した代替冷媒として二酸化炭素やアンモニアなどのいわゆる自然系冷媒も注目されており、そのような自然系冷媒に対応した冷凍機油も提案されている(例えば、特許文献2)。また、地球温暖化係数が低い冷媒として、例えば不飽和フッ化炭化水素化合物、フッ化エーテル化合物、フッ化アルコール化合物、フッ化ケトン化合物など分子中に特定の極性構造を有する冷媒が見出されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【特許文献1】特開平10−008078号公報
【特許文献2】特開2000−96075号公報
【特許文献3】特表2006−503961号公報
【特許文献4】特表平07−507342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1、2に記載の各冷凍機油は、必ずしも省エネルギー性が十分とはいえず、例えば、カーエアコンや電気冷蔵庫などの冷凍機のアルミニウム材と鋼材との間の摩擦は依然として大きく、省エネルギーの観点からは問題がある。また、冷媒としては、上記したように非常に多くの種類があるため、単一の冷凍機油では対応が困難である。
【0006】
そこで本発明は、冷媒として、ハイドロフルオロカーボン、あるいは炭化水素、二酸化炭素、アンモニアなどの自然系冷媒、フッ化ヨウ化メチルとプロペンとの混合冷媒、さらには不飽和フッ化炭化水素、フッ化エーテル、フッ化アルコール、フッ化ケトンおよびこれらの混合物を使用する圧縮型冷凍機に広範囲に適用することができ、摩擦係数が低く、省エネルギー性に優れる冷凍機油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決すべく、本発明は、以下のような冷凍機油組成物を提供するものである。
[1]基油と、ポリアルキレングリコール(PAG)ブロック共重合体とを含む冷凍機油組成物であって、前記PAGブロック共重合体が、下記式(1)で示されることを特徴とする冷凍機油組成物。
[(OR(OE)OR (1)
(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素残基、Rは炭素数3〜6のアルキレン基、Eはエチレン基、Rは水素または炭素数1〜10のアルキル基を示す。mおよびnは正の整数を示し、その比率はm/n=99/1〜50/50である。lは1〜100の整数を示す。)
[2]上記[1]に記載の冷凍機油組成物において、前記PAGブロック共重合体の質量平均分子量が200〜5000であることを特徴とする冷凍機油組成物。
[3]上記[1]または[2]に記載の冷凍機油組成物において、前記PAGブロック共重合体の配合量が組成物全量基準で0.05〜10質量%であることを特徴とする冷凍機油組成物。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の冷凍機油組成物において、前記基油が、鉱油および/または合成系基油であり、前記合成系基油が、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリ−α−オレフィン、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリカーボネート、ポリオールエステル、および、下記式(2)で示されるエーテル系化合物の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする冷凍機油組成物。
Ra―〔(ORb)n―(A)―(ORc)k〕x―Rd (2)
(式中、Ra、Rdはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基または結合部2〜6個を有する炭素数1〜10の炭化水素基、Rb、Rcはそれぞれ炭素数2〜4のアルキレン基、n、kは0〜20の整数であり、xは1〜6の整数である。(A)は、下記式(3)で示されるモノマー単位を3以上含んだ重合部である。)
【0008】
【化1】

(式中、R、RおよびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、Rは炭素数1〜10の二価の炭化水素基または炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基、Rは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、mはその平均値が0〜10の数を示し、mが複数ある場合には構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよく、R〜Rは構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよく、またROが複数ある場合には、複数のROは同一でも異なっていてもよい。また、式(2)におけるk、nが共に0のとき、式(3)において、いずれか一つのmは1以上の整数である。)
【0009】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の冷凍機油組成物において、極圧剤、油性剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、銅不活性化剤および消泡剤の中から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする冷凍機油組成物。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載の冷凍機油組成物において、40℃動粘度が1〜400mm/sであることを特徴とする冷凍機油組成物。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の冷凍機油組成物において、往復動摩擦試験による摩擦係数が0.119以下であることを特徴とする冷凍機油組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、冷媒として、ハイドロフルオロカーボン、あるいは炭化水素、二酸化炭素、アンモニアなどの自然冷媒、フッ化ヨウ化メチルとプロペンとの混合冷媒、さらには不飽和フッ化炭化水素、フッ化エーテル、フッ化アルコール、フッ化ケトンおよびこれらの混合物を使用する圧縮型冷凍機に用いた場合に、摩擦係数が低く、省エネルギー性に優れる冷凍機油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
本発明の冷凍機油組成物は、基油と、PAGブロック共重合体とを含んでいる。基油としては、鉱油あるいは合成系基油のいずれでもよい。合成系基油としては、例えば、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリ−α−オレフィン、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリカーボネート、ポリオールエステル、および、前記した式(2)で示されるエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種が好適である。
以下に、まずこれらの基油について説明する。
【0012】
(1)鉱油:
鉱油としては、いわゆる高度精製鉱油が好ましく、例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油あるいはナフテン基系原油を常圧蒸留するか、常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油を常法に従って精製することによって得られる精製油、あるいは精製後更に深脱ロウ処理することによって得られる深脱ろう油、更には水素化処理によって得られる水素化処理油などを挙げることができる。その際の精製法には特に制限はなく様々な方法が使用される。
【0013】
通常は(a)水素化処理、(b)脱ロウ処理(溶剤脱ロウまたは水素化脱ロウ)、(c)溶剤抽出処理、(d)アルカリ蒸留または硫酸洗浄処理、(e)白土処理を単独で、あるいは適宜順序で組み合わせて行う。また、同一処理を複数段に分けて繰り返し行うことも有効である。例えば、留出油を水素化処理するか、または水素化処理した後、アルカリ蒸留または硫酸洗浄処理を行う方法、留出油を水素化処理した後、脱ロウ処理する方法、留出油を溶剤抽出処理した後、水素化処理する方法、留出油に二段あるいは三段の水素化処理を行う、又はその後にアルカリ蒸留又は硫酸洗浄処理する方法、更には、上述した処理の後、再度脱ロウ処理して深脱ロウ油とする方法などがある。上記の各方法のうち、本発明における基油として用いられる高度精製鉱油には、深脱ロウ処理によって得られる鉱油が、低温流動性,低温時でのワックス析出がない等の点から好適である。この深脱ロウ処理は、苛酷な条件での溶剤脱ロウ処理法やゼオライト触媒を用いた接触脱ロウ処理などによって行われる。
本発明の冷凍機油組成物の基油として用いる場合は、40℃動粘度が1〜400mm/sであることが好ましく、5〜250mm/sであることがより好ましい。
【0014】
(2)アルキルベンゼン:
冷凍機油に用いられるアルキルベンゼンがいずれも使用可能であるが、本発明においてはこれより高粘度のものが好ましく用いられる。このような高粘度アルキルベンゼンとしては、様々なものがあるが、アルキル基の総炭素数(アルキル基が複数の場合は、それぞれのアルキル基の総和)が20以上のアルキルベンゼン(モノアルキルベンゼン,ジアルキルベンゼン,トリアルキルベンゼン)、好ましくは総炭素数が20以上でしかもアルキル基を2個以上有するもの(ジアルキルベンゼンなど)が熱安定性の点から好適に使用される。なお、この高粘度アルキルベンゼンは、動粘度が前述の範囲に入るものであれば、一種を単独で、あるいは二種以上を混合したものでもよい。
本発明の冷凍機油組成物の基油として用いる場合は、40℃動粘度が1〜400mm/sであることが好ましく、5〜250mm/sであることがより好ましい。
【0015】
(3)アルキルナフタレン:
アルキルナフタレンとしては、ナフタレン環にアルキル基が2つまたは3つ結合したものが好適に使用される。特に、このようなアルキルナフタレンとしては、熱安定性の点から総炭素数が20以上であるものが更に好ましい。本発明においては、これらのアルキルナフタレンは単独で用いてもよいし、また混合して用いてもよい。
本発明の冷凍機油組成物の基油として用いる場合は、40℃動粘度が1〜400mm/sであることが好ましく、5〜250mm/sであることがより好ましい。
【0016】
(4)ポリ−α−オレフィン
ポリ−α−オレフィンとしては、種々のものが使用可能であるが、通常は炭素数8〜18のα−オレフィンの重合体である。そのうち、好ましいものとしては、1−ドデセン,1−デセンあるいは1−オクテンの重合体を熱安定性,シール性,潤滑性などの点から挙げることができる。なお、本発明においては、ポリ−α−オレフィンとして、特にその水素化処理物が熱安定性の点から好ましく用いられる。これらのポリ−α−オレフィンは単独で用いてもよいし、また混合して用いてもよい。
本発明の冷凍機油組成物の基油として用いる場合は、40℃動粘度が1〜400mm/sであることが好ましく、5〜250mm/sであることがより好ましい。
【0017】
(5)ポリビニルエーテル系化合物:
基油として用いられるポリビニルエーテル系化合物には、ビニルエーテルモノマーを重合して得られたもの(以下、ポリビニルエーテルIと称する。)、ビニルエーテルモノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとを共重合して得られたもの(以下ポリビニルエーテル共重合体IIと称する。)およびポリビニルエーテルと、アルキレングリコール若しくはポリアルキレングリコール、またはそれらのモノエーテルとの共重合体(以下、ポリビニルエーテル共重合体IIIと称する。)がある。
【0018】
前記ポリビニルエーテルIの原料として用いるビニルエーテルモノマーとしては、例えばビニルメチルエーテル;ビニルエチルエーテル;ビニル−n−プロピルエーテル;ビニル−イソプロピルエーテル;ビニル−n−ブチルエーテル;ビニル−イソブチルエーテル;ビニル−sec−ブチルエーテル;ビニル−tert−ブチルエーテル;ビニル−n−ペンチルエーテル;ビニル−n−ヘキシルエーテル;ビニル−2−メトキシエチルエーテル;ビニル−2−エトキシエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−1−メチルエチルエーテル;ビニル−2−メトキシ−プロピルエーテル;ビニル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−1,4−ジメチル−3,6−ジオキサヘプチルエーテル;ビニル−1,4,7−トリメチル−3,6,9−トリオキサデシルエーテル;ビニル−2,6−ジオキサ−4−ヘプチルエーテル;ビニル−2,6,9−トリオキサ−4−デシルエーテル;1−メトキシプロペン;1−エトキシプロペン;1−n−プロポキシプロペン;1−イソプロポキシプロペン;1−n−ブトキシプロペン;1−イソブトキシプロペン;1−sec−ブトキシプロペン;1−tert−ブトキシプロペン;2−メトキシプロペン;2−エトキシプロペン;2−n−プロポキシプロペン;2−イソプロポキシプロペン;2−n−ブトキシプロペン;2−イソブトキシプロペン;2−sec−ブトキシプロペン;2−tert−ブトキシプロペン;1−メトキシ−1−ブテン;1−エトキシ−1−ブテン;1−n−プロポキシ−1−ブテン;1−イソプロポキシ−1−ブテン;1−n−ブトキシ−1−ブテン;1−イソブトキシ−1−ブテン;1−sec−ブトキシ−1−ブテン;1−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−1−ブテン;2−エトキシ−1−ブテン;2−n−プロポキシ−1−ブテ
ン;2−イソプロポキシ−1−ブテン;2−n−ブトキシ−1−ブテン;2−イソブトキシ−1−ブテン;2−sec−ブトキシ−1−ブテン;2−tert−ブトキシ−1−ブテン;2−メトキシ−2−ブテン;2−エトキシ−2−ブテン;2−n−プロポキシ−2−ブテン;2−イソプロポキシ−2−ブテン;2−n−ブトキシ−2−ブテン;2−イソブトキシ−2−ブテン;2−sec−ブトキシ−2−ブテン;2−tert−ブトキシ−2−ブテン等が挙げられる。これらのビニルエーテル系モノマーは公知の方法により製造することができる。
これらのビニルエーテルモノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
前記ポリビニルエーテル共重合体IIの原料として用いられるビニルエーテルモノマーとしては、前記例示のビニルエーテルモノマーと同じものを挙げることができ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、もう一つの原料であるオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、α−メチルスチレン、各種アルキル置換スチレンなどを挙げることができる。
これらのオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、このポリビニルエーテル共重合体IIはブロックまたはランダム共重合体のいずれであってもよい。
前記ポリビニルエーテルIおよびポリビニルエーテル共重合体IIは、例えば以下に示す方法により、製造することができる。
重合の開始には、ブレンステッド酸類、ルイス酸類または有機金属化合物類に対して、水、アルコール類、フェノール類、アセタール類またはビニルエーテル類とカルボン酸との付加物を組み合わせたものを使用することができる。ブレンステッド酸類としては、例えばフッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。ルイス酸類としては、例えば三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化スズ、二塩化亜鉛、塩化第二鉄などが挙げられ、これらのルイス酸類の中では、特に三フッ化ホウ素が好適である。また、有機金属化合物としては、例えばジエチル塩化アルミニウム、エチル塩化アルミニウム、ジエチル亜鉛などが挙げられる。
【0020】
ポリマーの重合開始末端は、水、アルコール類、フェノール類を使用した場合は水素が結合し、アセタール類を使用した場合は水素または使用したアセタール類から一方のアルコキシ基が脱離したものとなる。またビニルエーテル類とカルボン酸との付加物を使用した場合には、ビニルエーテル類とカルボン酸との付加物からカルボン酸部分由来のアルキルカルボニルオキシ基が脱離したものとなる。
一方、停止末端は、水、アルコール類、フェノール類、アセタール類を使用した場合には、アセタール、オレフィンまたはアルデヒドとなる。またビニルエーテル類とカルボン酸との付加物の場合は、ヘミアセタールのカルボン酸エステルとなる。このようにして得られたポリマーの末端は、公知の方法により所望の基に変換することができる。この所望の基としては、例えば飽和の炭化水素、エーテル、アルコール、ケトン、ニトリル、アミドなどの残基を挙げることができるが、飽和の炭化水素、エーテルおよびアルコールの残基が好ましい。
この重合反応は、原料や開始剤の種類にもよるが、−80〜150℃の間で開始することができ、通常は−80〜50℃の範囲の温度で行うことができる。また、重合反応は反応開始10秒から10時間程度で終了する。重合反応は、通常溶媒の存在下に行われる。該溶媒については、反応原料を必要量溶解し、かつ反応に不活性なものであればよく特に制限はないが、例えばヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系、およびエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル系の溶媒を好適に使用することができる。
【0021】
一方、前記ポリビニルエーテル共重合体IIIは、アルキレングリコール若しくはポリアルキレングリコール、またはそれらのモノエーテルを開始剤とし、前記重合方法に従ってビニルエーテルモノマーを重合させることにより、製造することができる。
このアルキレングリコール若しくはポリアルキレングリコール、またはそれらのモノエーテルとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルキレングリコールやポリアルキレングリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノエーテルやポリアルキレングリコールモノエーテルを挙げることができる。
また、原料として用いられるビニルエーテルモノマーとしては、前記ポリビニルエーテルIの説明において、ビニルエーテルモノマーとして例示したものと同じものを挙げることができる。このビニルエーテルモノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記ポリビニルエーテル系化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の冷凍機油組成物の基油として用いる場合は、40℃動粘度が1〜400mm/sであることが好ましく、5〜250mm/sであることがより好ましい。
【0022】
(6)ポリアルキレングリコール系化合物:
本発明の冷凍機油組成物において、基油として用いられるポリアルキレングリコール系化合物としては、例えば下記式(4)で示される化合物が挙げられる。
−[(OR10m1−OR11n1 (4)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基または結合部2〜6個を有する炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、R10は炭素数2〜4のアルキレン基、R11は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアシル基、n1は1〜6の整数、m1はm1×n1の平均値が6〜80となる数を示す。)
【0023】
上記式(4)において、R、R11におけるアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。このアルキル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、粗分離を生じる場合がある。好ましいアルキル基の炭素数は1〜6である。
また、R、R11における該アシル基のアルキル基部分は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該アシル基のアルキル基部分の具体例としては、上記アルキル基の具体例として挙げた炭素数1〜9の種々の基を同様に挙げることができる。該アシル基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。好ましいアシル基の炭素数は2〜6である。
およびR11が、いずれもアルキル基またはアシル基である場合には、RとR11は同一であってもよいし、たがいに異なっていてもよい。
【0024】
さらにn1が2以上の場合には、1分子中の複数のRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
が結合部位2〜6個を有する炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基である場合、この脂肪族炭化水素基は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。結合部位2個を有する脂肪族炭化水素基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などが挙げられる。また、結合部位3〜6個を有する脂肪族炭化水素基としては、例えばトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール;1,2,3−トリヒドロキシシクロヘキサン;1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンなどの多価アルコールから水酸基を除いた残基を挙げることができる。
この脂肪族炭化水素基の炭素数が10を超えると冷媒との相溶性が低下し、相分離が生じる場合がある。好ましい炭素数は2〜6である。
【0025】
前記式(4)中のR10は炭素数2〜4のアルキレン基であり、繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。1分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよいし、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよいが、1分子中に少なくともオキシプロピレン単位を含むものが好ましく、特にオキシアルキレン単位中に50モル%以上のオキシプロピレン単位を含むものが好適である。
前記式(4)中のn1は1〜6の整数で、Rの結合部位の数に応じて定められる。例えばRがアルキル基やアシル基の場合、n1は1であり、Rが結合部位2、3、4、5および6個を有する脂肪族炭化水素基である場合、n1はそれぞれ2、3、4、5および6となる。また、m1はm1×n1の平均値が6〜80となる数であり、m1×n1の平均値が前記範囲を逸脱すると本発明の目的は十分に達せられない。
【0026】
前記式(4)で示されるポリアルキレングリコール系化合物は、末端に水酸基を有するポリアルキレングリコールを包含するものであり、該水酸基の含有量が全末端基に対して、50モル%以下になるような割合であれば、含有していても好適に使用することができる。この水酸基の含有量が50モル%を超えると吸湿性が増大し、粘度指数が低下するので好ましくない。
このようなポリアルキレングリコール類としては、例えばポリプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレン、ポリプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコールジアセテートなどが、経済性および効果の点で好適である。
なお、上記式(4)で示されるポリアルキレングリコール系化合物については、特開平2−305893号公報に詳細に記載されたものをいずれも使用することができる。
本発明においては、このポリアルキレングリコール系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の冷凍機油組成物の基油として用いる場合は、このポリアルキレングリコール系化合物の40℃動粘度は1〜400mm/sであることが好ましく、5〜250mm/sであることがより好ましい。
【0027】
(7)ポリカーボネート系化合物:
本発明の冷凍機油組成物において、基油として用いられるポリカーボネート系化合物としては、1分子中にカーボネート結合を2個以上有するポリカーボネート、すなわち(イ)下記式(5)で示される化合物、および(ロ)下記式(6)で示される化合物の中から選ばれる少なくとも一種を好ましく挙げることができる。
【0028】
【化2】

【0029】
(式中、Zは炭素数1〜12のc価のアルコールから水酸基を除いた残基、R12は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、R13は炭素数1〜12の一価の炭化水素基またはR15(O−R14)d−(ただし、R15は水素原子または炭素数1〜12の一価の炭化水素基、R14は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、dは1〜20の整数を示す。)で示すエーテル結合を含む基、aは1〜30の整数、bは1〜50の整数、cは1〜6の整数を示す。)
【0030】
【化3】

【0031】
(式中、R16は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、eは1〜20の整数を示し、Z、R12、R13、a、bおよびcは前記と同じである。)
前記式(5)および式(6)において、Zは炭素数1〜12の一価〜六価のアルコールから、水酸基を除いた残基であるが、特に炭素数1〜12の一価のアルコールから、水酸基を除いた残基が好ましい。
【0032】
Zを残基とする炭素数1〜12の一価〜六価のアルコールとしては、一価のアルコールとして、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−またはイソプロピルアルコール、各種ブチルアルコール、各種ペンチルアルコール、各種ヘキシルアルコール、各種オクチルアルコール、各種デシルアルコール、各種ドデシルアルコールなどの脂肪族一価アルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコールなどの脂環式一価アルコール、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ナフトールなどの芳香族アルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどの芳香脂肪族アルコールなどを、二価のアルコールとして、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの脂肪族アルコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式アルコール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ジヒドロキシジフェニルなどの芳香族アルコール、三価のアルコールとして、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールブタン、1,3,5−ペンタントリオールなどの脂肪族アルコール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサントリメタノールなどの脂環式アルコール、ピロガロール、メチルピロガロールなどの芳香族アルコールなどを、四価〜六価のアルコールとして、例えばペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの脂肪族アルコールなどを挙げることができる。
このようなポリカーボネート化合物としては、前記式(5)で示される化合物として、式(5−a)で示される化合物、および/または前記式(6)で示される化合物として、下記式(6−a)で示される化合物を挙げることができる。
【0033】
【化4】

(式中、R17は炭素数1〜12の一価アルコールから水酸基を除いた残基、R12、R13、aおよびbは前記と同じである。)
【0034】
【化5】


(式中、R12、R13、R16、R17、a、bおよびeは前記と同じである。)
【0035】
前記式(5−a)および式(6−a)において、R17で示される炭素数1〜12の一価のアルコールから水酸基を除いた残基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基などの脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、デカヒドロナフチル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、各種トリル基、各種キシリル基、メシチル基、各種ナフチル基などの芳香族炭化水素基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、各種ナフチルメチル基などの芳香脂肪族炭化水素基などを挙げることができる。これらの中で、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
【0036】
12は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基であるが、中でも炭素数2〜6のものが好ましく、特にエチレン基およびプロピレン基が、性能および製造の容易さなどの点から好適である。さらに、R13は炭素数1〜12の一価の炭化水素基またはR15(O−R14)d−(ただし、R15は水素原子または炭素数1〜12、好ましくは1〜6の一価の炭化水素基、R14は炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基、dは1〜20の整数を示す。)で示されるエーテル結合を含む基であり、上記炭素数1〜12の一価の炭化水素基としては、前記R17の説明で例示したものと同じものを挙げることができる。また、R14で示される炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基としては、前記R12の場合と同様の理由から、炭素数2〜6のものが好ましく、特にエチレン基およびプロピレン基が好ましい。
【0037】
このR13としては、特に炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
一般式(6−a)において、R14で示される炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状アルキレン基としては、前記R12の場合と同様の理由から、炭素数2〜6のものが好ましく、特にエチレン基およびプロピレン基が好ましい。
このようなポリカーボネート系化合物は、各種の方法により製造することができるが、通常炭酸ジエステルまたはホスゲンなどの炭酸エステル形成性誘導体とアルキレングリコールまたはポリオキシアルキレングリコールを、公知の方法に従って反応させることにより、目的のポリカーボネート系化合物を製造することができる。
本発明においては、このポリカーボネート系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の冷凍機油組成物の基油として用いる場合は、このポリカーボネート系化合物の40℃動粘度は1〜400mm/sであることが好ましく、5〜250でmm/sあることがより好ましい。
【0038】
(8)ポリオールエステル系化合物:
本発明の冷凍機油組成物において、基油として用いられるポリオールエステル系化合物としては、ジオールあるいは水酸基を3〜20個程度有するポリオールと、炭素数1〜24程度の脂肪酸とのエステルが好ましく用いられる。ここで、ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、
1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。ポリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜20量体)、1,3,5−ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレンジトースなどの糖類、並びにこれらの部分エーテル化物、およびメチルグルコシド(配糖体)などが挙げられる。これらの中でもポリオールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールが好ましい。
【0039】
脂肪酸としては、特に炭素数は制限されないが、通常炭素数1〜24のものが用いられる。炭素数1〜24の脂肪酸の中でも、潤滑性の点からは、炭素数3以上のものが好ましく、炭素数4以上のものがより好ましく、炭素数5以上のものがさらにより好ましく、炭素数10以上のものが最も好ましい。また、冷媒との相溶性の点からは、炭素数18以下のものが好ましく、炭素数12以下のものがより好ましく、炭素数9以下のものがさらにより好ましい。
また、直鎖状脂肪酸、分岐状脂肪酸の何れであっても良く、潤滑性の点からは直鎖状脂肪酸が好ましく、加水分解安定性の点からは分岐状脂肪酸が好ましい。更に、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の何れであっても良い。
【0040】
脂肪酸としては、例えば、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸などの直鎖または分岐のもの、あるいはα炭素原子が4級であるいわゆるネオ酸などが挙げられる。さらに具体的には、吉草酸(n−ペンタン酸)、カプロン酸(n−ヘキサン酸)、エナント酸(n−ヘプタン酸)、カプリル酸(n−オクタン酸)、ペラルゴン酸(n−ノナン酸)、カプリン酸(n−デカン酸)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)、イソペンタン酸(3−メチルブタン酸)、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸などが好ましい。
なお、ポリオールエステルとしては、ポリオールの全ての水酸基がエステル化されずに残った部分エステルであっても良く、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであっても良く、また部分エステルと完全エステルの混合物であっても良いが、完全エステルであることが好ましい。
【0041】
このポリオールエステルの中でも、より加水分解安定性に優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトールのエステルがさらにより好ましく、冷媒との相溶性および加水分解安定性に特に優れることからペンタエリスリトールのエステルが最も好ましい。
【0042】
好ましいポリオールエステル系化合物の具体例としては、ネオペンチルグリコールと吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる一種または二種以上の脂肪酸とのジエステル、トリメチロールエタンと吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる一種または二種以上の脂肪酸とのトリエステル、トリメチロールプロパンと吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる一種または二種以上の脂肪酸とのトリエステル、トリメチロールブタンと吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる一種または二種以上の脂肪酸とのトリエステル、ペンタエリスリトールと吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の中から選ばれる一種または二種以上の脂肪酸とのテトラエステルが挙げられる。
本発明においては、このポリオールエステル系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の冷凍機油組成物の基油として用いる場合は、このポリオールエステル系化合物の40℃動粘度は1〜400mm/sであることが好ましく、5〜250mm/sであることがより好ましい。
【0043】
(9)エーテル系化合物:
本発明の冷凍機油組成物において、下記式(2)で示される構造を有するエーテル系化合物が基油として好ましく挙げられる。
Ra―〔(ORb)n―(A)―(ORc)k〕x―Rd (2)
ここで、式中、Ra、Rdはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基または結合部2〜6個を有する炭素数1〜10の炭化水素基、Rb、Rcはそれぞれ炭素数2〜4のアルキレン基、n、kは0〜20の整数であり、xは1〜6の整数である。(A)は、下記式(3)で示されるモノマー単位を3以上含んだ重合部である。
【0044】
【化6】

式(3)において、R、RおよびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。
ここで炭化水素基とは、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、各種メチルシクロヘキシル基、各種エチルシクロヘキシル基、各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、各種メチルフェニル基、各種エチルフェニル基、各種ジメチルフェニル基のアリール基、ベンジル基、各種フェニルエチル基、各種メチルベンジル基のアリールアルキル基を示す。なお、これらのR、RおよびRの各々としては、合成反応の安定性の観点より特に水素原子が好ましい。
一方、Rは炭素数1〜10の二価の炭化水素基または炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示すが、ここで炭素数1〜10の二価の炭化水素基とは、具体的にはメチレン基、エチレン基、フェニルエチレン基、1,2−プロピレン基、2−フェニル−1、2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種ヘプチレン基、各種オクチレン基、各種ノニレン基、各種デシレン基などの二価の脂肪族基;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素に2個の結合部位を有する脂環式基;各種フェニレン基、各種メチルフェニレン基、各種エチルフェニレン基、各種ジメチルフェニレン基、各種ナフチレン基などの二価の芳香族炭化水素基:トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどのアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分と芳香族部分にそれぞれ一価の結合部位を有するアルキル芳香族基;キシレン、ジエチルベンゼンなどのポリアルキル芳香族炭化水素のアルキル基部分に結合部位を有するアルキル芳香族基などがある。これらの中で炭素数2から4の脂肪族基が冷媒との相溶性の点で特に好ましい。
【0045】
また、炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基の具体例としては、メトキシメチレン基、メトキシエチレン基、メトキシメチルエチレン基、1,1−ビスメトキシメチルエチレン基、1,2−ビスメトキシメチルエチレン基、エトキシメチルエチレン基、(2−メトキシエトキシ)メチルエチレン基、(1−メチル−2−メトキシ)メチルエチレン基などを好ましく挙げることができる。なお、式(3)におけるmはROの繰り返し数を示し、その平均値が0〜10、好ましくは0〜5の範囲の数であり、mが複数ある場合には構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。ROが複数ある場合には、複数のROは同一でも異なっていてもよい。また、k,nが共に0のときは、式(3)において、いずれか一つのmは1以上の整数である。
【0046】
は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基を示すが、この炭化水素基とは、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基,各種ヘキシル基,各種ヘプチル基,各種オクチル基,各種ノニル基,各種デシル基などのアルキル基、シクロペンチル基,シクロヘキシル基,各種メチルシクロヘキシル基,各種エチルシクロヘキシル基,各種プロピルシクロヘキシル基,各種ジメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基,各種メチルフェニル基,各種エチルフェニル基,各種ジメチルフェニル基,各種プロピルフェニル基,各種トリメチルフェニル基,各種ブチルフェニル基,各種ナフチル基などのアリール基、ベンジル基,各種フェニルエチル基,各種メチルベンジル基,各種フェニルプロピル基,各種フェニルブチル基などのアリールアルキル基などを示す。なお、該R〜Rは構成単位毎に同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
前記した式(3)で示されるモノマー単位を有するエーテル系化合物は共重合体にすることにより、冷媒との相溶性を満足しつつ潤滑性、絶縁性、吸湿性等を向上させることができる効果がある。この際、原料となるモノマーの種類、開始剤の種類並びに共重合体の比率を選ぶことにより、冷凍機油組成物の上記性能を目的レベルに合わせることが可能となる。従って、冷凍システム潤滑油あるいは空調システム潤滑油におけるコンプレッサーの型式、潤滑部の材質及び冷凍能力や冷媒の種類等により異なる潤滑性、相溶性等の要求に応じた油剤を自在に得ることができるという効果がある。
式(2)のエーテル系化合物において、(A)は、式(3)で示されるモノマー単位を3以上含んだ重合部であるが、その繰り返し数(すなわち重合度)は、所望する動粘度に応じて適宜選択すればよい。通常は温度100℃における動粘度が好ましくは1〜50mm/s、好ましくは2〜50mmm/s、更に好ましくは5〜50mm/s、特に好ましくは5〜20mm/sになるように選ばれる。
また、式(2)のエーテル系化合物は、その炭素/酸素モル比が4以下であることが好ましい。このモル比が4を超えると、二酸化炭素等の自然系冷媒との相溶性が低下する。
【0048】
なお、式(2)における(A)は、前記した式(3)で示されるモノマー単位の単独重合部ではなく、下記式(7)で示されるモノマー単位とのブロックまたはランダム共重合部であってもよい。
【0049】
【化7】

式(7)において、R18〜R21は、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよい。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、上記式(3)におけるRと同様のものを挙げることができる。また、R18〜R21モノマー単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよい。
【0050】
式(3)で示される示されるモノマー単位と式(7)で示されるモノマー単位とを有し、式(2)で示されるブロックまたはランダム共重合体からなるエーテル系化合物の重合度は、所望する動粘度に応じて適宜選択すればよいが、通常は温度100℃における動粘度が好ましくは5mm/s以上,更に好ましくは5〜20mm/sになるように選ばれる。また、このエーテル系化合物は、その炭素/酸素モル比が4以下であることが好ましい。このモル比が4を超えると、二酸化炭素等自然系冷媒との相溶性が低下する。
【0051】
前記したようなエーテル系化合物は、それぞれ対応するビニルエーテル系モノマーの重合、および対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーと対応するビニルエーテル系モノマーとの共重合により製造することができる。
エーテル系化合物としては、次の末端構造を有するもの、すなわち末端が、式(2)においてRaが水素原子、n=0であり、かつ残りの末端が、Rdが水素原子、k=0で表される構造を有するものが合成反応の安定性の点で好ましい。
【0052】
このようなエーテル系化合物は、モノマーをラジカル重合、カチオン重合、放射線重合などによって製造することができる。例えばビニルエーテル系モノマーについては、以下に示す方法を用いて重合することにより、所望の粘度の重合物が得られる。重合の開始には、ブレンステッド酸類、ルイス酸類又は有機金属化合物類に対して、水、アルコール類、フェノール類、アセタール類又はビニルエーテル類とカルボン酸との付加物を組み合わせたものを使用することができる。ブレンステッド酸類としては、例えばフッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。ルイス酸類としては、例えば三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化スズ、二塩化亜鉛、塩化第二鉄などが挙げられ、これらのルイス酸類の中では、特に三フッ化ホウ素が好適である。また、有機金属化合物としては、例えばジエチル塩化アルミニウム、エチル塩化アルミニウム、ジエチル亜鉛などが挙げられる。
【0053】
これらと組み合わせる水、アルコール類、フェノール類、アセタール類又はビニルエーテル類とカルボン酸との付加物は任意のものを選択することができる。ここで、アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、各種ペンタノー
ル、各種ヘキサノール、各種ヘプタノール、各種オクタノールなどの炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール、アリルアルコールなどの炭素数3〜10の不飽和脂肪族アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールのモノエーテルなどが挙げられる。ビニルエーテル類とカルボン酸との付加物を使用する場合のカルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、イソ吉草酸、2−メチル酪酸、ピバリン酸、n−カプロン酸、2,2−ジメチル酪酸、2−メチル吉草酸、3−メチル吉草酸、4−メチル吉草酸、エナント酸、2−メチルカプロン酸、カプリル酸、2−エチルカプロン酸、2−n−プロピル吉草酸、n−ノナン酸、3,5,5−トリメチルカプロン酸、カプリル酸、ウンデカン酸などが挙げられる。
【0054】
本発明の冷凍機油組成物においては、基油として鉱油、あるいは合成系基油として、前述のアルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリ−α−オレフィン、ポリビニルエーテル系化合物、ポリオキシアルキレングリコール系化合物、ポリカーボネート系化合物、ポリオールエステル系化合物、および、前記した式(2)の化合物の中から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらの鉱油あるいは合成系基油は、冷凍機油組成物の基油の中に好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%含有されることが望ましい。
本発明においては、前記合成系基油の分子量は、蒸発の抑制、引火点、冷凍機油としての性能などの観点から150〜5,000の範囲が好ましく、500〜3000の範囲がより好ましい
【0055】
次に、PAGブロック共重合体について説明する。
本発明の冷凍機油組成物は、基油と、下記式(1)で示されるPAGブロック共重合体とを含んで構成される。
[(OR(OE)OR・・・(1)
上記式(1)におけるRは炭素数1〜10の炭化水素残基であり、フロック生成の観点より好ましくは、1〜8である。特に、後述するlが1の場合は、冷媒との相溶性の点でアルキル基であることが好ましい。
また、Rは炭素数3〜6のアルキレン基である。具体的には、プロピレンおよび/またはブチレン基であることが金属表面への吸着性の点で好ましい。Eは、エチレン基である。
【0056】
本発明の冷凍機油組成物に用いられるPAGブロック共重合体は、文字通り、(OR基部分と(OE)基部分とがブロック的に結合した構造を備えている。OR基とOE基とがランダムに重合した構造では、基油に添加したときに、金属表面への吸着力が小さいため摩擦低減に関して十分な効果が得られない。ここで、mおよびnは正の整数であり、その比率はm/n=99/1〜50/50であり、好ましくはm/n=80/20〜50/50であり、より好ましくはm/n=70/30〜50/50である。m/nが99/1よりも大きいと金属表面への吸着性が低下して好ましくない。一方、m/nが50/50よりも小さいとフロックが生成してしまい好ましくない。
また、lは1〜100の整数を示すが、冷媒との相溶性の点より好ましくは1である。
は水素または炭素数1〜10のアルキル基である。フロック生成の観点よりRは水素であることが好ましい。すなわち、いわゆる片末端タイプのPAGブロック共重合体が最も好ましい。
本発明において、PAGブロック共重合体の質量平均分子量は、200〜5000であることが好ましく、より好ましくは500〜3000である。質量平均分子量が200未満では、分子鎖が短くなり吸着力が弱くなる。一方、質量平均分子量が5000を超えるとフロックが析出しやすくなって好ましくない。
また、PAGブロック共重合体の40℃粘度は、20〜1000mm/sであることが好ましく、より好ましくは50〜500mm/sであり、さらに好ましくは100〜300mm/sである。40℃粘度が20mm/s未満であると、吸着しなくなり好ましくない。一方、40℃粘度が1000mm/sを超えるとフロックが析出しやすくなるとともに、配合時の粘度が高くなりすぎて実用上問題がある。
って好ましくない。
【0057】
このような、PAGブロック共重合体の配合量は、組成物全量基準で、0.05〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5質量%であり、さらに好ましくは0.05〜3質量%である。PAGブロック共重合体の配合量が0.05質量%未満では、冷凍機油組成物としたときに、摩擦係数の低減効果や省エネルギー効果が十分ではない。一方、PAGブロック共重合体の配合量が10質量%を超えても、摩擦係数の低減効果や省エネルギー効果の向上はそれほど望めず、むしろフロック生成の問題が生じるおそれがある。
【0058】
本発明のPAGブロック共重合体は、炭素数3〜6のアルキレンオキシドとエチレンオキシドを用いて容易に製造することができる。
例えば、ブチレンオキシドとエチレンオキシドとからなるブロック共重合体の場合は、水や水酸化アルカリを開始剤として重合させる際に、まずブチレンオキシドを単独重合させ、次いで、エチレンオキシドを加えてブロック重合を行う。そして、両末端に水酸基を有するPAGブロック共重合体を得た後、このものの水酸基の両方をエーテル化またはエステル化することにより、あるいは片方の水酸基をエーテル化し、他方の水酸基をエステル化することにより前記した式(1)で示される、本発明のPAGブロック共重合体が得られる。
【0059】
本発明の冷凍機油組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、極圧剤、油性剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、銅不活性化剤および消泡剤の中から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有させることができる。
極圧剤としては、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステルおよびこれらのアミン塩などのリン系極圧剤を挙げることができる。
これらのリン系極圧剤の中で、極圧性、摩擦特性などの点からトリクレジルホスフェート、トリチオフェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイトなどが特に好ましい。
また、極圧剤としては、カルボン酸の金属塩が挙げられる。ここでいうカルボン酸の金属塩は、好ましくは炭素数3〜60のカルボン酸、さらには炭素数3〜30、特に12〜30の脂肪酸の金属塩である。また、前記脂肪酸のダイマー酸やトリマー酸並びに炭素数3〜30のジカルボン酸の金属塩を挙げることができる。これらのうち炭素数12〜30の脂肪酸および炭素数3〜30のジカルボン酸の金属塩が特に好ましい。
一方、金属塩を構成する金属としてはアルカリ金属またはアルカリ土類金属が好ましく、特に、アルカリ金属が最適である。
また、極圧剤としては、さらに、上記以外の極圧剤として、例えば、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チオカーバメート類、チオテルペン類、ジアルキルチオジプロピオネート類などの硫黄系極圧剤を挙げることができる。
上記極圧剤の配合量は、潤滑性および安定性の点から、組成物全量に基づき、通常0.001〜5質量%、特に0.005〜3質量%の範囲が好ましい。
前記の極圧剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
PAGブロック共重合体以外の油性剤の例としては、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族飽和および不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族飽和および不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和および不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和および不飽和モノカルボン酸アミド、グリセリン、ソルビトールなどの多価アルコールと脂肪族飽和または不飽和モノカルボン酸との部分エステル等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、組成物全量に基づき、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲で選定される。
【0061】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等のフェノール系、フェニル−α−ナフチルアミン、N.N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤を配合するのが好ましい。酸化防止剤は、効果および経済性などの点から、組成物中に通常0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜3質量%配合する。
【0062】
酸捕捉剤としては、例えばフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α−オレフィンオキシド、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物を挙げることができる。中でも相溶性の点でフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、α−オレフィンオキシドが好ましい。
このアルキルグリシジルエーテルのアルキル基、およびアルキレングリコールグリシジルエーテルのアルキレン基は、分岐を有していてもよく、炭素数は通常3〜30、好ましくは4〜24、特に6〜16のものである。また、α−オレフィンオキシドは全炭素数が一般に4〜50、好ましくは4〜24、特に6〜16のものを使用する。本発明においては、上記酸捕捉剤は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、効果およびスラッジ発生の抑制の点から、組成物に対して、通常0.005〜5質量%、特に0.05〜3質量%の範囲が好ましい。
【0063】
本発明においては、この酸捕捉剤を配合することにより、冷凍機油組成物の安定性を向上させることができる。前記極圧剤および酸化防止剤を併用することにより、さらに安定性を向上させる効果が発揮される。
前記銅不活性化剤としては、例えばN−[N’,N’−ジアルキル(炭素数3〜12のアルキル基)アミノメチル]トルトリアゾールなどを挙げることができ、前記消泡剤としては、例えばシリコーン油やフッ素化シリコーン油などを挙げることができる。
【0064】
本発明の冷凍機油組成物においては、40℃動粘度が、好ましくは1〜400mm
s、より好ましくは3〜300mm/s、さらに好ましくは5〜200mm/sである。体積固有抵抗は、好ましくは109Ω・cm以上、より好ましくは1010Ω・cm以上であり、その上限は、通常1011Ω・cm程度である。また、往復動摩擦試験による摩擦係数は、好ましくは0.119以下、より好ましくは0.117以下、さらに好ましくは
0.112以下であり、その下限は、通常0.07程度である。
なお、前記動粘度、および摩擦係数の測定方法については後で説明する。
【0065】
本発明の冷凍機油組成物は、二酸化炭素、アンモニア、プロパン、ブタン、イソブタンなどの自然系冷媒;R410A、R407C、R404A、R134a、R152aなどのハイドロフルオロカーボン系冷媒;不飽和フッ化炭化水素化合物、フッ化エーテル化合物、フッ化アルコール化合物、フッ化ケトン化合物などの含フッ素有機化合物系冷媒;前記含フッ素有機化合物と飽和フッ化炭化水素化合物とを組み合わせた冷媒;フッ化ヨウ化メチルとプロペンとを組み合わせた冷媒などを用いた冷凍機に使用される。
本発明の冷凍機油組成物を使用する冷凍機の潤滑方法において、前記各種冷媒と冷凍機油組成物の使用量については、冷媒/冷凍機油組成物の質量比で99/1〜10/90、更に95/5〜30/70の範囲にあることが好ましい。冷媒の量が上記範囲よりも少ない場合は冷凍能力の低下が見られ、また上記範囲よりも多い場合は潤滑性能が低下し好ましくない。本発明の冷凍機油組成物は、種々の冷凍機に使用可能であるが、特に、圧縮型冷凍機の圧縮式冷凍サイクルに好ましく適用できる。
【0066】
本発明の冷凍機油組成物が好適に使用される冷凍機(冷凍システム)としては、圧縮機、凝縮器、膨張機構(キャピラリチューブ、膨張弁)、蒸発器を必須構成要素とする冷凍システム、あるいはエジェクターサイクルを有する冷凍システムや乾燥装置(乾燥剤:合成ゼオライト)を有する冷凍システムを挙げることができる。
前記圧縮機は、開放型、半密閉型、密閉型のいずれでもよく、密閉型のモーターはACモーターまたはDCモーターである。また、圧縮方式としてはロータリ式、スクロール式、スイング式あるいはピストン式いずれでもよい。圧縮機としては0.2kW程度の小型圧縮機でもよく、30kW程度の大型圧縮機でもよい。
また、絶縁材としては、通常ポリエチレンテレフタレート樹脂またはポリブチレンテレフタレート樹脂が用いられる。
この冷凍システムにおいては、システム内の水分含有量は500質量ppm以下が好ましく、300質量ppm以下がより好ましい。また、空気含有量は、13kPa以下が好ましく、1kPa以下がより好ましい。
【0067】
本発明の冷凍機油組成物が適用される冷凍機においては、圧縮機内に様々な摺動部分(例えば軸受など)がある。本発明においては、この摺動部分として特にシール性の点から、エンジニアリングプラスチックからなるもの、または有機コーティング膜もしくは無機コーティング膜を有するものが用いられる。
前記エンジニアリングプラスチックとしては、シール性、摺動性、耐摩耗性などの点で、例えばポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアセタール樹脂などを好ましく挙げることができる。
また、有機コーティング膜としては、シール性、摺動性、耐摩耗性などの点で、例えばフッ素含有樹脂コーティング膜(ポリテトラフルオロエチレンコーティング膜など)、ポリイミドコーティング膜、ポリアミドイミドコーティング膜などを挙げることができる。
一方、無機コーティング膜としては、シール性、摺動性、耐摩耗性などの点で、黒鉛膜、ダイヤモンドライクカーボン膜、ニッケル膜、モリブデン膜、スズ膜、クロム膜、窒化膜、ホウ素膜などが挙げられる。この無機コーティング膜は、メッキ処理で形成してもよいし、CVD(化学的気相蒸着法)やPVD法(物理的気相蒸着法)で形成してもよい。
なお、当該摺動部分として、従来の合金系、例えばFe基合金、Al基合金、Cu基合金などからなるものを用いることもできる。
本発明の冷凍機油組成物は、摩擦係数が低く、省エネルギー性に優れ、各種冷凍分野(カーエアコン、ガスヒートポンプ、空調、冷蔵庫、自動販売機、ショーケース、給湯、床暖房、洗濯機用乾燥機のヒートポンプ等)における圧縮型冷凍機用および冷凍システムに好適に用いられる。
【実施例】
【0068】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
〔実施例1〜17および比較例1〜7〕
表1〜表4に示す組成の冷凍機油組成物を調製し、摩擦係数および消費電力低減率(削減電力)を測定した。これらの結果も併せて表1〜表4に示した。
各冷凍機油組成物の諸特性は、以下に示す方法で求めた。
【0069】
(1)基油および冷凍機油組成物の40℃動粘度
JIS K2283に準拠して、40℃における動粘度を測定した。
【0070】
(2)摩擦係数
下記の条件で、往復動摩擦試験を行い、摩擦係数を測定した。
<試験条件>
テストピース:円柱SUJ2(φ4.5mm×5.3mm)/板FC250
荷 重 :49N
速 度 :25mm/s
温 度 :室温(20℃)
ストローク :10mm
【0071】
(3)消費電力低減率
比較例1の冷凍機油組成物を基準油として、実機による消費電力低減率(削減電力(W):90Hz)を測定し、省エネルギー性を評価した。
消費電力低減率(%)=(比較例1の消費電力−対象油の消費電力)/(比較例1の消費電力)×100
試験条件は下記の通りである。
<試験条件>
機 器 :ロータリー型圧縮機(3相−200V)
吐出圧力 :2.4MPa
吸入圧力 :1.37MPa
周波数 :30Hz
試験油 :420g
R410A(冷媒):1200g
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
<注>
用いた基油は以下の通りである。
A1:ポリビニルエーテル(PVE)、40℃動粘度:68.1mm/s
A2:ポリオキシアルキレングリコール(PAG)、40℃動粘度:46.7mm/s
A3:ポリビニルエーテル−ポリアルキレングリコール共重合物(モル比1:1)、40℃動粘度:75.2mm/s
A4:ポリオールエステル(POE)、40℃動粘度:68.5mm/s
A5:ポリカーボネート(PC)、40℃動粘度:67.9mm/s
A6:鉱油、40℃粘度:101mm/s
【0077】
用いたPAGブロック共重合体は、ポリオキシブチレン基とポリオキシエチレン基とがブロック的に結合した片末端タイプであり、具体的には以下の通りである。なお、B1〜B12は本発明を構成するPAGブロック共重合体であるが、B13はPAGランダム共重合体である。
B1:n−BuO−((BO)/(EO))−H、m/n=95/5、40℃動粘度:100mm/s
B2:n−BuO−((BO)/(EO))−H、m/n=95/5、40℃動粘度:200mm/s
B3:n−BuO−((BO)/(EO))−H、m/n=95/5、40℃動粘度:500mm/s
B4:n−BuO−((BO)/(EO))−H 、m/n=90/10、40℃動粘度:100mm/s
B5:n−BuO−((BO)/(EO))−H 、m/n=90/10、40℃動粘度:200mm/s
B6:n−BuO−((BO)/(EO))−H 、m/n=90/10、40℃動粘度:500mm/s
B7:n−BuO−((BO)/(EO))−H 、m/n=80/20、40℃動粘度:100mm/s
B8:n−BuO−((BO)/(EO))−H 、m/n=80/20、40℃動粘度:200mm/s
B9:n−BuO−((BO)/(EO))−H 、m/n=80/20、40℃動粘度:500mm/s
B10:n−BuO−((BO)/(EO))−H、m/n=50/50、40℃動粘度:100mm/s
B11:n−BuO−((BO)/(EO))−H、m/n=50/50、40℃動粘度:200mm/s
B12:n−BuO−((BO)/(EO))−H、m/n=50/50、40℃動粘度:500mm/s
B13:n−BuO−((BO)/(EO))−H、m/n=90/10、40℃動粘度:200mm/s
【0078】
各基油に配合した添加剤は以下の通りである。
C1:極圧剤(トリクレジルホスフェート(TCP))
C2:酸捕捉剤(炭素数14のα−オレフィンオキシド)
C3:酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(DBPC)
C4:消泡剤(シリコーン系消泡剤)
【0079】
〔評価結果〕
表1〜表4より、本発明の冷凍機油組成物は、所定のPAGブロック共重合体を含んでいるので、いずれも摩擦係数が小さいだけでなく、消費電力低減率(削減電力)が高く、省エネルギー効果が高い。一方、PAGブロック共重合体を含んでいない比較例1〜6の冷凍基油組成物はいずれも、摩擦係数が高く、省エネルギー効果は認められない。また、比較例7の冷凍機油組成物は、PAGブロック共重合体ではなく、PAGランダム共重合体を含んでいるので、摩擦係数が高く省エネルギー効果も認められない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の冷凍機油組成物は、摩擦係数が低く、省エネルギー性に優れ、各種冷凍分野(カーエアコン、ガスヒートポンプ、空調、冷蔵庫、自動販売機、ショーケース、給湯、床暖房、洗濯機用乾燥機のヒートポンプ等)における冷凍機油および冷凍システムに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と、ポリアルキレングリコール(PAG)ブロック共重合体とを含む冷凍機油組成物であって、
前記PAGブロック共重合体が、下記式(1)で示されることを特徴とする冷凍機油組成物。
[(OR(OE)OR (1)
(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素残基、Rは炭素数3〜6のアルキレン基、Eはエチレン基、Rは水素または炭素数1〜10のアルキル基を示す。mおよびnは正の整数を示し、その比率はm/n=99/1〜50/50である。lは1〜100の整数を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍機油組成物において、
前記PAGブロック共重合体の質量平均分子量が200〜5000であることを特徴とする冷凍機油組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の冷凍機油組成物において、
前記PAGブロック共重合体の配合量が組成物全量基準で0.05〜10質量%であることを特徴とする冷凍機油組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の冷凍機油組成物において、
前記基油が、鉱油および/または合成系基油であり、
前記合成系基油が、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリ−α−オレフィン、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリカーボネート、ポリオールエステル、および、下記式(2)で示されるエーテル系化合物の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする冷凍機油組成物。
Ra―〔(ORb)n―(A)―(ORc)k〕x―Rd (2)
(式中、Ra、Rdはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基または結合部2〜6個を有する炭素数1〜10の炭化水素基、Rb、Rcはそれぞれ炭素数2〜4のアルキレン基、n、kは0〜20の整数であり、xは1〜6の整数である。(A)は、下記式(3)で示されるモノマー単位を3以上含んだ重合部である。)
【化1】

(式中、R、RおよびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、それらはたがいに同一でも異なっていてもよく、Rは炭素数1〜10の二価の炭化水素基または炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基、Rは水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、mはその平均値が0〜10の数を示し、mが複数ある場合には構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよく、R〜Rは構成単位毎に同一であってもそれぞれ異なっていてもよく、またROが複数ある場合には、複数のROは同一でも異なっていてもよい。また、式(2)におけるk、nが共に0のとき、式(3)において、いずれか一つのmは1以上の整数である。)
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の冷凍機油組成物において、
極圧剤、油性剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、銅不活性化剤および消泡剤の中から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする冷凍機油組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の冷凍機油組成物において、
40℃動粘度が1〜400mm/sであることを特徴とする冷凍機油組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の冷凍機油組成物において、
往復動摩擦試験による摩擦係数が0.119以下であることを特徴とする冷凍機油組成物。

【公開番号】特開2008−308610(P2008−308610A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158744(P2007−158744)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】